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ブイズ・エレメンタリーズ 2 出会う仲間 雷

/ブイズ・エレメンタリーズ 2 出会う仲間 雷

 桜花


    ブイズ・エレメンタリーズ 2 出会う仲間 雷



 前回のあらすじ

 陸上自衛隊の演習場に来ていた少年は、突如謎の異変にあい、気がつくとポケモンのブラッキーになっていた。
 少年の父親は、異変の衝撃で亡くなり、少年は父親の形見として、照準機付きの64式小銃と迷彩服を受け継いだ。
 少年はその後、自分と同じ様に異変に巻き込まれ、エーフィの姿になった少女と出会ったと同時に、自分達の名前を忘れてしまっている事に気が付いた。
 そして少年はブラッキーと名乗り、異変を調べる為に行動する事を決め、エーフィと名乗る事にした少女と共に、行動を開始した。
 そして別の所でも、サンダースになった元人間の少年が行動を開始していた。

 サンダース

 「さて・・・どうするかな?」
 サンダースは右手にネイルハンマーを持ち、周りを草原に囲まれ、やや日の暮れた道を歩いていた。その時・・・
 「オイ! お前!」
 「! マジかよ・・・」
 突然ガラの悪そうなオコリザルが、サンダースに絡んできた。
 「変な格好をしているが、金は持ってるだろうな?」
 『・・・カツアゲか・・・・』
 サンダースは溜息を吐きながら、心中で呟いた。
 「確かに俺は、金を持っているが、お前にやるつもりは無い!」
 「んだとぉ!?」
 そう叫ぶとオコリザルは、サンダースに殴りかかってきたが、サンダースは軽く避けて、右手のネイルハンマーで殴りかかった。

 ドゴォ!!!

 「グワァッ!!」
 鈍い音がしたと思うと、オコリザルが愚問の声を上げた。
 「悪いな、俺は昔から色々あって、喧嘩等の腕前は結構あるんだ」
 サンダースが冷静に言い放つと、オコリザルは悔しそうな顔を浮かべながら逃げていった。
 「・・・・・」
 サンダースは無言で歩き出した。それから30分くらい歩いた時、道の脇に車を見つけた。それは・・・
 「んっ!・・・パトカーか・・・」
 車の正体は、無人のパトカーだった。サンダースはパトカーの車内に何か使える物が無いかと、探し始めた。すると運転席と助手席の間に、何かを見つけたので、それを手に取ってみた。
 「・・・拳銃か・・・・」
 物の正体は、38口径の回転式拳銃・ニューナンブM60だった。その他にも拳銃の弾丸の箱も一箱あった。
 「一応持っていくか」
 サンダースは拳銃に弾丸が装填されているのを確認すると、拳銃と弾丸の箱を白衣に仕舞い、再び歩きだした。

 ブラッキー

 それから数時間後の別の場所では、ブラッキーとエーフィが、森の中を歩いていた。もう日が暮れていたので、ブラッキーの迷彩服の左胸からは、自衛官官給品のLED白色L字型ライトが、光を放っていた。
 「大丈夫?」
 少し前から何も言わなくなったエーフィに、ブラッキーは心配そうに聞いた。
 「ううん。大丈夫だよ」
 エーフィは元気そうに言ったが、その顔には僅かだが疲れが出ていた。ブラッキーは辺りを見回し、休めそうな所を探した。すると・・・
 「あっ・・・」
 小高い丘の様な所に、小さな洞穴が開いているのが確認出来た。
 「エーフィ、少し待ってて!」
 「えっ? う、うん」
 エーフィをその場で待たせ、洞窟を確認した。銃を構えて中を見たが、中は無人で二人くらいなら余裕で入れるくらいの広さがあった。
 「大丈夫だよ!」
 ブラッキーはエーフィを呼び、一緒に洞窟に入った。ブラッキーはマッチやライターは無かったので、L字型ライトを灯りにした。そして自分のリュックから、缶詰糧食を二個と缶切りとスプーン二個を取り出した。これはジープにあった物を、ブラッキーが持ってきたのだ。ブラッキーは缶切りで缶の蓋を開けると、スプーンと一緒にエーフィに渡した。ちなみに缶の中身は、『とり飯』である。
 「食べなよ。自衛隊の糧食だよ」
 「ありがとう」
 エーフィはそう笑顔で返事をすると、糧食を食べ始めた。それを見たブラッキーも、もう一つの缶の蓋を開けて、糧食を食べ始めた。

