ポケモン小説wiki
フェアリー4倍

/フェアリー4倍

大会は終了しました。このプラグインは外してくださってかまいません。
ご参加ありがとうございました。

エントリー作品一覧


信頼できる相手と 


「お姉さん! お願いします! 俺にツノドリルを打ってください!」
 仕事終わりの帰り掛け、小さなダクマが頭を下げてきたときに、私は耳を疑った。
 私は木材加工の仕事をしているギャロップ、現在独身で恋人募集中。山奥の小屋に住んでいるため出会いも少なく、そんな私がなぜこんな男の子に絡まれるのか、思い当たる節が全くない。よくよく話を聞いてみると、なんでも彼は進化したいのだとか。それも『一撃の姿』? とやらに進化したいとのことで、私を頼ってきたというわけだ。
「お姉さんは昔、探検隊をしていたと聞きました! 技も冴えていたという噂です! なのでぜひ、俺にツノドリルを!」
「……いや、死ぬわよ?」
 ダクマの頼みに私は苦笑した。私が探検隊を引退したのはほんの一年ほど前の話だ。戦いの最中、目に溶解液を浴びて、今は左目にほとんど視力がない状態だ。日常生活を送るのには問題こそないものの、全方位に集中し、気を張っていなければ命が危うい探検隊には結構致命的な問題だ。今は拠点としていた街を離れ、故郷のこの村荷で戻、角で木材に穴をあけたり、サイコカッターで任意の形状を作って木材加工をして細々と暮らしているのだ。
 そんな私に稽古をつけて欲しいだなんて、酔狂にもほどがある。
「手加減できなくて死んでも知らないよ?」
「確かに、死にかけるかもしれないけれど、だからこそっす! 同級生はもちろん、大人ですらみんな俺よりもレベルが低いから、俺を一撃で殺すような、鬼気迫るような威圧感がないんすよ……でも、それじゃ意味がないっす! 誰か、本気で俺を殺しにかかってくるような、そういう威圧感のある攻撃を捌けないと、俺はきっと進化できないっす!」
「あー、なるほど。もう同級生じゃ相手にならないのね」
 普通のポケモンは体を鍛えれば進化できるが、このダクマという種族は普通に体を鍛えるだけでは進化できないのだとという。その進化条件の厳しさはもちろんだが、親が進化した年齢になっても一向に進化する気配がないのが彼の悩みなのだそうで。
「そういう進化が遅い子もいるから気にしなくてもいいって親父も先生も言うんだけれど、俺はさっさと進化したいんだ。でも、その方法が見つからなくて……」
 彼らダクマは連撃の型、もしくは一撃の型という二つの姿に進化するのだが、それぞれ過酷な戦いを乗り越えた後に、強烈なインスピレーションを感じたときのみにしか進化できないという話だ。
 しかし、彼がなりたがっている姿と同じ、一撃の型の父親は長期の出稼ぎ中。父親が付き合ってくれるなら進化も出来そうなのだが、なんでも、巨獣狩りの赤狼の付き人をしており、ひっきりなしに依頼が舞い込むためなかなか家に帰れないらしい。
 そのため、自分を一撃で殺せるような強力な一撃を放てるような相手に鍛錬に付き合ってもらい、進化をしたいとのことなのだが……この田舎町では戦いに身を置いたものは少なく、その中で一撃必殺の技を使えるような人材が私しかいないのだそうで。
 ダクマの母親も昔は暴れん坊だったが、今はすっかり中年太りのおばちゃんで、料理屋の経営をしている一般人に成り下がっているそうだ。力は強いが、殺気がなくて、進化には役に立たないそうだ。
「ふーむ……それで、私のツノドリルにインスピレーションを感じたいと……」
「ぜひ、お願いします!」
「まー……つのドリルならタイプ相性は関係ないし、貴方にマジカルシャインをぶっぱなすとかよりは安全かもしれないなぁ……うーん、でもなぁ」
 インスピレーションを感じたいということは、生半可な一撃ではいけないはずだ。確かに、現役時代はそこそこの探検隊で、その辺の男なんて相手にもならないくらいの実力はあったがし、今も力だけは鈍らないように鍛えてはいる……それでも、相手のお眼鏡にかなうような動きが出来るかどうかはわからない。ただ、自分も早く大人になりたい、進化したいという熱意は理解できる。
 彼は父親のように立派な戦士になりたいらしく、進化すれば自分の夢に近づけるのだとあれば、大人としてその手伝いくらいはしてやりたいのが人情だ。
「わかったよ。だけれど、私も目が片方使えないから、遠近感は掴みにくい。それだけは容赦して頂戴ね。それと、危なくなったら辞めさせるからね!?」
「ありがとうございます! 絶対に進化して恩返しします!」
「よし、それなら、気合入れなさい!」
 と、いうわけで、私は少年の進化に付き合うことになってしまった。私は一度自宅に帰ると、怪我をしても大丈夫なようにオレンの実などを用意してから、ダクマの少年に稽古をつける。探検隊をやめてからブランクはあったものの、ダクマの少年が攻撃してくるわけではないので、こっちは腰を据えて技を打てばいいだけだ。仁王立ちして待ち構えたダクマは、こちらを睨みつけるようにして観察しており、年の割には威圧感がすごい。なるほど、同年代どころか大人でも相手にならないわけだ。
 私は意を決して駆け出した。四肢に力をこめ、頭部から延びる長い角を回転させ、体重と、勢いと、回転、気合、全てを乗せてダクマの少年を刺し貫く。ダクマの少年は私の角を紙一重で避けると、すぐさま身構えていつでも反撃が出来る態勢に入る。
「ふーっ……死ぬかと思ったっすよ……」
 最初から、何が何でも避けるつもりだったのであろうダクマの少年は、そう言って胸をなでおろす。
「どう? 何かこう、進化しそうな気配はあった?」
「わからない……けれど、なんというか全身の毛が逆立つような……体が熱いのに冷たいような、不思議な感覚を味わったっす!。お姉さんが本気で俺を殺そうとしていたら……避けなかったら、俺は死んでいたって。そう感じさせる、鬼気迫る感じが……なんか、すごくいい感じだっす。今も心臓がどきどきしてて……あんな一瞬程度じゃ息が上がることなんてないはずなのに、今なんだか呼吸が荒い……この感じ……これをもっと続ければ進化できる気がする」
「ふーむ……確かに、私も進化するときは、なんか得体のしれないような力が体から湧き上がってくるのを感じたね。じゃ、その感覚をもっと掴めるように努力してみるか!」
 私は彼に付き合い、何度も角ドリルを放つ。やはりこの子は筋がいい、まだまだ子供だというのに、相手の動きを動く前から察知している。微細な筋肉の動きや目の動きまできちんと観察されているのだろう。だが、彼の集中力も途切れてきたのだろうか、5回目……私が全力で技を放てる限界まで攻撃したところ、私の角が彼のわき腹がえぐってしまう。
「あ……」
 と、思わず叫ぶも体の勢いは止まらず、ダクマは傾けた体を戻すこともかなわずに地面に倒れ伏した。
「ちょ、ちょっと……大丈夫?」
「いててて……ちょっと、立てないけれど……休めば……」
「無茶しちゃだめだよ? ってか、まだ進化できないの? これだけ傷めつけてもダメ!?」
「うん……」
 強がってはいても、やはりとても痛いのだろうか、少年は歯を食いしばって呻いている。私はオレンの実を食べさせてあげて、楽な姿勢に整えてから癒しの波導をかけて休ませる。しばらくすると、オレンの実と癒しの波導のおかげで痛みも和らいできたのか彼の様子も落ち着いた。
 まったく、こっちまで肝が冷える思いだわ。

「はぁ……偉い目にあったのに、全然進化できない」
「こっちのほうがある意味偉い目にあってるから! まったく、よその子死なせちゃったら目覚めが悪いなんてもんじゃないんだからね……で、どう? 進化できそうな感覚は掴めた?」
「いや、まだだ……ごめんなさい! 多分、お姉さんの問題じゃないです! 俺、もっと強くなりますから、その時は鍛錬に付き合ってください」
「あんまり毎日押しかけてくるのはよしてね……でも、努力するなら歓迎する。頑張って!」
 それからダクマは、しばらく鍛えては私の元を訪れ、しばらく鍛えては私の元を訪れ、というのを繰り返す。一度、妹に先に進化されたと泣きながらやってきたこともあるが、その日も結局進化することは叶わず、家に帰って枕を濡らすことになった。

 そんな彼が進化したのは、出会ってから1年半。妹が13のころに進化したというのに、少年はと言えば齢16歳でのようやくの進化であった。
 未進化でありながらも体を鍛えぬいた彼は、今まで避けることしかできなかったツノドリルをその小さな体で受け止め、私の体勢を崩して地面に横たわらせる。そんな体重差をもひっくり返す離れ業を成し遂げたときに、彼はようやく進化できた。
 まさか、身長も体重も、自分の半分にも満たない相手にが自らつのドリルにあたりに行って、真っ向からそれを押し返すだなんてのは、私は想像すらしていなかった。地面に転がされ一瞬何が起こったかわからなかった私を、もう少年というには立派過ぎる体格の彼が見下ろしていた。分厚く引き締まった筋肉、岩をも握りつぶしそうな拳、大木の根っこのような強靭な脚。全てが進化前とは見違える。
「うわぁ……恰好いいじゃない。進化おめでとう」
 心のかなであってももう少年とは呼べず、青年ともいうべき彼を見た率直な感想がそれだ。

「そ、そっすか? 鏡がないから俺、よくわからないんすけれど……あー、でも、あんなに見下ろされてた姉さんを、いつの間にか見下ろしてるっすね……いやぁ、これで妹に見下ろされることもなくなったってことっすね。嬉しい……」
「そっか、妹さんに先に進化されたって言ってたもんね。うーん、それにしても逞しい……さっきまでの可愛らしい姿は一体どこへやら……」
「へへ、そう言われると嬉しいっすね。で、えーと……どうやって恩返ししようか……進化して恩は返しますって言ったっすけれど、なんかこう、力仕事とかそういうので手伝うことあるっすか? ま、木材加工なら、いくらでもありそうな仕事っすね」
 そう、私の仕事は木材加工。ウーラオスに進化して逞しい体を得たこの子なら、木の一本や二本運んでくるのは容易だろう。確かに、仕事を手伝わせるのもいいのだけれど、思い出せば私は恋人募集中だったのだ。
「ねぇ、貴方。私の彼氏にならない?」
 強くて頼り甲斐のある男は好きだ。そして、この男はそういう存在になるだけの見込みがある。ダクマがどんな風に進化するのかは知っていたけれど、実際に目の当たりにしてみると、一目でほれてしまいそうなくらいに美しい筋肉だ。
 かわいがっていた子がここまで立派な体躯に成長したのならば、これは逃す手はないじゃないか。私は彼に顔を近づける。進化したてといえば思春期真っ盛り。それはもう性欲も強いと、探検隊仲間の男からは散々聞かされている。
 そんな状況のやつが女に誘われれば、イチコロのはずだ。私のつぶらな瞳、触り心地の良い毛皮。それらを駆使して男を誘惑すれば、思春期真っ盛りの男の子なんてちょろいもん……のはず!
「君も男の子だし、女の子に興味とかあったりしない? 強くなるのはとても大事だけれど、強くなるために必要なのは何もトレーニングや実戦経験だけじゃないよね? ねぇ、もっといろんなことを知りたくない? 例えば、どうやったら女の子を喜ばせることが出来るのか、とか」
 体を寄せ、毛皮同士を密着させ、甘えることで男心をくすぐる。さぁ、少年よ、欲望に身を任せるがいい。
「貴方のたくましい体、とっても素敵だから、まだあなたが子供なところを鍛えてあげたいなって……」
「ちょ、お姉さん……一体何を鍛えるつもりっすか……」
 わからないふりをしているが、実際のところこの青年、何をされようとしているか完全にわかっている。股間を隠す前掛け状の体毛が盛り上がっている。その下には、立派な男根がそそり立っているのだろう。
「聞かなくてもわかってるみたいだけれど? それとも私じゃ嫌? 他に好きな子でもいたりするのかな? うーん、横恋慕はしたくないし、それなら仕方ないと思うけれどなー……」
 鼻面で青年を押すと、彼は少しずつ後ずさり。逃げることはできないらしい。そもそも、下半身が一目でバレバレなくらいまで昂ってしまった下半身を抱えては、逃げるにも逃げづらいだろう。
「まぁ、知らない人に誘われてこういうことはいけないけれど、俺達は知ら仲じゃないし……わかったっす! そこまで言うなら、恩返しの一環で……」
 青年は目を泳がせながら、自分の下半身を気にしている。もうその気になっているのは言い訳のしようもなく、彼は腹をくくることにしたようだ。
「了解。それじゃ、私の家に入って」
 気にしなくてもいいのに、彼はなんだか恥ずかしそうに私の家に入っていった。もっと堂々と、見せつけるように歩いてたっていいのに。じろじろと観察していると、罰が悪そうに顔を逸らすものだから余計に可愛らしい。

 家と言っても、私の家なんてそう広いものではなく、ベッドルームと調理スペースと、倉庫くらいしかない。水浴びするのも近くの川だけなので、二人で交尾出来るスペースなんてベッドルームくらいだろう。
「やり方は知ってる?」
 一面に藁が敷かれた簡素な寝室で、私は青年を座らせ水を出す。
「そりゃまぁ、学校の授業で習ったから……基本的なことは」
 彼は座ったままそわそわしていた。私とまともに目を合わせるのも恥ずかしい。かといって、話し相手にそっぽを向いて話すのも具合が悪い。そんな彼の複雑な心情が、目を泳がせる行動につながっているのだろうか。彼は自身の肉棒に触れてもいないのに、いまだそれは萎えることなくそそり立っているのが可愛らしい。
「じゃあ、文章ではわからないこと、おしえてあげるね」
 私は彼の逞しい肉棒に顔を近づける。悪タイプが相手だからか、サイコパワーの効きが悪く、前掛け状の体毛をめくるのも一苦労だ。めくりあげてみれば、遠目に見てもわかるくらいには彼の肉棒が脈打ち、充血してるのがわかる。恐らくは鍛錬に忙しくて自身の性欲の処理も疎かにしていたのだろう。若くて進化したてなことも相まって、下半身はこの上なく元気いっぱいだ。これなら、期待できそうだ。
 鍛錬をした後なのに体を洗っていないせいか、少し匂いがきつい。始める前に体を洗っておけばよかったのだけれど、こうして匂いが強いというのも割と興奮するものだ。肉棒を私の口の中に含むと、彼のものが口の中でピクピクと動いているのがわかる。気持ちが良いのと興奮しているのとで、無意識のうちに力が入ってしまっているのだろう。彼は私の鬣に手を添えているが、その腕に力は入っていない。私の頭を押さえてしまうのは本能的な動作なのだろう、理性がなければ頭を掴んでガシガシと腰を振っていたのかもしれない。
 彼はその衝動を我慢し、武者震いする下半身を何とか押さえつけてぐっと耐えている。私の舌で肉棒を掃除してあげると、体が疼いて仕方ないのか、しきりに足を動かしている。
「あの、その……俺、こんなことよりも、お姉さんの……」
「うーん?」
 私は顔を上げ、見える片目で彼のことを見つめる。
「もしかして、後ろのお口でしてほしい?」
「そ、それそういう風に呼ぶんすか? えっと、そうなんだけれど……」
「いいよ。お姉さんを楽しませてね」
 私は彼の胸に口づけをしてから、顎で彼を立たせるように促す。
 彼は促されるままに立ち上がると、くるりと体を半回転させる私の動きに目が釘付けだ。私の視野はほぼ真後ろまで見えるのだから、彼の童貞臭い、もたついたような恥ずかしがるような、そんな仕草も丸見えだ。私の体の具合といえば、もう恐ろしいくらいに準備万端だった。彼を見たときは何ともなかったが、彼を口説いたとき、家に入れたとき、座らせたとき、前掛けをめくりあげたとき、そのたびに心臓が激しく高鳴っていた。発情期でもないのに子宮がうずくのも感じていた。まだほぐれてこそいないけれど、濡れ具合はすでに十分だ。
 こんな気分になったら、探検隊時代にはいい男を引っかけることもあったけれど、そういう時は相手の方もそれなりにベテランで、なんだかこっちがされるがままといった感じ。悪くはないけれど、少しマンネリを感じてしまっていた。
 けれど、この子は正真証明の童貞。そのうえタイプ相性的にも私が絶対的に有利なので、完全にこっちが主導権を握ることが出来る。こんなに楽しみなことはない。さらにかわいくて、それでいて逞しいという贅沢な取り合わせだ。
 楽しみ過ぎて、自分でも後ろの口からダラダラと愛液が漏れているのがわかる。止めることも我慢することもできない。青年はパクパクと瞬きするような後ろの口に目が釘付けのようで、視界の端のに見える彼の表情が、ぽっかりと口を開けているのがまた可愛らしい。
「触ってみて? でも、乱暴にしないでね?」
 私に頼まれると、彼は子供のようにがっついた。女性の体がどうなっているのか、赤ん坊に触れるように慎重な手つきで私に触れる。滴り落ちる粘液を指で掬い取り、それを絡めて後ろの口に指を入れる。恐る恐る指を突っ込む手つき、初々しくて可愛いなぁ。
「うん、いい感じ……指、増やしてみて?」
「増やすって? ……こうっすか?」
 熱を帯びた私の体は、ほとんどほぐしていないにもかかわらず、一本を容易に飲み込み、二本、三本と抵抗なく入っていった。彼は調子に乗って四本の指を突っ込んで、胎内の温かみを堪能しているようだ。傷つけないように最新の注意を払っているせいか、口元がおろそかになってよだれが垂れているのがもうたまらなくいとおしい。そんな精悍な顔立ちのくせして、よくそこまでの間抜けな表情が出来るものだ。
 彼の手つきは相変わらずおぼつかない。どこぞの女を抱き飽きた男のように乱暴さモテなれた感じもなく、恐る恐るだからこその、このもどかしい感じがむしろいとおしい。全身が熱を帯びていくのがわかる。背筋がぞくぞくと震え、特に顎が持ち上がってしまう。感じてしまってひぃん、と嬌声を漏らしてしまうのも止め難い。こんな声を上げると、彼は当然気になるわけだ。
「あ、痛かった?」
 心配になってこんなことを聞いてくるのがまたいとおしくてたまらない。これはそう言う声じゃないんだけれど、初めてだと聞き分けづらいのかな?
「ううん、大丈夫。そのまま、傷つけないように気を付けてゆっくり動かしてくれるかな?」
「いいの? こんな感じ?」
 男らしく威厳のある姿でも、やはり進化したてでは性的なことに関しては未熟も未熟。おっかなびっくりで、手探りで挑むさまは、大人の魅力と子供の魅力が絶妙なハーモニーを奏でている。だが、手つきはおっかなびっくりでも、観察力が優れているおかげか。彼は何気に指使いが上手い。気持ちよくなるとどんな仕草をするか、気持ちよくなるとどんなふうに締め付けてくるか、そういうのを彼は少しずつわきまえていく。
 だから、気持ちいい反応がどんなものなのかがわかれば、そういう反応を取る場所を的確に攻める。たまにあえてそれをはずしてみて、不意打ちしたりさらに感じる場所を探したりと、この青年はとてもテクニシャンだ。
 このウーラオスという種族、相手が防御や回避に徹していても、急所を狙いすまして当てるほどの手管を持つ種族だ。私がどんなに感じていないふりをしようとも、彼には弱点などお見通しだろう。なんて逸材なんだ、他の女に取られる前に、私がこの子を囲えてよかった。
 やがて、私の体はだんだんということを聞かなくなって、小刻みに脈動し、強く締め付け、肺まで締め付けられるように快感を浴びせかけられる。瞬間、意識が飛んだ。全身の毛が抜け落ちるのでは無いかと思うくらいに体毛が逆立ち、四肢のすべてが攣ってしまったかのように力がこもる。しばらく棒立ちのまま動くことも出来ず、絞めつけられた肺が空気を求めて激しく上下していた。
「あの、大丈夫っすか?」
「問題ないよ……すごく気持ちよくてね、ちょっとぼーっとしてた」
「お無理しないでほしいっす……」
 青年はそう言って、手を放してこちらの横顔を覗き込んだ。
「いやぁ? 無理なんてしていないよ。これが欲しいから、私は交尾をしたかったんだ……でも、想像以上だよ。君との交尾はすごく気持ちよくて……そう、適格だね。もっとこう、じっくり楽しめる種族に産まれたかったくらいにね」
「よかった……」
「いやいや、良くないでしょ? 君はまだ全然気持ちよくなっていないんだから、せめて一回くらいは出さないと……それとも、私だけ気持ちよくなって終わりでいいの? そんな控えめな性格じゃ、前線*1には立てないよ?」
 青年は私の様子が尋常じゃないので慌ててしまって忘れているが、今は交尾の最中だ。それなのに、彼はまだ一度も気持ちよくなっていないまま。私の言葉でそれを思い出したらしい彼は、また自分の肉棒を見つめて少し恥ずかしそうにしていた。
「えーと、どうすれば……なんか、ウーラオスのタマゴグループってあまり知られてないけれど、陸上グループなのは間違いないっすから……」
 なので、このまま何の対策もせずにやってしまえば、子供が出来てしまう。それがまずいということ学校で習った知識で知っているようだ。
「そうねぇ。私もまだ、貴方の子供が欲しいとまでは覚悟を決めていないし……まってて、探検隊時代に使ってたやつ、まだ余ってるはずだから」
 こんなこともあろうかと、私は色々なサイズの避妊具を持っている。彼のサイズに合いそうなものをいくつか取り出すと、絞めつけ過ぎず、なおかつ緩すぎて抜けない程度の、適切な大きさに加工された腸を棚から取り出し、彼の肉棒に取って付けた。

