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カプコ結婚

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こちらはポケモン小説wiki出張所 -第四回変態選手権エキシビション- へ寄稿した作品をweb用に改稿したものとなります。

ギャグエロR-18です。



カプコ結婚

挿絵:影山さん
文章:水のミドリ





 ハリテヤマの叩くココヤシの太鼓に合わせ、村の男衆が半裸で踊り狂っていた。一糸乱れぬ足捌きは力強く舞台の板張りを打ち鳴らし、鬼気迫る相貌で重低音の怒号を張り上げる。ティーの葉を編みこんで作られた腰(みの)が猛々しく揺れ、首にかけられた笹のレイが大粒の汗を砕いて散らす。メレメレに特徴的な山吹色のオドリドリたちは屈強な男どもに交じり、この日のために鍛え上げた鵬翼(おうよく)を荘厳に躍動させる。
 戦の遺跡、その祭壇。伝統的な装飾で(まつ)られた高座から、俺へと捧げられるフラを眺め下ろしていた。白髪で恰幅の良い島の王が古語で祝詞(のりと)を紡ぐ。土地神の結婚の儀だ、広くない入り口には十数人ものニンゲンが寄り集まっていた。リリィの村の長老たちの中には子供の姿もある。若くしてアローラリーグの初代チャンピオンとなった少年が、ロトム図鑑で民族舞踊を撮影していた。
 神体のティキ像へ掛けられた花嫁用の白いレイをひったくり舞台へ舞い降りれば、カプ神のお出ましにフラが一層の苛烈さを増す。
 オコリザルがホラ貝を重く響かせながら、陽の射しこむ舞台へ進み出る。導かれるようにひと際大きな影が後ろから現れた。マッシブーンだ。長く飛び出した口吻(こうふん)に触覚、背中には申し訳程度の虫の羽根。全身を覆うはち切れんばかりの筋肉は聖山ヴェラの火口が如く燦爛(さんらん)と胎動している。膨張した筋肉にうずもれた首へ厚手の葉のレイをかけていて、これは花婿が身に付けるものだ。

 ちなみに奴は勃起している。

 ふたりだけ残された板敷きの舞台で相対する。ニンゲンどもの演舞に応えるべく、俺は宙に滑り出た。フラの源流ともなった腰を小刻みに揺らすリズムの中、天空に爪を掲げ遺跡の磁場を律する。両腕に備わった仮面で身を包み、大地の雷エネルギーを集約し全身全霊へ蓄える。代々カプ・コケコにのみ伝わる先陣の舞。ともすれば命を落としかねない乱舞をくれてやる。
 対するマッシブーンはポージングを決めた。掲げられた上腕二頭筋が叫ぶように隆起する。樹液でも塗ったのかというほどテカる赤銅色の肌、そこを伝ってむさ苦しく弾ける玉の汗。力こぶを作るたび男根がビクついた。それから流れるように各所の筋肉を見せつける。パツンパツンと音がしそうなサイドチェストに、にわかに観衆が盛り上がる。
「腹筋モリモリー!」「肩がケツみたい!」「広背筋が冷蔵庫~~~!」「ハムケツ切れてるゥ」「グレートケツプリ!」
 舞台袖へ降りた村の男どもが、嬉々としてヤジを飛ばしていた。なんでだよ、踊れよ。奴に肩入れすんなよ。あとケツばっか引き合いに出すな。
 イラつきに任せて電撃をぶちまけそうになって、すんでのところで思い留まった。まだだ、落ち着け。まだキレる時間じゃない。神聖な儀式にボディビルなんぞを持ちこんだ不届き者を粛清するのはこの後だ。
 島の王が神酒を献上して、俺はその大ぶりな盃に口をつける。ぶっとい四本脚であぐらをかいて座るマッシブーンは、奴専用に縦長に作られた白木の器から、ずぞぞッ、とはしたなく酒を吸い上げた。細長い針がもきゅもきゅとうごめく。ここは神の間だぞ? 聖域でタピオカ啜ってんじゃねえ。空になった器を男根に被せて遊ぶのやめろ。じゃじゃーん包茎! みたいな顔でこっち見んな。もう無理プッツン来た絶対にシバく。
 音を立てずに干した盃を置くと同時、蓄えた電気エネルギーを遺跡中に撒き散らす。怒りにかまけたエレキメイカーが、俺に有利なバトルフィールドを作り上げていた。

「アローラの伝統を散々コケにしてくれるじゃねえの……神の怒りを買った覚悟はできてるんだろうな筋肉ダルマぁ」
「むぅ何という殺気……! ならば土地神、儀式といえど全力で勝負するか!」
「ハナからそのつもりだッ、性欲エキスパンション野郎と結婚させられてたまるかってンだよ!」

 睨みあいを煽る太鼓が最高潮のボルテージを迎える。試合開始の一打に合わせて、俺は奴へと躍りかかった。





 遡るはつい昨日。俺がちょっと島を離れていた隙に、マッシブーンが祀られていた。
 最初のうちは意味が分からなかったが、……いや今でも意味は分からねえ。渓谷にかかる橋を渡った先にひっそりと構える遺跡の入り口、その脇。数日前までは確かに何もなかったはずのスペースに、見慣れない社が建てられていたのだ。物置き小屋ほどの鎮守の周囲に、煉瓦(レンガ)色をしたキノコのようなトーテムが何体も転がっていた。
 手近な小石を投げ入れて反応をうかがうと、奴が口をつっかえさせながら出てきたのだ。ああはい宅配便ですかハンコ持ってきます、みたいな感じで。

