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ちぐはぐ

/ちぐはぐ

お初の方は初めまして、けんと申します。

同性愛(レズビアン)の描写があります。
苦手な方の閲覧はお控えください。

*簡単な登場ポケモン 紹介

アルシェ … つい最近フられてしまったジュナイパーの女の子。自分に自信が持てないことに悩んでおり…。
ロア … 森の皆から慕われている、勇敢なガオガエンの女の子。ただ一人気にかけている女の子がおり…。



 このような浅ましい考えを抱くようになったのはいつからだろう。知り得もしたくなかったこの気持ちに突き動かされ、翻弄されるがままだ。
しかし自分の中ではその気持ちがよくわかってはいない。短絡的な発想に絡んでいく私欲は徐々に膨らむばかり。
私の物にできたらどれだけ楽になれるだろう、そしてあなたの近くにいれたらどんなに心地が良いだろう。嗚呼、あなたのぬくもりを四六時中感じていたい、などという言葉すら漏れそうになる。
他のポケモンに言わせればそれは恋心と言われ、またほかのポケモンに聞けばそれは独占欲だと言われた。
自分のものにしてしまいたい、という浅ましい考えが露呈してしまう前に本当はあなたの前から去ってしまいたかった。


  ちぐはぐ


 おまえは誰にも愛されない、と昔番になりかけた男に言われたことがあった。陰気臭いだのゴーストタイプだのと散々罵られたうえでの告げられた別れだ。
悲しいという気持ちよりも先に、誰がおまえなんかに愛されるかと言い返したかった過去がある。己を小さく見過ぎていて言い返す余裕などなかった。
その時から急に誰かを愛することに躊躇いを覚えてしまい、自分すらも好きになることが出来ずにいた。きっとまたつまらない女だと言われるのが関の山であろうと言い聞かせていた。
そんな時に心配して住処まで足を運んできてくれたのがそのポケモンで、傷ついた私を慰めるように暖かい言葉をたくさん投げかけてくれたと思う。折悪しくその時の私は言われた言葉すらも思い出せない。
自分を見失わないようにするのに精いっぱいで、心配して足を運んでくれるポケモンたちのことなど気にしている暇などなかったはずであろう。他人の声なんて耳には入らなかった。
どんなに私が立腹しようとも、そのポケモンは私の傍から離れなかった。いつも慰めてくれたその人のことすら私は思い出せないなんてと思うと今度は自分に腹を立てる。
心の傷が不完全でふさがれた今の私は、そのポケモンにとある思いを伝えようと必死になっていた。あの時はありがとう、私を一生懸命に介抱してくれてと。
失恋してから森の外に出るのはだいぶ月日が経っていることだろう。情景や匂いが変わっているのも顕著である。きっと時間に取り残されているのは自分だけなんだとようやくわかった気もする。
私は記憶を頼りにそのポケモンの住処まで歩いた。森に住んでいる事もわかっていたし、今はただこの抱えきれない感謝の思いを早く出会って伝えたいとも思っている。
森のポケモンが私を物珍しい顔で見ている。今までずっと住居から出てこなかったポケモンがどうしてとささやく声が聞こえたが、気にする余裕すらなかった。気にしていたら私はまた自分を好きになれなくなってしまう。
前向きになれば少しは楽になれると教えてくれた、愛を教えてくれたその人に一刻も早く会いたくて。足取りは軽かった。
きっと今の自分は間違ってはいない、自分を疑いたくない。ずっと独白しながら私は歩く。

