ポケモン小説wiki
とある才能豊かな探検家のお話

/とある才能豊かな探検家のお話

writer is 双牙連刃

某所に投下したものをちょっとこっちにも投下。べ、別にしばらく作品投下を出来なかった埋め合わせとかそういう事ではなくてですね……申し訳ありませんでしたぁ! orz
この作品は若干の官能表現を含みます。お読みになられる際は十分にご注意下さいませ。



 探検隊、それは常に危険と隣り合わせ、過去に埋もれた宝を探索する人気の高い……職業なのかな、あれ?
そんな訳で、僕も誘われるままにフリーの探検家とやらになる事になって早一週間、それなりに楽しく暮らしておりますです。ええ。
そもそもは実家の道具屋を継いで危険なんて無縁なトレジャータウン、探検隊や探検家の拠点となる町で穏やかな生活を送りたいとは思ってましたが楽しく暮らしておりますですよ、ええ。

「それでね、今回は~ちょっとだけ危険度の高い所に行きたいんだよね! この前より、だけど」
「ははは……この前行ったのって危険度ダブルS指定されてる場所だったよね? その上って事はトリプルS、最上級難易度の場所ってことだよね?」
「……怒った?」
「あったりまえだろうがぁ! もう僕は静かに暮らしたいのに、何故面倒事ばかりを持ってくるんだい君は!? 他の依頼者の頼みなんてランクCとか、高くてBですよ!?」

 それも当たり前、だって僕、まだ探検家なりたてもなりたてですからね。超高難易度の探検地なんて、そもそも行けるはず無いんですよ。
が、この目の前に居る一匹のミミロップがそれを許してくれない。冗談じゃないよね、何も知らない僕をいきなりランクSの難地へ連れていくという暴挙を働いてくれたお陰で、探検家認定を受けると同時に一級探検家というレッテルを張られるというあり得ない事態に僕は陥っています。
親父殿、恨みますぞ。あなたが僕をピチューの頃から散々鍛えてくれたお陰でこんな事になったんですから! 『こんなに強くなるとは思わなかったんだよーはっはっは』って笑った時はにこやかに十万ボルトの渦の中に消えてもらったさ。

「ほ、ほら、私のお陰で探検家になれたんだし、恩返しと思ってさぁ」
「お・ん・が・え・し?」
「ごめんなさい口が滑りましただからその体から発せられてる電気の柱を鎮めて下さいそんなの浴びたら死んでしまいます」
「よろしい」

 母さん……なんでライコウなんかの嫁になったしまったの? ライチュウとライコウでは体のサイズが違いすぎるでしょ? ライ繋がりでw はは、泣けるぜ。
お陰で頬袋に電気を貯めるっていうピカチュウの常識を外れて、発電が出来るピカチュウなんて異端児が生まれるんですよ……はい、僕です。

「とにかく、そんな依頼僕は受けないからね。幾らミミのお願いでも、SSSなんて無理だよ」
「SSだって行けたでしょー? ねぇ、お願い~」
「一応言っておくけど、SSSは『帰って来なかった一級探検家が複数居る場所』なんだよ? ミミも一級探検家の一匹なら、それがどれだけ危険なのか分かってるよね?」
「うん! それだけすごーいお宝に巡り合える可能性があるって事だよね!」

 あぁ、頭がどうにかしちゃってるようです。怪しい光でも浴びすぎたのかな? 危険度が理解出来ていないようだ。
僕みたいなイレギュラーを除いて、一級探検家になるには相当の修練と経験が必要になります。つまり、探検家の中でも選りすぐりって事。
そんな探検のプロ達が少なくても五匹以上消息を絶ってる場所がランクSSS。帰ってきた探検家も、二度と行きたくないって言うほどの難地、それほど危険なところに何故探検家になってそこそこの僕が赴かねばならないんでしょうか?