 ※         ※
 糧食を食べ終えた後、ブラッキーとエーフィは話をしていた。内容は親の職業と異変時の事だ。
 「お父さんが、お医者さんなんだ」
 「うん。それで今夏休みでしょ? それでお父さんの知り合いのお医者さんが、千葉で診療所をやっているから、其処に研修に行ってたんだ。其処で私異変に巻き込まれたの・・・ブラッキー君は?」
 「僕は父さんが自衛官で、僕も将来は自衛隊を目指していたから、静岡の富士演習場に行ってて、其処で異変に巻き込まれたんだ・・・一体何でこんな事に・・・」
 「今頃皆・・・心配してるでしょうね・・・何とか連絡をとれないかな・・・」
と、エーフィは不安気味に言った。しかしそのエーフィの言葉に、ブラッキーはハッとした。
 「連絡・・・そうだ携帯!」
 「・・・あっ!」
 二人は携帯の存在を思い出すと、急いで携帯を取り出した。ブラッキーは携帯を開くと、電波の確認した。
 『良し・・・三本とも立ってる・・・』
 ブラッキーは電波の確認を済ますと、電話帳から『自宅』を選択し、電話を掛けた。しかし・・・
 『お掛けになった電話番号は、現在使われていません。番号をお確かめになって、もう一度お掛けなおし下さい・・・』
という、無機質なアナウンスが流れてきただけだった。
 「駄目だ・・・エーフィは?」
 ブラッキーはエーフィに聞いたが、エーフィは首を横に振った。
 「・・・何で電波はあるのに、通じないんだ?」
 「というより・・・・何かその番号自体が無いみたいだけど・・・」
 ブラッキーの疑問を、エーフィが憶測で答えた。そしてその直後、エーフィは軽く欠伸をした。
 「眠いの?」
 ブラッキーが聞いた。
 「うん・・・でも大丈夫だから・・・」
 エーフィは目を擦りながら言った。それを聞いたブラッキーは・・・
 「・・・僕が見張っているから、エーフィは眠っていいよ」
 「でもそれじゃ・・・ブラッキー君が眠れない・・・」
 「僕の事は気にしないで、僕は体力には自信があるから大丈夫だよ」
 優しく微笑みながらブラッキーが言うと、エーフィは・・・
 「ブラッキー君・・・ありがとう・・・ブラッキー君も眠りたかったら、私を起こしてね! そしたら私が見張るから・・・」
 そう言うとエーフィは、静かに眠りについた。それを見て、ブラッキーは微笑んだ。
 「・・・たとえば何かを失うとしても・・・守って行かなきゃ・・・・ひとつだけは・・・」
 ブラッキーの頭に、ふとある歌の歌詞が浮かんだので、ブラッキーは静かに口ずさんだ。
 「・・・・・前にあの子から、教えてもらった歌だ・・・」
 何で思い出したのかは、ブラッキーには分からなかったが、その歌どおり、何かを失っても、エーフィだけは守ろうと硬く心に誓い、小銃を強く握った・・・。

 サンダース

 それから数時間後の夜明け前、サンダースはある森の入口に来ていた。
 「森か・・・行ってみるか・・・」
 そう独り言を呟くと、サンダースは森の中へ入っていった。

 ブラッキー

 「・・・・!」
 エーフィは顔に朝日を浴びて、目を覚ました。すると自分の頭が、ブラッキーの肩に寄り掛かっている状態なのに気付いた。
 「起きた?」
 「あっ・・・ご、ごめん・・・」
 エーフィは慌てて、ブラッキーの肩から頭を離した。
 「ブラッキー君・・・起こしてくれなかったの?」
 「あんまり気持ちよさそうだから、起こすのは悪いと思って・・・」
と、ブラッキーは笑顔で言った。その顔からは睡眠不足は感じられなかった。
 「ブラッキー君・・・寝てないんじゃ?・・・」
 「大丈夫! これくらい何ともないよ♪ さっ、ご飯にしよう」
 そう笑顔で言うと、ブラッキーはリュックから、缶詰糧食二個とスプーン二個を取り出した。

