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ともだち以上こいびと未満

/ともだち以上こいびと未満

ともだち以上こいびと未満 

Written by March Hare
魔女先生シリーズ2作目。
注:R18表現があります


セーラリュートの春休み 


「マチルダ先生、本当にやめちゃったんだね」
「いろいろあっただけに複雑」
 セーラリュート中等部卒業式の翌日。実家に帰ってしまった生徒もいるが、ライズもロッコもまだその予定は決めていない。あの事件の発端になったベンチに今度は二匹。ライズが体を横たえ、隣にロッコが座っている。
「マチルダ先生のしたことは悪いことかもしれないけど、今のキャスを見てると本当に幸せそうだよね。ロッコさんとこうして親友になれたのも、先生のおかげだし」
「わたしがライズの親友……」
「ごめんね。僕、やっぱり自分に嘘はつけないんだ」
「違う。親友だなんて言ってもらえて嬉しい」
 ロッコは正直な女の子だと思う。表情は希薄だけれど、本当に喜んでいる。ライズの秘めた恋を知りながら応援してくれているのは彼女一匹だけ。マチルダ先生はやめてしまったし、ヤンレンやミツはライズの気持ちを知っても相変わらずだった。
「本当に? 僕にとっては今の関係はすごく心地良いけど、ロッコさんはその……」
 雌雄の友情は成立しないって誰かに聞いたことがある。マチルダ先生だったか他の先生だったかは覚えていないけど。
「ライズが好きな子は男の子でしょ。わたしも恋愛対象が男の子だし、そういう意味では立場は同じ。だから友達で大丈夫」
「や、ロッコさんが好きな子って」
 ロッコは無言でライズの背を撫でた。雌雄の友情が成立しないのは、片方が相手を好きになってしまって、友人ではいられなくなるのだと。
「……ライズ。大事なこと、聞いてなかった」
「何?」
 ロッコは声を潜めて、耳打ちしてきた。
「ライズはキャスを抱きたいのか、キャスに抱かれたいのか」
「ふぇっ!?」
「声が大きい」
 突然何を言い出すんだ、と驚いたが、ロッコの言わんとしていることはわかる。ライズが女性の視点でキャスを見ているのか、キャスを女性として見ているのか。
「そ、それは……」
「ライズは総受けと見た」
「う、受け? ど、どっちかっていうとそうかな……でも逆もありかな、とか……思ったり」
「やっぱり。あのときの反応がそうだった」
「や、やめてよ……思い出したくないんだからぁ」
 ロッコには一度、いろいろあったとはいえ明らかに友達の一線を踏み越えることをされてしまった。
「なら、わたしが男の子になればいい?」
「え?」
「ごめん。今のは忘れて」
 本当にロッコが男の子だったら。友達としてではなく、好きになれていただろうか。逆かもしれない。キャスがもし女の子だったとしても、キャスという存在を好きになっていたかもしれないのだから、わからない。今わかっているのはキャスを好きなんだってことだけ。
 でも、ロッコがこんなことを言うってことは。
 ――本当は僕に、友達以上のものを望んでるんだ。
「いいよ……ロッコさんなら」
「何が、いいの?」
「友達同士ですることもこの国じゃ珍しくないんでしょ? せ……せっくすふれんど? っていうのかな……」
 言ってしまった自分が恥ずかしい。でも、嫌ではないし。悪くはない、と思える。ライズを理解してくれているロッコなら。
「せ、せせせセフレ? ら、ライズと……わたしが? そそそれは願ったり叶ったりというか、わ、わたしは嬉しいけどライズは本当にそれでいいのかとか、キャスのこととか」
「ロッコさんが僕のために男の子になってくれるっていうなら、それくらいはさ……」
「そ、そう? 本当に? なら、今夜! 女子寮にこっそり来て! ルームメイトのヤンレンは実家に帰ってしまったから、窓から入れば大丈夫」
 ロッコの戸惑う姿が珍しくて吹き出しそうになったが、ここで笑ってしまうと雰囲気を壊してしまうのでどうにか堪えた。
 春休みに入ったこのタイミングでロッコが『大事なこと』だと言ってライズに確認してきたときから、そういう意図があったのは明らかだった。噂に聞いたことがある。恋人のいる生徒はこの時期、帰省を遅らせてルームメイトのいなくなった部屋に相手を呼んでいるのだとか。学生自治会の役職を与えられるほどになると個室が貰えるが、多くの生徒にとっては長期休暇の始まるこの時期しかチャンスはない。
 本当にこれでいいのか?
