……お久しぶりです。TAOでございます。
FREEBIRDをぼちぼち書いているのですが、なかなか物語を構築するのに苦戦している次第でございます。
そんな中……このWIKIでレシラム小説が増えているのを目にしまして……ゼクロム小説を書きたくなった次第です。
駄目作者ながらちょっと書いてみました。ご覧頂けたら幸いです……。
「……なぁ」
「ん?」
別に俺は怒ってたりはしない。ただ、聞いてみたくなったんだよ、理由を。
「な〜んで一匹で寝たくないのさ?」
「ん〜……なんとなく♪」
頭の上から嬉しそうな声がした。どうやらこいつにとって今のこの状態は好ましい事みたいだな。
俺? ……まぁ、嫌ではないかもしれない。なんせ、最強の警護の中で眠れるようなもんだから野宿でもかなり安心して眠れる。
眠れるけれども……やっぱり落ち着きはしないな。なんでかって? だって俺が今居るのは……。
「頼むからあんまり力入れないでくれよ? 下手したら潰れちまう」
「そんな事しないよ〜。でも、こうやってると温かいね♪」
イッシュ地方建国の伝説に名を残すポケモン、ゼクロムの腹の上でそいつに抱きかかえられながら眠ろうとしてるんだからな。
なんでこんな事になってるかって? 説明するには今日一日を振り返る事になるんだよな。
そう、ゼクロムに出会ったのは今日。で、その日のうちにこんな状態になるまで気に入られちまったんだよ。
始まりから話すとだな……あれは、今日の朝の事さ……。
「おい、どうしたどうした? 俺はまだ本気出してないんだぜ?」
「ぐ、ぐぞぉ〜」
俺は、相棒のレパルダスとある場所へ向かってる。
途中で、レパル(レパルダスって呼ぶのが面倒だから短くしてる)が退屈になったのか「競争でもしてみないか」と持ちかけてきたから……。
俺は自転車で、レパルはそのまま走りで、お互いのスピードを競い合わせる事になったんだよ。
現在の戦況は……俺の斜め右前をレパルが走ってることから分かるだろうけど、完全に遊ばれてますよ……自分のパートナーに遊ばれてる俺って……。
あ、もう着いたし。わーい、完全敗北だー。
「よしゴール。俺の勝ちだな」
「ははは……自転車使って完敗とかって……惨め過ぎる……」
結局、俺は一度もレパルの前に出る事無く負けました。
チョロネコの頃は普通に走っても俺が勝って、「負けちゃったよ〜」って泣くこいつを慰めたり励ましたりしてたのになぁ。
「約束だからな、今から一日俺はボールに入らないぜ」
「はいはい……分かったよ」
競争前に何か賭けようって事になって、俺は今の約束をさせられた訳よ。なんでかは知らないけど。
因みに俺が勝ってたら今日の食事をポケモンフーズで我慢する事を約束してきました。水泡に帰したけど。
「ふふふ……」
「おいおい歩きにくいから足にまとわりつくなって」
「いいだろ別に。……ここか? 聞いた話の場所って」
「ん〜……川が大きく曲がってて、石が大量に集まってる場所だから……まぁ、ここだろうな」
今居るのは、俺が出発したライモンシティから約30分位自転車を飛ばした川原なんだが、その川原に一箇所、明らかに他の場所とは違う場所がある。石の中洲って呼ばれてるらしい。
その場所には、大雨が降った後にあるアイテムが大量に流れ着くって噂を今朝偶然に聞いたんで来てみたんだ。
炎の石、水の石、雷の石に目覚め石や闇の石……ようは、ポケモンの進化を促す進化の石が流れ着くらしいのさ。
原因は、大雨でこの川の上流にある山が削れて、その土に混ざってる石が丁度ここに流れ着くとか……まぁ、眉唾な噂でしかないらしいけど。
「本当に此処で進化の石なんて拾えるのか?」
「どうだろうねぇ……昨日大雨が降ったのは確かだし、噂なんだから駄目で元々。少し探そうぜ」
「分かった。何かあったら知らせるぜ」
「頼んだ」
本当ならこんな噂に興味は持たないんだけど……先立つものが尽きそうなんですよ。そう、旅の資金が。
やっぱり何するにもお金が必要になってくるんですよ。唯一の救いはポケモンセンター。トレーナー登録はしてるから、ポケモンセンターさえあれば、野宿の心配は無い。
そんな諸事情により、進化の石を拾って売り払って資金調達をしようってのが此処に来た理由さ。上手くいかなかったら……ハイリスクなポケモン十番勝負が待ってまーす。うぅ、それだけはマジで避けたい。負けた時はこっちの資金が更に無くなるからな。
「おーい! こっち来てくれー!」
「どうしたレパル?」
「これ、ビンゴだろ」
レパルの前脚が示す所を見ると……僅かに青い輝きを放つ石があった。
マジかよ……噂は本当だったみたいだ。水の石、ゲットだ!