「一応聞くけど、何処?」
「緑のジャングルってところ! 特異トリプルSランク……だっけ?」
「特異ランク? へぇ……」

 SSSランクでも、そうなった理由が特異である場合に付けられるランクだ。侵入するのが困難だったり、何らかの曰くがあったりってのが大本の理由かな。

「なんでも、そこに行った探検家は、必ずと言っていいほど探検家を辞めちゃうんだって。それで、その……」
「その?」
「よ、夜のお仕事に走るとか……」

 思わず噴いた。夜の仕事ってあーた、異性同士があれしてこれしてって事だよね? 反応からして。
一つ尋問してでも聞きたいんだが、この目の前のミミロップは、嫁入り前の体でなんでそんな、ある意味で命を取られるよりも危険な場所に行こうと言うんですか?理解が出来ないよー。

「ミミ? 君は自分がこれからどう生きていくか考えたことがある?」
「もっちろん! 探検家として特級になって、同じくらいの探検家のお嫁になるんだ。うーん、生涯安心!」
「……動機の不純さまでよーく分かったけど、そう思うなら尚更そんなところの探検行くべきじゃないって。確実におかしな場所であるのは、前評判で分かるでしょ?」
「でもでも、SSSランクでまだ安全そうなのって、そこくらいしか無いんだもん」

 あー、この前SSは探検成功させちゃったからな、僕が。あの時は訳あってお金が必要だったから命懸けで行ったけど、今はもうそんな事無いしなぁ。あ、因みにお金が必要になった理由は、母さんがやってる道具屋で、父さんが高額な品を持ち逃げれさて潰れそうになったからです。父さんはキュッと締めておきました。
今回は、その時の報酬で潤ってるんでまーったく行く気無し。なんでいちいち命賭けて探検しなきゃならないのって感じ。

「って訳で、明日行くからピカも来てね! じゃーねー!」
「はぁ!? ちょっ、ミミ待って! ……うぁぁぁ……最悪だ」

 このままじゃ僕からの説得が永遠に続くと思って逃げちゃったよ……そして恐らく、明日僕が行かなかったらミミは一人で行くでしょう。……話を聞いた僕が、それを放ってはおけないと知ってるから。
ミミはね、僕のお姉さん的なポジションに位置付けてらっしゃるんですよ。元々はミミロルとピチューだった時に、店に来たお客さんだったんだけどさ。
探検の話なんかをよくしてもらったよ……まさか、探検家に仕立て上げられるとは思って無かったけどさ。
とにかく……危険が高過ぎる以上、僕も行くしかない。ミミにもしもの事があったら、寝覚めが悪すぎる。
あ、言っておくけど、僕がミミの事を好き……まぁ好きだけど、恋愛対象にしている事は無いので先に言っておく。……はぁ、母さん達に事情を説明して、探検に行く準備をしようかなぁ。行きたくないよぉ~。



「……ピカ~、そろそろ緑のジャングルだよ!」
「ミミは元気だからいいよね……道中の戦闘、殆ど僕が戦ったからさ」
「うーん、やっぱりピカは頼りになるよねぇ。探検家になってもらってよかった♪」
「無理矢理した、の間違いでしょ」

 はい結局同行してます。トレジャータウンを出て三日……やっと目的の探検地に着いたよ。こんな遠征になるなら言っといてよねまったく……。
ミミの持ってる緑のジャングルの情報を書いた紙をふんだくって、事前に情報は仕入れておきました。なんでも、草タイプと虫タイプのポケモンしか居ない場所って事らしい。あまり得意なタイプじゃないんだけどなぁ。
うわ、欝蒼としたジャングルにぽっかりと口を開けた場所がある。ここが入り口、かな。

「ミミ、慎重に……」
「どーんと行ってみよー!」

 聞きやがれこの耳長兎がぁ! その耳は飾りなの!? なんなの!?
そりゃあ探検家として先輩だけどさ、一言物申す! もっと危機感と警戒心を持てやこらぁぁぁ!
ずんずんと進んでいくミミを見失ったら致命的、僕の全力のシャウトは心の中で反響させておこう。もう帰りたい、母さんの作ってくれるあったかいスープが飲みたいです。
しかし……もっと強いポケモンの気配でもしてくるかと思ったけど、そうでもないかな。これなら前に行ったSSランクの、灼熱の火口の方が危険だったよ。あそこは……本当に死ぬかと思ったし。

