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フリーダム・ナイト 1 太陽の騎士と月の姫君

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桜花

  以前から言っていた、三月兎さんの作品を参考にした、フリーダム・ナイトです! どうぞ♪   P・S 許可は得ています。

  フリーダム・ナイト 1 太陽の騎士と月の姫君
                              作・桜花

 青い空がすべて見える草原に、青いブレザー姿のエーフィとサンダースが居た。二人は背にリュックを背負い、ズボンのベルトには、それぞれ一振りの日本刀が差してあった。
 「なかなか次の街に、着かないね?」
 エーフィがサンダースに言った。
 「前の町を出て、2日かぁ・・・」
 サンダースが、力なく言った。
 「てか前の町で、町にいた柄の悪いポケモンが、お前の事を追いかけたのが、街を出たきっかけなんだよな・・・エレン・・・お前のその美貌、いろんな意味で罪じゃねえ!?」
と、サンダースが、エレンという名のエーフィに言った。するとエレンは・・・
 「・・・フフッ♪ ザドル・・・君は、僕の美貌が罪だって言うの? 別に僕は、外見なんてどうでもいいって思ってるよ! それにザドルだって、外見カッコイイじゃないか」
 「俺は良いとして、お前の場合・・・その・・・外見は100%女なのに・・・お前は男じゃねえか!?」
と、ザドルというサンダースが、エレンに大声で言った。そう・・・エレンは、外見は女の子なのだが、性別は男の子であった。
 「どうしてかな? ミミロップやミロカロスやエネコロロやサーナイトの種族にだって、男の人はいるよ! 当然ながら、僕の種族であるエーフィ種にだって、性別が男の子だって、いっぱいいるよ!」
 「まあ確かに、いるけどな・・・はっきり言って、断然女の方が多いぜ!」
 確かにエーフィ種は、男より女の方が多い。
 「別に構わないじゃないか! それに僕は、エーフィに進化して間違いだったなんて、一度たりとも思った事もないよ♪」
 エレンは瞳を輝かせて言った。その瞳は、普通のエーフィ種には無い、青色の瞳だった。通常エーフィの瞳は、薄紫色の瞳なのだが、何故かエレンは、生まれつき瞳が青く、その原因は分からなかった。
 「わああ! 助けて!」
と、悲鳴が突然、草原に響いた。
 「何だろう? 行ってみよう!」
 「ああ!」
 エレンとザドルは、悲鳴が上がった方に向かって、走り出した。すると一人のブースターが、五人のサワムラーに囲まれていた。
 「うん?」
 サワムラー達が、エレンとザドルに気づいた。
 「何だお前ら! 引っ込んでろ!」
と、サワムラーA(仮)が、エレン達に激しく言った。するとサワムラーB(仮)が、エレンを見て言った。
 「いや待て! このサンダース、凄っげぇ可愛い女を連れてるぜ!」
 サワムラーBが言う、『可愛い女』とは、無論エレンである。
 「捕まえようぜ!」
 そう言ってサワムラーBは、エレンに近づいた。その瞬間・・・
 「ハアァ!」
 ドガァ!
 「グエェ!」
 サワムラーBがエレンに近づいた瞬間、エレンは軽く飛び上がり、サワムラーBに回し蹴りを食らわし、サワムラーBを倒した。
 「な、何だこの女!」
 この後に及んで、まだエレンの事を女と思っている様だ。
 「やっちまえ!」
 残りのサワムラーが、エレンとザドルに襲いかかって来た。
 「・・・仕方ない・・・ザドル! いくよ!」
 「OK!」
 エレンとザドルは、腰のベルトに差してあった日本刀を抜き、サワムラー達に立ち向かった。エレンは一番手前にいた、サワムラーAにみね打ちを食らわして倒した。その直後に、背後にいたサワムラーC(仮)が、エレンに攻撃しようとしたが、ザドルの機転を利かした蹴りをサワムラーCに食らわし、サワムラーCを倒した。残りの二人のサワムラーは、エレンとザドルの強さに怖気づいたのか、倒れた仲間のサワムラーを担いで、何処かへ逃げていった。それを見送ると、エレンとザドルは、刀を鞘に戻した。
 「君、大丈夫?」
 エレンは、襲われていたブースターを、立ち上がらせながら聞いた。
 「あっハイ! ありがとうございます! 僕は、フレム=ホムラ=レンゴクという者ですが、あなた達は?」
 「僕は、エレン=サニー=アポロン! ただの旅人だよ!」
 「俺は、ザドル=エレキ=スパキ! 同じく旅人だ!」
 二人はフレムというブースターに、自己紹介をした。
 「それにしても、お強いんですね!」
 「まあな! 色んな所を旅をしながら、修行もしてたからな♪」
と、ザドルが得意そうに言った。
 「もうザドル・・・じゃあ僕らは、先を急ぐから、これで!」
 「じゃあな!」
 そう言って、エレンとザドルは、街があると思われる方へと、走り出した。
 「あっ! 待って・・・行っちゃった・・・」
 フレムは、エレン達に何か言いたかったが、エレン達はあっという間に、その場を去ってしまった。

 アルトセレム

 エレンとザドルが辿り着いた街は、街中に水道がある、アルトセレムという街だった。
 「綺麗な街だね♪」
と、エレンが複雑な街中を見ながら呟いた。
 「まあな・・・たしかこの街は、現在の世界的な大金持ち達の先祖が作ったって、何かの雑誌に書いてあったな!」
と、街の入り口で購入した地図見ながら、ザドルが答えた。
 「え~と・・・あっ! こっちだな! エレンこっちだ!」
と、ザドルが地図で何かを見つけたらしく、エレンを誘導しながら、目的地へと向かった。やがて辿り着いたのは、少し古めかしいホテルだった。
 「ここに泊まるの?」
 エレンが聞いた。
 「ああ! この街で一番安い宿って、この地図に書いてあった!」
 そう言うとザドルは、ホテルの中に入って行った。その後をエレンが追った。フロントまで行くと、受付係のサーナイトが出てきた。
 「二名様ですか?」
 サーナイトが聞いてきたので、ザドルが答えた。
 「ああ! 俺とコイツだけだから、二人部屋にしてくれ!」
 するとサーナイトは、ニッコリと笑いながら言った。
 「かしこまりました・・・新婚ですか?」
 「・・・いや俺ら友人同士です・・・」
と、新婚扱いされた事に、ザドルは脱力をした状態で言った。
 「フフ・・・申し訳ありません♪ では、部屋へ案内しますのでどうぞ・・・」
と、エレンとザドルは、サーナイトに案内されながら、部屋に向かった。

 部屋

 部屋に入ると、エレンとザドルはリュックと日本刀を机の上に置き、エレンは椅子に座り、ザドルはベットに寝転がった。
 「なあエレン・・・」
 「何?」
 「あのサーナイト・・・完璧お前の事、女だと思ってたぞ・・・」
 「そうだね・・・」
 そう呟くとエレンは、窓の外を見た。窓から見える夕暮れ時の街の景色は、とても綺麗であった。
 「ねえザドル! ここから見える街の景色、すごく綺麗だよ♪」
 「んっ? どれどれ・・・」
と言って、ザドルは起き上がって、エレンの側まで行き、窓から街を見回した。
 「本当だな・・・」
 ザドルは、街の景色を見ながら呟いた。
 「・・・うん? あれなんだろう?」
と、エレンが一つの方向を見ながら呟いた。その先には、城の様な建物が見えた。さらにその建物から離れた所には、数件の大きな館もあった。
 「分かんねーな・・・明日行こうぜ・・・今日はもう疲れた・・・ファァ・・・」
と、ザドルは欠伸をしながらベットに向かって、ベッドにダイブをして、仰向けに寝転がった。
 「俺、少し寝るわ・・・飯の時間になったら、起こしてくれ・・・」
 「うん! 分かった♪」
 エレンは返事をした。少しすると、ザドルの寝息が聞こえてきた。エレンは備え付けのテレビを点けて、ザドルが起きない程度の音量に設定をして見始めた。