 本当に好きな相手には気持ちを伝えられないまま、恋人でもない相手と。というか、これはもう恋人と言ってもいいのではないか。
「あ、ライズ! まだ残ってたんだ」
 心臓が飛び出そうになった。たった今思い浮かべていた姿。通りがかったキャスが声を掛けてきたのだ。隣にはセリリの姿もある。
「へぇーっ、やっぱりライズとロッコってそういう関係だったのっ? あたしにはキャスがいるからいいけど、他の女の子たちが知ったら悲しんじゃうよー。ね、キャス」
 冷やかしついでに惚気るセリリと、照れ臭そうにはにかむキャスを見て、心が折れそうになった。
 でも、当たり前だ。誰がどう見たってお似合いのカップルじゃないか。キャスが幸せなら、祝福してあげないと。
 ずっとそう思ってきたはずなのに。
「ライズの気持ちも知らないで勝手なこと言わない。ライズが傷つく」
 ロッコがベンチから立ち上がってセリリに詰め寄った。
「いいよロッコさん、セリリさんだって……」
 悪気があって言ったことじゃないんだから。
 あれ? おかしいな。言葉が出ない。心なしか、景色が揺らいでいる。
 なんで。
 どうしてこんなことで僕は泣きそうになっているんだ。
「えっ、ライズ様……? ご、ごめん! あたしはただ」
「ライズ、一体どうしたの? なんか変だよ……ボクの知らない間に何かあった?」
「……キャスのばか」
「え?」
「なんでもないよ! そうだよ、僕にだってロッコさんがいるんだからっ」
「ライズ……」
 キルリアのキャスにだってわからないだろう。キャスへの。セリリへの嫉妬。ロッコへの友愛。自己への嫌悪。それらがない混ぜになって、どの感情が誰に向いているかなんて。自分でも何が本当で何が嘘やらわからなくなってるんだから。
「それじゃ、またね! 行こ、ロッコさん」
 もうまともに顔を見ることができなくて。次の一言を聞くのが怖くて、逃げ出すより他になかった。

変な先輩 


 ランナベールのお国柄なのか、セーラリュートにおいても恋愛や風紀には開放的だったりする。故郷ジルベールでの大学にあたる錬成部まで一貫の教育がされているということもあり、自己責任論も根強い。
 春休みに入るとすぐに寮の警備員が数を減らすのも、帰省や卒業する生徒が多いという理由がきちんとあるにはある。が、休憩を意図的に多く取ったり交替時間が隙間だらけだったり、明らかに空気を読んで警備を甘くしてくれているらしい。
 らしい、としか言えないのは、中等部では少なくともライズの友人関係の中では経験者がいないからである。
「アヒャ。お前みたいな中等部のガキまで恋人にお熱かァ」
「ひっ!?」
 女子寮の門近くの茂みに隠れて様子を伺っていたら、背後から声をかけられた。ドグロッグの若い男性。まさか警備員にいきなり見つかってしまうとは。
「こんなところに隠れてたら風紀委員の非モテクソ喪女どもに見つかっちまうぜ。こっちに来な」
「え……っと」
「オレも錬成部の学生だってーの。お前とおんなじ、可愛いカノジョに会いに来たのさァヒャヒャヒャ。お前どうせ初めてなんだろ? いいからついてきなって」
 変な笑い方だし妙に怪しい先輩だが、ライズを騙してメリットがあるとも思えない。何やら詳しいみたいだし、大人しく従うのが吉か。
 一度離れて塀の外を回ってゆくと、草よりも低木が多くなり、中には大きな樹が生えていたりもした。なるほど、正面玄関の近くよりは隠れやすい条件が揃っている。
「あの」
「ヒャ?」
「さっき言ってた風紀委員というのは……」
「せっかく警備員のおばちゃん達が空気読んでくれてるのによぉ、風紀委員にはこういうの絶対許さねーってやつがいるんだ。アヒャ。この前の冬休みに何人か捕まってたぜ。お前みたいなキレーなやつだと何されるかわかんねーなぁヒャヒャヒャ」
「悪い冗談はやめてくださいよ……」
