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ブイズ・エレメンタリーズ 3 出会う仲間 草 氷

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ブイズ・エレメンタリーズ 3 出会う仲間 草 氷

                        作・桜花


 とある夜の廃墟地に二人の人影があった。
「マジでどうなってるんだよ!」
 黒い上着に着ていてジーンズを履いている、金属バットを持っているリーフィアが言った。
「そんなのアタシにだって、分かるはずないでしょう!?」
 そう答えたのは、紫色の派手な柄の服を着ているグレイシア。傍らには手提げが置かれている。
「センターの帰りに地震が起きて、俺達気絶してたと思ったら、何かこんな姿になってるしよ!」
 リーフィアは自分の茶色の手を見ながら呟いた。一方グレイシアは携帯を弄っていた。
「駄目だ、施設にも繋がらない…アンタのは?」
 グレイシアの言葉を受けて、リーフィアはジャケットから携帯を取り出し確認してみた。
「チッ…」
 携帯を見るなりリーフィアは、舌打ちをして携帯をしまった。
「電池切れだ」
「はぁ? アンタ馬鹿じゃないの!? 何で充電しとかないの!?」
「うるせぇな! 昨日寝る前にやんの忘れたんだよ!」
 そう怒鳴るとリーフィアは、バットを持ったまま何処かに歩き出した。
「何処行くのよ!」
 グレイシアが言った。
「ションベンだよ!」
 そう言うとリーフィアは、廃墟の奥へと消えた。
「ハァー…」
 グレイシアは溜息を吐いた。
「!」
とその時、グレイシアは何かを感じ、後ろに振り向いた。すると暗闇から人影が現れた。リーフィアではない。リーフィアが着ているジャケットより、更に派手な柄のジャケットを着たワンリキーだ。
「うん? 何でお前俺が来るのが分かったんだ?」
 ワンリキーはグレイシアの顔を見るなり、不思議そうに尋ねた。
「…そんなのアンタには関係ないでしょ!? アタシに何か用?」
 グレイシアは強い口調で尋ねた。グレイシアは分かっていた。このワンリキーは危険だと…。
「いやさ、さっき誰かと話してるのが聞こえてさ。来てみたら結構美人のグレイシアが居るじゃんか…良かったら俺と来ないか!?」
ワンリキーの言葉にグレイシアは呆れて言い返す。
「ハァ!? 何でアタシがアンタ何か…」
 そこでグレイシアは言葉を止めた。何故なら…ワンリキーの手には拳銃が握られていたからだ。
「痛い目あいたくないだろ? 俺と行こうぜ?」
 嫌らしい口調で言うワンリキーが言う。グレイシアは悔しげな表情をする。しかし次の瞬間、ワンリキーの背後に見えた、黒の上着にクリーム色の体色の人物を見て表情を変えた。
「ん? 何だ?」
 グレイシアの表情の変化に気づき、後ろに振り返ろうとする。しかし…
「ウォラ!!!」
「がっ!?」
 ワンリキーが振り返る寸前、その背中に蹴りが入った。蹴りを入れたのは先程小用に行ったリーフィアであった。
 蹴られた衝撃でワンリキーは、手に持っていた拳銃を落とした。拳銃は落ちた衝撃で5m程離れた所まで滑っていった。
「!」
「!」
 リーフィアとワンリキーは同時に気づき、拳銃を拾おうとして動いた。しかしリーフィアはまるで野球選手の如くの瞬発力で飛び掛かった。

 ダッ!!!…ガチャ…

 拳銃を手に取ったのは…リーフィアであった。
「俺の女に手出すなんて…テメェいい度胸してんじゃねえか…」
と、ワンリキーに拳銃を向けながらドスの利いた口調でリーフィアは喋るが、愛くるしいリーフィアの顔では、対して迫力は無かった。実際ワンリキーはリーフィアの口調より拳銃に危機感を感じていた。
「…チキショウ!」
 そう吐き捨てるとワンリキーは、踵を返して逃げて行った。
「大丈夫か?」
 リーフィアが立ち上がりながら、グレイシアに尋ねた。
「まあ何とかね…てかさ! もう少し早く助けに来なさいよ!」
 グレイシアが文句を言う。
「しょうがねえだろ! ションベンして戻ったら襲われてる何て、誰が想像出来んだよ! つうかお前のあの『能力』で分かんなかったか?」
と、リーフィアはグレイシアの何かについて尋ねた。グレイシアは頭を片手で抱えながら言った。
「…混乱してて、それ処じゃなかった…その拳銃どうするの?」
 グレイシアに言われて、リーフィアは先程手に入れた拳銃を見た。拳銃はリボルバー式で装弾数は6発、かなり古い感じの拳銃だった。
「頂いちまおうぜ! こんな訳の分かんねぇ状態だから、俺のバットだけじゃ不安だろ?」
「そりゃそうだけど…」
「ほら行こうぜ!」
 そう言うとリーフィアはバットを担いで移動しようとする。
「何処に行くのよ!?」
 グレイシアが尋ねる。
「こんな廃墟に、何時までも居ても意味ねぇだろ? 誰かまともな奴が居る所探すんだよ。早く来ねぇと置いてくぞ!」
「あちょっと! 待ちなさいよ!」
 グレイシアは傍らに置いてあった手提げを取り、リーフィアの後を付いて行った。

