作者:リング
コイループ。ポケモンでない方のコイルが針金などひも状のものを、螺旋状や渦巻状に巻いたもののことを指すことから、『お客様が来る』→『お客様を満足させる』→『お客様がまた来たいと思う』→『お客様が来る』というスパイラルに見做したことにより、転じて商売繁盛祈願に用いられた祭りの総称である。
店舗とお客で、お客とお客で、商店街の入り口でレンタルできる数匹のコイルを交換し合い、お客様と交流を図るこの運動は、『客よ来い来い、コイループ』という掛け声と共にコイルが入ったボールを交換し合い、交換の音頭が終わったころにボールの中にレアコイルやジバコイルが入っていた者は、そのポケモンに対応したお守りが貰え、それを持っていれば一年間商売に不自由しなくなるという。
元は、ウソ替え神事と呼ばれる、ボールに入ったウソハチを交換し合う祭りの派生系で、ウソハチ族のいないカントーにその祭りが伝わった際に、ポケモンをコイルに変えて行われたものであった。前述の通り、元は商売繁盛のための催しであったのだが、『恋』という言葉があるおかげか、恋愛成就にも効果がある事にされ、若年層には元々のお祭りよりも人気を得ている祭りである。
最近で言えばジョウト地方にあるコガネの地下商店街でも行われ、アサギシティより鋼タイプのジムリーダーのミカンを呼び込んで、大々的にコイループのイベントが開かれたそうだ。ありふれたイベントかもしれないし、それ以降にも頻繁に行われた別のイベントが功を奏したおかげの発展なので、コイループだけの実績ではないかもしれないが。
しかし、ゲン担ぎというのは何事においても肝心な物。そういった事情は海を越えても変わりなく、最近ライモンシティの南端に出来たジョインアベニューでも、コイループによる興行の準備は着々と進んでいる。
ライモンジムの一室にて。
「ねぇ、ホミカちゃん」
そのコイループに広告塔となるのは、ライモンにジムを構える、トップモデル兼電気タイプのジムリーダーカミツレと、タチワキシティにジムを構える毒タイプのジムリーダーホミカだ。
「ん、なんだよ?」
「えっとね、貴方の作詞作曲してくれたこの曲なんだけれどね……」
バンドを兼業しているホミカは、今回ジョインアベニューの公式応援ソングの歌手として、カミツレとのコラボを依頼されており、現在は曲や歌詞の調整の真っ最中だ。
「とってもノリのいい曲で好きなんだけれど、この歌詞……」
『Join us! Let'hava ball! How wonderful Pay Forward!
なんて、素敵な 想いの連鎖!
コイルを抱いて、交換のループで
伝わる気持ち
想いを胸に抱いたら
浮足立つ心を押さえて、電磁浮遊は使用禁止さ きちんと受け止めて
自信があるなら、型を破って当たって砕けろ 頑丈も無視して!
真実の想いを伝えて、心をクロスフレイムだ!
C! O! I! L! 恋ループ!! HEY!!』
「って……これじゃコイルを本気で殺しにかかっているじゃない! 電磁浮遊禁止とか型破り地震とか!」
歌詞カードを指差しつつ、カミツレは悲痛な訴えをする。
「え、なんか浮き足立っちゃダメかなと思って……電磁浮遊とかそんな感じのイメージがあるからさー」
「型破りで『自信』とか、『地震』と掛けちゃだめよ……地面タイプに弱いコイル族がオノノクスやラムパルドそんなのにやられたら死にかねないもの……クロスフレイムも、レシラムの特性がターボブレイズだから死んじゃうわよ……流石にここまでの虐待ソングは……」
「まぁまぁまぁ、いいじゃないか。ここではコイルをハートに例えているんだ。自信をもって告白すれば、相手の心もキュンと来るってなぁ。商売繁盛祈願ももちろん大事だけれど、現代の奥手な紳士淑女には恋愛も大事だろ? 当たって砕けろって気持ちを電磁浮遊なんかに頼らない心意気で表すのさ」
「うーん……なるほど。私としてはコイルが苛められるところは、あまり見たくないんだけれどなぁ……ホミカちゃんはなんかコイルに恨みでもあったりしてね」
冗談めかして、カミツレは微笑み、再び歌詞をじっくりと読もうと思ったが。
「ギクッ」
ホミカがわざわざ声に出して動揺した。
「いや、ホミカちゃん。声に出す必要はないのよ」
「いやまぁ、あるんだよ。毒タイプ対策には鋼タイプというのが定石だけれどさ。タチワキから旅立ったり、ヒオウギとかからの相手は大概コイルを連れてきやがるし……そのせいで、こっち為すすべなくやられたりさー。こっちとしても初心者相手に地震を使うわけにもいかないし……悩みの種なんだよ。
全力でやって負けるならともかく、本気出せずに負けるのはな……」
「あー……なるほど。私も初心者相手に目覚めるパワーとか、カットロトムとかを使うわけにはいかないから、そこらへん悩みの種よねー。なるほど、そんな風にコイルに恨みがあったのね」
「まぁ、な。個人的な恨みを歌に込めるのもどうかとは思うけれど、スッキリまとまったからいいかなって、思ったんだ」
「じゃ、そういうことにしましょうかね。リアルでコイルを苛めちゃだめよ」
「わーってるつうの。ホミカもそこまで子供じゃねーし」
こんな様子で、ちょっとした作詞に関する意見を取り入れ、調整しながら二人は歌を完成させてゆく。ジョインアベニューのお披露目の日には、その新曲が披露されることで湧き上がる熱気は、アベニューに人が入りきらないほどの大盛況。困った事に、アベニューには入場制限をかけた上での開通式となった。
そして、公式応援ソングが流れるアベニューの中で行われたコイルの交換会も大成功。客同士だったり、お店とお客で交換し合ったり。そうすることでそれらの間に交流が生まれ、談笑する機会やナンパする機会が出来る。
おまけに、ジバコイルやレアコイルを引き当てた者は恋愛成就に効能があるのハートの鱗が貰えるので、片思い中の女性や、恋に恋する乙女の間でもコイループは親しまれるイベントとなった。
ジョインアベニューが十分に発展した今でも、ジョインアベニューでは縁日にコイループが行われている。時折やってくるカミツレを始めとした有名人ともコイループが出来る事があり、そういうタイミングに居合わせることを祈って、貴方もコイループをしにジョインアベニューを訪ねてみては如何であろうか?
BW2が発売した際にお世話になったコイループについて真面目に考えた結果、こうなりました。
例によって例の如く、BCWF物語と世界観が共通しています。
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