 PM・18:30

 夕方の6時頃、部屋の備え付けの電話が鳴った。エレンが出ると、その電話は夕食を知らせる電話だった。
 「はい、分かりました」
 そう言って、エレンは電話を切ると、寝ているザドルに近づき、ザドルを揺す振り起こした。
 「ザドル起きて、ご飯だって!」
 「うん? もうそんな時間か?・・・」
 ザドルは眠たそうな目を擦りながら、ベッドから起き上がり、ルームキーだけを持って、エレンとザドルは部屋を出て、部屋の鍵を閉めて、食堂へと向かった。

 食堂

 食堂に着くと、エレンとザドルは窓際の席に着いた。ウェイターに料理を注文すると、エレンは窓から見える夜景を見た。
 「ねえザドル」
 エレンが、夜景を見ながら呟いた。
 「んっ? 何だ?」
 「この街には、何日くらい滞在するの?」
 するとザドルは、少し考えてから言った。
 「5日くらいかな・・・この街なら、お前も安全だろうし、ここは観光名所だ! ゆっくり観光しながら、また旅に出ようぜ!」
 「うん!」
 エレンが嬉しそうに、返事をした。やがて注文した料理が運ばれてきて、エレンとザドルはそれを食べ終えて、部屋へと戻った。しばらくはテレビを見ていたが、PM21:00を過ぎた頃、エレンが言った。
 「ねえザドル! お風呂入りに行こう!」
 「風呂か? ああいいぜ!」
 エレンとザドルは、リュックから寝間着とタオルを取り出し、部屋を出て大浴場へと向かった。

 大浴場

 大浴場に着くと、時間帯的に遅い為か、他の宿泊客は一人も居なかった。そんな中、エレンは服を脱ぎ始めた。
 「・・・・・」
 この時ザドルは、心底安心していた。エレンの外見は、ある一点だけを除いては、すべて女である為、そのエレンが大浴場に行ったら、確実に大変な事(大変な事は自主規制)になる為からである。今回誰も居なかったのは、本当に幸いだったと、ザドルは思った。
 「どうしたのザドル?」
 「!?」
 何時の間にか、脱衣を終えたエレンが、ボッーとしているザドルに聞いた。服を着ていないエレンの姿は、親友のザドルでさえも、一瞬ドキッとなる姿だった。
 「(どっからどう見ても、女にしか見えないな・・・むしろ、男として見ろって言われても、俺やリオウ以外は、まず信じないな・・・)いや、何でもない! 先に入ってていいぜ!」
 「うん!」
 エレンはザドルの疑問を知らずに、ニッコリと笑って返事をして、体を洗うタオルで下半身を隠しながら、浴室へと向かう。浴室に入ると、エレンは体を洗う所に行き、備え付けてあったシャンプーとボディーソープの内、シャンプーの方を使い、耳に泡が入らない様に慎重に洗い、お湯で泡を洗い流すと、今度はボディーソープをタオルに付けて、エレンはそのタオルで、丹念に自分の体を撫でる様に洗った。体を洗い終わり、体の泡を洗い流した時、丁度ザドルが来て、エレンの隣に座った。
 「なあエレン」
 ザドルが聞いてきた。
 「何?」
 「お前のモノの大きさって・・・小さくてガキの頃と変わらないな・・・」
と、ザドルがエレンの下半身を見ながら言った。その瞬間、エレンの顔が紅く染まる。
 「なっ・・・ほ、ほっといてよ!」
と言うとエレンは、立ち上がって湯船まで歩いていき、湯船に入った。
 「ワリィワリィ! 悪かったって♪」
 ザドルは弁解しながら、自身の体を洗っていた。
 「もう! その事はコンプレックスなんだから!」
 「そんな気にするなって! 前に自分の事を『僕』って言ってた、日本刀を持った、凄っげぇ馬鹿力のエーフィを、どっかの街で見たろ? 胸が全く無いから、男かと思ったら、女だったってオチだったじゃねえか!」
 「・・・・・その子と僕と、何の関係があるの?」
 「だから! あの女のエーフィのコンプレックスが『貧乳』なら、お前のコンプレックスは『貧根』っていう風に、誰にでもコンプレックスはあるんだぜ!」
 「・・・それは分かったけど・・・ザドルのコンプレックスは何?」
 「・・・俺も湯船に入ろう♪」
と、ザドルはエレンを誤魔化して、湯船に入った。
 「・・・・・・」
 エレンはヤレヤレという顔をした。

 部屋

 部屋に戻ると、ザドルはすぐさまベットにダイブし、そのまま直ぐに眠ってしまった。エレンはテレビでも見ようかなと思ったが、疲れからきた睡魔に襲われ、テレビを見る事を辞めて、ザドルに毛布を掛けて、部屋の電気を消して、ベット脇のサイドテーブルの電気スタンドの電気を点けて、自分もベットに入り、眠りについた。

 翌日 AM10:30

 翌日二人は、アルトセレムの町を歩いていた。
 「ふぁ~・・・」
と、ザドルが大口開けて、欠伸をした。
 「ザドル! あれだけ寝たのに、まだ眠いの?」
 呆れた顔で、エレンが言った。
 「仕方ないだろ! 今所野宿が多かったから、ベットなんて久しぶりで、つい10時まで寝ちまったんだよ。そういうエレンは、何時に起きたんだ?」
 「僕? 僕は8時半だよ!」
 「早えぇ!」
 そんな会話をしながら、二人は町を歩いていた。その時
 「グウゥゥ・・・」
と、小さな音で、エレンのお腹が鳴った。
 「・・・・悪いなエレン。俺がずっと寝てたから、飯食う時間取れなくて・・・」
 ザドルが言った。実はエレンは、ザドルが寝ていた為に、ホテルの朝食の規定時間内に間に合わず、朝食を取っていないのだ。
 「気にしないでよ! 朝ごはんは街中で食べようよ!」
 「・・・そうだな! 飯代は俺が奢るぜ!」
 「ありがとう♪」
 二人は街中で、食事が出来る所を探した。迷路の様な町なので、二人は少々迷ったが、何とか二人は、一軒の店を見つけた。二人は店に入り、料理を注文をして、カウンターに座った。その時・・・
 「あれ? エレンさんとザドルさん?」
と、隣に座っていたポケモンに、エレンとザドルは話しかけられ、何かと思い、声のした方を見るとそこには・・・
 「・・・フレム?」
 「やっぱりエレンさんだ♪」
 そこに居たのは、昨日エレンとザドルが助けた、ブースターのフレムだった。
 「フレム。お前どうして此処に居るんだ?」
 ザドルが聞いた。
 「僕、この町に住んでるんですよ! 良かったら食事が終わった後、僕の家に来ませんか?」
 「えっ? 構わないの?」
 エレンが心配そうに聞いた。
 「僕は弟と二人暮らしなんで、構いませんよ!」
と、フレムは笑顔で返事をした。
 「・・・じゃあ、お邪魔させていただくよ♪」
 エレンは、ニッコリと笑って、返事を返した。その後食事を終え、3人は店を出た。

