ポケモン小説wiki
ようき最速ASルカリオは禁伝環境で肩身が狭い

/ようき最速ASルカリオは禁伝環境で肩身が狭い
本作は♂同士の恋愛・性的描写を含みます。お楽しみください。

 



 エースバーン――
「今日も大活躍だったな」
「ニィ~! ガラルの平和がオレが守る!」
 ランドロス――
「受けもエースもできるなんてさすがだ。頼もしいよ」
「当然である。(いかずち)旋風(つむじかぜ)の調伏に比べれば、ポケモンバトルなど容易いことよ。ぐはは」
 ガオガエン――
「あのザシアンを起点にするのか。すごいな」
「ケケケ、第二のランドロスと呼ばれたガオガエン様だ。舐めてかかるやつは美味しくいただくまでだぜ!」
 伝説のポケモンを二体まで投入できる特殊レギュレーション。現在のガラル地方のランクバトルでは、生半可な創意工夫が圧倒的な力で押し流される地獄じみた環境が形成されていた。そのような中にあっても、おれの仲間たちはみんな、持ち味を活かしてバトルに貢献している。
 強みが発見されて大流行するポケモンを中心に、バトルの環境は変化してゆく。トレーナーは環境にあわせて手持ちを変え、様々な戦術を編み出し、様々な戦術に抗い、挑戦を続ける。
 おれは……
 相棒枠――どんな環境にも必ず採用される、トレーナーにとって特別なポケモン――ルカリオであるおれは、どうやらそういうポジションを獲得しているらしい。このガラル地方でのランクバトルで、おれはたくさんの仲間とパーティを組んできた。おれととても相性のいい仲間がいることもあれば、そんなに噛み合ってるとも思われない仲間と組むこともあった。
 しかしいつの時も、バトルにおけるおれの選出率は高くない。
 誰よりもおれ自身がわかっている事実。スペック不足――パワーも、スピードも、耐久力も、ルカリオには何もかもが足らない。パーティ構築にルカリオを組み込むことも、バトルにルカリオを選出することも、不必要な負担が伴う。
 おれは、勝利への貢献が、あまりにも少なすぎる。
「惜しかったな。あそこから逆転されるなんて」
「う~ん、オレもいけると思ったんだけどなあ。あのカイオーガ、かなり防御の訓練をしてたね。撃ち負けちゃった。あはは」
 イベルタル――
 おれが、カイオーガを止められるナットレイだったら。
「あんなに押されてたのが、互角まで盛り返せるんだ。おまえはすごいよ」
「そ、そんなことないよ……結局カバルドンには仕事を許しちゃったし……最初にきちんと倒せていれば……それに、や、やっぱりポリゴン2の相手はぼくには……」
 ガマゲロゲ――
 おれが、かくとうタイプとみずタイプの強力な複合のウーラオスだったら。
「いい流れだったのに、いっぺんに止められたな」
「ああ、悔しいぜ。でもゼルネアスは俺じゃあどうしようもねえな。次は他のヤツになんとかしてもらうさ。あとは俺がブッ飛ばす!」
 ゼクロム――
 おれが、フェアリータイプにちゃんと強いはがねタイプのヒードランだったら。
 おれだけの話で済ませられるなら、自分の実力不足が不自由ではない。そういうのはただのないものねだり、伝説のポケモンの持つ圧倒的なスペックなんかは望んじゃいない。それよりもおれがもっと悔しいのは、仲間たちが負けることだ。あいつらは、決して弱くない。本来の役割を遂行するとき、おれの仲間はみんな、本当に強い。おれのような足枷から解放されたバトルで、勝つべくして勝ち、負けるべくして負ける、まっとうな勝負をするべきだ。
 最強のポケモンなんかいない。だから、あるポケモンでは荷が重い敵は他のポケモンで対策する。そういう相互作用の噛み合いが、より強力なパーティを成立させる。構築、という概念。ポケモンについての一単位。
 おれには、何もない。「このポケモンなら絶対に勝てる!」……ルカリオにはそういった役割が持てない。あるいは、もっと高水準に役割をこなせるポケモンが他にいくらでもいる。
 単なるトレーナーの拘りとしてのおれ。おれというハンデを常に背負わされて戦う仲間たち。
 伝説のポケモン同士のバトル……あるいは、伝説のポケモンに抗い、時には打ち倒してさえみせる()()()ポケモン……そういう仲間たちの姿を見ると、おれはみんなのことがこの世の何よりも誇らしくて、だからおれは、いつだってみんなに対して、とても、とても……




 キャンプカレーは、からくちジューシー。
 ガラルの夜は寒さが厳しい。夕飯にはカロリーてんこ盛りで、体の温まるからくちジューシーカレーがちょうどいい。
 おれのトレーナーはなかなか悪くない勝率を常にキープしている。凄腕というには無理があるにしても、色々なポケモンを育て、創意工夫を凝らしたバトルをやるポケモントレーナーだ。ランクバトルでは中堅といったところ。シーズンごとに環境が変わる都合、おれも色々なポケモンと出会い、戦い、バトルの後には一緒にカレーを囲んだ。
 意外というべきだろうか、仲間たちはみんな、割と仲が良い。細かな性質を鑑みれば受け付けない組み合わせもあっただろう。だけどバトルでは互いが互いを助け合う。絆は、はじめに存在するものじゃない。バトルの中で生まれ、気づき、強まってゆくものだった。誰かが撃ち漏らした敵を、誰かがカバーする。誰かが退かなくてはならない不利を、誰かが五分以上に立て直す。そこに信頼が築かれないはずがなかった。ごく自然に、だけど奇跡みたいに、仲間たちの絆が存在した
 おれたちのバトルに反省はない。いえば、敗北の瑕疵は常におれたちではなくトレーナーの側にある。トレーナーの指示、トレーナーの選出、トレーナーの構築……最終的な責任がポケモンにはない。だからおれたちのキャンプはいつだって和やかだ。
「お疲れ」
 大皿にカレーを盛って、おれはバンギラスのところへ寄っていった。以前にも組んだことのあるバンギラスだ。長いこと採用されていなかったが、ゴーストタイプの方のバドレックスやイベルタルがパーティ単位で重かったので、久しぶりに一緒になった。テッカグヤ、ナットレイなども重めだということで、以前は採用されなかった「ほのおのパンチ」を覚えている。
 バンギラスは、テッカグヤやナットレイには相性不利を強いられる。テッカグヤはともかくナットレイなどは本来、かくとうタイプのおれが処理しなければならない相手だ。だけどこのところのナットレイはザシアンクラスのポケモンを相手にするのが常識で、ルカリオごときでは牽制にもならないらしい。平気な顔でバトルに出てくる。
 圧倒的な耐久力でイベルタルやサンダーをものともせず、相性不利の相手もただではすまさない。そんなバンギラスの背中は、今も変わらず頼もしかった。
「おお、さんきゅう。今日は働かされっぱなしで腹ペコだぜ」
 ミミッキュを撫でて遊んでいたバンギラスは、舌舐めずりで皿を受け取った。表情としては凶悪なんだが、地面を尻尾で掃きながら待ちわびるその顔が喜び溢れる笑顔とわかれば、これはこれで愛嬌たっぷりだ。
「おまえも、お疲れ」