「どうだ? 本物か?」
「レパルお手柄だ! 水の石に間違いない!」
「やったな! マジで他にもありそうじゃないか。俺、探すの続けるぜ」
「あぁ! 足元だけは気をつけろよ」
「了解。そっちもな」
俺達のモチベーションは一気に上がった。だって、追ってきた噂は本当だったんだからな。
探せば探すほど、進化の石を俺とレパルは見つけられた。マジでキターーーーーー!
「おいおい、ここはなんなんだ? こんなにこれらの石って密集するもんなのか?」
「奇跡だ……山よーーー! 大雨よーーーー! ありがとーーーー!」
「そんな叫ぶなって……ありがとーーーーーーー!」
川原で空に向かって叫ぶ一人と一匹。
うわ、他人には絶対に見せられないな……。けど、テンションがハイに入った俺達を止められる者は今この場にいない!
そして脳内を巡る数々の料理達……久々に美味い物を食おうかなー♪
「レパル! 今夜は豪華な食事が待ってるぞー!」
「マジかー!」
「マジだー! よし、もう少し探すぞ!」
「オッケー! ……ん? なんだこの石?」
「? どうしたレパル?」
「なんか妙な石があるんだ。こっち来てくれよ」
少しクールダウンしながらレパルの居るところまで移動する。
妙な石か……進化石じゃない石だと、何かしらの効果があっても売った時の価値がなぁ……まぁ、妙だって言うくらいだし、見てみるくらいはしてみようか。
不思議そうにしてるレパルの所に着いた。下を指すレパルの足元には、なんとか手が入る程度の隙間があるのが見える。此処を覗いたわけだな。
「……なんだこれ? 真っ黒な石? 闇の石……じゃないみたいだな。汚れてるのか?」
「俺も最初はそう思ったけどよ、おかしくないか? これだけ汚れてるって。周りは全然汚れてねぇだろ?」
「あっ、確かに……」
多分川の水で流されるからこの辺の石は綺麗なんだろうな。
だとしたらこの石が余計おかしいよな。真っ黒の石なんて自然界で出来るのか?
……いや、出来ないよな。って事はだ。
「イタズラだろ、これ。ほら、噂聞きつけた俺らみたいのを引っ掛ける為のさ」
「それも変じゃねぇか? 誰か来るかも分からないところに普通はそんなもん仕掛けないだろ? 空しいぞー、誰も気付かないイタズラって」
「それもそうだなぁ……」
うーん、考えても分からないんだからとりあえず拾ってみるか。
でも腕一本入るギリギリのところに腕突っ込むのってちょっと勇気要るよな……何かのフラグとしか思えない。
「よっと」
「うおっ!? それ拾うのかよ?」
「届きそうだから、な」
ん? 指先には触れるけど微妙に届かない……こういうのはもやもやするよなぁ。もう……ちょっと……よし、届いた!
「そぉいっと!」
「おぉ、出たー。……黒いな」
うーん、確かに黒い、黒すぎる。日の光を反射して黒光りしてる。これは天然石……なのか?
宝石の類には見えないし、うーん?
あ、あれか。誰かが落とした玩具か何かが大雨にさらわれて、ここに流れ着いたんだな。うん、一番それっぽいだろ理由としては。
「……! お、おい! その石……今なんか光らなかったか!?」
「は? これがか? よそ見してたから分からんけど、石が光るわけないだろー。反射がそう見えたんじゃないか?」
「……なんかその石ヤバイ気がすんな……早く捨てちまえよ」
「そうだなぁ……別に持ってても仕方ないし、この辺に置いて……ん? 置いて……」
「どうしたんだよ? 早く置けって」
……やばい、なんでか知らないけど手が離れないんだけど。
振っても引っ張っても、事情話してレパルに手伝ってもらっても離れない。どういう事なの?