 ※     ※

 3人はしばらく無言のまま、運河の川があるアルトセレムの街を歩いていたが、やがてエレンが切り出した。
 「ねえフレム。少し気になってたんだけど、フレムってもしかして、東国出身?」
 「えっ? そうですけど、どうしてですか?」
 「フレムの名前、『フレム=ホムラ=レンゴク』でしょ? 『ホムラ』と『レンゴク』は東国の言葉だから、もしかしてと思ってね」
 「たしかに僕は東国出身ですよ♪ ところで、お二人も東国ですか?」
と、今度はフレムが質問をしてきた。
 「いや! 俺らは西国、つまりこの国出身だ!」
 その質問には、ザドルが答えた。
 「そうなんですか? 日本刀を持っているから、てっきり東国の者かと思いまして・・・すみません」
と、フレムは申し訳なさそうに言った。そんなフレムにエレンは・・・
 「まあ気にしないでよ! 間違いなんて、誰にでもあるから♪」
 「すみません・・・あっ! あと一つ、エレンさんに質問良いですか?」
 「んっ? 何?」
 「エレンさんって、女性の方ですか?」
 ドタン!!
 エレンは驚きのあまり、地面に倒れてしまった。
 「ど、どうしたんですか!?」
 フレムは訳も分からず、困惑していた。そんなフレムに、エレンは立ち上がりながら言った。
 「フレム・・・一応言っておくけど、僕は男だからね・・・」
 「ええっ!!!」
 フレムは驚いた顔をして、大声を上げた。
 「てか分かるだろフレム! エレンは自分の事を『僕』って言ってんだから、僕=エレンの性別は男って事が、解釈できるだろ!」
と、ザドルが激しく言った。
 「いやでも、今の世代に自分の事を『僕』って言う女の子は、たくさん居ますよ!」
 「そ、そりゃそうだが・・・とにかくエレンは男だ!」
と、無理矢理ザドルは、フレムに言い聞かせた。そのフレムに、エレンは・・・
 「まあ無理もないよ、元々エーフィ種は女の子が多いし、フレムが僕を女の人と間違えるのは、仕方無い事だよ♪」
 「すみません。エレンさん・・・」
 フレムはエレンに謝った。
 「いいよ気にしないで♪ それよりフレム♪ 君の家に連れてって♪」
 「は、はい!」
 3人は話題を終え、本来の目的であるフレムの家に向かう為、横に運河の川が続く道を歩き出した。

 ※      ※

 やがて3人は、一軒の二階建ての家の前に着いた。
 「ここが僕の家です! どうぞ♪」
と、フレムに言われて、エレンとザドルはフレムの家に入った。家の中は広くもなく、狭くもない普通の広さであった。
 「兄さんおかえり♪」
と、家の奥から声がしたと思うと、奥からフレムと同じ、ブースターがやって来た。
 「リエンただいま!」
 フレムが返事をした。奥から来たブースターは、リエンという名前の様だ。するとリエンは、エレンとザドルの存在に気づき、ニヤっと笑いながら、フレムに話しかけた。
 「ねえねえ兄さん、あのエーフィって・・・兄さんの彼女?」
 「バッ、バカ! そんな訳ないじゃないか! 第一あのエーフィは男の人だ!」
 「ええっ! 嘘!?」
と、驚いた表情で、エレンを見た。
 「・・・どう見ても、女の人にしか見えない・・・」
 「そんなのどうでも良いから、自分の部屋に行ってなさい!」
 「はーい・・・」
と言って、リエンは家の奥に戻っていった。
 「ふー・・・すみませんエレンさん」
 フレムが謝った。
 「気にしなくてもいいよ! この姿じゃ、女の人に間違われるのも、日常茶飯事だから」
 「エレン前の町じゃ、20回近く、男にナンパされたからな!」
 エレンが言うと、ザドルが呆れた様に言った。
 「そ、そうなんですか・・・と、とりあえずこちらに・・・」
 フレムはザドルが言った事に驚きながらも、家の奥に誘導して、自室に導いた。

 フレムの部屋

 フレムの部屋は、フレムの真面目な性格から想像して、綺麗に片付いてるかと思ったら、微妙に散らかっていた。
 「す、すみません! 今片付けますので!」
と言ってフレムは、大慌てで部屋を片付け始めた。その間にエレンとザドルは、部屋の壁に掛かっている、一本の槍を見ていた。
 「立派な槍だね・・・フレムの?」
と、エレンは槍の感想を述べて、フレムに聞いた。
 「あっハイ! 僕の家に代々伝わっている名槍・火竜です!」
 「フ~ン・・・じゃあコイツと同じだな・・・・」
と、ザドルが自分の腰にある日本刀を撫でながら言った。
 「えっ? どうしてですか?」
 フレムが聞いた。
 「この日本刀・・・大雷神とエレンの日本刀・太陽神は、俺のダチのジーさまが持ってた物なんだ!」
 「そうなんですか・・・」
 暫くして、フレムは自室の片づけが終わり、フレム・エレン・ザドルは床に座った。
 「エレンさん、ザドルさん。実は折り入って、お話があるんですか・・・」
と、改まった様子で、フレムは言った。
 「どうしたのフレム? 改まって」
 「なんだ?」
 エレンとザドルが聞いた。
 「実は・・・御二人に騎士団に入ってほしいんです!」
 「・・・・・えっ?」
 「えっ? 何? 騎士団?」
 フレムのいきなりの言葉に、エレンとザドルは戸惑った。
 「ちょ、ちょっと待ってフレム! 騎士団って何?」
と、エレンが聞いた。
 「いきなりですみません。実は僕は、この街にある、騎士団に入ってるんです・・・」
 若干俯き状態で、フレムは言った。
 「その騎士団の名前は、ラティス騎士団。僕はそこの兵士です!」
 「・・・それは分かったけど、どうして僕達に?」
 「昨日のあなた達の戦いを見て、その強さに惹かれて、ちょうど騎士団員の募集をやっていたので、ぜひ騎士団に入ってほしいと思いました! お願いです! ラティス騎士団に入ってくれませんか!?」
と、頭を下げながら、大声でフレムは言った。
 「・・・少し考えさせてくれないかな? 今日の夜に返事をだすよ」
と、少し困った顔をしながら、エレンは呟いた。
 「・・・分かりました。この家の電話番号を教えますので、ご決断が出来たら、電話して下さい・・・」
 「うん! ありがとう」
 エレンはフレムに、番号を教えてもらった。

 その夜

 「・・・・・どうしようかザドル」
 ホテルのベットの上に座りながら、エレンはザドルに聞いた。勿論話の内容は、昼間のフレムの頼みである。
 「どうするって・・・・・俺らの目的は、キサラギさんを探す事だろ? お前の姉ちゃん探して会う為に、俺らは旅をしてるんだろ?」
 「それはそうだけど・・・フレムがあんなに必死でお願いしてくれたし・・・それに・・・」
 「それに?」
 「それに・・・・その騎士団に入れば、お姉ちゃんの情報が分かるかも知れないから・・・」
 「・・・・・」
 暫し沈黙が続いて、やがてザドルが切り出した。
 「エレン・・・・判断はお前にまかせる・・・お前が騎士団に入るって言っても、俺は文句言わないさ! どこまでもお前に付いていくさ!」
 「・・・・・ありがとうザドル・・・ちょっと下で、フレムに電話してくるね!」
 「ああ!」
と言って、エレンはザドルを残して、部屋を出た。下のフロントに着くと、エレンは公衆電話の所に行き、電話を手にとって、フレムの家に電話を掛けた。暫く呼び出し音がなり、やがてフレムが出た。
 「あっフレム? エレンだけど! こんばんわ!」
 『こんばんわ・・・あの・・・エレンさん・・・昼間の話は?・・・』
 「フレム・・・僕達・・・その騎士団に入ってみようと思ってるんだ!」
 『ほ、本当ですか!?』
 「うん・・・・それで、僕達はどうすればいいの?」
 『あっハイ! 明日ちょうど、入団試験がありますので、それを行って下さい! 会場への案内は、僕がしますので!』
 「うん! 分かった! 待ち合わせ場所はどうする?」
 エレンはフレムと話し合って、待ち合わせ場所を決めた。
 『じゃあ其処で待って居て下さい・・・エレンさん・・・本当にありがとうございます♪ おやすみなさい♪』
 「うん♪ おやすみ♪」
 そう言って、エレンは電話を切った。

