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タベラレル愛を知って

/タベラレル愛を知って

大会は終了しました。このプラグインは外していただいて構いません。
ご参加ありがとうございました。

エントリー作品一覧



※軽度のグロ表現(捕食、流血)があります。ご注意ください。





 私の本能は、その太陽のような生命の輝きに取り憑かれていた


 代わり映えすることのない、ありふれたいつもの朝。
 1羽で、住処である大木の枝へと差し込む陽を浴びて目を覚ます。
 1羽で、自らの空腹を満たすためのエサを探し求めるべく、森林の中を突っ切るように羽ばたく。
 1羽で、苦労しつつ得られたそのエサを貪る。
 1羽で、辺りの木々が夕焼けに染まる姿を確認すると、住処の大木へと戻り静かな眠りにつく。
 そんな他愛のない日々を、特に疑念も抱かずにただ繰り返す。それが私の全てだった。

 この日もいつも通り1羽で、淡々と時は駆け抜けていき――いつしか空は黄昏時を迎えていた。
 さて、住処へと帰ろう。ありのままの思考に従い、紺色の翼を左右に広げ飛び立とうとしたその瞬間――私の視界にはポツンと木の下に置かれている、その存在を捉えていた。
 それは、所々に点在する浅緑の斑模様が特徴的な、白い楕円状のようなもの。どうやらこれは、とあるポケモンのタマゴのように思えた。
 世事に疎い私でも、流石にポケモンのタマゴの存在は認識していた。私と同じ種族の、とあるオオスバメの夫妻が宝物のようにタマゴを大事に抱え込んでいたところも、しばらくしてその中から新しい生命が産声をあげたところも、遠目から1羽で眺めていたことがあったからだ。
 とはいえ、ポケモンのタマゴなど私には一生関わりのないもの――ずっとそう思って生きてきた。だからこそ、今私の目の前にタマゴがあるというこの状況が信じられず、小さい疑念と困惑の感情が思わず湧き出てくる。また、この場から立ち去ることも不思議と出来ずに、ただじっとその白い楕円を眺め続けていた。

 そして、まだ心の整理がされないまま――私に見つめられていたそのタマゴは、小刻みにその姿を上下左右へと揺らしていく。あっという間に、その動きは激しさを増していき――
 中からタマゴが崩される音が、私の耳に響いた。
 そして、新たに誕生したその生物の姿を確認し――思わず、私は目を疑ってしまった。
 ……それは、そうだろう。表面の鮮やかな朱色に、身体中には細かなトゲトゲが連なる風貌。何度も私が生きる上でお世話になっているであろうそのポケモンは――ケムッソ。つい先ほども夕ご飯として捕らえ、お腹に放り込んだ私の大好物なエサの姿であった。
 正直お腹は一杯だった。それでも、とても美味しそうに見えるその姿に、私の嘴からは思わず涎が垂れていた。種の本能に従い、嘴を大きく開く。そして少しずつ、その小さなご馳走へと顔を近づけていく。もうちょっとで嘴が触れる――そう、思った時であった。
 小さなご馳走の瞼が静かに開いた。そして私のトロンとしていたであろう目と重なり合う。
 とても綺麗で、何よりも明るい輝きを放つ、可愛らしいつぶらな瞳であった。思わず、食欲という本能はかき消され、私は動きを止めていた。
 新しいその生命は、私の姿を確認するとパッと晴れやかな笑みを浮かべた。そして、瞬く間にその全身をうねらせて、私の爪先から腹部へ、そして首元へと登り始めていた。
 気兼ねなく、朗らかな表情で私に寄り添ってくるケムッソ。その感触は、私が遠い昔に追い求めていたはずの何かに似ているような気がした。……その何かが、今となっては思い出せないのだけれども。
 ただ、その太陽のような生命の輝きを放つこの存在は、私に食欲という本能を奥底へと潜ませる。そして、代わりに別の心地良い本能を目覚めさせてくれていた。明確ではないが、心の程よい昂りがそれを証明していた。

 私は改めて周囲を見渡す。この生命を大切に育むであろう、本当の生みの親の姿を探してみるが、それらしき影を見つけることはできなかった。どのような事情があったのかは、もう知り得ることもないだろう。
 ただ、生まれたてのケムッソをこのまま放置すれば、鳥ポケモンのエサとなってしまうことは容易に想像できた。また、運良く見つからずとも、まだ何も知らないであろう無垢な生命が立派に成長できるとも思えなかった。

 それならば――
 エサとしてではなく、別の意味で私の気持ちを惹いてくれたこのケムッソに、私は運命的なものを感じていたのかも知れない。
 この仔を立派な成虫へと育ててやりたい。この仔の、母親として――