「まー見つからなけりゃいいんだよ。いいかァ、あの木が見えるだろ。あそこから簡単に塀を越えられるんだ。このオレが冬休みに見つけたんだぜぇヒャヒャヒャ」
「はあ。それは参考になります」
「よし、誰もいないな――ヒャ。待て」
 樹の影から首を伸ばして周囲を伺っていたドグロッグの先輩が、声を潜めた。
「ここよ!」
「なるほどね。冬休みに侵入されたのはここか」
 三匹の女子生徒がライズたちの隠れている木の近くに集まってきた。その中にはライズを熱心に風紀委員に勧誘しているペルシアンのキャミィ先輩の姿もあった。
「テリーア先輩を問い詰めて聞き出したのよ。あのひと、高等部でずっと学級委員長だったくせにこっそりと彼氏なんか作っちゃって!」
 女性とは噂に違わず恐ろしいものだ。世のポケモンが全て男の子なら良かったのに、なんて思っているライズからしてみれば関わりのない世界であるはずなのだが、なぜか女の子に好まれる容姿のせいで気がつくとこんなことになってたりするわけで。
 などと不条理を嘆いて現実逃避している場合ではなく。
「その辺に隠れてないか手分けして探すわよ!」
 ここで捕まってしまえばロッコに会えないどころか、風紀委員にライズを推薦しているキャミィ先輩の顔まで潰してしまう。どうにかして切り抜けないといけないが、このままでは見つかってしまうのは時間の問題だ。
「ヒャ。テリーアに何しやがったんだあいつ……」
 が、こんな状況なのに、ドグロッグ先輩の呟きに含まれていたのは焦燥ではなく憤慨だった。
「あんなヤツらに二匹とも捕まっちまうのも癪だ。ここはオレに任せてお前は楽しんできな」
「先輩……?」
 その言葉の意味を理解する前に、先輩が飛び出していった。
「アヒャヒャヒャヒャ! お前ら彼氏いねーからってテリーアに嫉妬かよォ! 何ならこのオレがまとめて相手してやってもいいんだぜぇ!」
「あんのヤロー……!」
「噂のテリーアの彼氏ってあいつ……? 幻滅した」
「待ちなさい!」
 先輩は舌を出して女子生徒を挑発しながら逃げていく。頭に血が上った三匹はライズの存在に気づくことなく、まっしぐらにドグロッグを追いかけていってしまった。
 決して格好いいとは言えないが、助けてくれたらしい。元はといえばこの場所を勧めたのもあの先輩だから複雑な心境だが、結果オーライということにしておこう。

男の子(?)と男の子 


 風紀委員の先輩たちが警邏に出ていくのを見かけて気が気でなかったが、心待ちにしていた窓を叩く音がしたので、急いでライズを部屋に入れた。カーテンを閉めてしまえば、もう誰からも見られることはない。ちなみにこの時期、夜にはカーテンは全て閉めるのが暗黙の了解となっている。互いに野暮な干渉はしないという意思表示と、男子生徒が入りやすいようにとのことで。
「捕まらなくて良かった」
「途中で会った先輩が助けてくれたんだ」
 ライズの困ったような微笑みにドキンとした。ああ、現実とは思えない。ライズがいるだけで、住み慣れた部屋がまるで、日常からは遠く離れた夢の世界みたいだ。
「外は寒かった?」
「そうだね……春休みになったばかりだしちょっと冷えるかな」
 ライズがわたしの部屋にいる。紛うことなき現実の出来事だ。儚げな眼差しも優雅な仕草も艶やかな毛並みも澄んだ声も、みんな本物のライズだ。
「温めてあげる」
「えっ……」
 ここまできたからには、ライズはロッコに身を許す覚悟はもうできているのだから。抱きしめるくらい、どうってことないはずだ。
 そっと屈んで手をのばして、長い毛で包み込んであげた。
 ライズの体は温かくて、サラサラとした毛触りの下は吸いつくほど柔らかい。おまけにクラクラするくらいいい香りがして、卒倒しそうになった。
「……ライズ」
「何、かな……」
「もう我慢できない。キスさせて」