「うおっ貴様はウルトラビースト! 誰か駆除してくださーい誰かー!」
「落ち着け土地神、それがお前の役目だろう」
「そうだった。いやそうじゃねえ。なんでまたアローラに来たんだ筋肉バカ。こないだ俺が追っ払っただろ懲りろ」
「リベンジしに来たに決まっているだろう? 強い奴には異世界だろうと会いに行く、それが俺のポリシーだッ」
「なるほどバカだ。バーカバーカ」

 理解の追っつかない展開に語彙力ゼロで取り乱したが、ともかく状況が呑みこめねえ。努めて頭を冷やしつつ、俺は極力マイルドな言葉を選んで尋ねた。

「……百万歩譲ってまた来やがったのは目を瞑るとして、なんでテメエが祀られてるふうなんだ」
「なんだ土地神、照れているのか?」
「意味わかんねぇし言い方イラつくな。ともかく帰れ、な?」

 謎に筋肉を見せつけてくるマッシブーン。異世界のポケモンとはいえここまで話が通じねぇとは。半年くらい前、奴はメレメレの花畑でアブリーどもと仲良く蜜集めをしていた。地獄みたいな絵ヅラのファンシー筋肉をすぐさまぶちのめして、元いた世界のウルトラホールに投げ捨てているから、今さら帰り道まであんよが上手と音頭を取ってやる必要もないだろ。バトルをふっかけられたら面倒だし、別の奴から聞き出そう。
 筋トレし始めた奴を無視してアーカラへ飛び、墓石に囲まれて佇む命の遺跡を覗きこんだ。こういうときだけは情報通のテテフが役に立つ。

「おーいいるか!? ちょっと聞きてえことがあるんだが」
「あっはーい今行きまぁす」

 やーん宅配便ですかぁ今スッピンなんですぅ、みたいな感じでテテフが出てきた。本当に昼寝前の水浴びをしていたのかびしょ濡れで、頭にナイトキャップを被りながら。
 ナイトキャップ?

「ってうわウツロイドじゃん! テテフを離せ!」

 金魚鉢クラゲにすっぽりと頭飾りを覆われながら、アーカラ島の守り神カプ・テテフはあっけらかんとしている。もうすでに洗脳されちまったのか、いや張りついた途端にコイツは寄生するほどオツムがよろしくないと勘づかれていて無事なのか。
 奴をひっぺがそうと帯電し始めた俺を、テテフが慌てて押しとどめる。

「コケコちゃん落ち着いて、これはただのスキンシップ。ウッちゃんの世界では、挨拶がわりにこうして相手に触手を絡めつけるんだってー」
「……アローラに生まれてよかった」

 電気を引っこめた俺の様子をうかがうように、宿主へ巻きついたまま伸ばされる触手。ウツロイド式の挨拶にはやんわりとお断りを入れた。恥ずかしがり屋なのかテテフに密着すると、甘えるように全身をにゅるにゅると撫で回す。うへぇ。
 ドン引きする俺に何を思ったのか、汁濡れのテテフがわたわたと手を横に振った。

「……あ、違う違う。これは挨拶じゃなくて、単にレズセックスしてただけだよ」
「なお悪いんだけど」

 どうしてそれを言って俺が警戒を解くと思ったのか。お脳の具合がファニーな奴だが、悲しいかなこれでも俺の友なのだ。つうかUBと親しげにしてんじゃねえ。マッシブーンといいウツロイドといい、なんで外敵がのうのうとのさばっていやがるんだ。

「あ……あぁぁアローラが崩壊する……!」
「大げさだなあコケコちゃんは~。ただの異文化交流じゃない」
「明らかな侵略!」

 触手と金魚鉢に頭飾りをしゃぶられながら、テテフはウツロイドの中をまさぐって謎の粘液を溢れさせる。俺の前でレズらないでくれます?

「んで、コケコちゃんはなんでわざわざアーカラまで? 触手レズ3Pしたいの?」
「そうだった。いやそうじゃねえけど」

 俺が遭遇した怪奇を説明すると、テテフはさも当然とばかりにしゃあしゃあと語り出した。

「そっかコケコちゃん知らないんだね。マッシくん、メレメレのひとたちに愛されすぎて、永住権をもらったんだよ。しかも多産の神、おちんぽ様として」
「お、おち……⁉」

 同胞の口からポロンとこぼれ出た言葉に、俺はミミッキュくらい首をひねっていた。テテフの話によるとこうだ。メレメレの山間部では人口減少が顕著で、それは俺の祠をこしらえたリリィの村も例外ではない。困窮した村民が神にも縋る思いで天へ子宝を願ったところに、空を割いてマッシブーンが現れたのだ。逞しすぎる筋肉が男性信仰の象徴として祀り上げられるまでわずか3日、アローラで流行り始めたタピオカを凌駕する侵略速度だった。土地神へと捧げられていた信仰を根こそぎかっさらったのだ。その結果があの鎮守なんだと。
 それの周囲ににょきにょき生えていたトーテムを思い出して、俺は声を震わせた。

「え、じゃああのキノコみてえな像って」
「まあヒトチンだろうね」
「嫌すぎる」

 率直な感想だった。
 少しでいいからニンゲンどもは想像してみてほしい。海外出張から帰ってきたら、我が家の隣にオゲレツちんぽ御殿が建てられていた。誰だって即刻立ち退きを要請するだろう。ポケモンもねぐらの環境にはこだわるものだ、たいていの奴は。
 霊園のド真ん中に祠を構えてのんのんと暮らすテテフが口を尖らせた。

「コケコちゃんよくUBを追っかけて島を空けてるでしょ? みんな寂しい思いしてるんだよ」
「それがカプの役割なんだから仕方ないだろ」睨みつけるとウツロイドは怯えたようにテテフへ触手を絡ませる。「つうかお前も働けよ」
「お仕事も大事だけど、ファンを無視しちゃダメ」うなじを撫でられると説教くさい口調が甘く蕩けた。「アイドルとしての自覚ある?」
「土地神は芸能人じゃない」
「アイドルには偶像って意味もあるの。私たちはいわばアイドルなんだから」

 なんかうまいこと言ってみせたと汁まみれの胸を張るテテフ。何、え? だからなに?

