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ズボラ男と綺麗好きな彼女

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ズボラ男と綺麗好きな彼女

          作者かまぼこ

※注意
官能描写(人×ポケ♀)です。


 年の瀬も迫ったある日、とある安アパートの台所で、小さな体のポケモンがせこせこと動き回る。
彼女は手にした小箒と純白の尻尾を用いて部屋の隅々まで丁寧に掃いていく。
「よ~し、お台所のお掃除おーわりっと」
 そういうと、集めた埃を塵取りに移し、ゴミ袋に投入すると、
小さいポケモンは、ふぅ……と額の汗を手で拭い、箒を置いて居間のソファーに飛び乗り、
全身の力を抜いてうつ伏せに倒れこむ。
「あぁ……お掃除くたびれたな」
 大きな耳を持つ灰色の体に、白いスカーフ状の体毛があちこちから生えているその体は、
とてもかわいらしく、また優雅な雰囲気を醸し出している。
 ノーマルタイプのスカーフポケモン「チラチーノ」である彼女――「チナ」は、
ごろりと仰向けになると、埃と汚れだらけの体を見て嘆息した。
「……お風呂入りたいな」
 と独りごちる。
 人間の部屋を小さなポケモンが隅々まで掃除するということは、かなり骨が折れる。
おまけに体は埃と汚れだらけで、元々綺麗好きな種族である彼女にとって非常に不快な状態だった。
温かいシャワーでも浴びて体をきれいにして、眠ってしまいたかった。
「……」
 だが、まだ休むことはできないのだ。あと一部屋だけ、掃除が済んでいない。
「でも問題は、あの人のところよね……」
 疲れきった表情で呟くと、チナはまた、ため息をついた。
「あのズボラー、真面目にやってんのかしら……」
 あの人。つまりチナの主人である人間の部屋こそが、彼女の悩みの種であり、忌み嫌う場所だった。
なるべく行きたくは無かったが、とりあえず様子だけでも確認しなければ……と、嫌々ながらも体を起こす。
「……やってないんだろうなぁ」
 希望半分、失望半分で、チナは今を後にした。


