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フライゴントーク3 メガシンカってどうなのよ?

/フライゴントーク3 メガシンカってどうなのよ?

 皆様呂蒙です。この作品はところどころぶっとんだ内容があります。
「そんなのキライだ」という人は読まないことを強くお勧めします。それでもいいという方だけ、下へどうぞ
















 雪は降らないけど、吹きぬける風がいっそう、冷たくなったように、ぼくには感じる。外の水溜りには氷が張るようになった。寒いのは苦手だよ……。
 ここのところ、ご主人は機嫌が良かった。ご主人はちょくちょくバイトをして、お小遣いを稼いでいるのだけれど、どうやら、今月はその収入がいつもより多かったみたいだ。
 ご主人はテレビをそんなに見ない代わりに、本や雑誌はよく読む。この日も買ったばかりの雑誌に目を通していた。ご主人が目を通しているのは、ポケモン関係の雑誌だった。雑誌は普通、1週間毎の発売だったり、1ケ月毎の発売だったりするんだけど、この雑誌は毎月1日と、16日に発売されている、つまり、1ヶ月に2回発売されているちょっと変わった雑誌なんだ。でも、1月1日だけは例外だけどね。
 ご主人は、毎号欠かさず、この雑誌を買っている。その割にポケモンに関する知識は乏しいんだけど、それについては何も言わないようにしている。ご主人が言うには「お前、ポケモンなんだから、お前が知識を持ってれば、それでいいじゃん?」ってさ、少し無責任じゃない? 一応、ぼくの保護者なんだよ、一応ね?
 で、ご主人がいつも楽しみにしているのは、巻末に載っているアンケート。はがきで、質問に対する答えを書いて、送り、雑誌に掲載されれば、いくらかの賞金がもらえるんだ。ちなみに金賞を取ると、5万円もらえる。
「はがき1枚50円だろ、で、銅賞が、2万円だから、1万9千円は手に入る。特別賞は5千から3万円の間だけど、それでも、4千円は手に入るからな。割のいいバイトだ」
 って、ご主人は言っている。ご主人はそろばんを習っていたことがあって、計算が速い。ぼくもこれには舌を巻いてしまうよ。例えば、197×453は? と聞いてみると、
「89241だな」
 と10秒以内に答えが返ってくる。最初は適当なんじゃないかと思ったけど、間違えることはほとんどない。ご主人は3桁×3桁くらいなら、電卓は必要ないって言っていたね。ほかの、足し算、引き算、割り算も同じ。
 雑誌に目を通しているご主人。すると、
「おっ、やったぞ、銅賞だ。2万円ゲットだ」
 どんな質問かというと「サトシ君の新しい自己紹介メッセージを考えてください」というもの。って、ご主人にとっては不利な質問じゃん。アニメの「ポケモン」の時間はご主人はバイトで、家にいない。そうでなくても、ご主人は普段テレビを見ない。それで、入選しちゃうって、録画でもしてたのかな?
 ちなみに金賞が「10歳だけど、15年近く旅してるマサラタウンの……」って、それ言っちゃダメでしょ。銀賞にいたっては「おっす、オラ、マサラタウンの……」って、えーっと、どちら様でしたっけ? ご主人の銅賞にいたっては、もっとひどいというよりも、訳が分からなかった。
 はっきり言って、いろいろと壊れている答えが入選していた。このアンケート、真面目に答えるよりもフザけた答えの方が入選しやすいという特徴があるんだ。選ぶ方も人間だから、面白いのを選ぶんだろうね、きっと。もちろん、真面目な答えが金賞を取るときもあるけどね。
「すごいだろ、これ」
 ご主人は銅賞、でも答えがひどい。えーっと「査察なの、よろしくね」で、語尾の後ろにハートマークがついていた。それぞれ入選した答えの横には、このコーナーの担当からのコメントが着いているんだけど、そのコメントはコメントというよりも、ツッコミだった。「自己紹介になってねぇよ、てか、お前誰だよ!」だってさ。そりゃ、そうだよ。
 ご主人は、この答えになってない答えで、2万円もらえることに喜んでいた。
「よ~し、ナイル。賞金が振り込まれたら、どっかに食いに行くか」
 まぁ、それはそれで、素直に嬉しいな。普段、粗食だから。
 もともと、このコーナー、最初は真面目なコーナーだったらしいんだけど、面白い答えや、個性的な答えには特別賞をあげることになっているせいか、特別賞狙いで、変な答えがだんだんと増えてきて、で、いつの間にか、ギャグコーナーになってしまったらしい。ご主人も、前に変な回答が雑誌に載ってしまったこともあり、これに味を占めて、毎回変な答えを送りつけている。まあ、かといって、必ず雑誌に載るわけじゃないんだけどね。
 で、次の雑誌の発売日。またも、ご主人の答えが載っていた。今度は、アニメのヒロインに一言メッセージをというのが、お題だったんだけど、ご主人は「別に応援メッセージにしろとは書いていない」と、変な解釈をして、またも珍回答を送りつけてしまった。なんで、そういうことするの?
 特別賞を取った、ご主人の回答が雑誌に載っていた。
「『君はもう、ヒロインじゃなくなるんです!』ってさ、いきなり降板じゃ、可哀想じゃん」
「別にいいだろ、こういうフザケタ回答があっても。それに見ろ、コメントの方も楽しんでるじゃないか」
「『応援してくれなかったら、潰すわよ』って、キャラ崩壊してるじゃん」
「潰されたら『タマライゴン』だな」
「ぼく、関係ないし!」
 ちなみに、ご主人はこのフザケタ回答で1万8千円をもらっていた。確かに、はがき1枚でこれだから、割のいいバイトかもね。

