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アドバンズ物語第四十四話

/アドバンズ物語第四十四話

ポケモン不思議のダンジョン 探検隊アドバンズ物語
作者 火車風
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第四十四話 生き別れのコン 


部屋に入ると、みんなはシリウスに注目した。

「まあ、まずはオレとコンがであった時の話からだな。もう1年半ぐらい前になるかな~。」
シリウスは昔のことを話し始めた。


いつものように、ソウイチと遊んで家に帰る途中だった。
もう少しで家が見えるというところで、急にあたりが真っ白になった。
そこでなぞの声にいろいろ質問され、急に意識が遠のいていった。
目が覚めると、目の前にいたのはオレンジのスカーフを巻いたイーブイだった。

「とまあ、こんな感じでオレとコンは始めて出会ったんだ。」
みんなはうなずきながら話に耳を傾けている。

そこで、コンから自然災害のことを聞き、自分もその被災者の一部だということを聞いた。
幼いころ、地震による湖と川の氾濫で流されてしまい、両親と生き別れになってしまったのだ。
それ以来、水が苦手で泳げないのだという。

両親と生き別れになってからは、別の村で親切な人が引き取ってくれ、その人の子供と同じように大事に育ててくれたのだそうだ。
それでも、コンはやはり孤独を感じていた。
その人は優しかったが、やはり両親のことをずっと忘れることはできなかったのだ。
そして、自分みたいな境遇のポケモンをこれ以上出さないために、両親を探すために救助隊を作ることを決心したのだ。

しかし、決心したのはいいが、一緒に救助隊を組む仲間は周りにいなかった。
いろいろな人に声をかけたものの、いい返事は返ってこなかった。
シリウスと出会った時も、ちょうど断られて落ち込んでいたところだったのだ。
それを話すと、シリウスは真剣な面持ちで聞いた。
そしてシリウスは、コンをどこか放っておけないような気持ちになったのだ。

「正直、コンがそこまでつらい目にあってるとは想像できなかったぜ。だから、何とかしてやりたいって思ったんだよな。」
しかし、シリウスはあまり表現が上手なほうではない。
コンに救助隊をやってくれないかと言われた時は、こう答えたのだ。

「オレは、救助隊なんかをやるがらじゃねえよ。」
その言葉に、コンは落胆した。
断られたと思ったのだ。

「やっぱり・・・、突然こんなこと頼んでも無理ですよね・・・。いいんです。また、ほかの人に頼んでみますから・・・。」
コンはそのまま、シリウスの前から去ろうとしたが・・・。

「でも、お前の両親を探すのは手伝ってやる。救助隊はそのついでだ。」
コンが振り返ると、シリウスは笑っていた。

「じゃ、じゃあ・・・。」

「何度もおんなじこと言わせんなよな。救助隊やるって言ってんだよ。」
その言葉を聞いたとたん、コンはシリウスに飛びついた。

「ありがとう・・・。ありがとうございます!」
シリウスは戸惑ったが、コンはシリウスに抱きついたまま離れようとしない。
シリウスは引き離そうとしたが、コンの顔を見てやめた。
コンは、泣いていた。ようやく、信頼できる人に出会うことができた、それがうれしかったのだろう。

「お前は一人なんかじゃねえよ。お前のそばには、ずっとオレがいてやるよ。だから、もう寂しくねえ。」
シリウスはコンの気持ちを察して、そんなことを言いながら頭をなでた。
そこから、二人の救助隊生活が始まったのだ。


「お前本当に誤解招くことばっか言うよな。」
ソウイチはあきれたように言った。

「るせえ!ほっとけ!」
シリウスはソウイチをにらみつけた。

「だけど、本当にコンはつらい思いをしてたんだね・・・。」
モリゾーも、話を聞いてつらくなった。

「でも、シリウスがそばにいてくれたから、やっとここまでくることができたんです。本当に感謝してます。」
コンはシリウスを見て言った。

「よ、よせよ!照れるだろ!?」
シリウスは顔を真っ赤にした。
その様子がおかしかったのか、みんなは大笑いした。

「で、こっからが本題なんだけど・・・。」
シリウスは、コンの両親を見つけるまでの話を始めた。


ギルドを出発してから数日、シリウスとコンは依頼の解決に明け暮れていた。
そんなある日・・・。

「ふあ~あ・・・。なかなかはぐるまに関する情報ないな~。」
シリウスは少し眠そうにあくびをする。

「そうですね~・・・。」
コンも相槌を打つ。

「ちょっと連絡所にでも行ってみるか。」
シリウスは腰を上げると、基地を出て行った。
コンもその後を追いかける。
コンが追いつくと、シリウスは連絡所の前の掲示板で依頼とにらめっこしていた。

「どうですか?」
コンはシリウスに聞いた。

「さっぱりだぜ・・・。どこにもときのはぐるまの情報は・・・ん?」
依頼に目を走らせていると、シリウスの目はひとつの依頼に留まった。

[私達の、生き別れになった娘を探してください。娘はイーブイで、オレンジ色のスカーフを巻いています。]