 チナは例の部屋の前までやってくると、ドアに大きな耳をつける。
案の定、中から物音はほとんど聞こえてこない。掃除や片付けをしているなら、もっと物音がするはずだ。
「やっぱり……」
 彼女は額に青筋を浮かべると、軽く助走をつけてジャンプし、ドアレバーに捕まると、
その速度を維持したままレバーに体重をかけてバンッ! と思い切りドアを開ける。
「こらああああ!! キヨシぃぃぃぃい!!」
 怒鳴り声を上げて、彼女は部屋に踏み込んだが、そこに主人の姿はなく、
あったのは、今まさにチナに向かって崩れ落ちてきている本の塔だった。
「きゃああああああああ!!」
 彼女のけたたましい悲鳴と、ドドドオッと無数の本が落下する音がほぼ同時に家中に響き渡る。
あっという間に、チナは本の山に埋没した。
 その音に気付いて、ベッドに寝そべっていた彼女の主人――キヨシがのそのそと体を起こして、言った。
「あーあ。せっかく片付けたのに、なんてことすんだよチナ……」
 余計なことをしやがって――と言わんばかりの表情で、主人はチナの埋まっている本の山を見つめた。
「ううぅ~げほげほ……」
 ややあって、チナは埃まみれになって咳き込みつつも、どうにか崩落物の山から這い出すと、
キヨシに近寄り、再び怒鳴りつけた。
「なんなのよ、コレ!! 全然片付いてないじゃない!!」
「失礼だなチナ。ちやんと片付けたじゃないか」
「これの……どこが!?」
 どこまでも、見渡す限り物が散乱しており、足の踏み場も無い。
紙クズなどの可燃ゴミは勿論、ガラクタやジュースの空き缶、
古雑誌や古新聞。そういった物で、その部屋は埋め尽くされていた。
おまけに埃も大量に積もって、ここ数年は掃除をしていない……という感じだ。
 誰がどう見たって、これは『片付いている』とは言えない。
 案の定、全然片付いてはいなかった。部屋の散らかりっぷりを見て、チナは嘆息してから再び声を荒げた。
「今日こそ片付けるって言ったじゃないの! 一体、何回私との約束破る気!?」
 これまでにも、チナは彼に何度も片付けるように言っていたのだが、一度もそれを守ったことがなかった。
少し片付け始めたと思ったら、このようにすぐサボるおかげで、毎回毎回片づけが進まずそのままになる。
「だから片付けてんだろ! お前のせいで崩れて台無しになっちまったんじゃねーか」
「ただ積み上げただけで片付いてるとは言わない! それに本以外は全然じゃないの!」
 チナの主人、キヨシは所謂『片付けられない人』だった。
 読んだ本は本棚に戻さず床に放置し、ゴミは床にポイ捨て。今朝、食事に使った皿やカップなども、
洗わずにそのままテーブルに放置されているし、服も洗濯せずに脱ぎ捨てられている。不衛生極まりない。
 そんな生活を続けるうちに、積もり積もってこんな状態になってしまっているのだ。
「本は本棚に戻す! お菓子とか食品のゴミはちゃんと洗うか処分する! 脱いだ服は洗濯する!
だらしないし不潔だっていつも言ってるでしょ!? どーしてちゃんとしてくれないの!?」
 チナは抗議するが、キヨシは再びベッドに寝そべってスナック菓子とジュースを口に運びながら
マンガ雑誌を読み始める。
 まるで聞く耳持たないといったキヨシの態度に、チナの何かが切れた。
 ぷっちん(はぁと)
 次の瞬間、チナはキヨシに飛び掛り、特性「スキルリンク」を活かした
強烈な5発の“スイープビンタ”を顔面に見舞った。
「ぶぉほへぁぁぁ!!」
 主人はベッドから転げ落ちて、ゴミだらけの床に頭から突っ込んだ。
その衝撃で、食べかけのスナック菓子とジュースがベッドとゴミだらけの床にこぼれて、ますます部屋が汚れた。
「あにすんだよチナ!」
 キヨシは立ち上がると、彼女の方に振り向いて抗議の声を上げる。
「いい加減にして!! ここは私の部屋でもあるのよ!? こんなに汚されたんじゃ、たまったもんじゃないわ?
何!? 私がチラチーノだからって汚して嫌がらせをしているの!?」
 矢継ぎ早に言葉を浴びせる。
彼女の種族――チラーミィ系は、尻尾を使って住処の中を掃除したりと、とても綺麗好きなことで有名だ。
掃除に使う尻尾の手入れも常に欠かさないくらい、非常に綺麗好きなポケモンなのだ。
だから、チナにとってこの部屋の状態は、悪意があるとしか思えず、
キヨシにとって、自分は煩わしい存在なのだと思わせる原因ともなっていた。
「な……べ、別にそんなんじゃないって! ただ手に取りやすい位置に物を置いてたらこうなっただけでだな……」
「へぇ! 使用済みティッシュをまた使うの!? 中身カラッポの空き缶をまた使うの!」
「あ゛……」
 指摘されて、キヨシは言葉に詰まる。何も考えずに口に出して、墓穴を掘ってしまった。
「……べ、別にいいじゃねーか少しのゴミくらい! 適度に散らかってる方が、俺は落ち着けんだョ」
 そういってキヨシは開き直り、ベッドにあがると再び漫画を読み始める。先程汚れた部分を全く気にせずに。
片付けや掃除をする気は毛頭ないようだ。
「私がこまるって言ってるの! ここは私の部屋でもあるのよ? それを……こんなにしてぇ!!」
言いつつ、床においてあるバスケットを指差した。もはやゴミに埋もれて、寝床として機能しなくなっている。
 いつもチナは、台所のソファで寝ているのだが、本来の寝床はここにあるのだ。
「それに、ベッドの上で食べ物を食べないでって、
何度も言ってるでしょ!! あぁシーツも汚してぇ……こら降りろ!」
 言いつつ、チナは強引にベッドのシーツを引っ剥がしにかかると、
キヨシは心底面倒くさそうな顔をしながら起きあがって、ベッドから降りた。
「まったく」
 小さい体で大きなシーツを丸めると、キヨシの方に向き直ってぴしりと指した。
「それはこっちのセリフ! とにかく! 今日こそはこの部屋を片付けて貰います! いいわね!?」
「はいはい、頑張ってね……っと……」
 そういうと、彼はシーツを剥がしたベッドに再びごろりと横になる。
「あ・な・た・も!!やんのよおぉぉぉお!!」
 チナはベッドに飛び乗り、キヨシの片耳を両手で掴み思い切り引っ張る。
「いいッ加減にしなさいよこのズボラー!! わたしがどんだけ迷惑してると思ってんのよぉぉぉお!」
「いででで!! わかったよ。耳引っ張るな!」
 そうして、彼は渋々片付けを始めた。

