第三回帰ってきた変態選手権投稿作
6位・6票獲得
※官能表現・ほのぼのレイプ・異種カップリング表現有り。
■シアと海の宝石■
カツン、カツン、とあたしの爪先から乾いた音が立ち上がる。
それは腕へと振動が伝わって方から音が放出されて、洞窟の壁へとぶつかって乱反響が響き渡った。その音を鳴らすのはあたしだけでは無い。
隣からも、後ろからも、同じ音を鳴らすため同じ行動を取る者が沢山いた。
天と地を連なる岩の洞窟はあたしたちの住処。そしてあたしたちのごはんも洞窟から出てくる。
硬い岩だけの壁を自慢の鋭い爪で削っていくうちに、それはあたしの身長と同じ大きさの穴となった。
やがて─────
「あっ」
あたしの爪先に、洞窟の岩と別の硬さの物が当たった。
その振動を頼りに岩と別物の周りを掘り進めていると、ゴロリ、と一つの塊があたしの足元へ転がった。
「パパー、あったよ!」
両手で持てるくらいの大きさのソレはつるつるとしていてずっしりと重い。
それを掴んだまま、頭の上へ持ち上げ上半身を左側に回して、後ろで同じ作業をしていた父へ向けた。
「おおシア、こっちも相当見つかったぞ」
父だけでなく、母や姉や兄、そして祖父たちの足元に同じ形をしたモノが緑や青や赤と色とりどりに積み上がっていた。
輝く『タマ』は、あたしたちにとって重要な食料だ。
本来は宝石を食料にするあたしたちヤミラミ一族ではあるが、宝石がめったに採れないこの住まいではタマを変わりに食べるしかないのだ。
いつも取れるのは、あおタマべにタマみどりタマ。時々かけらや化石も出てくるけど、メインはタマ。
しらタマはたまーに採れて、こんごうダマはあたしが生まれてから1個しか採れていない。
こんごうダマの味は、今でも忘れなれない。
かたーい外側をギザギザの歯で噛み砕き、またもやかたーいカケラをゴリゴリ咀嚼すれば
爽快感が口いっぱいに広がって、口から胃から全てがスッキリした。
「あーぁ。またこんごうダマ食べたいなー」
べにタマを齧りながら、あたしはポツリと呟いた。
「こんごうダマ? 無理無理あれはめったに採れないんだし」
採れたタマを囲うように座っているあたしたち家族のうち、あたしの隣にいる姉が呆れるように言った。
「こんごうダマかぁ。あれも良かったが、父さんは『シンジュ』の方が美味いと思ったなぁ」
シンジュ?
と、あたしが鸚鵡返しする前に祖父がうんうんと父に相槌を打った。
「シンジュは美味かったなぁ」
「えぇ美味しかったですわねぇ」
それに母が続き
「ねー」
「うんうん」
姉と兄が続いた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って、シンジュって何!?」
食べかけのべにタマを右腕に握り、開いた左手を隣の姉の腕へと置いてあたしは皆に何の事かと問い詰めた。
「あぁ、シアは食べたこと無いか」
父が今更思い出したと言ったかのようにあたしへ言葉を向けた。
「昔、な。シアが生まれる前に海が大荒れになってな、この洞窟も浸水してしまったんだよ。
水が引いた後、シンジュが取り残されていてな。海から流れてきたんだろう」
祖父がニコニコと笑って思い出をあたしに語り始めた。
シンジュ。
それは黒くて艶やかでちょっと歪んだ楕円をしていてヒラヒラとした何かに包まれていたと言う。
齧れば今までに無い柔らかさと染み出てくる、とろりとした液。
祖父も父も母も姉も兄も、皆それを食べ、それの味を忘れられないと言う。
「何よソレ、ずるい!」
べにタマを掴んだ右腕を上下に振り回しながらあたしは皆が知ってあたしが知らないそのシンジュの味に怒りをぶつけた。
「ずるいも何も、アンタ生まれてないんだから」
「む……」