 次の日

 エレンとザドルは、昨日フレムから言われた待ち合わせ場所で、フレムを待っていた。
 「エレンさぁ~ん! ザドルさぁ~ん!」
と、遠くから、青い服を着たフレムが、手を振りながら走ってきた。
 「ハア・・・ハア・・・すみません遅れてしまって・・・」
と、エレン達の前に止まると、息を切らせながら、フレムは言った。
 「いや、僕達も今来たところだから・・・それにしてもフレム・・・その格好・・・」
 フレムの服装は青いローブ姿で、ローブの胸元には剣と盾を合わせた様な紋章がある。さらに背中には、昨日のフレムの槍・火竜が背負われていた。そんなフレムの姿を見て、ザドルが言った。
 「なあフレム・・・お前のその服装・・・コスプレか?」
 「違いますよ! ラティス騎士団の制服ですよ!」
 「へぇ~・・・そういう制服なんだ・・・」
 フレムが言うと、エレンが感心した様に言う。
 「じゃ! 行きましょうか!」
と言って、フレムが案内をし始め、エレンとザドルが後を付いて行った。

 ※         ※ 

 それからフレムは、先に進みながら、騎士団の事を話してくれた。フレムによると、ラティス騎士団には100年以上の歴史があり、今の騎士団の団長(皆はリーダーと言っているらしい)は、4代目であるらしい。さらにそのリーダーは、1から12まである隊の内の、1番上の1番隊の隊長もやっているらしい。さらに驚いた事に、そのリーダー兼隊長のポケモンは、大手企業の社長令嬢であり、なんとこのアルトセレムがある国の王女であった。
 「ふ~ん・・・つまりその姫君の祖父さんが、この街を作って、この国を建設したんだな!」
 「そういう事ですよ!」
 フレムの説明に、ザドルが感心した様に言う。
 「ところでフレム。その騎士団のリーダーって、どんなポケモン?」
 「僕達と同じ、イーブイの進化系のブラッキーです」
 「ブラッキーか・・・」
と、エレン呟いた。
 「あれ? ブラッキー種の女の人は、エレンさんの好みでしたか?」
 フレムはからかいの意味を込めて、エレンに言った。
 「あ、いや、その・・・」
と、エレンは顔を赤くして、モゴモゴと言った。

 ※      ※

 やがて3人は、一昨日エレンが見た、大きな建物の前に着いた。
 「ここがラティス騎士団の城・ラグナ城です!」
と、フレムが説明した。城の前は、入団試験の試験者でいっぱいであった。エレンとザドルは、試験の申し込みをすると、フレムに案内されてながら、城の中へと入った。城の中は広く、初めて入った者は簡単に迷ってしまう程の広さであった。その城の中を、フレムに案内されながら、エレンとザドルは進んでいった。その時3人の目の前に、一人のグレイシアが現れた。グレイシアの服装はフレムの服装と同じである為、騎士団の者である事が、エレンとザドルにもすぐに分かった。ただ一つ、そのグレイシアは背中にマントを付けており、フレムはマントを付けていなかった。
 「あっ! コルル隊長!」
と言って、フレムはお辞儀をした。
 「フレムか・・・んっ? 後ろのエーフィとサンダースは、入団試験者か?」
 「あっハイ! そうです!」
 「そうか・・・入れるといいな! がんばれよ!」
と言って、コルルは去っていった。
 「今のは?」
 エレンが聞いた。
 「僕が入っている隊の隊長のコルル隊長です。ちなみにその隊は、7番隊です!」
 「そうなんだ・・・強そうだね」
 そう会話をすると、3人は再び移動を開始した。
 
 ※         ※

 暫くして、3人は一つの扉の前に着いた。
 「此処が試験会場です。試験の内容は筆記試験と実技試験の2つです。僕の案内は此処までなので、エレンさん達が合格する事を祈ります。それでは!」
と言って、フレムは足早にその場を去った。
 「ありがとうフレム!・・・・・じゃあ行こうか!」
 「そうだな!」
と言って、エレンは扉を開けて、ザドルと共に中に入った。部屋の中には、何百人もの試験者がいた。
 『オイ見ろよ・・・今回は女も受けるみたいだな・・・』
 『しかも、凄っげぇ美女だぜ!』
と、中に入った直後に、試験者のポケモンが、エレンを見ながら言った。
 『・・・・またエレンの事を、女と思っているバカがいるな・・・』
 ザドルは、心の中でそう呟いた。
 「ザドル、席に座ろ!」
 「あ、ああ! そうだな!」
 エレンとザドルは、受付での申し込みをした際に、指定された席に座った。やがて筆記試験が始まった。試験内容は難しい内容だったが、エレンには問題なく書き込み続け、ザドルは多少手間取ったが、何とか書き続けた。そして最後の問題に、『任務中に、任務か仲間かという事になったら、あなたはどうしますか?』という問題があった。
 『・・・そんなの簡単さ・・・』
と、小さく笑みを浮かべながら、エレンは心の中で呟いた。やがて試験が終了した。

 ※       ※

 終了した筆記試験の用紙を、係りの兵がチェックしていた。その時・・・
 「どう? 筆記試験の結果は?」
と言って現れたのは、フレム等と同じ服装で、背に日本刀を背負い、さらにマントを羽織り、耳に月の耳飾を着けた、ブラッキーの女性である。
 「ル、ルーン様!」
と、係りの兵は慌てて立ち上がり、敬礼をした。このブラッキーが、先刻フレムが話していた、ラティス騎士団のリーダー兼隊長。さらに社長令嬢であり、この西国にある国の姫である。
 「合格者はどれくらい出たの?」
 「はあ・・・今回の筆記試験の合格者は、8人です! それとこの用紙を見てください!」
と言って兵からルーンに、ある試験者の解答用紙が渡された。
 「・・・・・!・・・・・凄い・・・全問正解!?・・・」
 「ええ! 今までこの試験で、全問正解者は・・・」
 「そう・・・私だけ・・・」
と、用紙を返しながら、ルーンは言った。そして、その用紙を見ながら、ルーンは呟いた。
 「・・・エレン=サニー=アポロンか・・・楽しみね・・・」

 ※         ※

 試験終了から、約1時間15分(めっさ半端)後、合格者が発表された。合格者は、ゲンガー・カイリキー・ゴローニャ・オコリザル・スリーパー・チャーレム。そして・・・エレンとザドルの2人を合わせた、計・8人である。合格発表をされた後、8人は別の場所へと移動させられた。そこは闘技場であり、此処で実技試験を行う様だ。実技試験はトーナメント制で、戦う順番はくじ引きで決定する事になり、結果エレンの1回目はゴローニャと戦うことになり、ザドルはカイリキーと戦う事になった。ちなみにエレンは3戦目でザドルは1戦目からである。

 第一回戦 サンダース(ザドル)VSカイリキー

 円形状の闘技場の中心に、試合の審判とザドルとカイリキーが立っていた。その周りには観客席があり、そこには大勢の観客がいた。
 『・・・無理も無いか・・・この街を守る兵を決める戦いだからな・・・』
と、観客席を見ながら、エレンは心の中で呟いた。その時・・・
 「あのサンダースの小僧、災難だな! いきなりあのカイリキーだなんて・・・」
と、すぐ側にいたスリーパーが言った。でもエレンは、特に何も思わなかった。
 「・・・大丈夫・・・ザドルなら大丈夫さ・・・」
と、小さくエレンは呟いた。一方ザドルは余裕の表情で、カイリキーを見ていた。それに対してカイリキーは・・・
 「フン! どうした小僧? 俺が怖くて動けないか?」
 「はぁー・・・何でも良いから、とっとと来いよ! おっさん!」
 「なっ! 俺はまだ20代だ!」
と、『おっさん』と言われた事に、腹を立てたのか、カイリキーはザドルに向かってきた。しかしザドルは軽やかに避け、そのままカイリキーの頭上に飛び上がった。
 「あ~もう面倒くさいから、これで終わりだ! 『かみなり!』」
 ドガシャーン!!!
 ザドルはカイリキーに、『かみなり』を落とした。カイリキーは強力な電撃により、黒焦げになって倒れた。それを見た審判は・・・
 「しょ、勝者・・・ザドル=エレキ=スパキ・・・」
と、驚いている口調で、勝者のザドルの名前を述べた。