 タベラレル愛を知って
 作:からとり



 大木への陽射しを受けて、私は重い瞼をゆっくりと開いていく。
 昨日と何ら変わらない、朝を知らせる輝かしい太陽。ただ1つ、決定的に異なるのは私の右の翼で優しく覆っている、小さな朱色の存在だった。
 私が目覚めた後もしばらくの間、ケムッソはすやすやと寝息を立て気持ち良さそうに眠っていた。生きている証でもあるその息吹は私の翼に、生暖かい感触を与えてくる。何とも言えないものだが、どこか気持ちの良いものだった。
 やがて、ケムッソも目を覚ます。そのつぶらな瞳が私の顔を捉えると、無邪気な声で鳴いてくれた。つられて私の頬が、自然と緩んでいた気がした。
 しかし、その無垢な音色もしばらくすると、耳に突き刺さる喚き声へと変貌していった。唐突なケムッソの変化に私は少しだけ狼狽えてしまっていた。”落ち着け、母親となる私がこんなことで混乱してどうする” そう、心の中に言い聞かせ、私はケムッソを注意深く観察する。
 そうだ。多分お腹が空いたのだろう。昨日の夜は住処に蓄えていた木の実を口移しで少し食べさせてやって事無きを得た。だが、今後は毎日木の実だけを与えるわけにもいかない。私が幼虫のポケモンを食し、沢山の栄養を得られるように、この仔にもピッタリの好物を探してあげないと。
 この仔の好物は一体何なのだろうか。私が瞬時に頭をよぎったのは、程よいスパイスとなる微量の毒のトゲが香ばしいケムッソの姿――
 何を考えているのだ私は。勢いよく首を横に振り、その思い描いてしまった光景を即座に消し去る。改めてこの仔の好みの食物を思考するが、思い当たる節がない。
 どうしたものか……そうこうしている内に、目の前にいるケムッソの絶叫はどんどん激しさを増していく。
 ええい、こうなったら仕方ない。出たとこ勝負だ! 私は喚き続けるケムッソを背中に乗せると、左右の翼を一杯に広げて飛び立っていった。


「どう、美味しい?」
 口渡しで与えた緑葉を目一杯頬張り、幸せそうな表情を浮かべていたケムッソに私は声を掛ける。するとケムッソは無邪気な明るい鳴き声で、私に返事をしてくれた。

 ケムッソを背に乗せ、森林内を飛び回っていた私は、幸運にもアゲハントとケムッソの親仔が仲良く食事をしている現場に遭遇することができた。勿論、私の存在に感付かれてしまったら、仔を守るためにアゲハントは死に物狂いで、私を攻撃してくるだろう。だから私たちは、深く茂った草むらに身を隠してその様子を伺っていた。幸いにも、うちのケムッソは泣き喚きすぎて疲れてしまったようで、ぐっすりと眠ってくれていたのでスムーズにその親仔の食事風景を観察することができた。
 じっと観察した結果、どうやらケムッソは木の枝に付く緑葉が大好物であることが分かった。緑葉であれば、私の住処である大木の枝にも沢山生えていた。ホッと一安心した私は、踵を返して静かに住処へと戻り、ケムッソに緑葉を食べさせ今へと至る。

 最後の緑葉を食べ終えたケムッソは満足したかのように身体を丸めて、気持ち良く寝息を立て始めた。私はまだ、ほぼ何も食べていないのにな……そう思うと、つい苦笑してしまった。
 瞼を閉じ、小さな呼吸で身体を揺らすケムッソを私は覗き込む。
 栄養のある緑葉を沢山食べたからか、先ほどより身体をふっくらと見せていた。また、表面は艶々しており、それはまるで希少性の高い宝石のように綺麗であった。そんなケムッソを私はとても可愛らしく――そして、美味しそうに見えた。
 私のお腹が鳴る音が響いた。……いや、ダメだ。頭の中では強く否定をする私はいた。しかし、食欲という本能が身体に働きかけ、嘴をケムッソに徐々に近づけていく私が現実だった。ケムッソの匂いを嗅ぐ。とても香ばしい。まるで私のお腹に入りたいといざなうようだ。そして嘴がついに、コツンとケムッソに触れる――
 その瞬間、ケムッソは小さく寝返りをうった。私はその動きにハッと我に返り、慌ててケムッソに近づけていた嘴を離す。ケムッソは変わらずに寝息を立てているが、その顔にはくすぐられたかのような微笑みを浮かべていた。その穏やかな笑みを見て、私は先ほどの愚かな行為を激しく懺悔した。闇の欲望世界から強制的に目覚めるべく、自らの頬を翼で何度も叩いた。