姉が呆れた顔であたしを見るので、あたしは何も言い返せなくなり、右腕をゆっくりと下げてただ黙った。
◇
シンジュは海から来たと言う。
なら海へ行けばシンジュはあるのかもしれない。
そう思い立ち、あたしは住処からこっそり抜け出して外へ続く洞穴へと身体を覗かせた。
暗い洞窟から外へ続く、ホエルコが入れそうなくらい大きな洞穴へ身を乗り出すと、しょっぱい風があたしの鼻を擽った。
──洞窟の外は海。
とおーーくに見える海の平らはほんの少しだけ弓形になっていて、その上をペリッパーたちが飛びかっていた。
海の中には、水のポケモンたちがそれぞれバラバラに泳いでいたり、群を組んで規則正しく泳いでいたりしている。
あ、あの群は前にも何度か見たことがある。ここからだと遠くてよく見えないけど。
過去に数回は海を覗きに来たことはあるけど、ヤミラミ族は泳ぎが上手くないので気をつけなさいと母に警告されて終わった。
洞穴からずっと下の海を見れば、波で削られたような鋭く尖った岩が所々海の中から上へと連なっていた。
それはあたしの爪よりも鋭そうで、一瞬身を強張らせて無意識に足を後ろへとやった。
それがいけなかった。
「あ」
瞬時に私を包む浮遊感。
何が起こったのか分からないけど、目の前の光景がズンズンと下へ下へと映る事で理解した。
そう、あたしは落ちた。
海風に晒されていた洞穴の岩は、思ったよりも脆くてお世辞にも軽いと言えないあたしの体重により簡単に崩れたのだ。
「──────!!!! …………!!」
叫び声も上げられずに身体は海面へと叩きつけられた。
瞬時に身体を駆け巡る鈍痛。思ったよりも海面は硬くて、もしかしたらこのまま浮かんでいられるかしら? と思ったのも甘く、あたしの身体は簡単に海の中へ沈んだ。
あ、死ぬのかな。あたし。シンジュも食べられないまま。
口から喉へ肺と胃へと入り込んでくる海水を飲み込みながら悠著にそんな事を考えていた。海水は、思いの外苦いのね。
宝石の瞳でふっと海面へ顔を上げると太陽の光が乱反射してキラキラと輝いて、まるで宝石箱のよう。
あぁ、海って宝石箱なんだ。
ならシンジュが海にあるのも納得。
意識を失う寸前、太陽を背に向けながらこっちに何かが向かって来るような影を見たけど、その直後あたしの意識は闇の中に落ちた。
◇
──明るい。
真っ暗な意識から、唐突にあたしは真っ白な光の中に投げ出された事に気がついた。
キラキラ光る宝石箱の中であたしは仰向けで横になっていた。
宝石が大好きなあたしには、宝石箱の中は格好の餌食だ。
寝転んだまま腕を伸ばして輝く宝石を一つもぎ取ろうとしたが、それは空振りに終わった。
あれ? 何で?
もう一度腕を振り上げても空振り。再度腕を振り上げてもまたも空振り。
そんな事を繰り返し腕がだるくなった頃───
「初めましてッ! 今日はッ! あ、大丈夫!?」
急に、あたしの目前に誰かが顔を覗かせた。
「…………きゃあああああああああああああ!!!!!!!」
叫ぶと同時に足を振り上げてソイツの顎を蹴り、あたしは大慌で上半身を起こし上げた。
「がッ!」
あたしが蹴り上げたソイツはくるくると横に円を描くように転がり、ぼちゃん、と水音を立てて小さな穴へ落ちていった。
乱れた呼吸を落ち着かせ、あたしはふとココは何処なのかと疑問を抱き、そっと周辺を見回った。
どうやらここは一つの小さな洞窟らしい。
あたしがあと五人いて寝転んでも余裕な程度の小さな洞窟。立つ事にも不自由はしない。
でも天井は違っていた。
透明で、屈折した太陽の光がキラキラと輝いて──そう、宝石箱の中のようにこの洞窟を照らしていた。
「……あ」
理解した。
この天井は全てこんごうダマで出来ている事に。
凄い、凄い!