「もう掃除に関しては絶対信用しないんだから……!」
 とりあえず、汚れたシーツと衣類を洗濯機に投入し、作動させると、不満をたれつつ、
チナは再びキヨシの部屋へ向かう。自分が監視していないと、キヨシはどうせサボるに決まっているからだ。

「わたしは燃えないゴミを集めるから、あなたは燃えるゴミを集めて」
 部屋に戻るとチナは透明のゴミ袋をキヨシに渡す。まずはゴミを集めることから始めなければならない。
膨大な量だったが、これがなくなるだけでも部屋は大分片付く。
「はーいよ……ったくメンドーだなぁ……」
 キヨシの悪態に、チナはキヨシをキッと睨みつける。
「口答えしない!!」
 その物凄い形相に圧倒され、これ以上は怒らせないほうがよさそうだと、キヨシは素直にゴミを集め始めた。
チナはゴミを集めながらも、時折恐ろしい顔で彼をチラチラと見てくるので、キヨシはボソッと呟いた。
(おぉ恐ぇ……まったく、この鬼ババめ……)
「なにか言った!!?」
「なんでもありやせん!!」
 地獄耳め……と胸中で呟きつつ、彼も作業を始める。
「ったくもぉ……」
 キヨシは、ぶつくさ言いながら、可燃・不燃の区別なく適当に放り込む。
「ちょっと!? それじゃ片付けにならないでしょ!? ああ……なんで雑誌ごと放り込むのよ!
本は別! 何でもかんでも放り込むのはダメ!!! あとプラスチックは燃えないゴミ!」
「るせーな……わかったよ」
 指摘されると主人は不機嫌そうに言って、雑誌を取り出す。


 チナの主人であるキヨシは、とにかくズボラだった。
このように片付けやゴミ捨てを怠ったり、そのせいで会社の書類を紛失しかけたり、
時には食べ物を出しっぱなしにして忘れたまま腐らせたりと、
そんなキヨシの半端ではないズボラさがどうしても受け入れられないのだった。
 そのせいで、寝床をゴミに占領され、ゴミに囲まれて眠るしかなかったり、
書類を持って追いかけたり、彼女が苦労させられることが多いからだ。
結局、ゴミに囲まれる生活を嫌って、寝床は居間のソファーに移した。
(本当はもっと、キヨシのそばにいたいのに……)
 チナが掃除したそばから、キヨシはすぐに汚し散らかしてしまう……ということもしょっちゅうだ。
チラーミィ族の彼女にとって、この部屋の有様は生理的嫌悪感を感じて、たまったものではないのだ。
「まったく……本当はいい人なのになぁ……ズボラじゃなきゃ最高なのに……」
 小声で独り言を言いつつ、ゴミ袋に葡萄ゼリーの容器を放り込んだ。
彼女自身、別に彼が嫌いというわけではない。むしろキヨシのことは好きだ。
 ズボラだが、思いやりのあるいい人だと思っている。
道端に捨てられていた自分を救って、パートナーとしてくれているような、
やさしい人間なのだから。ただ、ここまでズボラだとは思わなかったが。
 拾われてから1年経ったときに、「光の石」をプレゼントしてくれたときは、とても嬉しくて、
思わず涙が出てしまったほどだった。

