※このお話は全年齢向けの大変健全なお話です! 安心してね☆
調査団基地には、隠し部屋がある。食堂のある廊下の突き当り、何の変哲もない物置くらいの広さしかない部屋だけど、ドキドキする部屋だ。
そこに何があるかって? それは……。
「ブイゼル、今夜もお願いしますね」
「うっ、わ、わかったよ……」
夕飯の後にダンチョーがニコニコしてこう言ってきたら、それが合図だ。あの部屋に来いと、呼ばれている。拒否権はあってないようなもんだ。
夜も深くなった頃。アーケンやホルビーに見つからないように、足音を立てず廊下を歩く。食堂でペロッパフに鉢合わせでもしたら大変だから、そこらへんにあった適当な壺とかを置いて隠れられるようにしておいてある。なんでオレの方が配慮しなきゃいけないんだと文句を言いたくなるが、グッと堪える。
事の発端は、オレが部屋を見つけたことだった。予想していたより早く調査から戻れたからまだ夕飯が出来ていなくて、かといって依頼をこなせるような時間はなかったから、壁にもたれかかって待っていることにした。疲れて眠かったからほとんど押すような形で体を預けていたら、壁だと思っていたのが実はドアで、倒れるように隠し部屋へ転がり込んでしまった。
そこには、ふかふかのクッションの上でダンチョーが自分の尻尾を掴んで寝ていた。何度も寝返りを打って、心地悪そうにしている。
「こんなところで何やってんだよダンチョー!」
揺さぶって起こそうとしたら、寝ぼけたまま襲いかかってきた。オレの倍近くある大きな身体でゆっくりのしかかってきて、床に倒され抱きしめられて……大胆にもそのまま眠ってしまった。まるで抱き枕のような扱いに唖然としたが、情けないことに身体の方はじわりと熱を帯びて興奮していた。正直な話犯されるかと思ったけれども、ダンチョーは子供のような安らかな寝顔で、すやすや寝息を立てるだけ。
密着しているから嫌でも鼓動と体温が伝わってくるし、それでいて時折もぞもぞ動くもんだから、しっぽや手が触れてむず痒い。でもそれ以上は何も起こらない。もどかしい、もっと触ってくれたりとかしないのかよって突っ込みたくなる。どことは言えないが、そこがぷにぷにの体が揺れて擦れる度に声が出そうになる。でも誰かに見つかれば、大事件になってしまうと口に手を当てて耐える。
こっちの気を知りもしないダンチョーは夕飯の時間ぴったりに目を覚まして、オレがいることに首をかしげたもののなんともなかったかのように食堂へ行った。よかった、オレはただ不幸な事故に巻き込まれただけだ。寝ぼけていただろうから覚えているはず無いなと安心して夕飯をガッツリ食べた。
しかし、そういうことだけはちゃっかり覚えているもので、とてもよく眠れたと高評価だった。それからというもの眠れない夜の抱き枕として、オレはあの秘密の部屋に呼び出されるようになったわけだ。
「……来たぞ」
誰も後をつけていないことをしっかり確認してから、さっとドアを開けて体を素早くねじ込んで閉める。
「おやおや、そんなにこそこそしなくてもいいのに。相変わらず臆病ですねブイゼルは」
「慎重って言ってくれ! そもそもダンチョーがちゃんと自分の部屋で寝てれば……って話を聞けーーっ!」
「うーん、ブイゼルは本当に抱き心地が良いですね。是非ともワタシの部屋に来て欲しいのですが、クチートが口うるさくて……むにゃむにゃ……」
言葉もそこそこに、ダンチョーは寝てしまう。オレをぎゅっと抱きしめたまま。どんな想いで抱かれているのかなんて、気にもしないまま。動けないようにのしかかられて、温かい吐息をかけられて、触れるか触れないかくらいの揺さぶりをかけられても何も起きない夜は、日が昇るまで続く。
調査団基地には、毎夜ダンチョーに抱かれる部屋がある。オレはもどかしいまま、多分今夜も呼ばれるだろう。