ポケモン小説wiki
トキノシズク

/トキノシズク

こんにちは赤いツバメ ?です

この作品は「貴方と大切な人」シリーズの番外編です。短めですがPCが壊れていた時期もあったので時間が掛かってしまいました。


「皆様にオルクさんのトキノシズクをお見せしましょう。「トキノシズク」とは誰もが心の中に持っている一番の幸せだった頃のキッカケの記憶のことです。
 シズクとは水面に落とすととあたりに波が広がっていきますよね。どんなに広く美しい揺れでもいつかは何事も無かったかのようにまた水面はまっすぐになる。
 トキノシズクは人の過去の心。そのシズクが『出会い』であり波は『幸せ』。水面は・・・なんでしょうね。・・・フフ。」



僕はオルク。ここの中学の吹奏楽部に所属している新二年生。


『明日から新一年生が体験入部が始まります。三年生は明日が修学旅行なので二年生は自分が先輩に分かりやすく教えられた様に優しく教えてやって下さい。
 これで今日の部活は終わります、では解散して下さい。』

部活終了のミーティングが終わり部長が解散の号令を掛けたら一斉に部員が荷物を持とうとそこに集る。
そして僕はなかなか荷物が取れない・・・けど今日は真っ先に荷物を取って片付けられたっと。

「いやー明日はこっちが緊張するかも。オルクはどーなんだ?」
後ろから肩を叩かれたと思ったら声を聞く前に冷たさで誰か分かったよ。ヴィンだな。
二年生になって隣のクラスになってしまったグレイシアのヴィンは幼い頃からの親友だ。
僕とヴィンはイーブイのときは仲は良いし見分けもつかなくて兄弟みたいだって言われてたけど、中学入学前に進化して見た目は変わったという感じ。

イーブイ種は中学校入学直前に進化するのが一般的で中学校でイーブイを見ることは滅多に見ることが無いらしい。
当然この学校にはイーブイがいない。
ちなみにこの部活では全体が30人でその中で牡子が4人。2年生は僕とヴィン、先輩に同じく二人いる。

「先輩達に聞けば?僕はもう先輩達にどんな風に教えればいいか聞いたけどね。」
「いいよな~オルクはどんな人にも対応できる軽い性格で。あ、別に悪く言ってるんじゃなくて羨ましい訳。」
「?」
「・・・いいねぇ。」

僕には何を言ってるのか分からないけど何かがイイらしい。
とにかく明日は連休に入る。学校は休みだけど一年生は午前中だけ部活の体験入部期間の始まる日であるから平日通りに学校は賑やかだろうな。
さて帰ろう。
「ちょ・・・待て待ておいて行くなよ。」
「早く早く」
「急がせるなって・・・ヨイショ!って!!あああああバラバララ~・・・」
ヴィンのカバンから教科書やら楽譜やら殆ど床に滑り落ちた。
何やってんだ・・・。

そして皆の視線が一気にヴィンに集り・・・そして何事も無かったように戻る。
何か冷たくね?皆・・・。
では僕もこのまま見てない振りをして・・・う!?

「いやいやいくらなんでもお前の行動は冷たいだろ!?」
あら気付かれた。冗談交じりの半泣き声でまたヴィンに肩を捉まれた。
「お前の手が一番冷たいわ!分かったから離せ!」
それにしてもなんて速さだ。『電光石火』でも使ったのか?

「(まったく部室の端っこまで飛んでるプリントもあるし・・・。)」
僕はそのプリントを手に取った。
あらら・・・これは数学のテストですねテスト。う~んと、なかなかヴィン君らしい点数で・・・。
まあ僕がコレを見つけなかったら多分ヴィンは分からなかったと思うし、彼を助けてやったことになったのかな?これは。
人に見られない事で助かる程の点数だからねこれは。