「おい、なんかヤバイもんだったんじゃないのかこれ!? 昔の変な儀式で使われてたとか……」
「うぉいおい冗談じゃないぞ!? 持ってるの俺だって! 何!? 俺、呪われたって事か!?」
ヤーべーイ! 石天国から一気に石地獄だよ!
祟りか!? 楽して稼ごうとした罰が当たったってのか!?
「うおー! 嫌だー! まだ死にたくないー!」
「うわー! 嫌だー! 俺を置いていかないでくれー!」
パニックが最骨頂ダー! こんな石拾わなければよかったー!
ぎゃー! 光ってるー! 本当にこの石光りだしたー!
持ってる手が痺れる!? うわ! これ光ってるんじゃなくて電気じゃないか! バチバチいってるぞ!
……持ってる俺がやばいー! さっきの冗談が冗談じゃなくなる! マジで感電死する!
「あががが、し、しび、しびび」
「しっかりしろって! おーい!」
あぁ、意識が遠のいてきた……さよならこの世……さよならレパル……先立つ主人を許せ……。
うはははは……石がとびきり大きく光りだした。目の前が……真っ白に……。
……………
…………
……
…
「……ぃ……ぉい! 目、開けてくれよ……生きてるんだろ? 死んでないんだろ? なぁ……起きてくれよ……」
……自分の鼓動、確認。手足、あるっぽい。頭、稼働中。痛み、よく分からん。
生き……てる。
開 眼! おぉぉぉぉ! 見える! 見えるぞ! 青い空に白い雲! そして泣きじゃくるレパルの顔!
聞こえるぞ! 川のせせらぎ、草木のざわめき! そしてなんかの寝息!
「生ーきーてーるーぞー!」
叫びながら体を起こした。おぉ、腹筋だけで起きれた。体の調子は悪くないっぽいぞ!
なるほど、でかい石の上に倒れてたのか。どおりで安定してるわけだ。
「……ぁ……あぁ……」
「レパル! 俺生きてるぞ!」
「ふぐっ……うぇ……よ゛がっだー!!!」
紫色の柔らかな体が俺を覆うように包み、首に巻かれた前脚によって、俺はレパルに抱き締められ……俺もレパルを抱き返した……。
ってなれば美談かもしれないが、実際はそうは問屋が卸してはくれなかった。
抱きつかれたのは事実なんだけど……その時に俺はよろけて、石の上に手を突いたんだ。
途端に俺の脳にスパークが流れたよ……。
「はがぁぁぁぁぁぁぁ!」
「どぅお!? ど、どうした!?」
「み、みぎ、みぎぎ、て、とて、て!」
「……? 右手? って、うおお!?」
……俺の右手の平は、さっきの電気……電撃によってジャックリと引き裂かれてました。
幸い(って言うかどうか怪しいが)骨とか何とかはギリギリ見えてない。見えてたら気絶する。絶対する。
うはぁ、石の上には俺の手形が血でビチャッと……ホラー演出は要らないっつうの!
「き、傷薬! レパル! 俺の鞄から出して!」
「分かった! ……えーっと、ああもう! これでいいだろ! ほら!」
咥えた傷薬を渡されたから急いで川へ。傷口を洗う為に。
綺麗にしてから薬を使った方が治りが早くなるからな。
……で、一人阿鼻叫喚タイム突入。水が傷口に触れるだけで身悶えるぐらいいてぇ! ショック死するんじゃね? ってくらい痛いんだよ!