その依頼の文章に、シリウスもコンも釘付けになった。

「お、おい・・・。これって・・・。」
シリウスとコンは、その依頼を手にとってじっくり見た。
依頼主は、サンダースのライト、エーフィのフィアナとなっていた。

「コン、お前の両親って確か・・・。」

「お父さんはサンダース、お母さんはエーフィです・・・。」

「じゃあ・・・。ここに書いてあるのって・・・。」

「私のことかもしれません。でも・・・。」
コンは少しためらったそぶりを見せた。
今までもこういう依頼は何件かあったのだが、すべてが外れていたのでコンもあきらめかけていたのだ。

「行ってみるしかねえだろ?これから先見つからねえなんてのは絶対ねえんだから。」

「は・・・、はい・・・。」
まだためらいはあったものの、シリウスに説得されてコンは依頼主のところへ行ってみることにした。

ライトとフィアナは、森の奥にある湖のそばに住んでいた。
それほど木々が生い茂っているわけでもなく、どこかバランスの取れた場所だった。

「(この場所・・・、私が前に住んでいた村に似ている・・・。)」
足を踏み入れるにつれて、コンはそんなことを考えていた。
そして、とうとう依頼主の家の前にたどり着いた。

「コン。いつものとおり、お前は隠れててくれ。」
というのも、人違いという可能性もあるので、コンは別の場所に隠れて話を聞き、本当の両親かどうか確かめるのだ。
コンは近くの茂みに身を潜めた。ここなら十分話は聞こえる。
シリウスは、意を決してドアをノックした。

「は~い。どなた?」
女性の声がして、まもなくドアが開いた。
顔を出したのはエーフィだった。
おそらくフィアナだろう。

「あの、あなたは?」
フィアナは不思議そうにシリウスを見た。

「オレは、救助隊M・Sのリーダー、シリウスです。依頼のことについて話があって・・・。」

「依頼・・・?・・・!!ちょ、ちょっと待っててくださいね!あなた!あなた~!!」
フィアナは誰かを呼びに行くと、数分もたたないうちに戻ってきた。
どうやらサンダースのライトを呼んできたようだ。

「それで・・・、話というのは・・・?」

「よかったら、この依頼を出したいきさつを話していただけませんか?オレは、この依頼を解決したくてここにきたんです。」
シリウスは二人に聞いた。
最初は二人とも不安そうだったが、シリウスの言うことがうそではないとわかり、話してくれることになった。

「私達の家族は、ここから遠い別の地域に住んでいました。そこも、ここと同じように湖や川があり、とても過ごしやすい場所でした。家族三人、いつも笑顔が絶えなかった・・・。」
ライトはそこで言葉を切った。
顔にはつらそうな表情が浮かんでいた。

「ですが、あの巨大地震のせいで、何もかも変わってしまった・・・。」
ライトは声を絞り出した。
相当つらいのだろう。

「あの地震のせいで、湖や川が大反乱し、近くにいた村の人々や、私の娘も洪水に流されてしまったんです・・・。」
その言葉を聞いて、シリウスは思い当たる節があった。
確かコンも、洪水に巻き込まれたと言っていたのだ。

「あの時・・・、私がもっと手を伸ばしていれば・・・。ううう・・・。」
突然、フィアナの目から大粒の涙がこぼれ始めた。

「お前のせいじゃない・・・。私が、もっと体を伸ばせていれば・・・。」
ライトの目にも、うっすらと涙が浮かんでいた。

「ど、どうしたんですか・・・?」
シリウスはびっくりした。

「あの時、私達は娘を助けようとして、二人で協力して娘の近くまで手を伸ばしました。もう少しで届きそうだったのに、後から来た波に娘は飲まれて・・・。」
そして、ライトの目からも大粒の涙がこぼれ落ちた。

「地震がおさまった後も、私達は必死で娘を探しました。だけど、みんな自分のことに精一杯で、娘の消息はまったくわかりませんでした・・・。そのころは救助隊もまだなかったから、娘を探す手段は限られていたんです・・・。」
フィアナはところどころつまりながら話した。

「もうあきらめかけていたんですが、最近は救助隊も多く結成されたと聞いたので、最後の望みを託して、この依頼を出したんです。」
ライトが言った。

「それで、その娘さんの名前は?」
シリウスは、一番重要な部分を質問した。

「コンといいます。やさしくて、親切で、本当に我が家の宝だった・・・。」

「もし願いがかなうなら、コンにもう一度会いたい・・・。」
二人の足元には大量の涙がたまっていた。
コンを救えなかった後悔、もう一度会いたいという思いが募り募っていたのだろう。