「ヴィン君ヴィン君、大切な書類が遠くまで落ちてましたよー?」
「あ?わ・・・ちょとおおおおおおおおおおお!!!」
「うるさいわい!ホレ、僕が拾わなかったら気付かなかったでしょうが。」
「う・・・まあ、サンキュー。」
あーあーカバンの中もうメチャクチャじゃんか・・・。

「えっとヴィン君さ、明日ミルトちゃん用事があって部活休むっていうから明日一人で頑張ってね。」
あれ?ピュール先輩だ。この人はキルリア種でトランペットパートリーダー。そしてヴィンはトランペットパートだ。
「はい。・・・て?あれええええ!?」
『ピュール!早く行くよ』
「はーい今行く!じゃ、そういうことでトランペット分かりやすく教えてやってね!」
「あ、ちょ・・・先輩・・・」
テレポートだ。使っているところ先生とかに見られたら大変だぞ?。
「・・・」
「・・・」
「・・・おいミルト明日休みだってよ、二年お前一人じゃん。ていうかもう一人じゃん。・・・おい?」
「ああああああああああどうしましょう!!!あいつ何で休むんだよおおおおー!」
「いちいちうるさいわお前!」

あ、ここでミルトの紹介忘れずにしておこう。
ミルトはニューラ種でトランペット担当の二年生。とても大人しいけど実力はあるやつだ。
そして牡子からそこそこモテるらしい。
ちなみにトランペットの二年生は二人しかいない。
「ううヴィン君溶けます・・・ジューーー。」
「ジューーーじゃねえよ。帰るぞホラ。」

床で脱力しているヴィンを引きずりながら僕は音楽室を後にした。


ー翌日の朝ー

僕は朝食を済ませて家を出た。「いってきます」はどのくらい言ってないだろうか?
唯一の家族である兄は朝早くから仕事に行くから朝起きると家の中は僕一人。兄さんは僕の食事だけは毎日作って置いていってくれるから有り難い。
朝が苦手な僕も結構普通な時間帯に起きれている。休日の部活は八時から午後五時までなんだけ今日は一年生もいるから午前中で部活が終了するからどこか少し気が軽い。
久々にヴィンの家でも遊びに行きたいな・・・。

休日の朝、玄関は吹奏楽部が集る場所。何故なら玄関が開いてないからね・・・そして部活の始まる5分前に玄関が開く。早く行っても外で待つことになるし
遅く行ってもヴィン見たいになるし・・・つまり遅刻ってこと。
「(学校に到着~ってあれれ?)」
時計を見れば時間がいつもより大分早い。いつもは45分あたりに着いてまだまだ人が集り始める早い方なのに今の時刻は40分だ。
当然誰もいない・・・あら一人だけいる。
「(・・・ん!?イーブイ!?)」

おかしいな。イーブイってこの中学にいないはずなんだけど・・・しかも進化してないよねイーブイなのに。
見るからに一年生?ここにいるってことは吹奏楽部に来たのか?
まあいいや玄関前に何気なく待つことにしようか。
「・・・お、おはようございま~す。」
「え?あ・・・おはよう。」

あ、挨拶されたか。ということは完璧一年生ですねハイ。
「ボクはプレリーと言います。この部活の体験入学に来ました。」
部活内の自己紹介でもないのに名乗ってくるなんて明るいやつだな。
「僕はオルク・・・クラリネット担当の二年だよ。」
「いつもこんなに早いんですか?ボク少しワクワクというか落ち着かなくて早く来てしまったんですが・・・」

・・・おそらく僕がイーブイだった頃は、今僕の目の前にいるイーブイ程可愛くなかっただろう。
て言うかこの人自分のこと「ボク」っていうの?牝子だよね?
「え、ああ僕もいつもより結構早く来ちゃったから・・・あと五分もすれば少しずつ集ってくると思うよ。」
「そうですか。クラリネットのパートに行ったときは宜しくお願いします。」
「う、うん。ボクのほかにクラの二年生は2人いるからね。教えるのは僕とは限らないけど宜しく。平日だと一年生ひとつのパートに
 10分くらいしか時間ないけど休日だからどうだろう?もっと長いと思うよ。」