 おれもミミッキュを撫でて労い、ミミッキュと自分のカレーを皿に盛ってくる。おおざっぱな手の形をした影が地面からニュッと伸びてきて、皿を受け取るとミミッキュはどこかへ行ってしまった。とても恥ずかしがり屋なヤツで、食べる姿を見られたがらない。
 このミミッキュは「なげつける」ででんきだまをぶつけて敵をマヒさせるという一風変わった戦い方をする。マヒだけではなく、「のろい」や「かげうち」で他の仲間の攻撃圏内まで敵を弱らせる。「なげつける」は「でんじは」とは違ってじめんタイプ相手でも気にせず繰り出してゆけるし、同時にきあいのタスキも潰してくれる。優秀な起点作り役だ。
「それにしても」
 言いながら、バンギラスはカレーの山を特大スプーンで豪快に切り崩す。こんなふうに盛り付けると、それはもうカレーというよりは雪と岩肌の色合いを入れ替えたカンムリ雪原の山脈のジオラマみたいに見える。だけど体の大きなバンギラスはこれくらいは食べないと量が足りない。それこそ、山一つくらいは地図から消し去ってしまえるバンギラスの豪快さで、何でもかんでもよく食べる。見ていて気持ちが良いくらいだ。
「すげえバトルになったもんだよなあ。トゲキッスだのパッチラゴンだのがどうのこうの言ってた頃が懐かしいぜ」
 傍に腰を下ろして、おれも自分のカレーに手をつける。熱いのが苦手で、吹いて冷ましながら食べるせいで、おれはいつも食べるのが遅い。
「ザシアンやカイオーガがあれだけたくさんいるのに、平然と闘ってるんだから、おまえはすごいよ」
 おれは言った。スプーンを咥えながら、バンギラスはぐふふと不敵に笑う。でもおれが知るバンギラスの笑いよりも、迫力がずいぶん抑えられている。
「まあよ! って、言いてえけど……そいつらはさすがに俺じゃあな。ありゃ異常だ」
 バンギラスはそう言うが、実際には「じしん」でザシアンを消耗させたり、「すなおこし」で天候を変えてカイオーガに対抗したりするのだ。バンギラスというのは何をしてもトップクラスのポケモンだ、いつでも……
「こんなバトルをずっと続けてたんだろ。おまえも大したもんじゃねえか」
 そうなことを、バンギラスは言う。カレーが辛くて、おれは息を吸って口の中を冷ます。辛口は嫌いじゃない。でもバンギラスみたいにガツガツは食べられない。
「そんなことない。おれなんて本当は、ぜんぜん環境に刺さってないんだから」
「でも俺とかラッキーみたいなのがいるから、かくとうタイプはいつでも必要だろ」
 それだって、本当ならウーラオスやフェローチェに任せた方がいい。パワーとスピードがあるに越したことはない。こんな力任せの環境では、なおのこと重要だ。
 脂身たっぷりの肉の塊を、バンギラスは旨そうに口へ運ぶ。バンギラスの食べ方は一口一口が大きいが、大好きな肉はとても大事に食べる。肉の脂を十分に味わってから、バンギラスは言った。
「おまえはな、なまじポケモンをいっぱい見てるからそう思うんだよ。おまえだけの強さも絶対にある。それ、ちゃんと信じた方がいいんじゃねえのか」
 そうだろうか。
 おれは自分に、それほどの高値をつける気になれない。おれがパーティにいることで、他のポケモンたちが輝くチャンスを不当に奪っているんじゃないかという気がしてならない。おれは、弁えていたいと思う。みんなと同じ土俵になど立てないと思う。おれをパーティ入りさせることに執着するトレーナーには、率直な愛情を感じる。だけどおれは、みんなと一緒に闘えることを誇りには思えない。貢献度ゼロのザマで、そこまで図々しくはなれない。
 鍋を挟んだ向こう側で、笑い声が上がった。
「ああもう、おかしい。あまり笑わせないください」
「えっ、オレなんかおかしい?」
「さては貴様、世に言う、アレだな。『てんねん』だな」
「私もそう思っていました」
「ちょっ、なんで! なんで笑うんだよ、ねえってば~」
 イベルタルがからかわれている。笑っているのはルナアーラとランドロスだった。
 イベルタル……カイオーガに負かされたバトルはあったものの、負けてばかりという訳でもなく、カイオーガを倒すことだってある。場を整え、勢いに乗ったイベルタルは止まらない。防御の訓練を詰んだタフさと、ダイジェットのスピード、特性「ダークオーラ」の火力を高水準に具えた、とても強力なエースだ。そして、イベルタルという得手不得手がはっきりしたエースの裏選出、攻めも守りも一流のサブエース・ランドロス。起点役に留まらず削り役も強力にこなすルナアーラ。
 トップクラスに優秀なポケモンたちだ。勝っても負けても、彼らには活躍の場があり、互いを補いながらバトルをしている。だから彼らは本当の意味でパーティなのだし、あんな風に一緒に笑える。
 そこにおれの居場所はないんだと思う。おれとみんなとの間には何もない。同じパーティという以上の関係は、何も。
「おまえはよくやってるよ」
 バンギラスはそう言った。大皿を片手に、おれの肩を抱き寄せる。強引で、力加減をしないものだから、おれはいきなりのことにカレーの皿をひっくり返しかけた。でもバンギラスはおれの気持ちをよく知っているから、そんなことをするのだ。
 やるせなさは、今に始まったことじゃない。リザードンやアイアントが流行っていたころからそうだった。エースバーンの特性「リベロ」が出現してからなど、気持ちが強まる一方だ。
 だから、バンギラスは頑丈な体におれを寄りかからせる。頭を撫でたりもする。その優しさ、頼もしさに、おれはいつも擦り寄りたくなってしまう。
「なあ……今日、どうかな」
 おれが見上げると、視線がぶつかった後でバンギラスはにたりと笑った。
「いいぜ」
 おれの頭をぐしゃぐしゃっと乱暴に撫でて、バンギラスはカレーをかき込んだ。




 キャンプ場はナックルシティのはずれだ。
 ナックルシティは、ポケモンを育てたり、バトルしたり、何かと都合がいいらしい。だからナックルシティは普段からおれたちの主な拠点だった。
 みんなでカレーを食べて後片付けも済んだら、頃合いを見計らい、夜の暗がりに紛れるみたいにしてキャンプを離れる。ナックルシティからであれば、目と鼻の先にはワイルドエリアがある。
 丘陵の砂嵐は、はがねタイプといわタイプにとってそよ風みたいなもんだ。細かい、粒々の集まり。最も単純な鉱石の銀河系。ワイルドエリアの砂原に、砂漠ほどの過酷さはない。もしおれたちがほんとうに砂漠を歩くなら、それこそ砂嵐を気にするなど楽天家だ。カラカラに干からびれば、どんなにプライドの高いヤツだってキズぐすりの一滴までしゃぶり尽くすと決まっている。
 風にえがかれ波うつ砂の紋様。砂丘の奥には砂丘があり、その奥にはまた砂丘がある。入りくんだ地形より、地平線まで同じ風景が続いているほうが、かえって迷路じみていると思う。振り返ると五十歩ほど後ろの軌跡は、もう風に吹きちらされて、影も認められない。バンギラスと一緒に野生の気配が薄い場所を探ると、禿びた雑木林と巨岩が転がっているあたりがよさそうだった。