 そんなキヨシには、もっとちゃんとして貰いたい――
そう思っているからこそ、こうして小うるさく注意をしているのだが……


 床に散乱していたものがあらかた片付いたので、チナは机の裏を掃こうと、机をずらす作業をしていた時だった。
「あら?何かしらコレ……?」
机の裏にダンボールの小箱を見つけた。縦長の箱で、びっちりと机と壁の間に収まっている。
チナはこの部屋に出入りする(なるべく入りたくはないが)が、今まで見たことのない知らないものだった。
(何が入っているのかしら……?)
 そう思って、チナは中身を確認しようと箱を引っ張り出し、手で器用に開けると――
「……!? きゃあああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
 突然のけたたましい悲鳴に、キヨシは何事かと作業を中断して振り向いた。
「なっ何だ何だぁ!?」
「~~~! な・に・よ! コレはぁああああ!!」
 チナは真っ赤になって、主人を怒鳴りつけた。
「なんだよ一体……って、うえええええぇぇぇ!!!?」
 今度はキヨシが顔を赤くして慌てふためく。
わなわなと震えるチナの手には、薄いプラケースが握られている。
 表面には『昼下がりの団地妻』とタイトルがあり、牝のサーナイトのあられもない場面がいくつも。
それも、人間とあんなことやこんなことをしている。
 これは俗に言う『お下劣ビデオ』だ。それもポケモンが人間と交わる特殊なジャンルの。
「や、やめろぉ! 見るな!」
 キヨシは叫ぶも、チナはダンボール箱から続々と、牝ポケモンのあられもない姿が載ったケースを出してくる。
いい体つきをした牝ミミロップの作品や、牝リーフィアが主演の『リーファちゃんの萌え萌えキャンプ』
牝グレイシアの『寂しい夜のお友達』……さらに牝バクフーンの『愛欲地獄』――
そんな感じのビデオが十数本は出てきた。
 そして最後に、
『10マンボルト!ちなみちゃんのプリティめろめろボディ!』
と書かれた、牝のチラチーノが写っているビデオが出てきて、チナの頭の中で何かのヒューズが飛んだ。
ずばぁぁぁあん!!
 破裂音にも似た音がしたかとおもうと、チナの罵声と主人の悲鳴が部屋中に響き渡った。
「バカっ!もう知らない!!!」
 涙目になって、チナは部屋を飛び出していった。


 部屋に残されたキヨシは、赤く腫れた頬を押さえてうめいていた。
「おぉ……いってぇ……思いっきり『目覚ましビンタ』を……」
 以前にも些細な理由で喧嘩をして、同じ事をされた時は死ぬ思いをしたが、
今のビンタのほうが、その時よりも深く心に響いた。
「ん……確かに少し悪いことをしたかな……」
 確かに、チナはポケモンでも牝なのだし、別の牝のそんなビデオなど見ていたら、
彼女にとって気分は良くなかろう。冷静になって考えてみたら、チナはいつも小五月蝿いが、
それは主人――つまり自分の為を思って言ってくれているのだと実感できた。
 それにいつも自分ばかりが迷惑をかけて、怒らせてばかりいることも。
あんないい牝を自分は傷付けてしまったんだと思うと、頭は罪悪感でいっぱいになる
「チナ……!!」
 主人は、チナを探すため、部屋を出て行った。