また意識が飛びそうになるのはレパルの励ましのお陰でなんとか繋いでます。でも、いっその事もう一回気絶したいです。
んで綺麗になった傷口に薬を噴き掛けるんだが……ズタズタのグチャグチャに裂けた傷口を見て、レパルと一緒に卒倒しかけました。ありえない……よく動いてるな、これ……。
泣きながら傷口に薬使って、レパルに手伝ってもらいながらなんとか包帯も巻いた……。回復とか治療用の道具は一通り揃えてるから、こういう時に憂いはないぜ。
「うぐぅ……しばらくは動かせないだろうけど、これでなんとかなるだろ。う〜いってぇ……」
「焦ったな〜。うひゃあ、こんなに血、飛び散ってるじゃねぇか。本当に大丈夫なのか?」
「おぉ〜、こりゃまぁ……貧血になりそうだぜ……」
周りはバタバタした所為でピチャピチャ血が付いてるな……まぁ、雨とかで綺麗になる、筈……。
そして気付いた。ちょっと話が戻るが、俺が起きた時に戻らせてもらうぞ。
聞こえるぞ! 川のせせらぎ、草木のざわめき! そして『なんかの寝息』!
はいここ! この寝息! 正体が分かったぜ……。
「…………」
「ん? どうした?」
「なんだこいつはー!」
石が並ぶ川原の上……黒くてビッグでベリーストロングそうなポケモンが……寝てる。
ってこんなの居たら普通気付くだろ! なんだよこいつは!
「あぁ、そいつな。お前が持ってた石だ」
「石!? あ、そういえば何処にも無い……」
「だろ? 一番ピカッとした後、石が砕けたかと思ったらそいつになったんだ。で、俺がそれに驚いてるちょっとの間に寝ちまった」
……まず、なんで石がポケモンになる!? どういう事!?
しかもそのポケモンが寝てるって……俺が倒れてる間に大変な事になってるな……。
「で……どうする? こいつ」
「どうするったって……レパル、こいつと戦って勝てる気するか?」
「いや全然」
即答だなおい! ……体のサイズが違い過ぎるし、無理も無いか。
でもどうするよ……こんなポケモン無いし、トレーナーとしての俺は「ここは一発モンスターボールだろ!」って言ってる。
だが! さっき死にかけた俺は「あの石が変化したポケモンなんかやめとけって!」って言ってる。
俺的にも、後者の俺の意見を尊重したい。ろくでもない事がまた起きても嫌だし。
一先ずはモンスターボールは持つ。もし起きそうなら、これで時間稼ぎ位にはなるだろ。捕まえられる気はしないし。
「よし、レパル。あいつが寝てる間にこの場を離れるぞ……」
「了解……。物音立てないようにそーっと、な」
一人と一匹……姿は違えど息はピッタリ。物音一つ立てないように慎重に進んでいく。
が、幸い中の不幸、ここは足場の最悪な石の中州。足元にはゴロゴロ石がある訳よ。
苦労したぞ、ただでさえ歩きにくいのに音まで立てられないんだからな。
だが俺達はそこで諦めたりはしなかった! 超慎重に進んで……ちゃんとした地面に足が着いた。
「おっし、上手くいったなレパル」
「だな!」
「そうなの? おめでとぉ〜」
「「…………」」
ちょっと待て。今の……何? 明らかに俺でもレパルでもない声が後ろからしたんだけど。
→振り向きますか?
YES
NO
NOで! もう断固NOの方向で!
で、でも確認しないと余計に怖いよな……分かったよ! YES! 振り向きますよ!
俺とレパルは、ほぼ同時に振り向いた。ここまで息が合うとは……さすが我がパートナーだな。
……案の定、寝てた筈の黒い奴が立ち上がって、こっちを見て首を傾げてた。
「おぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「わっ! 何!? 何なの!?」
叫ぶ俺たち、それにビックリしてる黒い奴。俺の脳は何を思ったのか、驚いてるこの状態を何故かチャンスだと認識してしまったようだ。
「う、うりゃぁ!」
「ひゃっ、何これ? わぁ!」
俺は……持ってたモンスターボールを奴目掛けて投げつけてたんだよ。
そのままボールは奴に当たり、大型ポケモンをその中に吸い込み地面に落ちる。
一回……二回……三回……揺れたかと思ったら響くカチンって軽い音。
ボールがポケモンを捕獲、登録した時の作動音だな。つまり……。
「「……ゲット出来ちゃったよ!」」
はい、レパルとシンクロ発動。ってかマジですか!? 普通は入りきらなくて弾かれてもおかしくないし、弱らせてもいないのにゲット出来ちゃったよ!