「うん、ピッタリ。痛くはない?」
「だいじょうぶっす……」
 サイコキネシスで操られたそれが自分の肉棒を包み込む間、彼はそれを黙って見守っていた。こんなものを取り付けて交尾をするのか、とか実際に取りつけるとこんな感覚なのか、とかそんなことを考えているのだろう。
「次にやるときは自分で用意するんだよ? 一応、すぐに腐ったりはしないように加工されているけれど、長持ちする保証はないから……」
「どこで売ってるんすか……?」
 そもそもこんな田舎の小さな村ではそんなもの売ってないことも知らず、無邪気に首をかしげる青年を見て、そんなところも可愛いと私は微笑んだ。
「ま、余計なことは考えないでいいから、今は楽しみましょう?」
「了解っす。じゃあ、行くっす……あ」
「どうしたの?」
「なんか踏み台がないと……届かないっす。お姉さん脚長いし……」
「貴方、足短いもんね」
 そういえば、ウーラオスとギャロップの私とでは体形が全く違う。それだけに、こういうところで問題が出てきてしまうのは仕方がないということなのか。私はサイコキネシスで何でもできてしまうから、高いものを取るにも苦労することがないので、踏み台も家にはない。
 仕方がないので外に出て、家の近くにあった大きな岩を踏み台代わりにする。家は加工する木材がすぐに入手できる場所に建っているため人気は無いし、来客もいない。外でやろうと、問題はない。青年ともよく鍛錬をしていたが、彼と過ごしているときに来客があったことも一度もなかった……と、いうのに青年はとてもそわそわしている。
 誰かの視線がないか、物凄く気になるのだろう。わかる、恥ずかしいんだよね。でも、わかっていてもここまできたらやらないことには収まらない。誰かに見られるかもしれないとびくびくしながら、始めるしかない。
 青年は周囲に誰かの気配がないか耳を澄ませていたが、とりあえず彼がわかる範囲ではそういう気配はなかったようで、腹をくくった彼は必死で腰を振った。慣れない動作なのだろう、ぎこちない動きがとても可愛らしい。リズムも不正確、腰の位置も角度もしょっちゅう変わる。それを受ける方としては、慣れたやつよりよっぽどスリリングだ。
 どちらが気持ちいかと言われれば、やっぱりベテランの方なのだけれど、こんな初々しい男との遊びなんて、人生にそう何度も経験できるものではない。このつたなさ、こなれて無さが楽しい。あいにく、種族の関係か肉棒のサイズのほうはいまいち足りないけれど、努力と熱意だけは一人前。
「どうっすか?」
 自分を気持ちくさせるだけじゃなく、私のことも気持ちよくさせようとしてくる、このいじらしい態度が可愛らしい。
「いいよ。もっと頑張って」
 先ほどのおかげで昂った体の熱がまだ残っている。さっきので十分満足したが、それ以上に満足させたいというのなら、私も甘えさせてもらいたい。と、言いたいところなんだけれど、青年はちょっと限界が近そうだ。私も、少しずつ気持ちよくなっているせいで、どうやっても彼の肉棒を締め付けれしまうのを止められない。
 そんなものを、はち切れそうな肉棒を抱えた童貞の青年が耐えられるはずもない。
「あ、もう無理……」
 情けなくそう告げた彼が動きを止めるまで数秒。私はもう少しというところまではいったのだけれど、残念ながら、といったところだ。でも、さっきイカせてもらったし、文句はないかな? 上出来、よくできましたと言ってもいいだろう。
「……あぁ、良かったよ。君はどう?」
「うん、最高っす……。でも、なんかちょっと、疲れちゃっすねぇ……お姉さんは大丈夫っすか?」
 青年はすっきりとした顔をしていた。さっきまでのようにどうすればいいのかを迷った顔ではなく、少し余裕のできた顔。
「うーん、まだまだこっちの方は鍛える必要がありそうだけれど……でも、初めてなら上出来かな? 貴方ならいつでも歓迎だから、まだ鍛えたかったら家に来てね」
「あ、うん……結局、恩返し、出来て、ない……っす、また来るっすよ……」
 思い出したようにそんなことを言う彼の表情は迷いのある、恥ずかしそうな表情に戻っている。
「楽しみにしてる」
 そんな言葉を彼はどう受け取ったのか、照れた様子でうんと頷いた。

 彼はその後も体を鍛え、学校での学びを修了するまで、数日に一度は『何か手伝うことはないか?』と聞いてきた。本当に忙しい時は手伝ってもらったり、買い物や料理を代わりにやってもらったこともあるけれど。大体の時は手伝いじゃなく、大人の遊びが目的で来ているのは私からは丸わかりだ。
 街から仕入れてきたのだろう、遊ぶために必要な道具を毎回きちんと持ってきていたのだから、そんな彼の若い性欲には笑うしかなかった。
 後でわかった話なのだけれど、ダクマが進化するには、『強さ』、『インスピレーション』の他に、『信頼できる相手』が必要なのだ*2とか。一人で黙々と鍛えていた彼にはそういう相手がおらず、私に心を許すにもずいぶんと時間がかかった……と。巨獣狩りから久しぶりに帰ってきた彼の父親がいうには、そういうことらしい。全く、信頼するのに一年以上もかかるだなんて失礼しちゃうなあ。彼はそういう人付き合いに壁を作るタイプなのかもしれないけれど。
 でも、進化したってことは、そういうこと。私と彼は両思いで間違いないんだよね。

 そんな彼も、かつての私と同じように旅立つ時が来る。鍛えた体を活かせる職業に就くために、大きな街に出るという。
「姉さん……良ければ、俺と一緒に行かないっすか?」
 体も心も、エッチな方面も成長し、すっかり顔つきも大人になった私に、彼は2対の蹄鉄をよこす。この前、私に粘土を踏ませて足型を取っていたかと思ったが、わかりやすいことをする奴め。サプライズのつもりで計画がバレバレだった告白をしてきた時は、思わず顔がほころんでしまった。
「一緒に行くのは一年待ってよ。私の仕事、突然辞めたら迷惑被る人がいるから、すぐには辞められない」
「あー……そうだよね」
 断られるとは思っていなかったのだろう、彼は目に見えてしょんぼりする。感情を隠すのだけは下手なままだ。
「それまで怪我せずに、仕事頑張りなよ。私、すぐに大怪我するような男なんかと結婚するとか、無理だからね? 私みたいに、心半ばで引退とかしてほしくないの」
「なら、気を付けるよ」
 でも、私がまんざらでもない態度を見せると、一層やる気を増したような顔をする。
「頑張ってね」
 頷く彼を後押しするように、私は角で彼の背中を突っついてやった。

悪いやつと悪いやつ 


 俺には父親がいない。それが学校内で噂になったのは半年ほど前のことだ。そ父親がいないだけならばよかったのだが、俺の種族はギモー。♂しか存在しない種族で、つまり父親の種族はギモーの進化系であるオーロンゲ……なのだけれど。
 困ったことに、この小さな田舎の村にはオーロンゲは愚か、その進化前であるベロバーやギモーもいない。
 要するに、俺の母親、フラージェスは一晩の行きずりの関係で俺を身ごもったというわけであった。それは大人たちの間では割と有名な話だったらしく、母親はいつも村の大人たちからひそひそ話をされていた。そんな話が、大人から子供に漏れてしまったらしい。
 俺は、子供たちの間で淫売な女の子供だと罵られ、嫌がらせをされるようになっていた。最初はすれ違いざまに言葉を投げかけられる程度だった。気にしないようにしていたつもりだけれど、それで反応がないのが気に食わなかったのか、段々と小突かれるようになり、それでもだめならと暴力まで振るわれた。一度、土下座する振りをして、自慢の長い髪で相手を返り討ちにしてやったのだけれど。そしたらなぜか自分が悪いことにされて、やり返しただけなのに、自分が謝らされる羽目になった。
 もしかしたら、喧嘩を仲裁した教師は、俺が悪くないことなど分かっていて、それでも評判の悪い家の子供だから、と俺一人悪者にすることで丸く収めようとしたのかもしれない。俺は他人の感情がある程度わかる。あのクソヤロウの教師は、面倒くさいことを嫌って俺一人を悪者にしたのだ。

 それからというもの、俺の生活はみじめなものだった。何をされても反撃を許されず、いけ好かないやつらのストレスのはけ口にされた。何より辛かったのが、俺家の畑を荒らされたことだった。大人たちは、母さんを煙たがるだけで、直接的に手出しはしなかったのだが、子供たちは容赦がない。畑の作物を盗まれたり、荒らされたりしたときはもう我慢がならず、俺はついに殺すつもりで殴りかかった。
 だけれど、相手は1人じゃない。俺がいくら殺すつもりで殴りかかっても、4人で押しかけてきた悪ガキ相手では多勢に無勢。押さえつけられ、羽交い絞めにされ、そして何度も何度も殴られる。
 このまま俺は殺されちまうのかと、頭の片隅に浮かび始めたころ、突然奴らの悲鳴が聞こえたんだ。
「弱い者いじめはやめなさい!」
 駆けつけてきてくれたのはヤンチャムの女の子だった。こいつは、俺と同じ学年で、一緒に勉強をしているだけの間柄だが、悪ガキどものいじめにはかかわってこなかった奴だ。俺のこと、今までは見て見ぬふりをしていたみたいだけれど、見捨てたわけじゃなかったのか……
 彼女は俺を羽交い絞めにしていたコジョフーの脇腹に拳を叩き込んで一発で仕留め、他の奴ら、カジリガメとクイタランも次々と打ち倒していく。相性が悪いはずのストライク相手ですら、彼女はいわなだれで打ち砕き、俺を囲んでいた4人は瞬く間に全員倒れてしまった。
「大丈夫?」
 瞬く間に助けられた俺は、しばらく現状を飲み込むことが出来ずに、差し出された手を取ることが出来なかった。
「うん……」
 随分と見つめ合った後、ようやく状況を飲み込んだ俺はそう答える。
「なんで俺なんかのこと、助けたんだ?」
 目を涙ぐませながら俺は尋ねる。さっきまでの俺はもう、怒りで自分がどうにかなって、相手を殺して自分も死んでいいと思っていたけれど、こいつは無関係なはずだ。あの四人を敵に回したところで自分に利益なんてないのに、わざわざ向かってイクだなんて、なんとお人好しな。自分のために闘ってくれる奴がいるだなんて、思いもしなかった……
「ごめんね、ずっと、助けたいと思ってたんだけれど……あんたが反撃したら、あんたが悪者になってるのを見て……怖くなっちゃって……私も悪者になるんじゃないかって」
 そりゃ怖いだろうよ。俺だって、あの件のせいで反撃する気力すら削がれちゃったんだから。
「でも、今日という今日は、許せなかった。あいつら、学年のみんなを盗みに誘っていやがったんだ。淫乱なアバズレの家に行って、木の実盗もうぜーって……冗談だと思っていたけれど、あいつら本当にやりやがって……」
「よく、君のこと誘ったね……君だけはいじめに参加しなかったのに」
「私は誘われなかったよ? 多分、私はそういうのに行かないのわかってたんだと思うけれど。でも、気の弱い子が誘われてた……その子経由で、私にも話が回ってきたの」
「そっか……そんな、偶然聞いただけのことで、様子を見に来てくれるだなんて……君って本当に……ありがとう。もうなんていうか……それ以外に何も言えないよ……」
 俺は心からのお礼を言うが、同時に嫌な予感も胸中によぎる。
「でも大丈夫なの? また、俺達が悪いことにされるんじゃ?」
「かもね……でも、知らないよ。もしも私達が悪いことにされるんだったら、勝手にすればいい。そしたら、こんなもんじゃすまない。もっと後悔するくらい徹底的に恐怖のどん底に叩きのめしてやるんだから」
 言い終えると、彼女は倒れ呻いている悪ガキたちを見下ろす。
「ねぇ、聞いてるんでしょ? 私達は泥棒を退治しただけ、そうだよね? 悪いのはあんたら!」
 気絶しているわけではないため、びくりと体を震わせ、怯えた目をして奴らは頷く。
「わかったら、この件で文句言うんじゃないよ! もしも誰かを巻き込むようなら、今度は徹底的にお前らをぶちのめす! 命乞いしても無駄だからね」
 悪ガキたちの顔が恐怖でひきつった。
「……これだけ釘を刺しておけばもう来ないでしょ。じゃ、なんかあったら私を呼びなよ。私はもうあんたを見捨てるような真似はしないから、困ったことがあれば力になるからね」
「そんな、悪いよ」
「確かに、面倒だけれど。あんたが虐められる光景を見てると、私はイライラするんだ。あんたを助けるのは私がイライラしないためだよ」
 彼女は得意げに言って、頼もしい顔をした。俺は恩人にこれ以上の遠慮は出来ず、ありがとうと言って彼女を見送るしかできなかった。