「……もぉ~、酷いなぁいきなり蹴り上げてくる何てぇ」
パチャッと小さな水音が響き、あたしはアイツが落ちた穴の方へと視線を向けると、そこにはやっぱりあたしがさっき蹴り落としたソイツがいた。
横になった楕円の身体は黒と青の縞々模様で、水でツヤツヤしていた。
縞の青い部分は天井から注ぐ光で輝き、空気が動くとそれと同じくうねって色が青から紫へと変わった。
身体には同じ色のヒラヒラした飾りをまとっている。正面から見たら、アゲハントに良く似ているかも。
洞窟内に乗りあがり、お腹の下に着かれた地面もうっすらと海水で湿っている。
なるほど、あの水で滑りながら移動するわけだ。あれを利用すれば、遅いとは言えあたしの攻撃をかわせるわ。
大きな飾りとお腹についた小さな飾りで覆った身体の横に着いた目で、ヤツはあたしを見た。
「君を助けたのは僕なんだよ? 礼くらい言ってもいいんじゃないかい? 挨拶も出来ないしさぁ……」
「……アンタ、名前何?」
「その前に挨拶は?」
……こんな状況で初めまして今日は何か言えるモノじゃない。でもどうやら、言わなければ先に進めさせてくれそうにないのであたしは仕方なく
「……初めまして」
と言うしかなかった。
するとソイツはパァッと顔を明るくし、そうそう、うんうんと一人で納得していた。
「……だ、だからぁ! アンタ何!?」
イライラしながらあたしが吼えると、ソイツはあっさりと
「あぁ。僕シンジュ」
と、返したのだった。
◇
その瞬間、あたしは屈ませた足をバネにし、文字通り弾き飛んでシンジュに爪を叩き込もうとした。
だけど悲しいかな。あたしは足が遅い。
渾身混めたお得意のシャドークローはあっけなくかわされ、目標を失ったあたしは頭から転び前転、背を地へ叩きつけてしまった。
ぐるりと回った視界に脳がついていかず、あたしはしばし呆然としていた。
「おぉ~……い、大丈夫ぅ?」
ひょこり、とシンジュがあたしの顔を頭側から伺った。
「……あ、あ! アンタ、シンジュでしょ!」
動けないまま、あたしは目前のシンジュへと名を聞くと彼はこくりと頷いた。
「そうだけど? それ僕がさっき言ったし」
「あ、あたしは! シンジュ!! 食べるの!!!」
「……は?」
シンジュは何を言ってるの、と続けて呆れてあたしから一歩後ろへ離れ、あたしはくるりと身体を起き上がらせ、爪を伸ばして闇の念をこめた。
「パパとおじーちゃんが言っていたのよ! 昔海から運ばれてきたシンジュを食べたって! 黒くて楕円で! 宝石の名前よ!」
振り下ろした爪はまたもや簡単にかわされる。シンジュはふぅ、とため息をついて軽がるとかわすのだから腹が立つ。
「あー……それ別のシン……」
そう言い掛けて、シンジュの尖った口がニヤッと歪んだのをあたしは見落としていた。
「君、僕を食べたいの?」
立ち止まり、ニコニコと笑みをあたしに向けるシンジュ。
何故かその笑顔に、あたしは肩に寒気を感じたがそれは海水のせいと思った。
「そうよ! 家族みんなはシンジュを食べたのにあたしだけ!」
「そうかぁ、食べたいのかぁ。そいや、君名前は?」
「ヤミラミのシア!」
「そう、シアか。可愛いね」
可愛いと言われ、あたしは、ぐ、と胸を詰まらせた。
「かっ……可愛いとか、な、な、何よぉ!」
いつも言われるのはお転婆だ、とかもっとおしとやかになれ、とかばかりであたしを可愛いと言うのは祖父くらい。
あぁ何で胸がドキドキするの。こいつはただのごはんなのに。
「じゃ……食べさせてあげるよ!!」
シンジュを滑らせる為の海水が瞬時に湧き上がり、まるで触手の様に伸びてあたしへとぶつかった。
「きゃっ」
頭から海水を被り、あたしの身体はびしょびしょになる。目に海水が触れて痛い。
シンジュへ怒鳴るより前に目を腕で拭おうとしたが、次に突風があたしの胸に突撃し、その衝撃で今度は背中からあたしは大の字になって倒れた。
何? 何なの? 何が起こったのかもう分からない。
呆然とこんごうダマの天井を見上げていたら。急に身体が寒くなった。
海水による寒さや気のせいじゃない。
実際に、あたしの身体は冷たい何かに触れていたのだから。
ぎしり、と軋む両腕と両足。動かそうとしても決して動くことが無い。
吐く息は水分が凍り、白く空気に浮かび、溶けた。
数秒程呆けて、自分が置かれた状況にジワジワと理解し、サァッと頭が冷たくなった。 それは物理的な冷たさのせいじゃなかった。
「なっ……に、これーーーーーッッッ!!」
洞窟とこんごうダマの天井が、あたしの叫び声でビリビリ揺れた。
だけどシンジュは怯まずにあたしの右横へと身体を滑らせて、あたしをジロジロと眺めた。
なまじ目が顔の横に付いているもんだから、軽く身体を揺らしながら眺めるその姿に腹が立つ。
「ちょっと! あたしに何するのよ!!」
足をバタつかせたくても、腕を振り回したくても、それは叶わなかった。
両腕は肘から先が、両足はくるぶしから先、全てが凍っていたのだから。
かけられた海水、そして後ろから倒れたものだから、地面に撒き散った海水ごと身体を固めてしまっていた。
「ん? だって僕を食べたいんでしょ、キミ。あ、シアか。ね、シア?」
「食べるったってこの状況でどう食べろって言うのよ!!」
「おぉ怖い。その剥き出した牙しまいなよ。可愛い顔なのに勿体無い」
まただ。何でコイツはあたしを可愛いと言うのよ。
おかげで胸が苦しくて仕方ないし、顔も熱い。この熱で氷、溶けないかしら。
何も言い返せずに、口を
自分を食べさせてあげる、とか言っていたけどコイツはどうやって自分をあたしに食べさせるつもりかしら。
自殺でもするように見える性格でもないし、そもそもあたしを拘束したら口に含ませる事も出来ないし。
辛うじて動く頭部を揺らし、うーんうーんと考えていたら、不意にシンジュの姿が視界から消えた。
あら? と、思ったのもつかの間。
次の瞬間、あたしの股にヒヤッとした何かが触れた。
「…………ッッ!? な、何ーーー!?」
何何何何何ッッ!!?