「キヨシのドスケベ……信じられない」
 人間用のHな本ならまだしも、あんな物を持っていたとは。
チナは腹を立てながら、町を当てもなく歩き回る。
「でも……あんなの好きだなんて……知らなかったな」
 主人にあんな趣向があったとは。それにあのパッケージに写っていた牝達は、
まぁ、悔しいが牝の自分が見てもかなり魅惑的であって、到底かないそうもない。
それがチナの嫉妬心を余計に燃えさせて、ますます苛立つのだった。
「私だけを……見て欲しいのに……!」
 しかし、あんなビデオを見てたということは、キヨシは、ポケモンをそういう
対象として見れるのか……それに、自分と同種族の牝のものまであった。
なら、自分だってあのくらい――
と、店のショウウインドウに写る自身を見て、
左手を腰に手を当てて、右手を頭の後ろにやって、
うふん……と、所謂『セクシーポーズ』をとってみる。勿論表情もそれっぽくして、
 首周りの白い体毛を、ぴったりと首に巻きつけ、ボディラインを見せる。
「わたしだってご主人を虜に……できるかな?」
白い体毛が邪魔してイマイチだろうか……とも思ったが。
 すると。
「よう、ねーちゃん、なかなかカーイイじゃん?」
 路地裏からガラの悪そうな2匹の牡のニューラが現れる。
ここは森も近いので、野生ポケモンがこうしてエサを求めて
街中に来ることがよくある。このニューラたちも、そうした連中なのだろう。
一匹のニューラはチナの体をジロジロ見回して、
「いー体してんなぁねーちゃん、俺らと一緒に行かねぇか?」
 どこに?と思った直後、「ああ、ナンパか」と気づく。
「ごめんなさい、私トレーナーが……」
 ココまで言った所で、突然ニューラたちに取り押さえられ、地面に顔を付けられる。
どうやら、ムリヤリにでも襲うつもりのようだ。
「嫌だと言いたいだろうが……俺らも溜まってるんでね、こい!!」
と路地裏に引きずり込もうとした。
「……まったく牡ってのは!」
 チナは頭にきて、尻尾を勢いよく振り、背後にいた1匹のニューラに何度も叩きつける。『スイープビンタ』だ。
「ぐはっ、ぶッ、ぐへぁ、ぐぼぉッぐが!!」
さらに彼女の特性『スキルリンク』によって、連続技の回数が増し、より多くの攻撃を相手に叩き込める。
スイープビンタの連撃をまともに喰らったニューラは力尽き、ドサリと崩れ落ちた。
「変態はもうこれっきりにしてほしいんだけど……!?」
「てめっ……このアマ!」
 逆上したもう一匹のニューラは『メタルクロー』を放ってくる。
が、チナは首周りの白い体毛を使い、受け流してみせた。
「なっ!?」と驚くニューラの顔面に、トドメの『目覚ましビンタ』を叩き込む。
 効果抜群である格闘攻撃を受けたニューラは、倒れて体を痙攣させる。
「まったく……」
 そういって、そこから立ち去ろうと背を向けた瞬間――
 ゴツッ
 チナの頭に衝撃が走り、彼女は地面に倒れた。
「――!!?」
 声が出ない。それどころか手足も動かせなかった。かろうじて目だけは動かせたので
見てみれば、先ほどスイープビンタで最初に倒したニューラが起き上がっていた。
完全には倒せなかったようで、『瓦割り』を頭にもろに食らったようだ。
「……ってぇ、ごの牝ぁ……でも、その分たぁっぷりと可愛がってやんぜぇ!!」
まずい。動けない! 反撃も出来ない!! このままでは……!
 ――助けて!キヨシ――!!
そう心で呼んだとき、

「チナ!!」
 キヨシが通りの方からこの路地に入ってきて、叫ぶ。どうやら走ってきたようで、息を切らしている。
「ゲッ!!? やべぇ人間だぁ!!」
と、倒れているもう一匹のニューラを抱えて、逃げ去った。
よかった……キヨシが助けに来てくれたんだ――
「おい……? チナ!! しっかりしろ!! チナ!」
 安心したチナはそんな主人の声を最後に、そのまま気を失った。


 キヨシによってポケモンセンターに運ばれたチナは、治療後数分で目を覚ました。
今は何ごともなく、動けるし、声も出る。
 ベッドに横になっている彼女にキヨシは何度も謝った。
「ゴメン! チナ!! お前のことを考えずにあんなもの置いといたばかっりに、
お前を傷付けて……! それに、キケンな目にあわせて……俺が悪かった!! これからはちゃんと片付けるから!
もっとしっかりするから! 許してくれ!」
 そう謝罪するキヨシの顔は、普段見たことの無い心配そうな表情だった。
そんな彼の顔を見ていると、何だか胸の奥がキュンとして、急に主人が愛しくなる。