「あまり楽器とか分からないんですけど本当に大丈夫なんでしょうか・・・?」
「そんな事は気にすることじゃないって。全然大丈夫だよ。・・・何か希望してる楽器とかある?」
「え、あ・・・ク・・・木管楽器ですかね。」
「そっか。希望がしてる楽器になると思った以上に嬉しいものだよ。」
「先輩はクラリネットを希望だったのですか?」
「そうだよ。最初から一番興味があった楽器だったしね。
 やっぱり一番好きな楽器を毎日毎日担当していくとなると凄く楽しいものだよ。」

『木管楽器』という言葉を知っていれば全く知らないって訳ではなさそうだね。
「そういうものなんですか~。・・・・う、ちょっと失礼します。」

あれどこ行くの?どうしたんだ?そんないきなり苦い顔して・・・。
今は45分になるか。そろそろ人が集ると思うけどね。
毎回毎回45分ピッタリに来る奴がいるからそいつが目印ってこともアリなんでけどw。
ホラやっぱり来た。こいつも隣のクラスで僕と同じクラパート担当のモウカ、名前のとおりモウカザルだ。
「・・・なんでアタシよりアンタ早いのよ。」
予想どおり早速僕にこの一言だよね。
「別に深い理由なんて無いよ、たまたま早く着いただけ。」
「ふぅ~ん・・・。」

こいつは何時も不機嫌そうな表情してる様に見えるけど外見に似合わず誰にでも付き合いの良い性格をしている。
・・・何しろ以外なのはヴィンが・・・いや言うのはやめて置こう。
「ぁ・・・おはようございま、すぅ」
(ゼェ・・・ゼェ)
「あれ一年生?ん、イーブイ?えっあなた大丈夫?」
「思ったことを一気に言うな落ち着け!・・・ってホントだ、どうしたの!?」
「はぁ、はぁ・・・ぅえ?何がですか?」
「いや凄い息が荒いし息切れしてるし・・・!」

さっきまで息切れなんてしてなかったのにこのイー・・・プレリーちゃんは見るからに息切れを起こしている。
「あの・・・大丈夫なの?あ、走ってきたとか?」
「・・・ぅぅ。ずっとここにいましたよ、ボクは大丈夫です。」
「そう?なら良いんだけど。ところであなたのお名前は?」
「けほっ!けほけほプッ・・・プレリーです。よろしくお願いします・・・はぁ」
「ホントに大丈夫!?あ、あたしはモウカだよ。よろしく・・・」

見るからに大丈夫そうじゃないな。
「いきなりどうしたの?さっきまでは何もなかったけど。」
「ふぅ・・・これはたまに症状がでるボクの病気です。症状が出たのは久々でした。」
「病気って・・・あなた何処か悪いの?」
「ほんの軽い心臓の病気です。もともと体は強くありませんから。」
「君、病気・・・なんだ。」
心配させまいと苦笑いをするプレリーちゃん。・・・けっこう可愛い。
そのことは置いて・・・それじゃあ吹奏楽部は難しいんじゃないかな?

「ねぇねぇ私のパート当ててみて!」
「え・・・とぉ、モウカさんは・・・トロンボーンとかですかね?」
「ぶぶー。あたしはクラよ」
「えっ!?・・・じゃあオルク先輩と一緒じゃないですか・・・」
「ああ、オルクのパート聞いてたの?それと今のリアクションかなり激しかったネ。何かあるの?」
「え!?別にそんなこと無いですよぉ!」
「あれれ?そんなに慌てることなの?」
「ええ、いえ別に!・・・慌ててなんかいません!。」
「何かありそうねぇ。」
「無いです!。」