「せっかくだし笑顔の練習しとこ。ほらほらニコってしてみてよ、アイドルスマーイル!」
「やんねえよ! 電撃かますぞ」
「ウッちゃんの触手GO!」
「ぎゃははは!」
「うんその笑顔ステキだばばばばば」

 寄生クラゲごと軽く痺れさせてやってもテテフはどこ吹く風。ひーッ、ひふぅ、くそッ脇腹が痛ぇ……。
 つれないなー、とかぼやいてテテフは懐からスマートフォンを取り出した。丸っこい手でタプタプと液晶をタップする。最近はポケモン用にも開発が進んでいる、俺の電撃にも耐えうる最新機種だ。
 で、言ったのだ。ニンゲンどものアホバカ計画を。

「しかしめでたいねぇ。コケコちゃんの結婚、急遽決行するんだってね」
「……何て?」

 突然の早口言葉に耳を疑う俺へ、ホラ、と見せられたスマホの液晶。そこにはいま流行りのSNS『ナンスタグラム』のホーム画面が映し出されていた。それこそアイドル並みにフォロワー数の多いテテフのアカウント、さっき上げたらしいウツロイドとのツーショットには『そーなの!』ボタンがゆうに5万回以上も押されている。
 ダイレクトメールのひとつを開けば、俺のよく知る白髪の島キングが映し出された。

「ハラさんが教えてくれたよ。まさかあれだけいがみ合っていたマッシくんと結ばれるなんてねえ」
「……はあァァ!? え、意味わかんね、相手UBかよ、つかなんで俺に知らされてねぇの!?」
「またまたぁ。大急ぎで婚礼の儀の準備してるくせにぃ」
「ちょ、それいつ、止めねえと、いつだよ!?」
「あっあっウッちゃんそこイイっ」
「話きいて!」
「婚礼の儀? しっかりしなよ明日じゃん」
「ウッソだろおい」

 ガツンと殴られた感じだった。大方おちんぽ様にはそれ相応のツガイがいるべきだとか考えたんだろうが、なんで俺への断りもねぇんだよ。忌み嫌ってきたUBを婿にあてがわれるなんて実に腹立たしい。
 ならこっちにも考えがある。式次第の最後にバトルが執り行われるから、そこでマッシブーンを徹底的に叩きのめしてやるのだ。
 アローラの島キングに伝わる婚姻の風習、婚礼の儀。男は腕っ節が強く女を虜にできるほど子宝に恵まれるものだと信じられてきた。新郎が力を示し子孫繁栄を祈願するのが、結婚式でのポケモンバトルなのだ。今となっては夫が勝つよう手心が加えられるものだが、観光客が押し寄せるようになる以前は島の王の結婚も死に物狂いだったと、300年も婚礼の儀を見守ってきた先代から聞いたことがあった。
 そんならやることはひとつ、雄としての自信を男根ごとボッキリ折ってやるまでよ。カプの力で圧倒すれば、異世界マッスルに目のくらんだ島民も正気を取り戻すに違いない。

「ってワケだからお前は絶対に来んなよ? テテフと一緒でいいこと何ひとつ起こらないからな」
「う、ウッちゃん最後は一緒にイこ?」
「絶対に来んな」

 ナンスタに『異文化交流なう☆』とイき顔を投稿するテテフを置いて、俺は大急ぎでメレメレへと舞い戻ったのだ。





 負けたアァーーーーーーっ!!
 なんか長ったらしい回想してる間に負けた! クッソこんなんじゃ俺の威厳を取り戻すどころか、マッシブーンのカリスマ性に箔をつけただけじゃねえか。ロトム今の撮ってただろ、俺の雄姿だけ編集して上映しろ!
 舞台の中央から崩れた天井のすき間に覗く空を見上げながら、俺は肩で息をついていた。体力は底をつき浮かび上がることすらままならないのに、全身を暴れ狂う戦闘後の高揚感が煩わしい。汗が染み出し殴られた下腹のあたりがじりじりと疼き出していた。
 仁王立ちのマッシブーンが地に落ちた俺を満足げに見下して、パンプアップした筋肉で勝利のポージングを見せつけていた。男根をなおいっそう滾らせながら。

「いい戦いだった。いい戦いだったぞ土地神よ! それでこそ俺の花嫁にふさわしい!」
「るっせ、だ、だれが結婚するかっての……!」

 タイプ相性で俺の圧勝だと思いきやどっこい、マッシブーンはチャンピオンと意気投合して地震を覚えさせてもらってましたー、なんてオチが予測できるか。フルパワーの雷を喰らいながらも厚くなる筋肉が大地を砕くさまは軽く神話だった。俺にとっちゃトラウマだ。

「どちらにせよ俺たちはメオトとなった。そうとなれば土地神ッ」
「……なんだ」
「セックスするか!」
「なンでだ!」

 なんでそんな結論に至るんだ、脳汁が沸騰でもしてンのか。ああ分かった、ウツロイドが触手を絡ませるみたいなことだ。マッシブーンの世界では、バトルの後にセックスするのが挨拶なのだ。アローラに生まれて心からよかった。

「村の民の望みとあらば仕方ないだろう。おちんぽ様の生セックスにはご利益があるのだ」
「いっちょ前に神ぶってんじゃねえ……!」

 まだ熟れきっていないオボンをおもくそ齧ったような渋面を作っていたんだろう。頑なに認めようとしない俺へやれやれと肩をすくめて、奴が言う。

「それに俺はセックスがしたい!」
「素直になりすぎだ!」

 やっぱりなあ! なんか鼻息荒いし、もうすっかりその気じゃねえか!
 逃げ出そうにも体が重い、電力もスッカラカンで抵抗できねえ。えっ俺コイツに抱かれんの? 土地神としての威厳の陰で捨てそびれていた処女を奪われるとか、メレメレを明け渡すと言ってるようなモンじゃねぇか!