  たどり着いた。

 住処の前で深呼吸を何度か繰り返すと、途端に鼓動が早くなる。もし人違いだったらどうしようだとか、私のことをすっかり忘れてしまっていたらどう取り繕うだとか。
そんな乱雑と交錯する思いが私の中でぐちゃぐちゃになる。緊張のあまり失言してしまったらどうしようと思って病まない。
震えの止まらない足を一歩踏み出そうとしていると、
 「お客さん! ちょっと待って。家に用かな」
 後ろから不意に声を掛けられて私はびくりと動きを止める。幼いニャヒートはきっとそのポケモンの家族だろう。
 「それより何の用さ。お客さんなんて珍しいなぁ」
 落ち着きがないように先ほどから見返すニャヒートの顔に冷や汗を流しつつ、用事がある旨を伝える。察しがよく、運よく住処の中へと案内してくれた。
狭い住処だけどゆっくりしていってくれよと言葉を添えて、ようやくそのポケモンを呼びに行ってくれたらしい。先ほどまでの震えが脚だけではなく、羽すらも逆立たせてしまう。
緊張と焦りに脚をもじもじさせながらも、座っている事すらじれったく感じてしまう。今はただそのポケモンに感謝の言葉を伝えるだけでいい。余計な言葉は私を締め付ける要因になると。
一分一秒ですら一時間に感じてしまいそうな時間の流れに、徐々にしびれを切らす。これ以上待たせられたら私は一体どうなってしまうのだろうとも考える。
 「待たせたね、浮かない顔して」
 「ろ、ロア、急に家に上がり込んじゃってごめんなさい」
 ロア、と呼んだのは私を助けてくれた恩人のガオガエン。舌足らずな口調になってしまいそうになりながら、私は顔を伏せるように頭を下げる。
つまらないものだけれど、と言いながら私は森の羊羹を差し出す。ロアの表情が明るくなった。
出会ったばかりはずっと暗い顔をしていたのに、と言うと途端に私は照れ臭くなる。私以上に私のことを知るロアには頭が上がらない。
少し前までは文通もしていたのだが、私があまりにいい文章が書けないからと言ってやめたことを思い出す。それ以降は彼女と交流は途絶えたようにも感じていた。
今この雰囲気を見るに、きっと彼女は私のことをまだ大事に思ってくれている。あの男みたいに私を見限らないでいてくれる、それを感じただけでも私は心が晴れやかな気持ちに包まれたような気もする。
 「にやにやして。なんかいい事でもあったかい」
 「そ、そんなことない。ちょっと考え事」
 新しい男でもできたのと唆されては、そんなことないと私は反論する。あの出来事以降は私は異性とは交流したくないとまで思うようになる。一人でいるのが楽で仕方がなかったのだ。
全てはあの男のせいだと嘴を鳴らしそうになってしまっては、少しだけ彼女との間に空間が開いたようにも感じる。
客人にお茶も出せなくて気が利かないね、と言うとロアは立ち上がって、用意しに行ってしまう。すると途端に寂しさが込みあがってくるのだ。
なぜまだ怖がっているのだろう、彼女の前にいるのだから飾らない素の自分でいいはずなのに。そんな風に思いながら私はその一歩が踏み出せずにいた。
自分の本当の気持ち、抱いてしまった邪な淡い思い。触ると消えてしまいそうなぐらい繊細な思いは私の中で静かに凝り固まっていく。
 「ろ、ロア、私、その、あなたのこと、好きで...」
 カップを手にやってきたロアを目の前に、私は語尾を濁す。ずっと心の中で抱えてきた本当の気持ちが口から出て、つい声すら出なくなる。
驚きを隠せない様子のロアに私の顔は青ざめた。まずいことを言ってしまったか、本音を知ってしまい彼女は私の事をとうとう嫌いになってしまったか。
 「ごめんなさい、私は貴女に恋をしました」
 叶わないと知ってても、自分の気持ちに嘘をつきたくなかった私。ほろほろと崩れるように私の瞳から大粒の涙が流れる。
羽で顔を覆い隠して私は泣いてしまう。折角私を大事にしてくれる人に出会えたのに私はその人に嫌われるようなことを言ってしまった。自分が恨めしくて仕方がない。
素っ頓狂な顔になるロアを見つめていると、余計に嗚咽が止まらない。私が抱いた気持ちは邪で、とても浅ましい。
彼女に会いたかったのは私の本当の気持ちを伝えたかったから。その気持ちを聞いて彼女は嫌ってくれても構わないとずっと思っていた。むしろ嫌われることを望んでいたのかもしれない。
ことんと近くに紅茶の入ったカップを置かれると、盛大なロアの溜息が聞こえる。彼女の大きな手は私の小さな頭をくしゃくしゃと撫でる。私は恥ずかしくてたまらなかった。
 「アルシェ」
 ロアは私の名前を優しく呼んでくれる。その優しい声だけで私の涙が雨のようにこぼれる。いろいろなことを怖がってしまう私に彼女はいつだって手を差し伸べてくれた。
うつむいた私の顔を覗き込むようにロアは見つめた。知らずのうちに顔が紅潮とする私に彼女は何を思っただろう。
本当はロアのことを私のものにしてしまいたい、願わくはあなたとずっと一緒にいたい。そんな思いだけが募っていって自分が嫌になってしまう。
 「あたしはね、アルシェのことはずっと昔から好きだった。というかアルシェを放っておけなかった」
 撫でる手は少々強くても、彼女の優しい言葉が耳に響く。それだけで私は幸せであった。
やっと本当の言葉を聞かせてくれたね、と最後に優しく彼女は私にキスを一つ。頬に残った彼女の体温。炎タイプ以上に暖かい彼女の愛情に私は蕩けてしまいそうになる。
 「ロア、ロア」
 言葉にならない気持ちが凝り固まって、涙があふれる。どうして彼女はこんなにも愛おしいのだろう、優しく抱きしめてくれる彼女に甘えたくてしょうがないのだ。
 「みじめな私を愛してくれてありがとう。嬉しい」
 「そんなこと言わないでおくれよ。アルシェはどんな子と比べても美しいさ」
 ようやく言えた本当の気持ちに、私はほっと胸をなでおろす。あまりの長い時間に折角彼女に淹れてもらった紅茶はとうの昔に冷めてしまったようだ。