 岩陰に身を隠し、バンギラスの前に跪く。バンギラスは両手の爪を、蛇腹になった青いひし形の腹部の下、両脚の間にひっそりと走る横スジに引っかけるようにして、むっちりと上下に開く。どんな攻撃にもビクともしない頑丈なバンギラスの、数少ない肉感的部位。誰にも見られてはならないそんなところを、羞恥もなく見せつけられる。その堂々たる様がオスの威厳であり、格であった。排泄物と繁殖欲の獣じみた匂いが、わっと解放されるのが、臭気の壁となって嗅覚へガツンとぶつけられる。バンギラスの、最もダイレクトなオスのフェロモンをまともに喰らうと、堪らなかった。バンギラスの股間へ頬擦りして、肉の穴へ舌をねじ込む。
「おお、いいぜ。そのまま吸い出してくれ」
 バンギラスの湿った溜め息が良かった。それをもっとくれ。気持ち良くなったオスの呼気。まだぴったりと閉じているスリットへ唾液を塗りたくり、滑りを加えて舌を割り入れる。
 砂漠は、心を全て曝け出す鏡になるという。発生論的、生物学的には異質であり、肉体的には過酷であり、審美的には抽象であり、歴史的には天敵である。ここは砂漠ではなくワイルドエリアだが、その気があるから、おれたちはやってきた。予言者たち、巡礼者たちが砂漠へ向かって行くように。
「んは……ん……すげえにおい……ナカ、むくむくしてきた」
 バンギラスの尻尾がおれの頭をぐるりと包み、引き寄せてくる。
「ちんぽの穴ァ嗅いで、目ん玉にハートのウロコが見えちまいそうだな?」
 ぎくりとして、目を閉じる。おれは今、そんなにふしだらな顔をしていたんだろうか? わざわざ口に出されると恥ずかしい。でもそんな冗談を言うくらいバンギラスが()()()になってくれることが、おれには無性にありがたくもあった。そうでもなければ、おれはとても生きてゆけない。
 分厚い肉の鯉口を口で塞ぎ、吸い付く。ムチムチとして、それでいてザラつくようなところもあるバンギラスのスリットが蠢いて、舌が圧迫された。時々、バンギラスは身を硬くして背中を震わす。おれの頭に巻き付いたままの尻尾に、ぐっと力が込められる。
 おれは嬉しい。気持ちいいんだ。おまえがそんなふうに喜んでくれるなら、おれはいつまでだってココを舐めてやりたいと思う。
 奥へ奥へと舌を伸ばすと、体内から体外へと飛び出したくてウズウズしているものが舌先に触れる。ちょっと舐め転がせる程度の硬さをもったそれをつついていると、外側へ向けて少しずつ肉壁全体が捲れ上がってゆく。
 おれは吸引を強めた。
「お、おっ……出る、出るぜっ」
 言うが早いか、みるみるうちにスリットのナカが盛り上がり、舌を押し返される。体内に引っ込められていた部分が表返り、バンギラスの体内から突き出してくる。おれはそれを口に受け止める。が、バンギラスほどの巨体にもなれば、サイズ的な部分が規格違いだ。上顎の辺りを押されて頭が仰け反る。バンギラスの方も無理強いはしない。尻尾の包容が解かれ、おれは一度口を離した。
「ぶあっ……」
 散々に唾液で濡らしたバンギラスのちんぽ……その全容はなかなかにグロテスクだ。たんと血を溜め込んで赤黒く、ぷっくりと膨らんで段を作る亀頭より下には返し針のように根本へ向いた突起にまみれ、根本へいくほど竿が太く、節くれ立ってでこぼことしている。こんな凶悪な生殖器が、過去に何度もおれの尻の中に埋め込まれてめちゃくちゃにしてくれたのだ。そのことを想像すると、おれはバンギラスに対してバトルにおける優位性というだけでなく、オスとしての格までもが違うのだという気がして、胸がぎゅうっとキツくなる。
 深く息を吸い、咥え込む。バンギラスの巨根は口を開き切らなければならないほどに太く、あっさりと喉の入り口を塞いでしまうのに、それでも根本までは咥えられない。唾液と粘膜で包んで吸いながら頭を引くと、上顎、頬肉、歯列の裏側などを突起にカリカリ引っ掻かれる。喉が空く隙に鼻呼吸し、届かないところは両手で握って口と一緒に扱き下ろす。手と口で、一つの筒の形になるように。そうしなければならないような、とてもフェラチオしづらいちんぽなのだ。だけどそうやって工夫するところがよかった。見た目にはちょっとばかり厳つくても、おれが気持ちよくなってほしいと思って頑張るだけ、バンギラスはちゃんと快感を得てくれるから。外見が違うだけで、これはおれのと同じちんぽなんだって思うと、すごく愛おしいと感じる。
 吹き付ける砂のカーテンが、おれの唾液でちんぽにこびりつき、じゃりじゃりと口に入り込む。でもそんなのはどうだってよかった。じゅるじゅる、音を立てながら吸い上げて口の中のものを飲み込むと、唾液よりも粘り気の強い我慢汁のぬめりが喉にまとわりついて、ざらざらの砂粒と共にほんの少しの独特な塩辛さがあって、おれはそちらの方をよく感じていたい。
「あーあー、がっついちまって。カッコイイ顔が台無しだぜ?」
 バンギラスが後頭部に手を添えて、軽く頭を揺さぶる。バンギラスのイイ速度と深さで、口の中をちんぽに犯される。おれはそんなふうにされるのが好きだった。バンギラスの思うようにおれを扱ってほしかった。別におれなんがカッコよくない。次から次へと現れる強敵に立ち塞がり、仲間を守り、勝ち続けるバンギラスに比べれば、少しも。
 おれがこんなことをするのは、何も仲間へ対する代償行為というだけじゃない。おれはみんなを尊敬してる。大切に思ってる。だからおれもみんなを助けたいと思う。守りたいと思う。でもおれは、だめだった。みんながおれのために頑張ってくれるだけのことを、おれはちっとも返せない。ランクバトルの、雲の上のような戦いなんて、おれにはとてもついていかれない。それでも相棒枠としてのおれにはパーティにしか居場所がない。みっともなく、図々しく、おれはこれからもパーティの枠に居座り続けるだろう。だからこれがせめてもの――おれとみんなとの最後の絆だと思う。
「おお、すげっ……あ~、気持ちいい」
 ぐぽ、じゅぼ、と口から音がする。おれの口にはとても入り切らないちんぽだけど、たまに角度が噛み合って、先端が喉の中を突いてくる。そのたびにおれはせぐりあげて、バンギラスは加減する。吐き気が込み上げ、呼吸がままならないのは苦しい。でもそれは、全然かまわないのだ。おれは絶対に自分からは口を離さない。バンギラスの大切なちんぽに牙を立てないよう、渾身の集中力で吸い付く。
「おまえ、ほんとちんぽ好きだよなあ」
「んっ……ぐ、しゅきぃ」口が開きっ放しできちんと言えない。「しゅき」
「俺のちんぽ、美味いか?」
「おいひ……ん、どんどんえろい味になって……におい、も……」
「ザーメン飲みてえ?」
 咥えたままバンギラスを見上げて頷く。おれがこんな返答は、別にバンギラスを喜ばせたいからじゃない。おれは本当にそう思う。いつも強くて頼もしいバンギラスとエッチなことができるのが、おれは嬉しい。
「だーめ。こんなにしゃぶられちゃあ、一発で満足しちまわあ」
 バンギラスは偽悪的に笑い、何度か軽く腰を振ってじゅぽじゅぽと口の中を掻き混ぜると、おれの頭を押し退けた。くっきりと張り出たカリと返し針が唾液をこそぎ、口から抜けるとねっとりした雫になってちんぽを伝い、糸を引いて砂の上に垂れ落ちた。
「せっかくなら出すんなら、コッチだろ!」
「おわっ、あっ、あッ!」