「なんか結構大丈夫そうじゃない。よかったー」
「油断し過ぎだったら。何かあった時に大丈夫じゃなかったーじゃ遅いんだよ」
「ヘーキヘーキ、あ、オレンの実みーっけ」

 暢気に木の実なんか齧って鼻歌なんか歌ってるんだから気楽でいいよ。こっちはもう気が気じゃないってのにさ。
さっきからジャングルの中を進んでるって言うのに、何も襲ってこない。ここを縄張りにしてるポケモンが居てもおかしくないのに、だよ。
これが何を意味するのか、考えられる選択肢は三つくらい。
一つ、まだ僕達が入ったことに気付いてない。
二つ、僕達に構ってられない何かしらの事態が起こってる。
三つ、……罠。
さぁどれでしょう? 僕としては1が一番良い。気付かれたとしても、戦闘になるだけだから。
2はグレーゾーンかな。その事態に僕達が巻き込まれる可能性もあるし、あまりそういった事に巻き込まれたくない。
考えたくもないのは3、これが当てはまる場合、もう僕達は狙われており、今にも舌なめずりをされている事になるっていうことだからね。

「ふふーん。おっ、なんかはっけーん。行ってみよ、ピカ」
「え? ちょっと待ってよミミ! あれって……」
「すごーい、黄金のリンゴだぁ! これすっごい美味しいんだよねー」

 皆さん、僕の残念なお知らせを聞いてください。ミミとちょっと距離があったからか、僕は気付いちゃいました。リンゴのちょっと手前に、木の方に不自然に伸びているツタがある事に。
地面には、軽く土が掛けられて隠されてる、先端が輪になってるツタがあるようです。
僕の中に声が響き渡る。答え3、答え3、って呟く自分の声が。
ミミの足が……罠の中にジャストイン! 飛び越えてくれるかなーって、一瞬思った僕が馬鹿だったよ。

「え? きゃあああああ!」
「お決まり過ぎてぐうの音も出ないよ、僕は」

 問題は、罠があるポケモンの蔓だった事かな。木の上から緑色のおっきな蛇さんがコンニチハしてきました。
ロイヤルポケモンのジャローダさんじゃないですか。わーい、強そうで僕、げんなりです。
掛かった獲物をガチで舌なめずりしながら見てらっしゃいます。……ん? もう一本のツタ、っていうかツルの鞭か。それでミミの体を執拗に撫でてる。あー、もしかして、そっちの意味で『食べよう』って事?

「や、へ、変なところ触らないでぇ」
「ミミ、今助け……ん!?」

 駆け出そうとする僕の前にも一匹……ヤナッキーとかいったかな、頭が葉っぱでとんがってるお猿さん登場です。
左右と後ろにもにもですか……アリアドスにモンジャラ、後ろのは……あら珍しい、リーフィアさんですか。……あれ、この子……。
いや、今はミミを助ける事に集中しよう。って言っても、邪魔する気……というより、ヤる気満々ですか。そうですか。
特異トリプルSランクの理由って、もしかしてこれかな? じゃあ、他の探検家達は皆このジャングルのポケモンに、って事だよね。

「ランク付けの正体見たり、か」
「ふぁぁ、や、んぅぅ」

 ミミが色んな意味でヤバそうなので急いで……って不味い! お持ち帰りしそうになってやしませんかジャローダさん!