「お前もセックスしたいのだろう。花嫁の種乞いダンス、見事だったぞ。お陰でホラ」
「ンな乱痴気な踊りがあるか! ってワーーーッ近づけんなバカ! おい島キングのハリテヤマ、コイツを止めろ! のんきに太鼓叩いてる場合じゃない!」
「彼とはもう腹直筋で結ばれたフレンズだからな。筋肉は裏切らない!」
「しまった全員脳筋だ!」

 観客を見回したが、この異常事態を止めに入る気配はない。むしろ俺と新たな神との交合を望んでる節さえあるようだった。
 前脚の膝をついて俺の体を暴こうとするマッシブーン。なけなしの膂力(りょりょく)で爪を振りかざすも、筋繊維で編みこまれた一張羅には傷ひとつつきやしねぇ。

「ギャラリーに痛ましい声は聞かせられないだろう」
「艶かしい声をお届けするつもりもねえよ! ってちょ、おま、バっ、――きゃあアあッ!?」

 脚の間に指がするりと差しこまれれば、キッチンにでけえ虫がいた、みたいな悲鳴が出た。その害虫に犯されそうになってるんだから嫌悪感もひとしおだ。しかし体は慣れない刺激に正直で、奴の指が俺のまんこに触れた瞬間、びくんッと腰が跳ねあがった。

「なんだずいぶんじゃないか」
「だ、だって、ずっとお前がンな太ってえモンぶん回してっから……」
「すっかりその気なのか。今に挿れてやるからな」
「ち、ちがっ、てめこの……んんンッ」

 筋肉バカのくせして憎いくらいに繊細な指使いが、俺のまんこを無遠慮に掘り広げていた。どうしても雌の疼きが収まらないとき、自分の爪の先でいじる入り口から浅いところが、指紋を覚えさせるようにじっとりと撫でつけられている。ちゅぽ……、と羞恥の水音を立てながら引き抜かれた指、そこへ纏わりついた粘液を口先で吸い上げて、奴がふむうと唸った。

「爽やかな香りだ……凝縮された常夏の大地と稲妻のマリアージュは、神にしては張りのあるみずみずしさに溢れている。カプ・コケコ産で40年ものだろう」
「ド変態体液ソムリエがッ、調子こくのもいい加減に――」

 正確に歳を言い当てられ思わず上半身を起こした俺の頬が、べちんっ、しなる男根でビンタされた。間近に見せつけられた奴のちんぽ。5本目の脚かよってくらい太くそそり立ち、尿道と側面の計3ヶ所から、太もものハムストリングに似た灼熱の肉塊がはみ出していた。液体めいてうごめく筋肉をかろうじて繋ぎ止める筋は浅黒く使いこまれていて、元の世界でどれほどの雌を泣き善がらせてきたのか。

「いい加減腹を決めろ。お前はこれから、このペニスに、貫かれるんだ。いいな?」
「ひっ……、…………ッ」

 頬にこびりついた先走りの粘液、そのむせ返るにおいが俺の脳髄を麻痺させる。見せ槍から目を離せなくなった俺の下腹が貫かれることを予感して、じゅくり、と蜜をひり出した。
 雰囲気に流されまいといっそう暴れる俺へ、マッシブーンが見せつけるように男根をしごく。

「よく考えろ土地神、バトルで惨敗したお前も、セックスで動じない姿を見せつければ、島民から改めて神だと崇められるんじゃないのか」
「……え?」

 振りかざす爪を、俺ははたと止めた。
 改めて神だと崇められる。
 婚礼の儀でマッシブーンを打ちのめして俺が神に返り咲く、という作戦はあえなく失敗した。だが潰えたかのように思えた土地神としての理想像が一転、手の届くところでフワついているのだ。しかもその方法も破瓜の痛みに耐えるだけ。なんだかいけそうな気がしてきた。
 というか最早それしかない、それが最善にして逆転の大勝負だ。なんだかいけそうな気がしてきた!

「たしかに……一理あるな。いいだろう侵略者よ、交尾で決着をつけるぞ!」

 高らかに宣言するや否や、俺はニンゲンどもの前に躍り出た。これから繰り広げられる光景に生唾を飲む音が聞こえてきそうだ。戦いのリズムに乗って小刻みに揺れる腰を、いかつい両手が後ろからがっしと捕まえる。

「……お前も大概アホだよな?」
「あ?」
「いや何も」
「なんだァ、今さら怖気づいちゃったかー?」
「…………」

 図星だったのかだんまりを決めこむマッシブーン。ぐにり、と俺の下腹部を押し上げる感触があって、これから始まる俺の活劇に全身がじんわりと熱を帯びる。
 武者震いに上ずる声を無理やり重くして、俺は聴衆を睨みつけた。