あの、僕が話に乗れてない・・・。いったい何のことなのか?
さして僕の興味の無い事らしいけど。
周りを見れば人が結構来てるな。この時間帯が人が一気に来るのか。

「おーいオルク!」
おやおや珍しい。遅刻ギリギリの冷たいヤツ(温度的な意味で)がこんな時間に来るなんて・・・。
「早いじゃん。」
「おう!一年生も早くから結構来てるじゃん。・・・おおイーブイ!?」
やっぱり皆驚くよな、確かにイーブイがいるのは驚きだよね。
「うん。しかもあの子一番早く来てたんだ。」
「へー。それを知ってるってことはお前が二番目?お前だって早いじゃん!」
「まーね。」

『ちょっと来てオルクー!』
また誰かに呼ばれた。この声はさっきのモウカだ。
モウカはプレリー・・・ちゃんだよな。プレリーちゃんと話していた。
「なんだよ?ていうかヴィンついてくるなよ。」
「気になりますねコレ。」

「ちょっといいですって、モウカ先輩!」
「別に言っても良いんでしょ?」
「えー・・・でも」
「鈍い奴だから分からないって・・・あーオルク。プレリーちゃんが一人称『俺』の方が似合うってさ。」
「・・・モウカ先輩・・・。」

「へ?それだけ?・・・いや、僕的にはこのまま『僕』のほうが良いし今更『俺』になんて変えても違和感しかしないと思うけど。」
何を言うかと思ったらそんなことか。
プレリーちゃん何で顔赤くなってるんだろう?モウカに何か言われたのかな?

「あそう。別に良いんだけど。ね?プレリーちゃん。」
「あ、はい!気にしないで下さいねオルク先輩!」
「うん?・・・うん。」

《ガチャリ》
あ、玄関が開いた。うーんやっぱり上級生が先に入って一年生はその後か・・・。
アタリマエなんだろうけど何か自分が先に入るのは違和感があるな。う、さっきのイーブイと目が合った。逸らせ逸らせ。
って・・・何照れてるんだろう僕・・・。
「さっきのプレリーちゃんだっけか?可愛いじゃないかよ、やったなお前!」
「やった?・・・何が?」
「あらら、いくらオルクでもここまでオニブイとはね~。まぁあの人の性格だったらお前でもいずれ分かると思うよ。」
「だから何のこと?」
「そのうち分かるって。」

プレリーちゃんがどうしたんだ?確かにあの子は可愛いと思うけど・・・。
そういえばモウカとヴィン、二人とも僕を鈍いって言ってたな!
まったく、僕のどこが鈍いんだろう?・・・こうして気付かないのも鈍いってことなのか・・・?。



ふぃ~長い長い始めのミーティングが終わった。それはいつもより長いのは分かるけどこんなにも長いものなのかね?
さてパートに行って準備か。一年生に教えるためにいつもは使ってない楽器も出さないとな。っとその前にと。
ああやっぱり・・・。
「おいヴィーン!大丈夫かー・・・しっかりしろよ!」
「いやーだー!一人はいやーだー!!」
「・・・まあ上手くやってくれ。」
「ジューーー・・・」
「またかよ、気に入ったのかそのネタ。」

ご愁傷様、付き合いきれない。これ以上は僕にはどうにもできないな。
さて準備準備。
ちなみにクラリネットパートの練習場所は週人数教室にある。
音楽準備室は吹奏楽部の物置みたいなところだ。少し狭いので最初のほうに入っていったらすぐには出て来れない訳だから
まあ少し透いてから行ったほうが良いな。ミーティングが終わって準備室が殺到しているときに僕はいつも、このドアの近くで待っているのだ。
「ヴィンがまだ動かないな・・・・・あ、やっと動いた。」

一年生は今何をしているのかというと吹奏楽顧問のピクシーの先生から指示を受けて三人一組の班を決めてるところだ。
そういえば今年の一年生に牡子がいないな・・・。少しばかり期待してたのにな。

そろそろ準備室透いたかな?