 そうだ。こういうのは勢いが大事だ。ライズは本当は男の子が好きなのに、優しいから、わたしのために、ライズを好きになってしまったわたしのために、来てくれたのだから。女に生まれてしまったものはどうしようもないけれど、女であることに執着なんてない。もともと女の子らしいことには興味がなかったのだから。ライズだのためなら男の子にだってなんだってなってやる。
「ほら、目閉じて。わた……俺をこんなに挑発しておいて、今さら抵抗しても無駄」
「ロッコ……さん? そっか……うん。ロッコさんに黙って従います」
 きゅっと目を閉じたライズの首に手を回した。緊張が伝わってくる。ロッコだって心臓が飛び出そうなくらいバクバク鳴っているけど、好きになってしまったのはわたしだから。受け身になんてなるものか。今夜が最初で最後かもしれないのだ。ライズにも、そして自分自身にも、気の迷いというものはある。そんな夢から覚めないうちに。
「ん……」
 そっと口先を合わせた。ほんのりと甘い、花のような香りがした。
 十秒くらいそうしていただろうか。もっと短いかもしれない。でも、永遠にさえ感じられる一時だった。
 唇を離して、ライズの下に手を差し入れた。
「ロッコさ……わぁっ……!」
 そのまま立ち上がって、ライズを抱き上げた。
「もうお前は俺のものだから。大人しくして」
 そうして、ベッドに直行する。この流れのままやってしまおう。自分でもびっくりするくらい、勢いづいている。ライズがロッコと友達以上の関係になってもいいって言ってくれたときはあんなに取り乱したのに。男の子として振る舞うことで、寸劇を演じているだけだと錯覚しているのかもしれない。
 ライズをベッドに寝かせ、両手をついて覆い被さった。
「ま、待ってロッコさん……まだ心の準備が……」
「そのうち良くなるから。俺に任せて」
「や、ほんとに、こ、怖いんだよ……ぅう」
 ライズの目が潤んでいることに気づいて、我に返った。
 男の子みたいに振る舞うといったって、これではあまりに強引すぎる。自分のことに必死になって、相手の気持ちを考えていなかった。だいいちライズが好きなのはこんな野蛮な男ではなく、もっと紳士的で心優しい子ではなかったか。キャスみたいな。
「……調子に乗りすぎた。謝る」
 ライズを抱き起こして、仰向けから横向きに寝そべらせた。ロッコはベッドの縁に腰掛けて、ちょうど昼間にベンチで座っていたときと同じ形になった。
「謝らなくていいよ。だって、僕のためだよね。ロッコさん、本当に男の子みたいだった」
 一度流れが途切れると、今まで自分がやっていたこと全てが恥ずかしくなった。ライズを手籠めにしようとしていたなんて。
「そう言ってもらえると嬉しい、けど……わたし、ライズを抱きしめてるうちに変な気分になって。ライズの気持ちも考えずに暴走してしまった」
「仕方ないんじゃないかな。自分で言うのも何だけど、ニンフィアの体ってそういうふうにできてるみたいだしさ……」
 俗にメロメロボディと呼ばれる特性。肌触りも香りも、ほとんどの異性が魅力的に感じるようにできている。それを抜きにしてもとびきりの美少年ではあるのだが、こうして二匹きりで肌を触れ合わせたりしていると、ライズの魅力も三倍増しだ。
「わたしは今、抑えるのが大変ってくらい準備万端。ライズの心の準備ができたら言って」
 ライズはベッドから下りて、そわそわと部屋を歩き回りはじめた。緊張するのも当たり前だ。自分が思ったよりも平静でいられるのが不思議である。というより、ロッコはライズの初めてを奪うつもりでいるが、ライズに奪われるなんて意識は微塵もない。その気持ちの差なのか。
「あの、ロッコさん……」
「何。準備OK?」
「や、先にトイレ貸してくれないかな?」
 外は冷え込んでいるみたいだし、仕方ないか。ここでヤンレンだったらまた余計なことを考えそうだが、べつにロッコには変な趣味はない。