 エーフィ

「う~ん…」
 朝日を顔に浴びて、エーフィは目を覚ました。目を覚ましたエーフィの目の前には、スヤスヤと寝息を立てているブラッキーの顔があった。
 エーフィは慌てて起き上がるが、昨夜の事を思い出し赤面する。
「私…大胆だったな…」
 ブラッキーの寝顔を見つめながらエーフィは呟いた。すると…
「ん?…」
 その時エーフィは、ブラッキーの背後に何か黒い物が見えた。
「何だろ?」
 エーフィはベットから降りると、ブラッキーの背後に回った。
「?」
 其処に在ったのは、布団から飛び出している、見様によっては黒で金の帯模様が入ったラグビーボールか黒いコッペパンに見えるブラッキーの尻尾であった。
「…柔らかそう」
 エーフィは好奇心によりブラッキーの尻尾に触ってみた。

 チョン…

「ふぁ…」
「(焦)!?」
 尻尾に触れた途端、ブラッキーが妙な声を上げた。エーフィは慌てて手を離して、ブラッキーの顔を覗いてみた。
「クゥー…クゥー…」
 ブラッキーは眠ったままであった。どうやらあの声は眠ったまま出た様だ。
 そんなブラッキーに対してエーフィは…
「昨日(故意だけど…)私の耳触ったから…お返しね♪」
 
 スリスリ…モミモミ…
 
 エーフィは今度は両手で摩ったり揉んだりした。
「ふ…はぁう…あ…やん…」
 尻尾を触られる度に、眠っているブラッキーから甘い声が漏れる。
「はあ…はあ…」
 エーフィはブラッキーの甘くて可愛い声にすっかり興奮してしまったが、これ以上やると起きてしまう為、エーフィは自分の服を持って寝室を出て行った。

 ブラッキー

「うう…ん…」
 エーフィが出て行ってから約十分後、ブラッキーは目を覚ました。
「うん…?」
 ブラッキーは尻尾に違和感を感じた。
「何か尻尾がむず痒いな…何だろう?」
 ブラッキーはその違和感が起きている理由が分からなかった。当然ながらエーフィに触られていた時の声も覚えていない…。
「エーフィ、先に起きたんだ…」
 昨夜まで隣に居たエーフィが居ない事に気づき、ブラッキーはベットを降りた。

※          ※

 迷彩服に着替えて、小銃を片手に持ちながら台所に行くと、エーフィとサンダースが朝食の用意を終えた所であった。
「何だブラッキー、起きるの遅かったな」
 サンダースに言われて、ブラッキーは腕時計で時間を確認する。既に八時半である。
「ゴメン、熟睡しちゃったみたい…」
 照れながらブラッキーは言った。
「まあ良いさ、朝飯食おうぜ」
「うん」
 三人は食卓に着くと
『いただきます♪』
 声を揃えて言った。

  ※         ※

「でっ、これからどうするんだ?」
「えっ?」
 食器を洗っていたブラッキーに、サンダースが背後で腕を組みながら尋ねた。ちなみに食器洗いはブラッキーが自分から、『朝ご飯の手伝いをしなかったから』と言い、自主的に行っている。
「此れから何処に行くんだって事だ…」
 静かな口調でサンダースが再度言う。
「ああうん…とりあえず昨日とは、反対の方向に行こうと思ってるんだけど」
 最後の食器を洗い終り、手をタオルで拭きながらブラッキーが言った。
「そうか…俺自分の荷物を準備してくるから、お前とエーフィも用意しておけよ」
「うん」
 サンダースは自分の自室に向かい、ブラッキーはエーフィの居る寝室に向かった。
 寝室に着くとエーフィがベットに座って待っていた。ブラッキーは先程のサンダースとの事を話し仕度を始めた。
 ブラッキーは一度カバンの中身をベッドの上に取り出し、全て確認すると再びしまい始めた。すると最後に残っていた、もう一つのゴーグルをエーフィが手に取って見ていた。
「!」
「!」
 ブラッキーはエーフィがゴーグルを見ている事に気づき、エーフィはブラッキーが自分を見ている気づき、恥ずかしながらゴーグルをベッドに置いた。
「……」
 ブラッキーは無言でゴーグルを取り、笑顔でエーフィに差し出した。
「あ、いやその…」
 エーフィは自分が催促したみたいに思い慌てたが…
「あげるよ♪」
 ブラッキーは無邪気な笑顔で差し出した。
「…ありがとう…」
 エーフィは顔を赤くして、ブラッキーからゴーグルを受け取った。
「おーい、そろそろ行くぞ!」
と、サンダースの声が聞こえた。
「行こう! エーフィ」
「うん! ブラッキー君」
 ブラッキーの言葉に、エーフィはブラッキーと同じ様にゴーグルを着けながら返事をした。そして二人は部屋を出た。