 ※       ※

 「勝てて良かったね! ザドル♪」
 「あれくらいの奴なんて、楽勝さ♪」
 勝って帰ってきたザドルを、エレンが笑顔で迎えた。そんなザドルを、他の試験者は・・・
 「何者だよ! あのサンダース・・・」
 「負けたカイリキーって、去年の試験で、決勝まで行ったんだよな!?」
という会話をしていた。その後2回戦が始まり、2回戦はスリーパーとゲンガーが戦い、ゲンガーが勝利した。

 第三回戦 エーフィ(エレン)VSゴローニャ

 3回戦目になり、エレンの番がやってきた。エレンが会場に出ると、観客席から・・・
 「うお! 凄っげぇ美人♪」
 「そんな可愛い顔だから、風俗店で働いた方がいいんじゃない?」
 「お嬢さん! 俺と付き合わない?」
と、明らかにエレンの事を、女性と間違えている状態で、観客は声を上げている。そんな中、対戦相手のゴローニャが・・・
 「だってよお嬢さん! どうだい? この後食事でも?」
 「・・・口説いていて、悪いですけど・・・僕は男ですよ!」
 「!!! お、男!? ふ、ふざけんな! 男でその顔はないだろ!? お前オカマか!」
と、完全に逆切れをしているゴローニャに対して、エレンは冷静に言った。
 「僕はオカマじゃありません。普通の男の子です」
 「ふ、ふざけんな!!!」
 とうとう最大限に切れて、ゴローニャは『ころがる』をエレンに仕掛けてきた。そしてエレンの目の前まで来た途端、突然ゴローニャの回転が止まった。その時エレンの青色の瞳と額の宝石が光っていた。エレンは『サイコキネシス』を発動させたのだ。そのままエレンは、ゴローニャを闘技場の端まで跳ね返し、ゴローニャは壁に激突した。壁に激突した後、ゴローニャは気絶していた。
 「・・・しょ、勝者・・・エレン=サニー=アポロン・・・」

 ※          ※

 「エレン。楽勝だったな!」
 「相手が強くなかっただけだよ♪」
 戻ってきたエレンに、ザドルが言った。そんな時、他の試験者は・・・
 「あのエーフィ・・・オカマのくせに強え~・・・」
 「世の中、オカマの方が強いのか!?」
と、話していた。

 ※          ※

 その後、チャーレムがオコリザルと戦い、オコリザルが勝った。ザドルの2回戦はゲンガーであり、余裕でザドルが勝利した。エレンはオコリザルと戦い、技を使用せずに、体術のみで勝利した。

 最終戦 エーフィ(エレン)VSサンダース(ザドル)

 そして遂に、最終決戦になった。戦うのは勿論、エレンとザドルである。これには観客も釘付けになり、あちこちで応援の声が上がった。
 「応援凄いね・・・」
 ザドルを見ながら、エレンが呟いた。その手には、日本刀が握られている。
 「そりゃあ、予想外の2人が残ったからな!」
と言うザドルの手にも、日本刀が握られている。
 「いいかエレン! 本気でかかってこいよ!」
 「勿論!」
 その言葉を最後に、観客の目から2人の姿が消えた。しかしエレンとザドルは消えた訳ではなく、目にも見えない程の速さで、刀をぶつけ合っていたのだ。

 ※        ※

 「どう? 調子は?」
 「あっ! ルーン様!」
 実技試験の状況を記録しているポケモンの所に、ルーンはやって来て話しかけた。
 「今は決勝戦で、決勝まで残ったのは、エレン=サニー=アポロンとザドル=エレキ=スパキの2名です」
 「・・・そうなんだ・・・彼・・・残ってるんだ・・・」
 「えっ?・・・・・彼って、誰ですか?」
 「エレン=サニー=アポロン・・・・私は彼に、期待してるんだ・・・」
 
  ※      ※

 「結構やるな! エレン!」
 「ザドルこそ! 頑張ってるよ!」
 2人はお互いの刀の刃をぶつけ合いながら言い合った。その時エレンが、ザドルに対してアイコンタクトをした。それを返す様に、ザドルもアイコンタクトをした。すると2人は、刀を鞘に納めた。観客が騒ぎ始めた時、エレンが言った。
 「すみません! 僕達これで棄権します!」
 「・・・・・・えっ!?」
 突然の事に、観衆は驚いている。観衆が驚いている間に、エレンとザドルは退場してしまった。

 ※        ※

 「えっ!? 何があったの?」
 いきなり慌しくなり、ルーンは兵士に聞いた。
 「エレン=サニー=アポロンとザドル=エレキ=スパキの両二名が、突如棄権を宣言し、会場を去りました!」
と、兵士が申しだした。
 「・・・・・取り乱さず、冷静に対処して!」
 それだけを言うと、ルーンは携帯を取り出し、誰かに電話をし始めた。

 ※        ※

 一方同時刻、アルトセレムの街中を、ラティス騎士団の制服を着た、ザングース・サンドパン・ストライクが歩いていた。
 ザングースの名前は、シード=クロウズ=ライド。サンドパンの名前は、クルガン=ニード=スレイター。ストライクの名前は、ソロン=オニオ=トルビ。三人共騎士団の隊長であり、三人揃って、カマイタチという呼び名があった。今日は非番であり、3人は町をぶらぶらしていた。そんな時、シードの携帯が鳴った。
 「んっ?・・・何だ?」
 シードは携帯を取り出し、掛けてきた人物を見た。
 「あっ! ルーン様だ!」
 シードは慌てて、電話に出た。
 「ハイ! 4番隊隊長・シードです! ご用件は何ですか?」
 『シード! 貴方達今、アルトセレムのどの辺にいる?』
 「?・・・東区に居ますけど・・・クルガンやソロンと一緒に、飲みにでも行こうかと思って・・・」
 『悪いけど、アルトセレムの中で、日本刀を持ったエーフィとサンダースを探してくれない?』
 「『エーフィとサンダース?・・・』その2人は、何かしたんですか?」
 『今日、騎士団の入隊試験があったでしょ? その2人は、決勝戦まで残ったんだけど、何を考えているのか、2人共突如棄権したのよ! それで・・・』
 「分かりました! 探し出して、あれをすればいいんでしょう?」
 ルーンが何かを言う前に、シードが答えた。
 『そう・・・お願いね・・・』
と言ってルーンは、電話を切った。シードは携帯をしまった。
 「シード・・・ルーン様は何の用件だったんだ?」
 冷静な口調で、クルガンが聞いた。
 「今日の入団試験の決勝戦の選手を探し出せって命令だ!」
 「それは何のポケモンだ?」
と、強い口調でソロンが聞いた。
 「エーフィとサンダースだ!」
 「エーフィ・・・って事は女か・・・試験に女が挑戦するなんて・・・珍しいな・・・」
 クルガンが、考えるポーズをしながら呟いた。
 「なあシード・・・人探しなら、エレノアの隊がいるだろ? 俺らが出る幕じゃないぜ?」
と、ソロンが言ったが、シードは溜息混じりに答えた。
 「ソロン・・・エレノアの隊・2番隊は、先週長期出張に行っただろ?」
 「あっ・・・そうだったな・・・」
 シードが呆れながら言うと、思い出した様に、ソロンは言った。
 「・・・とにかく探すぞ!」
と言って、3人はアルトセレムを、移動し始めた。