「俺の英姿を目に焼きつけろ島民ども! 軍神カプ・コケコは雄に陵辱されようと動じない! 誰がメレメレの守り神か、筋肉なんぞにうつつを抜かしたお前らに今一度思い出させてやろう……!」
「よく言った、それでこそ俺の嫁だ! では存分にハメ倒して」
「(ゆっくり! ゆっくり挿れろよ! ゆっくりだぞ!)」
「えっでも陵辱されようがって」
「(方便だろバカ! ンなモン一気にブチこまれたら壊れて――)」
「壊すんだろう伝統ごと!」

 ずちいッ! と、乾いた音を立てて。俺の下半身が真っぷたつに引きちぎられた、かと思った。

「ふンぐぅうぅッ!?」

 顎が跳ね上がり、貫かれた体が弓なりに弾かれる。掻き乱された内臓の圧迫感に息が止まり、次いで襲い来る激痛。
 痛ったあああ⁉ 無理むりムリ無理なンだコレ、苦しいし痛ぇし苦しい! 表情が歪む、でも公衆の面前だ意地を見せろ。アイドルスマーイル! アイドルスマーイル!
 硬直する俺の顔を上から覗きこんで、奴が小首をかしげていた。突っこむ方はいいご身分だなオイ!

「む? 半分も入らないじゃないか」
「お前マジで、お前マジでさあ……!」
「キツキツだなあ。予想はしていたが生娘なのだろう」
「ち、違ぇし……?」
「蜜から処女の味がしたぞ」
「うわぁ」

 気持ち悪いことこの上なかった。40年も生きていて処女だと勘づかれ思わず否定したが、まあ実際そうだよ。悪かったな。
 あっけなく引きちぎられた花のレイが、冷たい床へ無残に散っていく。火傷痕の水ぶくれみたいに張り上がった尿道の筋肉がまんこからはみ出して、陰核をぷにぷにと持ち上げていた。
 腹の底で煮詰まる激痛に、運動後の気だるさのようなものがむくむくと顔を出してきた。なんか、風邪をひいた時の倦怠感のような、生ぬるい湯に浸かっているような。
 違和感に眉をひそめる俺の締め付けを堪能するようにうなって、そういえば、とマッシブーンがうそぶく。

「神酒を啜ったときに気づいたが、あれ、ウツロイドの愛液が入っていたぞ。飲めば痛覚は麻痺して快感ばかり増幅する媚毒が」
「な、なんでンなモンが」
「酒はカプ・テテフの差し入れだそうだ」
「心当たりしかねぇ……」

 来んなっつったら本当に来なかった代わりに、とんでもねえ差し入れしやがった! 酒には間違いなくアイツの鱗粉も混入してるから、バトルの熱が一向に鎮まらないのにも合点がいく。次会ったら覚えとけよテテフぅ……! つかお前なんでウツロイドの味知ってんの?
 奴の身じろぎで男根がわずかにむずついて、それだけで意識してしまう甘い痺れ。どうやら堪えるべき感覚を見誤っていたらしい。カプ・コケコは軍神だ、身を切られるような痛みなら飽きるほど味わった。それに比べて交尾の快楽は、未知だ。
 好きでもない相手に無理やり奪われた初めては、泣き叫ぶほどに痛かった。メレメレの花園に住むバタフリーの被害相談を受けて、俺はそうとばかり信じていた。確かにねじ込まれたときは裂けるかと思ったが、いま腹奥に感じる暖かな疼きは、どうしようもなく良いものなのだと自覚してしまう。初めてなのに、気持ちいい。痛くあるべきはずなのに。あるいは初めてでも好きな相手なら……いやいやいや、ない。それはない、断じてない。あってたまるか。神酒に盛られたウツロイドの媚毒か、テテフのやべぇ粉のせいだ。俺はどうでもいい責任転嫁を考えて、雌の快楽に目覚めつつある体をごまかそうと必死だった。
 ごまかせなかった。
 ちんぽの先端が膣天井の浅いところをコリコリと撫でるだけで、腹の奥がむず痒さに苛まれる。クラボの煮汁を塗られたような火照りがじゅん、と下腹部全体に広がって、あれだけ眉をヒン曲げていた激痛が定時退社とばかりに一斉になりを潜めていた。
 快感を意識したタイミングを待っていたかのように、マッシブーンが悠々とした抜き差しで参道をこじ開け始める。内臓を押し上げられる苦しさに紛れて滲む快感に、いよいよ気づかないフリもできなくなってきやがった。

「奥までびっちょりなんだがなあ」
「ふ、うぐぅ、な、んで、そこばっかッ……ッ」
「自慰のときはここを爪でカリカリするんだろう。お前の蜜が雄弁に語っていたぞ」
「でえええぇっ⁉ て、テキトー、ふゥっ、言ってんじゃねぇ……っ」

 発情の発散方法をさも当然のように暴き立てられ、さあッと顔に熱が走った。公開初夜している時点で何を今更だろうが、いや土地神もオナニーするんだって知られたのは屈辱だ。しかもどこを弄って気持ちよくなっているかまで。動揺は毒づいて濁したが、おちんぽ様には筒抜けだって考えただけで泣きたくなってくる。

「ん……ンあ、あヒっ、……くそッ、こん、にゃあッもんっ……ふぅッ!」

 いや気張れ、快楽くらい圧し殺せ。突き上げられるたびブレる視界には、俺の戦いぶりを固唾を飲んで見守っている大衆がいるじゃねえか。村の長老勢は「わしも若い頃は……」とか思い出話にふけってるし、フラの男どもは今宵のパートナーの抱き方で議論を白熱させている。島キングは何が琴線に触れたのかうっすら泣いていた。ハリテヤマはギンギンにおっ勃ててるし、オコリザルなんかシコり始めてる。オドリドリは帰った。
 くそうマトモそうなのは――チャンピオンお前だ、ロトム図鑑片手に目を血走らせてるけど、アイツにだけでも意地を見せられればそれでいい!
 勇ましい表情を保てているはずの俺へ向けて、マッシブーンが感心したようにうなる。

「だいぶ小慣れてきたな。ちとキツいがペニスを迎えようと肉壁が柔らかく吸い付いてくるぞ。これなら奥までハメられそうか?」

 うるせえ。

「カプ・コケコの膣は柔らかキツキツ、図鑑アップデートロト!」

 やめろ!

