ポケモン小説wiki
ショクチュウショクブツ

/ショクチュウショクブツ
※この作品には官能シーンが含まれています。
ショクチュウショクブツ
written by ウルラ



 か細い腕を縛り上げる『つる』の音。
 灰と黒の身体に植え付けられたいくつもの『やどりぎのたね』から出た芽や根から、ジワジワと意識を吸い取られるような感覚。
 首に大きな花を携えた華々しい見た目とは裏腹に、酷くギラついた視線を向ける先には一匹の小さな獲物。
 他には誰も訪れようとはしないこの森の奥地で、歳若いオスのトカゲは彼女に捕らえられていた。

「ねえ」

 首を近づけてスンスンと匂いを嗅ぐメスのメガニウムは、荒い息のヤトウモリに問い掛ける。

「私のテリトリーには危ないから入っちゃいけないって大人から教わらなかった? 特にこの春の季節に」

 元より返答など期待していない彼女は、獲物の首筋をその分厚い舌で舐め上げる。恐怖で凝り固まった彼の喉からひり出された高めの声は、彼女の大好物。
 口角を上げた彼女は心底嬉しそうに、彼の耳元で続ける。

「それとも番の子がいるのに私に襲われたかったの? ……いけない子」

 彼女が嗅ぎ取ったのは、彼の身体から漂う同種のメスの匂い。その強さからして、親密な関係である事は容易に想像できる。
 何の肯定も否定もしないまま、ヤトウモリはただ身体を震わせる。彼が目尻ににじませた涙をつるで拭ってやると、少しばかり落ち着いたかのように見えた。

「うぁッ……!?」

 身体に掛かる寄生木の根から唐突に体力を吸い取られ、自らが囚われの身である事をヤトウモリは思い出す。
 再び震えだした哀れな獲物の様子に、彼女は身体がじんわりと火照り始めるのを感じる。だが彼女の目的は別にある。獲物が恐怖に慄く様を楽しむのは、あくまでもそれを引き立たせる為のスパイスでしかない。
 彼の首筋から胸、腹へと舌で舐め下ろす。そのまま脚まで向かわせて、また腹まで。その合間合間に、寄生木は彼の意識を蝕む。

「んっ……はぁっ……」
「ふふっ……」

 恐怖が先行していたヤトウモリも、それが繰り返される毎に別の感覚を覚え始める。
 徐々に命を削られていく苦しみさえも、身体を舐め回す彼女の愛撫で次第に快楽へと変わっていく。やがて獲物の股ぐらから顔を覗かせ始めたものに気づいて、彼女は身体から顔を放して舌を舐めずった。
 開きかけの局部の溝から、頭先だけを露出した彼の可愛らしい薄桃色の雄。元よりこれが狙いである。
 雄の根本に舌先を合わせ、先端に向かって沿うようにねっとりと舐める。それだけでもヤトウモリは寄生木で縛られた身体をよじらせた。その雄が育っていくにつれて窮屈そうに押しのけられていく溝の両脇を、彼女は蔓を差し込んで無理矢理にも開かせる。遮るものが無くなり、雄は大きさを増していく。

「体の割には随分と大きいのね。これで彼女をいい声で鳴かせてたりするの……?」

 問いかけるメガニウムの顔は感心したような、それでいて心底楽しそうに笑う。彼女は分かった上でわざとらしく訊いている。案の定ヤトウモリは首を横に振って返答するのを見て、彼女はもたげていた首を下げて雄に顔を近づける。