 ※          ※
 
 「! ブラッキー君! それ何?」
 糧食を食べてる時、エーフィはブラッキーのリュックの中に、ある物を見つけた。
 「んっ? これ?」
 そう言って取り出したのは、一つの飛行眼鏡だった。
 「中学時代に買った、大日本帝国軍の飛行眼鏡! 僕のお守りにしているんだ!」
 「へぇー」
 「只ね・・・」
 ブラッキーは苦笑いを浮かべて、リュックからある物を取り出した。それは・・・
 「えっ?・・・同じの?」
 ブラッキーが取り出したのは、まったく同じ飛行眼鏡だった。
 「実は買った時、二つセットだったから、やむなく二つ手に入れる事になったんだ」
 「納得・・・」
 エーフィはブラッキーから理由聞き、苦笑しながら納得した。ブラッキーはゴーグルを一つ頭に着け、もう一つのゴーグルはリュックにしまった。
 「あれ? ブラッキー君。そのゴーグル付けるの?」
 「うん。折角持ってるんだしね」
 そう言うとブラッキーは、立ち上がりながらリュックを背負い、小銃を持った。
 「行こうエーフィ!」
 「うん!」
 二人は洞窟を出て、森の中を歩き始めた。

 ※         ※

 『グゥゥゥ・・・』
と、森の中でお腹が鳴る音がした。ブラッキーは音のした方を見ると、エーフィが顔を赤くして立っていた。
 「エーフィ・・・お腹が空いたの?」
 ブラッキーが聞くと、エーフィは恥ずかしそうに頷いた。
 「どうしよう・・・糧食はもう無いし・・・」
 ブラッキーは困った顔をした。その時・・・
 「あっブラッキー君。あそこの木に木の実やリンゴが!」
 「えっ!?」
 エーフィが示した方を見ると、確かにその辺り木々に、果物が実っていた。ブラッキーは実が成っている低い枝に近づき、腰に差していた64式小銃用銃剣で、切り取って実を見てみた。
 「見た感じ、毒は無いみたいだけど・・・」
 ブラッキーは恐る恐る、木の実に口を付けてみた。

 シャリ・・・

 瑞々しい音を上げながら、ブラッキーは木の実を食べてみた。暫く咀嚼をした後、ゴクンと飲み込んだ。
 「! エーフィ、この木の実美味しいよ♪」
 「本当!?」
 エーフィはブラッキーの所に行き、ブラッキーはもう一度木の実を切り取って、エーフィに渡した。エーフィは木の実を食べてみた。
 「! ホントだ美味しい♪」
 「結構あるみたいだから、此れで取ってみなよ」
 そう言ってブラッキーは、エーフィに銃剣を渡した。
 「でもそれを私に渡したら、ブラッキー君はどうするの?」
 「僕は素手でも取れるから、大丈夫だよ」
 「・・・分かった。ありがとう」
 そう言ってエーフィは、ブラッキーから銃剣を渡した。エーフィは銃剣を受け取ると、ブラッキーから離れていった。
 「あんまり遠くに行かないでね」
 「は~い♪」
 ブラッキーは木に登りながら、エーフィに言った。
 「二人で~逃げ場所探して~♪」
と、ブラッキーが歌うと・・・
 「走った~天気雨の中~♪」
と、エーフィも歌いだした。
 「・・・フフ♪」
 ブラッキーは何だか楽しくなった。

 サンダース

 一方サンダースは、現状を知る為に、森の中を歩いていた。
 「全く・・・・・此処は何処なんだ?・・・」
 そうサンダースは呟いた。その時・・・
 「新しい~景色~迎えに行こう~♪」
 「!」
と、何処からともなく、女の子の歌う声が聴こえてきた。
 「何だ?」
 サンダースは気になり、声のした方に向かってみた。すると其処には、腕に木の実を抱えた、ナース服姿のエーフィがいた。
 