反射的に頭を動かし、あたしの股へと視線を向けると、そこにはシンジュがヒラヒラとした黒い飾りであたしの股を撫でているのが見えた。
飾りは水分を含んでいるようで、撫でた跡がうっすら塗れている感覚が取れた。
ヒラヒラの先端があたしの股の真ん中を下から上へ上から下へ、ゆっくり撫でるもんだからくすぐったくて仕方ないのに、ガッチリと固められた脚は動くことも無く、おっぴろげだわ。
「ちょ、やだっ。くすぐっひゃ、ははははッんッ」
あれ?
何か分からないけど、あれ?
「お、効いて来たかな~」
シンジュの嬉しそうな声が、あたしのギザギザの耳の中へと入って脳に響く。
その穏やかな衝撃があたしの心臓の鼓動を高める。
「気がつかなかった? 僕が使った技」
「わ……技、ぁ?」
息を大きく吐きながら、あたしは呟く。
「そ、シア女の子だし」
頭が重い。胸も中が痛くて呼吸をする喉も苦しい。
でも股だけがやたらと熱くて、じんじんする。何これ。
「ほら見てごらん」
シンジュがヒラヒラの飾りを上げて、あたしに見るよう指示するからそこは大人しく従った。
ちょっと白く濁った糸が、飾りの先端とあたしの股と繋がっていた。
一瞬、コイツが糸を出したのかと思ったけど、それはあたしの股から伸びているのを知った。
「ちょっと弄っただけなのに、いやぁ我ながら自分の才能が怖いよ」
ニッコニコしながらシンジュは嬉しそうに言う。
「な……何、してるの?」
「ん? 準備。いきなりだと苦しいしねッ」
ちょっとだけ身体を捻り、目をあたしに向けてパチリと閉じて開くシンジュ。
腹立だしいことこの上ないけど、動くことも出来ないし、思考もうまく巡らない。
あたしはただ、シンジュのされるがままであるしかなかった。
「──ひゃぁッ!?」
ビクン、と身体が跳ねた。身体を拘束されているからそこまで大きく動かなかったけど。
股の真ん中に、シンジュの飾りとはまた別のぬめった何かが這った。
重くてうまく動かない頭だけど、この時ばかりは素早く動いて、見た。
シンジュの顔が、あたしの股に突っ込まれていた。
ひくり、とあたしの顔が引きつった。
コイツは何を考えているのか、何故股に顔を突っ込んでいるのか、目的とは何か、あたしに食べさせるとは何かとひたすら脳の中でグルグルと回って、言葉が出なかった。
だけども、すぐにその考えは蹴散らされた。
「ひ、やァッ!!」
また身体を跳ね飛ばせ、あたしは言い知れも無い感覚に叫んだ。
股の真ん中に何をされているのか、何となく予想はついていた。でも認めたくない。認めたくない認めたくない認めたくない!
だって!! おかしいでしょ!?
「んー、随分狭いね」
股の真ん中、おしっこをする場所を舐めるなんて!!??
いや、おしっこをする場所より少し下かもしれない。じゃぁおしりの穴かと言えばそれも違う。
あたしの股には、また別の穴があるの?