「なら、私が頂いちゃいましょうか。きみの初めて」
「ひぃあ……っ」

 メガニウムの開いた口に、ヤトウモリの雄が飲み込まれた。
 温かく湿った彼女の口内で舌が踊るだけで、彼は足の指をひたすら開閉させる。柔らかな口内の頬肉と分厚い舌が雄を嬲る感覚に、ヤトウモリは早くも達してしまいそうになるのを堪える。往生際が悪いと言わんばかりに、彼女は少しばかり吸う力も加えていく。より密着した温かな肉の感触と、奥へと引き込まれる感覚が雄を更に責め立てる。とどめを刺すように、寄生木が彼から生命力を吸い出す。ちっぽけな彼の抵抗など、もう意味をなさない。
 ヤトウモリが急に体をこわばらせたと思うと、止めていたであろう息を大きく吸う。跳ねた雄から口内に勢い良く吐き出された白濁を、メガニウムは何食わぬ顔でそのまま喉を通していく。
 ひとしきり吐き出した雄をしばらく口の中で転がしてから、メガニウムは口内から解放する。身体を大きく震わせて、ひたすら謝罪の言葉を吐き続けるヤトウモリ。それでも雄はまだまだ萎える様子は無い。

「ごめんなさい……ひっ……ごめんなさい……」
「どうして謝るの? 私は嬉しいのよ、きみの雄はこんなにも私を求めてくれてて」
「ち、ちがっ……」
「何が違うの? たくさん出してくれたじゃない。私の口に」

 彼女の声は楽しげで、それでいて言葉は彼を一歩一歩追い詰める。
 目尻に涙を浮かべながら咽ぶ獲物を見て愛でるのは、彼女にとってとても美味しい前菜。特に可愛げのある若い雄は大好物だった。
 最近は噂を聞いた物好きな雄が数匹寄ってくるが、大抵彼女の食指を動かすには程遠い雄ばかり。こんなにも満足できそうな獲物には有り付けないだけに、彼女はじっくりと味わう事を楽しんでいた。


 彼女はすっと首をもたげると、彼の顔に自らの顔を近づける。何をされるのかと身体を強張らせたヤトウモリは、できる限り顔を遠ざけようと顔を横に向ける。
 そんな微かな抵抗も虚しく、彼女は彼の口元に舌を這わせる。ヤトウモリは声を出そうとしてしまいそうになるが堪えた。開けた途端にその舌を差し込まれそうで、気が気では無い。
 彼女も無理に開けるつもりはなく、閉じきった口の隙間に沿って舌を動かすだけ。ヤトウモリは彼女が何をしようとしているのか分からなかったが、とにかく口を閉じている事に集中していた。
 彼女が不意に笑みを浮かべる。

「うっぁ……むぐっぅ!?」

 ヤトウモリは身体に走った奇妙な刺激に、思わず声を出してしまった。
 開いた口に差しこまれた彼女の舌が口内を占領する。喉を通して鼻腔を刺激する草花の香りに、彼は口を閉じようと抵抗する気力を奪われる。
 細い舌をなぞり、その下を潜らせて小さな歯の裏を辿り、舌根をくすぐる。彼女の舌先が口内を器用に泳いでいく度に、ヤトウモリは何も考えられなくなっていく。
 彼女の舌に弄ばれている合間にも、奇妙な刺激がヤトウモリに声を上げさせる。その刺激は彼女が雄を触ったときのものでも、口吸いからくるものでもない。
 やがてヤトウモリが身体を強く震わせたのを見て、彼女は哀れな獲物の口をようやく解放した。

「ふふ。もうすっかり寄生木の虜ね。それだけで達しちゃうなんて」
「……え?」

 ヤトウモリが感じた奇妙な刺激は、寄生木が生命力を吸い取る時の苦しみ。いつの間にか彼は彼女の愛撫無しでも、それを性感として感じていた。
 嫌が応にもそれを突きつけるように、ヤトウモリの灰色の腹には白く濁った斑点模様が出来上がっている。

「そ、そんな……なんで……」
「恥ずかしがることないのよ。みんなそうだったからね」

 メガニウムはヤトウモリの腹についたそれを綺麗に舐めとってから、彼の雄がまだそそり立ったままである事を確認する。小さい体でありながら意外にも生命力の逞しい今回の獲物に、彼女も満足げに舌舐めずり。まだまだへばってもらっては困る。再びギラついた彼女の視線はそう語っていた。
 メガニウムはその場で身体を反転させると、その豊満な臀部をヤトウモリに向ける。そしてその谷間に見える、秘所も彼に見せつける。