 ブラッキー

 「あれは美味しそう・・・」
 ブラッキーは木の枝の先端に実なっている木の実を取ろうとして、奮闘していた。その時・・・
 「キャアア!」
 「!」
 突然エーフィの悲鳴が、ブラッキーの耳に入った。
 「エーフィ!」
 ブラッキーは木から飛び降りて、小銃を構えて、エーフィの悲鳴が聞こえた方に走った。そして其処まで行くと、エーフィの他に、神父の黒い服を着て、白衣のコートを羽織ったサンダースが居た。
 「ああ、ちょっと待て! 俺は何もしてないし、何もしない!」
 銃を持ったブラッキーが現れたので、サンダースは慌てている様だ。それを聞いたエーフィは、落ち着きを取り戻した。
 「ご、ごめんなさい(焦)・・・ビックリして・・・」
 エーフィが謝ると、サンダースは溜息を吐いて言った。
 「・・・何か変な事ばっかだな・・・俺は人間からポケモンになってしまうし、自分の名前は分からないし・・・」
 「えっ!?」
 何気にサンダースが言った言葉に、ブラッキーは驚いた。
 「君も・・・・・元人間なの?」
 「って事は・・・お前らもか?・・・・」

 ※          ※

 それから数十分間、3人は自分達の事を話し合った。
 「なるほど・・・じゃあお前らは、この異変を調べる為に、行動してるのか・・・」
 「うん・・・二人でも、調べれば何か分かると思って・・・」
と、サンダースにブラッキーは言った。
 「・・・・よし! 俺も協力しよう!」
 「えっ!?」
 サンダースの予想外の反応に、ブラッキーは驚いた。
 「俺だって、この異変の被害者なんだ! それに二人より三人の方が効率が良いだろ?」
 「・・・・・ありがとう・・・サンダース・・・」
 そう言ってブラッキーは、サンダースに手を差し出した。サンダースは差し出された手を握った。その様子をエーフィはニッコリと笑って見ていた。

 それから・・・

 3人はサンダースが来た道を辿り、森を抜け出た。其処には青い空と緑の草原が広がっていた。
 「空・・・すっごい綺麗・・・」
 エーフィが空を見ながら呟いた。
 「俺がこの道を歩いていた時は、夕暮れから夜明けだったな・・・このまま行くと、やがて俺の家に着くけど・・・」」
 サンダースが言った。
 「そういえば、サンダースは家に居る時に異変にあったって言ってたけど、何でそんな服装?」
 ブラッキーが、サンダースの服装について聞いた。するとサンダースは、頭を搔きながら言った。
 「あ~俺、家が教会で、親父が神父でお袋が医者で、家にこの服があったから、何となく拝借したんだよ」
と、何故かサンダースは、家族の事をとても嫌そうに言ったが、ブラッキーはそれを追求する事はしなかった。その後は辺りの景色を見ながら歩いていた。すると・・・
 「おっ!」
 その時サンダースは、路上に止まっている、ある物に気付いて近づいていった。それは前日、サンダースが38口径警察銃を手に入れた、パトカーであった。サンダースは助手席のドアを開けて、運転席に移り、ハンドルの下に潜り込み、何かを弄りだした。
 「?」
 「?」
 ブラッキーとエーフィは、サンダースが何をやっているか分からず、サンダースの所まで行ってみた。すると・・・

 ブルルルゥゥゥ・・・・

と、突然パトカーのエンジンが動き出した。
 「よう! 乗れよ!」
 運転席から顔を出したサンダースが、ブラッキー達に言った。
 「えっ? 今サンダースが動かしたの?」
 ブラッキーが、驚きながら聞いた。
 「ああ! キーが無かったから、配線を繋いで動かしたんだよ」
 サンダースが言った。
 「でもサンダース君。どうしてそんな事を出来るの?」
 エーフィが聞いた。
 「俺、自動車修理の工場のバイトを、少し前からやってるから、そうゆうの分かるんだよ! ほら乗れよ!」
 サンダースに言われ、ブラッキーとエーフィは、パトカーの後部座席に乗り込んだ。
 「じゃあ、行くぞ!」
 ブラッキー達が乗り込むと、サンダースはアクセルを踏んだ。するとパトカーは動き出した。
 「動いた! サンダース免許でも持ってるの?」
 「んっ? 無免許だけど」
 「「え゛っ」」
 サンダースの何気ない一言に、ブラッキーとエーフィは驚いて声を上げ、少し不安に思ってしまった。