 やはりこの仔には、今の私が求めている何かを持っている――
 住処に貯蔵していた木の実を頬張り、空腹を満たし多少落ち着くことのできた私はそう確信していた。
 種の本能にただ従えば、この仔は既に私の栄養分となり、遥か彼方へと消え去ってしまっていただろう。しかし、食欲という本能を超える何かが、私を寸前の所で踏みとどめてくれた。おそらく食欲とは別の本能を、私に与えてくれているからだろう。そしてそれは、私が長らく求めていたものなのだろう。未だに鮮明な正体は掴めていないが、それでも大事に守らなければならないものであることは容易に想像がついた。
 二度と食欲という本能には負けない。そして、何としてもこの仔を立派な成虫に育て上げる!――健やかなケムッソの寝顔を眺めながら、私は揺らぐことのない決意を誓った。そして、ふと大事なことを忘れていたことに気づいた。

 そうだ……この仔の名前を、考えなくちゃ。
 普通であれば、すぐに決めなければならないことであっただろう。何故、その考えに至らなかったのか不思議で仕方ない。先日までは単なるエサとして見ていた存在が、急に我が仔になった衝撃に頭の整理が追いつかないからなのか。
 それとも――私自身に名前がないことも、関係しているのかもしれない。……いや、正しくは名前を憶えていない、が正解だ。
 私は幼い頃の記憶を一切持ち合わせていなかった。幼少期に何があったのかも、何故記憶を失ってしまったのか……数年経った今でも、何も思い出すことはできていない。
 それでもこの森林においてたった1羽で、私は生き延びてきた。周りのポケモンたちの暮らしを遠目から観察して、生きるための術を身につけることができたから。
 そのような事情もあり、他のポケモンたちと交流を行うことはほぼ皆無であった。だから、名前で呼び合うという文化は私には関係のないものであると思っていた、のだが。
 これから一緒に生きていき、そして育て上げる大切な仔なのだ。流石に名前がないというのは薄情であるし、何より不憫であろう。
 この仔に相応しいであろう名前をつけてあげよう。そう意気込んだまでは良かったのだが――いざ名付けるとなると答えが見つからない。やはり、私自身の名前も知らないことが尾を引いているのだろう。
 思わず私の嘴からは、大きな吐息が漏れてしまう。そんな時にふと、私はこの仔と初めて出会った際のことを思い返していた。
 私の食欲を抑えつけて、心地良い気持ちにさせてくれた太陽のような、生命の輝きを。

 よし……決めた。この仔の名前は――――



「ほら、もう朝よ。起きなさい、ソレイユ!」
「うーん、もうちょっとだけ寝かせてよぉ。むにゃむにゃ」
 住処に差し込む朝の太陽を浴びても、身体を丸めたまま瞼を開けようとしないソレイユ。睡眠欲という本能をありのままに表現するその仕草は、ちょっぴり可愛らしくもある。勿論、このまま黙って見逃す訳にもいかないのだが。
 私は両方の翼を使い、ソレイユを持ち上げる。そしてそのまま、勢いよく前へ後ろへと小刻みに揺さ振らせ、ソレイユの身体に激しい振動をプレゼントする。
「起きたよ! 起きたから止めてぇ、ママぁ……」
 流石に身の危険を察したのか、ソレイユは目を大きく見開き哀願する。当然、力の加減はしているのだが、それでもこの小さな身体には少し刺激が強すぎたのかも知れない。
 私はソレイユを、優しく枝へと降ろしてやった。ソレイユはというと、まだ少し混乱しているかのように、その瞳を上下左右へとキョロキョロさせていた。そんなあどけないこの仔の姿も、また可愛らしいなと思った。

 ソレイユと名付けたケムッソは、あれから順調に、すくすくと成長していった。以前よりも明らかに身体は大きくなったし、何より言葉を覚えて私と会話ができるようになったことはとても嬉しいことであった。まあ、おかげで毎日のように”空を飛びたいから乗せて”と私に訴えかけてきたりもして、少々しんどい部分もあるのだけれど。それでも、私の背中の上で風を感じ、あらゆる風景に対して純粋な歓声を挙げるソレイユの姿を見ていると、私自身も何だか心がほっこりして気分が良い。これはこれで、喜ばしいことなのだろう。
 さて、感慨深いことばかりも考えてられない。今日はソレイユにとってもまた、大きな一歩を踏み出す大事な1日となるはずなのだから。
「ママ―。今日のご飯はー?」
「今日のご飯はね……ソレイユ、自分で取ってきなさい」
「ええっ!? そんなの無理だよぉ……」
 私の突然の言葉に、狼狽えて思わず弱音を吐き出すソレイユ。そして次には、上目遣いをしてつぶらな瞳を私に向けて、必死にご飯を訴えかけてくる。ううっ、そんな表情をされると、ついつい甘やかしたくなっちゃうじゃないか。
「……可愛い顔をしてもダーメ。これは、あなたが立派に成長するための一歩なんだから」
 寸前で踏みとどまり、私はきっぱりとソレイユに語りかける。ご飯を取ってくるといっても、この住処の大木の枝先に生えている緑葉を1匹で取りに行って食べるだけだ。まだ見ぬ土地まで1匹旅をするわけでもない。
 今のソレイユであれば、ちょっとした一歩を踏み出せばすぐに出来ることであろう。それでもソレイユは、その一歩を踏み出すことに躊躇している様子だった。
「ほらほら、頑張って! もし1匹でご飯が食べられたら、ご褒美にソレイユのしたいことをさせてあげるから!」
 ソレイユの背中を押すように、私は発破をかける。ソレイユはしばらくの間、もぞもぞと煮え切らない様子であったが、やがて意を決したのか、分かったと一言呟き枝先の緑葉へと身体を動かしていった。