しかも使用したボールはモンスターボール一個。値段で言えば200円なり。まさにミラクル。
「どうすんだよ! どさくさ紛れにゲットしちまってんじゃねぇか!」
「どうするったって、本当はボールに捕まってる間に逃げるつもりだっただけだし……ゲット出来るとは全く思ってなかったからなぁ……」
とりあえず拾い上げてと……あんなデカイのが入ってると思うと、なんか重たくなったような気がするな。
「ゲット出来たって事は、もう安全……か?」
「多分な。……まぁ、ちょっと話でもしてみるか」
真ん中のスイッチを押して……軽く投げる。中から光が飛び出して、ポケモンの形になるっと。いつも通りだな。
おぉ、やっぱりデカイ。俺も平均くらいに身長はあるけど、それよりもやっぱりデカイ。
「あれっ、今度は外だ。どうなってるの?」
今自分に起こった事が分かってないみたいだな。ちょっと説明するか。
「あ〜……今お前さんはこの中に居たんだ。それを俺が出したわけ。分かるか?」
「ふぇ? その中に……僕が? どういう事なの?」
……これは完全に何も知らないのな。
ふぅ……しょうがない、一から教えられる事は教えていってみるか。
「ふ~ん……じゃあさ、君がこれから僕と一緒に居てくれるって事でいいんだよね?」
「ボールに登録されてるからな。俺はタカト。よろしくな」
「タカトだね。よろしく~」
さて、やっと俺が名のったところで自己紹介するか。
俺の本名は『明石 タカト』(あかいしで呼んでくれ。どうでもいいか……)
相棒はレパル一匹。今はだったになったけど……。
おっとそうだった、こいつにレパルの事も教えとかないと。
「で、こいつが俺のパートナーのレパルダス。仲間になるから覚えといてくれよ」
「レパルダス、だね。よろしく~」
「呼ぶ時はレパルでいいぜ。タカトは……まぁ、悪い奴じゃないし、こっちの頼みなんかも聞いてくれるから居心地は悪くないと思う。成り行きだけど、仲良くしようぜ」
「分かった~。よろしくね、レパル」
ふむ、見た目は威圧感たっぷりだけど、なんだ良い奴じゃないか。怖がってたのが馬鹿っぽい。
こっちも名のり終わったし、そろそろこいつにも名のってもらうか。
「じゃあ、今度はそっちが教えてくれよ。呼び方分からないと不便だから」
「えっ? あ、僕の名前か!」
「そうそう。見た事あるポケモンならなんとかなるけど、生憎見た事無いんでな」
「う~ん……俺はどっかで見たような気もすんだけどなぁ……」
「うんと……ちょっと待ってね。え~っと、え~っと……」
話し方とかはなんか子供っぽいなぁ。
チョロネコだった頃のレパルを思い出すぜ。あの頃は可愛かったけど、今はカッコいいか綺麗だもんな。時間の経過を感じる……。
「あ、思い出した! 人間にはゼクロムって呼ばれてたよ!」
「ゼクロムか。……ん? ゼク……ロム?」
「おい……俺その名前聞いた事あんだけど。ってか、お前が好きな昔話にそんな名前のポケモン居なかったか?」
「ちょっと待ってくれよ。確かここに……あった」
ちょっと古ぼけてはいるけど、俺がばあちゃんから貰った本……形見になっちゃったから大事にしてるし、まだまだ十分に読める。
ばあちゃんがよく話してくれた物語であり、この本の内容。二人の王子と一匹の龍がこのイッシュの前身となる王国を創った時の話なんだが……。
この話の最後の方で、龍は二匹の竜に分かれ、それぞれが別の王子に力を貸して戦うシーンがあるんだ。この本にも確か挿絵が……あった!
この黒い竜とこいつを見比べると……似てる所が確かにあるな。頭の形とか、肩から羽みたいのが出てる感じとか。
この挿絵は古代の城跡から出てきた壁画を写したってばあちゃんが言ってたから、多分かなり有力な証拠だと思う。
「あ、これ僕とレシラムが戦った時のお話なんだ~。王子と一緒に居たのも、もう懐かしくなっちゃったな~」
「……それは、お前がこの話に出てくる伝説の竜の一匹、ゼクロムだって……事?」
「うん! そんなお話に残ってるのは知らなかったけどね」
嘘……だろ? だ、だってこれは大昔の話であって、幾ら伝説のポケモンだっていっても生きていられるわけ無いだろ!?
