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ブイズ・エレメンタリーズ 4 出会う仲間 炎 水 

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  ブイズ・エレメンタリーズ 4 出会う仲間 炎 水 


                            作・桜花 


 シャワーズ

「お姉ちゃん…」
「何?」
 シャワーズが隣に座っている姉・ブースターに話しかけた。
「どうして私達…この姿になって、名前が分からなくなっちゃったんだろう…」
 シャワーズが不安気な声で言った。この二人も異変に巻き込まれた元・人間であった。
「分からない…でも私…」
 ブースターがシャワーズの手を握る。
「シャワーズが…双子の妹である貴方が居てくれて良かった。」
 ブースターがシャワーズに微笑みながら言う。
「…うん」
 シャワーズも微笑み返す。
「寝よう…明日はまた、別の場所に移動しよう」
「うん」
 ブースターとシャワーズは、寄り添いながら眠りについた。

 ブラッキー

 目が覚めたブラッキーは、腕時計で現在の時刻を調べた。時刻はAM7:00であり、他の仲間はまだ眠っていた。リーフィアに至っては、ベッドから落ちていてイビキをかいていた。
「スゥー…スゥー…」
 すぐ近くのベッドで眠っているエーフィを見て、ブラッキーは微笑みながら、昨日まで来ていた迷彩服と64式小銃を取り、寝具売り場を出た。
 寝具売り場を出たブラッキーは、生活用品売り場へと行き、洗濯洗剤を取ると、今度はショッピングセンターの中にあるコインランドリーへと向かった。
「違う服着ているから、今の内に洗濯しちゃおう」
 ブラッキーは迷彩服を洗濯機に放り込み、洗剤を入れて蓋を閉めた後、財布から百円を取り出して機械に入れた。自動設定された洗濯機は動き始め、迷彩服を洗い始めた。
「洗濯している間どうしようか…見回りは昨日の夜やって、同時に入り口の閉鎖はやったし…」
 そう呟いている時、コインランドリーの入り口に来訪者が現れた。
「おはようブラッキー君」
 それはエーフィであった。
「おはようエーフィ」
 エーフィの挨拶にブラッキーも返した。
「何をしてたの?」
「迷彩服を洗濯しているんだよ。折角違う服を着ているから、洗濯しようと思って…エーフィはどうしたの?」
「私は起きたら、ブラッキー君の姿が無かったから探してたんだ。そしたらコッチで音がしたから」
 二人はコインランドリー内の椅子に腰を掛けた。
「他の皆は?」
「サンダース君は私より先に起きてたけど、リーフィア君とグレイシアはまだ寝てる」
「僕が起きた時には、まだサンダースは寝てたけど、僕が店を出た直後に起きたのかな」
 二人が会話をしていた時、新たな来訪者が現れた。
「あ、サンダース」
 何時の間にか入り口の所にサンダースが立っていた。服装は白衣は昨日と同じだが、その下の服は紺色のシャツに灰色のジーンズという格好であった。
「おはようサンダース。サンダースも着替えたんだ」
 ブラッキーが言った。
「ああ、流石にあの服だけじゃキツイからな」
 そう言ったサンダースの手には、今朝まで着ていた神父服があった。
「おはようサンダース君。それ洗濯するの?」
 エーフィが尋ねた。
「折角だからな。着替えて此処に来てみたら、お前達が居た訳だ」
 そう言うとサンダースは、神父服を洗濯機に放り込んだ。洗濯機が動き出すと、ブラッキーが立ち上がった。
「じゃあ僕は、朝ご飯のパンでも探してくるよ」
「俺も手伝うぜ」
 サンダースが協力を申し出た。
「エーフィはリーフィア達を起こしてきて」
「うん」
 三人はコインランドリーを出て、行動を開始した。

※          ※

 一五分後、朝ご飯を集め終えたブラッキーとサンダースは、エントランスにてエーフィ、リーフィア、グレイシアと合流した。
「あ~マジねみぃ…」
 伸びをしながらリーフィアがぼやいた。
「ベットから落ちてまで爆睡してたくせに」
 隣に居たグレイシアが呆れる。
 ブラッキーは皆にパンを分け与え、皆其れを食べ始めた。
「んっ? おいブラッキー。何でそんなに缶詰や懐中電灯や電池まで持ってきたんだ?」
 ジャムパンを食べていたリーフィアが、ブラッキーに尋ねた。ブラッキーの隣には缶詰等が入ったレジ袋が置かれていたからだ。
「缶詰は今後の食糧として、懐中電灯は僕とサンダース以外は持ってないから、皆に配布する為に」
 そう言うとブラッキーは、レジ袋から懐中電灯と電池を取り出して、エーフィ、リーフィア、グレイシアに渡した。
 その後朝食を食べ終わり、8時半に出発する事を決めて解散した。