「わかった。トイレなら、廊下に出て左に――」
 言いかけて、大変なことに気づいた。ライズは侵入者なのだ。トイレを借りるどころか、この部屋を一歩も出るわけにはいかないのだ。
「……えと」
「考えていなかった。他の男の子はどうしているのだろう」
「外……かな?」
「今外に出るのは危ない。まだ風紀委員がいる」
「ど、どうしよぉ……」
 救いを求めるようなライズの目を見ながら、あのときのこと
を思い出していた。高等部の先輩達の妄想を実行に移してしまった変態ヤンレンの起こしたあの事件。ヤンレンの魔の手からライズを守るためにロッコも同席し、少しでも気持ち良くなってもらおうとライズをお漏らしさせた――思い出してみるに、ロッコとてヤンレンのことを言えた義理じゃない。
 しかし今のシチュエーションなら、ヤンレンでなくとも、おしっこを我慢しているライズの姿が破滅的に可愛い、などと思ってしまうのはわたしが変態だからなのか。
「一、何かの容器に入れてわたしが後からトイレに流しに行く。二、我慢する。三、お漏らししちゃう。どれがいい?」
「に、二番! それ以外ないでしょ!」
「本当に我慢できる? わたしとこれからいろいろするのに」
「それは……頑張るから……」
 ゾクゾクするこの気持ちは何なのだろう。困っているライズを見るのがこんなに愉しいなんて。
「わたしはライズのおしっこでびしょびしょにされてしまっても構わないけど?」
「ヤンレンさんみたいなこと言うのやめてよぉ……あれからヤンレンさんのことずっと苦手なんだし……」
「ヤンレンのベッドでする? ヤンレンだったら喜ぶかも。ヤンレンは新学期まで帰ってこないから、それまでに干して乾かしておく」
「そ、そんなことできるわけないでしょっ」
「そう。じゃこのまましよう。頑張って我慢して」
「うん……」
 頷きながらもまだ乗り気でなさそうなライズを、高い高いをするみたいな格好で抱き上げた。
「本当に漏らさない?」
「そ、そんな抱き方しないでっ……」
「冗談。それじゃ今度こそ」
 ライズをそっとベッドに寝かせた。今度はうつ伏せで、お尻をこちらに向けさせる。
「少し足伸ばして……そう、ちょっとお尻を突き上げて」
「はい……」
 恐る恐るロッコの支持に従ったライズの後ろの穴に舌を這わせる。ちゃんと調べておいた。まずは唾液で濡らしてあげて、それから舌先とか、指を入れて少しずつ解していく。
「ふぁっ……ん……」
 ちろちろと舌を這わせただけで、ライズは可愛らしい声を上げた。ついでに小さな性器にもキスをしてあげた。
「ひゃぁっ……!」
「ちょ……っ、ライズっ」
 ぴしゃっ、と飛び出したおしっこが顔にかかった。少しの量だったが、いきなりこれでは約束が違う。
「ち、違うんだって……」
「何が違うの? 我慢するって言ったのに」
「や、その……予想外の刺激にびっくりしたっていうか……はうぅ……」
 ニンフィアの匂いとはこういうものなのか、ライズのおしっこは甘い花のような、魅力的な香りがする。あのときもライズの匂いにくらくらして、半ば自制を失ってしまったところがある。ニンフィアの体臭には媚薬のような効果があるのかもしれない。
「さっきも言ったように、わたしは構わない。変に我慢しない方が気持ちいいかも」
「や、やっぱり一番……にしよっかな……ほら、さっきの」
「今更言われても困る。わたしが我慢できない」
「え……?」
「今すぐライズを犯したくて仕方がない」
「……ロッコさん、そんなコト言うひとだったっけ?」
「わたしはいつも正直だけど」
「……たしかに」
「我慢できなくなったらこのまましていいから」
「や……絶対に我慢する……」
「本当?」
 そうして、ライズの後ろの穴に舌先を少し入れてみる。
「って、ちょっ、ひぁあ……っうっ」