そうだ! この話の終わりに、二匹の竜は戦いで力を使い果たして、その身を石に変え長き眠りについたってなってたし、やっぱり違うような!
……い、し? 今まではずっと、石像みたいになったんだと思ってたんだけど、それがもし違ったら……?
レパルは言ってた……「石が砕けて、それがこいつになった」って……あの石が、ゼクロムが変化した石であったとしたら物語のオチも変わらない。
詰まる所、俺がゼクロムを蘇らせたって事ならば現状に矛盾は無いわけだ。
……ん? 待てよ? 確かちょっと前に……。
「なぁ……お前さ、大昔に石になった?」
「石? ……大昔かは分かんないけど、レシラムと戦って、疲れて眠っちゃったのは覚えてるよ。その時なんか体が小さくなった気はするかなぁ?」
「……その眠った後、俺以外の人間は見た?」
「ん~ん、目が覚めたら全然知らない所に居てビックリしちゃった」
……おかしい。
今思い出したんだけど、俺はこの物語以外で一度、ゼクロムの名前を目にしてるんだ。……ごく最近な。
プラズマ団によるポケモンリーグ襲撃事件……見出しはそんなだったな。
なんとかって名前のプラズマ団のリーダーが、蘇らせたレシラムを従えてポケモンリーグを占拠、トレーナーとかにポケモンを開放するように声明を出した事件だったな。
その事件は……一人の少年トレーナーが解決したんだよ。『伝説の再現!? 並び立つ二匹の伝説のポケモンと二人のトレーナー!』……その時の見出しはこんなだったな。
そう……ゼクロムの名前はその時に見たんだ。その少年トレーナーが蘇らせたって事で……。
じゃあ、今居るこいつはなんなんだ!? もし蘇ったゼクロムだったら俺の前にそのトレーナーを見てるだろうし、何よりそのトレーナーが自分を認めてくれたぜクロムの事を簡単に手放すとは思えない。
でも目の前のポケモンも……自分でゼクロムだって言ってる。訳が分から~ん! これじゃあゼクロムが二匹居ることになるぞ!?
「……タカト、俺には話が分からないんだが……つまりこいつは、この本に出てくる黒い竜なのか?」
「そうらしい……本人曰く、だけどな」
「ね~ね~タカト~。なんで右手に布巻いてるの? そんで、ここ何処? そんでそんで……」
「……だーもう! 分かった! 知らなそうな事は全部教えてやる! まずここは……」
ここから俺の説明ラッシュが始まるから少し時間を飛ばすぞ!
……一先ず、二匹のゼクロムの問題は置いておこう。俺だと考えても分からないだろうし。
ちゃんとゼクロムには説明するべきだよな。これも織り交ぜて説明しておくか。
~説明完了までしばらく時間経過中~
日は大分高くなったな……時計を見たらもう昼飯時も過ぎてるし。
「えぇ! じゃあ僕がタカトの右手に怪我させちゃったの!?」
「しょうがないさ。わざとやったわけじゃないんだから気にするなって」
丁度、ゼクロムに俺の右手に起きた悲劇を説明したところさ。
ゼクロムが蘇った経緯を説明するついでにな。それに、包帯巻いてるのも気になってたみたいだし。
あ~……よっぽど今のがショックだったのか、口を開けたまま固まっちまったよ。
「あっ、う、あの……ご、ごめ……」
やっと喋りだしたと思ったら、泣きそうになりながら謝ってきた。
これが伝説の黒き竜だって言われても誰も信じないだろうな……。
「別にいいったらさ。俺もとりあえず無事だし、右手だって無くなったわけじゃないんだから」
「そうさ。それに、俺も無用心にタカト呼んだのも悪かったしな」
「タカトもレパルも……怒って……ないの?」
「「ぜーんぜん」」
トレーナー……いや、それ以上前からの仲だから、俺とレパルは良いところで息が合うんだよな。
「よかったぁ……」って言って、心底ホッとした顔してゼクロムが笑った。伝説のイメージでは厳つくておっかなそうだったけどさ、俺的にはこっちの方が付き合いやすくていいや。見た目はカッコいいしな。
そういや話題が右手に移ってから見てみたけど……包帯が全然赤くならないんだよな。あれだけ派手にやられてたんだから血が滲んでもおかしくないのに。
どれ……少し見てみようか。たとえさっきとなんにも変わってなくても大丈夫。卒倒はしない……はず。
スルスルっと包帯を解いてっと。
「おいい! 何してんだよ! ゼクロムには刺激強過ぎるってそれは!」
「いやな? 包帯が赤くならないし、さっきから痛くもないからもしかしてと思ってな」