※              ※

 ガチャ…

 64式小銃の弾倉(マガジン)の7・62mm弾を確認すると、ブラッキーは弾倉を小銃に戻した。ブラッキーはエントランスの噴水で銃の確認をしていた。
「なあブラッキー」
「?」
 9m拳銃の確認をしようとした時、リーフィアが話しかけてきた。
「お前銃詳しそうだから、この銃何なのか分かるか?」
 そう言って差し出したのは、リーフィアが持っている拳銃だ。ブラッキーはその拳銃を手に取って確認した。
「二十六年式拳銃だね…旧日本軍で使われていた拳銃だよ。どこでこんな古い銃を手に入れたの?」
 リーフィアに二十六年式拳銃を返しながら尋ねた。
「いやその…お前らに会う前に、グレイシアがワンリキーに絡まれていてな…そいつから奪ったんだ」
「…まあそれより…」
 リーフィアの拳銃入手手段に戸惑うが、ブラッキーは話を続ける。
「弾は装填されているこれだけ?」
「ああ。アイツ弾は落とさなかったから」
「だとしたら装填されている六発だけか…もし発砲する場合は、余程の緊急時だけにした方が良いよ」
「ああ分かった。ありがとうな」
 リーフィアは礼を言うと、その場から去っていた。
 それから暫くして、出発の時間になった。
「じゃあ皆…出発するよ」
 小銃を片手に持ち、迷彩服や食料が入った荷物を背負ったブラッキーが、他の四人を見回しながら言った。
「良いよ。ブラッキー君」
 エーフィの言葉に、他の三人も頷いた。
「じゃあ出発しよう」
 五人はショッピングセンターを出て、先に進んだ。

※            ※

 進んでいる道は、前日と同じ様に草原の一本道だが、前日より人数が増えている為に、その分賑やかになった。
「へぇ~そうなんだ」
「うん。でね…♪」
 特にエーフィとグレイシアは、女の子同士という訳か、特に賑やかに騒いでいた。
「やたらに騒ぎまくるな、アイツ等」
「まあ女の子同士だからね。エーフィも楽しそうだし」
 呆れるリーフィアに、ブラッキーが言う。
「……」
 唯一人サンダースだけは、誰とも会話せずに一人で歩いていた。
「…アイツ、いかにも明るそうな顔してて、暗い奴だな」
 リーフィアがサンダースを見ながら呟く。すると突然サンダースが振り向いて、ブラッキー達に近づいてきた。
「な、何だよ」
 自分が言った事が気に障ったのかと思い、リーフィアは身構える。
「ブラッキー…あそこ道が分かれてるぞ」
 そう言ってサンダースが指さした所には、確かに分かれ道があった。一つは今まで同じ様に草原が続いている道。もう一つは森に繋がってる道であった。
「俺達昨日、この道を歩いてきたけど、あんな森の入り口、気付かなかったな」
 リーフィアが分かれ道を眺めながら言った。
「リーフィア達がこっちの道から来たのなら、森の方に行ってみよう」
 そうブラッキーは決め、五人は森の方に行った。
 森の中は静かであり、鳥のさえずりさえも聞こえなかった。そんな森の中の道を五人は歩き続けた。
「! ブラッキー君!」
 ブラッキー達の後ろでグレイシアと歩いていたエーフィが、ブラッキーを呼んだ。
「どうしたの? エーフィ」
 ブラッキーはエーフィの所まで行った。
「こっちに道があるよ」
 そう言ってエーフィが示したのは、森の中にある細い道であった。
「ん?」
 ブラッキーはその道の先に何かが有るのに気付き、64式小銃の照準眼鏡で道の先を見てみた。
「…鳥居だ…」

※             ※

 五人は森の小道の先にある鳥居の麓まで来た。
「随分古い鳥居だね…道はまだ続いているみたいだけど…」
「じゃあ行ってみようぜ」
 ブラッキーの言葉に、リーフィアは鳥居を潜って、一人で道を進んでしまった。
「あ、コラ!」
 その後をグレイシアが追い、サンダースも続いた。
「皆行っちゃったよ」
 エーフィが言った。
「僕達も行ってみよう」
 そう言い、二人は鳥居を潜って三人の後を追った。
「……」
 何故かブラッキーは、道が消えているのではないかと思い、鳥居の方を振り返った。……道はちゃんと有った。
 鳥居を潜って少し歩くと、広場らしき場所に出た。先に行った三人も広場で待っていた。
「ブラッキー、見てみろ」
 サンダースが広場の先を指さしながら言った。ブラッキーはサンダースが示した方を見てみた。
「…村だ…」
 広場から見下ろす先に有るのは、広大な広さを持つ村であった。