※            ※

 サンダースの家を出た三人は、草原の間にある道を歩いていた。当初ブラッキーは何の障害物の無い道を歩くのは危険かと考えたが、常に小銃を両手で持っていながら、警戒を持つ事で行く事にした。
「ブラッキー、あんまり警戒するなよ」
 片手に拳銃を持ちながら腕を組んでいるサンダースが言った。
「うん。僕もそうしたいけど、こう見晴らしが良いと、何処からでも襲われる可能性があるから…」
「真昼間に襲ってこないだろ」
 サンダースは自分が夜に襲われた為、そう考えていた。
「其れに襲って来たりしても、こっちには銃が三丁もあるから、まず負けないだろ」
「…それもそうだね」
 サンダースに諭されて、ブラッキーは警戒を解き小銃をベルトで肩に背負った。
「それにしてもお前達、お揃いでゴーグルなんて着けて…まるでカップルだな」
 ブラッキーとエーフィを見ながらサンダースが言った。すると二人は顔を赤くした。
「こ、これはその…僕がゴーグル着けてたら、エーフィが自分を付けたがってたからあげたんだ! ねっエーフィ?」
「う、うん。ブラッキー君が着けてたから…サンダース君変な事言わないでよ!」
と、二人は慌てて弁論した。しかしサンダースは、フッと笑って言った。
「…そう必死で否定する所が、余計に怪しいな…」
 顔を赤くする二人を尻目に、サンダースは前を見た。すると…
「!…あれは…」
 サンダースの視線の先には、大きな建物があった。
「あれは何だろう?」
 ブラッキーはサンダースの横に立つと、荷物から双眼鏡を取り出して、建物を観察してみた。
「…あれは確か…ショッピングセンターだ! 少し前に多摩市の方でオープンするってテレビで宣伝していた」
 ブラッキーは双眼鏡をサンダースに手渡した。サンダースは双眼鏡で見ながら言う。
「何でそのショッピングセンターが、あんな所にあるんだ?」
「多分、僕らと同じ様に飛ばされたか…サンダースの家もそうでしょう?」
 ブラッキーは小銃の照準器で見ながら言った。するとエーフィが…
「ねえブラッキー君。もしかしたらあそこに、誰か居るかも」
 エーフィに言われて、ブラッキーはハッとする。
「そうだよ! 僕らの世界から来たなら、もしかして誰か居るかも知れない!」
「行ってみましょう!」
「…そうだな。行ってみるか」
「よし行こう! エーフィ、サンダース」
「うん!」
「ああ!」
 三人はショッピングセンターに向かう事にした。

  ※      ※

 ショッピングセンターの中には、ブラッキーとサンダースの間にエーフィを挟む様にし、ブラッキーは前方と左、サンダースは後方と右を見張り、銃を構えながら入って行った。
 ショッピング・センターの中は閑散としており、人の気配など感じる事は無く、店内には音楽が響いていた。
 陽気な音楽が流れる中、ブラッキー達は警戒しながら進み、近くには誰も居ないと確信すると、真ん中にある大きな噴水の縁に寄った。
「誰も居ないみたいだね」
 小銃に安全装置を掛けながら、ブラッキーが言った。
「誰も居ないのに音楽が流れてて、尚且つ入り口が開いていたって事は、店だけこの世界に来たのか?」
 サンダースが辺りを見回しながら言った。ブラッキーは上を見上げる。
「二階には誰か居るかも知れない…僕が見てくるよ」
「あっブラッキー君。私も行くよ」
 ブラッキーが動いているエスカーレターの方に歩こうとした時、エーフィが声を掛け同行を求めてきた。
「いいよ。僕一人で大丈夫だから」
「ううん。大丈夫だから行かせて」
 尚も同行を求めるエーフィに、ブラッキーは折れる。
「分かった行こう…サンダースは?」
 ブラッキーが尋ねると、サンダースは一階にある書店の店舗を見つめた。
「俺はあそこで立ち読みでもしている。何かあったらコイツでも鳴らすさ」
 そう言うとサンダースは拳銃を掲げた。
「じゃあ気をつけて」
 ブラッキーはそう言うと、エーフィと共に二階に上がった。