「え? タカト痛いからそれしてたんじゃないの?」
「さっきまではな。よし、もう少し……」
包帯が、取れた。そこには……うぉぉ、稲妻みたいな傷跡は残ってるけど、綺麗になった右手がある。
いや、治るの早過ぎないか? 幾ら傷薬でもこんなに早く回復しないだろ。
もしかしてと思って鞄の中を見てみ……石多いな、早く町まで戻って売らないと。
……やっぱり、とっておきが無くなって……。
「レパル、お前がさっき俺に渡した薬って……」
「すまん。急いでたんで手前に来てた『回復の薬』渡しちまったんだ。高いのは知ってるけど、焦ってたから……」
どおりで。この回復は傷薬じゃおかし過ぎるもんな。
「いや、いいさ。お陰でこのとおりだ。ほれ」
一応治った右手を二匹に見せた。レパルは「おぉ!」って言って驚いてるな。で、ゼクロムは……。
「うわぁ……痛そう……」
そう言って渋い顔してるぜ。痛そうじゃなくて痛かったんだよ……。もういいけどな。
「なぁに、ゼクを蘇らせた証拠だと思えば、そんなに嫌なもんじゃないさ。手相占いは出来なくなったけどな」
「う~ん、でも話だとさ、僕がもう一匹居るみたいだよねぇ……ん? ゼクって?」
「あぁ、いきなり呼び方変えて悪い。ほら、いちいちゼクロムって呼ぶのも長いし、これから仲間の一匹になるんだからそう呼んでもいいかなーと思ったんだけど……駄目か?」
「う、ううん! 全然いいよ! それって、レパルとおんなじく呼んでくれるって事だもんね!」
「まっ、そういう事だな。よろしくな、ゼク」
「うん!」
これでゼクの機嫌も直ったみたいだな。一安心か。
……ゼクが二匹居るって謎が増えたが、一先ずは置いておこう。
「ははっ、全く……タカトも全然変わんないよな。知らないポケモンにすーぐ懐かれるんだから」
「いいじゃないかよ。なんにでも好かれるのは良い事だぞ! うん」
「僕もそう思う!」
よし、無事に意気投合出来たな。小さい頃から話の中で聞いていた伝説のポケモン、ゼクロムが仲間になったんだ。素直に喜ぼう。
そういえば昼飯食べてないから腹減ってきたな。イレギュラーなゼクの仲間入りで目的を忘れてたけど、石はもう十分に拾ってるし、そろそろライモンに戻るか。
「おーし、飯も食いたいし……そろそろ町に戻るか」
「これから次の町には行かないよな? って事は……ライモンか」
「あぁ。石売っぱらったらゼクの仲間入りの祝いも兼ねて、美味い物でも食おうぜ!」
「僕のお祝い! やったー♪」
「おぉ良いねぇ」
話が纏まったところで、二匹に一声掛けて移動開始。
今のところゼクの能力がどんなもんか分からないから自転車は使わないでおくか。
……自転車で約三十分の道を歩きだと、ちょっと時間掛かるな。途中からはレパルとのレースもしてたし。
おまけにゼクがちょくちょく見た物について聞いてくるからそれに答えてるしな。ゆっくり歩いてるんだよ。
まぁ……見る物全て新鮮だろうから分からなくはないけどな。
んな事してたら出発した町が見えてきたな。
「ゼク、あれがライモンシティさ」
「おー! でっかいねー!」
はい、町のゲート前に到着! 流石に町中では二匹ともボールの中に居たほうがいいよな。……と言っても……。
「ゼク、レパル。ボールに戻ってもらうぞー」
「えー? 僕、町の中も見てみたいよー」
「お断りだね♪」
……なんと言うか、こうなる事は予想出来てたんだよな。
ゼクは好奇心がフィーバーモードだし、レパルは『あれ』の所為で入るわけが無いよなぁ。
「レパルさん、約束を忘れた訳ではないんですよ。ただ、余計な混乱を避けるためでして……」
「まだ一日なんてぜーんぜん経ってないんだ。それでも入れるって言うなら……」
まったく予想に反してくれないのな。
レパルが飛び掛ってきて、俺は押し倒される。そして体に乗られて動けなくなるんだよ。はぁ……。
そして頭の両横にレパルの前脚が置かれて、耳元で囁かれる。
「こっから俺を押し返してみな」
「無理だっての……分かった、入れないから降りてくれよ」
「ん、よろしい」
ずるい手を覚えられたもんだよ全く。人一人の力でポケモンをどうにか出来る訳無いでしょうに。
自分のパートナーにいいようにされるって、トレーナーとして情けなくなってくるぞ……。
しかたない、レパルは諦めてゼクを説得しよう……って、レパルがゼクになんか吹き込んでるー!