 それから数日、奴らはおとなしかった。奴らは一人じゃ何もできないし、強いやつに逆らうこともできないので、ヤンチャムの奴が俺についた時点で、奴らは何も出来なきなくなってしまったのだろう。奴らは俺のことを睨んだり、すれ違いざまに舌打ちをするくらいで、その態度の嫌がらせなら可愛いもんだ。ストレスのはけ口がなくなったおかげか、奴らはやたらとイライラしている。俺達は人の嫌な気分をエネルギーにすることが出来る種族、これでは俺の食料が増えたようなものだ。
 しばらくは俺の生活は快適なものだった。あれからというもの、ヤンチャムとも仲良くなれて、今ではいい友達だ。ヤンチャムは女子同士だと乱暴者なところがあってウマが合わないし、かといって男たちとも混ざりにくかったようで、話をする子ぐらいはいても、一緒に遊べる子はほとんどいなかったのだとか。
 だけれど、俺が一緒に行動するようになると、こいつは本当に生き生きとしだした。それが嬉しいものだから、俺も積極的にこいつとつるんだ。俺も友達がいなかったから、ちょうどうまくパズルのピースがハマったように、俺達はウマが合ったのだ。
 野山に繰り出して二人で競争したり、時には親や教師に黙って不思議のダンジョンにもぐりこんでは、二人で木の実や鉄くずを持ち帰って小遣いの足しにしたりもした。
 それで、ハッピーエンドならよかったのだけれど。相手も手段を選ばなくなるのが厄介だった。

「マジパネェっすよ兄貴!」
「よくも調子に乗ってくれたよなお前ら? 兄貴さえいりゃ、お前らなんてどうってことはないんだ」
 ある日、俺達は一緒に居るところを見たこともないポケモンに襲われた。巨大なハサミを持つ、金属質の赤いポケモン。姿かたちはハッサムに似ているのだけれど、ハッサムのハサミはあんな形状ではなく、もっと丸っこいはずだ。しかし、その戦闘能力は想像以上で、明らかにハッサムよりも重くなったであろう巨大なハサミや、刃物のように鋭い翅を的確に操り、こちらに叩き込んでくる。
 気づけばヤンチャムも俺も地面に転がされて、悪ガキどもを見上げている。
「何だあれ……あれ、ハッサムなのか?」
 全身の激痛に、涙目になりながら、俺は誰にでもなく問う。
「違うよ、あれはメガシンカしてるんだ……なんなんだよあいつ……どこで必要な道具を揃えて来やがったんだ?」
 ヤンチャムが教えてくれたそれは、確か学校で習った。そうか、あれがメガシンカ……。兄貴と言われている奴は、どうやら悪ガキの一人、ストライクの実の兄だ。昔っから乱暴もので、いつからか街へ出稼ぎに行ってからはその噂も聞かなくなった。この村にいた頃は、誰もが頭を悩ませるような問題児だった記憶がある。何の都合かは知らんが、そいつが戻ってきたのをいいことに、悪ガキたちは兄に泣きついたのだろう。
「俺がいない間に随分と弟たちをかわいがってくれたみたいじゃねえか? 可愛い弟のためだ、俺が一肌脱いでやったんだが……そうだなぁ、まずは弟に謝って貰おうか?」
 こんな奴らの言いなりになるのはごめんだったが、しかし背に腹は代えられない。ここは早いところ謝って終わらせてやろうと考え、俺はヤンチャムの顔を覗く。しかし、彼女はまだ諦めていない。表情を見る限り、闘志を漲らせていて、その目は死んでいない。仕方ねぇ、毒を食らわば皿までだ……やってやるか。
「ご、ごめんなさい! 俺が悪かった……許してくれ!」
 俺はまず土下座をする。すると、俺の後頭部を踏みつけてハッサムが言う。
「おー、いい心がけじゃないか。でも、お嬢ちゃんがまだ謝ってくれないのはいただけないなぁ……」
 今、俺の目には地面しか見えていないが、わかる。ハッサムは俺から意識を逸らして、ヤンチャムしか見ていない。絶好の攻撃チャンスじゃないか。よそ見している間に、俺の髪の毛がハッサムの股間をえぐる。そりゃ悶絶ものの痛さだろう。
「合わせろよぉ!」
 言いながら、俺はハッサムの左ハサミに抱き着き、右のハサミに髪を巻き付ける。
「了解!」
 抜群の咬合力を誇るオーダイルやワルビアルの顎……しかし、自慢の顎も、閉じる力は強くても開く力は案外弱いのだ。このメガハッサムだってそれは同じ、ハサミを開く力はそんなに強くないはずなので、一度閉じてしまえば、脅威は半減だ。相手が何が起こっているか把握できないうちにヤンチャムが攻撃してくれれば、勝てる。
 ハッサムの野郎は髪の毛が絡んだハサミで俺の頭を殴りかかる。髪の毛で抵抗しているから大した威力にはならないが、それでも鋼タイプの力がこもっている以上、俺の体の芯までダメージが響いてきやがる。長くは持ちそうにない。
 背の低いヤンチャムは、ハッサムの膝に向けて炎のパンチを放つ。何度も何度も殴りつける。ハッサムの野郎は、ハサミに抱き着いている俺が邪魔で、足元にもぐりこんだヤンチャムを視認できないようでいい気味だ。熱気がここまで来て背中が熱いが、その代わり成果はあるはずだ。熱で焦がされた奴の足はもう使い物にならねぇ。
 鋼の装甲が溶けて膝を折り、立つことも出来なくなったハッサムに、ヤンチャムは炎のパンチで横っ面を一発ぶん殴った。効果は抜群、急所に当たる。そりゃもう、意識を保つことも出来ずにグロッキーだ。
「……はぁ。やったなぁ」
「やっちゃった……」
 ハッサムの野郎、メガシンカとやらが解けたおかげか、普通のハッサムに戻っちまいやがった。
「おい、どうするんだよ……」
「もうあいつらはボロボロなんだ! 俺達だけでやっちまうぞ」
 こっちはこのまま帰りたいところだというのに、あっちはそうでもないらしい。何が何でも俺達をぶちのめさなければ気が済まないということのようだ。抱き着いてたら何度も殴られて、体中が痛いってのに、面倒くせぇ。相手はコジョフー、ストライク、クイタラン、カジリガメ……一対一なら相性が悪くなければ負けない自信はあるが、こんなに疲れている状態じゃ、正攻法じゃどうにもならねぇ。
「逃げろ! 俺は下敷きにされて動けねぇ!」
「逃げろって……君を置いて逃げるだなんて」
「いいから! 逃げろ……俺は大丈夫だからよ!」
 俺はウインクをしてヤンチャムに策があることを匂わせ、逃げるように促した。
「わかった」
 そうとも、俺は大丈夫だ。ハッサムに下敷きにされて、体中が痛い……のは、事実だけれど、まだ動けないなんてことはない。余力は残してる。奴らは俺の言葉を信じて、俺のことはいつでもやれると判断してくれたようで、一目散に逃げだしたヤンチャムを追いかけていく。
 一番最初に追いついたのはストライク。ダメじゃないか、足並みを揃えなきゃ。ヤンチャムは振り返って岩雪崩。続いて追いついてきたコジョフーと殴り合いになると、ヤンチャムはコジョフーを盾にしてクイタランからの遠距離攻撃をやり過ごした。カジリガメは頑張って追いつこうと努力をしてはいるが……よそ見をするのは良くない。
 俺はこっそりと起き上がると、必死で追いすがるカジリガメに追いついて、不意打ちでドレインパンチを叩き込む。その固い甲羅も、無防備な状態じゃ形無しだ。
 カジリガメが驚き振り返るころにはもう遅い、俺の二発目の拳が甲羅にひびを入れ、そのまま生気を奪われたカジリガメは力なく項垂れた。さらにダメ押しの一発で完全にとどめを刺すと、吸い取った生気のおかげで痛みが引いてくる。
「……さて、苦戦してるみたいだし、手伝うぜ!」
「オーケー。暴れちゃうよ」
 俺はクイタランを、ヤンチャムはコジョフーを。逃げ腰になった相手を仕留めるなんて簡単なことで、猫騙しでビビらせてから懐にもぐりこみ、噛みついて離さなければいい。俺を引きはがそうと抵抗するクイタランだが、噛みつかれた上に、俺の髪の毛で首を絞めてやると、気合の差で俺が勝つ。ヤンチャムも、元々一対一ならこいつら程度、居眠りしてても負ける相手じゃない。殴って殴って、もうやめてくれと泣きを入れられても殴って、殴って殴るだけだ。
「あー……さすがにこれ以上はまずいかな?」
 コジョフーの顔が血ダルマになったあたりで、ようやく冷静になったヤンチャムが苦笑する。
「ひゃはははは! 派手にやったなぁ、おい!」
 普段は自粛しているけれど、悔しい感情は俺にとっちゃ食料だ。全員から漏れる悔しい悔しい悔しい……そんな感情が満ちていてついついテンションが上がっちまう。俺がハイタッチを求めると、彼女はそれに応じてくれて、気持ちの良い音があたりに響いた。
「最高の勝利だぜおい! 強いお兄さんを連れてきて、メガシンカとかいうのをしたのに返り討ち! ひゃはははは! 悔しいねぇ、悔しいねぇ!」
「あぁ、本当、悔しいねぇ。惨めだし……でも、ちょっと疲れたな。やす……」
 言いかけたところでヤンチャムはひざを折る。
「……おい、どうしたお前? あ、なるほどぉ。やったなぁ、お前」
 それが進化の兆候だとわかり、俺は釣られるようにして笑顔になる。なんだよもう、血でも吐くのかと思ってビビったじゃねえか。光輝いたヤンチャムは、徐々にその影を大きくして、巨大な体へと変貌する。
「……進化しちゃった。あはは……嬉しいけれど……遅くない? 戦闘中に進化してくれればもうちょっと楽に勝てたのにな―」
 今まで可愛らしかったヤンチャムは巨体を誇るゴロンダに進化し、苦笑する。確かに、ハッサムを倒した時点で進化してくれればもう少し苦戦せずに済んだのにな、と思わずにはいられない。
「ひゃはははは! いいじゃねえか! こいつらの財布から金を奪ってさ! 今日は宴としゃれこもうぜ!」
「悪いねぇ……まぁ、『5人がかりで襲い掛かったら返り討ちにされて金を奪われました』だなんて、恥ずかしくて誰にも言えないよね……盗んじゃおっか!」
 俺とヤンチャムはハッサムの兄貴から金を奪う。その金を持って村の肉屋へと繰り出すと、好物の肉を買って、人目に触れないところで焚火をして大いにはしゃぎまわった。そのまま、流れるように俺は彼女の家に招待された。
 家には彼女と似た姿の母親と、まだ進化していないというダクマの兄の姿があった。家族みんなでお祝いと言いたいところだったが、兄は進化の先を越されて悔しいのか家を飛び出してしまい、父親は出稼ぎで不在。兄が祝ってくれないこの状況のせいでなんだか絶妙に居心地の悪い空間になってしまったが、母親に質問攻めされるこの時間は悪いものじゃなかった。
「私達ゴロンダってね、ヤンチャムの時に悪タイプのポケモンと過ごすことで進化できるようになるんだ……」
「へぇ、じゃあ母親はどうやって進化したんだ?」
「おじいちゃん……母さんにとっては父親かな? その影響で進化したんだって……で、君がちょっとトイレに行っていた時に、恋人のおかげで進化できたなんてうらやましいって、母さんに言われちゃった……」
「俺が、恋人!? ま、まぁ……悪くはねぇかな」
 物凄く照れくさいけれど、認めることにする。こいつは命の恩人だし、何かと気の合う相手だ。こいつが恋人なら悪くねぇ。
「君もそう思うの?」
 ほんと、今日は最高な日だ。最高の勝利、最高の進化、最高の両思い。
「当たり前じゃねえかよ! お前! でも覚悟しろよ! 俺はフェアリータイプだからな、付き合ったときに喧嘩でもしようものならお前なんか一撃だし、亭主関白になってやるからな!」
「それは期待しちゃうかも!」
 本当はそんなつもりなんてないのに、照れ隠しでそんなことを言ってしまうと、見透かされたように期待されてるなんてほざかれる。あぁ、これってもしやカカア天下になる未来が待っているんじゃ……

 月日が経ち、俺も進化してオーロンゲとなった。細い手足を隠すように髪の毛で覆い隠して、見た目は一見格闘タイプのようにたくましい。もちろん、見た目だけではなくこの髪の毛一本一本も強い力を持っているので、腕力、脚力共に強力で、防御にも使えるため、戦闘に適した体型へと進化した。
 昔みたいにあいつとつるんでダンジョンに出かけるというのは少なくなった。あいつの父母は元々は戦いに生きる職業。父は現役の巨獣狩りのお供、母はお尋ね者を退治するためにダンジョンや街を渡り歩く賞金稼ぎ。住む世界が違う奴らだ。
 俺は、故郷の村にはいたくなかったので、今は街の外れで土をいじくって暮らしている。親譲りの植物を育てる力を生かして農作業に精を出す毎日。たまに、必要とあれば近所のダンジョンにもぐることもあるけれど、本業にはしないし、無茶なダンジョンに手を出すこともない。無難な人生を送ってる。
 あいつとの関係も続いている。今のところあいつは、俺の家を予約なしで美味い飯が喰え、整えられたベッドに入れ、ついでに冬は風呂も沸いているところだと認識しているような感じだった。
 今日もいきなり押しかけては、仕事に疲れ休んでいた俺に残り物がないかと遠慮なしに聞いてくる。喰ったり休んだりしたときは金も沢山おいて来てくれるのだが、全く遠慮というものはこいつにはないのだろうか。
 残り物の飯を食らい、風呂に入り、後はベッドに入るだけ。全くいいご身分だ。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
「ん、どうした?」
 いつもならもう寝るだけというときに、まだ湿り気の残った毛皮を乾かしながらこいつは言う。
「ねー、あんたさぁ……お金出すから、今度はもっと広いベッド買いなよ」
「あぁん? 俺もお前も寝相がいいだろ?」
「でも、二人で一緒に寝るのは狭いでしょ?」
「そりゃそうだけれど……え……あ、あぁ、わかった」
 こんな女をどう誘えばいいかもわからず、悶々とした日々を過ごしていたが、それは相手も同じだったらしい。直接的な誘い文句ではないにしても、二人で一緒にベッドに入るということはつまりそういうことだ。仕事が儲かっているのだろう、渡された金があれば相当いいベッドが買えそうだ。
 ゴロンダは疲れてしまったのか、別に用意されたベッドに横たわって早々に眠ってしまった。今日は、それで終わりだけれど、次は……

 俺は、あいつでも寝れるような縦幅と、二人並んで寝られるような横幅のベッド。そしてそれに合わせたふかふかのマットレスを購入し、その他いろいろと買い揃える。彼女のあの発言に対する解釈が間違っていないことを祈り、胸を弾ませながら。
 数日後、あいつは懲りずに、予約もせずに家に来た。酒と肉と笹を持ってきて、何かうまい物でも作ってくれと言った後、さっさと風呂に入っていった。今日の彼女は少し違う匂いがした。あいつ、もしかしたら発情期なんだろうか?
 だとしたら、こっちも腹をくくって、照れくさい心を捨て去る必要があるみたいだ。