※             ※

 広場から坂を下りて村に入ると、左側に入れそうな家があった。窓の格子からは此方の様子を確認出来るみたいであった。
「…『…坂』古びてて読めないけど、この家に住んでる人の苗字だね」
 ブラッキーが扉の脇にある表札を見て呟いた。ブラッキーは扉に手を掛けると、その扉は簡単に開いた。
 ブラッキーは中に入り、エーフィも後に続いた。
 入ってすぐに正面にまた扉が有り、左には格子に遮られた部屋があり、灯りの灯っていない燈篭や赤い箱などが置かれていた。
「……」
 ブラッキーは嫌な感じをしながらも、先にある扉を開けた。
 扉の先には囲炉裏がある広い土間であり、土間続きの道はまだ続いており、囲炉裏の方にも二階に続いている階段があった。
「んっ?」
 ブラッキーは囲炉裏の脇に何かが書かれた紙が落ちているのに気付いて、、土間から上がって紙を拾った。

 ××さん ×××です。

 ・なた…に・・した
 い…に帰…ょう
 二人…出ら…かもし…。
 このメモ…ら、大声・・して
 
 
 私、近く……

 がんばって

 置かれていたメモは殆どが解読出来ない程であった。エーフィも傍に来てメモを見た。
「以前誰かが此処に来たんだ…でもこのメモの人どうしたんだろ…あれ?」
 その時ブラッキーはある事に気付いた。
「…サンダースとリーフィアとグレイシアは?」
「えっ!?」
 ブラッキーに言われ、エーフィは三人が居ない事に気付いた。
「…何処?」
 エーフィは静かに呟いた。

 グレイシア

「良いの? 勝手別ん所行っちゃって?」
 金属バットを肩に担ぎながら村の中を散策するリーフィアの後を、ブラッキーとエーフィ達が入った家を見ながら、グレイシアが不安気に呟いた。
「別に良いだろ? ガキの遠足じゃねえんだから」
 そう言いながらリーフィアは、奥へと進んでいく。
「…サンダースもどっか行っちゃったし」
 グレイシアは自分達が歩いている道と逆方向の道を見た。ブラッキーとエーフィが家に入った後、二人が入った家の先はT字路になっており、リーフィアとグレイシアは右に、サンダースは一人で左の道へと向かってしまった。
 グレイシアは仕方なく、リーフィアの後を追う。如何やら廃村らしく、一部の家の内部は倒壊していたりもした。
「お、蔵だ!」
 灯りの消えた燈篭を超えた先には大きな蔵があった。『立…』と半分消えた表札がある。
「開かねぇかな?」
 蔵の入り口に付いている錠を弄りながら、リーフィアが呟いた。
「んっ? こっちにまだ道が…」
 リーフィアを尻目に、蔵の横に道があるのに気付くグレイシア。その道を進むと倉の裏側に出た。
 裏側は小さな広場の様になっており、片隅には小さな地蔵がある。
「んっ?」
 蔵の裏に鉄格子の嵌った小さな窓の様な物があった。中から開け放たれている為、仲から外の様子が伺えるようであった。
「……」
 何故かグレイシアは、誰かが其処から見ている気がした。
「おっ、開いた!」
と、リーフィアの声が聞こえ、その場から逃げる様にリーフィアの元に向かった。
 戻るとリーフィアは、蔵の中に入ろうとしている所であった。その後をグレイシアも続いた。
「汚ぇな…」
 蔵の中に入ったリーフィアの第一声はソレであった。
「何これ? 牢屋?」
 ソレがグレイシアの第一声だった。
 蔵の中は埃だらけであり、中は牢屋の様な作りになっており、右側には階段があったが、階段の先は天井の低い隙間の様な所であり、一体の日本人形が置かれていた。
「誰も居ねぇよな…」
 牢屋には小さな扉があり、リーフィアはその扉を開けて中に入った。グレイシアもその後に続いた。
 牢屋の中もやはり埃だらけで、何年も人が居た形跡は無かった。
「…あれ?」
 グレイシアはある事に気付いた。蔵の入り口から正面には小さな窓の様な物があった。それは先程グレイシアが蔵の裏側で見た、鉄格子の嵌った窓であった。
「…閉まってる」
 窓は閉まっていた。それ処かその窓は、何年も開いた形跡が無かった。
「オイ、行くぞ!」
 何時の間にか蔵から出ていたリーフィアが、窓を見ているグレイシアに言った。
「あ、待ってよ!」
 グレイシアは慌てて牢屋、そして蔵から出た。…背後に誰かの気配を感じながら…。