ゼクがなるほど! って顔してるし、レパルがニヤッとしてる。やられた……。
「ゼク~。ゼクは入ってくれるよな? ほら、町の中ってポケモンが居ると目立っちゃうから」
「それならレパルだって同じでしょ? 僕、レパルが入らないなら入んないもん」
くぁー! レパルの入れ知恵だなこれ! レパルを許可した以上、こう言われるとどうしようもない……。結局俺が折れるしかないみたいだな……。
「……わかった、外に居ていいから大人しくしてるんだぞ?」
「やったー! タカトありがとう!」
……こんだけ喜んでくれるならいいか。ゼクロムなんて昔話のポケモンだし、最近話題になったニュースでも姿は出てなかったし、町でも大丈夫だろ。多分……。
やや不安だけどシティの中へ……っと、忘れるところだった。説明しなきゃいけない事がもう一つあった。
「ゼク、町の中では俺は返事が出来なくなるからな。何かあったらレパルに聞いてくれ」
「あ~、そうだったな」
「え? なんで返事出来なくなるの?」
それは……。
「俺が説明してやるよ。いいか、ゼク。本来人間は俺達の言葉が分からない。だが、タカトはそれが分かるんだ。分からない奴らの中でタカトが俺達と喋ってたら、周りの奴からタカトはどう思われる?」
「そっか、タカトが変に思われちゃうんだ。そんなのやだ」
「だろ? 分かったら町の中でタカトに話しかけるのはタイミングを見て、な」
「うん!」
「こんな感じでいいか?」
「あぁ、バッチリだ」
レパルの説明通り、俺がポケモンと話せるのは世間一般では異常な事。
俺の持ってる力……それはポケモンならどんなポケモンでも持ってるらしい『相手の鳴き声を自分の言語として聞く力』。これがあるから、ポケモン同士は種族が違っても話せるんだとさ。
何でそれを人間の俺が持ってるかって? ……実は知らないんだよ。あ、両親の片方がポケモンだった、なんてファンタジーは無いからな。
そういえば、なんでこんな事が出来るかばあちゃんに聞いた事があったな。その時は、神様がくれたとかなんとか言われた気がする。子供に言うにはそれが一番かもな。
……これが俺の旅の目的でもあるんだよ。
なんで俺にこんな力が備わってるのか、他に同じ事が出来る奴は居ないのかを知りたくて旅に出たんだ。別にチャンピオンとかポケモンリーグは目指してない。
ばあちゃんが亡くなった日……。
あなたの知りたい事……探しに行きなさい。タカトちゃんならきっと、見つけられるから……
……そう、最期にばあちゃんが背中を押してくれたから……。
「? タカトどうした?」
「タカト? 行かないの?」
おっと、物思いにふけってる場合じゃないな。今はゼクの仲間入り祝いの準備だ。
「なんでもないさ。行くか」
「いいならこっちも聞かないけどよ……って、置いていくなってぇ!」
「中はどんな感じなのかなー♪」
本日はここまで……変なところはあると思いますが、ご一報下されば修正いたします。
次の更新は何時になるか分かりませんが……それまで、御機嫌よう……
最新の10件を表示しています。 コメントページを参照