 ※       ※

 暫く走っていると、教会らしき建物が見えてきた。その時・・・
 
 ルルルル・・・・

と、突然パトカーが減速し始め、最終的に停止した。
 「ガス欠か・・・もう直ぐ其処だから、歩こうぜ」
 そう言ってサンダースは、車を降りた。それに続いてブラッキーとエーフィも降りて、先を歩くサンダースに付いていった。サンダースは教会に入り、ブラッキー達も続いて入った。教会の中は横5列に長椅子が並べており、奥には祭壇があった。
 「俺、家の方に行って風呂沸かしてくるから、お前らここで待ってろ」
 そう言うとサンダースは、祭壇の方にある扉に入っていった。
 「ふー・・・」
 エーフィは息を吐いて、長椅子に腰掛けた。
 「疲れた?」
 ブラッキーがエーフィに聞いた。
 「うん、少し・・・」
 「サンダースがお風呂沸かしたら入りなよ」
 ブラッキーが言うと、エーフィはニッコリと笑った。

 サンダース

 ジャー・・・・

 水道から流れ出て、湯船に溜まるお湯を確認すると、サンダースは浴室から出て、そのまま居間に向かい、居間の床に寝転がった。
 「・・・・・今頃、親父やお袋や兄貴・・・俺の事なんざ考えもせずに、家が無くなった事に、パニくってるだろうな・・・」
と、天井を見ながら、サンダースは笑みを含めた一人事を呟いた・・・ただし、とても哀しいを込めた笑みを・・・。暫くしてサンダースは、湯船のお湯の量を確認する為、居間を後にした。

 ブラッキー

 ブラッキーとエーフィは、長椅子に座って、サンダースを待っていた。其処に寝間着を持ったサンダースがやって来た。
 「風呂沸いたぜ! どっちから入る?」
 サンダースが聞いてきた。
 「じゃあ、エーフィ先に入って良いよ」
 「えっ、でもブラッキー君も入りたいんじゃないの?」
 「僕は良いから、先に入って♪」
 ブラッキーに言われ、エーフィは軽く微笑み、入る事を承諾した。
 「此れ、俺の寝間着だけど、我慢してな」
 「ありがとう」
 エーフィは、サンダースから寝間着を受け取ると、先程サンダースが入っていた扉の方に向かったが、途中で立ち止まり、振り返った。振り返ったその顔は、若干赤みを帯びていた。
 「・・・覗かないでね・・・」
と、エーフィが呟くと、ブラッキーとサンダースは、慌てて顔を横に振った。それを確認すると、エーフィは扉の奥に入っていった。
 「なあ、ブラッキー・・・」
 エーフィが居なくなると、ブラッキーに話しかけた。
 「何?」
 「エーフィてさぁ・・・・」
 「?」
 「胸デカイよな」

 ドゴン!

 サンダースの呟きを聞くと、ブラッキーは崩れ落ちた。そしてブラッキーは、置いてあった64式小銃の銃底で、サンダースの脛を殴った。
 「痛ってぇ!!!」
 脛を殴られて、サンダースは悲鳴と共に、痛みで飛び上がる。
 「何考えてるの! サンダースの馬鹿!(怒)」
と、ブラッキーが怒りながら言った。

 エーフィ

 チャプ・・・・

 湯船の湯に浸かりながら、エーフィは天井を見つめながら考えていた。
 「ブラッキー君・・・」
 エーフィはブラッキーの事を考えていた。しかし何故か、ブラッキーの事を考えた途端、胸がドキドキし始めた。
 「もう止め! 別なの考えよう!」
 ドキドキするのを止める為、別の事を考え始めた。それはある男の子の名前だった。
 「・・・・クロノ君・・・・」
 人間時代の同級生の名前だろうか、エーフィは名前を呟くと、湯船の横の壁のタイルに、その男の子のフルネームを書いた。・・・・・月代 黒之(ツキシロ クロノ)・・・と・・・・。