「君達、僕の連れが持ち帰られそうになってるんで通してもらいたいんだけど」
「ふふふ……いいじゃない、あんな子の事考えてないで……」
「お姉さん達と……」
「気持ち良い事して……」
「遊びましょうよぉ」

 ……残念ながら、誘う相手を間違えているという事だけ先に言っておこう。何をされる事になるのかも分かる年だしね。
まずは僕を捕まえる事を最優先に動くのは目に見えてる。受けちゃいけないのはアリアドスが出してくるであろう糸かクモの巣、それだけは絶対に避けていこう。

「ごめんなさい、そんな暇……無いからさ!」

 ひらりと後方宙返り。四面楚歌で戦うほど馬鹿じゃないよ、僕は。これで4匹をよーく見る事が出来、なきゃよかったと若干後悔中です。
頬赤らめて興奮してる4匹……捕まったら本当、何されるか分からないな。
うわっ、一斉に跳びかかってきた。あんたら発情し過ぎでしょ! 頼むから止めてよね、そういうの興味無いから。
一匹ずつ捌こう。まずは、モンジャラに十万ボルトをショット。倒せなくても、痺れてる間に隙間を狙える。
そこを抜けて、振り向きざまにもう一回十万ボルト。貯めた電気を放出してるわけじゃないから、威力は父さんであるライコウもお墨付きだよ。

「ああああああ! あふぅ……」
「モンジャラ! んもぉ、活きがいいピカチュウ君ねぇ。萌えてきちゃうじゃない」

 うぅっ、寒気が……早く倒して、っていうか包囲抜けてるんだからミミを助けりゃいいじゃない! って居なーい。
まずった、時間を掛ければ掛けるだけミミが大変な事になってしまう。早く助けに行かなきゃ。

「失礼、遊んでる暇も無くなったみたいなんで、一気にいかせてもらうよ」

 体内発電フルブースト! 受けるといいさ、負担ゼロの僕のボルテッカー……父さん命名の、『バーステッカー』を!
雷に匹敵する電気を纏いながらの高速体当たり、避けられた事は一度も無いね。

「え、ちょっと」
「待たないです。さようならー」

 ある意味、十万ボルトだけで済んだモンジャラは幸運だったかもね。叫びも上げられないぐらいに悶絶して、三匹は気絶なさいました。
こんな電気、普通のピカチュウが出したら出した瞬間に負荷で気絶するだろうね。ライコウの血恐るべし。
……やっぱり、このリーフィアちゃん探検家だ。証のバッチ、持ってる。
僕の電気のショックで正気に戻ってるといいけど……今はミミを助けに行かなきゃいけないから、大きめの葉っぱを掛けておいてあげるだけにしとこっと。
さて……ミミ、大丈夫ではないだろうけど、すぐに助けに行くからね!
……やっぱり、大事なところだけ綺麗にしていってあげよっか。そこ、変態とか言わない。勘違いしないでもらいたいけど、そんなやましい気持ち微塵も無いから。



 何かが這っていったような跡とか、道の草がねてる部分なんかを見つけて追跡中です。うーん、やっぱり無茶してでもあの子連れてくるべきだったかな?
このジャングル、子供の精神衛生上大変よろしくないです。あっちこっちでその……行為がなされてます。
なんの行為かって? 所謂、交尾って奴ですよ。言わせんな恥ずかしい。
こりゃあ帰ってきた探検隊も何も言えないわ。なんせ、このジャングルのポケモンに玩具にされたなんて恥ずかしくって言えないだろうし、夜のお仕事に身をやつしちゃうのも納得かもね。
おっと、洞窟発見。這った跡はここに入っていってるか……行かなきゃダメ? ですよねぇ。
ただ……他のポケモンのだと思われる足跡も沢山ある。用心しないとかなーりヤバいかな。
よし、レッツ洞窟! 父さん、母さん、願わくば魔窟へと進む僕をお守り下さい。(淫乱な気から)
……よし、入り口から少し進んだら松明があった。……変だな、このジャングルには草と虫タイプしかいないはずなのに、火があるなんて?
それにこの臭い……奥からだけど、汗となんかの臭いが混ざって最悪です。何が起こってるか想像出来て最悪だよ。
挫けるな僕、この中にミミが居るんだから我慢して進むんだ!