「うっんッ」
ぞわぞわと悪寒が背中を通る。あたしが今まで意識したことも無かったその場所を、シンジュは舌で舐め上げ、突いて、押し込むのを繰り返す。
悪寒が走る背と対照的に、舐められている場所はどんどん熱くなって行く。
穴にシンジュの舌が入り込み、あたしは思わず声を上げたが、それがやたらと熱っぽい。
「イイねぇその声。可愛いな」
シンジュには好評な熱のある声を、あたしは無意識にどんどん出す。
「んはッ、あ、あぁッ!」
熱い、股の中から溶けてしまいそうなくらいに熱い。
その証拠に、穴からトロトロと熱い液体が垂れ流れ、おしりの間を通って氷の上へと落ちる感覚を見た。
でも溶けていると思っているのは錯覚で、あたしの身体は無事。別の意味でちっとも無事じゃないけど。
急に股に感じた締め付けの感覚が無くなる。答えは簡単で、シンジュが穴から舌を抜き去ったのだ。
と、すぐにあたしの視界は光を遮られた。
ヌルッとした何かがあたしの股から頭のてっぺんまでを撫でた。うわ、顔が生臭い。
「ね、シアもしてみてよ」
シンジュの声があたしの頭の後ろから聞こえる。横目で周りを確かめると、彼はあたしの身体に被さる形で乗りあがっていた。
ヒラヒラの飾りを腕のあるポケモンのように使い、身体を支えていた。器用なものね。
首を後ろに傾けても彼の顔を見るまでは出来なかった。けどあたしの顎辺りの視界に何かが見えたので、今度はそっちへと視線を向けた。
……なんだろ、これ。
シンジュのお腹の後ろと尻尾の付け根の真ん中で、お腹の飾りの間から棒のような物が一本、飛び出ている。
赤黒いソレはシンジュの身体と同じようにしっとり湿っていて、時々ピクンと小さく動く。
あたしには無いものだ。一体コレ何かしら。
「ねー。それ、舐めてよ」
舐める? 無意識に呟くとシンジュはうんうんと答えた。
「舌先でさ、ペロペロって……あ、齧っちゃダメだからね」
ふむ、ともかく舐めてやろうじゃないの。でも齧るのはダメとは残念ね。ま、どうせ後で全部食べてしまうのだから問題ないわ。これはいわゆる『味見』ね。
首を軽く持ち上げ、舌を伸ばしてその棒の先端を軽く舐めた。あ、何か苦しょっぱい。さっき飲み込んだ海水の味に似ているかも。
次はもっと大きく、舌全体を棒に触れてズルリと引き下げてみると、シンジュが「う」と呻いた。
ありゃ、もしかして棒を舐め削ってしまったかしら? でも舐めろって言ったのは彼だもんね。しーらない。
棒の味は変わらず苦しょっぱいけど、舐めるたびに棒がピクピク動くのが面白い。
もっと味わってみたいと思って、シンジュの言った齧ってはダメを無視してあたしは棒を口に含み、それの先端が喉奥に届いて──
「あ、も、出るぅ!!」
シンジュのやたら艶った声が上がると同時に、棒がビクンと大きく震えて、あたしの喉奥に生温い液体が放出された。
!!!??? な、何これッ!?
喉から胃の中へ、液体が無理矢理流れてくるから、あたしは苦しくて思わず顔を振って棒を外に出した。おえっ。喉に引っかかった。
棒は排出する液体は制御できないようで、ぶるんぶるん震えながら液をあたしの顔と身体に撒き散らす。少量は彼のお腹にも飛び散っていたのが見えた。
液体は白濁で硬いヌメリをしていた。あたしの顔についた液はゆっくりと顔から顎へ、顎から首へ、そしてどろっと地の氷に垂れていった。それはお腹や胸の宝石に付着したのも同じだった。
「っあー……ふぅー……」
シンジュが大きく息を吐く。何気にその声は実に実に満足げだわ。
「ん、ははっ。顔ベタベタだねぇ」
そう言いつつ、シンジュは後ろに滑ってあたしの顔と同じ位置に自分の顔を持ってきては、ヒラヒラの飾りであたしの顔についた液体を拭った。
その感覚、シンジュに触れられるのは、何故か心地良い。棒を舐めている時には治まってた心臓のドキドキはまた再開するし、吐き出す息は熱いし、何だろ。
じっ……とあたしと視線を合わせるシンジュの小さな黒い目。逸らしたくても彼のヒラヒラの飾りがあたしの両頬を支えているので、それは無理ね。
……と、いきなりシンジュが顔を突き出し、あたしの口に自分の口を付けた。
あれ、これって……キス、だっけ?
好きな者同士で交わす、好意を示す行動。じゃぁ、シンジュはあたしが好きで、あたしもシンジュが 好き?