※           ※

 二階を探索した二人だが、二階にも特に人影は見当たらなかった。
「誰も居ないみたいだね…」
 ブラッキーは小銃をベルトで肩から下げた。
「そうだね…あっ!」
「? どうしたの?」
 エーフィの声に反応し、ブラッキーがエーフィの方を向くと、エーフィは服屋の店舗を見ていた。
「ブラッキー君、此処少し見て行かない?」
 エーフィはどうやら、この店が気になる様だ。
「う~ん…そうだね。僕達以外には誰も居ないみたいだから良いよ」
「ほんと、じゃあ行こうよ!」
 そう言うとエーフィは、ブラッキーの手を取り店に入った。
「あちょっ…」
 いきなり手を握られたブラッキーは、抵抗できずに照れた様子で引き込まれた。
 店舗の中には様々な服等が売られていた。
 ブラッキーが店内をキョロキョロと見ていると、何時の間にかエーフィは何着かの服を物色していた。どうやらエーフィは服を着替えるつもりらしい。
「良いのかな? 勝手に持ち出して」
 苦笑いを浮かべながらブラッキーはエーフィに話しかける。
「大丈夫だと思うよ! 多分此処もあの異変に巻き込まれた所だと思うから、私達みたいな人が居なければ大丈夫だと思うよ!」
と、腕の中に何着かの服等を抱えたエーフィが言った。
「ちょっと着替えるから、ブラッキー君も何か選んだら?」
「う、うん…」
 まだ無断で持ち出す事に戸惑いを持つブラッキーの返事を聞くと、エーフィは服を抱えたまま店内にある試着室に入っていった。
「ふぅ…」
 仕方なくブラッキーは、試着室から離れた所に行き、服を物色し始めた。
「…そういえば、以前シロン達と服を買いに行った時も、シロンやシアンに色々進められたのに、結局何も買わなかったな…」
 ブラッキーは人間だった時の事を思い出し、静かに呟いた。
「シロンは、『気にすんなって! 何時か俺がお前に似合う服を見つけて、シアンと親密にになれる様にするさ!』って言ってたね…もうシロンは…あの時聞かれて無かったけど、シアンに聞かれてたらどうするんだ…」
 その時の事を思い出しながら、ブラッキーは『シロン』という人物に対して文句を呟いた。
 やがてブラッキーは何着かの服を選んで、エーフィが出てくるのを待った。

 リーフィア

 一方その頃リーフィアとグレイシアは、只々道を歩いていた。すると…
「! あれ何だ?」
 そうリーフィアの示す方向には、大きな建物が建っていた。
「…あれこの間オープンした、多摩にあるショッピングセンターじゃん」
 グレイシアが建物を見ながら呟いた。
「マジか!? じゃあ食い物があるんじゃねえか!」
 空腹なリーフィアは、食べ物があるのでは無いかと思い興奮した。
「行ってみようぜ!」
「あっ、待ってよ!」
 リーフィアはショッピングセンターに向かって走りだし、その後をグレイシアが慌てて追った。
 走ったおかげであっという間に、二人はショッピングセンターに辿り着いた。すると入ろうとした瞬間、グレイシアが足を止めた。
「…誰か居る…」
「…感じたのか? 何人だ?」
と、リーフィアはグレイシアの謎の言葉に慣れた様に返した。
「三人…二人は二階で、一人は一階に居る…」
「よし…一階の一人に警戒して、食い物だけ頂いてズラかろうぜ」
「分かったわ!」
 二人はそう言うと、ショッピングセンターに入って行った。