 一方・・・

 その頃フレムの家では、フレムの他に、エレンとザドルが話し合っていた。あの後フレムが呼び止めて、自宅へと連れて来たのだ。
 「エレンさん、ザドルさん。どうして棄権なんかしたんですか?」
と、困った顔をしながら、フレムが2人に聞いた。するとエレンが、冷静な口調で言った。
 「フレム・・・悪いけど僕らは、規律に縛られた騎士団で過ごすなんて出来ないんだ。僕らは自由・・・つまりフリーダムに過ごしたいんだ・・・」
 「つう事で、悪いなフレム」
 エレンが言い終わると、ザドルが続ける様に言った。
 「そうですか・・・残念です・・・」
と、フレムが残念そうに呟いた。
 ドンドン!
 その時誰かが、フレムの家の玄関の扉を叩いた。
 「ハーイ! どちら様ですか?」
と言ってフレムは、玄関へと向かい、玄関の扉を開けた。
 「よお! フレム!」
 「あっ! シード隊長! それにクルガン隊長とソロン隊長も!」
 フレムの家に遣って来たのは、シード・クルガン・ソロンの3人だった。
 「どうしたんですか? 隊長方が3人も参るなんて・・・何かあったんですか?」
 「いやな! さっきルーン様から連絡があってな! 今日の入隊試験の決勝まで残ったエーフィとサンダースを連れて来いって指令を貰ってな!」
 「!・・・それで、何で僕の所に?」
 フレムは、一瞬戸惑いながらも、来た理由を聞いてみた。
 「・・・街の住人から聞いた話で、お前と一緒にいるのを見たって情報があってな! それでフレム、その2人の事知らないか?」
 何故かシードは、一瞬間を置いてから答えた。
 「さっきまで一緒に居たんですが・・・何処かに行ってしまいました・・・」
と、フレムは嘘の事を、シードに言った。
 「何処に行ったか・・・分からないのか?」
 クルガンが聞いた。
 「すみません・・・分かりません・・・」
 「そうか・・・邪魔したな・・・フレム! お前の良い所は・・・嘘をつけない事だ・・・じゃあな!」
と言って、3人はフレムの家を出て行った。
 『・・・・すみません・・・シード隊長・・・』
と、心の中で謝りながら、エレン達の居る所に行った。

 ※       ※

 一方その頃、ルーンの所では、ルーンが一人のシャワーズと話していた。
 「ごめんアクア! 非番だったのに呼び出しちゃって・・・」
 「いいよ! どうせ僕、暇だったし♪」
 シャワーズの名前は、アクアの様だ。
 「それで、僕に用事って何?」
 「実は今日の入隊試験で、決勝まで残った2人が、途中棄権したんだ! けどその2人、凄く強いから、どうしても騎士団に入ってもらいたくて、捕まえようとしてるんだ。それで今から、私も捕まえに行く所なんだけど、アクアも手伝ってくれない?」
 「うん! いいよ!」
 「ありがとう」
 ルーンが礼を言った。するとその時、ルーンの携帯が鳴った。
 「もしもし?・・・シード? どう? 居場所は分かった?・・・そう・・・其処に居たの・・・じゃあその場所で待ち伏せしてて! 私とアクアもすぐ行くから!」
と言って、ルーンはシードからの電話を切った。
 「行こう、アクア」
 「うん♪」
 2人は、エレンとザドルを捕獲する為、行動を開始した。

 ※       ※

 「じゃあそろそろ行くね」
と言って、エレンは腰に日本刀を差し、背中にリュックを背負って、立ち上がった。ザドルも同じ行動をした。
 「またこの街に来たら、僕の所に来てくださいね!」
 「ああ! 約束する!」
 フレムが言った事に、ザドルが答えた。
 「じゃあね! フレム」
 エレンは笑顔で言い、フレムの家の玄関の扉を開けた。最初にエレンが出て、次にザドルが出ようとした。その時、
 「!!」
 ザドルが何者かの気配を、頭上に感じて、日本刀を抜いて、頭上で横に構えた。するとそこに、鋭い爪と鋭い刃が当たった。その爪と刃の主は、サンドパンのクルガンとストライクのソロンであった。
 「何だお前ら!」
 彼らの爪と刃を弾いて、ザドルが叫んだ。
 「ラティス騎士団・6番隊隊長・クルガン=ニード=スレイター」
 「同じくラティス騎士団・8番隊隊長・ソロン=オニオ=トルビ」
 クルガンとソロンが言った。
 「・・・その隊長方が、僕達に何の用ですか?」
 何時の間にか荷物を置き、日本刀を抜いていたエレンが聞いた。
 「・・・・我らの騎士団のリーダーの命によって、お前達2人を連行する!」
と、ソロンが言った。
 「・・・・そこまで説明されて、ハイそうですかって言うかよ!」
 ザドルは大声を上げて、2人に向かって突進した。
 「ザドル!」
 エレンはザドルの援護に向かおうとした。しかしその前に、一人のザングースが立ち塞がった。それはシードであった。
 「悪いが、お前の相手はこの俺だ! 俺はシード=クロウズ=ライド。ラティス騎士団の4番隊隊長だ!」
 シードは、自分の胸の所に、手をクロスさせながら言った。その手の先端には、鉤爪付きのナックルが装着されていた。
 「・・・あなたを倒さないと、この街から逃げられないというとなら、お相手しましょう」
と言ってエレンは、日本刀を両手で構えた。その瞬間、シードが(技ではない)突進をしてきた。
 
 シャキン!!!

 シードのナックルが、エレンの目の前を舞った。その瞬間、エレンのブレザーの下にある、白いワイシャツに切れ目が入った。
 『このザングース・・・やるな・・・』
 そう心の中で呟きながら、エレンは刀を振った。しかしシードは、間一髪の所で回避した。
 「このワイシャツ、予備は一枚しか無いんですよ」
と、冷静な口調でエレンは言った。
 「なら、これ以上やられないようにするんだな!」
と言って、再びシードが攻撃をしてきた。エレンは冷静に見切り、瞬時にその攻撃を避けた。一方ザドルは、二人相手にも互角の勝負を行っていた。サンダース種特有の素早さを生かし、避け続けていたのだ。しかしザドルは、おのれの体力に限界を感じていた。
 『ハア・・・ハア・・・不味いな・・・俺の体力も、そろそろ限界だ・・・んっ?』
と、心の中で呟いた時、ザドルはある物を発見した。それは二つのゴミ箱であった。
 『よし・・・』
 ザドルは手前にいたクルガンを蹴っ飛ばし、ゴミ箱の一つを取った。そしてその背後には、ソロンが居た。
 「いい加減、捕まれ! 俺も疲れたんだよ!」
 「んじゃこれでも喰らって、俺を諦めろ!」
 ソロンの言った事を言い返し、頭から持っていたゴミ箱を被せ、用水路まで蹴り飛ばした。ソロンはゴミ箱を被ったまま、用水路に落下した。
 「ソロン!」
 転倒していたクルガンが叫んだ。しかしその直後、ザドルはクルガンの頭にも、ゴミ箱を被せた。
 「エレン! こっちは終わったぞ!」
 そう言ってザドルは、エレンの方を見た。その直後に、エレンはシードを転倒させ、再び起き上がろうとしているシードの首筋に、刀の刃を当てていた。
 「勝負ありです・・・」
 冷静な口調で、エレンは言った。
 「・・・やるな・・・俺の負けだ・・・隊長である、俺を負かすなんて・・・お前・・・女なのにやるな・・・」
 シードは勝負に負けたのに、シードは笑みを浮かべて言った。そんなシードに、エレンは困った様な顔をしながら言った。
 「・・・残念ですけど、僕は男ですよ・・・」
 シードに言われた事に、エレンが答えると、シードは表情を変えずに言った。
 「そうか・・・悪かったな・・・その気持ち、俺は分かるぜ・・・」
 「?」
 エレンはシードの言った事が、理解出来なかった。
 「エレン、もう行こうぜ! これ以上居たら、また面倒な事になるぜ!」
 「う、うん・・・」
 エレンは、シード達を一目見ると、ザドルと共に、足早にその場を去った。エレン達を見送った後、シードは起き上がり、ゴミ箱を被っているクルガンのゴミ箱を取った。クルガンは気絶をしていた。次に用水路に落ちたソロンを助けた。落下の衝撃で、仰向けの状態で気絶した様だ。そんな二人を見て、シードは溜息を漏らしながら、シードは携帯を取り出し、ルーンに電話をし始めた。
 「ルーン様ですか?・・・申し訳ありません・・・捕獲に失敗しました・・・えっ?・・・・・」
 シードは、ある事を聞き、驚いた声を上げた。それはルーン達も、エレン達の捕獲活動をしている事であった。
 「分かりました・・・・それでは・・・」
 そう言って、シードは電話を切った。
 「・・・ルーン様とアクアが出るなんて・・・大丈夫か? あの2人・・・」
 シードは静かに呟いた。