「もう……いいわ。あなたが変態でも……そんなあなたも好きだから……」
 とチナは微笑んで、そう告げた。
「え……? なん……」
 意外な反応にキヨシは戸惑うが、そんな反応が何だか面白くなって、
からかうついでに、さらに本音を言ってやった。
「だから……わたしは、あなたが好きなの…わたしを引き取ってくれた時からずっと……」
「……」
「愛してるわ……」
 キヨシは目を白黒させて、明らかに動揺していた。
「お前……頭打っておかしくなったんじゃ…?」
その言葉にチナは少しムッときて、ぴしっと軽く尻尾で彼の頬を張った。
「わたしはまともよ……冗談でこんなこと言う筈ないでしょ?」

 主人は黙ったままだった。静かにチナの言葉に耳を傾けているようだ。
そんな主人に、ベッドを蹴ってジャンプし胸に抱きつき、告げる。
「私、あなたを責めるために、うるさく言ってたわけじゃないのよ?
だたちゃんとしてほしかった……大好きな、あなたには……」
「そうか……お前は俺の事を、そんなふうに思ってくれてたんだね……ありがとう、チナ。
俺も……お前の気持ち分かってやれなくて……ゴメン」
 チナは苦笑してから言った。
「もういいって言ったでしょう?帰りましょ……片付けの続きしなきゃ」

 帰り道、チナはキヨシに抱かれながら、
「で? なんで、あんなビデオを? それも私と同種族のヤツまで……」
 と、尋ねてみた。
「あ……あれは、そのな……」
 キヨシは照れながら続ける。
「お前のことは、好きなんだけど……」
「好きなんだけど?」
 チナが聞くと、キヨシは言葉に詰まる。言ってもいいものか迷っているのだろう。
数秒後、決心したのかキヨシは口を開いた。
「お前のことは好きだよ。でも……その……好きなお前をオカズにするのも
悪いかなって……だからこんなビデオに……別のメスに……その」
 こんな小さな自分は、対象外なのか――?
そう思ってチナはムッとして、
「あっそう、私には魅力が無いってこと?」
「やっ、そうじゃなくて、ほんと、悪い気がしただけで……」
 キヨシはそのように言ったので「そう…」とぽつりと言った。
それなら証明させてやる―とチナは胸の中で思った。


 二人は部屋に帰り、片付けの続きをした。キヨシはやる気の無かった先程とはうってかわって、
しっかりとゴミを纏め、いらない本は縛り、掃除機をかけ、おまけに雑巾がけまで行った。

 終わったときにはもう夜になっていたが、部屋は見違えるように綺麗になって、スッキリした。
ゴミを纏めた袋を玄関に置いてから、キヨシは疲れたのか、シーツを洗濯し清潔になったベッドに
どさりと横になる。チナもまた、キヨシの横に仰向けに寝転んで、再び問うた。
「キヨシ、さっきの話……ほんとう?」
「へ……?あぁ……オカズにしないかって話……?ホントだってば……」
話に乗ってきたので思い切って言ってみる。
「本当ね……?」
「ああ、本当だよチナ。お前のことが好きだよ……」
 その言葉を聞いてチナは、寝ているキヨシの太ももの上に立ち上がり、
「なら……証拠を見せて……私もあなたのオカズになるって証明して……」
と、キヨシを見つめる。
「え、あの……それって……」
 彼女は困惑するキヨシの態度に少しいらだって、怒鳴る。
「だから……!私でしてみて!! 遠慮はいらないわ! 私が好きならできるでしょ……?」
「だっ……だけど……」
「私が好きなんでしょ…?あなたは、好きな牝でヌけないの…?最低ね…」
キヨシはその言葉に少しムッときて
「わかったよ……やってやんぜ!?」と答えて、上半身を起こした。
彼女はふふ……と笑ってから、キヨシのズボンを脱がしにかかる。
「手伝ってあげるから……」
 そんな彼女の顔はとても妖艶で、キヨシはドキリとする。
いつものきつい顔の彼女とは正反対だった。
それによって、分身は瞬く間に巨大化する。
「ん……おっきー……」
 主人のそれをくわえ、吸い付く。
「あっ……チナ……そんなことを……」
 今まで味わったことのない快感が、キヨシの体を駆け巡った。
チナは口を離して、今度は棒アイスを舐めるかのように、それを舐める。
「チナ……ああぁ……」
 キヨシは達して、白濁液を噴出させた。噴出したそれは、チナの体に満遍なくかかる。
「はぁ……はぁ……」
「もう終りなの?……随分早いのね」
 チナはドロドロの液まみれになりながら、勝ち誇った顔をする。
キヨシは息を荒くしながら
「うるせぃ……新感覚で……耐えられなかっただけだぃ……!」
 と言い訳をしたが、説得力は皆無だった。
「まぁ、いいわ……私でもヌけるって証明されたし、嬉しいわ……ん、おいし……」
そういって、付着した液を舐め、味わう。
「おま……汚いのは…嫌なんじゃなかったか…?」
「フフ……汚くないわ? あなたのだもの……ふふ、キレイにしなきゃね」
 いいながら、さらに棒に付いた液を舐め取る。
それによってキヨシの分身は再び元気を取り戻して、そそり立つ。
「……くぅ!」
するとキヨシはいきなりチナを抱きかかえると、ベッドに仰向けにする。
「あっ……?」
「俺ばっかりが気持ちいいんじゃ、不公平だろ? 今度は俺がやってやんよ」
 それを聞いて彼女は妖艶な笑みを浮かべて言った。
「お願いね……あなた」