 ブラッキー

「どうかな…?」
 そう言いながらエーフィはブラッキーに着ている服を見せる。白のシャツに青のジーンズの上着、そして同じく青のジーンズ生地のショートスカート。勿論ショートパンツには尻尾を通す穴を開けていた。
「うん、似合っているよ!」
 ブラッキーは笑顔で言った。それはお世辞ではなく、本心からの言葉であった。
「ありがとう♪ ブラッキー君も着替えるの?」
「うん、だから少し待ってて」
 ブラッキーはエーフィと変わる様に試着室に入った。
 試着室に入ったブラッキーは、迷彩服の上着と中に着ていたシャツを脱ぎ、店内で手に入れた白いシャツを着こんだ。次にズボンを履く為に、迷彩服のズボンを脱ごうとしたが、その前に…
「エーフィ居る?」
 試着室の外に居るエーフィに話しかけた。
「うん居るよ!」
「…ハサミある?」
 ブラッキーが尋ねると、エーフィは試着室のカーテンの下からハサミを差し入れた。ブラッキーはそのハサミを使い、ズボンのお尻の辺りに穴を開けた。尻尾を通す為の穴だ。
「…穴が大きかったら、笑い者だよね…」
と、穴の大きさに心配しながらも、ブラッキーはベルト外してズボンを脱ぎ、新しいズボンを履いた。幸いにも穴の大きさはブラッキーの尻尾を同じであった。
 最後にブラッキーは9m拳銃のホルスター付きのベルトを装着して試着室を出た。
「どうかな…?」
 先程のエーフィと同じ質問を、今度はブラッキーがした。
「とっても良く似合ってるよ」
 エーフィに良い感想を言われ、ブラッキーは少し照れる。
「…私の友達の男の子も、ブラッキー君みたいに上手く選べたら良いのにな…」
 ポツリと言ったエーフィの言葉に、ブラッキーが反応する。
「エーフィに男の子の友達が居るんだ…」
 するとエーフィは慌てた様子で弁解する。
「あ、でも! 友達だからね! 友達!」
 あまりにも慌てるエーフィに、ブラッキーはクスリと笑ってしまった。

 リーフィア

「でっ? 一階の奴は何処に居るんだ?」
 店内に入ったリーフィアが、金属バットを肩に担ぎながら、少し後ろに居るグレイシアに尋ねた。グレイシアは目を瞑って精神を集中させた。
「…奥の方に居るみたい…向こうから来るか、大きな音でも出さない限りは、一階に居る奴に気付かれないと思うけど…」
「んじゃ、さっさとあの店から頂いてズラかるぞ!」
 リーフィアは近くにある食品売り場の店舗をバットで指しながら言った。その様子は何処か楽しそうであった。
「…はぁ…」
 一方グレイシアは盗みをやる様な気がして、気が気にならないのだ。

 サンダース

 その頃サンダースは、ショッピングセンターの奥の方にある書店で、自動車関連の本を読んでいた。サンダースの周りには読み終わった本や雑誌が置かれていた。

 がらがらがしゃーん!!!

とその時、サンダースの耳に缶か何かが大量に落ちた音が届いた。
「…ブラッキーか?」
 サンダースは当初、ブラッキーかエーフィのどちらかが、何かを落としたのかと思った。しかしサンダースは何故かその音の主が気になり、白衣のポケットにあるネイルハンマーを握りしめて書店を出た。

 リーフィア

「バカ! 何やってんのよ!」
「うるせぇな! デケェ声上げんじゃねえよ!」
 激しく口論するリーフィアとグレイシア。床には缶詰が大量に転がっており、どうやらリーフィアが落としたらしい。
「!?」
と、突然グレイシアが、店舗の入り口がある方を見た。
「やば…今の音で誰か来る」
「くそ! 下の階に居た奴か!? お前は其処で待ってろよ!」
 リーフィアはぶっきら棒にグレイシアに言うと、バットを構えて入り口の方に向かった。
「あのバカ、まさか戦う気じゃ!」
 グレイシアは慌ててリーフィアの後を追った。

 サンダース

「この店の中か…」
 サンダースは音の発信源である店舗を見つけた。サンダースはネイルハンマーを握り締めて店の中に入った。すると…
「ウォラ!」
「!?」
 金属バットを持ち、黒いジャケットの着込んだリーフィアが、商品棚を飛び越えて突然現れた。
 サンダースはリーフィアからの攻撃を避けて、しゃがんだまま白衣のポケットにある38口径警察銃を掴んだ。
『いや…コイツを使う必要は無いな』
 そう心の中で呟き、38口径警察銃を出さなかった。サンダースは立ち上がり、ネイルハンマーを持ち直し、リーフィアに向かって尋ねた。
「誰だお前! いきなり攻撃をしてきて、何のつもりだ」
「悪いな。俺に気付いたのが、お前の運の尽きだ」
 そうリーフィアは言い放つと、再びサンダースに向かって攻撃をしてきた。サンダースは先程リーフィアが飛び越えてきた時に落ちた商品を見つけ、咄嗟にそれをリーフィアの顔面に向かって蹴り上げた。
 リーフィアは其れをバットで振り払う。しかし一瞬だけサンダースから気が逸れてしまい、その隙にサンダースはリーフィアに向かって飛び蹴りを放つ。
「らぁ!」
「ぐっ!」
 飛び蹴りを食らったリーフィアは、商品棚にぶつかって倒れこむ。

 ブラッキー

 ガシャーン!!!