 それから、しばらく経ったある日のこと。ご主人はいつもの雑誌を読んでいた。例のアンケートだけど、最近は調子が悪いのか、それとも運が悪いのか、雑誌に掲載されていないみたい。
「なぁ、ナイル」
「何?」
「『メガシンカ』ってなんだ?」
「え? 知らないの?」
「そ、そんなことはないぞ、り、理論は知ってる」
 ああ、やっぱり分からないでしょ。まあ、僕も何となくしか知らないけどさ。とりあえず、分かる範囲で説明しておこうかな。
「視力がよくなるのか? 『目が進化』だから」
「……それで、バトル中に何の得があるわけ?」
 やっぱり分かってなかった。
「わかったぞ、3分間待っても、やられなくなるんだな」
「3分待って、どうするわけ? ラーメンでも作るの?」
「なんというか、こう、素晴らしい状態になるんだな?」
 間違ってはいないよね。とりあえず、ある特定のポケモンに、アイテムを持たせて、条件を揃えるとできるということをざっくりと説明しておいた。
「ナイルもできるのか『メガシンカ』」
「いや、ぼくはできないと思うけど」
「玉を潰せばいいんじゃないか『タマライゴン』に『メガシンカ』」
「そうそう、言い忘れてたけどね『メガシンカ』ってのは、一時的なもので、その後は元に戻るから、潰したら、それっきりでしょ。それと、もし潰したら、粉微塵にするから。ドラゴンなめると後が怖いよ」
 100倍どころの話じゃ済まさないから。雑誌を読むと「メガシンカ」については詳しいことは分かっていないのだけれど、どうやらポケモンに内在する何かを覚醒させると、起きるという仮説がたてられていて、それが今のところ、有力な説みたいだね。でも、そうすると、決まったポケモンにしか起きないのはおかしいではないか、という反論もあって、結局、まだどれも仮説の域を出ていないみたいだね。
「メガシンカ」は訓練で身につくものかって言うと、それは無い気がする。ご主人の暗算能力は小さい頃の訓練が生きているんだろうけど、それとこれとは別問題な気がする。一体、どういう仕組みなんだろう?

 それからまた数日後のこと。ぼくは「メガシンカ」のことが頭から離れなかった。そんな日のこと、ご主人が1冊の本を見せてくれた。それは薄い文庫本だった。
「これは、イギリスのスティーブンソンが、今から130年前に書いた小説『ジキルとハイド』だ」
 ご主人はこの小説の内容をざっくりと説明してくれた。
 ジェントルマンのジキル博士が自らを善と悪に分けるという発想から、発明した薬は、ジキル博士のもう一つの姿である、品性下劣で、醜いハイド氏を生み出すが、次第に己の悪に対する抑制が効かなくなったハイド氏は、有力者の老紳士を殺害するという事件を起こしてしまう。ハイドからジキル博士に戻る薬も徐々に効かなくなり、ついには、薬を飲まなくてもジキル博士はハイドになってしまうようになる。やがて、ジキル博士の知人や使用人、警察にジキル博士とハイド氏が同一人物であることがバレてしまい、ジキル博士だが、ハイド氏なのか区別がつかなくなってしまった男性は、自らが逮捕される前に命を絶つ、という結末で終わっている、と、ご主人が教えてくれた。
「でも、これは、二重人格のことを書いた話でしょ、しかも130年も前の」
「強さに魅せられ、自分を抑えきれなくなり、何回もメガシンカをした挙句、メガシンカが解けなくなるってこともあるんじゃないか? まだ、よく分かってないこともあるようだし、こういうことが現実に起こっても不思議じゃないぞ」
「まぁ、ね」
 ぼくは、反論できなかった。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、メガシンカで分かっていることは「一時的に強化」されるということだけだ。想定外のことが起きることだって、あるかもしれない。
 もし、ぼく自身に秘められた力があったら、ぼくはそれをどうするだろう? ちなみにご主人、
「ここに1枚の500円玉がある。この500円玉をオレが無限に増やせる能力があるとしたら……」
「絶対、使いまくるでしょ?」
「当たり前だ。考えてみてくれよ。この合金のコインで、この部屋を埋め尽くすことができたら、あっという間にウッハウハだ。美味いものを好きなだけ食えるし、新しいパソコンも買えるし、車だって買える。海外旅行も行き放題だ」
 欲望丸出しのご主人。でも、ぼくだってね「欲」くらいあるから。
「手始めにサザンドラをブチのめせるくらいの力が欲しいかな。欲しいものもいっぱいある。世界の珍味を食べつくしたいし、屋敷を建てて、地中海の島でのんびり過ごしたいし……」
「だろだろ? もし『メガシンカ』で強大な力を得ることができたとしたら、絶対悪用する奴が出てきてもおかしくは無いだろ? 例えば、銀行に押し入るとか、宝石店を襲うとか。警察だって蹴散らせるだろうし」
「まぁ、ね。無いとは言い切れないよね」
 ぼくは、多分「メガシンカ」はできないと思う。出来たとしても、必要はないかなぁ。身の程をわきまえるっていうか、ね。
 何だか、背中に冷たいものを感じた。汗、か。普段、ほとんど汗をかかないんだけどね。暖房が効きすぎているせい、かな。きっと、そうだよ、ね?



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Last-modified: 2014-01-18 (土) 13:30:00
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