 おもむろに、バンギラスが前屈みになったかと思うとおれの腰を両手に掴み、持ち上げた。ポケモンがイーブイを抱き上げでもするみたいに軽々と。
 上下を逆さまに、背中から抱き留められる。バンギラスは尻に顔を埋め、肛門に舌を捻じ込んできた。
「あッ……あ゛っ!」
 肉厚で幅の広い舌が、肛門の窄まりを舐め拡げる。自分の指などでは到底届かないようなところを、ねっとりとねぶられるのは快楽だ。バンギラスは限界まで舌を伸ばして腸をほぐすように捏ね、ずるりと引き抜く。きわめて排泄に酷似した、排泄性感。特大ボリュームの舌を詰め込み、引き抜く。何度も、何度も。
「ひっ、ひいっ……んん~……!」
 舌を抜かれると、注がれる唾液が、空気ごと、ぶちゅ、と漏れる。そんな音を聞かれてしまうことも、排泄を錯覚させるアナル舐めも、あまりに恥ずかしすぎた。
「んー? どうした。こんなにしちまって。ケツ舐めイイか?」
「あッ!? やっ、前だめッ、あっあっ!」
 バンギラスは片腕でおれを固定しながらおれのちんぽにまで手を出し始める。アクロバティックな姿勢に拘束され、アナルを舐めほじられて、おれは触られる前から勃起していた。包皮を根元まで剥き下ろされ、覆うもののなくなった亀頭球をぐにぐにと揉まれる。その上、バンギラスはアナルに突っ込んだ舌の尖端を持ち上げて、ちんぽの裏側の辺りをしきりに圧迫し始める。
「くあッ……! あっ、あ゛あッん……!」
 おれの好きなところを知り尽くした動きで、バンギラスがそこばかりを舐めてくる。ちんぽの奥からツンとした疼きが込み上げて、握られた亀頭球が揉まれるとみるみる感覚が育ってゆく。
 前からも後ろからも気持ちよくされて、どうしようもない。そこにはバンギラスの無償の愛情を感じた。顔が見えなくとも、波導が伝わる。おれがバンギラスを楽しませてやりたいと思うのと、同じ心境がバンギラスの側にもあるのだ。
 被愛……
 おれの波導が、バンギラスの存在と気持ちいいことだけを感得し続ける。愛情と性感ばかりを伝えられることは、何にも勝る至福だった。
「ふあっ! あ、あっ! あ゛……ッ!」
 どんどん良くなる。尻の中で快感が膨らんでゆく。波導が快感を仔細に分析し、体が敏感になり続ける。自分で自分を制御できない。おれは逆さ吊りにされながら、体を反らしてバンギラスの腹へ後頭部を押し付けていた。するとバンギラスの尻尾がおれの顔をぺろりと撫で、口の中へ入り込んでくる。
「ん゛ッ、かふッ……んっ、んっ!」
 バンギラスの尻尾というのは個性的な形をしている。先細りの尖端を中心に、花弁のように皮膚が広がっている。ちょうど皮を剥いたナナのみのように。その皮の部分が、尻尾を咥えさせられたおれの口をぴったり塞いでしまっていた。
「ぐひゅ、ん゛ーッ! ん゛ん゛ッんっんお゛ッ!」
 口の中を、尻尾が掻き混ぜる。岩と、巻き上がる砂が少しだけ映るばかりの視界。身動きが取れずに声もくぐもる。無関係なはずの事柄なのに、それらが全て快感を手伝う。おれが置かれた状態の何もかもを、波導が快感に結びつけてゆく。
 ぐるりと視線が上向きになると、バンギラスの勃起がだくだくと我慢汁を溢れさせているのが見えた。直接何かせずとも、おれをよがらせることでバンギラスも興奮を覚えているらしいのだ。
 そうと思ったら、もう駄目だった。海底に身を潜めたルギアが水面へ急上昇し、その姿を現すように、尻からのオーガズムが劇的なかたちでやってくる。
「ん゛ん゛ん゛ッ! んふ、ふんんッ――!」
 ガチガチに硬くなるちんぽを、バンギラスが根っこで捕まえている。とびきり気持ちいい弱点を、ぐっ、ぐっ、と揉み込んでよがらせてくれる。
 体の全部が震える。たまらずに、おれは両脚をきつくバンギラスの頭に絡ませて、射精しないまま達した。
 砂地に白い火花が散る。全身で感じる多幸感。そのドライオーガズムは、ちんぽを手で扱くだけの絶頂の何倍もの快感だった。
 バンギラスが口を離し、含み笑いした。「イッたな。ケツもちんぽもすげえぞ」
 砂の上に降ろされる。砂粒の絨毯は蕩けきった体に柔草のしとねのように心地良かった。仰向けに寝かされたおれに覆いかぶさってくるバンギラスの体の、大きなこと。
「まだまだ、これからが本番だろ? ほおら、()()()()()()()だ!」
「ひぎッ――!!」
 全身を下敷きにされながら、バンギラスの巨根が尻に入りこんでくる。舌で解され、拡がった直腸でもなお、息が詰まるほどの太くて硬いものが、体の中を圧倒的なやり方で貫いてゆく。淫らになり続けることをやめない体が、少しでも多くバンギラスを感じようとする波導が、それを快感以外のかたちで理解しようとしない。
「うあ゛あ゛っ、あ゛ッ! やっ、あっ、ぎ、もぢっ――! いぐ、いぐぅうぅ!」
「甘イキだけじゃ足りねえだろ? 怖くねえからイッちまいな!」
 強烈な「ボディープレス」に、全身が砂に沈む。頑丈なバンギラスの体にとって、思い切りぶっつけてもおれの胸のトゲを問題にしない。
「ココがイイんだよなあ? ケツ穴きゅんきゅん締めやがって」
「ひぎゅッ、い、ぐッ! そごっ、そごそごそごぉぉ!」
「オラァ、イけよ。我慢してんじゃねえ。もっと奥まで入れられてえかあ?」
 バンギラスが腰をくねらせ、長いストロークで尻をめちゃくちゃにほじられる。返し針にかかった中身が引き摺られ、再び中に押し込まれる。瘤が連なるでこぼこの竿が、内臓を激しく扱いてくる。
「やあぁあッ! めぐれるッ、おしり、捲れちゃうっ!」
「ほじりまくって開きっぱなしのガバガバにしちまおうなあ」
「だめぇえぇっ! ゆる、じでぇ!」
「じゃあこっちで犯してやろうか? ええ?」
「お゛あ゛ッ、がッ……ふが、いぃぃ……!」
 バンギラスが腰を擦り寄せると、恐ろしくなるほど深くまでちんぽが突き刺さる。腹の底で、ごん、と肉壁が小突かれるのを感じた。
「もういっこの穴、入れちまおっかなあ? んー?」
「ひぬっ……ひんじゃッ……」
「死んじまうくらいイかせる。気張れよ」
「がッ――!」
 S字にくねる腸の曲がり角がこじ開けられる。入ってはいけない場所に、ぶっくりと膨らんだバンギラスの亀頭が捩じ込まれた。
 体中に異様な痺れが起こる。おれは悲鳴をあげた。
「ボルチオ気持ちいいなあ? ほおら、ぐっぽぐっぽ」
「お゛ッ、お゛お゛――ッ!」
 狭く括れたところを、バンギラスの亀頭が好き勝手に出入りする。腹の底を掻き回される尋常ではない息苦しさは、体の外から体重で圧迫されるのとはまったく異質だ。敏感になり果てたアナルをちんぽにイかされ続けながら、結腸を犯される苦しさと、「でんきショック」じみた痺れを味わわされる。
「おい、見ろよ。ギャラリーが来てるぜ」
 バンギラスが体を退ける。頭がどうにかなってしまったような、混濁した意識の中で言われた通りに視界を巡らすと、砂嵐の中にワルビアルとゴロンダが立っていた。岩の上からは翼を畳んだウォーグルも見下ろしている。