「投稿したら10万そーなの! は確実……これで僕も有名人……」

 お気を確かにチャンピオン!! っていうかコレ撮ってんの? すぐに消せ。ナンスタに投稿するんじゃない。映えないから。アカウント凍結まっしぐらだから!
 叫びたいことは山ほどあれど、口を開けば溢れるのは切羽詰まったかすれ声ばかり。遅いながらも深々としたちんぽのストローク、床にどっしりと根ざした四本脚はモチをこねる機械のような規則正しい腰づかいを送り出してやまない。いつのまにか練りあげられていた快感が、情けない嬌声を抑えることすら不可能なほどに膨れ上がっている気がする。焼きすぎたモチみたいに。

「ふ……ッ、ふくぅ、……フぅうんッ、ッ……!」
「もうすっかりトロけ顔だな。せっかくだ全部挿れてやろう」
「い、いれる、あふッ、て、なに、を……? ――ッ!?」

 囁きとともに腰をグッと握り直された。下腹に意識を向けた瞬間、わずかに届いていなかった子宮がぶにィっと力強く押し潰される。生ぬるい快感を堪えていた俺の背筋が跳ね上がり、快楽の電流を通された視界がショートした。ぐしゅ、ぐりゅ、ごりゅ、張り出た筋肉で愛液を掻き出しながら何度も最奥を殴りつけられる。疼いてやまない子壺がちんぽの先端でノックされるたび、さっきの比じゃない大嵐が頭の中をしっちゃかめっちゃかに吹き荒れる。
 待て待て待てこれよくないやつ、ストップストップ一旦抜こ? 腰をがっしり掴む奴の手を振り払おうにも、快感で震える俺の爪は汗で滑るばかり。なんか、来る。いつもの自慰とは比べものにならないくらいの大津波が来てる。やばッこれダメだダメなやつだ、もうだめダメダメダメだめえええぇ――ッ!

「堕ちろ土地神、イけ、イき散らかせ、イき恥を晒せッ!」
「あっああアっ、い、いやだ、あヒイィっ、イかない、イきたくないイッ!!」
「赤ちゃん返りをするな! 快楽に溺れる自分を認めろ、膣肉が悦んでいるぞ」

 まんこをいちばん奥まで犯したままグニュグニュとタマゴの部屋を捏ね回されると、もうだめだった。トサカの先まで全身ぎしっと縮みあがって、お゛おおお゛ッ、喉奥から濁った声が搾り出る。飼い主に服従するヨーテリーよろしく肉ヒダでちんぽの裏を舐め回していたが、最奥まで貫かれているせいで震えは目立たない。まだだ、まだバレてない、はず。

「いいいイっイって、イってま、ぜん゛ッっっ!」
「嘘こけ!」

 口をついて出た丁寧語で負けてないことをアピールする。宣誓とは裏腹にまんこは正直で、腹の上からでもちんぽの形がクッキリと浮き彫りになってるんじゃないかってくらい勝手に締め上がる。見栄を張る俺を叱りつけるように、腹の裏の弱いところをパツパツに硬くなった水ぶくれ筋が擦り上げて、突き抜けた性感を助長してきやがる。
 味わったことのない絶頂の余韻を噛み締めていると、ずりゅんッ、と俺の中から一気にちんぽが抜けていった。奴もイったのか。ごつい手と男根の支えを失ってあからさまにがくがく揺れる俺の体が、ばしゃ、と粘液だまりへ落ちた気配があった。

「ふあぅ……ぁ、はあぁ……っ。こ、こんなんで、おりぇが、堕ちるワケ、ねーだろ……」
「潮まで吹いてそれ言うのか」
「へ……、なに……?」

 奴の指に誘われ爪で地面をなぞれば、かなりの広範囲でフローリングが水びたしだった。汗か? 最後の方おしっこと似た感覚がしたが、違うよな? 頭がぼぉーっと緩んでなんも考えらんね。尿っぽいにおいはしないし、人前でお漏らしとかいう最悪の陵辱を免れたんだからいいか、もう何でも……。
 頭も体も脱力しきっていたところをあっけなく仰向けに転がされる。なんだもう寝かせてくれ。朦朧とした俺の脚のうち左右の二本しっかりと持ちあげられると、ぶにっ、股に触れる張り詰めた熱感。もやのかかった視界の端で、メロメロを多重掛けされても惚れることはないだろう害虫の顔がニィッと笑った、気がした。

「嫁を満足させられない雄なぞ恥だからな。お前がイき狂うまでつきあってやろう」
「は…………っ、ひゃや……!? おま、マジでバッ――うギュうぅッ!?」

 余韻で鈍くなっていたまんこが、奥までひと思いに串刺しにされた。柔らかく蕩けた肉壁がずんッと乱雑に掻き分けられようと、媚毒の回りきった体に痛みなんてまるでない。離れていた一抹の寂しさを埋め合わせようと夫ヅラするちんぽに子宮をずんッと突き潰されれば、降りかけていた絶頂感が一瞬にして吹きこぼれた。
 なにこれ、何だコレ。深く、重く、泥に沈みこむような気持ち良さ。というかさっきよりちんぽデカくなってない? 目の奥で火花を散らす俺の腰と腰をすり合わせながら、マッシブーンが自慢げに大胸筋を左右交互にピクピクさせる。