「さてと………そろそろ、ね?」

 しとどに濡れているその箇所を見せられて、獲物はこれから何をするのかを察して首を横に振り始める。もう一度彼女は身を反転させて自らの股下にヤトウモリを迎え入れると、濡れそぼったその秘所を雄に押し付ける。温かくしっとりとした感触に、獲物は小さく声を上げた。しかし彼女はまだそこへ入れる気はないらしく、そのまま前後に身体を揺さぶり始める。ぬちぬちと粘着質な水音と、獲物が細い声を漏らす。寄生木が動き出す時には、それとは一転して堪えきれずに一際大きな声を上げる。
 獲物が上げる緩急様々な嬌声を聞きながら、彼女は体を動かして淡く息を吐く。上気した顔で股下に収まっている哀れな獲物に微笑みかけるが、それは恐怖を与えこそすれ、安心感など与えはしない。なにせ彼女の送る視線は、暇を持て余した時の丁度よい退屈しのぎの玩具に向ける、それでしかないのだから。
 秘所が獲物の雄を擦るたびに、さらなる刺激を求めて彼女はより強く腰を押し付けていく。豊満な肉付きの身体がヤトウモリに密着して、より強い雌の香りを擦り付けていく。合わせて雄への刺激、快楽と化した寄生木の搾取。獲物はただ息を荒げ、押し込められた股下で身を悶えさせ、彼女が望む声を上げる。
 彼女もいつまでもそうしているはずもなく。ぬめりを増したヤトウモリの雄は、押し付けた勢いをそのままに彼女の奥深くへと入り込む。

「ひぃああっ……!」

 ヤトウモリは叫んだ。
 熱く濡れそぼった彼女の中はより甘美で、気が狂いそうな程に柔く包み込んでくるその感触に、ヤトウモリはただひたすらに首を横に振る。動きを止めてうっとりとその様子を見てから、彼女は合図も無く再び動き出す。

「あっ、ひぐっ……やだっ……ああぅっ……!」
「んっ……可愛い声……もっと聞かせて?」

 口の中で囚われていた時とは違う無数の凹凸が包み込み、締め付け、扱き上げる彼女の中の動きに、ヤトウモリは時折嗚咽を混ぜた嬌声を上げる。こうして獲物が上げる哀れな声が彼女を更に興奮させていく。
 もっと聞きたい、もっと善がらせたい。彼女はただひたすらに自身の欲に従って、快楽を求め続ける。獲物も次第に恐怖の上から塗りつぶすように快感が追い上げてくる。今までに感じたことのない快楽とめまぐるしく入れ変わる感情の奔流に、ヤトウモリは自分が何を考えているのか、何を言っているのかすら分からなくなっていく。

「いっ……あっ……! もうっ……」
「いいのよ……んっ。私もそろそろっ……はぁっ」

 限界を迎え始めた獲物の掠れた言葉に、彼女は最後に向けてより強く腰を打ち付けていく。彼女も高まった感情を抑える事無く、抑えていた声を惜しげもなく出し始める。声と声が重なり、森のなかに響き渡る。傍観者がくるかもしれないことも気にせず、彼女はただただ高まるところまで上り詰める。先ほどまで鳴りを潜めていた寄生木も、搾取の刺激を獲物へと送り込む。
 獲物の雄が強く脈打ち出した事を感じた彼女は、放り出していた自らの蔓で獲物の首筋を撫で上げる。そして耳元へと囁いた。