一年生の使ってない楽器が無い・・・と言うことはあいつらが先に運んだのか。
僕は荷物をまとめて教室に向かった。


「あーオルク、そこの一年生が使う楽器組み立てておいて。」
教室にいたのはもう一人のクラ担当二年生、クチートのリトだ。
「はいはい。僕の楽器をやってからね。モウカは?」
「さあ?さっきどっかに行ったけど」
何をしに言ったんだよまったく。何より気になるのはヴィンの様子なんだけど・・・時間が余ったら理科室覗きに行こうかな。

ベルと下管、上管を繋げてそこにバレルを装着~。次はマウスピースを付けて、そこにリードを付けてからリガチャっと
・・・詳しい説明はナシで良いよね。
あ、もう一つ組み立てるんだっけか。


・・・・ふう、終わった。全然つかってなかったらしいねこれ。時間は大丈夫かな?うん、まだまだいけるな。
「リト、僕もちょこっと用事足しに言ってくるよ。」
「え?あぁ。うん。」

楽器の音出しで聞こえ辛かったかな?まあいいや・・・。さてとヴィンの様子はどうなんだろうか?あいつの性格からして人に何かを教えることはまず苦戦は間違いないでしょう。
まいったなぁミルトがいないんじゃな~。しかもミルトは優等生だし。
ヴィンのトランペットの音色は氷のように透き通っていて正直いうと上手だと思うけど・・・教えられるのかあいつは?
言葉の表現力ってものが一緒にいて一度も感じたことが無いんだよねこれが。

「(ヴィンは居るかなと・・・お、いたいた。)」
何だあいつ?窓際に肘なんて付いて外の向こうを眺めるように澄ましちゃって。いかにもグレイシアっぽい雰囲気出してるよヴィン。
あいつの珍しいところ見れたな僕♪
でも・・・よく考えてみれば今のヴィンの状況に僕が立たされたら僕も凄く不安になるよ。

「ヴィン、三人一組の班をお前一人でか・・・励ましてあげたいけど僕には何もできないんだよね・・・。」
「・・・」
ヴィンは何も言わず黙っている。
「先輩の誰かからも詳しく聞いてないんだよね。」
「・・・いや、昨日先生から電話があってさ。教え方はやっぱり去年のピュール先輩たちに教えられたように同じく教えれば良いって言われてさ。
 思い出してみるとさ、要するに毎日自分が音出しにやっていることをそのまま言葉にして伝えればいいんじゃないか。」

「まぁ、そうだね。結局全パートそれだと思うよ。」
「言葉で教えるってのが苦手なんだよな~。」
「あ、もうこんな時間だ。じゃあ僕戻るよ。」
「もうこんな時間・・・か。」



一年生の最初の班が僕たちのパートに来たのは僕が戻って直ぐだった。
最初に僕が教える一年生は・・・モココか。
さて、ちょっとした自己紹介が終わって楽器体験が始まった訳ですが・・・。まあ、早速吹いてみよう!と行きたいところだけど一年生は
楽器を触ったことも無い素人だから、これまたちょっとした楽器の説明をしなければならない。
そして実際に一年生に吹かせてみる。クラリネットやサックスの場合コツを教えなくとも大抵初めてでも音は出せるものだ。
他に教えることと言えば音階あたりかな・・・。
『~♪』
ほら3人とも直ぐに音が出た。
「ミーテちゃんそうそうそんな感じ♪じゃあ音階に挑戦しようか。」
いつの間にかリトがヒメグマ・・・じゃなくてミーテちゃんと音階に入ってる。
「『レ』の位置はココね。吹いてみて」
『~♪』

「僕達も音階に行こうか。僕の楽器の押さえている位置の真似して。」
「はい。」
「じゃあ『ド』」
『・・・~♪』
「ここが『レ』」
『・・・~♪』
「で、ここが『ミ』」
「・・・~♪ピヒャ!!♪」
あらら音が外れたか。まあよくあることでしょ。
「!!」
「いやいやそんなに驚くことじゃないよ。ポジションをしっかり押さえないとそんなふうに音が外れるんだ。」
「は・・・はい。」
「じゃ、もう一回やってみようか・・・」
「・・・~♪」