 サンダース

 一方サンダースは、間に橋の掛かった二軒の家の間を抜けて、大きな門の前に居た。サンダースがその門を押すと門は簡単に開いた。
 門の先には大きな池があり、その池には一本の橋が架かっており、その先には大きな屋敷が見えた。
 サンダースは屋敷に向かって、橋を進んでいった。途中で池に誰か浮いている気がしたが、誰も居なかった。
 やがて橋を渡りきり、サンダースは屋敷の前に辿り着いた。サンダースは白衣のポケットから懐中電灯を取り出して、灯りをつけてから屋敷に入った。
「…廃墟か…」
 昼間なのに夜の様に薄暗い屋敷の中を見て、サンダースが呟いた。
「んっ?」
と、突然持っていた懐中電灯の灯りが点滅しだし、やがて消えてしまった。
「電池切れか…? 仕方ない。あとでブラッキーから貰うか…」
 サンダースは懐中電灯をしまい、代わりにネイルハンマーを取り出して屋敷の奥へと進んだ。

 ブラッキー

「サンダースもリーフィアもグレイシアも、何処に行ったんだろう?」
 先程サンダースが通った道を歩きながら、ブラッキーが呟いた。その後をエーフィが続いた。
 結局あの家には何もなく、仏壇のある部屋に蛇腹式の古いカメラが置いてあっただけであった。
 やがて二人はサンダースが入った門の前に辿り着いた。
「此処が村の奥みたいだね」
「ブラッキー君。入ってみようよ」
「そうだね」
 エーフィに保されて、ブラッキーは門を開ける。そして門の向こうにある池の前に出た。
「大きな屋敷がある…この村の村長の家だったのかな?」
 池の向こうにある屋敷を見て、ブラッキーが呟いた。
 二人は橋を渡って、屋敷の前へと辿り着いた。
「『黒…』読めないね…」
 表札を見て呟くブラッキー。すると玄関が開いているのに気付き、ブラッキーは中に入ってみる。
 中に入るとブラッキーは、L字型ライトを取り出し点灯する。しかし…
「あ、あれ?」
 灯りを点けた途端、ライトは点滅し始め消えてしまった。
「どうしたの?」
 後から入って来たエーフィが、ブラッキーに尋ねた。
「いや、電池が切れたみたい…まあ、少し薄暗いけど見えるから良いか…エーフィは外で待ってる?」
 何処となく不気味な屋敷の雰囲気から、エーフィは外で待つ様に進める。
「ううん平気。怖くないよ」
「…分かった」
 エーフィに笑顔で言われて、ブラッキーはエーフィと共に屋敷の探索を行う。
 入って真っ直ぐの廊下の先はT字路になっており、ブラッキー達は右に進もうと、扉に手を掛けた。その時…


 かーごめ かーごめ

 かーごのなーかの とーりーがー

扉の向こうから人の声が聞こえて来た。

 いーついーつでーあーう よーあけーのばんにー

 つーるとかーめが すーべった

 ブラッキーは、扉の先に気配を感じながら扉に手を掛けた。

 うしろのしょーめん だーあれ

 ガラッ!!!