 あいつは笹を食べ、肉を食べ、今日のダンジョンで起こった出来事などを話していたが、いつもと様子が違うのが手に取るようにわかる。俺はいたずら心の特性持ちだ、他人のスキを突いたりするために、人の仕草はよく見ているつもりだ。まぁ、悪タイプにはあんまりいたずら心は通じないんだけれど、今の彼女は悪タイプだというのに隙だらけだ。すごくそわそわしていて、食事中も俺のことをよく見るし、手や下半身の動きがなんだかもじもじといじらしい。
 可愛いなぁ、いつまでも見てられそうだ。
「なぁ、頼まれてた二人で寝れるベッド、買ったんだけれど……飯食ったら、早速一緒に寝てみようぜ? お前のおかげでかなりいい物が買えたからな」
「え? 本当に? やー、期待しちゃうね……期待していいんだよね?」
 全く、可愛くて仕方がない。男の下心を感じる場面は俺の人生で何度も経験してきているが、女の下心を感じるときなんて、今まで生きていた中ではじめてだ。
「……期待にそえるように頑張るさ」
 みなまでは言わないさ。俺だって口にするのは恥ずかしい。けれど、女にお膳立てまでされちゃったんだから、これ以上こいつに負担させたら男が廃るってもんだ。
 飯を食い終え、口を磨くと、あいつは皿洗いをするから、俺にベッドを温めておけと言ってきた。カチャカチャという皿洗いの音を聞きながら、一人では広すぎるベッドを温めていると、ほどなくしてあいつはやってくる。
 室内には蝋燭の頼りない明りのみ。いつになく神妙な顔をしてやってきたこいつは、ほとんどシルエットしか見えないこの状況でも緊張していることが手に取るように分かった。熱気を逃がさないため、静かにベッドに入ってきたゴロンダの冷えた手にそっと手を添える。
「皿洗い、ご苦労さん」
「いいのよ……勝手に押しかけてきたんだし、その……」
「手が冷たいな。温めていいか?」
「うん、お願い」
 俺は髪の毛をほどくと、胸の中にその手を入れる。冷水で冷え切った手が俺の胸から体温を奪っていく。俺は髪の毛で皿を洗うから問題ないのだけれど、素手で皿洗いなんてしたらこの季節は大変だろうに。
 冷たい手をぎゅっと握りしめて温めるとともに、彼女の背中に髪の毛を這わせる。
「密着すれば温かい、よな?」
「……うん」
 躊躇いながらだが、嬉しそうに頷かれる。密着してみると、こいつの剛毛具合がよくわかる。元々毛深い種族なうえに、何度も何度も傷ついては、体を守るために太くなっていったのだろう、一本一本が確かな手触りを感じるくらいには太い。
 芝生に手をついたような感触が全身を刺した。いつも髪の毛に守られた俺の体は敏感で、こいつの剛毛に触れると少し痛い。だが、彼女の感触を一番確実に感じられるこの瞬間は心地よい。このまま何もせずにいるのが辛くて、俺は彼女の体に顔を押し付け、わき腹を撫でる。彼女は怒るどころか、わき腹を守っていた腕をどかして、もっと撫でてもいいよとばかりに俺を受け入れた。
 それどころか、逆にあの大きな手で俺の胸をまさぐってくる。おいおい、俺は乳首が感じるようには出来てねえぞ? そんな女もいると聞くがよう。
「なぁ、俺さ……小さいころにお前に助けられたときから、しばらくはずっと俺にとって憧れだったんだ」
「そうなの?」
「でも、その後一緒に遊ぶようになってからは。なんかお前と近づけて嬉しくなった……で、一緒につるんでいるうちに、なんだっけ、メガハッサム? あいつを倒した時、俺はお前と一生一緒に居たいって思ったよ……」
「へぇ、気が合うね。私も」
「そんときゃ、俺も恋心とか、そういうのなかったんだ。多分、男友達とかがいたら、同じような感覚だったんだろうなぁ……でもよう、俺は大人になるごとに気づいちまった。俺は男でお前は女……どうしようもなく湧き上がってくる気持ちにさ。
 お前が好きだし、一生一緒に居たい気持ちは変わってねぇ。けれど、それは友人ってだけじゃない、恋人として、つがいとして……何も言わずにお前を抱いたけれど、お前も音字気持ちってことで、間違っていないんだよな? 俺があんまり好きじゃない……ラブラブカップルから出てくるような感情がお前から感じられるんだ」
「悔しい感情が好きって厄介な性質だね。こんなドキドキしてる私の気持ちを、あんまり好きな感情じゃないって?」
「厄介さ。そのせいで俺はベロバーのころは友達が少なった……ってなレベルじゃねえ。悪戯大好きだったせいもあって、みんなから嫌われ者だ。ギモーに進化した後、虐められたのは半分は自業自得だって思ってるくらいさ。悪戯は自分が楽しくても、相手は楽しくないってことに気づくのに、小さい俺はなかなか気づけなくってな」
「親からそういうの、教えられなかったの?」
「さぁ? そんな覚えはないなぁ……多分、本来は俺の父親が教えるべき案件じゃなかったのか? 悔しい感情が好きだなんて、おふくろにゃあわかんねえんだろ? だから、おふくろは責めらんねぇ……いやぁ、でも、父親といい加減な関係だったことを考えれば責めてもいいのかな? 今となっちゃどうでもいいか」
「いまは悔しい感情を食べたくならないの?」
「もちろん食うぜ? 賭場に行きゃ、負けてるやつが必ずいるわけだし、いくらでも手に入る。毎日のようにふらりと入り込んではケチな勝負で勝っても負けてもすぐに帰っちまうから、店員に顔を覚えられてな。悔しい感情が好きだからそれを食べに来てる、って事情を話したら、就職を勧められちまった」
「何それ」
 声が笑っている。近すぎて表情は見れていないが、きっと可愛い笑顔なんだろう。
「客にイカサマ仕掛けたくなるから辞めとく、って伝えといたけれどな。店に迷惑がかかるから」
「あらー、ちょっともったいない」
「飲み物を出したり床掃除する職員ならアリだったかもしれないがな……。ま、そうやって他人に嫌がらせをするのを我慢してきたから、お前は助けてくれたし、今もお前と続いているってことだ。嫌がらせを我慢してよかったよ」
「ほんとね」
「でもよぉ、今日は我慢しないでいいよな? 痛い目に合わせたりはしねぇが、今日はお前をめちゃくちゃにしたい……いいか? 大好きな奴の、悔しい感情も嬉しい感情も、そんでもって体も、全部味わいたい気分なんだ。お前の全部を」
 もうここまで言ってしまえば、何をしたってそう怒られることはないだろう。
「いいよ。でも、やめてって言ったらやめてね?」
 彼女の顔を見ることが出来なかった野が残念でならない。ずっと抱きしめているのがいけないと言えばそうなんだけれど、あまりにもったいなかった。
 だけれど、顔は見えなくても相手の感情はわかるし、胸に顔をうずめているから心臓の音もわかる。興奮しているんだろう? それも嬉しい感情だ、喰う分にはそういうワクワクドキドキは好みじゃないが、今だけは良しとしよう。
 俺は髪の毛を伸ばして部屋に灯った蝋燭をかき消した。こいつの顔を見れないのは残念だが、視界を塞がれてされるかわからないほうが燃えるだろ。視覚を封じ、他の感覚が敏感になったところで、こいつの体に髪の毛を這わせる。全身がもぞもぞして、心地よいくすぐったさがあるはずだ。
 這いまわる髪の毛、剛毛をかき分けてぞわぞわと直接刺激される体。普通に暮らしていたら到底味わうことのない感覚に、こいつは浮足立っているようだ。どこに力を入れればいいのかわからず、たまに筋肉をこわばらせたり、もじもじしたりピクンと体を震わせては、たまに甘い吐息を吐いている。
 腕、わき腹、首筋、耳。そして、背中のマントの裏っかわ。どんな生き物も、普段から触られていない場所は敏感になるもので、触れられるたびに彼女はもじもじが加速している。正直、これやっている間は俺も辛い。もっと一気にこいつを責め立てたい、チンポを突っ込んで早くすっきりしちまいたい。
 けれど、腹が減ってるときのほうが飯が美味いように、焦らしたほうがセックスは気持ちよくなるもんだ。相手が早く頂戴と口に出すまで、俺は徹底的に相手を焦らしぬいてやる。くすぐる髪の動きは緩めない。指と舌も総動員して体をかき乱してやるんだ。
「お前と一緒に戦って、悪ガキどもに勝った後に一生一緒に居たいと思ってたけれど……さっき、お前からも同じ気持ちだって言われたこと、すごく嬉しかったよ。一応、俺も他人の感情を感じるすべはあるけれど、嫌な感情以外は感覚が鈍るからな。ただの友達だと思われてて、恋愛感情なんて無かったらどうしようって、ずっと悶々としてたから」
「私も、ずっと思いを伝えていなかったからね。私も片思いだったらどうしようって心配で、なかなか言い出せなかったのが悪かったよ。
 彼女はそう言ってもじもじと体をこする。
「特によ、お前が村から離れるって言ったとき、すっごい心配したぜ……ほら、お前の兄さんメッチャ遠くの街まで仕事に行ったじゃないか? 年に何度も戻ってこれないくらいの距離だろ? だから、俺を置いて行っちゃうのかなって思ったらいてもたってもいられなくって故郷に居たくないなんて言い訳して、俺もこの街までついて来ちゃったくらいに」
「そうなの? ……でも、助かったな。そうじゃなかったら私、いちいち故郷に帰っていたかも。一応、半日歩けば行ける距離だし?」
「あー……もう、俺ら二人そろって片思いをしていたとか、マジかよ。情けねぇ」
「お互い様だね。私も断られる勇気がなかったのがいけないよなぁ……」
「どっちも奥手だよなぁ……俺も人の心が読めるくせに、これだけは読めなかったよ」
 言いながら、彼女の体をまさぐることはやめない。それにしても、彼女のポーズが少しずつ変わっていくのが面白い。触られるのが嫌というわけではないのだけれど、自分の体を守るかのように丸めている。
「どうしたの? 体中に力が入ってるみたいだけれど?」
「ん……だって、なんだかくすぐったくって。話しながらこんなに女性の体をいじれるとか、すごいね」
 嘘とも本当とも言い難い可愛らしい言い訳をしている彼女の声がとてもいとおしい。
「そう? でも、気持ちいいんだろ?」
「そう、なのかな?」
 ゴロンダはまだ、自分の体をまさぐられるこの感覚がくすぐったいのか気持ちがいいのか、まだ区別がつかない状況のようだ。ただ、確実に快感のほうも生まれてきているらしく、無意識のうちに自分の体をこすり、その焦燥感を発散しようと考えているようだ。
「まだ気持ちよくないなら、ちょっとペース上げるぞ」
 言いながら俺は口づけをする。それに対して、無警戒に応じてしまうこいつがとてもいとおしい。でもこいつ、フェアリータイプに極めて弱いんだ。俺のドレインキッスを使えば、致命的なダメージを食らってしまう。
 もちろん、殺しはしないさ。軽く力が抜けて、抵抗するのが疲れてしまう程度にするだけだ。
「んっ!?」
 と、声が上がる、不意打ちでドレインキッスを受けて驚いたのだろう。抵抗する間もなく脱力して気怠さが全身を支配する。ゴロンダはさっきまで丸めていた体から力が抜けて、横向きだった体もあお向けになって、ちょっとぐったりとしている。
「ちょっと、何するの……?」
「いじわる、だよ」
 ごめんな。今から意地悪したぶん、別の意地悪をで満足させてやるから、許してくれよ。これまでのように全身をまさぐるのはまだ変わらない。けれど、そろそろご褒美も与えなくっちゃ可哀そうだ。男も女も、股間の周りを触れられると、意識してしまうのは変わりはしない。
 鼠径部。内またのあたりをくすぐるように触る。お前がさっきから体中がむずむずして、内またをこすっていたのは、ここに触れてほしかったからだろう? わかってる、だから俺が代わりに触ってやるんだ。
 でも、まだ本丸……大切な割れ目までは触らない。きっと一番触れてほしい場所になっているであろうその場所は、最後の最後まで取っておくべきだ。すると、面白いことに彼女は足の指に力を籠め始めた。股を閉じたり体を丸めたりするのではなく、今度はむしろ足を延ばすという反応を見せた。このまま足が攣ってしまうんじゃないかと思うような、そんな足の突っ張り方だ。
 それにしても、彼女の反応が面白い。すでに彼女の大切な場所が濡れているのがわかるし、下の口がひくひくと動いているのがわかるが、それだけじゃない。普段は触れられない鼠径部の隙間に髪の毛を差し込んでやると、お尻が浮き上がるんだ。
 ここは特に敏感だし、大切な場所が近いせいか、触れられたら体の熱は否応なしに昂っていく。そのおかげで、尻が浮いてしまうんだろう。その昂った熱を簡単には発散させやしない。一番触って欲しい場所を放置しておけば、いつかはこいつの意地も決壊するはずだ。俺に身を任せているだけのこいつが、我慢できなくなるまで。これを続けてやろうじゃないか。
 彼女の体の反応はどんどん激しくなっている。もっとここを触って、違うそこじゃない、と言わんばかりに姿勢を変えて、俺が触れやすいように促してくる。
 真っ暗にして相手の視覚を遮断しているから、こっちも相手の表情が見えないのはもどかしいものの、その分相手の体の様子がよくわかるし、言葉にせずともどこに触れてほしいのかよくわかる。
「俺はさ、お前に出会えて救われたから、今日は恩返しのつもりで楽しませるから……」
「ん……ほんとにぃっ……?」
 こいつの反応は息も絶え絶え。かなり余裕がないようだ。ドレインキッスのし過ぎじゃない、これはもう、体が出来上がっていて、チンポが欲しく仕方がないのだろう。すでに股間周りの毛皮は粘液でドロドロ、熱もすごい。俺のチンポを突っ込んでやれば、お互いさぞかし気持ちいだろう。
 けれどまだいじめ足りないと思っていた俺が、彼女の下の口、毛皮と粘膜の境目をくすぐってやる。ついに待ちかねた大事な場所への刺激のおかげで、下の口がヒクヒクともの欲しそうに動いていた。もちろん、そこに強い刺激は与えてあげない。マグマッグが這うように。ゆっくりゆっくりの刺激だ。
「うんんっ……」
 さすがにこれには声が上がった。呼吸も目に見えて荒くなって、彼女は思わず俺の体を抱きしめた。いとおし気な抱擁で、肺を押しつぶされたりするほど強くはないが、逃がさないという意思を感じる程度には力が強い。
「どうしたよ? いきなり甘えん坊さんじゃないか。甘えるはフェアリータイプの専売特許だぜ?」
「だって……なんか……こうでもしないと、おちつかない」
 どうやらゴロンダは本当に余裕がないようだ。少し意地悪をし過ぎたような気もするが、まだ最後の意地を決壊させるまでは至ってない。一番大切な場所に突っ込んでくださいと、頼みたくなるくらいには追い詰めたい。抱きしめていないと落ち着かないと、言わせるところまで行けたのだから、あと一押しだろう。
 胸はドキドキ、下半身はトロトロ、そしてヒクヒク。もうちょっと可愛がってあげれば、音を上げるのか、それともまだまだ耐えようとするのか、見ものだな。

 抱きしめられてるんで、俺の体は自由には動かず、手は下腹部を撫でるだけしかできない。しかしながら、髪の毛は相変わらず自由に動くので、ゴロンダの頭を撫でてあげたりわき腹を撫でたり。時には撫でるだけじゃなく、突っついたりつまんだり、俺の髪の毛は自由自在だ。
 性欲が満たされないからと言って死ぬわけじゃあない。ただ、こうやって中途半端に気持ちよくされると辛いのは、きっと男も女も関係なく辛いはず。毛皮に直接触れないとわからない程度だが、震えるこいつの体がそれを証明している。
「ねぇ……」
「どうしたの?」
「もう、十分だからさ。欲しいな、貴方が……これを、頂戴」
 ついに相手から折れてくれて、俺は勝ったような気分だった。大きな掌で俺のチンポを優しく握り、硬く大きくなったそれをいとおしげに撫でて、俺の耳元に囁いてくる。ここまで言われたら、男として応えて上げなければ申し訳が立たない。正直言うと、俺も耐えるのが辛かったんだ。
「……わかったよ。でもその前に、ちょっと抱きしめた手を離してくれないか? 俺の髪の毛でもこいつは引きはがせねぇ」
「……っごめん」
 ゴロンダの強靭な腕の戒めから解き放たれたら、一度全ての髪の毛を総動員して彼女を包み込む。温かいし、鼓動と呼吸が直に伝わってきて心地よい。
「じゃ、まずは大丈夫かどうか見せてくれ」
 宣言をしてから、俺は彼女の中に指を突っ込んだ。相手は俺よりもずっとデカくて逞しい体だ、大丈夫だとは思いつつも念のため。ああ、手に取るようにわかるというのはこのことだ、気持ちいいのだろう? こんなに細い指でもぎゅうぎゅうに締め付けてくる。しかし、まだまだ余裕はありそうなので、指を二本、三本と増やしてみたが、それでも余裕がありそうだ。
 場合によっては、髪の毛を使ってカサ増ししたチンポを突っ込むなんてのもありだが、それをやるには俺自身にも余裕がないとだな。自分から焦らしておいてなんだが、これ以上のお預けは俺だって頂けねぇ。
「ちょっと待ってろ。すぐ済ませる」
 蝋燭に火をつけ、用意した避妊具を着用したら、もうこれ以上待たせはしない。頼りない光に照らされながら、俺はゴロンダの中に一気に突き入れた。予想通り、ゴロンダは挿入しても痛みは一切感じていないようだ。それどころか、火照った体がさらに燃え上がっているようだ。慣れない腰つきで前後に動かす俺に合わせて、相手の腰も動いている。
 あぁ、息が合っているって感じだ。腰の動きを合わせてくれているのか自然に合っているのかはわからないけれど、リズムが一致しているから、心も体も気持ちいい。
「なにこれ、これ待って……ちょっと、やばいかも……」
 喘ぎ声をあげていたゴロンダがいきなり妙な弱音を吐いた。今まで感じたこともない感覚に戸惑って、恐れているのかもしれない。どんな感覚なのかな、待ってという割に体が動いているのを見ると、すごいけれど不快じゃない感覚なのは確かなのだろう。当然、待たない。
「あ、ちょっと……ん……」
 そう言って、歯を食いしばってこいつは黙っちまった。背中はピンと張って反り返っており、全身がこわばっている。ぎゅうぎゅう締め付けてくるので下半身の具合も極上だ。それにしても、なんて無防備な姿、今なら俺でも簡単に殺せそうなほど。しばらくの間、そうしていたと思うと、ゴロンダは糸が切れたように力が抜けた。激しく呼吸を繰り返しながらぐったりしている。
「もう、無理」
 そんな状況で構わず腰を振っていたら、きついのだろうかやめてくれと言いたげに手を掲げる。だが、その手の力が弱弱しいこと。構わず続けていると、今度は強い力で押し出された。それでも、普段の彼女の力を考えれば弱弱しい。構わず、腰を振っていると俺もようやく気持ちよくなる。最後に腰を打ち付けたとき、その得も言われぬ快感に思わずため息が出る。人生で一番気持ちのいい射精だったかもしれねぇ……
「お疲れ」
 ゴロンダの太ももを撫でて、彼女をねぎらう。そんなに嫌らしく触れたつもりはないというのにぴくんと体を動かしたのが嬉しい。
「……なぁ、これからも一緒につるんで生きようぜ?」
「うん……そうする。ってか、お金出すから、家を増築してもらっていい?」
「ベッドの次はそれか……いいよ、いつでも帰ってこい」
 どうやら、尻に敷かれる毎日が待っていそうだ。まぁ、いいか……こいつと一緒なら、それでも楽しそうだ。これからも、ずっと一緒だな。