「はぁ……だからあれだけ用心してっていったのに……」

 自分の中の鬱ゲージをぼやく事によって下げる。この臭いの中に長時間晒されるのは、それだけで頭がおかしくなってもおかしくない。自分で考えてちょっとややこしかったなう。
おっと、軽く開けた場所に出た。と同時に僕の耳がある音を無数に捉える。ぐちゅぐちゅと水を掻き混ぜるような音と、何かがぶつかりあう音。そして……興奮した雌の喘ぎ声。最悪です、ここは本当に魔窟でした。
何個か、部屋のようになってる洞窟の中全てで淫乱な事がリアルタイムで行われているようです。勘弁して下さいよ。
うわ、ベトベトンとサーナイトが愛し合ってらっしゃる……さっきのリーフィアちゃんの事もあるし、このジャングルの気に呑まれた探検家、だろうね。僕も気を張ってないと……うぅ、想像したくない。
それにしても、堕落した探検家がかなり居るなぁ。ブラッキーにサンダース、おわ、ルカリオとバシャーモ。それに、ミミロップとジャローダか。
……ウェイト・ザ・僕。見つけてるって、見つけてるてば! ミミ発見!

「ふわぁ……もう、許してぇ」
「くくく、そろそろトロトロになってきたか?」

 いえーい、ツルの鞭で全身を絡めとられて、顔舐められても抵抗しなくなってる。かなり、ヤバいね。
どうしよう、このまま飛び込んでいったら間違いなく騒ぎになる。そうなると、今交尾に興じてる奴らに僕の事も知られる。流石に数が多いし、僕も捌き切れる自信が無い。
うわ、ジャローダの臨戦状態になったイチモツ様がミミに見せられてる。こりゃあ、様子を伺ってる暇はない、か。
覚悟、よし。……待てよ、確か父さんが変な物をバッグに捻じ込んできたっけ。僕の電気に反応して炸裂する……これを使えば、いける!
やばっ、ミミのあそこにナニを宛がっちゃってる! 行くのは今しかない!

「ヘイ、ミミロップ攫い!」
「ん? あ、お前は!」

 言う前に、手に持った球をジャローダ目掛けてシュゥゥゥゥゥト! ア~ンド十万ボルトをショット! 父さん、信じるからね!
おっしゃあ! 煙球、炸裂です! こんなのに煙幕をしこたま詰め込めるんだから、父さんが抜けてるのか天才なのか判断し難くなりそうだ。

「げほっ、なんだこれはがぁ!」
「きゃっ!」

 ボディに電光石火をぶちかましてあげました。悶絶してればいいさ。そしてミミをキャッチ! 見よ、ライコウ譲りの火事場の馬鹿パワー!
頭の上に掲げるようにしてミミを支えて、トンズラこく!

「突破だぁぁぁぁ!」
「え? ピ……カ?」

 頼むから……そうそう、足を畳んで大人しくしてて。四足で走ってる訳じゃないから安定感は保証しかねるからね。
煙幕が予想より多くて助かった。大分洞窟を埋め尽くしてくれてる。これなら、逃げ切れる。
慎重に進んできた出入り口までの道を大急ぎで駆け上がり、なんとか太陽の元まで出れた。

「ミミ、走れる!?」
「ひっ、ぐす……」

 ダメだこりゃー! くそう、こうなったら、このまま走るしかない! ピックアップしたい子がまだ居る事だし!
本当はね、それがなければモドリ球っていうアイテムでトレジャータウンまで一っ飛びだったんですよ。でも、助けられそうな者は助けたいじゃあないですか。
そう、あのリーフィアちゃんをピックアップしてこうと思ってね。大丈夫、来た道は電気で木に標し付けてるから戻れます。
全力で走りながらジャングルを駆け抜ける。確か、そろそろリーフィアちゃんを寝かせておいたところだったハズ。
居た! っていうか起きてる! ま、不味い?