「隠そうとも無駄だぞ。俺の〝 ビーストブースト〟は相手を倒すたびに筋肉が厚くなる! つまりっ! お前が気をやるたびにペニスが一段階太くなるのだッ!」

 絶頂の余韻に緩んでいた膣横と、今度は尻側を押し拡げる水ぶくれ筋に力こぶを作られ、ひと皮剥けたちんぽの圧迫感をありありと意識させられる。どうにか睨みつけた視界の端ではちんぽが根本しか見えなくて、俺の腹がタマゴを抱えたようにぼっこりと押し上げられていた。

「は、はあ……!? どっどんな、ガバ理論だ、よぉ……っ!」

 違った。ガバガバなのは俺のまんこだった。我が物顔で蹂躙してくる筋肉塊をたやすく迎え入れちまってる。膣ひだがにゅるりと絡みつき、ちんぽへ子種をねだるように根元から舐めあげる。つうかこれ、俺がイったらまたぶっとくなんの……?
 血の気を引かせた俺の耳元に、奴が口の先を近づけた。

「これ以上イきたくないなら、これ以上イかない方がいいぞ」
「ひッ、や、らめっ――おああア゛ッ!!」

 世界イチ頭の悪そうな循環論法(トートロジー)を囁いて、奴が腰をぬるっと突き出した。とんとんとんッ、小刻みに最奥を責め立てられれば、青天井の快楽が否応なしに襲いくる。
 奴の言いたいことが分かった。分かってしまった。この悦感に耐えられなければ、さらに太まったちんぽで子宮をグリグリされてしまう。ざっけんな無理ゲーにも程があるだろ!
 なんて恨み節も散り散りにしてしまう暴力的な法悦。もうイくのを堪えるとかそういう次元じゃなくて、せめてこのだらしない顔は見せたくねえ。力の入らない腕で自身を搔き抱いて、がこがこと地面にぶつけながら仮面でなんとか視線を遮った。

「なんで隠すんだ、島民にお披露目したイき顔を俺にも見せろ土地神ッ!」
「だっから、イってねえって、アひッ、イってンだろ!」
「紛らわしいな! またペニスがブーストしてしまったぞ」
「やっやめ、あ、ああぁあンっ!」

 薄皮2枚の防壁はあっけなく引っぺがされた。だっこをせがむように爪を伸ばしている格好で仮面を握りしめられ、恥ずかしさのあまり涙まで浮かべちまう始末。瞬間、腹を耕していたちんぽがずぐりと肥えた気がした。蕩けきった敏感な膣壁がきゅうきゅうと吸い付いて、一段と硬く膨らんだ水ぶくれ筋を確かめる。確かだった。――いややべぇってコレ、奴の言う通りならおそらくあと4段階はデカくなる。無理だ。つかニンゲンどもに見せつけた時、俺がイってたこともちんぽで丸わかりだったのかよチクショウ!
 どしゅどちゅどちゅんッ、規則的なピストンには容赦なく体重が掛けられていて、腹を食い破ろうと猛るちんぽの形が浮き彫りになる。脚の方は見なくても分かるくらい俺の潮で大荒れになっていて、あとひと突きでもされたら無理ッあもう無理です許して土地神とか譲るからやめて助けてたすけてえぇぇッ――

「欲張るな土地神ッ! これ以上イってももう太くならないぞ!」
「――ひぎいィいぁッ!?」

 半剥けの陰核をタピオカみたいに吸い上げられて、意識半ばだった俺は叩き起こされた。数分と経ってない気はしたが、絶え間ない腰使いは容赦なく速まっていて、ちんぽは半分も入らないほどダイマックスしてた。……俺何回イった?
 腹の奥が弾けるような絶頂快楽にまんこは締まりっぱなし。見せつける泣き顔に羞恥なんて感じる余裕もなく、イき果ててすっかりダメになった俺の頭に叩きつけられる、土地神から1匹の雌へ堕ちたのだという敗北感。
 ひな鳥のように無様な痙攣を繰り返す俺を、上体を起こしたマッシブーンが満足げに眺めおろしていた。蕩めかされたまんこで深々と感じる雄々しいちんぽ、ぐぐグっと一分の隙間もなく子宮口へ押し付けられたそれが、あっという間に禍々しいほど膨れ上がった。

「出る――出るぞ土地神、受け止めろっ! UBにねじ伏せられて屈服アクメ決めろッ!!」
「は……、ひぃィッ、イくっイっちゃ、イいぃいいいイっ!!」

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 ――びゅ、びゅびッ、びゅーっびゅびゅるるるッ!!
 射精で、突かれていた。
 収縮を繰り返す水ぶくれ筋が油圧ポンプさながら種汁を送りこんでくる。尖ったちんぽの先端に持ち上げられた俺の腹が、まんこの奥へ水圧を叩きつけられるたび夥しく盛り上がる。張り詰めていたちんぽの腹斜筋が強縮して、躍動する筋肉の隙間からあぶれた白濁が派手に飛び散った。地面に落ちたマトマみたいに混濁液の飛沫が噴き上がる。
 ずッずッ、と残り汁まで丁寧にこき出して、俺の参道から退社するちんぽ。狭いタマゴ部屋じゃ受け止めきれなかったドロネバの精液が垂れ流れていって、ぽっかりと空いたまんこに夜の冷気が染み渡る。
 急速に現実を取り戻す脳内。あまりの惨めさに俺の声は震えていた。