 ソレイユが小さな一歩を踏み出した後は、呆気ないと感じてしまうほどだった。木の枝の細い先端まで尻込みもせず進んでいくし、何よりその場で緑葉をゆっくりと噛み締めるくらいの余裕を見せつけるくらいだし。全くもう、仔というのは良く分からないものだ。まあ、そういった部分が魅力的でもあると思う私もいるのだけれども。
 1匹での食事を終えたソレイユは、得意げな顔を見せつけるかのようにして私の目の前へと戻ってきた。
「フッフーン。どう? 1匹でできたよ!」
「凄いじゃない。おめでとう」
 私の讃える言葉にソレイユはさらに反応したようで、顔のにやけが止まらない様子だった。本当に無邪気だなぁ、この仔は。
「それじゃあ約束だよ! ママはぼくのしたい望みを、叶えてね」
 あー。そういえば、勢いあまってそんなことも言ってしまったか。まあ、ソレイユも頑張ったことは確かであるし、1つくらいはご褒美をあげてもいいか。
「勿論分かってるわよ。それで、何がしたいの?」
「夜の空を、飛んでみたいんだ」
「夜の空を? どうして?」
 夜という言葉に、私は多少の引っ掛かりを覚えた。私の種族は鳥目と呼ばれる程、夜空を苦にしているわけではない。それにソレイユもある程度成長し、何度も私の背中に乗って青空の中を一緒に駆けている。だから、夜の空にソレイユと共に飛び込むこと自体は、そこまで危険なことでもないだろう。だが、なぜ夜なのだろうか? その点が、どうにも気になってしまった。
「だって、楽しそうじゃん! お昼の満点の青空でママと飛ぶのも面白いけど、じゃあ夜だとどんな世界が見られるんだろうって!」
 ……その元気で快活そうな声には、特に深い意味はなさそうだ。ただ、幼い探究心が、ソレイユを夜の空へと向かわせているのだろう。
「……分かった。じゃあ、今日の夜にでも行きましょうか。ただし、ちゃんと夜に備えて、今はゆっくり寝るのよ」
 はーい! 喜びを前面に出したような声でソレイユは返事をすると、早速その場で身体を縮こませ瞼を閉じ、すやすやと寝息を立て始めた。あまりに早いその変わり身に思わず苦笑いをしてしまった私は翼を使って、眠っているソレイユを優しく撫で回していた。



 住処に突き刺す太陽の光が届かなくなり、その周囲は薄暗い夜の世界へと姿を変えていく。
 一方で、大木に生える緑葉の隙間からは星明かりの煌めきが広がり、その樹木を淡く照らしていた。うん。星もまずまず出ているみたいだし、これならば夜の飛行もおそらく問題はなさそうだ。
 飛行のために羽の手入れを行っている私の隣には、これまた身体を伸ばして念入りに準備をしているソレイユの姿が。その表情を見るにワクワクとドキドキが混在していそうだが、とりあえず眠そうではなかったので安心はした。
 支度を終え、私はソレイユに背中に乗るように促す。うん、と頷いたソレイユはゆっくりと私の後ろへと乗り込む。背中越しから伝わる微量の震えを感じながら、私たちは夜の空へと飛び出して行った。

「うわぁ……」
 思わず口から洩れた、ソレイユの声。感無量といった様子で、中々後に続く言葉も出てこないようだ。そしてそれは私も、同じだった。
 木々の上を星明かりに照らされながら、私たちは空をゆっくりと、ゆっくりと飛んでいた。いつもと異なる独特の静けさに、若干冷たさを含む風。自然の輝きに灯されているとはいえ、夜の薄暗さは変わらず、森林を見下ろしてもその様子を知り得ることはできない。
 だが、そんなことを吹き飛ばすくらいに――夜空の向こうに輝く無数の星は、とてもとても美しかった。そして極めつけは、一点の曇りのない大きな満月の優しい光であった。
「お月様の輝きって凄いねー。太陽は元気の出る光だけれど、お月様は疲れを癒す美しい光みたい」
 素直に感じ取ったことを口にするソレイユ。私自身も、夜の空を飛ぶのはかなりご無沙汰だったし、久々のその煌めきはとても気持ちの良いものであると感じていた。
「ねぇ、ママ」
「なぁに?」
「ぼくも、空を飛べるようになるのかなぁ?」
「勿論よ。成長すれば、あなたにも立派な翅が生えるんだから」
「本当!? よーし、ぼく頑張るよ。今度はママの隣で、一緒に空を飛んでこの満月を見るんだ!」
 背中越しから伝わる、ソレイユの心躍る様子。その感触に重なるように、私の頬にも自然と笑みが浮かぶ。この仔の楽しげな様子は私にとっても、心の底から喜ばしいことなのだろう。