 ※          ※

 「なあエレン・・・あいつら・・・俺らの事、諦めたかな?」
 慎重に街中を進んでいる時、ザドルが呟いた。
 「・・・僕の推測から言うと、まだ諦めてないと思う・・・相手は軍事組織だから、先の彼らじゃなくても、別の誰かが、僕らを捕まえる可能性は十分にある。それに彼ら、自分達の事を『隊長』って言ってたよね? 普通の兵がくるなら、まだ僕らの事を諦める可能性もあるけど、隊長自身が出て来るって事は、なかなか諦めない可能性もあるよ」
 エレンは、自らの推測論を述べた。
 「・・・また、めんどくせぇ事に巻き込まれたな・・・」
 ザドルは、頭を片手で押えながら言った。
 「ザドル、これ以上一緒にいたら、見つかる可能性が高くなる、だから二手に分かれよう!」
 「分かれるって・・・じゃあ何処で合流するんだ?」
 「このアルトセレムの外にしよう。来る時アルトセレムの回りの草原を見たんだけど、一部草の長さが長い所があったんだ。そこにしよう」
 「分かった・・・・なあエレン・・・」
 「んっ?」
 「お前って凄ぇよな。俺より頭の回転が早くて、いつも直ぐに耐用策練るしさ、俺驚いたぜ・・・・・捕まるなよ!」
 「ザドル・・・ザドルも・・・捕まらないでね・・・」
 ザドルの言った言葉に、エレンは笑みを溢した。エレンが返事を直後、ザドルは走っていった。エレンはザドルを見送ると、制服のポケットから、ブルーレンズのサングラスを取り出し、それを掛け始めた。エレンは世にも珍しい、ブルーアイズのエーフィなので、目立つのを防ぐ為、ブルーレンズのサングラス等を持っているのだ。そしてエレンは、ザドルとは別の道を進んでいった。

 ※      ※

 エレンと分かれたザドルは、敵に見つからないように、水位の低い所の水路を歩いて進んでいた。
 「ついてねえよな・・・何で俺らって、何処に行っても、追い回されなきゃいけねえんだ・・・まあそれで、エレンを責める訳にはいかないな・・・・んっ!?」
 橋の下を通っている時、突如ザドルは背後に、何者かの気配を感じた。しかし振り返っても、そこには誰もいなかった。ザドルは再び歩き出そうとしたが、やはり気配を感じ、再び振り返るが、やはり誰もいない・・・
 「?・・・よし!」
 ザドルは再び歩く為、片足を前に出した。しかしザドルは、足を降ろす前に、バッと後ろに振り返った。技ではない、フェイントを行ったのである。フェイントの結果、背後にいたのは、橋の上から覗いている、シャワーズのアクアであった。
 「キャ!」
 自分に気付いた事に驚いたのか、アクアは驚いた声を上げた。そしてそのまま、水路に落下してきた。
 「何だ?」
 ザドルが疑問に思うと、水飛沫を飛ばしながら、アクアが出てきた。
 「びっくりした~。いきなり振り返らないでよ! 服が濡れちゃったじゃないか・・・」
 「・・・お前が勝手に落ちてきたんだろ・・・つか、お前誰?」
 ザドルが聞くと、アクアが真っ直ぐにザドルを見てきた。その瞬間、ザドルはドキッとしてしまった。それはアクアの顔が、ザドルの好みだったからである。
 「僕は、アクア=マーリン=トリトン。ラティス騎士団の1番隊隊長だよ!」
 「なっ! またかよ!」
 ラティス騎士団の者と聞いて、ザドルは身構えた。それを見てアクアは、クスクスと笑って言った。
 「そんなに身構えないでよ♪ 別にロープで縛って、皮の鞭で叩くって訳じゃないんだから♪」
 「なんちゅー、ドSな事を言ってんだ!」
 顔に似合わず、サディスティックな事を言うアクアに、ザドルは驚いた。
 「まっいいや! とにかく捕まえるね!」
と言って、アクアは腰に手を当てた。すると次の瞬間、手を当てた部分から、紐状の長い物が、ザドルの方に飛んできた。ザドルは咄嗟に、日本刀でそれを防いだ。そしてザドルは、その紐状の物が何なのかが分かった。その正体は鞭であった。
 「もう! グルグル巻きにしようと思ったのに!・・・」
 不満そうな声を上げながら、アクアは鞭を引かした。
 「そんなドS女に、俺が捕まってたまるか!」
と、ザドルは大声をあげて、ザドルは逃げ出した。しかし本心はアクアの強さを、本能的に感じていたからである。
 「あー待ってよ!」
と言って、アクアはザドルの後を追った。

 一方その頃・・・

 「ザドル・・・遅いな・・・」
 エレンが茂みに隠れながら呟いた。あの後エレンは、なんの問題もなく、アルトセレムを脱出する事が出来たのだ。
 「大丈夫かな・・・」
 ザドルの事を心配しながら、エレンはゴロリと、草の上に寝転がった。寝転がった理由は、連中に見つかる可能性を下げる為だ。
 「ザドルが来るまで・・・少し寝ようかな・・・・」
 エレンは小さく欠伸をして、静かに目を閉じた。しかしその直後、何者かの気配を感じ、目を開けてみた。するとそこには、ラティス騎士団の制服を着て、腰に日本刀を差したブラッキー・ルーンが立っていた。
 「!?」
 エレンは驚いて、慌てて起き上がった。そんなエレンを見て、ルーンはクスクスと笑った。
 「誰ですか・・・あなた?・・・見たところ、ラティス騎士団の人みたいですが・・・」
 「あら? 人にものを尋ねる時は、自分から言うものでしょ?」
 そう言われて、エレンは『それもそうだ』という感じで頷いた。
 「それもそうですね・・・僕は・・・」
 「エレン=サニー=アポロン・・・でしょ?」
 「!?」
 エレンは、自分が知らない人物に、自分の名前を言われ、少々驚いた。
 「何で・・・僕の名前を?・・・あなたは一体・・・」
 「入団試験の名簿で知ってるわ・・・そして私の名前は、ルーン=ルナ=アルテミス・・・ラティス騎士団・1番隊隊長・・・そして・・・ラティス騎士団のリーダーなんだ・・・」
 「!!!」
 エレンは心底驚いた。ラティス騎士団のトップが、自分の目の前に居るからである。
 「そういえば、ラティス騎士団のリーダーは、ブラッキー種の女の人と聞きましたけど・・・・まさかあなたとは・・・」
 エレンはゆっくり後ずさりしながら言った。そんなエレンに、ルーンは更に言った。
 「私が騎士団なら・・・・、何をしたいか・・・分かるよね?」
 ルーンがそう言うと、エレンは静かに刀・太陽神を抜いた。
 「・・・出来れば僕は、戦う事を望みません・・・ですがあなたが望むなら・・・お相手します」
 エレンが静かに言うと、ルーンも刀を抜いた。
 「そう・・・ではお手柔らかに・・・」
 そう言った瞬間、ルーンは『でんこうせっか』の如く、エレンに突進してきた。そしてエレンの前まで来た時、ルーンは刀を振り落としてきた。エレンは咄嗟に太陽神で、ルーンの刀を防いだ。刀を防いだ瞬間、ルーンは素早く身を引かせた。
 「流石入団試験を決勝まで残り、更にシードを倒した子ね・・・若干17歳で、其処までやるなんて、驚いたわ!」
と、ルーンが言ったが、エレンはその言葉にムッときた。何故ならその言葉は、子供扱いされている様だからである。
 「生憎にも僕は、まだ本気ではありませんよ!」
 エレンはそう言って、ルーンを挑発した。何故かエレンは、このルーンともっと本気で戦いたい気持ちになっていた。しかし其れは、エレンだけではなかった。
 「そう、それじゃ本気になってもらわないと! 実は私も、まだ本気じゃなかったのよ!」
 実はルーンも、エレンと本気で戦いたかったのだ。2人の戦いは、さらにヒートアップした。