 ブラッキー

 一方ブラッキーとサンダースは、今だ礼拝堂に居り、サンダースは特に何もせずに、寝ている様だったが、ブラッキーは銃を調べていた。しかしそれは64式小銃ではなく、自衛隊のミネベア9mm自動拳銃だった。ブラッキーはマガジンに弾が装填されているのを確認すると、再び装填した。
 「銃の点検か?」
 「!」
と、寝ているかと思ったサンダースが、ブラッキーに話しかけた。
 「うん、こんな状況だから一応ね・・・そういえばサンダースも、拳銃持ってたよね?」
 「此れか?」
 そう言うとサンダースは、白衣のポケットから、ニューナンブM60を取り出し、ブラッキーに見せた。
 「俺達とエーフィが乗ってきた、あのパトカーに置いてあったんだ! 全弾装填されてるし、予備も結構有るから、大丈夫だな」
 「なるべく直ぐに使用出来るようにしといた方が良いよ! 何に襲われるか分からないから・・・」
 「お風呂でたよ~♪」
 そうブラッキーが言った時、手にナース服とカーディガンを持った、ご機嫌な声を上げたエーフィが戻ってきた。エーフィの姿はパジャマ姿で、顔は少々火照っており、パジャマの一番上のボタンは留められておらず、妖艶な薄紫の素肌と豊富な胸元が、ブラッキーから確認出来た。
 「!!!!!!!」
 それをブラッキーは見た瞬間、顔を赤らめてしまった。
 「? どうしたの? 顔赤いよ?」
 エーフィは、自分がブラッキーの顔を赤くしてしまった理由が、自分にある事に気付いていない様だ。
 「な、何でもないよ! サンダース! 先に入って良い!?」
 「? ああ良いけど・・・寝間着、後で持っていくから、先行ってて良いぜ」
 「あ、ありがとう」
 サンダースから、承諾を得ると、ブラッキーは逃げる様に、礼拝堂を後にした。そんなブラッキーを、頭の上に『?』を浮かべたエーフィが見送った。

 ※         ※

 洗面台の有る脱衣所に着いたブラッキーは、床に小銃と寝間着を置き、頭のゴーグルを外し、迷彩服を脱いだ。ブラッキーは裸になった体を、洗面台の鏡で見てみた。
 「・・・・・」
 其処には漆黒の体に金色の輪、そして兎の様な長い耳とラグビーボールの様な太い尻尾、完全な月光ポケモン・ブラッキーであった。ただ違うのは、ゲームに出てくるブラッキーとは違い、二足で直立歩行をしている事だけだ。ブラッキーは自分の姿を確認すると、浴室に入った。浴室に入ると、ブラッキーは最初にシャワーを浴び、ある程度湯を浴びたらシャワーを止めて、シャンプーを手に付けて、其れで頭を洗い、洗い終わると再びシャワーを浴びて、壁に掛けられていたタオルにボディソープを付けて、タオルで体を撫でる様に洗い、最後にシャワーで洗い流すと、湯船に入った。湯船の湯に浸かると、ブラッキーは目を瞑って、色々な事を考えた。
 『・・・父さんと演習場に来て、変な異変にあって、気付いたら異世界で、僕はブラッキーになっていて、父さんは異変の衝撃で死んでしまって、街でエーフィに出会って、サンダースに会って・・・此れからどうなるんだろう?・・・・・』
 ブラッキーは心中で、そう考えていた。