「……そういえば、ママさぁ」
 先ほどとは打って変わって、少し真剣な口調のソレイユ。
「うん? どうしたの?」
「前に聞いた時、ママには名前がないって言ってたけど、本当にそれで良いの?」
「……良いかどうかは分からないけど、思い出せそうにもないしねぇ」
「……だったらさ。ぼくが、ママの名前を付けても良い?」
「え……?」
 予想もしなかったその言葉に、私の心は大きく揺さぶられる。
「この優しい満月に触れて、ふとママのことが脳裏に浮かんだんだ。だから、リュヌって名前はどうかな? ぴったりだとは思うんだけど……」
 リュヌ――この地方では月という意味が含まれるんだっけ。この名前が似合っているかは正直なところ、分からないのだけれども……ソレイユがわざわざ付けてくれた名前なんだ。良い名前であることは間違いないし、大切にしたい。
「ありがとうソレイユ。この名前、大事にするね」
 甘えてばかりだと思っていた我が仔の成長が、嬉しかった。そして何より、私のことを思いやって名前を付けてくれた我が仔の気持ちが、本当に嬉しかった。



 それから、数日後――
 この時期には珍しく、太陽の元気な光が届かない程の厚い雲に覆われた日であった。
 私はいつものように、ソレイユを背に乗せて広大な森林の中を飛び回っていた。目的は、住処に蓄えるための木の実を採取するためだ。
 しばらくしてふと、私は背中に若干の違和感を覚えた。勿論、ソレイユは私の背に確実にいることは間違いない。ただ、その感触がどうも落ち着かない風であるというか、もぞもぞとしているというか……少し様子がおかしいような気がした。
 心配した私は声を掛けるが、ソレイユは大丈夫――と一言。それ以上、言葉は交わさなかった。
 極端に具合が悪そうには見えなかったし、もしかすると成長に伴って多感な時期を迎えているのかもしれない。そう考えると、あまり深く追求せずに温かい目で見守るのが正解なのかな。私もこの件に関しては、これ以上触れないことにした。
 さて、木の実も十分に集まってきたし、そろそろ住処へと戻るとするか。私は休憩をしていた木の枝から踵を返し、ソレイユを乗せて再び両翼を広げて飛び立とうとした。
 その時。私の背に感じたのは――本能的な生物の、おぞましい震え。
 ハッとなって、私は背中に振り返る。ソレイユが、激しい身震いを起こしていた。そしてその顔つきは怖気きっており、瞳は右下の地表をただ一点、硬直したように見つめていた。私は慌ててソレイユの視線の先を追う。

 そこには、3羽の鳥ポケモンが何かを取り囲むように佇んでいた。そして、その鳥たちは中心にある何かを嘴で突いているようだった。
 私はその何かの姿をこの目で確認すると、咄嗟にソレイユの視界を翼で遮った。それはケムッソである我が仔には到底受け入れがたい、凄惨な光景であった。


 鳥たちは、既に絶命していたケムッソであったものを、ゆっくりと堪能しながら味わっていたのだ。


 ふと鳥たちの内の1羽である、見知らぬオオスバメが私たちの気配に気付き、顔を上げた。
 オオスバメはソレイユを見ると――待ってましたと言わんばかりの、おぞましい笑みをこちらに浮かべてきた。
 “早く逃げなきゃ!” 本能的に悟った私はソレイユを落とさぬように。しかし、これまでにない程に必死に。無我夢中で翼を羽ばたかせ、猛スピードでこの場から立ち去って行った。