 キヨシはチナのお花に指を這わせると、左右に開いて、中を見る。
中は綺麗な桃色で、ひくひくと動いている。
「いい動きしてんなぁ……お前のは……」
 それを聞いて、チナは恥ずかしさで顔を真っ赤にした。
「っ…! キヨシのスケベ……どうしようも……ないわね」
「へへっそんな暴言、俺に言っていいのかな?……お仕置きだ」
彼女のお豆を摘み、ぐりぐりと動かした。
「ふぁぁぁあああ!!」
 今まで聴いたこともないような、彼女の声。それを聞き、主人はよりヒート。
今度は浅めに指を入れ、軽くピストンしてみた。
ちゅぷちゅぷちゅぷ……と水の音がし始め、彼女のお花は、みるみる湿っていく。
「あ・ああぁ……らめぇ!」
 チナはそれだけで達してぷしゃあ……と噴水のごとく潮を吹く。
それはキヨシの服ににかかり、選択したばかりのベッドも濡らした。
「なーんだ。あんな事俺に言っといて、お前もすぐにイッたじゃないかよ……」
 チナは小刻みに体を痙攣させながらも、
「だって……新感覚で……耐えられ……な……」
 と言い訳をしたが、こちらも説得力はなかった。
「まったくお前は……」
 呆れながら、キヨシはチナを抱き、特殊な脂でコーティングされているという
白い体毛に触れてみる。ヌルヌルとはしておらず、ツヤツヤで、触れた手にも残らない。
 チナは目を潤ませて
「お願い……きて……くれる?」
と、見つめてきた。男としてここまで言われたら引き下がるわけにはいかない。
「でも……俺なんかでもいいのか…?後悔するかも…」
「……いいの。私はあなたが好きなんだから……好きな相手にしてもらえるなら、
後悔はしないわ。愛しています……あなた」
「そうか……俺も、愛してるよ……その証拠、今見せるから……」
キヨシはそういうと、チナにキスをした。
お互いに舌を絡めて、互いを堪能しあう。口を離せばお互いの唾液が結びついて橋を作る。