たとえ雌であっても、雄より素敵ならそれで問題ないんです 


女性同士の同性愛描写を含んでいます


「ヌシさま! ギルドよりテレパシーでの通達です! 巨獣が出ました!」
「ふにゃ……? ん……わかった!」
 気持ちよく寝ていたところに、付き人のアーマーガァから叩き起こされ、一瞬だけの寝ぼけた返答から一息に覚醒せざるを得なかった。私は愛用の剣を咥えて、剣の王の姿へとフォルムチェンジをすると、彼女の足に掴まって大空へと飛び立った。
 彼女の足に掴まれるまま空を飛ぶ間、私は大きく深呼吸をして脳を覚醒させる。小高い丘の向こう側、確かにそれはいた。
「巨大化したルンパッパか……」
 地脈のエネルギーを浴びて、飲み込まれてしまったのだな。しかし、あまり強烈なエネルギーは感じない……強さは星三つと言ったところか。
「相性は少し不利といったところでしょうか……ですが、この程度なら応援は……」
「あぁ、不要だ。あの程度、私一人で何とでもなる。空中から最高速であいつのところに投げろ! 逃げ惑ってる者たちがいる、最速で決めるぞ! 赤いのが来る前に終わらせるぞ!」
「御意!」
 足元には現地民なのだろう、戦えない者たちの避難する時間を稼ぐために命懸けで戦っている戦士たちがいる。しかし、地脈のエネルギーを浴びて大暴れするルンパッパには歯が立たず、すでに満身創痍な状況だ。空を駆けるアーマーガァは残されたスタミナを振り絞って最高速度を出すと、蹴り飛ばすように私を空中で投げ、しばらくおぼつかない飛行をして呼吸を整えたのち、怪我で逃げ遅れている者たちを二人、乱暴につかみ上げて退避させていた。
 私は、空からあいさつ代わりの巨獣斬。咥えた剣が巨大化し、大木をも切り捨てる一振りへと形態を変える。普通のポケモンを相手にするにはあまりにも大きな圧力を持ったそれは足元で戦う者たちへの視線を逸らし、私に全ての意識を集中させる。
 脳天を叩き割る一刀を不意打ちにして相手をひるませると、ルンパッパは地面に降り立った私を睨みつけて躍起になって攻撃を行う。ルンパッパの脅威から民を守るべく戦っている戦士はジャラランガだった。勇猛な種族だとは聞くが、これは逃げろと言っても素直に逃げてくれそうもないだろう。
 私は攻撃を躱しながら相手の懐にもぐりこんで足へとじゃれついてやる。ルンパッパは強烈な痛みに耐えかね、地響きが起こるようなうめき声があたりに響く。
 奴は私を踏み潰してやろうと地団駄を踏み、瀑布を思わせるほどの強力な水流を吐きだし、足元に草を生い茂らせては走路を乱す。巨大化して理性を失っているおかげで攻撃の軌道は読みやすいものの、地面がえぐれ、ぬかるみ踏ん張りを聞かなくさせる攻撃は厄介だ。
 いかに相手の攻撃が読みやすくとも、足元がおぼつかなくなっては、攻めに転じることも難しい。足元事情の悪さに私が攻めあぐねていると、ジャラランガの戦士が自慢の輝く鱗をこすり合わせて強烈な音を奏でていた。私はフェアリータイプだから効かないが、それでもひどく耳障りな音があたりに轟く。
 大音量に一瞬怯んだ巨大なルンパッパの足にさらにじゃれついた。先ほどと同じ場所。大地を踏みしめるつま先をえぐる痛みが与えられて、ルンパッパは立っていることも出来ずに膝をつく。それでも、ルンパッパは口から水流を吐いて抵抗するが、その激流から逃れた私は、再び巨獣斬で首を刈る。巨大化したポケモンはそのほとんどが実態ではなくエネルギー体である。首を両断したところで実際に首が切れることはない……が、それに見合うだけの激痛はある。急所を一刀両断されたルンパッパはその痛みで悶絶し、白目をむいて地に伏した。それと同時に、今まで戦っていたジャラランガも力尽きたのか倒れてしまった。よくもまぁ、巨獣を相手にしてあそこまで耐え抜いていたものだ。しっかり介抱してやらねばいけないな。

「目が覚めたか?」
 破壊された村で、私は地脈エネルギーが再度溢れ出さないかを監視するため、しばらくは村に常駐することとなった。怪我人を介抱するために(そうしていないと復興作業に駆り出されるから)丸めた私の体を枕にして様子を見ていると、先ほどまで一人きりで戦っていたジャラランガが小さな声を上げる。
「ここは……?」
「目覚めたか? ここは村の診療所だ。君は地脈のエネルギーを浴びて巨大化していたルンパッパと戦って、力尽きて気絶していたのだ」
「あ、あぁ……思い出しました。私が戦っていたところに、ヌシ様が現れて……助けていただいたのですね。なんとお礼を言ったらいいか……」
「それが私の役目なんだ、気にしないでいい。普通のお礼と、給料代わりのメシと酒でもくれればいいさ」
「……でしたら。私からも、秘蔵の酒でもなんでも送りましょう。良ければ、私の家にも来てください! 良い酒を保管しております」
「いいだろう。一緒に飲もうか。だが、その前にお前もきちんと体を治しておけ。オボンの実を用意しているから、キチンと英気を養うんだぞ」
「はい!」
 秘蔵の酒とやら、こいつがどのような酒を好むのかはわからないが、とても楽しみだ。村の者たちも沢山の食料を分けてくれるというし、宴は盛り上がることだろう。

 地脈のエネルギーは、ポケモンが浴びてしまえば、ダイマックスと呼ばれる巨大化現象を起こしてしまう。それによって巨大な被害が発生するため、災害としての一面はもはや語るまでもない。しかし、地脈の効果は植物や小動物にも及び、地脈のエネルギーが活発になった場所は、その後数年は豊作が約束される。とくに、巨大化したポケモンが無理やり元の姿に戻された時は、エネルギーのほとんどが大気に拡散することなく大地に帰る。
 それゆえ、被害を出すことなく巨獣を退治できた暁には、来たるべき豊作を見越して盛大な宴が開かれる。地脈のエネルギーの残渣が再度あふれて被害をもたらすこともあるため油断はできないが、約束された方策を前にして村人の表情は明るかった。

 私は、その宴の中で主賓として招かれ、一番うまい肉と一番うまい魚と、一番うまい酒を振舞われる。ヌシなどというたいそうな肩書で呼ばれ、巨獣退治を専門に長い時を生きているが、この瞬間の愉悦はたまらなく幸福な気分になる。
 その幸福な気分に任せるがまま、色々なことを口走ってしまうのが問題なのだが……酒の飲み過ぎを後悔したのは、翌日のことであった。
「師匠、お目覚めですか!」
 あの時のジャラランガが私を呼ぶ声に違和感を覚える。はて、師匠とは何だ?
「……師匠、とは?」
「あれ? 昨夜、私を弟子にしてくださると仰っていたではないですか……あ、今まで通りヌシ様と呼んだほうがよろしかったでしょうか?」
 そうやらわたしは、酒に酔っているときにこのジャラランガに弟子入りをせがまれたらしい。そして、私は了承してしまったのだろう。
「すまない……あの、その、酒に酔って昨夜の記憶がないんだ。何が起こったか、予想はできるが、説明してはくれないか?」
「……え?」
 ジャラランガは首を傾げ、付き人のアーマーガァはまたですか、とため息をついた。昔はウインディの雄に一目惚れされて嫁になってくれと言われて、ついつい酒の勢いで了承してしまい、土下座して謝った経験があるが、なんてことだ、私はまたやってしまったのか。
「あ、あぁ……酔って記憶がないのでしたら、改めて。実は私、村でも指折りの戦士だったのですが……最近は自分の強さに限界を感じておりまして……環境を変えて修行をすることで、もしかしたら何か見えてくるのではないかと思ったのです。ですので、弟子入りさせてください! 貴方の強さの背中を追いたいのです!」
 このジャラランガ、キラキラとした眩しいまなざしで私に訴えかけてくる。これが、ぬか喜びさせたという前提条件が存在しなければ断られたかも知れないが、一度は受けてしまった手前、断れない。
「……私は、戦うのは得意なつもりだが、あまり指導というのはやったことがないからなぁ。それでも、いいのなら」
「構いません!!!!!!! これからよろしくお願いします、ヌシ様!」
「お、おう……わかった」
 やんわりと断ろうとしたが、ダメらしい。うぅ、さすがに嫁になるというほど深刻な問題ではないのだが、なんかこう、暑苦しそうで苦手である。私は長命な分、普通のポケモンからは想像が出来ないほど長く寝るし、何なら暇があればナマケロやケーシィよりも長く寝るくらいなのだが……平時なのに普通のポケモンに生活リズム、合わせられるかしら。

 その心配は、杞憂であった。ジャラランガは、ひたすら一人で鍛錬するタイプであり、私がずっと寝ていても、それを理解してか無理に起こしに来ることもなかった。眠りから覚めた私のために、木の実だったり、肉だったりが差し入れられていることもしばしばだ。
 食料の調達がとても楽になったので、その分鍛えてくれということらしく、彼女は目を輝かせながら手合わせを申し込んでくる。タイプの相性を差し引いても、到底私に敵うような相手ではないとはいえ……私に弟子入りを頼むだけあって、今まで見てきた強者の中でも指折りの実力者だ。自分の強さに限界を感じていたというのもまるで嘘のように、ジャラランガは私が叩くたびに少しずつ強さを増していく。
 恐らく、この女は自分より強いものがいないからこそ伸びなかっただけで、自分と互角かそれ以上の相手がいれば、まだまだ伸びしろが長いタイプなのだろう。時に私とともに巨獣討伐に赴いては、特に私が苦手とする炎タイプ相手に対して強く出ることもできるようになり、相性を度外視すれば私の半分くらいの役には立ってくれる。
 各地を巡る過程で強敵にも出会い、それらと己を高めあう日々を過ごすうちに、彼女はすっかり逞しくなっていく。いつしか、超一流の探検隊にも引けを取らないと巷でも噂をされ、巨獣を鎮圧した後の宴でも彼女はもてはやされるようになっていく。

 その日は、私とジャラランガが巨大化してしまったハガネールを倒した時のことであった。物理耐久が恐ろしく高いうえに、有効な技も少ない私には相性が悪く、私も苦戦せざるを得なかったのだが、相性で勝るジャラランガのほうが私よりもよっぽど活躍してしまうということはあった。
 無論、相性が関係のない戦いであればまだまだ私が勝るであろうが、ここまで強さで追いすがられたのは、誇らしくもあり、どこか悔しさや寂しさもあった。長く生きている私は、鍛錬はマイペースでダラダラと行ってきた自覚はある。真面目にやってればもっと強くなっていたのだろうか? と思わなくもない。
 問題は鍛錬する相手がいないということだが……また、元カレと寄りでも戻すべきだろうか、それともたまには赤いのと手合わせでもするべきだろうか、などと私は考えていた。元カレのことを考え出すと、元カレと一緒に居たときは毎日鍛錬していたし、たまに二人きりで愛を確かめ合ったときは楽しかったな……などと、色んな事を考え出してしまう。
 そんなこともあって、その日は飲み過ぎた。どうも私は宴の最中、鍛えなおすために元カレとヨリを戻したほうがいいのかなぁ、だなんて、その辺の一般的なポケモンでもなかなか言わないような男がらみの愚痴を垂れ流していたそうだ。伝説のポケモンである私がそんなことを言うなんて、意外なものだなぁと考えるものもいたようだが、神話には浮気に嫉妬して相手を殺したとか、村ごと亡ぼしたとか、伝説のポケモンの伝説たる豪快な痴話げんかは、世界各地で広く語られているので、意外でもなんでもないというものもいた。
 いつか私のことも数百年単位で語られてしまうのかと思うと、なぜ彼と別れたのかは口をつぐんだほうがよさそうだ。その辺の一般市民ならよくあることで1年とたたずに忘れられてしまうようなことを、伝説のポケモンだからという理由で何百年も語られるのはさすがに辛い。
 そんな惨めな気分の時に、私は……私は、弟子ととんでもないことを約束してしまったらしい。