 ※      ※

 「ね~待ってよぉ~♪」
 「だー! しつこい!(怒)」
 鞭を振り回しながら追ってくるアクアに、未だにザドルは逃げていた。何時の間にかザドルは、アルトセレムの出入り口の近くまで来ていた。しかし出入り口の前には、兵士が立っていた。
 「どけ! 『かみなり』」
 ザドルは兵士に対して、かみなりを使用し、兵士にダメージを与えて追い払った。そしてザドルは、ようやくアルトセレムを脱出出来た・・・が、それでもドSシャワーズ・アクアは追ってきた。
 『ちきしょ~どうすりゃ・・・んっ!?』
 そう考えていたザドルの目に入ったのは、交戦中のエレンであった。
 「隙あり♪」
と、ザドルがエレンに気を取られた瞬間、アクアの鞭が、ザドルの腕に巻きついた。
 「あっ! しまった!」
 ザドルは呆気にとられたが、最早後の祭りである。そんなザドルにアクアは、ニコニコしながら言った。
 「もうこれで、僕から逃げられないね・・・丁度すぐ側で、ルーンがあのエーフィを捕まえ様としているしね♪」
 アクアの言葉を聞いて、ザドルは笑みを浮かべた。
 「あのな・・・そう簡単にエレンは捕まらねえよ」
 「! へぇ~エレンちゃんっていうんだ・・・あのエーフィ・・・ルーンも女の子だから、其れなりに手加減してるみたいだけど・・・」
 「エレンは男だよ! それにな、あのブラッキー・・・ルーンだっけ? 確かに本気は出してないけど・・・エレンの奴は、それ以上に本気を出してないぜ」
 「えっ!?」
 アクアが驚いた表情を見せたが、それは直ぐに収まった。アクアも瞬時に、エレンの意気を把握したのだろう。
 「アイツはな・・・凄っげぇ優しい性格だから、他人に本気は出せないけどな・・・本気を出せば・・・俺より強いぜ♪」
 笑みを浮かべながら言ったザドルは、言い終わるとエレン達の方を見た。アクアはそんなザドルの腕から、そっと鞭を外して、ザドルと同じく、エレン達を見始めた。

 一時間後

 一時間が経過し、エレンとルーンは今だ交戦していた。しかし暫くすると、エレンは少し下がって、刀を鞘にしまった。
 「? どうしたの?」
 ルーンが不思議そうに聞いた。すると・・・
 「・・・すみません・・・僕は、本気では戦っていませんでした」
 「・・・・」
 エレンの言葉を、ルーンは無言で表情も変えずに聞いていた。
 「僕は本気では戦えません・・・本当にすみません・・・」
 エレンは謝罪の意味を込めて、頭を下げた。そのエレンに、ルーンは静かに言った。
 「分かってた!」
 「えっ?」
 ルーンの言葉に、エレンは驚いた。
 「君は、本気で戦うって言ったけど、戦って分かったんだ。君は本気で戦っていないって・・・それは君が、優しいからだね?」
と、全てを見透かしていた様に、ルーンは言った。そしてルーンは、自分の刀を鞘にしまった。
 「・・・僕の負けですね・・・分かりました・・・あなた方の騎士団・・・ラティス騎士団に入団します・・・」
 エレンはそう言ったが、エレンの表情は失望の表情ではなく、期待を込めた表情であった。
 「ありがとう・・・エレン=サニー=アポロン・・・あなたをラティス騎士団の兵士として迎えます・・・」
と、ルーンがエレンに、優しく言った。
 「何だエレン。負けたのか?」
 「ザドル!」
 エレン達の戦いを見ていたザドルが、エレンに話しかけた。
 「ずっと見てたの?」
 「ああ! コイツとな・・・」
 そう呟きながら、アクアを見た。
 「あなたは?・・・」
 エレンが聞いた。
 「僕は、アクア=マーリン=トリトン。ラティス騎士団の1番隊隊長だよ♪」
 「・・・あれ? 1番隊の隊長って・・・2人居るんですか?」
 「そうだよ♪ 僕とルーンの2人でやっているんだ♪」
 「そうですか・・・」
 そうエレンが感心していると、ザドルが再び話しかけてきた。
 「お前は、この騎士団に入るのか?」
 「うん・・・ごめんねザドル・・・君との旅は、これで終わりだね・・・」
と、エレンは寂びそうに言った。するとザドルは・・・
 「何言ってんだよ! 俺も入るに決まってんだろ! だからそんな顔をするな! 可愛い顔が台無しだぞ!」
と、皮肉を込めて、ザドルは言った。その途端エレンの顔が笑顔になった。
 「ザドル・・・ありがとう」
 エレンが礼を言った。そしてザドルは、ルーンの方を向いた。
 「なあリーダーさんよ! 俺は入れるのか?」
 ザドルが聞くと、ルーンは・・・
 「決まってるじゃない♪ ザドル=エレキ=スパキ・・・あなたをラティス騎士団の兵士として迎えます・・・」
 「よっしゃー!」
と、ザドルは高らかに叫んだ。
 「良かったねザドル♪ これで僕は、毎日君を鞭で叩けるね♪」
 アクアが笑顔で言った。
 「めっさドSな事言うな!」
 ザドルの大声が、夕暮れの草原に響いた・・・。

 その後

 ルーンは事の収拾後、エレンの入団試験の筆記試験の用紙を見ていた。そして最後の問題(任務中に、任務か仲間かという問題)を見て、ほくそ笑んだ。何故ならその答えは・・・・・『仲間』であったからだ・・・これがエレンの運命の始まりだった・・・・・。


 フリーダム・ナイト 1 太陽の騎士と月の姫君 完 2に続く・・・


 あとがき(○○について)

 皆様の暖かい応援のおかげで、何とかフリーダム・ナイトの第一話を終える事が出来ました。そこであとがきとして、この作品の裏話をします。

 タイトル・フリーダム・ナイトについて
 「フリーダム・ナイトは当初、フリーダム・シーフという題名で、エーフィとサンダースの怪盗をブラッキーとシャワーズの刑事が追いかけるという内容でしたが、ネタが思いつかなかった為、原版で冒頭だけでて、自然消滅という形になりました。」

 舞台・アルトセレムについて
 「名前で分かると思いますが、元ネタは、劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオスの舞台、アルトマーレです。水の都が一番好きなので、アルトマーレに似た街、アルトセレムに決定しました。」

 組織・ラティス騎士団について
 「上のアルトセレムと同じ様に、ラティス騎士団のラティスは、ラティアスとラティオスから来ています。原版での騎士団の名称は、ジャスティス・イービル騎士団(直訳で「正義の悪騎士団」という意味です)でしたが、此処での掲載を考えたら、あまりにもネーミングセンスが無いので、急遽ラティス騎士団に変更しました。」

 服・ラティス騎士団の制服について
 「ラティス騎士団の制服は、最初は旧大日本帝国海軍の将校の制服を元にした制服でしたが、何らかの理由で、今のローブの制服にしました。」

 思い浮かぶだけ記載しましたが、まだ何か気になるなら、質問してみて下さい。分かる限り答えます。それでは♪
 
 
 










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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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