「……いただきます」

 獲物の身体が強く跳ね上がる。首筋に打ち込まれた蔦の先から生命力を搾取される感覚がヤトウモリを襲った。寄生木の比ではない強烈なその刺激が、雄を強く締め付ける彼女の中が、獲物を絶頂へと導いた。雄は脈打ち、彼女の中へと滾りを放つ。ヤトウモリはただひたすらに叫んだ。目は見開かれているはずなのに、真っ白に溶け出す視界。叫び声を挙げられなくなって漸く、獲物は彼女に『ギガドレイン』をされたのだと理解する。
 飛んでいく意識の切れ際に、獲物は彼女の恍惚とした笑みを見る。

「うあぁっ……!」

 薄れていった意識を急激に戻され、ヤトウモリは声を上げる。意識を保てないほどに生命力を彼女に奪われたはずだった。それがどうしてか意識を取り戻すどころか、先ほどまで疲れも一切ない事に、獲物はただ困惑するしかない。ヤトウモリは彼女に『いやしのはどう』を掛けられたことを知らない。

「もっときみの、食べさせて?」

 彼女の中が蠕動し、獲物の雄から吐き出されたものを再び欲し始める。寄生木の搾取もそれに加わり、獲物は鳴く。
 日が暮れるまで、ヤトウモリの嬌声は縄張り一帯に響き渡っていた。



「ごちそうさま」

 声を上げなくなったヤトウモリを見下ろして、彼女はいつものようにそうぽつりと呟いた。
 メガニウムは彼の上から退くと、ちゅぷりと小さな水音がして繋がりが解ける。いつの間にか寄生木は彼の身体から消え去り、残るのは彼の下半身についた行為の跡と頬に伝ったであろう涙の跡のみ。
 その状態を見ながら彼女はこれまでの彼の反応を思い出して、思わず口元を吊り上げる。怯える表情も刺激を与えるたびに上げる声もその反応も、彼女にとって久々に満足のいくものだった。次に彼ほどの獲物が見つかるかどうか。彼女はそれを考えてじっと彼の上下する灰色の腹部を眺める。やがて答えが出たのか、彼女はつるを伸ばして彼の身体を持ち上げる。普段はこんなことなど彼女はしないはずだった。食事が終わればそのまま捨て置いて、気付けばいなくなっている。その繰り返しのはずだった。
 彼女に気に入られてしまったヤトウモリは、そのまま彼女のねぐらへと運ばれていく。
 彼女の食事はまだ終わりそうにない。



あとがき



投票数27票のうち3票をいただいて、3位タイとなりました。作者はウルラでした。
数ある力作の中からこの作品に投票してくださり、ありがとうございます。

久々の大会への参加でしたが、テーマが発表されてから話の大筋が自然と浮かんできて、プロットが出来上がるまでは本当に早かったです。
なお本編の執筆速度は……(お察し下さい)

テーマが「しょく」だったので、食べる、生殖、植物で「しょく」を幾つか入れ込みました。
他にももしかすると、意図していなかったところにあるかもしれません。

メガニウムを森の奥で獲物を待つ捕食者として選択したのは、割と簡単な理由です。
じわじわと体力を奪われるのが逆に快感になってしまう様子とか描きたいと思っていたので、寄生木覚えてドレイン技覚えてるポケモンいないかと探していたら、メガニウムに白羽の矢が立ちました。他にいないわけではなかったんですが、ピンと来たのと金銀VCも丁度発売される頃だろうと考えて決定。
ヤトウモリは、その種族柄オスの立場が弱そうで従順そうだなと思ったのと、メガニウムに対してタイプ有利なのに手も足も出ないとか、体格差があって為す術もなく組み敷かれる感じのイメージとか、諸々の理由で選択。

短期間での執筆が久しいのもあり色々と悩んでああじゃないこうじゃないしていましたが、結果として楽しく書けた作品になりました。
また機会と気力があれば参加したいです。

以下、投票して下さった方への返信になります。


お名前:

コメントはありません。 Comments/ショクチュウショクブツ ?


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2017-09-25 (月) 21:48:10
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.