とまあこんな感じで僕達は次からの班にも、同じように教えていったのだ。


「オルク・・・さっきは大変だったね。」
「・・・うん。」

今は丁度4班目の体験が終わったところだ。
音が全く出なくても最初だから仕方ない・・・。この言葉をさっきのマイナンに何度言ったことか。
そう、ついさっき僕が教えていたマイナンは全く音が出なかったのだ。
音が出なくても仕方ない。今僕の隣にいるモウカだって、次に教える班を前のパートから迎えに行ったリトだって最初は音が出なかった楽器くらいあるさ。(僕はなかったけど・・・)
気付いたら涙流してたし・・・まいちゃうよな。
吹き方は教えられる範囲で教えた。でも音が出ない。悲しいのか悔しいのか涙が出てしまった。それでもやろうとする。
見上げた根性だけど・・・そんなに一生懸命に何とかして頑張ってるのに、僕はそれ以上は見守ることしかできなかったな・・・。
さっきの僕みたいなのが頼れない先輩なのかな・・・。

「ココだよ入って入って~♪」
あ、リトが帰ってきた・・・また教えるのかよ、そろそろ飽きてきたかも。
「お帰りリト。そして一年生いらっしゃ~い。この班は二人?でもってオルクしゃきっとせい!」
いちいちモウカは話を一遍に喋るな~まったく・・・はいはいシャキっと!。

・・・あれ、朝のイーブイだ。
「どーもー。」
どーもー・・・って僕に言ったの?
「あららプレリーちゃんだ。じゃあプレリーちゃんはオルクに教えてもらってね~。っていうかこれ必然的かな?じゃあ私とリトでもう一人の一年生教えるから。」
何を言ってるんだモウカは、何で俺が教えることが必然的なの・・・?
「じゃあ皆この楽器を紹介しまーす。この楽器はクラリネットという木管楽器で知ってる人は知ってるよね。まず特徴的なのは・・・」
リトが楽器紹介をし始めた。当然僕は同じ事を4回くらい隣で聞かされている訳ね。
うーんそれにしてもプレリーちゃんは何で進化しないんだろう?進化したくないのか?そんな進化したくない理由なんて分からないしな・・・。

「よろしくお願いします・・・。」
「え?うん、よろしく。」
あれ、いつの間にリト話終わった?何か僕ボケっとしてたような。
「えっと、じゃあ吹き方を教えるね。・・・まずは呼吸法だけど、
 肩を上げるような息づかいじゃなくて『腹式呼吸』って言うお腹を膨らますようなイメージの・・・(ペラペラ」

また緊張してきたけど何でだろう・・・。
「じゃあ、今説明した感じに吹いてみて。」
「はい・・・(スースー)あれ?」
「最初だから音が出ないこともあるよ。もう少し頑張って。」
・・・うーん、何かさっきのマイナンと同じパターンと同じパターンですねこれは。

さっきのマイナンにはこれ以上のアドバイスができなかった。
そして、またも僕の目の前で音が出なくても一生懸命音を何とか出したいと頑張っている後輩がいる・・・。
隣でモウカやリトが一年生に順調に教えている中で、このまま時間が経つのだけは避けたい。
「・・・~♪・・・♪」
「おっ、そうそう音が出た!今の感じだよ!」
「はい!」
あ、相当嬉しかったわけねその笑顔。そんな可愛い表情で見られると・・・って何を考えてるんだ僕は!
「えと、音が出たから音階に入ってみようか。」
「少し息が疲れました~。」
「そうか。じゃあ少し休もうか。」
「はい。」