 ※           ※

 「お風呂出たよ・・・」
 先程のエーフィと同じく、顔を火照らせた状態で、ブラッキーは礼拝堂に来た。手には迷彩服と小銃が持たれている。待っていた二人はというと、エーフィは長椅子に座っており、サンダースは立っていた。
 「おっ、出たな♪ じゃあ俺入ってくるから、俺が出たら飯にしようぜ!」
 そう言うとサンダースは、ブラッキーが来た扉に入っていった。其れを見送ると、ブラッキーは長椅子に腰掛けている、エーフィの隣に座った。そして自分の脇に迷彩服と小銃を置いた。
 「お風呂、気持ち良かったね♪」
 「えっ! あ、うん・・・」
 突然エーフィに話しかけられて、ブラッキーは戸惑った。先程の事がまだ抜けていないのだ。
 「どうしたの? そんなに驚いて?」
 「ごめん、何でもないよ・・・」
 そうブラッキーはエーフィに言うと、ブラッキーは自分のリュックを持って立ち上がり、リュックの中から小さくて短めの長方形の箱を次々と取り出した。
 「それは?」
 エーフィが聞いた。
 「64式小銃のマガジンだよ、何発分あるか数えてみるんだ」
 そう言うとブラッキーは、並べられたマガジンを見て呟いた。
 「装填されているのを含めて200発か・・・・9mmが50発・・・考えて使わないと・・・」
 そう言うとブラッキーは、出されていたマガジンを、全てリュックに仕舞った。
 「ブラッキー君、そんなに持ってて重くないの?」
 「大丈夫! 以前から体力作りしてたから、ある程度なら大丈夫なんだ」
と、ブラッキーは笑顔で言うと、エーフィも自然と笑顔になった。
 「何だ? 何だ? 妙に盛り上がっているな」
と言いながら、寝間着姿のサンダースがやって来た。
 「まあ色々とね・・・ご飯作るんだっけ?」
 ブラッキーが聞いた。
 「ああ」
 「じゃあ僕も手伝うよ!」
 「料理出来るのか?」
 「僕は、昔から母さんの手伝いとかをしていて、料理とかもある程度出来るんだ!」
 「そうか、じゃあ頼むな!」
と、サンダースが笑顔で言う。
 「私も手伝うよ」
 エーフィが言った。
 「ありがとう、お願い♪」
 こうして3人で、夕食を作ることになった。

 夕食

 机に魚や野菜等の夕食が並べられ、三人は其れらを食べながら、話し合っていた。
 「それでブラッキー、これからどうするんだ?」
 サンダースが聞いてきた。
 「とりあえず明日此処を出て、今日来た道とは逆の方へ行ってみようと思うけど・・・良いかな?」
 ブラッキーが、エーフィとサンダースに聞いた。
 「私は大丈夫だよ♪」
 「俺もだ♪」
 エーフィとサンダースは、笑顔でブラッキーに言った。

 PM22:00

 夕食を食べたその後、ブラッキーは一人、小銃を持って、礼拝堂の長椅子に腰掛けていた。
 「どうした? 寝れないのか?」
と言いながら、サンダースがやって来た。
 「いや、念の為に此処で、見張りをしてるんだ」
 そうブラッキーが言うと、サンダースは苦笑い気味に言った。
 「いや別に、あとで俺が鍵閉めれば大丈夫だし・・・それより・・・」
 笑みを浮かべながら、サンダースはブラッキーの隣に座った。
 「ブラッキーは人間だった時、誰か好きな人居たか?」
 それを聞いた瞬間、ブラッキーは驚いた顔をしながら聞いた。
 「な、何でそんな事聞くの?」
 「いやな、ブラッキーって何か好きな人居そうだなって思って・・・で? どうなんだ?」
 サンダースに聞かれると、ブラッキーは顔を赤らめて、恥ずかしめに言った。
 「い、居るよ・・・・同じ高校の子・・・」
 「マジで!? 何処の高校か知らないけど、何て子?」
 「・・・・・夕日・・・・紫杏・・・・」
 ブラッキーは戸惑いながら、『夕日 紫杏(ユウヒ シアン)』と言った。
 「夕日 紫杏?・・・・ってまさか!?・・・・夕日 白龍(ユウヒ シロン)の妹か?」
と、サンダースが名前を上げた。
 「あ、うん・・知ってるんだ・・・シロンも有名だから、シアンも有名なんだね・・・」
 「つうか、名前で呼び合える程、仲が良いのかよ!」
 二人の名前を普通に呼ぶブラッキーに、サンダースは驚いた。
 「うんちょっとね・・・・じゃあ僕もう、寝るね・・・何処で寝れば良い?」
 「親父とお袋の寝室だ! 場所は家を入ってすぐだから。エーフィも其処に寝ているから・・・俺はもう少ししたら寝るから」
 「分かった。お休み」
 そうサンダースに言うと、ブラッキーは家の方の向かった。