キヨシは、槍を彼女の桃の花に近づける。
「……そんなにおっきいの、入るかなぁ……?」
と、チナは不安になったのか心配そうに言った。そもそも人間とチラチーノでは体格が違う。
彼女の身長は50センチほどだ。不安になるのも仕方がない。
「大丈夫……だと思う……きつかったら言ってくれ」
そう言うとキヨシは腰を沈めて、槍を進入させる。
「ん゛……」
 槍が、彼女の入り口を広げて、中に進入しようとする。
ズッと先端部が飲み込まれた。
 チナの中はトロトロでとてもあたたかく、ぎゅうと締め付けてくる。
途中に何かにぶつかったが、キヨシはかまわず突き破った。
「うう゛ぁ……」
 彼女はうめいたが、キヨシと結ばれるには必要なことだと
感じながら、必死に耐えて愛する雄を求めた。
 槍は彼女に半分ちょっと入った所で硬いものに触れ、最深部に到達した。
「だっ大丈夫か? ……苦しい?」
「苦しいけど……大丈夫……動いてぇ……」
言葉通りに、キヨシは腰を前後させ始めた。彼女から、離れてしまわないように慎重に。
時折空気が抜けるような音をたてながら、続ける。
「あっあっ……んん……あっん……うぅ……」
 チナはあまりの快感に焦点の定まらない目をして、
半開きの口からは涎が出ている。
 小さな体で精一杯、人間である自分の槍を受け入れて
喘ぐチナの姿は、可愛いらしく、とても魅力的だとキヨシは感じた。
「あん……きよ……し……いいよぅ……」
 先ほど一回出した為に、比較的長持ちしていたが、やはり限界は近づいていた。
「やばい……!! もう出そう……!! 離れるぞチナ……!」
しかしチナはキヨシの服を掴んで、離そうとしない。
「駄目……!! 好きなら、私に……出して……!」
「でも……チナぁ……」
「いいの……! 一緒に……あああ……あ゛っ!」
 キヨシの槍が、彼女の奥を一突きしたその時、
チナの中がきゅっと締まると同時にキヨシの「愛の証」が大量に解き放たれた。
槍を抜くと、チナからその証が溢れ出て、ますます彼女の優美な体を染めた。
恐らく、最深部まで入り込んだだろう。

 キヨシとチナは疲れたせいか、互いにそのまま眠りの世界へと移動する。
人生最大の幸福感を胸に。


 あの日以来、キヨシは部屋を散らかさなくなった。
本はちゃんと本棚へ戻し、食べ物はなるべく置かないようにした。
ゴミ箱もちゃんと機能しているし、ホコリだらけになることもなくなった。

 もちろん、恋人であるチナのためなのだが、彼女が、
「片付けないとシてあげない」という条件を付けたためでもあったが、
なによりも――
「お帰りなさい……」
「ただいま、大分大きくなってきたな……苦しくないか?」
「大丈夫ですよ、苦しさより嬉しさが勝ってますから」
 そういうチナのお腹は、ぷっくりと大きくなっている。タマゴがあるのだ。
キヨシは、これから生まれる新たな命のために。ズボラではいられなくなったからだ。
今はチナが動けないため家事はキヨシが一人でやるしかない。
あんなにズボラだったあの人が――
 しかしそんな忙しく動き回るキヨシを見ていると、何だかとても愛しい。
身重のチナは、クスリと微笑んだ。

 綺麗好きと、ズボラ。
 これらは一見相容れなさそうに思えるが、新たな命によってお互いが理解しあえて、
穏やかな時間が流れる。どんな相手であっても決して分かり合えないものではないのだな……と
スーツを脱ぎながら、キヨシはそのように思った。

 もう少しして一段落付いたら、この人をもっと甘えさせてやろう――
そう考えながらチナはお腹を愛しげにさすって言った。
「じゃ、今日のお掃除もよろしくね『パパ』」

~おしまい~



以前のは色んな部分が分かりづらかったため、
とりあえず書き直しました。といってもポケモンの特徴が活かすための
戦闘描写の追加や主人が好きな理由、余計な文章の削除やラストの変更といった加筆修正程度ですが。

始めてチラチーノを育て、スーパートレインで試しに運用したとき、
7戦目のバシャーモ・ラグラージ・竜の舞リザードンを一匹で倒した感動したのと、
サザナミタウンで交換した人が、翌日変貌していたのを見て、
「チーノは生活態度まで変えてしまうのか…」と思い、こんな話になりましたw
また、今回の書き直しのためにBW2の隠し穴でスキルリンクの牝を粘るために
必死にハイリンクのレベル上げしたのもいい思い出ですw

感想、指摘などありましたら↓


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Last-modified: 2012-07-20 (金) 00:00:00
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