 翌日、私は二日酔いの頭痛に悩まされながらも、アーマーガァに運ばれて住処に戻り、ジャラランガと二人きりになる。住処の近くに流れるせせらぎで水を大量に飲み、尿と一緒に体の悪い物を吐き出し、さらには体を洗う。しかし、昨晩は本当に飲み過ぎた……アーマーガァが、ドラゴンの男を友人に紹介してもらったらズルズキンが来たとか愚痴っていたのは覚えているが、それ以降の記憶がどうにも曖昧だ。あいつ、『ドラゴングループならドラゴンタイプじゃなくてもいいとは言っていたが、あそこまでダサい男が来るとは思わなかった……』などと相当欲求不満だった様子……
 そんな愚痴の記憶ばっかり残っているせいか、まだ頭が重いが、少しはましになったというところか。私が起きたのに気付いたのか、ジャラランガは鍛錬を中断したようだ。先ほどまで響いていた鱗の涼やかな音が止まっている。
「おはようございます、師匠。早速ですが……昨日のアレ、どうしましょう!?」
 何か嫌な予感がした。青い私がさらに真っ青になりそうな前振りをされ、私は肩をすくめながら『な、何のことだ?』と尋ねる。
「……あれ、また忘れてしまったのですか? 『そんなに元カレを思い出して寂しいなら、私と大人の遊びをしましょう』って言ったら、師匠は『あぁ、頼む』って」
「言ってしまったのか……」
 私は大きく俯き、ため息をついた。
「えー……師匠、もうお酒の飲み過ぎはやめましょうよ」
「そのほうが、いいのかもしれないな」
 ため息が止まらなそうだ。
「しかし待て! お前そもそも女だろ!? なんで女同士で大人の遊びをすることになっているんだ!?」
「師匠、男は浮気ばっかりするからダメだって……ほら、元カレ、なんか女を侍らすのが男の甲斐性みたいな性格で……ソルガレオ*3でしたっけ? そいつに嫌気がさして別れたって」
「言うな言うな!」
「それで師匠は、私のことは一途で浮気しなそうだからいいぞって……」
「そんなこと言ったのかぁぁぁぁぁぁ……」
 ジャラランガから聞かされる昨夜の醜態で、顔が赤くてザマゼンタになりそうな羞恥を味合わされる。
「私、強い男とつがいになりたいと思っていましたが、自分より強い男に出会えたためしもなく……それならば、師匠ほどの豪傑であれば女性でも構わないかな……なんて思ってました!」
「それなら、私が赤いのを紹介してやるから落ち着け! なんかめっぽう強い付き人もいるらしいし、ちょうどいいだろ!」
 なんだこいつは、百合の気でもあるというのか、ジャラランガがこんな奴だとは気づかなかったぞ。
だって、師匠はとても筋肉が引き締まっていて、顔つきもとてもキリリとして、目つきは刃物のようのように鋭い。立ち振る舞いも美しく、戦えばどんな男よりも勇猛果敢……私の理想です!」
「あ、あぁ……そうか……今の特徴、赤いのにも当てはまるから落ち着け」
「実は私、師匠を見ているとずっと前から体がうずいていて……発情期みたいなんですよ。師匠は性差に惑わされるような体ではない*4から気づかないかもしれませんが、もう耐えきれないくらいに、私の体はつがいを欲していまして……ただ、強い相手と体を重ねるだけでもいいのです。たとえ雌であっても、雄より素敵ならそれで問題ないんです!
 それが、師匠であれば最高だなって思っておりまして……そして師匠もまた体がうずいているのなら渡りに船だなって思っていたんですよ、! ですが……ヨッタイキオイダッタノデスネ……ナラアキラメマス……」
 最後の一言はかなり無理をして言い放った言葉なのか、声が物凄く震えている。
「わかったわかった……く、何かの間違いがあっても卵が出来ることもあるまいし、お前なら……まだ子供が出来ないだけウインディの男よりもましだ。ええい、そこまで言うなら煮るなり焼くにゃり……煮るなり焼くなりすきにしろ!」
「あの、師匠……無理してません?」
「物は試しだ!! もう、赤いのは紹介しないでもいいんだな!?」
「はい! 師匠が一番安心できます……そりゃ、赤の巨獣狩りにも興味がないわけじゃないんですけれど……」
 無理はしてる。だが、私も一度決めたことを反故にするような奴だとは思われたくはない。私は服従のポーズを取り、さぁ来いどんとこいと構えを見せる。
「……えと、じゃあ、お言葉に甘えます、けれど……でも、師匠。そこまでやけにならなくたっていいですって」
 さらけ出された私の股間を見て、ジャラランガは口元を隠しながら恥じらいでいる。いけない、さすがに開き直りすぎたかもしれない。まだ冷静になり切れていないが、冷静になったらまた恥ずかしい思いをすることになるだろう。
「……ど、どうすればいいんだっけ? こういう時はあれか、やはり人気(ひとけ)のない場所にいくか?」
「元からこの住処、尋ねてくる人なんて伝令兼足役のアーマーガァさんくらいしかないでしょう……しっかりしてください」
「だよなぁ、うん……ところでお前、男性経験はあるのか?」
「えぇ、ありますよ。ただ、子供は出来ませんでしたが」
「じゃあ女性経験は!?」
「ないです……なので、勘と気合と根性でやりましょう! やはり、実戦が一番の経験です」
「ちょっと待てお前そんなんで私と番おうというのか! ……く、つまらなかったらもう二度とやらんからな!」
「心得ましたぁ!」
 全く、こいつとのやり取りにムードというか品と言えるものをまるで感じられる状況じゃない。だけれど、酔った勢いとはいえ約束を破る者だと思われたくない。それだけはどうしても譲れない。
「で、どうするのだ」
「……まずは、雌の私が鱗を鳴らします!」
「待て! それはお前らジャラランガのやり方だ!」
「大丈夫です。鳴らすのは女性だけなので!」
「……お、おう」
「鱗を鳴らしたら、男は後ろから覆いかぶさっても大丈夫なので、私の鱗の音を聞いて、その気になったら、師匠が私に覆いかぶさる……と」
 どうしよう、全くそそりそうにない。っていうか私が男の役をやるのか……。私の気なんて知りもしないで、ジャラランガは私のことを見つめながらシャランシャランと涼し気な音を鳴らす。いつもの音色と比べるとずいぶんと穏やかでゆっくりとしたペースで、威嚇する時の鱗の鳴らし方とは明らかに違う。なるほど、この音色は確かに落ち着く。しかし、後ろから覆いかぶさる、とは……一応、男のやり方は知っている。私だって長生きしているのだ、自分が男から愛を受けたこともあるし、愛し合う男女の行為をのぞき見したこともないわけではない。
 でも、男のそれを実践してどうしろというのだろう? 私はジャラランガの背中にのしかかってみたが、これ以上どうしろというのだろうか?
「……で、ここからどうすればいいのだ?」
「……ちょっと重いですが、これはこれで、幸せな気分です。ふわふわで、暖かくて……鼓動と呼吸が感じられる。こんな風に密着することは私の戦い方じゃあり得ないから、これだけでも何だか新鮮……」
「そうか……」
 結局どうすればいいのか何も言ってもらえないじゃないか! 私は結局どうすればいいのだ! やはり身体能力は高く、私の体重を抱えていても全く苦もなく支えている。そんなに私に覆いかぶさられるのが好きなのか、そう思ってくれるのはありがたいのだが、やはり私は雄の役割など性に合わない。というか、何故私はこんなことをされているのだろうという感想しか沸いてこない。
「あぁ、本当に温かい……私達ドラゴンタイプって、体温が低い種が多いので……こうやって体温が高い陸上グループや飛行グループのポケモンに温めてもらうのって、本当に心地が良いんですよね」
「そうか……それは何よりなんだが、私はいつまでこうしていればいいのだ?」
「で、す、よ、ねー……やっぱり私どうすればいいのかよくわからないのですが、誘った以上は私が何とかしなきゃと思っているのですが……体も温まってきましたので、今度は私が師匠の望むことを……」
「私の望みはこの茶番を一刻も早く終わらせることなのだが?」
「ま、まぁそう言わずに……」
 なんで私はこの押しかけ弟子のペースに乗せられて色んな事をさせられなければならないのか。
「じゃあ、今度は師匠が疲れないように、楽な姿勢でじっとしてても大丈夫です!」
「そうさせてもらうよ」
 私はようやく彼女の体の上から降りることが出来た。全く、なんでこんなことをしなければいけないのか、人生を見つめなおしたくなってくる。楽な体制ということなので、もう私は何もかも嫌になって寝るときのような横倒しの体勢になってやる。さぁ、何かできるものならやってみろ。
「では、失礼いたします」
 ジャラランガはつばを飲み込み、私の体をじっくりと観察する。横に投げ出された足を隠す尻尾を手でめくり、その先にある尻を露わにする。肛門と、逆三角形のクリトリスをまじまじを見つめ、ジャラランガは恐る恐るクリトリスに触れる。尿道と膣が一体化した場所なので、そこは当然性器。だが、触れられた程度でどうかといえば、なんともない。あまり触れられ慣れていない場所とはいえ、はしたなく声が出ることも体が動くこともなく。ちょっとうんざりしながら私は触られている。
 ただ触るだけでは反応がないことを悟ってか、ジャラランガは全身を撫で始める。指で毛皮を掻き分け、その下にある肌を直で刺激するように。こうやって撫でられるのは悪くない。二足歩行で、自由に動く手を持っているポケモン。格闘タイプに多い特徴だが、これは確かに悪くない。赤いのも格闘タイプだが、あいつの手は不器用だから、こんなことはできないだろうなぁ。
 私と似たような姿かたちのポケモン。そう、例えばデルビルとかガーディとか、そういうポケモンの子供は撫でられるのが大好きだ。父か母のどちらかが自由に動く腕を持つ種族だと、幼いころは思う存分撫でられることを満喫するという。私の両親はどちらも四足歩行だから、ここまで巧みに撫でられたことなどなかったが……なるほど、大人になってもこれは気持ちの良いものだな。
 大人になると伝説のポケモンだからと威厳を求められ、こうして撫でられる機会もなく……ちょっとくすぐったいけれど、これは確かに気持ちいい。
 はぁ……何だか気が抜けてきたし、もう目を閉じてこいつの言う通り楽にしてしまおう。あー……ちょっと気持ちいい。もっとこっちのほうを撫でてほしいんだがなぁ……うんうん、そこだそこ。あと顎の下もいい感じで……うんうん、ちゃんとわかってくれているじゃないか……あれ?
 私、何だか知らないけれどいいように弄ばれている気がする。でも、こうやって『手を使って』優しくされるのって初めての経験で……あのガサツな元夫とは比べ物にならないくらいに心地がいいから……なんか、気を許してしまって……
 特にお腹の、体毛が薄い部分を撫でられるのが、とても気持ちいい。ここは本当に気を許した相手にしか触らせたことがないからな……触られたのは本当に久しぶりだ。そういえば、この部分には乳首があるのだが、そういえばそれを子供に飲ませるために使ったことは一度もなかったな。
 だから、ここまで遠慮なしに触られるのは実は初めてだ。うーむ、数年に一度の発情期を逃してしまったのは惜しかったかもしれない。そんなことを考えていると、わき腹、尻尾の付け根、耳、首筋。普段触れられることのない場所を、遠慮なしにべたべたと触られる。
 やっぱり心地よい。このまま眠ってしまってもいいくらいにいい気分だ。ううむ、高貴な存在だと思われたせいで私に触ってくる者がいない弊害がこんなところにあるとはな。台東の核を盛ったポケモンでなくとも、ただ楽しませてもらうだけならばいくらでもできるのだ。あー……こうなると、体の反対側もやって欲しくなる。寝返りを打てば体の反対側も撫でてくれるだろうか? おぉ、これぞ以心伝心、私の体の反対側も撫でてくれたぞ。これはとてもありがたい。それにしても、どんどん体の気持ちよさが増してきたような気もする。
 この気持ちいいという感覚をより強く感じられるようになったような。この感触を良く味わえるようになると、もっともっと感じていたくなる。目を閉じているとより感覚が鋭敏になるから、指の一本の感触まで掴めるようだ。自然と呼吸が深くなり、心が凪ぐように落ち着いていく。
 そんな愛撫を受けているうちに、上半身を撫でていた手は下半身へと移る。尻尾の付け根はやはり気持ちよいし、腹を撫でてもらえるのは嬉しい。完全に気を許していたその時に、ジャラランガは急にクリトリスをつまみ、不意を打たれた私の体はぴくんと跳ねた。
「んっ……」
 今の感触、これまでのものとはまるで違った。体が温まっている。運動によるものとは違う温まり方だ。ここまで微弱ではないが、これと同じ感覚を私は知っている。何年かに一度の発情期と同じだ……その、初期症状のような。体がうずく、もっと体を撫でてほしいと感じる。彼女に甘えてみたくなる。
 このままこの衝動に流されてしまってもいい物だろうか? いや……ここにいるのは二人きりだ。誰に恥ずかしがる必要があるというのだ。もっと、彼女の手つきに身を委ね続け、あの時の、発情期の時のような体と心が熱くなるような状態になりたい。
 望まない時に発情期になってしまうと厄介だが、こうやって気を許せる相手と、ゆっくりできる間だけ、発情期のようになれるのなら申し分ない。もちろん、体というものはそこまで簡単な話ではないのは分かっている。今の状態は発情期のそれに近い気もするが、体の奥底から燃え上がるようなあの発情期のような情熱は、さすがに難しいだろう。
 でも、あの時の熱の半分でもいい、それを彼女が与えてくれるのならば……私は、その熱で燃え上がりたい。そう思ったら、炎に風を送るかのように、体の熱が一層増した。今まで、あまりに暇すぎてうんざりしていたけれど、快感を感じようと強く意識すると、体はそれに答えてくれる。花をヒクつかせればにおいに敏感になり、耳をすませば聴覚が敏感になったり、快感を感じようとすれば感覚は敏感になるのだ。
「もっと……」
 気付けば私は、ジャラランガに求めていた。
「いいんですか?」
 ジャラランガが嬉しそうな声を上げる。
「あぁ、もっとだ」
「そこまで言われたら遠慮しませんよ?」
 ジャラランガの声が笑っている気がした。悔しいが今主導権を握っているのはどう考えてもこいつだ。それで優越感でも覚えているのだろうか。でも、それでもかまわない。その想いに応えるかのように、ジャラランガの手つきはさらにさらに遠慮がなくなってくる。全身で抱き着くように密着されて、その状態で全身を愛撫し、時に私の秘所を小突き、つまみ、押しつぶし、こすり、もみほぐし。色んな動きで私を翻弄してくるものだから、私の熱は徐々に温度を増していくばかりだ。
 体が勝手に動く、とまで感じるのはそのすぐ後だった。なんでもいいから、膣の中に刺激が欲しい。交尾がしたい。体がそう訴え、その欲求に脳の処理が追い付かなくなるまで、時間はそんなにかからない。私の体はすっと立ち上がり、じっと地ていられなくなった体は雄を誘うように、尻を彼女に向けた。
「その体勢……いいんですか? 飢えた男のように、私も愛しちゃいますよ?」
「構わん、やれ」
 なんとはしたないと、誰かに見られたらそう言われるのかもしれないが、この子はそんなことを言わない。
「師匠、私幸せですよ」
 こんな風に純粋に喜んでくれる。そう確信しているから、なんでも任せられる。ジャラランガはあらかじめ丸く削っておいた爪に、私の膣から漏れ出た粘液をとろりと絡め、ゆっくり慎重に中へと挿入する。お互い、指を入れるなど初めての行為なので遠慮がちだ。恐る恐る入れているせいか痛みはない。
 ほぐれていない状況であれば、胎内に柔軟性が足りずに痛みの一つもあったかもしれないが、さんざんほぐされ、恐らくは充血しているであろうそこは、指程度なら簡単に受け入れた。もう何十年も前のことではあるが、男根だって受け入れたのだ、これが当然だ。
 もどかしいくらいにゆっくり、彼女の指が前後する。腰が自然に揺れてしまう。体は、雄が動かないなら自分が動くとばかりに快感を欲している。この時ばかりは、相手が冷静なのを恨みたくなる。今私の胎内を満たそうとしているのが男根であったなら、雄は正気でいられず夢中で腰を振っていたところだろう。それぐらい激しくたって構わないのに、あぁもう。
 私が自ら腰を振っていることで彼女も察したのだろう。私が望んでいたのと同じくらいに激しく指を出し入れする。自然と鼻の隙間から漏れ出る喘ぎ声を、押さえることもできず、ジャラランガの責めに翻弄されてしまう。彼女には太ももを押さえつけられている。逃げようと思えば逃げられるとは言え、もう逃がさないとばかりのきつめの抱擁が、今だけはなぜか心地いい。
 やがて、箍が外れた。もう何も考えられないくらいの快感に頭がしびれた。それに合わせて私の動きが止まったのを見て、ジャラランガの攻めも止んだ。これ以上触られたら、くすぐったさしかなかっただろうから、ありがたい。
 しばらく余韻に浸ったまま立ち尽くしていると、ようやく正気に戻り始めた私が先に動き、前に歩いて挿入されたままの彼女の指を振りほどく。行為の最中はあれほどきつく抱きとめていた太ももから、彼女の腕はするりと離れて私を解放してくれた。
「あぁぁぁ…………」
 巨大な溜息をつきながら私は地面にへたり込む。正直、一戦交えるよりも疲れてしまったような。発情期の時はその疲れすらも気にならないくらいにテンションが上がっていたような気もするが、平時の今は体が休みたがる。交尾というものはこんなに疲れるものなのだな……
「満足できました?」
「まぁ、な……正直、発情期でもないのにこうまで体が熱くなることなんてないと思ってたが、根気よくやればなんとかなるものだな……満足したし、疲れたな……」
 少し汚れてしまったし、水浴びでもしてから少し寝たい。
「師匠、それは何よりなのですが、私は全然満足していないのですが……」
 と、いうわけにはいかないようであった。確かに、彼女にされるがままで、私は何もしていない。
「このまま、私はお預けですか?」
 潤んだ眼をしておねだりされると、私もこれには逆らえない。くっ……元々私が酔った勢いで了承してしまったのがいけないのだ、腹をくくるしかないだろう。
「わかった。いいだろう……だが、私は手も足も使えない。舌で舐めるくらいしかできないが、それで構わんな?」
「師匠が愛してくださるなら、それで大丈夫ですとも。で、どんな体勢だとやりやすいですか?」
 ジャラランガに尋ねられて私は悩む。どんな体勢と言われても、女性経験など私には皆無だ。しかし、彼女の体は全身がぶ厚い鱗に覆われており、いかにも鈍感そうだ。そうなると、その分厚い鱗が守っている腹側を攻めていくしかあるまい。
「仰向け……そうだな、仰向けがいいな。普段攻撃を受けないような場所が良く見えるようにしてほしい」
「さっきの師匠と同じ恰好ですね……誰かにこんな姿を見せるのなんて初めてだから緊張するなぁ」
 ジャラランガは、一度全身の鱗を振るわせてから、こちらをちらりと見やった。こちらを伺い、はにかみをながらごろりと体を横たわらせ、天を仰ぎながら尻尾を投げ出す。弱点はもちろん、性器も丸見えになった。少し恥ずかしそうな、口がむずがゆそうな表情をしているが、私もそんな表情をしていたのだろうか? なんにせよ、確かにこんなポーズをされると、可愛がって上げたくなってしまう気持ちが沸き上がる。
 こいつが私のことを魅力的と思う理由も今ならわかる、美しく鍛え上げられたからだというのは、男女を問わず魅力的なものだ。私は手も足も着ようじゃないので舐めることくらいしかできないが、其れでもやれる限りのことはやらせてもらおうではないか。
 まずは彼女の胸を舐める。胸の方にも鱗はあるものの、背中や腕を覆っている鱗と違い小さくて薄い。それに柔軟性もある。舐められると、やはり触れられ慣れていない場所のせいか、かなり敏感だ。くすぐったそうに、かすかに身をよじるさまが何だか面白い。
「こんなんでいいのか?」
「よくわかりません……雄とつがいになったときはこんなことされなかったので……ですが、続けてください、師匠」
 表情が期待に満ちている。まだくすぐったい以上の感覚は無いのだろうが、それでも続けていけば違う感覚が芽生えることを予感しているようだ。頼まれたなら、やるしかないな。私は彼女の胸や腹をひたすら舐め続ける。唾液を眩し、体の上を滑らせるように何度も何度も。最初こそ気持ち悪そうな、くすぐったそうな顔を浮かべていたが、続けていくうちにくすぐったさよりも別の感覚が芽生えて仕方がないようだ。
 もじもじと足を動かしている。疼く自身の生殖器に無意識のうちに刺激を与えようと言ったところだろうが、あいにくその程度の刺激では気持ちよくなどなれはしない。元々発情期のようだったし、すぐにこんな状態になってしまったのは可愛らしい限りだ。
 口には出さないが、もう今すぐにでも男根を入れてほしいと言わんばかりの表情だ。性欲とは違うが、遊びたがっている子供を見るとつい遊びたくなるような、そんな感じで彼女をかわいがってあげたくなる。あいにくだが、私には雌の胎内に入れられるものはないし、まさか剣を入れるわけにもいかないので舐めることしかできないが。
 それとも、触手のように動くこのお下げ髪ならば少しは器用に操ることもできるだろうか? 痛かったら申し訳ないが……
「なぁ、そろそろ欲しいか?」
「……欲しい、です」
「上手くできなくとも恨むなよ」
 恥らないながらもしっかり頷くジャラランガの腹に顔をつけ、本格的に責め立てる。まず、彼女の秘所周りをひたすら舌で舐めまわす。しかし、濃厚な雌の匂いだ……私が雄だったら魅了されていたのだろうか? 普段性別があるかもわからないような私ではそれは無いかもしれんが、出来るならここで興奮してみたかったものだ。
 体格差がある分、ある程度舌も大きいし中までねじ込んでやればそれなりの刺激にはなるだろう。声には出していないが、体中の筋肉が換気の声を上げているのがわかる。舌がぎゅうぎゅうと締め付けられ、歓迎されているようで嬉しい。
 舌をねじ込み、中で動かしてみるとその反応はさらに大きくなっていく。なかなか面白い。男と交尾した時は、後ろに覆いかぶさられていたからその表情も体の様子もまともに見られなかったし、そもそも自分も発情期だったためにいっぱいいっぱいだった。しかし、こうして冷静な視点で他人がよがるさまをまじまじと見るのは、新鮮な気分だし、何より面白い。もっともっと、激しくやったらどんな反応を見せるのか楽しみで仕方のない自分がいる。
 あまり使いたくはなかったが、触手のように使える私の髪の毛を使ってみよう。剣を持ち歩くにも使っているお下げ髪なら奥まで届くし、舌以上に自由に動かせる。視界の端で揺れていたお下げ髪をこれ見よがしに彼女の目の前で躍らせる。
「あの、それ……使うんですか?」
「嫌か?」
 そう問うと、初めての経験なので何とも言えない顔で少しだけ考えたが、好奇心に負けた彼女はこくりと頷いた。私にとっても初めてのことなので、慎重に差し入れた。体毛が中に入り込むと、生暖かい感覚が伝わってくる。少し奥まで突っ込んでやると、それだけで彼女は耐えがたい表情をしている。
 目は見開いているのだが、どこを見ているのかわからない、声を出さないように必死だが、これはどこまで耐えられるのだろう? わつぃにも好奇心が出てきたので、前後にお下げ髪を往復させると、彼女は体をのけぞらせ、そのうえ痙攣している。何かまずいツボでもついてしまったのではないかと思うような反応を見せた、
 今までで一番強い力で胎内も締め付けてきて、これが男根だったら、さぞや心地よく絞めつけてくれたのだろう。私が男じゃないのが、今だけは残念でならない。
「どうだ、満足したろう? 私でもあんなふうになったことは無いぞ、そんなに可笑しくなるくらい体が震える奴もいるんだな」
 ちょっと意地悪な口調で声をかけると、しばらく彼女は答えない。
「本当に大丈夫か?」
「ちょっと疲れました、師匠」
 心配になって質問を変えてみると、彼女はそう言った。ちょっとに見えないのだが、本当にちょっとなのだろうか?
「でも、今は師匠のおかげですごく幸せです」
「そうか……しばらく休め」
 先ほど、気持ちよくしてあげたときは尋常ではない様子だったが、やはり彼女はちょっと疲れたなんてものではなくクタクタのようだ。
「でも、少し休んだらもう一度やりません?」
 発情期の獣とは恐ろしい。こんなに疲れているというのに、まだやる気なのか……元々一日中鍛錬しているような奴なので、すぐに疲れが回復する性質なのかもしれない。
「しょうがないな、付き合ってやるか……」
 一方的に付き合わされるだけじゃなく、私も楽しませてもらえるし……な。

メスカギわからセックス! 