どうだったっけ。出会ったばかりだし脅かされるは拘束させるはで好意も何も有ったものじゃない。なのに、なんで。
こんなにドキドキするのかしら。
◇
にゅる、とシンジュの舌があたしの口に入った。牙の裏っ側を舐められて、次にあたしの舌の真ん中を舐められた。
「ん、ぁ」
言い様も無い感覚に、思わず声を漏らした。つるつるしたシンジュの舌と、石を食べる為にざらざらしたあたしの舌とは互いに絡み合うのに良いみたい。
あたしの舌をほじくるように、シンジュは自分の舌を擦り付けて来る。
その感覚に背中がゾクゾク寒くなる。さっきの悪寒とはまた違って、えっと、良寒? って言うのかしらこの場合。
もっと、もっとしていたい……! って時に、シンジュはあたしの口から舌を抜いた。あー……残念。
「んふふ、結構乗ってきてるじゃんキミも」
ペロリと自分の口周りを舐めながら、シンジュはニヤニヤと笑っている。見えないけどあたしの口周りもベタベタになっているかも。
ぽけーっとそんな事を考えていたら、シンジュが揺れて、あたしのあの穴の所に何かが押し当てられた。
舐められた時とは違う熱さで、何かしらとちょっと考えて直後思い出した。
あー……やっぱり。ほんの少し顔を股の方に向けると、シンジュのあの棒があたしの股にくっ付けられていた。
シンジュが軽く結えるのを繰り返し、棒を穴の入り口に擦り付けた。その感覚に、あたしのは股がキュッって固くなる。
これは拒絶か受容か分らない。多分、いけない事なんだろうけど。 でも。 ……でも?
でも、何? でも、…………欲しい、のかも。
息を大きく吸って、胸の宝石がチラッと見えたところで吐き出した時だった。
「……では、 召し上がれッ!!」
「──ひゃ、ぅあッああぁあッ!!!!??」
ズン、と股から脳天に押し込めまれる衝撃が流れ、あたしは叫んだ。
「お~、やっぱキツイ。でもこれがイイね」
シンジュの身体から伸びた棒が、あたしの股の穴に入れられて、彼の熱かあたしの熱かどっちか分らないけど、とにかくその熱さでそんな錯覚を見ていた。
ドッドッドッドと心臓の鼓動がさらに高まる。肺も火傷をしそうなくらい呼吸が熱い。顔も火照ってシンジュから見たら真っ赤になっているかもしれないし、景色も赤く見えないことも無い。薄いブルーの宝石の目は、赤いかもしれない。身体の宝石も全部赤いかも?
シンジュが腰を振ると、あたしの股が急激に熱くなって、中が溶け、溶け? あ、やっぱり溶けた感じは錯覚だわ。
ぐりゅぐりゅと液体が混ざり合う音は、紛れも無くあたしの股から発されていた。本来ならそんな音聞きたくも無いんだと思うけど、何故か今のあたしにとってはとても興奮する音だった。
「は、ぁッ、ンッ!」
舌の比にならないくらい熱くて大きい棒が出たり入ったりを繰り返す。水音はそのたびに粘り気を増し、あたしの思考は蕩けて行く。
「ひ、はぁっ、あんッ!」
股の穴の内側をシンジュの棒で擦られて、あたしは穴の壁はザラザラしている事を知ったけど、すぐにそれを忘れてしまう。
「あ、ひぁ、あんぁッは、あは、はああぁぁああ!!」
怖い、怖い怖い怖い怖い怖い!!!!
初めて味わうこの感覚、この状況、シンジュの事、全てが怖い!
あたしは泣いた。宝石の目から涙が出て、口からもよだれが垂れ流れて、でも泣くと言うよりも──
「んはっ……シアも気持ちイイんだね」
鳴いていた、のだ。
気持イイ? これ、が?
キツイ圧迫感に、火傷しそうなくらいな熱に、呼吸もままららず浅くて速いのを繰り返し、心臓も痛いのに。
なのに、どう、し、て。こん、な、に、も…………?
「……気持ち…………い、よぉ……」
のか。
もう分からない。
ただ今は、溺れていたかった。さっきみたいな海で溺れた苦しさと違う、この心地良さに。
「はっはっはっ……」
シンジュの様子が変わって、動かす速さを上げた。だけどあたしはその動きに、もっとと声を上げたけど
「は、はぁ! 出す、よ! …………うぅッ!」
その声は届かず、シンジュは最後に一回、大きく腰を打ちつけた。
「ひゃ、ぁあ、ぁあああーーーッッ!!!」
突如、あたしの穴の中に、熱い何かが注がれた。ドクドクと脈打ちながら、穴の中の奥──おなかの中に、熱いのがどんどんと入ってくる。
その感覚に何故かあたしは嬉しくなって、息を大きく吐いた後、また闇の中に身を沈めた。
◇
…………あ、れ?
身体がだるい。えっと……!!!!!