 ワイルドエリア――その中でも、砂原はあまりに過酷なために、生存競争のかすかな土地だ。森や都会、栄えた土地に拘るからこそ、煩わしい競争が巻きおこる。あえて砂地に住んでしまえば、もはやどんな激しい闘争もありえない。砂地は不毛だが、そこに適応した生命もいる。まず僅か植物がいて、その植物の体液を吸うポケモンがいて、そのポケモンを食べるポケモンがいる。そのような証として、ちょうど灼熱の傍らに佇むノクタスのように、野生のポケモンたちはそこにいた……
「あんだけオス鳴きしてりゃあバレバレだな?」
 ぞくりと、おれの中の被愛欲求が震える。バンギラスの巨体に閉じ込められ、イきまくるおれのことを野生のポケモンたちが観察していたのだ……
 途端に息が上がる。胸がドキドキと騒ぎたて、悦楽が全身を駆け巡る。
「どうする?」
 にたり。笑みを浮かべながらバンギラスが耳元で囁く。
「みんなで犯されてえか?」
 彼らの波導は、おれを求めている。どうにかバンギラスのおこぼれに預かれないかと、剥き出しの好奇心がおれに向けられている。
 砂漠は、奪ったものを決して返してくれないという。富者だけが、バンバドロの背に乗れる。砂漠の中で一粒の星屑を探すのと、都会の中で新種のポケモンを探すのなら、どちらが無理なことなのだろう。「かたくなる」を続ける他に手立てのないトランセル同士のバトルくらい、どちらも馬鹿げている。
 砂漠は、心を全て曝け出す鏡になるという。発生論的、生物学的には異質であり、肉体的には過酷であり、審美的には抽象であり、歴史的には天敵である。
 おれはもう、自分がどんな表情を浮かべているのか分からない。確かなのは、おれが彼らに手招きしたこと。おれに求められるもののところを、そっくりそのまま差し出してやりたいという欲望だけが、真実だった。それも砂漠の効力、心のひけらかしなのだろうか? ここは砂漠ではなくワイルドエリアだけど、確かにこの極限の虚無変換器の中では、よほど遠くへ逃げないとかくれんぼさえできそうにない。そうだとしたら、怖ろしいと思う。おれは常に見くびられることに怯えているから。
 ニタニタと笑みを浮かべるワルビアルが、丸い腹を撫でながら歩み寄ってくる。砂風の中で更に砂を巻い上げながら、羽ばたいたウォーグルが降りてきておれを跨ぐ。無愛想なしかめっ面で草を咥えながら、ゴロンダが横に立つ。
「良かったな。モテモテだぜ」
 バンギラスの言ったことが、本当に本当だったらいいなと思う。
 ワルビアルがおれの頭を持ち上げ、足の間の割れ目に顔を押しつけた。腹を跨いだウォーグルは忙しく翼をバサバサさせながら、おれのちんぽに股間を擦り寄せる。ゴロンダがおれの手に半勃起を握らせた。
「ふッん、んん――ッ!」
 ウォーグルの総排泄腔は熱く湿っていた。完全に勃起したおれのちんぽを、行為に慣れているみたいに容易く飲み込みながら、両脚の上にうずくまる。アナルを犯されて昂ったままのちんぽは直接的な刺激に敏感になっていた。温かく包み込む肉の穴がすごく気持ちいい。
 まだ柔らかさを残したゴロンダのちんぽが、包皮越しのムチムチした手触りをどんどん硬くさせてゆく。波導など使うまでもない。興奮が、性欲が隠し切れない素直さが、オスの愛らしさ。愛嬌など少しも感じさせない面構えのこのゴロンダも、おれを弄びたくてたまらないのだ。どんな交尾をするんだろう? 期待が疼く。
 スリットを割り開いて舌で探ると、ワルビアルのちんぽが口の中へ突き出してくるのはすぐだった。おれとバンギラスの交尾をどれくらい見ていたのか? おれに催しながら悶々とした気持ちのまま、もじもじとただ観察していたんだろうか。あまり清潔ではなさそうな生臭さが口いっぱいに広がる。おれはそれを唾液でコーティングして吸い付く。
 不意に視界が、自分たちをそらとぶタクシーの視線で撮影し、俯瞰する。おれは、ランクバトルでは活躍できないまでも、平均して見れば強いはずだった。バンギラスもそのはずだ。ワイルドエリアで生き抜いてきたワルビアルやゴロンダやウォーグルも、野生としてはそこそこにやれるだろう。なのに、おれたちは何をしているのだろう? バリバリと食われるだけのスコルピのようだと思う。おれは今なら乞食にでもなれそうだ。
 おれは本当は、こういう姿が正しいのだと思う。見知らぬ野生のオスに対して、これだけ躊躇なく体を許してしまうおれは、きっと何かが致命的に欠けていて、だけどそれはオスの欲求を慰め、オスを愛することに関する天性の性分だ。こんなことを繰り返すおれを、トレーナーが知ったらどう思うだろう? だけどランクバトルを戦うよりも、今のおれはもっとずっと具体的に求められているじゃないか。
 溜まったものを吐き出すための交尾……そんな拠り所しか持てないおれは惨めだろうか? でもおれは今、とても満たされている。おれにも何か出来るという実感が嬉しい。それは少なくとも、本質的な歓びだった。オス同士の交尾など、ただの目先の気持ちよさ、愛情の模倣に過ぎないかもしれない。だけどおれが感じる至福が確かなら、それって本物なんじゃないか?
 絆が欲しい。みんなとの、かけがえのない繋がりが。おれはみんなの仲間なんだって、おもねることのない自信でそう言いたい。おれは、おれは、みんなに愛されるおれになりたい……
「ん゛おッ、あ゛っあっ! あ゛ん゛ん゛んッ――!」
 バンギラスが、角度を付けてコンコンと腹の底を突き上げてくる。前立腺、どころか膀胱まで押し上げるような突き方に、じゅくじゅくした気持ちよさがちんぽの奥深くへ居座って勃起が止まらない。その完全勃起を自慰の道具にするように、おれの両腿を鉤爪で掴んだウォーグルが、濡れた総排泄腔で熱心に扱きたてる。根元の瘤まで入れてしまおうというようにぐりぐりと押し付けたり、ゆっくりと引き上げてまた扱き下ろしたり、そんな繰り返しの最中で、ウォーグルはクルクルと愛らしい声で喉を鳴らす。
「あっあっあっあっ! んっ、んん~ッ!」
 気持ちよくて、声が抑えられない。オスに媚びるためではなくて、本当に勝手に声が出てしまうのだ。尻もちんぽも犯されてよがるおれに、ワルビアルとゴロンダからも色に塗れた波導がどんどん燃えてゆくように感じられた。一時も間を置かずに砂に塗れてゆくちんぽを構わず舐めしゃぶり、砂粒ごと先走りを飲み下すおれを、ワルビアルのつぶらな目が食い入るように見つめている。手の中では剥いたり被せたりする包皮で先走りが塗り広がったゴロンダのちんぽがちゅくちゅくと気持ちよさそうに音をたてる。ゴロンダは相変わらずの渋面だが、おれの頭や、そこから下がる房を撫でたり、耳の内側を指でくすぐったりと可愛がってくれる。
 ああ……
 たまらない被愛だった。
「やあッ、あっんっ! あ゛、そ、そんなっされちゃ、いくっ、いくぅ!」
 バンギラスが腰振りだけで飽き足らず、ウォーグルの体を両手で揺さぶってちんぽを責めるのだ。ウォーグルは翼を開いたままのかっこうで歪なスクワットをされるがままに強制され、おれのちんぽに犯されていた。
「ケツばっかりイかされて寂しいだろ。おまえはオスなんだから、ちゃんとオスのイき方もしねえとなあ」
「い゛っ、ひゃう、いっひゃうぅうっ!」