この作品では、使ってはいけない技を使ってしまう描写があります。このお話はフィクションであり、決して真似をしないようご注意ください。


「あのクソアマがぁぁぁぁぁぁ! 散々期待させておいて、顔を見ただけで帰るとか何を考えてやがる……俺は名門ギルドのエリート職員だぞ、くそ!」
 うわ、なんかイライラしているズルズキンのオジさんがいる。何だか女に振られたみたい、惨めだなぁ。
「ねぇ、どうしたのー、おじさん?」
 でもそういう惨めな男ほど、からかうと楽しいんだよね。
「ああん? うるせーよ! こっちは女に振られてイライラしてるんだ……放って起きやがれ!」
「ふーん? でも、振られたってことはもしかして欲求不満なんじゃない? だったら、私がその欲求不満、受け止めて上げてもいいんだけれどな―……」
 上目遣いをして、オジさんを誘うと、おじさんはしばしの間黙ったかと思えば、怪訝そうな顔をした。
「お前みたいなちんちくりんお(じょう)ちゃんなんかにはお兄さんはときめかねーんだ。わかったらお錠ちゃんはお家に帰んな」
「えー……おじさん、そんなこと言って、ズボンの中でちょっとおちんちん大きくなっちゃってるよ? 無理してんのバレバレ、なに、もしかして女の子と会って、よろしくやるつもりだったとかー? お錠ちゃんだなんだとか言って、ちんちくりんなわたしに性欲を向けるだなんて、おじさん変態じゃん? 変態なら我慢せずに、欲望のままに身をゆだねちゃいなよ。どうせ童貞なんでしょ? モテないオーラ出てるよー?」
「くそ……このメスカギめ……いいぜ、こっちはクソアマに振られてイライラしてるんだ……お前がイキ狂うまで責めてやるから覚悟しろよ!?」
 ふふふ、釣れた釣れた。本当に童貞臭いおじさんなんだから。こういう奴を私のテクで速攻イカせて、くそ雑魚チンポを自覚させるのが最高に快感なんだよね。

 おじさんが乗り気になったので、私は人が来ないような廃屋に案内する。この廃屋、今は誰も使っていないけれど、なかなか扉が丈夫だから重宝しているんだよね。たまたま拾った鍵がここの鍵だったからありがたく使わせてもらってます。
 さて、密室にたどり着くと、おじさんはすでにチンポがビンビン。
「あれー? ちんちくりんのお錠様にはときめかないんじゃなかったの? もうおちんちんが準備万端じゃん」
「うるせーな……ほんとお前はロックでもないメスカギだな……」
「ふふーん、お褒めの言葉あざーっす! でも、いいの? ここまで誘っておいてなんだけれどさー、私、童貞臭い惨めな男の子を気持ちよくさせるボランティアをしてるわけ。でも、私もボランティアする相手は偉そうじゃない人を選びたいんだよねー? もっとさ、私に生意気な口を利かずに、惨めな男にふさわしい感じでお願いとかできないの?」
「あぁん? そんなのするわけないだろ!?」
 ズルズキンは言う。やっぱり、私みたいに小さいポケモン相手に頭を下げるのはプライドが許さないということだろう。
「ふーん、じゃあ私はおじさんのそのぶざまなおちんちんに何もしてあげなーい。ここまで来て、女の子を目の前にして、何もできない惨めおチンポかわいそう」
 プライドが邪魔して素直になれないズルズキンを思いっきり馬鹿にして私はほくそ笑む。
「じゃー、バイバイ」
 ここまで来てお預けというのは辛いよね? ズルズキンの表情がものすごく曇っている。
「わ、わかった……」
「わかった? それで礼儀正しいつもり?」
 ズルズキンも男の欲望に負けたのか、少し態度がしおらしくなるが、まだまだプライドが邪魔してる。
「わ、わかりました……お、俺のチンポをどうにかしてください」
「ふーん、よく言えました。じゃあ、ご褒美上げるから、感謝してくれない?」
 上目づかいでそう言ってやると、おじさんは屈辱で顔をゆがめながらも、絞り出すように言う。
「ありがとうございます」
「よしよし、いい子いい子。じゃあ、ちんちくりんなお錠様に発情しちゃう童貞チンポを気持ちよくさせてあげるからねー。ま、あんたみたいに女に縁がない奴にはおそらく一生に一度のチャンスだから? 良く味わいなさいよ」
 私が威張ってやると、ズルズキンの男の攻撃力が上がるのを感じる。煽られたら逆に興奮しちゃったのかな? 童貞なうえにマゾとかちょっと救いがないんじゃない? さて、ここまでギンギンになっていても、私のドレインキッスさえあれば、くそ雑魚チンポなんて一瞬で射精させられるんだから。威張られて混乱してわけがわからなくなっているうちに、一瞬で射精させて、その情けない顔を拝んでやるんだから……それじゃ、ドレインキッスでいただきまーす。
 脱皮した皮で作ったズボンから出た、蒸れて匂いのきついチンポの先に、私は口をチョンとつける。そして、軽ーくドレインキッスをしてやると、ズルズキンは一瞬で射精してしまった。ふふふ、大きな根っこを持っているから、吸収効率も最高。これは雑魚オスのおかげで、私の肌がまた潤っちゃうな。
「あれー? もう出しちゃったの? なっさけない、耐久力ゼロのおチンポとか、おじさん恥ずかしくないのー? 子供を作るための精子もこんなに無駄にしちゃってさー。男として終わってるっていうの?」
 私はニヤニヤしながらおじさんを煽る。いやー、こうやってダサい男を前に威張り散らすのって本当にやめられないよね。効果抜群のドレインキッスを受けたせいか、腰もガクガクしちゃってて、かわいいー。
「あぁ、かもな……」
 と、ズルズキンが言った瞬間、私は体に強い衝撃を感じた。気付けば私、体をものすごい力で押さえつけられてる!?
「どうしたよメスカギ?」
 なんだかちょっと様子が変だな、と思ったのだけれど、よく見るとこのおじさん、キーの実を食べているじゃない……混乱が治るということは、威張って攻撃力を上げてしまったのに、混乱していないってこと!? マジ、やばくない? ズルズキンが相手なら相性的にも有利だけれど、こうもがっしり押さえられちゃうとドレインキッスは出来ないし……私の武器の鍵も、全部奪われて地面に投げ捨てられてしまった。
「散々大人の男を煽って弄んでくれたみたいだし、躾の出来ていないロックでなしのお錠ちゃんにはおしおキーが必要みたいだな。そもそも、この地域じゃクレッフィの威張るは禁止*5なんだよ! ギルドの職員相手に威張ったのが運の尽きだったな!」
 やばい、完全に怒らせちゃってる。私の顔を押さえつけられて後ろを向かされちゃったし、こうなるともう妖精の風すら出すことが出来ない。威張ったせいで物凄い力になってるし……
「でもま、俺も鬼じゃねえからな? お錠ちゃんが反省する程度にイカせてやる程度に収めてやるから、安心しろよ」
 嘘でしょ!? こんなだっさい男に、キーの実が鍵となって逆転されるだなんて……キーッ! 悔しい! しくじったわ。
「さっき一発出しちまったからな、ちょっとしばらくは俺の指で楽しませてやっからな!? せいぜいいい声で鳴いてクレ!」
 おじさんはそう言いながら、私の体を片手で押さえつけて、もう一方の手で私の桃色のクリトリスを乱暴に弄る。私の口の下にあるそこを責められると、気持ちよくなってしまう。そりゃ、短時間触られるくらいならどうってことはないけれど、押さえつけられてしつこく撫でられ続けると、快感を無視できなくなっちゃう。
「ちょっと! やめなさいよ……離して!」
「うるせぇ! 大人をさんざん馬鹿にした責任を取ってもらうぞこのメスカギめ!」
 どんなに暴れても、威張られて上昇した握力のせいで、全然抜け出せない。力は強くなってるのに、私はむしろいいようにされて力が入らない。く、気持ちよくて声が出ちゃう……こんな童貞チンポ野郎にイカされるだなんて、屈辱……なのに……
「あぁん……」
 思わず大きな声が出た。体が震える……快感が強すぎて逃げたくなるのに、逃がしてもらえない。
「も、もうイッたから! もうイッたから! やめて!」
 そう懇願するのだけれど、このおじさんは全然やめてくれない。敏感なところを容赦なく触られて苦しい、きついのに……また気持ちよくされちゃう。もう気持ちよくなりたくなんてないのに……
「おら、もっとイキやがれ! 気絶してもやめねえからな!」
 もう勘弁してほしいのに! 本気で嫌なのに……でも、相手は容赦がない。どれだけ逃げたいと思っても、私が威張りすぎたせいで逃げられない……うぅ、いくら何でも、キーの実持っているだなんて予想できないし、こんなくそザコオスにいいようにされるだなんて……悔しい……
「ご、ごめんなさい! 許してください!」
「あぁん? きこえねーな! 大人を馬鹿にするとどうなるか、きちんと覚えておきやがれ!」
「やぁん! も、もう絶対に男を馬鹿にしたりしませんからぁ!」
「知らねーよ!」
 私が許しを懇願するとズルズキンはより一層力を強めて乱暴に責めてくる。体を振り乱しても、押さえつけられた体はピクリとも動かず、あらゆる抵抗は無意味だった。声が枯れるまで叫んでも、それでも私を攻め立てる指の動きは変わらず、意に反して体は跳ねまわり、震え、そして強すぎる快感で私の頭をめちゃくちゃにした。
 私達は昼にこの場所に来たというのに、私が解放されたのはもう夕暮れの時間帯であった。ズルズキンは、私がほとんど反応しなくなったとみるや、私をゴミのように捨てて、そのままどこかへと消えていった。
 くそ……今度からは、大きな根っこはもたずに相手の持ち物をきちんと奪ってから*6、威張ってやるんだから……