「!」
「!」
 先程からする音が気になり、ブラッキーとエーフィは店舗を飛び出して、二階から下の階を覗き込んだ。
「……」
 ブラッキーは小銃のマガジンを外して、弾薬が入っている事を確認する。そして確認を終えると再びマガジンを装填する。
「ブラッキー君…」
 エーフィが心配そうな声を漏らす。
「エーフィ。さっきのお店で隠れてて! 僕は下の階を見てくるよ。どうもサンダース一人じゃないみたいだ…。最悪の場合もあるかもしれない…そうなった時は、君一人で逃げてほしい…」
 そう言うとブラッキーは、エスカレーターの方に向かった。
「ブラッキー君」
 エーフィがブラッキーを呼び止めた。ブラッキーはエーフィの方を振り向いた。その顔はとても落ち着いていた。
「…気を付けて」
「…ありがとう」
 エーフィにそう告げると、ブラッキーは小銃を構えてエスカレーターを下っていった。
 ブラッキーは物音が響いている店舗の入り口まで行くと、入り口脇の壁際に背を向けて小銃を下げた。
「……」
 ブラッキーは上着のポケットから、一冊の写真ケースを取り出し、それを見開いた。中には三枚の写真が入っていた。
 一枚目は男子生徒二人と女子生徒二人が写った写真。二枚目は一枚目の男子生徒二人だけの写真。そして三枚目は男子生徒一人と女子生徒一人の写真。
 これらの写真は、全てブラッキーが人間だった頃の写真であった。しかしその三枚全ての写真には、ブラッキーの元の姿の顔の部分だけ、白く消されていた。それに気づいたのは、今朝出発前の荷物整理の時であった。
 ブラッキーはその内、人間時代のブラッキーと男子生徒だけが写っている写真を見つめた。男子生徒は太陽の様な笑顔を向けていた。
「シロン…君みたいにやれる様に頑張るよ…」
 写真の男子生徒―夕日 白龍ことシロン-にそう呟くと、ブラッキーは写真をケースにしまって上着に戻し、再び小銃を構えて店内に潜入した。

 サンダース

「はあはあ…」
「はあはあ…」
 サンダースとリーフィアは、戦闘によって息を切らせていた。そしてお互いの打撃武器は既に手元に無く、離れた所に転がっていた。
「やべぇなコリャ…」
 リーフィアはサンダースを見る限り、自分の方が体力が残っている様に見えた。しかしこのまま続けていては埒が明かない…そこで
『コイツを使うか…』
 リーフィアは上着のポケットに手を入れた。其処には前日手に入れた拳銃が忍ばせてあった。
『コイツで脅かして逃げてやる』
 サンダースはリーフィアの動きに気付いておらず、リーフィアは拳銃を取り出した。
「動くな! 銃を捨てるんだ!」
「!?」
 突然サンダースのではない声が響き、リーフィアは其方を見た。其処には64式小銃を構えたブラッキーが立っていた。
「ブラッキー…」
 サンダースがブラッキーの見て、安心した声を漏らした。
「くそ…二階に居た仲間か…」
 リーフィアは悔しげに呟く。
「銃を捨てて、両手を頭の後ろで組んでしゃがむんだ!」
 小銃を構えたままブラッキーは言い放つ、引き金に指は当てられていないが、それでも何時でも発砲出来るという雰囲気を持っていた。
「ちきしょう…」
 リーフィアは悔しそうに拳銃を投げ捨てて、後頭部に両手を当ててしゃがんだ。
「訳分かんねぇ事になって、こんな姿になって、ツイてねぇな俺…」
「えっ!?」
 リーフィアの言葉にブラッキーが反応した。
「もしかして君…人間なの?」
「はあっ?」
 突然のブラッキーの言葉にリーフィアは呆気に取られた。

 ブラッキー

「お前らも元は人間なのかよ」
 ブラッキーから自分達の素性を聞いた、リーフィアが言った。リーフィアには既に金属バットと拳銃は返されていた。
「うん。それで僕とサンダース、それと二階に居るもう一人の三人で、この異変を調べようとしているんだ」
「で、俺達が歩いていたら、このショッピングセンターが在って、中に入って休むなり何なりやってたら、お前が来て俺に攻撃を仕掛けたって訳だ」
 サンダースがブラッキーの言葉を引き継いで言った。サンダースはまだリーフィアに対して怒りの感情がある様だ。
「いやだからさぁ! こんな状況だろ!? 何あるか分かんねぇじゃんか!」
「それで攻撃かよ…」
 陽気に言うリーフィアに、サンダースが呆れながら言い捨てる。
「リーフィア!」
とその時、店内の奥からグレイシアがやって来た。
「その子は? 服装と声から女の子みたいだけど」
 ブラッキーが尋ねた。
「ああ、コイツはグレイシア…勿論本名じゃないが…貧乳だけど俺の彼女だ!」

 ドガァ!!!