  ※     ※

 サンダースに支持された部屋に行くと、其処にはベットが二つ在り、その内の一つには、エーフィが寝ていた。
 「・・・・・」
 ブラッキーは口元に、優しい笑みを浮かべ、ベットとベットの間の所に小銃を置き、もう一つのベットに入ろうとした。その時・・・
 「ブラッキー君・・・」
と、寝ていると思っていたエーフィが、声をかけてきた。
 「あ、ごめん・・・起こしちゃった?・・・」
 「ううん・・・眠れなかったの・・・」
 ブラッキーが聞くと、エーフィはそう答えた。その時ブラッキーは、エーフィの瞳から何かを自分に求めているのを感じ取る事が出来た。
 「何か・・・僕に頼みでもあるの?・・・」
 ブラッキーが聞くと、エーフィは少々驚いた様な表情を見せた後、迷った様な表情を見せてから言った。
 「うん・・・あのね・・・添い寝・・・してくれないかな?・・・」
 「!!!!!」
 恥ずかしげに言うエーフィの言葉を聞いて、ブラッキーは一瞬で赤面した。
 「!・・・やだ私、何を言ってるんだろう・・・・・ごめんねブラッキー君・・・」
と、エーフィは言った後、ブラッキーに背を向けてしまった。すると・・・
 「あのエーフィ・・・その・・・エーフィがしてほしいなら・・・・僕は構わないけど・・・」
 顔を赤く染め、途切れ途切れながらも、ブラッキーはエーフィに対して、自身の意志を伝えた。するとエーフィは、再びブラッキーの方を向き、はにかんだ笑顔を見せた。
 「じゃ、じゃあどうぞ・・・・」
 そしてエーフィはベットのスペースを空けて、ブラッキーは緊張しながらも、エーフィに入っているベットに入った。
 「・・・・・」
 「・・・・・」
 ベットに入って数分間、お互いは向き合ったまま無言であった。すると・・・
 「あ、あのさ・・・エーフィ・・・」
と、ふいにブラッキーが、エーフィに話しかけた。
 「・・・何?」
 「どうして・・・こんな事頼んだの?」
 「・・・・・」
 ブラッキーに聞かれ、エーフィは少し黙った後に言った。
 「あのね・・・自分でも、分からないけど・・・ブラッキー君と寝てみたかったんだ・・・」
 「そ、そうなんだ・・・」
 ブラッキーは冷静に理由を聞いたが、何か隠している様な返答に、少々汗を掻いて驚いた。ブラッキーは額に掻いた汗を拭う為、布団から手を出し拭おうとした。その時・・・

 チョン

 「ひゃん!」
 「!!!」
 手を出した時、ふいにエーフィの耳に手が当たり、エーフィは奇妙な声を上げた。
 「ど、どうしたの?・・・」
 「ご、ごめん・・・私実は耳敏感なんだ・・・」
 「そうなんだ・・・・・ごめんね・・・」
 「ううん、いいの・・・それより寝よう・・・・」
 「うん・・・・おやすみ、エーフィ」
 「おやすみ・・ブラッキー君」
 そうお互いの名前を呼び合い、二人は眠りについた・・・。

 ?????

 それから少し前、ブラッキーが居る所から少し離れた廃墟に、二人のポケモンが居た。
 「なー、マジでどうなってんだよ!?」
 そう言ったのは、黒いジャケットにデニムのジーパンを履いた、金属バットを持ったリーフィア。
 「知らないわよ! 私だって知りたいわよ!」
 リーフィアの質問に答えたのは、派手な柄の半袖の服を着て、リーフィアと同じくデニムのジーパンを履いたグレイシア。
 「ってか、何で俺らこんな姿になって、しかもお互いの名前分からないわけ!?」
 「だから知らないわよ! 人間がポケモンになるなんて、ゲームの中だけの話だって思ってたし!」
と、二人は苛ついた口調で言い合った。実はこの二人も元は人間だったのだ。
 「あー! どうなってんだよ!?」
と、日の暮れかけた廃墟の中で、リーフィアは嘆いた。


 ブイズ・エレメンタリーズ 2 出会う仲間 雷 完 3に続く

 あとがき
 「1年以上かかりましたが、何とか2を終わらせました。次回の3にご期待ください。時間をかけて申し訳ありませんでした。それでは♪」
 
 




  感想あればどうぞ
 




 


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