長い昼 


 真っ黒な羽毛に包まれた六枚の翼と、三つの首を持ったドラゴンが、僕達の村を荒らしに来たのは今朝のことだった。
「あぁ……やっと起きたぁ……お目覚めかなぁ、悪いドラゴンさん」
 そのドラゴンが、昼頃になってやっと起きる。相当胞子を吸っていたんだろうなぁ。もうみんなとっくに寝ている時間帯だし、そろそろ僕は眠くなってきたよ。*7
「ん……て、めぇら……アタイらに何をしやがった!?」
 大きなテーブルに縛り付けられたドラゴンはそう言って凄む。この村にはこいつを縛り付けられるベッドがなかったからテーブルに貼り付けにされており、そのため彼女は天井を見上げるしかない。寝心地も最悪なせいか不機嫌そうだ。
「んー……まぁ、なんていうかなぁ。僕達、毎月パラセクトとマシェードってぇ種族で、月に一回胞子バラマキの儀式をしてるんだ」
「あぁん? なんだそりゃあ!?」
「昔は僕達マシェードとパラセクトはよく縄張りをめぐって争っていたらしいけれど、いつだったか巨大で狂暴なポケモンが森に発生してなぁ……とても倒せるような強さじゃなかったから、両方の種族で協力してなんとか子供たちを逃がすための時間稼ぎをしてたんだ……どちらの種族も次つ……」
「そういうことを聞きたいんじゃあねえよ! なんで私達が寝てて! しかも! 縛られてるのかって話だ!」
 ドラゴンの女は大声でがなり立てる……怖いなぁ。どちらの種族も次々と倒れて、万事休すかと思われた時に、青と赤の巨獣狩りが助けに来てくれたんだけれど……村は壊滅状態。パラセクトと僕たちマシェードで協力して集落を再考させたのをきっかけに僕たちは仲良くなったから、村を再興させた先祖の偉業を讃えるための重要なだ儀式……というのに……語らせてくれないだなんて罰当たりな。
 多分だけれど、このドラゴンは胞子が霧に紛れてしまって、気付かなかったんだろうなぁ。僕たちは好む湿度が高いこの森はよく霧が発生するから、気を付けないと霧に胞子がまぎれちゃうんだよね。
「いやー、そりゃ、胞子バラマキの儀式をした時、僕達もちゃんと介抱したんだよ。けれども、介抱している途中にあんたがギルドの使いから注意するように言われていたお尋ね者だって気付いてなぁ……こりゃ幸運だと思って、捕まえたんだ」
 このクリドラゴンがただの善良な旅人だったら、迷惑をかけてしまったと謝ることになるけれど、傷だらけの顔と、殴られて欠けた牙を見て、この顔にピンときたねぇ。先日僕達の村に来たズルズキンが注意喚起をしに来た時は、こんな田舎にお尋ね者がわざわざ来るはずはないって思ってたんだけれど、いやいや人生わからないもんだ。僕達の先祖が守ってくれたかのようなタイミングだなぁ。
「くっ……ともかく、この縄をほどけ……」
「そりゃあ、出来ないよ。僕達、そんなに強くないから、君が暴れたら僕達瞬く間に焼かれちゃうから」
「なら、自分で引きちぎるまでだ! この程度の縄ならば……あれ? 力が……」
「あー、そりゃあ無理だよ。僕達の技、『ちからをすいとる』を、寝てる間に散々掛けたからなぁ……もう君の力はぁ、子供並になってるよぉ。君の仲間も、今は全員別のところに捕まってるだ、じたばたしても疲れるだけさぁ」
「くっ……この糞キノコ……」
 しかし、このドラゴンは怖い顔だが、よく見るとなかなかのべっぴんさんじゃあないか。僕はギルドの使いが来るまで見張りを任されたけれど……それまでここには一人だけ。どれ、ちょっと遊んでみるのもいいか。まずは、テーブル登って、この五月蠅い口を黙らせて……。
「ちょっと失礼するよー」
「はぁ? ん、おい何をするつもりだ……!?」
 まず、うるさい真ん中の口を、僕のドレインキッスで奪わせてもらおう。確かこいつのタイプはドラゴン・あく。と、いうことはフェアリータイプのこの技は大の苦手のはず。抵抗もできない状況じゃ、大ダメージのはずだ。口づけした時に暴れるから、僕の胞子もだいぶ吸ってしまったようだし、これもう動けないんじゃないだろうか?
 いかに凶悪なお尋ね者と言えど、抵抗もできない状態では分が悪いよね。僕の一吸いで目が虚ろになるほど体力を消耗してしまっている。
「うーん……君、方々で悪いことしてるって聞くしな―。僕がぁ、お仕置き? みたいなー」
 でも、こんなんでも炎を吐かれれば僕は燃えちゃうからね、口も縛ってしまおう。どうせもう重要なことなんてしゃべらないだろうし。
 弱っているうちに、口を閉じさせてやると、さすがに抵抗する気力も失せてしまったのか、ほとんど手こずることもなく口に縄を掛けられた。
 左右の首は机の後ろ手に縛られているし、体もぐるぐる巻きに固定されている。足も、縄を巻きつけられて動かせないようにされている。翼も縛られているから全く動かせない。これでもう、ハイパーボイスも火炎放射もできない。完全に抵抗できなくなったわけだし、思う存分この女で気持ちよくなれそうだ。
「むぐぐ……」
「まー……怪我はさせないようにするから、おとなしくしててねー」
 まずは、彼女の下半身をいじらせてもらおう。長い間逃亡生活をしているせいか、少し体臭がきついけれど、湿気を含んでいるのは僕達には都合がいい。それに、垢もたまっていて、真菌な僕達には栄養の宝庫だ、いただきます。
「暴れると胞子が散るからねー、暴れないでねー。鼻から吸って、やけどとか、毒とかになりたくないでしょー?」
 おお、さすがに弱っている。視線だけで僕を殺してきそうな目の力も弱まっている。ドラゴンだから胸がないのが残念だけれど、でも穴があればやることはできる。短い脚の間にある割れ目を僕の指でこしょこしょくすぐってやると、ドラゴンは自由に動かせない体をよじって嫌がっている。あぁ、なんだろう、この嫌がり方にすごくそそるものがあるなぁ。
 女の子の一番大事なところを、名前も知らない弱い男に弄ばれるって、すごく屈辱的だろうし、それをどんなに嫌がっても拒否なんて出来ない。あけ放たれた割れ目に、僕の指や舌、もちろんイチモツも、どんなものを突き付けられても拒否することなんて出来やしない。
 どうせなら、じっくりじっくりと責めてあげよう。指は痛みを感じさせないよう、ぬるりとした粘液をまぶして、そっと割れ目のまわりをなぞる。足をぴくぴく動かし、縄もぎしぎしと音を立てている。何事かをしゃべろうとしてうめき声も聞こえるけれど、全部無視。
 輪を描くようにじっくりねっとりと刺激してやると、そのたびに縄を切ろうとしてくるんだけれど、そんなことをしても無駄なのになぁ。たとえ力が回復したところで、見張りの僕は万一の時のためにとヒメリの実を沢山持たされているから、ドレインキッスも力を吸い取るも、自由自在だ。念のため力を吸い取ってやると、暴れていたのが収まった。
 さて、もっともっといじってやらないと。いじっているうちに気持ちよくなってきたのかな、股間からは粘液が滴っている。ううん、いい水分だ、貰っておこう。
 さすがに体力を消耗したのか、ドラゴンはあまり動かなくなったが、それでも時折とても嫌そうに体をよじる。もちろん、縛られた体はピクリと動く程度で、僕の指から逃げることなんて決してかなわないわけで。もしかしたらこの嫌がり方は、意識して動かしているわけじゃなくって、体が自然に反応しちゃっているだけかもしれないけれど……どちらにしても、面白いからもっと嫌がる様子を見てみたいな。
 じゃあ、割れ目の間をなぞるのは止めて、今度は指を突っ込んでやろう。ドラゴンのイチモツはとても大きいって聞いたから、多分僕の細い腕なら丸ごと突っ込むぐらいでちょうどいいはずだ。まずは指、少し突っ込むだけでドラゴンは激しく身をよじる。仕方ない、嫌がっているみたいだし、少しだけ指を抜いてあげよう。
 指を抜くと、安心したのかドラゴンは力を抜いた。そんな嫌がったくらいで僕が手心を加えるわけなんてないのに、悪党の割には考えが甘いなぁ。今度は一気にずぶりと指を入れてやる。僕の爪のない指は、僕自身の粘液のおかげもあって、ドラゴンの割れ目にずぶりとめり込んだ。
 痛くは無いはず。最初は驚いたような顔をしていたし、茫然としている様子だったから。けれど、状況を理解するとやっぱり暴れ始めたから、どうせ『気持ち悪いとか、屈辱だとか思っているんだろう。恨めしい顔とうめき声が、言葉はなくとも語ってくれている。抜き刺して割れ目の中を刺激してやると、それはもう縄を引きちぎらんばかりに暴れたけれど、念のためにもう一度力を吸い取ってあげれば、テーブルにへばりついたように動かなくなってしまった。
 ちょっとやりすぎた? でも、暴れようとするから仕方ないよね。虚ろな目をして天井を見上げるだけになってしまったけれど、それでもさすがに意識はあるらしい。軽くつねったり、ひっぱたいてやったらきちんと反応する。つまり、指を入れてやればまた反応するだろう。
 でも、反応はしても抵抗はもうさせない。抵抗しようとしたら、力を吸い取るか、もしくはドレインキッスかで繰り返し抵抗を封じてやる。それで、僕に逆らったらひどい目に合うってことを悟らせてみたい。そうやって、誰もが震えあがるような強い女性を屈服させるだなんて、こんなチャンスなんて二度とないだろうし、徹底的に、人生にたった一度のチャンスに思い残すことがないくらい、この女をいじり倒したい、
 さすがに、僕からの攻撃を避ける手段がないとわかったのか、もうドラゴンは抵抗しなくなった。諦めて動かなくなったのはちょっと面白くないけれど、素直になったのはいいことだ。粘液をまぶしてぐいぐいと中をもみほぐしてやると、ドラゴンの粘液はさらにあふれ出てくる。もしや無精卵でも抱えているのだろうか? その状態で男に抱かれることもなかったら、よっぽど欲求不満だったはずだ。じゃあ、心は嫌がっていても、体はむしろ欲しがっていたはず。
 なら、自分が本当はセックスしたくて仕方がなかったって、自覚できるくらい責めてみたいなぁ。指だけじゃない、腕まで入れてやると、体がどんどん反応している。今は縛られた口から、妙に荒い吐息が漏れている。お仕きなのに楽しんでしまっては本末転倒だが、これはこれで屈辱的でいいかもしれない。
「気持ちいい? 嫌がらなくなったねー」
 ちょっとだけ煽ってやると、固定された首を少し動かして、悔しそうに眼を逸らす。あーあ、そんな態度をされちゃったら、もっと屈辱的な目に合わせてしまいたくなるじゃない。腕の出し入れを激しくしてやると、ドラゴンの反応も強くなっていく。嫌そうに体をよじっているが、これはくすぐったいからじゃないだろう。
 僕も、自分でいたしている時、ちょっとイクのを我慢することはあるけれど、どんなに頭でイカないようにと歯を食いしばっても、イチモツをずっと刺激してたらイッてしまう。女だって、似たようなものなんだろうなぁ。
 みたいな取るに足らない弱い男に好き勝手にイカされるなんて耐えがたい屈辱だろうけれど、今のドラゴンにそれに抗うすべはない以上、どうあがいてもイくしかない。ダメだなぁ……体をぎしぎしとゆすって、何とか気を逸らそうとしているみたいだけれど。
 君がその努力をしているせいで、君の気持ちが手に取るようにわかるよ。じゃあ、君の気持を汲み取って少しだけ休んであげようかな? どんな反応をするかな? あぁ、君は僕のことをじっと見ている。何をする気だろうと考えているね。
 君が身を捩って快感から気を逸らそうとしていたのがとても可愛らしかったから、もうちょっとその様子を見ていたかっただけなんだ。だから、ちょっとだけ深呼吸して、ちょっとだけ油断させたら、ドラゴンはほっとした表情を浮かべて天井を見ていた。完全に休んでいる風だから、安心しきったところに何も言わずにずぶりと、もう一度割れ目に腕を突っ込む。
 ドラゴンはまたも快感が体中から湧き上がって、ぞくぞくと体を震わせている、ちらりとドラゴンの顔を見てみると、今にも泣きそうな顔で睨みつけてくる。怒りの顔でもあるけれど、情けなくて、恥ずかしくて、仕方がない。そんな感情を隠せていない。
 ……まぁ、今まで隠す必要もなかったんだろうな。人を蹂躙し続けてきたような狂暴な犯罪者らしいし、恥ずかしい顔も泣きそうな顔も、浮かべたことがないから隠す必要もなかったのだろう。だから、いざ自分が弱い立場になるとこんなにもわかりやすい表情を浮かべるんだ。あぁ、胞子バラマキの儀式でこんな大物が釣れただなんて、本当に運がいい。
 気を逸らそうとする動きにうめき声まで加わった。強制的に閉じられた口から洩れる声が必死で切ない。
「もうどんな抵抗をしても手遅れだから、せめて我慢してねー。その代わりきっと気持ちよくなるはずだから。どうせならこの状況を楽しむといいと思うよー」
 ドラゴンにそう優しく語りかけると、なおも激しく体をゆする。けれど、その努力は当然無意味だよ。僅かに縄をきしませるしかない抵抗じゃ、僕の腕の動きを止めることなんて出来ないよ。
 それにしても、暴れるということはたぶん、ドラゴンは限界に近いんだろうね。その直感を信じて責め続けていたら、あれほど激しく体を動かしていたドラゴンは、一瞬すべての動きを止めると共に、甲高い声を上げた。一瞬遅れて割れ目の両側から僕の腕をぎゅうぎゅうと締め付けて、陸に上がったコイキングのようにピクピクと跳ね始めた。わぁ、すごい……これはとても気持ちいんだろうけれど、その感想を言葉で聞けないのが残念だなぁ。口の縄を解いたら、一瞬で炎を浴びせかけてきそうだし、うかつなことは出来ないもんね。
 ドラゴンは鼻の荒い息を吐いている。ぷるぷると震え、左右の口も含めて固く食いしばる姿が、成体の姿なのに生まれたての赤ん坊のようでほほえましい。気持ちいいならもっともっと責めてやろうと腕の動きを再開すると、ドラゴンは我に返ったように驚き、逃げようと縄をきしませる。だから無駄なのに。
 イッた後に攻められるのが辛いのは男女共通なようで、僕もイッた後に自分のイチモツを刺激し続けたらどうなるのだろうと試したことはあったけれど、数秒も触っているとくすぐったいような、なんとも言葉にしづらい感覚が辛くてやめてしまったことがある。
 巷には、イッても休まずに続けられるのが好きな奴もいると言うが、この女はもちろんそんなことはないだろう。やめろやめろ、本当にやめろ、と目が訴えている。嫌がっているんじゃない、苦痛を訴えている。ま、でも遠慮なさるなと腕の動きは続ける。ギシギシと音を立てる縄とテーブルの音が心地いい。
「んー……やめてほしい?」
 ちょっと意地悪に聞いてみると、ドラゴンは涙目でこくこく頷く。痛みを与えているつもりはないはずなのに、必死だなぁ……
「やめてほしいなら、続けよう」
 そう言い放つと、ドラゴンは大声で抗議の意を示す。んー……僕、親しい人たちに嫌われるのは嫌だけれど、もう二度と会うこともなさそうな君に嫌われようと恨まれようと何とも思わないからなぁ。だから、くすぐったくて、きつくて仕方ないところ悪いけれど、君が嫌がって泣き叫ぶ姿をもっと見てみたいんだよね。
 ままならない腰を激しく動かして僕の手から逃れようとして、口からはやかましくうめき声が漏れる。時折、はじけたようにのけぞったかと思えば、しばらくぐったり動かなくなり、また嫌がって逃れようと腰を振る。ううん、力が抜けているし、ドレインキッスでもうへとへとなはずなのによくやるなぁ。
 でも、僕も腕を動かし続けていたら疲れてきたし、なんかあっちの方は元気が出てきたみたいだし、ドレインキッスで元気をもらってしまおう。今度は上の口じゃなくって下の口。ぐちゅぐちゅにかき回された割れ目に口をつけ、いただきます。軽く吸っただけで全身を揺さぶり、悲鳴を上げる。口を塞いでなかったらハイパーボイスでこの建物が壊れていたかもしれない。
 またもや目が虚ろな感じに戻る。そんな状態でも、しつこく腕を動かしてやると、その動きに合わせて体をピクピクと反応しているものだから面白い。こんな状態でも、感じているんだねぇ。震えて、脱力して投げ出された体。僕たちの種族がこんな風になるのかはわからないけれど、女性を責め続けるとこんな風になるというのはとっても興味深いなぁ。
 そろそろ飽きてきたので、腕を割れ目から引き抜いて顔を覗き込むと、ぐったりしたドラゴンはそのまま目を閉じて動かなくなる。息はあるので、眠ってしまおうとしているんだろうけれど、それはそれでつまらないなぁ。
「ねー、起きて―」
 そう声をかけても起きないので、僕はまたも彼女の割れ目に腕を突っ込んでやる。さすがに驚いて目を覚ますも、少しでも腕の動きを休めると、目がとろんとして、そのまま眠ってしまいそうだった。
「ねぇ、寝ちゃったら僕、君の中に出しちゃうよ」
 完全に眠ってしまう前に、僕が宣言すると、ドラゴンは目をカッと見開くと、なんとしてでも眠ってなるものかと、首を振って睡魔に耐える。わぁ、可愛い。でも、これで目覚められちゃうとすごく拍子抜けだから、もう一度力を吸い取るで、気怠い気分になってもらおう。体力を奪われるわけじゃないから、命の危機を覚えるわけじゃあないとはいえ、一気に力が抜けて、立ち上がるだけでも足が震える気分になると、もうすぐに眠ってしまいたくなっちゃうよね。
 僕も、炭作りや陶器づくりなど、日中ずっと寝ずの番をしなければいけない時は、こうやって気怠い気分にしてもらうことで*8あらかじめ夜のうちに寝ておくこともあるくらいだ。まぁ、僕にはわからないけれど、キノコの胞子を吸ってしまうよりかはまだ堪えられる眠気のはず。
 ただ、堪えられる眠気とはいっても、縛られたままだと、眠気を堪えるために立って運動することもできない。かろうじて動く首や足をパタパタと動かすしかないけれど、飽きたり疲れたりして、少しでも気を抜いてしまうともう大変。途端に眠気に襲われるから、慌ててまた体を動かすしかない。
「ほらー、頑張ってー。何なら、起きていられるようにまた僕が気持ちよくしてあげよっか―? してほしかったら頷いてー?」
 ドラゴンはものすごい勢いで首を横に振る。なあんだ、つまんないなぁ……もうどうせ無理なんだからあきらめちゃってもいいはずなのに。まだまだ悪あがきしたいというか、状況を理解していないんだろうなぁ。まあでも、そこまで僕に犯されたくないなら、頑張ってもらうかなぁ。
 とりあえず、僕はお茶でも飲みながら、眠っていないか監視する。あぁ、僕のことをとても怖い顔で睨んでいる。普段なら素早さが下がりそうだけれど、今のこの状態じゃどんなに怖い顔をしても効果は全くないね。
 でも、そうやって僕に憎しみを向けていれば、眠いのも忘れられるかもしれないから頑張ってほしいね。さて、どこまで耐えられるかなぁ……? そんなことを考えながらしばらく無視していたら、結局彼女は睡魔に負けて眠ってしまっていた。顔の前で手を振っても起きないし、これは寝たと判断してもいいよね。
 ではでは、ドラゴンの痴態を楽しんでいたら、ギンギンに膨れ上がった僕のイチモツを受け入れてもらおう。と、言っても僕とこのドラゴンじゃ体格は全然違うから、彼女には少し物足りないかもしれないけれど。でも、僕の胞子入りの精液は粘液の量がとんでもないから、その点では満足させてあげられるはずだ。
 僕がイチモツを突っ込むと同時にドラゴンは目覚めた。何かを言いたげにうめき声をあげているけれど、まぁ子供が出来るわけでもないし、気にしなくてもいいんじゃないかな? 結局、どれだけ逃げようとしても、絶対に逃げることはできないわけだし、僕の思い一つで気持ちよくすることも、気持ちよさを与えないことも自由自在なんだから、変に抵抗しないほうが楽でいいのに。
 でも、抵抗にならない抵抗してくれたほうが、こっちとしてはとても面白いよね。最後までプライドがあったほうが、それを折る楽しみもあるわけだし。
「ねー、もうすぐイッちゃうよー? 全然逃げようとしないけれど、このまま出しちゃっていいのー?」
 そんなわけないだろ! と言いたげうめき声が上がる。
「うーん、何言ってるかわかんないねー。まぁ、さっき寝ちゃったってことは、いいってことだよねー」
 彼女の思惑はまぁ、絶対に断るって感じだろうけれど、それに従う義理はないからね、中に出すよ。あー、とっても気持ちいい。同じドラゴングループじゃないのが残念なくらい気持ちいい。何よりも気分がいいよね。
 ドラゴンのほうはといえば、興奮した様子で鼻息を荒くしている。鼻息が震えているし、目には涙も浮かべている。うわー、極悪非道を尽くした犯罪者でもこんな顔をするんだなぁ、面白い。
「あー、すっきりした。じゃあ、お休み。僕はずっと見張っているから」
 もう休んでもいいよ、と言ってあげても、ドラゴンはしばらくこっちを睨みつけてくる。
「何? そんなもの欲しそうな顔をして、もっと続けたいの? いいよぉ」
 そう言ってやると、額に青筋を浮かべながら、殺気を放つが、疲れが限界なのだろう。すぐにドラゴンは目を閉じ、やがて体力が尽きて眠ってしまう。それじゃあ、寝ているうちに、不意打ちで持ちよくさせてあげようかな。次はどんな表情をするだろう? 昼はまだ長いから、『僕は』好きなだけ楽しめるね。


*1 こうげきが下がり、特攻が上がるので、後衛向きである
*2 鎧の孤島におけるダクマの進化に関するイベントでは、ダクマと仲良くなることが必須である。また、水か悪の掛け軸を見る必要もある
*3 ソルガレオのモデルとなったライオンは一夫多妻制。ザシアンのモデルとなったオオカミは一夫一妻制である
*4 伝説のポケモンは実際に性別がないわけではなく、性別に惑わされることがないために不明扱いされている種が一定数存在する
*5 一部地域では、ポケモンによっては一部の技が法律で禁じられています。皆さまはお住まいの地域の法律に合わせて、威張るやどくどく、回復指令等の技を行いましょう
*6 この個体は悪タイプに『いばる』が出来ていることからもわかるように、特性はマジシャンである
*7 このお話の主人公は太陽嫌いなので夜行性です
*8 主人公は草タイプなので、胞子によって眠ることはない

トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2021-11-27 (土) 16:56:09
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.