『貧乳』と言った途端、リーフィアの頭にグレイシアの拳が叩き込まれる。
「貧乳は余計! 馬鹿サラダ」
 怒った表情で拳を固めているグレイシアであった。
「…って事は彼女も元・人間だね…」
 苦笑い気味にブラッキーが言う。
「ん? 誰?」
「……」
 どうやらグレイシアはブラッキー達の存在に気付いていなかった様だ。
「くっそ…マジで殴んなよ」
 リーフィアが頭を押さえながら言う。
「だったらいちいち怒らせる様な事言うな! 大馬鹿植物!」
「彼氏の頭、本気で殴る奴が居るか! 占いオタク!」
「あっ、あの!」
 険悪な状態になろうとしたので、ブラッキーが慌てて声を掛ける。
「実は僕らの仲間が、まだ上に一人居るんだ。だから連れてくるね」
 ブラッキーはそう言って店を出た。ブラッキーの突然の言葉に喧嘩する気が失せたのか、リーフィアとグレイシアは喧嘩を辞めた。
「…はぁ…」
 サンダースは静かに溜息を漏らした。

 エーフィ

「ブラッキー君。大丈夫かな…」
 エーフィが心配そうに下を覗いている。するとブラッキーが走って来て、エスカレーターを上って来た。
「あ、ブラッキー君」
 エーフィはブラッキーに駆け寄った。
「大丈夫だった?」
「うん平気だよ。それよりね…」
 ブラッキーはエーフィに、リーフィアとグレイシアの事を話した。
「じゃあ私達みたいな人達が、まだ居たんだ」
「うん。二人とも危険性は無いから、エーフィも行こう!」
「うん」
 二人はエスカレーターを下りて、リーフィア達の居る店に向かった。

※        ※

「連れて来たよ!」
 ブラッキーがエーフィを連れて来ると、サンダース、リーフィア、グレイシアは店内にあった缶ジュースを飲んで寛いでいた。するとリーフィアがエーフィを見て目を開いた。
「うおっ! 巨乳♪」
 リーフィアがエーフィの胸の事を言った一秒後、グレイシアの拳がリーフィアの顔面に炸裂した。
「ごめん。このバカの言葉は聞かなかった事にして」
「う、うん」
 戸惑いながらも、エーフィは相手が自分と同じ女の子という事で、笑顔で返事をした。
「やっぱり女の子か…ちょっと良い?」
「え? うん」
 グレイシアに呼ばれて、エーフィはブラッキーから離れた。ブラッキーはサンダースと共に、グレイシアにKOされたリーフィアの介抱をした。
「で、何?」
 少し離れた所で二人は止まった。エーフィが尋ねると、グレイシアは振り返って尋ねた。
「あのブラッキーって…彼氏?」
「えっ!?」
 突然のグレイシアの指摘に、エーフィは顔を赤くして戸惑った。
「ち、違うよ!」
「じゃあサンダースの方?」
「違う!」
 ニヤケ顔で言うグレイシアに、エーフィは必死で否定する。
「ふ~ん…何となく私は、あのブラッキーと恋人同士かと思ったけど」
「ブラッキー君は暴漢に襲われていた私を助けてくれたの! そういう貴方は…えっと…」
 エーフィはグレイシアの事を呼ぼうとして戸惑った。自分と同じならば、恐らく名前を忘れているだろうと思ったが、何と呼べば良いか分からなかったからだ。
「グレイシアで良いわ。貴方も私と同じなら名前忘れているだろうから、エーフィって呼ぶから」
「うん…じゃあグレイシアは、あのリーフィア君とどうなの?」
「一応恋人同士!」
「にゃ!?」
 あまりの即答ぶりにエーフィは驚いた。
「まあアイツは馬鹿で煩くてスケベでマイペースで威張ってるけど…結構面白い奴なのよね…何故かアイツには、私の能力も効かないし」
 グレイシアは、ブラッキー達と話しているリーフィアは見ながら呟いた。
「能力?」
 エーフィはグレイシアの言った「能力」気になり尋ねた。
「私ね…人の心や動きが読めるんだ」
「…え?」
 エーフィは一瞬、訳が分からなくなった。
「いや、どういう事? それってつまり…超能力者?」
「まあそういう事になるわね」
「じゃまさか…ずっと私の心読んでたの!?」
「ああ、それは無いから」
と、真剣な口調で言うエーフィに、グレイシアはあっさりと否定した。
「私は普段はその能力を押さえてるんだ。だって年がら年中、誰かの心読んでたりしたら、流石に疲れるもの」
「…ホントに読んでないの?」
「う~ん…強いて言えば、此処に入る前から入った直後、貴方達三人の位置をサーチしたくらいかな」
 何処となく飄々と言うグレイシアだが、エーフィは彼女が嘘を付いている感じがしなかった。
「それに…」
 グレイシアはニヤリと笑いながら、エーフィを見つめる。
「誰かが好きな子の事を勝手に心を読んで調べるなんて、無粋でしょ?」
「グレイシア…」
 エーフィはグレイシアは一見活発で少し凶暴な女の子の様であるが、それと同時にやさしさを持った女の子であると理解出来た。
「ごめんなさい…疑ったりして」
「良いの気にしないで…あっ、この能力の事、ブラッキー達に言っても構わないから! その方が私も気が楽だし」
「…うん分かった…グレイシア、此れから宜しく」
「宜しくね」
 エーフィとグレイシアはお互い握手をした。