 ワルビアルの腰振りが激しくなる。獰猛な呼吸が小刻みに繰り返され、開きっぱなしになった長い口吻から糸を引いた唾液が溢れてぼたぼたと降ってくる。責められるおれをオカズにしてくれてるんだろうか。そうだったらいい。ゴロンダも鼻息を荒らげながら牙を剥いているが、ちっともおっかなくなかった。ちんぽ越しにおれの手を握り、指と指を噛み合わせて、ぎゅっと握り合いながら二匹で一緒にちんぽを手コキする。急くような手つきは、互いの拳が下腹部をドンドンとノックするみたいに激しかった。
 バンギラスの、ワルビアルの、ゴロンダの、ウォーグルの――それぞれの興奮が波導のフィードバックとなって送り込まれてくる。生物としての、抗い難い欲望の情念。その一心が今はおれだけに注がれている。何がどうなって、どこがイイのか、みんなの気持ちよさがハートスワップのように伝わってくる。
 最高の気分。
 何もかもが良かった。みんなのことを、どんどん好きになってしまう。これがおれの居場所だったらよかったと思う。その方がランクバトルなんかより、よっぽどみんなのために尽くせると思う。
「イぐうッ! イぐううう! ぎもぢい――ッ!!」
 一番イイところをズンズンと突かれながら、キツく絡みつくグチョグチョのウォーグルの中に、おれは中出しした。びゅうっ、びゅうっ、とちんぽが何度も射精するのを感じた。たとえ精液が出なくなったって終わりっこないような長く深いオーガズムだった。声を上げなくては気が狂ってしまうような、気持ちいい絶頂だった。バンギラスが浅い律動でアナルを捲り出し、押し戻し、グルグルと唸りながらウォーグルの体をおれに押し付ける。両脚を踏ん張るウォーグルの抵抗も虚しく、ズルリと亀頭球まで入り込んだ総排泄腔は、強かおれのちんぽを締め付けて痙攣し、激しい吠え声を伴って射精した。おれが出したのとは違う熱い精液が、びゅるりとちんぽにまとわりつくのを感じながら、おれはバンギラスの中出しを受ける。尻の内側を逆流してくるのが感じられるほどの、凄まじい射精だった。その奇妙な満腹感は、だけどバンギラスのせいだけではなくて、ワルビアルの小さな両手がおれの頭を掴み、必死に腰を譲って口の中をちんぽが行き来して、やがて鼻先を股間へ密着させるように引き寄せて喉へ向けてビシャビシャと精液を吹きかけられたから、それを吐き出さないようなんとか飲み込んでいたためでもあった。ゴロンダは自分の手とおれの手に扱かせていたちんぽを差し出すようにして腰を突き出し、ワルビアルのザーメンを飲精するおれに顔射した。咥えていた草を噛み潰し、茎が折れて千切れ、丸く迫り出した腹の上に落ちていた。ゴロンダの、べっとりと粘ついた濃い精子を顔に打ち付けられると、おれはいよいよ体中で精子を味わっていた。
 そう……みんな、ちゃんと気持ちよくなってくれたんだ。おれで最後までイッてくれた。そのことが何よりも有難かった。おれでも何かの役に立てるんだって、そういう気がするから。
 おれの、今の気分が分かるだろうか? 肩がとても軽いんだ!
 だから、おれはみんなの性処理でもなんでもしようと思う。環境を戦い抜けるほど強くはなれないおれの、数少ない役割遂行として。現実の砂地は、デザートリゾートだろうとワイルドエリアだろうとホウエン地方の111番道路だろうと同じ動きをしているらしいのである。大砂丘の向こう、ナックルシティはどこにも見えなかった。同じ砂地が続いている。ただ違っているのは、少し遠くのほうで、ナックラーたちが行列をつくりあげ、砂原を横断していることだけだ。だから、なんだってんだ? ナックラーに用はない。今はポケモンのスナップより、おれたちの空気を吸いたいのだ。横断したけりゃ、勝手にしろよ!
 砂漠には、心の支えになりうる物など一つもありはしないものだ。できることなど、せいぜい旅の道づれをぎゅうっと抱きしめ、縋りつくことくらいだろう。それは別に、支えではない。バンギラスの体は、杖にするには、あまりにも強く、頼もしすぎた……




 ――強さの秘訣だって。知らねえ。そんなこと言われても、俺は最初から強いからな。
 バンギラスはそれほど頭が良くないから、そんな解答しかしてくれなかった。
 ――そんなこと訊かなくてもよ、おまえは強いぜ。
 そうじゃなかった。本当に欲しいのはバンギラスのような素直さだったのに。
 おれには、みんなの隙間を縫うようなバトルしかできない。どうしておれがみんなと仲間でいられるのか。その無知と、心の疎さが蘇ってくる。
 おれには剛力がない。バンギラスには賢しさがない。足りないことが極端だからこそ噛み合うのだ――みんなが万葉全てを持って誕生できる訳がない――おれも昔はまだ、そんな風に考えられた。
「さあ、行こう。ルカリオ」
 トレーナーの優しい声。
 まるで天使のようだと思う。忌まわしい悪夢から、解放してくれる音色だ。でもそんな考えは馬鹿げているとすぐに思い知らされるのだ。
 おれが、バトルに選出された。
 ランクバトルのルールは、六匹の手持ちを見せ合う三対三。相手の手持ちには、ザシアンとホワイトキュレムがいた。そうしてトレーナーが選出したのは、おれとミミッキュとルナアーラだった。
 それは信じられないことだった。
 エース不在の選出――馬鹿な。こんな選出で、どうやって勝つつもりなんだ?
 先発はミミッキュ。相手はザシアンを繰り出してきた。
 これは、十分に予想できた対面。トレーナーはミミッキュに「なげつける」を命じた。「でんきだま」でマヒさせてやれば、おれやルナアーラでもどうにかできる。
 しかしこれは、不発に終わった。ザシアンは「みがわり」を覚えていたのだ! ミミッキュの変化技を対策してきた。
「みがわり」は絶対に残せない。しかしトレーナーも冷静だった。「みがわり」は、散り際の「かげうち」で消せると判断し、次は「のろい」でザシアンを削る。「のろい」は「みがわり」では防げない。また、「つるぎのまい」などで能力を上昇させて居座ろうにも「みがわり」の消耗に加えて継続ダメージは無視できないはず。起点阻止が絶対条件。
 敵もミミッキュの「のろい」は読めていたのだろうか。「きょじゅうざん」でミミッキュを倒しにかかる。特性「ばけのかわ」を立てに「のろい」を発動。次に先制の「かげうち」で「みがわり」を崩し、「きょじゅうざん」によってミミッキュは倒される。
 繰り出すのはルナアーラ。ザシアンを起点にし、時には無償突破さえ通すための訓練を積んでいる。ザシアンはここまでに二度、「のろい」のダメージを受けている。「みがわり」の代償もタダではない。ここは「のろい」を解除することも兼ねて、裏のクッション役――おそらくサンダー辺り――に交代するはず……
 トレーナーはサンダーとの撃ち合いに備えて「めいそう」を指示。敵は予想通りにザシアンを交代……しかし出てきたのはサンダーではなく、エースのホワイトキュレム。「とつげきチョッキ」などを持ったタフなキュレムだろうか? ルナアーラの火力くらいは受け切れるということか……もしくは、ルナアーラの耐久力や「でんじは」を知らないのか?
 そうではなかった。次の手番、「めいそう」で耐久力を上げたルナアーラが「でんじは」を当てようとしたところで、ホワイトキュレムは「ぜったいれいど」を仕掛けてきた!