「あ、あなた……」
「くっ、遊んでる暇は」
「ま、待って! 大丈夫、もう落ち着いてるから」

 ふぃ~よかった、正気に戻ってくれたみたいだ。これでまだ淫乱モードだったらどうしようかと思ったよ。

「事態は説明してる暇は無いんだ。悪いけど、僕らのトレジャータウンまで飛ばせてもらうよ!」
「え、ここから……出れるの?」
「そう!」
「……ダメだよ、だって私、もう……」

 あーもう、こんな事してる場合じゃないの! 泣き出してもいいから言う事聞いてよ!
大方、された事が酷くて汚されたと勘違いしてるんでしょ!? もぉ~!

「そんなの、これからの生き方次第でどうにでもなる!」
「え?」
「だから行こう! こんなところに居てもまた汚されるだけ、でしょ!?」
「あ……ふぐっ、ぅぅ……」
「ひっく、ぐす……」
「オーケーね? ミミも、これ以上ここを探検しようとは思ってないでしょ?」

 どっちも頷いた。ミミが頷いたかは、耳の揺れ具合で判断しただけだけど。
んじゃ、ミミを降ろしてっと。

「くぉらあぁぁぁ! 待ぁてぇぇぇえ!」
「誰が待つか、この変態共め」

 バッグに入ってるモドリ球を掲げて、僕らは光に包まれる。あっと、探検隊として登録してないリーフィアちゃんは僕が触れてなきゃ転移出来ないや。
体が少し浮いて、一気にその場から飛び上がった。次に光が止んだ時、そこは……トレジャータウンだ。



「って事で、今回の探検は大失敗かな」
「そう……でも、ピカにもミミロップにも大事が無くて良かったわ」
「ミミは大丈夫か、ちょっと怪しいけどね」
「たぶん大丈夫だろう。泣き疲れて今、眠ったようだよ」
「ごめんね父さん、リーフィアも一緒に運んでもらっちゃって」
「気にするな、父さんは強いんだ。ほーらお前も、飛び込んできて甘えていいんだぞー」

 なーにを言ってるんだか。やれやれ、母さんとくっついてすっかりパパが板に付いたみたいだけど、これでも父さんは結構出来る探検家だったんだよ。見る影も無いけど。
ここはトレジャータウンにある母さんの道具屋。というか、僕の家です。無事に帰ってこれたよー。

「さーて、僕は見てきた事を探検ギルドに知らせてくるよ。これ以上被害が増えないようにね」
「そうか? にしてもけしからんな、そんな場所があるなんて」
「それはまぁ、どうしようもないよね。あのジャングルがそういう場所なのは何時からかも分からないし」
「そんな場所だって分かってたら、絶対に行かせる事は無かったぞ! 嫁入り前の体は、お前だってそうなんだから」
「まぁね~。じゃ、行ってくるよ」

 ……そう、実は僕、雌なんです。ただ、尻尾が何故か雄仕様の稲妻形なんだけどさ。あ、雌は普通尻尾の先がハートっぽくなってるよ。
これも多分、父さんの血がそうさせたんだと思うんだけどねぇ。お陰で生まれてこのかた、誰も僕が雌だって知りません。あ、両親とミミ以外だけど。
だから探検家なんかやりたくなかったし、母さんの店を継ぎたかったっていうのがあるんだけどね。今日散々な目にあった誰かさんのせいで、計画は破綻しちゃったけど。
あーあ、勘違いしてるだろうから、リーフィアちゃんにも言っておいたほうがいいかなぁ。っていうか、リーフィアちゃんどうしよう? 故郷に案内してあげたいよね。
とにかく、今は無事に帰ってこれた事を喜ぼう。あのまま僕も捕まっちゃってたらどうなったんだろうなぁ……この、絶対に雄に間違えられる体にも、たまにはお礼を言おうか。……なんか、空しいけど。
これでしばらくは、ミミも懲りて無理な事を言ってくる事は無いでしょ。それだけでも、それなりに収穫ありかな。