『れ』と同時にブラッキーは、扉を勢いよく開けた。
「あれ…?」
 エーフィは不思議そうな声を出した。扉の先は階段のある物置であったが、其処には誰も居らず、部屋の真ん中にこけしが四個転がっているだけであった。
「…まさかね…」
 ブラッキーとエーフィは、こけしを見つめながらも、奥にある階段を上がって行った。
 階段を上がった先にあった衝立の部屋を抜けて、更に奥の部屋の扉を開ける。
「此処は…この屋敷の主の部屋かな…」
 その部屋は個人の部屋にしては広く、表紙がボロボロであるが数多くの書物が収められた本棚が幾つもあり、唯一本棚が無い壁には、掛け軸を飾る床の間があった。
「!」
 するとブラッキーは床の間に何かを見つけ、床の間に近づいた。
「どうしたの…? あっ…」
 エーフィはブラッキーの肩越しに、ブラッキーが気付いた物を見つけた。
 それは黒い漆塗り鞘に収まれており、鞘も同じ様に黒い柄巻きに覆われた、一振りの日本刀であった。
 ブラッキーは小銃を床に置くと、その日本刀を手に取った。刀の鞘は紐で封印されていたが、ブラッキーはそれを解いて鞘から抜いた。
 黒い鞘から抜かれた刀身は銀色に輝いており、長さもかなりあった。更に刀身の根元近くには三日月の透かし彫りが彫られていた。
「…これ…『神風』だ…」
「えっ? 何?」
 尋ねるエーフィに、ブラッキーは刀を鞘に納めて答えた。
「僕の家に代々伝わっている刀…それがこの『神風』なんだ…。神風は僕の家の家宝だから、滅多に外には出さないんだけど、僕も数年前に父さんに見せてもらったんだけど…何でここに?…不思議な刀だよ…」
「どうして、不思議なの?」
 エーフィが尋ねた。
「…父さんから聞いた話だけど…神風は僕が生まれるずっと前…僕の曽祖父が当主だった頃、突然空から降って来たらしい…」
「空から?」
「うん…それで曽祖父は神様がくれた物だと思って、それ以来うちの家宝として語り継がれてきたんだけど…それがどうしてこの村に…」
「…もしかして…ブラッキー君を追って来たとか?」
 我ながら変な事と思いながらも、エーフィはブラッキーにそう告げた。しかしブラッキーはエーフィを変な目で見ず、穏やかな表情で笑って言った。
「そうかも知れないね。こんな状況だから、少しでも武器が多いと助かるし、僕もそう思うよ…」
 そう言うとブラッキーは、神風をズボンのベルトに差し込んだ。
「さ、サンダースを探そう」
「うん」
 ブラッキーとエーフィは、サンダースを探す為に再び散策を始めた。
                                        
  サンダース

 ザザッ

「……」
 襖を開けて室内を見た瞬間、サンダースは顔を顰めた。
「何だコレ…?」
 襖の先の部屋は真ん中に囲炉裏がある大広間だった。だが、その大広間の状況が異様であった。壁や床や囲炉裏のある所の周りの畳や其処にある屏風まで、全て赤い染みが存在したからだ。
「…血か?…何があったんだ、この村…」
 大広間の惨状に言葉を漏らしながら、サンダースは板の床の所を歩いた。畳の箇所の角を曲がった時、念の為に38口径の拳銃を取り出そうとした。
「あっ…」
 誤って手を滑らせて、拳銃を床に落としてしまった。サンダースは拳銃を拾おうと、床に屈んだ…その時…拳銃の先に倒れた人の足が視界に入った。
「!!!」
 サンダースは慌てて立ち上がった。しかし、拳銃の先には足などなかった。
「?…」
 気を取り直して、サンダースは再び拳銃を拾った。
「アハハ!!! アハハハハハハ!!!」
 すると突然、サンダースが背にしていた囲炉裏の方から、女の狂笑が響いた。
「!!!」
 咄嗟的にサンダースは、拳銃を持った右手をそっちに向けた…其処には誰も居なかった。
「……こんな村に居たら…幻聴くらい聞くよな…」
 サンダースは自虐的に呟くと、再び歩き出した。

 シャワーズ

 シャワーズとブースターは、再び和人形がある部屋へと戻った。
「シャワーズ…」
 ブースターは不安そうにしている。
「大丈夫だよ。きっと此処までは…」
 無理に作った笑顔でシャワーズが言った時だった。

 ガタッ

「!」
「!」
 二人が居る部屋の前の扉が開けられる音がした。
「…お姉ちゃん。隠れてて…」
 ブースターを衝立の所に置いて、シャワーズは扉の所に行き身構える。
「シャワーズ…」
 ブースターは声を掛けるが、シャワーズは笑顔で返した。

 ガタッ

 とうとう二人が居る扉を開け始める相手。シャワーズは突進する覚悟を決める。

 ガラッ!

 扉が開いたと同時に、シャワーズは相手に向かって突撃した。

 サンダース

「このぉ!」
「!?」
 突然突進してきた青い影にサンダースは驚くが、それでも受け身は取れ、その影の腕をつかんだ。
「離してよ!」
 大声で叫ぶその影は、女の子の様であった。
「落ち着けよ。俺は別に屍人でも怨霊でもねぇよ」
「…えっ?」
 顔を上げるその影の正体は、シャワーズであった。
「俺は元人間で…って分かるか? 人間って? 異変の謎を探ろうと仲間と旅をして、この村にやって来ただけだ」


『ワードのログを見ると、3年もいじっていなかったロト…予定では最後まで書いてからでしたが、あまりにも間が空いたので、此れで投稿したロト。ごめんなさいロト』









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Last-modified: 2018-07-14 (土) 23:26:51
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