「最初は少し痛いかもしれないけど耐えて」
「ぁ、ぁ、ぁあん……っ」
 ライズが喘ぎ声をあげて体をくねらせたとき、またおしっこがロッコの首にかかった。
「ん……ちゅ……む……ふぅ……強がり言って、我慢できてないじゃない……」
「ゃ、だって……ロッコさん、が……っ」
「わたしがしてもいいと言っているのだから、言い訳する必要ない」
「……は、はい」
「いい返事」
 強気で接している振りをしながら、ライズが本当に嫌がっていないかとか、どうしたら満足してもらえるかとか、自分の欲望だけに流されないようにとか、気を配ることを忘れない。
 ロッコはベッドに後ろ足を投げ出して座り、ライズを抱き寄せた。
 こんなに間近で見つめ合える関係になったことが嬉しくて、思わず頬が緩んだ。
「ライズ。キスしていい?」
「ロッコさん、そんな可愛い顔もできるんだ。笑ってるところ、初めて見たかも」
「っ……うるさい。黙って目閉じて」
 ライズに可愛いって言われた。このわたしが。可愛いだなんて。
 あまりにもわかりやすい照れ隠しだと自分でも思ったが、強引にキスをした。今度はさっきみたいなフレンチキスではなく、舌を入れた。ライズも受け入れてくれた。
「ん……はむ……」
 舌が絡み合って、唾液が混ざり合う。ライズの歯の感触さえも愛おしくて、彼の体を強く抱きしめた。もう誰にも渡したくない。キャスにだって。ライズのことを一番よく知っているのも、ライズにどこまでもついてゆけるのも、わたししかいない。
「ちゅ……んん……ライズぅ……む……」
「ロッコさんっ……はむ、ぅ……ぷはぁ、へ、変になりそうだよぉ、僕……ふぁ、んぁんっ、ぁああ……」
 しょわぁぁぁ、と音を立てて、ライズはロッコのお腹の上でおもらしをした。今度はもう言い訳はできない。
「や、やだぁ……ぼ、僕、ロッコさんに抱っこされてるのにっ……お漏らししちゃってるよぉ……」
 骨抜きになったライズは体をぐったりとさせて、とろけるような表情でロッコにしなだれかかってくる。 
「ライズ……キスだけでこんなになって……本番はこれからなのに」
「ほ、本番……」
 魅惑的なフェロモンの香りが広がって、いよいよ自制を失いそうになる。自分の好きな相手だからなのか、ニンフィアの特性なのか、ライズのおしっこは危険なほどにくらくらする香りがする。
「ライズの初めて、わたしが貰う」
 この体勢になったのはキスをするためだけじゃない。ロッコは尻尾を持ち上げ、ライズの股の下へと近づけた。ちょうどライズのおしっこで尻尾が濡れているのは好都合だった。
「ろ、ロッコさん……? ひぅあっ!?」
 予め舌でマッサージしておいたこともあってか、すぅっと尻尾の先端がライズのお尻に入った。
「ライズ……わたしを男の子だと思って、受け入れて」
「ぁあ、あああ……っ……んん、っ……!」
 後ろから尻尾を挿れられたライズは逃げるように腰を反らせた。ロッコが膝の上に乗せて抱いているから、ライズの股がお腹に押しつけられる形になって、ライズのもが固くなっているのがわかった。
「ライズ……動かしていい?」
「ロ、ロッコしゃん……ひぁあ……ぃ、いい、よ……」
「わたしも初めてだから、痛かったら言って」
 思ったよりも深く入った尻尾を、動かしてみた。
「ふぁあっ……ぁ、ぁ、ぁあん……やん、ぁん、ぁ……!」
「ライズ……っ、わたし、ライズの中……入ってる……」
 尻尾から、ブルブルと背中まで電気が走るような感覚に襲われた。尻尾なのに。実は性感帯の一つなのだとか聞いたことがある。そんなことを思い出す余裕も、少しずつなくなってきた。
「にゃ……ぁ、ぁ、ぁあああ……」
 お腹にまた熱い感覚が広がった。ライズは快感に打ち震えながらロッコに縋りついていて、お漏らしをしていることに気づいているのかどうかわからない。相当我慢していたらしく、勢い良くロッコの首や胸に浴びせられるおしっこは、いつまでも止まらない。キスのときとは比べ物にならなくて、ロッコの体もベッドもめちゃくちゃだ。