ガバッと上半身を起こし上げ、周りを見渡す。あぁやっぱりまだこの小さな洞窟に居るんだ。
はっとして両手足を確認すると、氷はあたしが気絶している間に溶けたのか何も無くて、氷が解けていなければ起き上がれる事も出来ないのに気がついたのは直後。
もしかして夢……だったりしたのかな? と、考えてみたけどこの身体のだるさに加えて、あたしの股に付着しているネバついた液体が、それを打ち砕いた。
あーぁ……アレは一体何だったのかしら。良く分らないし、でも、何か、ちょっと……。
顔が熱いわ。海水で冷まさなきゃ。
水辺に移り、腕を伸ばして広げた手の平で海水を掬おうとした。その時。
「きゃッ!!」
突然、水面が揺らめいてあたしの手の平の真下から水が立った。驚いてとっさに腕で顔を覆ったら、右隣から「ねへ」と誰かが呼んだ。
見たら、シンジュが海水に塗れて口に何かを銜えて居た。
「おひてたんら。ひょっとしんはいいひゃった」
起きてたんだ、ちょっと心配しちゃった、かしら? あたしが不審な目でシンジュを睨んでも彼は全く動じていない。
プッと空気を押し出す音を口から鳴らし、シンジュは加えていたものをあたしの膝の近くまで転がした。
コロコロ……コロン、と止まったソレ。
ちょっと歪んだ楕円の玉。色は黒くて、でも光の反射具合では濃い紫とグレーに輝いている。何だろうと無意識に掴むと、それはあたしの両手の平にすっぽりと納まる。
持ち上げて下から眺めてみたり、胸の位置まで下げて左右に動かしてみたりするけど、これが何なのか見当が付かない。
「シアなら食べれるよ。齧ってごらんよ」
シンジュが飾りをヒラヒラさせて促すので、あたしはちょっと迷った後に、口を大きく開いて、コレを前歯で少し齧った。
表面は硬い層で覆われていたけど、それを齧り切れば中身がトロリと口に入ってきた。牙の裏に纏わり付いたコレの欠片を舐め取って、喉奥へ追いやってからゴクンと飲むと、ちょっぴり苦く濃厚でそして甘い味が口から胃へ広まった。
「……美味しい」
思わず感想を言葉に出してしまうほどの美味に、あたしは夢中になってガツガツとソレを食べた。こんなはしたない姿、他人に見られたく無い筈だけど、それすら気にする余裕なんてなかった。
指に付着した中身のトロトロした液を舐め取って、ふとこれは何だろうかと疑問が沸いた。シンジュは知っているようだけど……?
「あぁ、それが真珠だよ」
へ?
「シアの、あー……おとーさんとおじーさん? が言っていたのね」
何てことかしら。家族皆が口々にしていたシンジュとは、これの事だったわけ?
「まぁそれは黒真珠……ってやつだけどね。本来は二枚貝の中に守られているんだけどね。ピンクパールとイエローパールなら結構見つかるんだけど、あ、良かったらそれも食べる?」
「……ねぇ」
「ん? なーに?」
「……アンタ、シンジュでしょ?」
「あぁそうだよ。名前がね。種族はネオラントだけど」
「……何で、黙っていた、の?」
わなわなと肩を震わすあたしに対し、ネオラントのシンジュは飾りを揺らし、ニコニコと答えた。
「まー僕もシンジュだし」
「違うじゃないの!!! も、もう! 帰る!!」
そう吐き捨てるが早く、あたしは体勢を立て直し跳ね飛んで海に入った。が。
やっぱりあたしは泳げなかった。
◇
「んも~。ムチャしない方が良いよ」
げほっ、げほっ、げっ。
胸まで海水に浸かり両腕で岩にしがみ付いて、肺に入った海水を空気と共に吐き出していると、海に入ったままシンジュがあたしの背を擦ってくれた。
横からあたしの顔を覗き込み、シンジュは言葉を続ける。
「帰るなら連れてってあげるよ。僕の尾びれ掴んでいれば良いから」
ニッコニコと笑うシンジュに対しあたしはふと気になることを尋ねた。
「……ねぇ」
「ん?」
「……何で、あたしを助けたの?」
「んー? だって誰でも海に突っ込む爆音を聞けばそっちみるでしょ? でもってそこに海の者じゃないのが溺れていれば助けちゃうものだよ。あぁここに引き上げたのは水面より近かったからね」
「じゃぁ、さ。何で……あの、あれ、し、した、の?」
多分あたしの顔は真っ赤だ。海に浸かっているから熱さはそこまで感じない。でもあたしが予想したシンジュの言葉を聴いたら、海の冷たさも役立たない予想もする。
「あーだってさ、シアは可愛いから」
あぁやっぱり。
予想のどっちが当たったのか、言うまでもない。両方よ。