「ライトさん、フィアナさん。もう泣かないでください。娘さんには、会えますよ。」
二人は、シリウスの言ったことが理解できなかったのか、きょとんとした顔になった。

「実は、そんな気がして本人を連れてきてるんです。」
その言葉を聞いて、二人はようやく意味を理解した。
二人はうれしそうな顔になったが、すぐに表情を曇らせた。

「でも・・・、あの子は私達に会ってくれるだろうか・・・。」

「どうして探しに来てくれなかったんだってうらんでるんじゃないでしょうか・・・。」
確かに、二人の気持ちはわかる。何をいまさらと言われないか不安なのだ。

「会ってみればわかるさ。」
シリウスが茂みのほうに目配せすると、恐る恐るコンが出てきた。
二人は、コンの姿を見て息を呑んだ。
成長しているとはいえ、紛れも泣く自分の娘に間違いなかった。
それに何よりも、二人がプレゼントしたオレンジのスカーフを巻いているのが何よりの証拠だった。

「こいつが、オレのパートナーのコンです。」
コンはシリウスの近くまで来て、初めて二人の顔をじっと見た。
覚えているのは、両親がサンダースとエーフィーということだけ。
コンは違うのではないかと心配したが、それは杞憂に終わった。

「コン・・・・・・。コーーーーン!!!」
二人はいきなりコンに抱きつくと、声をあげて泣き始めた。

「コン・・・!よかった・・・!生きていたんだね・・・。」

「こんなに立派になって・・・。無事でよかった・・・!ずっとさびしい思いをさせて・・・、本当にごめんなさい・・・。」
コンは少し戸惑ったが、やがて、あることに気がついた。

「(この感覚は・・・、前にも感じたことがある・・・。お父さんとお母さんの、温かい肌のぬくもり・・・。そして、お父さんとお母さんのにおい・・・。)」
再びコンが二人の顔を見ると、それは紛れもなく、コンの両親だった。

「お父さん・・・。お母さあああん!!!」
コンもこらえていた思いが吹き出し、二人の胸に顔をうずめて泣き始めた。
コンは、生き別れになった両親と、ようやく再会することができたのだ。
両親の不安も、コンの不安も、涙とともに流れ去っていった。
本当によかった、シリウスは心からそう思った。


シリウスの話はこれでおしまい。
みんなはすごく感動し、特にソウイチとソウヤは、涙なしでは聞けないというほど号泣していた。
他のみんなも、目にうっすらと涙が浮かんでいた。

「ぐす・・・。泣かせるんじゃねえよ!!」

「泣き虫なんだから・・・。」

「そういうお前だって泣いてんじゃねえかよ!!」
すぐにくだらないことでけんかを始める二人。

「まあまあ。すごく感動してるのはみんな同じなんだしよ。」
ソウマは二人をなだめた。

「でも、ほんとによかったわね。」
ライナはコンに笑顔で言った。

「はい。お父さんとお母さんも、元気そうで何よりでした。」
コンはすごく嬉しそうだ。

「あの日は時間も遅くて、ライトさんが泊まっていけって言うから一晩お世話になったんだ。」

「二人と話せてすごく楽しかったです。」
コンはそのときのことを思い出していた。
親子水入らずで過ごすのは、本当に心が休まるものなのだ。

「それで、今度皆さんを連れてくるって二人に約束したんです。二人とも、私の友達なら大歓迎だって言ってくれました。」
コンは嬉しそうに言った。

「ほんとか!?やったぜ!!」
ソウイチは大喜びだ。

「でも、休日のほうはどうするの?」
ソウヤの質問で、ソウイチのテンションは一気に下がった。
ライナの里帰りで、休日は全部使ってしまったのを思い出したからだ。

「そうだったわね~・・・。とりあえず、休日がもらえるまではお預けってことね。」
その言葉に、コンとソウイチは残念そうな顔をした。

「コンはわかるけどなんでお前が落ち込むんや。」
カメキチはソウイチの頭を小突いた。

「るせえ!休みが嬉しくないわけねえだろうが!!」
ソウイチはカメキチをにらみつけた。

「二人ともけんかしないで・・・。」
ドンペイがあわてて仲裁に入る。

「だけど、本当によかったね。オイラもすごく嬉しいよ。」
モリゾーはコンに言った。

「ええ。私、今度両親に会いに行くときは、モリゾーさんを真っ先に紹介したいと思ってます。」
それは、もちろんコンがモリゾーのことをすきだからだ。
モリゾーはそれが分かったのか、少し顔を赤くした。


「こらあ!!お前たち!!何をそこでサボってるんだ!!早く仕事に行かないか!!」
みんながびっくりして振り向くと、ペラップがものすごい形相で怒っていた。

「ったく・・・。せっかく感動に浸ってたのに、ムード壊すよな~・・・。」
ソウイチはため息をついた。

「そんなことを言う暇があるんならさっさと仕事しな!!これ以上サボったら、ばんごはん抜きだからね!!」
ソウイチの言ったことを目ざとく聞きつけ、ペラップはとうとう切り札を出した。

「ええええええ!?そ、そりゃ困るぜ!!」

「ばんごはん抜かれたらたまったもんじゃないよ!!」
みんなはあわてて部屋を飛び出していった。
ばんごはんの脅しは結構効くようだ。


アドバンズ物語第四十五話



ここまで読んでくださってありがとうございました。
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Last-modified: 2011-04-29 (金) 00:00:00
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