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ダイケンキの観察日記 見開き

/ダイケンキの観察日記 見開き

『ダイケンキの観察日記 見開き』
作者:葉月綿飴


「か、ん、さ、つ、にっ、き、と…。」

そうノートの表紙に書いた字は、(ダイケンキの手の構造もあり)お世辞にも上手とは言えなかったが、ダイケンキはそれだけで何かを成し遂げたような、少し大きな満足感に包まれた。

(これでこのノートは、俺だけの物…!」

そんな思いがつい声として出てしまうほどだった。
が、表紙を見た瞬間それも全て霧散してしまった。

(やべ、何書けば良いんだ…!?)

観察日記には必要不可欠の観察テーマを、彼はまだ決めていなかった。
要するに見切り発車。彼の悪い癖である。

「……………。」

ダイケンキしかいない部屋の中、彼は彼のトレーナーがいつもやっているようにペンを口元にやってしばらく考えてみるが、一向に何について書こうか思いつかない。そのうちに頭を抱えてしまった。
そうして30分ほど過ぎ去った頃──
いつの間にドアを開けて入ってきたのか、彼の所に1つの細長い緑色の影が忍び寄った。

「…君、何をやっているんだい?ノートを前に頭を抱えるなんて、あまり君らしくないような気がするな」
「お、ジャローダじゃん。丁度良かった、ジャローダにも助けて貰いたくてさ。ちょっとコレ見てくんね?」
そう言ってダイケンキはノートをひっくり返した。
「なになに…?『かんさつにっき』?ふぅーん…」
「そ!『かんさつにっき』。だけど、肝心の観察テーマが思いつかなくてさ、なにか良いのを知らないかなーって」
「へぇー…」

表紙にある正直言って下手くそな(でも、ダイケンキが書いたと考えると何故かジャローダには上手に思えてくる)字を一瞥して、ジャローダは少し考え、そして言った。

「うーん、じゃあ…」
「うんうん」
「観察テーマは、」
「うんうんうん」
「『君には無理なんじゃないかな』で」
「………。」

ダイケンキはゆっくりと倒れ、その身を横たえた。
もちろん気を失ったからではない。のだが、しかし今気を失えたらどんなに楽だろうとダイケンキはそう考えずにはいられなかった。

「…散々貯めておいてなんだようそれ…俺傷ついたぞ結構」

涙目になりつつそう訴えるが、返ってきた言葉は一切の容赦を持たなかった。

「普通に予想を言ったまでだよ。それも限りなく妥当で現実性の高いような」
「妥当で現実性が高いって…わからねーじゃん、俺にだって出来」
「インテレオンとのチェス」
「ゔっ」
「エースバーンとのサッカー観戦」
「ゔっ」
「そして…僕との音楽鑑賞」
「ゔっゔっゔっ」

ジャローダの口から何か発せられる度小気味よく刺さる言葉のナイフ。
なまじダイケンキにはそれらに心当たりがあるため余計にテンポ良く、深く刺さった。
要するに三日坊主なのである。それも典型的な。

「うっうっ…だってさ…いやでもまだあるかもしれないじゃんワンチャン、俺にだって出来るかもしれないじゃん」
「自分でワンチャンとか言っちゃってる時点でもう無理だっての。そーだな、じゃあ『どれくらいで自分が飽きてくるか』とかはどうかな」
「ひでぇ」
「大体さ、別に観察に限らなくたって普通の日記で良くないかい?『今日はこれこれ、こういう事があった』とかさ」
「んー…でもそれ、味気無くねぇか?」
「そーいうのは続けられるようになってから言おうね」
「はい…ごもっともです…」

大方、トレーナーが都度レポートを書いてるのを見て思いついたんだろ、そういう思い付きだけは良いよねぇ…と、尚も続く言葉の雨の中、哀れ小さな計画は頓挫するかのように思えた。が。

「あっ」

あった。普通にあったのだ。すぐ近くに、今自分の中で1番ホットなヤツが。
(これが『灯台下暗し』ってトレーナーが言ってたヤツか…)

「…どうしたんだい、急に身体起こして目を輝かせたりして。あと気をつけてよ、君の角は結構鋭いから当たったら割と痛いんだけ─」
「あった」
「…え?」
「あった、あったんだよテーマが。これなら書けるかもしれねぇ」
「そ、そう…まあ、あるのなら良かったよ。精々頑張ると良いさ、ボクも応援してるから。」

かなり上から目線に聞こえるものの、その真意の約9割は「応援してるから」に集約されているのは幼なじみのダイケンキだからこそ知っている事だった。だから彼は、

「おう、ありがとうなジャローダ!」
と返した。

…草色の蛇が退出して一匹自分の部屋の中、しかし深い青色の獣は誰にも聞こえないようにポツリと言った。

「これ、元々そういう気は無いけど、誰にも見せられなくなるかもしんねぇな…」

そう言いながら今までの事を回想しつつ、ノートに「登場人物」を書いた。
そして唯一続いている日課の鍛錬をしに、部屋を出ていった。

『登場人物』

・エースバーン(♂)
一人称は「オレ」。熱血、直情的で曲がったことが嫌い。インテレオンに恋的な意味で気があるが
・「自分自身がそれを認めたくない(恋愛はオスメスでやる物と思ってるため)」
・「インテレオンに一笑に付されるのがヤダ」
という理由で言い出せずにいる。
童貞で処女。
最近の悩み:「主人が『可愛いからー』ってオレの左耳折り曲げてメイド服着せてくんのやめてくんね!?」

・インテレオン(♂)
一人称は「ワタシ」。冷静だがヘタレな所あり。
頭が良いので基本頭脳労働担当だがいざと言う時はゴリ押しに走りがち。
エースバーンに恋的な意味で気があるが
・「エースバーンにドン引きされたくない」
という理由で言い出せずにいる。
童貞で処女。

・ダイケンキ(♂)
一人称は「俺」。このお話の主人公(?)。
見切り発車をついしてしまう。飽きっぽく、よく三日坊主に陥りやすい。が、鍛錬だけは一日たりとも欠かしたことは無い。
ひょんな事から所謂「腐男子」に近いものになってしまった。
ジャローダとはミジュマルLv.5の頃からの親友。
童貞で処女。

・ジャローダ(♂)
一人称は「僕」。トレーナーのパートナーポケモン。
気位が高く上から目線の高飛車な態度を取っているように見えるが、本心ではいつも皆の事を考えて気配りをしている。
言いたいことはハッキリ言うタイプ。実はとても素直なのだが、それを本人に言うと顔を真っ赤にして否定される。
ダイケンキとはツタージャLv.5の頃からの親友。
童貞で処女。

・トレーナー(♂)
4匹のトレーナー。可愛い物が凄く好きで、それ故最近のお気に入りがエースバーンをモフる事。
ふわふわした性格だが、腕は確かである。1人(一匹)1部屋ある家に住んでいる。



<あとがき>
読んで下さりありがとうございます。本来、どうしてダイケンキが腐男子へ至ったのかを官能描写付きで書く予定だったのですが、登場人物紹介(と、プロローグモドキ)の体を為さなくなってしまうので泣く泣くカットしました。(多分再構成して投稿するかも…)
未だ至らない点、読み苦しい点もあると思います。これからのんびりと精進して頑張れたらと思います。
どうぞよろしくお願い致します!

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Last-modified: 2022-02-28 (月) 17:51:48
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