 ()()()()()()()()……ルナアーラが倒される。
 半ば、勝負は決していた。敵は伝説のポケモンを二匹含めた手持ちをすべて残し、ダイマックスも切っていない。こちらはおれだけで、仲間のサポートもなく、ここから三体を倒さねばならない。
 無理だ!
「ゆけ、ルカリオ!」
 放たれるモンスターボール……スタジアム中が、敵の勝利をほとんど確信した歓声に包まれていて、おれは一体どんな顔をして出てゆけたのだろう? もしかすると、相性有利のキュレムくらいは倒せるかもしれない。だがそこらがせいぜい関の山だ。
 おれは砂漠を思った。砂漠は、心を全て曝け出す鏡になるという。発生論的、生物学的には異質であり、肉体的には過酷であり、審美的には抽象であり、歴史的には天敵である。だから砂漠は多くの諦念の象徴なのだ。昼の熱と夜の冷たさは痛みを、乾きは飢えを、そして何もかもを飲み込む砂の流動こそ、諦めの化身なのだ。伝説の開拓者でさえ、砂の性質には絶対に打ち勝てない!
 トレーナーは、拘る。このバトルで残った唯一の仲間は、まるで「諦め」という言葉を理解したことがないように、おれとの勝利を追いかける気があった。
「いくぞお!」
 トレーナーの右手にダイマックスバンドが輝く。
 ここでダイマックスを切るのか! おれははがねタイプの技を採用していない。相性有利のキュレムをここで落とすなら、「ダイナックル」ではなく「インファイト」が最大火力だ。
 おれを戻したモンスターボールが、ダイマックスバンドの作用によって巨大化する。力強いスローインによって、おれは再びスタジアムへ繰り出してゆく。
「ルカリオ、ダイナックル!」
 トレーナーの指示には逆らえない……おれは威力の下がった「ダイナックル」の構えに入った。
 敵は――交代。おれの攻撃を受けにきたのは、サンダーだ。やはりいたか! バンギラスの存在がネックとはいえ、こちらのエースのイベルタルやランドロスを抑え込めるサンダーの選出は、十分にあり得た。
 いや、だけど待てよ……このサンダーの繰り出し方ならば、もしかして……
 おれの「ダイナックル」は、浅い。サンダーに負担という負担も与えられない。威力不足であるし、ひこうタイプが相手だ。かくとうタイプの技では消耗させられない。
 でも、ここからは違う。「ダイナックル」は技の威力よりもパワーを上げる効果こそ本領。そしてランドロスとサンダーが蔓延るこの環境、当然持っているのが……
「ダイアイスだ――!」
 れいとうパンチ――
 敵のサンダーがどのような型であろうと、ただでは済まない威力になる。
 ここで、敵はダイマックスを切った。勝負を決めにきた。ルカリオごときの火力、受け切ってダイジェットで巻き返すという算段。
 しかし、遅い。サンダーの技はおれよりも後手に回った。スピードの訓練をしていないサンダーだ!
 この時……おれは、敗色濃厚であったこのバトルに希望を見た。トレーナーはそれどころか、おそらく確信していた。敵には、そしてスタジアムの観客たちにも分からなかっただろう。でも、おれには仲間たちの声が聞こえていた。選出されなかった、モンスターボールの中から。
 ――いけー! やっちまえー!
 バンギラス。
 ――舐めんなよ! オレたちにはルカリオがいるんだあ!
 イベルタル。
 ――言ってやるがよい、貴様の選出は、()()()()()()()とな!
 ランドロス。
「れいとうパンチ」を媒体にした氷塊が、頭上で輝いていた。それを睨みつける。がくがくと膝が笑っている。
 おれは、愛を示す。
 大口を開け、渾身の力で叫び、氷結を目掛けて飛び上がる。月を砂漠に叩きつけるように、喰らいつき、崩れるように着地すると、頭を振りかぶって、咥えた氷結を、全力で撃ち下ろす!
 サンダーは――持ち堪えた。さすがはサンダー! しかしこれでいい。ここでサンダーが()()()()()()()
 返しの「ダイジェット」は耐えられる。ダイマックスの防御力があればサンダーの火力でも。空気で作られた壁とさえいえる衝撃の突風……水平方向に発生する大竜巻……はがねタイプの耐性でそれを凌ぎ切ったならば、後はもうおれにもやることはわかっていた。
「ダイウォール!」
「みきり」を元に強化した、絶対の防御壁。
 そう、おれはここで「ダイウォール」をしなければならないのだ。ダイマックスパワーを使い果たすために。
 サンダーは当然、「ねっぷう」を持っている。「ダイウォール」で「ダイバーン」をやり過ごし、もう敵に次の手番はない。
「インファイト!」
 瞬間、スタジアム全体が失笑の空気……ひこうタイプ相手に「インファイト」? しかし、本当に一瞬だ。おれが、サンダーをすばやさを上回ったからだ。
「ダイウォール」を見せた後で、絶対に警戒されないもちもの――「こだわりスカーフ」。
 ルカリオといえば、「きあいのタスキ」――「ダイアイス」の天候「あられ」によって、タスキが潰れたルカリオなど何もできない――ましてや「ダイジェット」ですばやさの上がったサンダーを前にして――それは違う。「ダイナックル」……威力の上昇した「ダイアイス」……「ダイウォール」で稼いだ「あられ」のダメージ……サンダーがおれより遅いことが明らかになった時点で、この流れは決まっていた。
 こうかはいまひとつ?
 十分だ!
「ダイアイス」によって降り注ぐあられが全身に打ち付けるのも、夜の砂漠のように凍えるスタジアムも、今はどうでもいいこと。巨大化した環境の王者へ、一息のうちに距離を詰め、防御を捨てた全身全霊の拳を、十で足りなければ二十、三十、撃って、撃って、撃ち続ける!
 そして――討ち取った!
 拡散するエネルギーの爆発と、歓声の爆発が同時だった。ダイマックスパワーを失い、縮小しながらサンダーは崩れ落ちる。もはや観客たちもおれの逆転を疑わない。
 続いて繰り出されるキュレムも、障害にならない。
 おれはここで「インファイト」を撃たねばならない……一度くらいパワーアップを挟んだとしても、「ダイナックル」では落としきれないかもしれない……返しの「クロスフレイム」のダメージが無視できない……かといって「ぜったいれいど」を持ったキュレムは「みがわり」があることも多いため、「ダイウォール」は使えなかった……
 おれの「ダイアイス」をサンダーが耐えなければ、この勝負はまだわからなかった。この対面で、おれが「インファイト」をキュレムへ叩き込む……そのための「ダイウォール」だった。
「きあいのタスキ」ならば、おれはキュレムの先制を許したかもしれない。だけどおれのもちものは「こだわりスカーフ」だから。
「インファイト!!」
 威力上昇のこの技で、伝説のポケモンも上から一撃だ!
 かくとうタイプの高火力を前に、キュレムはなすすべなく倒れた。観客の歓声は、もはや一時も熱を下げない。
 最後に残ったのは、ミミッキュによって消耗させられたザシアン。
 だけど、おれははがねタイプだから――ウーラオスやフェローチェでは耐えられない「ダイジェット」も耐えられた。
 同じはがねタイプのポケモンでも――ナットレイやジバコイルでは、サンダーやキュレムを突破できなかった。
 そして――
 ザシアンの先制攻撃がくる……「でんこうせっか」……おれの「しんそく」さえ凌駕する、剣の王の一撃も……
 インファイトで防御力が削がれた状態でさえ、耐えられるのだ!