「ライズぅ……悪い子、なんだから……っ、ぁはん、んぁ……!」
「ふぇえぇ……ごめんなさいぃ……で、でも、気持ち良くてっ……ぼ、僕、変になっちゃって……」
「生理現象だから、仕方ない……けど、わ……わたしの尻尾、そんなにいい?」
 ライズがあまりに大量のお漏らしをしたのに驚いて、ロッコは我に返っていた。昂った気持ちも少し落ち着いている。
「ほんと、ごめんなさい……僕、子供みたいに……」
「ライズはまだ十五歳の男の子だから、子供でいい」
「ロッコさんだって同……にゃっ!?」
 尻尾を動かすと、ライズはびくんと体を跳ねさせた。
 ああ、今、わたしは完全にライズを支配している。わたしはライズの側で、ずっとライズを見上げていられたらそれでいいと思っていたのに。
「じゃあ、大人にしかできないお漏らし、しよ?」
「ふぁ、あ、あんっ……そ、それ以上はっ……やぁん……!」
 尻尾を中に挿れたままで、ライズ背中から抱いた。そのまま体を捻って、ライズの股へと口を近づける。
「ん……ちゅ……はむ……」
「ぁ、ぁ、ぁ……い、今、刺激、したらっ……はぁうんっ……で、出ちゃうよぉっ……!」
「いいから、んむ……はぁ……出して……わたしに、ちょうだい……!」
「は、ぁ、ぁ……ぁあああ~っ……!」
 ライズの体ががくがくと震えて、口の中に甘いような苦いような精液が、とくん、とくんと溢れ出した。量は多かったけれど、おしっこが混ざっているせいかさらさらしていて飲みやすかった。嚥下しながらそっと尻尾を引き抜いて、ライズを自由にしてあげた。
「ロッコさん……っ、の、飲んじゃった……の……?」
「ん……ごちそうさま。何か?」
「や、その……うん、何でもない」
 ライズは自分のせいで濡れてしまったロッコの体やベッドをみて、気まずそうに目を逸らした。
「気持ちよかった?」
「僕はもう……何度も、頭が真っ白になって……こんな経験、初めてで……まだ、ドキドキしてる」
「わたしも初めてだということを忘れてない?」
「そ、そうだよね……ロッコさんはどうしてそんなに落ち着いていられるの」
「落ち着いてなんていない。ライズがこんなに漏らしてしまうと思わなかったし」
「ご、ごめん……途中までは我慢しなきゃって思って、頑張ってたんだけど……」
「途中で力が抜けてしまった?」
「や、その……ごめんなさい」
「何度も謝らなくていい。ライズが気持ち良くなってくれたのならわたしは嬉しい」
「ぅう……ロッコさんは……? 僕ばっかりじゃ、さ……ダメじゃない、いろいろと」
「わ、わたしは……」
 尻尾が思っていた以上に敏感だったなんて、恥ずかしくて言えない。ライズのお尻に尻尾を挿れているときに絶頂を迎えていたとか、そんなこと言えるわけない。
 本心では()に繋がりたかったけど、元はといえばロッコが男の子になる代わりに、ライズにわがままを聞いてもらったのだし。
 ロッコにとっては十分すぎるくらいの体験をさせてもらった。
 ライズにこれ以上を望むのはさすがにバチが当たる。
「……よかった」
 何も答えていないのに。ライズはやんわりと微笑んだ。
「な……っ? そ、そんなところだけ察しが良いのは困る!」
 こんな経験は最初で最後かもしれないけれど。
 これからも友達以上恋人未満で、ずっと彼の側にいられたらいいな、と思った。


 -Fin-



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Last-modified: 2015-05-21 (木) 22:06:36
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