 ブラッキー

『ガラガラガラ…』
 大きな音を立てながら、店の入り口のシャッターが閉まっていく。ブラッキーが操作をして閉めたのであった。
 五人は今日はこのショッピングセンターに泊まる事にした。ブラッキーは見回りと外部から侵入者を入らせない為にシャッターを閉めているのだ。
「此れで全部だね」
 最後のシャッターを下ろしたブラッキーは、手に持っている64式小銃の安全装置を掛けて、装着されているベルトで肩に背負った。
「あとは電源室で店の電気を消したら、僕も皆の所に行こう」
 ブラッキーは配電室へと向かった。

※      ※

 電気を消したブラッキーが最後に向かったのは、ベット等を売っている寝具売り場の店舗であった。この店舗の電気は配電室では消さず、店舗自体の電源操作で消す事にした。
「お疲れ様ブラッキー君」
 ベッドに腰を掛けていたエーフィが、ブラッキーを迎えた。
「うん。ありがとう」
 9m拳銃が装備されたベルトを外しながら、ブラッキーが答えた。
「別にさ、いちいち店ん中回る必要無くね?」
 上着を脱いで寝転がったリーフィアが言った。
「念の為だよ。誰かが侵入していないかの確認さ」
「ってか俺らが侵入者だけどな」
 ブラッキーの言葉を、皮肉めいた言葉で返すリーフィア。そんなリーフィアをグレイシアが無言で叩く。
「痛ぇ!」
「何にもしないで、呑気に寝転がっていたアンタが言うな!」
「うっせぇ!」
 漫才めいた事をするリーフィアとグレイシア。そんな二人を見てブラッキーとエーフィは苦笑いをする。
「ところでブラッキー。明日はどうするんだ?」
 白衣を脱いで神父服姿でベットに寝転がっているサンダースが尋ねた。
「今日と同じで、来た道と逆方向を歩いてみる…今の僕達には其れしかないから」
「そうか…じゃあ俺は寝る」
 そう言うとサンダースは、ブラッキー達に背を向けて眠った。
「…何か愛想無くね? サンダース」
「アンタは無神経過ぎ」
 率直なリーフィアのサンダースに対しての感想を、グレイシアは窘める。
「今日はもう休もう。皆疲れているだろうから」
 ブラッキーの言葉に全員寝に入る。
「お休みブラッキー君」
「お休みエーフィ」
 エーフィに挨拶をし、ブラッキーはベッドに寝転がる。
「…本当に僕達は…どうなるんだろう…」
 そう静かに、ブラッキーは呟いた。

 ???

 蝶のポケモンが舞っている夜の廃村…もっともその蝶は通常の色や色違いと違い、紅い色の羽をしている、紅い蝶であるが…。
 そんな蝶が舞っている廃村の奥に、村の中で最も大きい屋敷があった。
 屋敷の中はとても広く、不気味な静寂に屋敷全体が包まれていた。
 屋敷の奥にある大広間、壁や床の至る所に赤い染みがある。その大広間の更に奥にある、和人形が置かれた雛壇がある部屋に、二つの人影があった。
 一人は黒のワンピースに薄赤色ジャンパースカートを着たブースター。
 一人は薄赤色の服に白のスカートに黒のズボンを履いたシャワーズ。
 二人は寄り添いながら静かに屋敷の奥に居た。


 ブイズ・エレメンタリーズ 3 出会う仲間 草 氷 完 4に続く

「滅茶苦茶長い時間を掛けて完成しました。何かあれば感想を下さい。それでは」


 もの凄い久しぶりの更新です。忘れてなければ良いのですが…それでは






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Last-modified: 2014-09-16 (火) 00:28:15
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