「ルカリオ!」だから、その指示は勝利宣言にも等しい。「インファイト――ッ!!」
 おれは咆哮で応じた。
 懐に飛び込んできたザシアンに、そのまま拳をお見舞いする。崩れた体制に、二発目、三発目。このガラルに座す王の姿を、徹底的にぶちのめし、トドメを刺す。
 おれはルカリオだから、おまえたちに勝つ!
 ――()()()!!
 おれはこのバトルで、エースの役割を完璧に遂行した。 




 キャンプカレーは、あまくちリッチ。
 おれの華々しい3タテを祝した、豪勢なキャンプカレー。今日はミミッキュがおれのカレーをよそってくれた。おれに皿を渡しておいて、自分はやっぱりどこかへ隠れてしまうのだ。
 今夜のカレーを食べながら、おれはみんな(除・ミミッキュ)に囲まれて褒めそやされ……照れくさかった。
 あれからのバトルは、いつも通りだ。おれは基本的には選出されないことが多く、たまに選出されてもエース運用ではなくて、中盤としてそれなりの役割を果たしたり、何も仕事ができなかったり、した。やはり誤解してはならないのは、ルカリオが環境に刺さっていないということ。このレギュレーションになって以降、おれはとても動きづらい。それは本当に、本当のことだ。
 今日の3タテなども幸運によるところが大きい。以前の、伝説のポケモンが出られなかったバトルでさえ、今日ほどおれが刺さることは稀だった。
 でも、だからこそ、煩わしい現実と比べて、今夜はなんという爽快さだろう!
「今夜は星が綺麗です」
 ルナアーラもそんなことを言うくらいだ。夜も眠らないナックルティから離れたキャンプ場では、なるほど星がよく見える。
「あれが天秤座」
「おれ、星座ってどうにも分からないよ。いささか無理やりというのか……」
「あなたはロマンティシズムに欠けていますね。夢を、叶わない現実の搾り滓だと思っているでしょう」
 分かるような気がした。
 夜の蓋に、かわいらしい星たちが戯れていた。それらがエーテルの周波数と一つになり、今日も星を調べる。攪拌する光のつぶて。光は長い旅の果てに降りしきる時の崖。赤い目玉のスコルピ、広げたウォーグルの翼、青い目玉のガーディ、光のサダイジャのとぐろ。オリオンは高く謳い露と霜とを落とす。アンドロメダの雲はバスラオの口の形。リングマの脚を北に五つ伸ばしたところ。ヒメグマの額の上は空の巡りの……
 無垢なルナアーラの言う通りだ。夢がかなわない現実の搾り滓だとしたら、おれは現実をその反対だと思う。現実ってのは滓だ。搾られていない、滓の塊だ。どちらに逃げようと、結局は滓まみれなのだ。笑える。
 砂漠の下には、おれの魂が眠っている。腐った植物のように臭って、蛆まみれの魂が。おれの最大の恥部だ。
「夢は見る場所ではあっても、閉じ籠もる場所では()()()()」ランドロスが断言する。「そのように夢を使う軟弱さが、()れは好かん。貴様は戦ってきたのだろう。これまでも、現実に。何も諦める必要はない」
 おまえのような強いポケモンに、現実の何が分かる。そう叫びたかった。今にも弱みが、波導となって房から噴き出してしまいそうだった。情けない心臓の音。ひどく叫んでいるくせに、血を送る血管の方は萎縮しているような感じがする。
「あなたは()()()()()です」
 ルナアーラが言った。いくらミントでも、本当の性格は変えられない。
「だけど、あなたは周囲に気を許すべきです。心を開いて、頼るべきです」
「無理だよ、できない。おれには……できない」
「卑屈な」ランドロスが腹立たしげにかぶりを振った。「しかし、臆病と稚拙を見せる気にはなったか。ようやく」
 だけどおれは、みんなが支えてくれなければ居場所さえ持てないのだ。そんな風に強くはなれない……
「おまえだけじゃねえんだぞ?」
「え……」
 いきなり、バンギラスが言う。「俺だって、いきなり『ばかぢから』で何もできねえでやられちまう時はある」
 ルナアーラがゆっくりと頷いた。「ザシアンの『かみくだく』ですとか」
「どいつもこいつも、氷の技を持っておる」と、これはランドロス。
 うんうんと、バンギラスはなぜかしら勝ち誇ったような笑みだ。
「おまえがいなきゃ勝てねえバトルは、あるんだよ。今日でそれがわかっただろ?」
「前から思ってたけど、キミらって仲良いね」
 脈絡なく、あっけらかんとした声が割り込む。イベルタルだ。
「まあな! コイツの苦手な技は、昔っから俺が受けてきたんだ。俺はコイツ専用の盾ってわけよ」
「それで昨日も二匹でどっか行ってたの?」
 口の中のカレーを吹き出しそうになる。
「くっくっ、それはどうだろうなあ。なあ?」
「お、おれに振るなよ……」
「二匹で何やってんのさ。今度、オレも行っていい?」
「えっ」
「いいんじゃねえの。今更、隠すようなことでもねえよなあ?」
「ふむ。確かに以前から不審ではあった。この際だ、己れも行かせてもらおう」
「えっ、えっ……」
 おれが困惑しているのを見て、バンギラスは腹を抱えて笑っていた。そしてこんな時でも、ルナアーラは冷然としている。
「おかしな方。星を見ているだけだったのに、どうしてそんなに笑うのでしょう」
「オメーも笑えばいいんだよ」
「そうですか。そうですね。ふふふ」
 さすがは伝説のポケモン、超然という言葉を体現している。根本的に、存在の規格が違うのだと改めて感じる。
 こんな歌があるらしい。
 You've got to accentuate the positive(前向きになろうよ)
 Eliminate the negative(暗くなるのは已めて)
 To lilustrate my last remerk(結局のところ)
 Jonah in the whale,Noah in the ark. What did they do,Just when everything looked so dark(クジラに飲み込まれたヨナと、箱船に乗ったノアは閉じられゆく世界でこう言ったと思うんだ)
 Man,the said(そうさ)
 We better accentuate the positive.Eliminate the negative(明るくいこうよ! 悩んだところでどうにもならない)
 しかし……ヨナの場合もノアの場合も、本当に真実的なポジティブさかどうか? ヨナの場合は自分の愚を嘲笑するために違いないし、ノアの場合は絶望を振り払うためのから元気に違いない。
 そんなような歌である。
 何を言っても、環境は厳しい。おれはまだまだ、これからも砂漠をさまよわなければならないのだ。砂漠は、心を全て曝け出す鏡になるという。発生論的、生物学的には異質であり、肉体的には過酷であり、審美的には抽象であり、歴史的には天敵である。
 だからこそ、その気があれば歩くべきだ。砂漠へ行くがいい、予言者たち、巡礼者たちよ。砂漠へ向かって、歩くがいい……
 ようき最速ASルカリオと呼ばれるおれは――
「じゃ、これ食ったら行くか!」
「えっ」
「そんなに楽しいところなの?」
「何、期待させてもらおう」
「ふふふ、いってらっしゃい」
「えっ、えっ……」
 伝説のポケモンたちに囲まれて、やっぱりちょっと肩身が狭いんだけど。



 

 先日、脳汁あふれる試合があったのでネタにしました。ガチ対戦を題材にした小説は少なそうなので、自分はこの分野でやっていこうと思います。
 ルカリオといえばタスキカウンターなので、対面ザシアンは高確率ででんこうせっかから入ります。そこをスカーフルカリオは上からじしん二発できれいに倒せるというわけ。何より意表が突ける!
 ちなみにH252ランドロスはA特化ルカリオでもれいとうパンチ乱数です。S91の高火力高耐久ほんま……(クソデカ溜息)

 



 

 


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2022-05-11 (水) 00:32:57
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.