 何とか追手を振り払うことに成功し、私たちは住処へと辿り着いた。
 胸の中が上へ下へと、今までに経験したこともないくらいに激しく揺れて辛い。呼吸の乱れも中々落ち着かず、しばらくの間は自分の身体を整えるだけで精一杯だった。
 ようやく身体が収まると、私はすぐにソレイユの方へと向き直る。鳥ポケモンと幼虫ポケモンの本当の関係を、我が仔にだけは絶対に見せたくはなかった。その姿が目に入らないような工夫も施してはきたのだが、沢山のポケモンたちが暮らしている森なのだ。どう足掻いても、いつかは分かってしまうことだったのかも知れない。
 まだ、我が仔の身体は恐怖に震えていた。
「……もう、大丈夫。あいつらは振り切ったし、この住処にいれば安全よ」
 優しく諭すように私は声を掛け、そして安心させようとソレイユを翼で抱擁しようとした。
 しかし、近づく私に対してソレイユは一歩一歩、私と距離を置くように後退りをする。その表情は、先ほどと変わらず……恐ろしい者を目にしているかのように歪んでいた。
「……ママも、ぼくを食べるの? 美味しいエサとして、ぼくを見ているの?」
「なっ、何言っているのよ! そんな訳……」
 そこで思わず、言葉に詰まってしまう。私は胸を張って、ソレイユに反論することができるのだろうか?
 そもそもソレイユと出会う前の私は――ケムッソを含めて、幼虫ポケモンを只のエサとしてしか見ていなかったじゃないか。それに……出会って間もない頃は、何度か食欲という本能が働きかけて、我が仔を美味しそうと思ってしまったではないか!
 確かに今は、ソレイユを美味しそうなエサと思うことは断じてない。この仔と出会ってからは、他の幼虫ポケモンを食することも頑張って辞めて、木の実中心の食生活へと切り替えた。今までに抱いたことのない我が仔に対する想いが、種の本能を乗り越えることができたのだと思っていた。
 でも、それは私の勝手な思い過ごしだったのかもしれない。たまたま上手く事が進んでいただけなのかもしれない。私の隠れていた種の本能が、1つのきっかけでまた牙を向く可能性だってある。私といることが、この仔を不幸にさせてしまうのではないか……
 私はソレイユに明確な否定ができずに、ただその場で固まって動けなくなってしまっていた。
そんな私の様子をじっと眺めていたソレイユは、やがて私に背を向けて住処から少しずつ離れていく。 ”追いかけないと!” 心の中で必死に訴えかける声に反して、私の身体は動かない。動いてくれない。
 ソレイユの姿がどんどん遠のいていく。最後にソレイユが私に振り返った時、あの仔は寂しそうな表情を浮かべているような気がした。



 ソレイユの姿が完全に見えなくなる。あの仔を追いかけることも、声を掛けることもできなかった私はただひたすらに、自問自答を繰り返している。
 これで、良かったのかも知れない。
 そうだよ。あの仔は先ほど襲われそうになった鳥ポケモンたちと同じ、恐怖に満ちた顔を私にも見せていたじゃないか。おそらくあの仔自身も、私なんかとは一緒にいたくないはずだ。
 結局、私たちは生物の種の本能に打ち勝つことはできないのだ。どんな想いがあるにせよ、食べる・食べられる者同士が共存などできないのだ。
 これで良い……良かったんだ。
 呪文のように繰り返し心に言い聞かせ、いつしかそれが正しいことであると認識……しかけた時だった。

 ふと、ソレイユが私に最後に向けた、あの寂しそうな表情が浮かび上がった。
 続けるようにして、あの仔とこれまで過ごしてきた日々が脳裏に蘇ってくる。

 タマゴから生まれてすぐに、怖い顔を見せていたであろう私に物怖じせず、晴れやかな笑みを浮かべて寄り添ってくれたこと。
 拙い口移しで食べさせた緑葉を、小さい口に一杯頬張ってとても美味しそうに食べてくれたこと。
 太陽のような生命の輝きが私にはとても眩しくて心地良くて、直感で”ソレイユ”と名付けたこと。
 1匹でご飯を取ってくることをすごく嫌がっていたのに、いざ一歩を踏み出すといとも簡単にこなして得意げな顔を私に見せつけてきたこと。
 夜空を彩る星々と月の美しい煌めきの中で、成長したら共に肩を並べて飛び合って、また一緒に満月を見ようと誓い合ったこと。
 そして――名前を思い出せなかった私に、”リュヌ”という新しい名前を授けてくれたこと――

 そうだ。ソレイユはとても無邪気で可愛らしくて……立派で優しい仔だった。
 そんなあの仔の眩しさを見守り、育ぐむことが今の私の生き甲斐だったはずだ。
 私とソレイユに複雑な種の関係性があるのは紛れもない事実である。……それでも、こんな形でお別れをして、本当に良かったのだろうか?
 今冷静になって振り返ってみると、最後に見せたソレイユの寂しそうな顔は……本心では、まだお別れをしたくなかったのかもしれない。”ぼくを食べるの?”という問いかけをしたのは……母親である私に、エサであるという認識をきっぱりと否定して欲しかったのかもしれない。
 これまで通りの楽しい親仔の繋がりを守るための、鎖となりうる誓いの一言が。