 あっと、ここからは後日談ね。
僕がギルドに報告した内容を基に、あのジャングルへ特別な探検隊が派遣されることになったんだ。なんでも、世界を救った探検隊だそうな。目的は、もちろんあそこに残ってる探検隊の救出。
それがどんな結果になったかは分からない。僕にもその探検隊に参加しないかってオファーは来たけど、丁重にお断りしたよ。
んでミミは、あの時の事が相当ショックだったのか、無茶な探検は自粛してるっぽいよ。まぁ、僕を誘いに来るのは変わらないけど。
あとリーフィアは事情があって、なんと母さんの店を手伝ってます。……あー、これについては深くは触れないで。ややこしいから。
僕? 一応探検家は続けてるよ。自分で進んでは行かないけど、誰かの手伝いとかで、ね。今も実は探検の最中だったりする。んだけど……。

「ぴ、ピカチュウさん、そんなに早く進まないで……僕、怖いです」
「この辺りは大丈夫だったら。イーブイ君、これからも探検家するなら、ちょっと勇気を鍛えないとね」
「あぅ~」

 こんな感じで、僕が頑張ってる状態です。ミミじゃないけど、同じくらいの探検家に頼って探検してみたいよ僕も……。
さて、イーブイ君もゆっくりではあるけど進んでるし、僕もちゃんとサポート……もといリードしてあげるとするかな。


 ~後書き!~
 こちらで消えてる間、ちょこっとだけ書いていた場所に置いていたものですが、いかがでしたでしょうか?
どうも私は性別詐欺が好きなようで、今作の主人公もそれでございました。今回の場合はカミングアウトがあっても喋り方はそのままですね。
他にも僅かにあったりはするのですが…ここに投下する物とでは長さが違うのでお蔵入りしている状態です。出すかは…不明です。
ともかく、あまり長引かない更新が出来るように頑張りたいものです…ではでは、お目汚し、失礼しました!

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • えーと…さすが双牙連刃さん、ストーリー展開やギャグの入れ方がとても良く面白い小説でしたが…、
    昨日デビュー作として出した私の小説が、ヒロインがミミロップで被りました。しかも主人公観点の小説、主人公がギャグキャラ(私の方は天然ですが)と被りすぎたような気がします…。
    現時点で比較してみたら私の小説が明らかに劣化版です。続編で良い小説にしていくよう頑張っていきます。接点はこの位ですがこれからよろしくお願いします。

    サマバケ外伝執筆、お疲れ様でした。
    ――フィッチ 2012-12-10 (月) 09:33:50
  • あれ、見たことある、確か続きがあったような、続きは書くのですか?
    ―― 2012-12-10 (月) 23:54:13
  • >>フィッチさん
    お、おうふ…3~4日ほど来ていなくて、少々配慮に欠けた投下を行ってしまったようですね。申し訳ない。
    ま、まぁでも劣化版等とおっしゃらずに、私の作品を気にせずに自分の世界観を広げていって下さいませ!
    作者デビュー、おめでとうございます。これからも頑張ってください、応援しております!

    >>12-10の名無しさん
    某所が有名サイトですから、恐らくそちらで見られたのでしょうね。そっちでは別名(似たような名前ですが)で活動してましたし。
    おっしゃる通りこれにはアフターストーリーがあるのですが、それをこっちに持って来るかは未定です。まぁ、要望があれば若干手直しをして投下しますが…今は特に投下を考えてはおりませんです。
    ――双牙連刃 2012-12-11 (火) 19:51:31
  • 通りすがりの者ですが、読ませていただきました。とても面白く、特に登場キャラが色々個人的に効果バツグンなので、続編も読んでみたいです。
    ―― 2013-01-13 (日) 14:58:32
  • >>01-13の名無しさん
    おっと、お読み頂きありがとうございます。
    ふむ、続編をお望みですか。そういうお声があるのならば、アフターストーリーみたいのではありますが、持ってきましょう! お楽しみ頂ければ良いのですが…手直しをしたら投下しますので、少々お待ち下さいませ~
    ――双牙連刃 2013-01-16 (水) 21:22:09
お名前:

トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-12-09 (日) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.