ふう、さっきみたいにならなくて少しホッとしたな。
イーブイは比較的に体力がある方じゃないし体も小さいし、そりゃあ疲れるよね。
「・・・ねぇ、なんで君は進化しないの?」
「予定はありますけど・・・小学校を卒業して入院してたんです。」
入院という言葉に僕は驚いた。いきなりそんなこと言われたら誰でも普通は驚くよね。
「入院!?」
「いえ・・・そんなに大した事じゃないですよ?こうやって吹奏楽部の仮入部期間に参加できてますし・・・。」
「そう。入院ってそんなものなのかな?やっぱり入院って聞くと重い病気のイメージがするけどね。」
「ですよね。まったくそのせいでボクだけまだイーブイ・・・。」
彼女は残念そうな表情で俯いた。
「ヘー、じゃあ進化する気はあるんだ。」
「はい。早くリーフィアに進化したいです!」
なるほどね。どうりで進化できないわけだ。ブースターやシャワーズ、サンダースは進化の石に触れればいつでも何処でも進化できるけど
リーフィアは特定の場所でないと進化ができないからね。・・・そういえばヴィンは何処で進化したんだろう?
「リーフィアか・・・。」
「どーです?」
「うん、いいと思うよ?」
「先輩は・・・どうしてブラッキーに?」
「僕の場合は進化について興味なかったから・・・いつの間にかブラッキーにね。今になってからもう少し良く
 考えるべきだったと少し後悔しているかな。」

そう、僕は別に今の姿に不便は無いけど自分の眼が嫌だ。真っ赤な上に酷く瞳が小さいし、自分でも醜く思えるときがあるし
他の5種類の中で今になって憧れる姿もある・・・。
「ボクは・・・オルク先輩はブラッキーでカッコイイと思いますよ?」
「へ・・・ああ?・・・まさかね。」
彼女の表情が赤くなって見えるのは僕の眼の錯覚?こ、この錯覚のせいで僕の顔まで赤くなっちゃうかも・・・。
「じ、じゃあ音階いこうか。」
「・・・はい。」



「これで今日の部活を終わります。ありがとうございました」
《ありがとうございました》

部活終わった~。さてさて午後の予定は・・・と。

「オルーク!やっと終わったな。ひえー午前中だけなのに疲れた疲れた~。」
「あらあら元気そうじゃん?思ったより上手く教えられたのか?」
「まあ・・・なんとかなったね。午後から暇なら久々に今日俺の家遊びでもに来るか?」
おお、なんという偶然。
「いぐいぐー。」
「ところでさ、プレリーちゃんってさ。かなり話のノリ良くない?オルクの話スゲー聞きたがってたしさ。」
「ぐー・・・ぐー?・・・何で・・・」
「楽しくお話!俺が教えなくても一人で吹けてる金管楽器の経験者の一年生がいてさ、でもってプレリーちゃんだけを教えることになったんだけど・・・
 もはやトランペット3割!残り7割はオルクの話でした~!」
「・・・あ!?」
「赤いぞ~オルク。まあまあ、おかげで凄く楽しく話ができたよ、・・・じゃ!」

「・・・こらまてー!!何を吹き込んだ!!ヴィーン!!」

勢いよく二人は音楽室を飛び出し、階段を下り玄関を出た。
外に出てもグレイシアはブラッキーから逃げ、顔が赤くなっているブラッキーは逃げるグレイシアを追い・・・その様子を三階から覗くイーブイはどこか嬉しそうに笑っていた。

「プレリー」
「ん?何?」
「なに見てるの?」
「先輩。」
「ああ、お気に入りの?ん・・・遠くて見えないや」
「・・・ボクも。けほっけほけほ、けほ」
「大丈夫?」
「大丈夫だって。こんなのホント稀なんだから。帰ろう?」
「うん。」

「(先輩、明日もよろしくお願いします!)」


「これはオルクさんの一番幸せだった頃の始まりの時期ですね。トキノシズクは誰にでもあるものです。
 単純な出会いなどの「ものごと」がトキノシズクを作ります。どのようにに水面に落とすかはそのシズクの持ち主だけです。
 ごく自然に落とせば美しい波ができます。・・・オルクさんはとても自然で美しい落とし方をしました。ただそれが水面であったのかどうか・・・。
 水面が何なのか・・・宜しければ皆様にお聞きしたいものです。」





トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2010-10-07 (木) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.