「あれ? おかしいな。今はシアを骨抜きにする技使ってないんだけどね? 何でそんなに顔真っ赤な、のッぎゃわッ!」
やっとここであたしのお得意のシャドークローが、シンジュの顔に炸裂した。と言っても本気じゃない。
シンジュは慌ててあたしから離れ、左頬に出来た三本のギザギザしたキズをヒレで覆った。
「も~、酷いなぁ」
「ひ、酷いのはそっち!! あ、あんな事するなんて!」
ギャンギャンと吼えるあたしに対し、シンジュは何処吹く風と言う如く、ふーんと口を尖らせた。
「だって僕を食べたいって言ったじゃん」
「あれはシンジュをさっきのシンジュと間違えただけで!」
「うん、分ってたけどね」
はぁーーーーーーーー……もう、口答えするのは止めよう。彼には色々な意味で敵わないことを、あたしは悟った。
身体を後ろに傾け、火照った顔を冷ます意味で顔を鼻から上を残し、海面の下に沈めた。 口から小さく息を吐けば、ぷくぷくと泡が文字通り宝石の目の前で弾けた。
そんなあたしを優しげな視線で見つめるのはシンジュ。
「まぁ、僕も美味しかったけどね、君が♪」
どうやら"食べる"と言う行動は、口から胃へ物を入れること以外にも意味するよう? でもアレが、何故食べると言うか、それを理解するにはまだまだ時間が掛かりそうだった。あたしは家族の中で、一番生きている時間が短いのだから。
「またさ、食べたいのなら食べさせてあげるよ。家族が言っていたんならきっと食べたがるだろうしね」
その言葉に含ませた意を、あたしは読み取った。シンジュを食べたいのなら、そう言う事なんだから。
あたしは"シンジュ"が、間違いなく、好きだと言う事で──
しん、とした小さな洞穴。天井から降り注ぐこんごうダマを介した太陽の光が、海面を煌かせ反射した輝きがシンジュとあたしの身体の線に揺らめる。
揺らめきは空気とあたしたちの呼吸で形を変える。それが何とも幻想的。この洞穴は今宝石箱のように輝いていて、さながらあたしたちはその中の宝石のよう。
「……じゃぁ、もう一度」
シンジュを食べさせてくれる?
海の宝石は、あたしに笑みを見せ、海の中で煌いていた。
シアと海の宝石:了
そんなわけで両谷 哉でした。
元々は第4回短編大会用に書いていた話でしたが、文字数オーバーのためお蔵入り。
……の、はずでしたが今回の大会でめでたく(?)手直しを加えて出せる事となりました。
が、久々の官能小説にヤミラミとネオラントと言うあまりにも飛んだ組み合わせで
これは票を頂けるか?票無しでもしょうがないね、と不安でたまらなかったのですが
結果、6位6票とありがたい形となりました。投票してくださった方々に深くお礼申し上げます。
ちなみに舞台はシンオウ地方のこうてつじまと言う設定でした。
知らなかったなら仕方ないね( でも知らないからこその反応や仕草を楽しむのもそれはそれでありだと思うんです。 無垢な仔にいたずらが変態感満載だったので今回投票させていただきます! (2013/09/01(日) 04:32)
変態大会にしては変態度少ないかな?と思っていたのですがそう言っていただけて嬉しいです!
ネオラントとヤミラミのカップルは珍しいですね。幼いシアの可愛さに一票です。 (2013/09/01(日) 07:33)
シアは人間換算すると8歳程度でしょうか。幼すぎかもしれません(笑)
なかなか変わったカップリングですね^^楽しく読めました。 (2013/09/02(月) 01:51)
同じダンジョンに出るんですけど、思いつく方は相当少ないですかも。どうもですー。
たまにはマイナーな子もいいものです。とくにヤミラミは少ないので美味しく頂きました (2013/09/05(木) 21:20)
ヤミラミの♂はともかく♀は殆ど見かけませんでしたので、書いてみようと思い立ついいきっかけにもなりました。♀ヤミラミ増えて欲しいです。
シアがとってもかわいい!! (2013/09/06(金) 03:33)
ありがとうございます!
マイナーな組み合わせでしたがなかなか良いものでした。 シンジュの種族が種族名を出されるまで分からなかったのが悔しいw (2013/09/07(土) 22:19)
ネオラントの表現がなかなか難しくて…やはり最後まで分らなかった方がいらっしゃいましたか。
次回からは表現の仕方に精進いたします。
何かありましたら。