「俺が、おれが土地神、なのに……うっうっ」
「こうなったのもお前の蒔いた種だろう」
「種を蒔き散らしたのはオマエだろッ!! 帰ってくれ頼む、頼むから帰れ!」
「家となりだけど」
「死ねッ!!」

 悪夢を振り払うように叫んだ。いいものを見れたとゾロゾロ帰路につくニンゲンどもの視線から逃れるべく、俺は両腕の仮面でぴっちりと身を覆っていた。





 遺跡の外から喧騒が響く。リリィの村人の観光案内に続き上がる感嘆の声は、他の島から訪れたニンゲンのものだろう。遠い地方の観光客まで押し寄せているらしい。
 だが誰も奥まで来やしねえ。バカどもはおちんぽ様に首ッ丈だ。俺は祭壇のティキ像にぐでッともたれながら、アイドルグループの不人気な奴って握手会でこんな気持ちなのかなァとか考えていた。
 あんな醜態を晒しちまったら、今更古い神に固執する物好きなんかいねぇよなぁ。うだうだとやさぐれていた矢先、忙しない翼の音が遺跡の通路を響いて飛んできた。飛び起きて御鏡で身だしなみを確かめる。目はパッチリだし肌ツヤも良好、トサカも真っ直ぐ枝毛も抜いた。賓客をもてなすレイもヨシ。
 緊張を深呼吸で飲みこんで、俺は満面の笑みで振り返った。

「今日は来てくれてあ、ありがとうな! わざわざ俺のためにこんな山奥まで……って宅配便かよ」
「あ、ここにハンコお願いしゃす。なければひっかき傷でもいーんで」

 全力のアイドルスマイルを受け流し事務的に荷物を押しつけてくるぺリッパーに、俺は電気を纏わせた爪を食いこませてやった。放り捨てられたダンボールを八つ裂きにすると現れたのはスマートフォン。俺の爪でも傷つかない液晶を叩いて起動させる。新品同様のホーム画面にはメモが残されていて、そこには『やっほ。コケコちゃんもナンスタ始めた方がいいよ。アカ作って宣伝しといたから、あとは新作出すだけ☆』とあった。雨の中の雷かよってくらい嫌な予感は的中するもので、案の定送り主はテテフだった。
 添えられていたURLはナンスタの裏サイトで、そこへ飛ぶやいなや動画が再生される。ダブルピースで必死にイくのを堪える俺が、最新機種の高画素液晶にどアップで映し出された。あれだけ保てていたはずの無表情はどこにもなく絶頂は隠す気配すら見せられず、とどめに男根を抜かれた穴からだらしなく愛液を噴き散らし、産まれたてのドロバンコよろしく全身を痙攣させていた。
 爪で叩き割ろうとしたスマホの画面端に目が止まった。テテフがバズらせたせいか、俺のアカウントには既に2万人を超えるフォロワーがついている。さっきの動画にもスクロールしきれないほどコメントが並んでいた。『えっっっろ!』『コケコ様って雌だったんだな……』『抜いた』『ホンモノの神キターーー!』『えち神サマ降臨』『入信します』『次はデンジュモクとの電撃プレイ希望』『イき恥w』『ふぅ……。貢ぎ物です受け取ってください』『ここに祠を建てよう』『ちんこでか』『コケコちゃんすんごくエッチだったよ☆』『こんなエロくてポケ妻なんだぜ』『テテフ様より好み』
 書き連ねられた賞賛の嵐に、いつかの感覚が呼び起こされる。あれは先代が引退してからの俺の初降臨祭のとき。村の民の熱烈なまなざしと期待を孕んだ祝詞を向けられた俺は、まだ拙い舞を披露しながら酔いしれていたっけ。内容は違えどスマホを通して浴びせられるコメントの数々、とくに最後のはなんだかとっても素敵な気がする。

「これもある意味で信仰……なのか…………?」

 新天地で俺は再び神――アイドルになってやる。手始めに『異文化交流しませんか?』とデンジュモクにDMでも入れておくか。





おわり



あとがき
2022/4/30のけもケット11にてwiki本5が出るそうなので、wiki本4へ寄稿した本作を公開しました。初頒布が2019年の関西けもケだから、これ書いたのもう2年半前……? 文中にダイマックスとか書いてあるから剣盾の情報が出始めた頃ですね。本作がサンムーンの〆となる作品か……締まらないな……。
wiki本4は絵師さんのイラストに作家が小説をつける合同誌だったのですが、wiki本3に寄稿した不器用なその手に幸福をに続き影山さんとタッグを組ませていただきました! いやーーーまいど挿絵すけべすぎん? マシコケに限らずパワフルなギャグみのある影山さんの作風に引き寄せられて、小説は自ずとギャグエロになりました。初めて書いたジャンルだったんですけど、なんだかこう……しっくり来ましたね。個人的にお気に入りのギャグは冒頭の一連の流れと、「ウッちゃんの触手GO!」と『つかお前なんでウツロイドの味知ってんの?』でした。のちにかべのなかにいる!が生まれたのもひとえにこの作品を手がけてギャグエロに慣れたからでしょう。感謝してもしきれないね……。
wiki本2、3、4と連続でお誘いいただき、楽しい経験ができました。主催さん、参加された作家の方絵師の方、お手にとって読んでくださった方、ありがとうございました! いやしかしまいどご迷惑をおかけしましたね……。原稿の再提出だったり作家合わせの会議を寝ぶっちしたり、誠にすみませんでしたもにょもにょ……。戒めとしてここに記しておきます。みんなも自分の信頼は自分で守ってこーな!



本作を執筆するにあたって、リングさんのカプ・トケッコンを参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

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Last-modified: 2022-04-04 (月) 00:15:14
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