 その大事な鎖となるはずの、ソレイユを安心させるためのたった一言ですら……私は口に出してやることができなかった。あれほどまでに凄惨な光景を目の当たりにして、種の本能に飲み込まれて苦しみながら、ソレイユは私のことを想ってくれたのに!
 種の本能? 食べる・食べられる関係? そんなこと……どうだっていい! ただ、私はソレイユのことが大好きなのだ。エサとしてではなく……私の仔として。
 ソレイユが私のことを信じてくれたように、私もこの偽りのない本心を貫き通すだけで良かったんだ。その真っ直ぐな想いを伝えれば良かったんだ。それなのに、それなのに私は――
 私の心に溢れるのは、少し前の言葉に詰まった私自身への激しい憤りだった。それこそ一度殺してやりたいくらいに、あの時の自分を許すことはできなかった。
 だが、今はそれどころではない。既に何処かへ行ってしまったソレイユを、何としても探し出さなければならない。気が動転していた時にはそこまで頭が回らなかったが、何の心構えも準備もなく、幼い虫ポケモンが1匹でこの森林を歩んでいくのはあまりにも危険だ。
 “まだ、間に合う! いや、絶対に間に合わせる!” 私の心の中の叫びが、私の翼を無意識の内に駆り出させていた。



 いつも見慣れているはずの森林ではあったが、一刻を争うこの状況と空を覆い隠す厚い雲の影響か、薄気味悪さを感じてしまう。
 私はソレイユが知っていそうな場所を中心に、懸命にその中を巡る。息は既に切れ切れではあるが、立ち止まってなどいられるはずもなかった。この場所にもいない。くっ、じゃあ次はあっちに……
 その時、ふと聞き覚えのある声が私の耳に響き渡った。消え入るような、弱弱しい叫びであったが間違いない。あの仔の声だ!
 嫌な胸騒ぎを必死に抑え込み、私はその声の元へと疾風の如く飛び立っていった。



 叫び声を感じた場所が、ようやく見えてくる。そして――その視界に飛び込んできたのは私の仔、ソレイユの姿で間違いなかった。
 だが、それは私が望んでいたソレイユの姿ではなかった――私の仔は今、とあるポケモンの嘴に咥えられて、今にもエサとして食べられようとしていた。そのポケモンは私と同じ種族であり、先ほどおぞましい顔を向けてきたオオスバメ――
 やめろぉぉ!!!
 私はその速度を緩めることなく、むしろ加速していく勢いでそのオオスバメに対して無我夢中のタックルを決めていた。





 ……意識が途切れ途切れになっている。だが、幸運なことにソレイユが飲み込まれる前に私は、あのオオスバメに一撃を喰らわすことができたようだ。
 うつ伏せになって起き上がれない私の翼の中には、大切な仔であるソレイユがいる。慣れない突撃で激しく地面に叩きつけられてしまっていた私の翼は、ブランブランになっていた。
 絶え間なく永遠と続く激痛が烈火の炎の如く、激しく身体全体に襲い掛かる。それでもソレイユをオオスバメから奪い返し、両翼で抱擁し守ってやることができた。これが、火事場の馬鹿力とかいうやつなのかも知れない。
 ……この場には、あのオオスバメだけではなく仲間のオニドリルとムクホークもいたようだ。
 同じ鳥ポケモン同士で前触れもなく攻撃を仕掛け仲間に傷を負わせ、彼らにとってエサであるはずのソレイユを庇った私に対して……彼らは激しい怒りをぶつけてきた。
 何としてもソレイユをエサにしようと、何度も何度も私を嘴で執拗に突いてきた。その顔も、翼も、尾羽も……身体全体の感覚は失われていき、視界も定まることはない。血の匂いは瞬く間に辺りへと広がっていく。
 それでも、私はその場を動くことはしなかった。我が仔を優しく覆い隠す翼だけは……何としても死守し続けていた。
 攻撃への反応を見せずに、それでもソレイユを離そうとしない私に痺れを切らしたのか……彼らは知らぬ間に、その場から姿を消していた。

「……ママぁ」
 静まり返っていたその場の静寂を破いたのは、私の翼の中から飛び出てきたソレイユであった。……視覚も、聴覚もかなりぼんやりとしていたけど、それでもこの仔の姿と声は忘れられなかった。
「ごめんなさいごめんなさい! ぼくのせいで……ぼくのせいで……!」
 かわいらしいつぶらな瞳が、今は滝のように止まらぬ涙で溢れている。私の半眼にも、思わず同様の雫が光る。
 ……もう、痛いとか辛いとかの感覚も感情も芽生えなかった。もうじきこの地に息絶えることも、既に確信をしていた。……最後に無事そうなソレイユを確認できたことは、私にとって一番幸せなことであった。


 本当はもっともっと、あなたと生きていたかった。
 もっともっと、あなたとお話がしたかった。
 もっともっと、あなたに謝りたかった。

 もっともっと、あなたにお礼が言いたかった。
 名前を失っていた私にリュヌという名前をくれたあなたに。
 心の奥底でずっと探し求めていた……食欲を超える最高の本能を教えてくれたあなたに。

 ずっと抱えていたその本能の正体も、ようやく分かった。最後の最後に、その温かな本能に包まれて逝くことができて、本当に良かった。


 あなたに出会えたから、私は愛を知ることができた
 愛を教えてくれて、本当にありがとう。ソレイユ。私の愛する仔――





 今夜はとても綺麗で優しい、満月が煌めいていた。
 そんな夜空に俺は誘われるかの如く、緑の翅を羽ばたかせる。翅を動かすたびに、紫色の粉が月明りに照らされて地上へと美しく舞い落ちる。

 命を賭して俺を守ってくれた母さんのために、何としても翅を生やすまでは生き延びようと思った。だからある時出会った、アゲハントの親仔に事情を話して、成虫になるまでは一緒に生活を共にした。そこでも、とても優しく、温かく見守ってくれてとても嬉しかった。母親の偉大さにただ、感謝しかなかった。


 なあ、母さん――
 この満月から、立派に成長した俺を見てくれているかい? まあ、立派かどうかは、分からないけどさ。
 それでも俺は、母さんのお陰でここまで生きることができた。好きな仔もできた。辛いこともあったけど、今は前を向いて楽しく生きているよ。

 話したいことは沢山あるんだ。
 だけど、全て一度に話すと母さんも疲れてすぐに隠れちゃうだろうから――まずは、この一言だけ伝えるよ。


 母さんのお陰で、俺はポケモンの愛を知ることができたよ
 愛を教えてくれて、本当にありがとう。リュヌ。俺の愛する母親――







ノベルチェッカー

【原稿用紙(20×20行)】 43.8(枚)
【総文字数】 13797(字)
【行数】 295(行)
【台詞:地の文】 7:92(%)|967:12830(字)
【漢字:かな:カナ:他】 32:59:5:2(%)|4495:8189:787:326(字)



○あとがき

 まず始めに4日遅れての投稿となってしまい、申し訳ございませんでした。
 正直難航してしまった部分もあり、完成しないんじゃないかと……
 そんな中で、4票分いただけたのはすごく嬉しく、感謝の気持ちで一杯です。
 自分に足りない点を少しでも改善できるよう、引き続き執筆を頑張りたいと思います。

○作品について

 wiki10周年という、とてもめでたいタイミングでの大会ということで一番好きなポケモンを使おうと考えたのが最初でした。
 タイトル名から連想された方もいると思いますが、元々ポケダンのチームタベラレルが好きだったのでその流れでオオスバメとケムッソのお話に。
 そしてこの2匹を描くとなると、自ずと出てくるのが食物連鎖。食う食われるの関係性です。

 食べるという種の本能はどうしても抗えないものがあります。でも、相手を想う愛も1つの本能だと思います。愛は本能ではないという意見もありますが、少なくとも近いものは必ずあると信じたいものです。
 様々な葛藤があっても、それを乗り越える愛情のお話はやはりグッとくるものがあります。
 ですが当事者である2匹が乗り越えても、周囲には理解されることのない世間という厳しさも存在します。
 そういった背景を踏まえて、今回の作品はこのような結末を迎えることになりました。
 哀しいのですが、それでも愛する仔を無事に守り切ったリュヌは幸せであったと思います。

○コメント返信


 > 食欲に苛まれながらも最後まで愛を貫き切ったリュヌに一票を投じます。 (2017/07/02(日) 22:10 さん)

 食欲への葛藤を乗り越えたのも、リュヌ自身が愛という感情を心から欲していたからだと思います。
 リュヌの愛情に一票を投じていただき、ありがとうございました。
 
 > 中々良かったです。 (2017/07/03(月) 16:12 さん)

 楽しんでいただけたようで良かったです。

 > とても読みやすいうえにしっかりとしたラスト。種族をこえた愛情はやっぱいいですな (2017/07/04(火) 20:27 さん)

 様々な障害を抱えながらも、貫き通す愛情はやはり美しいですね。
 最後はもう少し書き足したかった部分もあるのですが、気に入っていただけたのであれば幸いです。

 > 我が身を犠牲にしてでも、ソレイユを守りきったリュヌの母の愛に泣いた。 (2017/07/04(火) 20:41 さん)

 咄嗟に身を挺してソレイユを守ったのは、そこに本当の愛情が存在していたからでしょう。
 その愛が心に響いていただけたようで、とても嬉しく思います。
 



 最後になりますが作品をご覧になってくださった皆様、投票してくださった皆様、大会主催者様。
 ありがとうございました。



 感想、意見、アドバイス等、何かありましたらお気軽にどうぞ。

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Last-modified: 2017-07-09 (日) 21:50:15
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