 邪まな思いは募る一方。彼女の暖かい一言に己の抱く気持ちはなんて惨めなものなのだろうとつくづく思う。
無いに等しい自尊心をより集めても、私は自分がそれでも好きにはなれない。彼女の好きという本当の言葉を耳にしても。
このままずっと彼女に触れていたかった。助けてくれた命の恩人にずっと寄り添っていたかったのだ。
そうすればいつか、嫌いだった自分を好きになれるかもしれないという思いが見いだせるような気がして。
か細い呼吸が漏れる度にロアの抱きしめる手はより暖かくなるように感じる。情けない声を漏らしそうになり私はきっと嘴を閉ざす。
眩暈がしてしまいそうなほど、ロアの香りいっぱいに包まれ私は一人涙をこぼしていた。どうしてここまで私に優しくしてくれるのだろう、どうして私なんかと。
そんな彼女の姿を見ていると、ロアには絶対敵う筈はないなと思ってしまうのである。完全に彼女の体温を感じてしまいたいと気付いた時には殺められてしまったような気持ち。
ネズミ捕りの罠に掛かってしまったコラッタが、人間によって捕殺されてしまうような猟奇的な描写がふんわり浮かび上がる。このままロアに息の根を止められてしまうのではないかと。
脈打つ鼓動が早くなるにつれ、私は彼女の体に身を埋める。炎タイプのロアの体は私を焼き殺すには十分であると。
 「アルシェ、あんたはこういうのが好きなのかい」
 興奮してるね、とぽつりと言われた言葉に途端に顔が紅潮とする。不意を突かれた一言に私はついどもる。
 「ロアが好きだから、香りも体温も感じられて…」
 語彙を濁しながら、彼女に聞こえるぐらいの声で囁いた。彼女に目も合わせることもできぬまま私は目を潤ます。
ヒール(悪役)と言われているのが嘘なぐらい、彼女の言葉も気持ちも優しい。まぶしくて目が眩んでしまいそうになる。
 「つまるところ、興奮しているみたいだなアルシェは」
 ロアに本心を覗かれてしまったかのようだ。背筋をなぞらえるような一言につい狼狽える。言葉を失って呼吸を乱す姿は滑稽だったに違いない。
 「へへ、図星か」
 何も言えない私にロアはくすりと笑う。終いには彼女の言葉一つ一つに、敏感に反応しているような気もする。
片思いの相手に見られてしまった本当の自分に彼女は失墜してしまったらどうしようと思うのだ。
途端、彼女の手がもっと私の体を滑り込ませるように動かしては触れていく。上半身から腹、下半身から足へと、触れていく箇所はじんじんと火照り始める。
くすぐったさに声を出さぬよう息を漏らす。その姿が面白かったのか彼女は私の脇腹に手を添える。
こんなことは止そうとも言えず、私は彼女の体に身を任せる。もっとしてほしいと言わんばかりに彼女に訴える私はどれほど浅ましかったろう。
 「あなたの弟さん、まだいるんじゃないの」
 「大丈夫、さっき出かけた。ここはアルシェとあたしの二人きりさ」
 何も言わないでくれと言わんばかりに再度彼女は私の唇を強く塞ぐ。圧迫された呼吸がロアと重なり生暖かい。
触れ合う度にお互いの体温が上がっていって、きっと私も彼女も考えている事は一緒だったのかもしれない。
 「ロア、悪役らしく私の息の根を止めて頂戴」
これっきりにしたい、私を捨てることができるのならと言わんばかりに私からも彼女の唇を塞ぐ。嘴のせいで多少ぎこちはなかったが彼女もしっかりと答えてくれた。
今にも蕩けてしまいそうな私の心に絡めてくれるように彼女は私の体を少々手荒に触れ始めたのだった。


 荒くなる呼吸に狭い部屋には私の声が響く。恥ずかしさに必死に嘴を閉じようとするが声は無意識だった。
イイ声で鳴いてくれるのを楽しんでくれているのか、私を攻めて涙ぐんでいる姿を見て楽しんでいるのかは分からなかったが。
優しく仰向けに寝かせると彼女は痛くはしないよと優しく言う。そして両足をこじ開けた。
無理に開けられた両脚を見、彼女は私の痴態をようやく理解したらしい。浅ましい姿を見られて私は気が気じゃなくなりそうだ。
 「アルシェはえろい子。悪い子にはどうすればいいんだっけかな」
 びしょびしょに濡れた秘所を見て彼女はどう思っただろう。こんなに助平な雌だったのかと言われても言い返す気力など毛頭ない。
 「あなたのがほしい」
 くらくらしそうな頭で私は言うと、彼女は大口を開けて笑った。あたしは雌だからあんたのご所望の物はないよと言うのだ。
当たり前だとはわかっていたがいざ現実を見やると目を逸らしたくなる。
それでも彼女が欲しかった。形などなくても大好きなロアと愛し合った証拠が。
あなたが私を嫌いになってしまう前にどうしてもあなたに愛されたという形がただ欲しかった。
 「物好きでスケベなアルシェは本当に救いようがない。誰にも愛されないね。
  でもあたしが独り占めできていいな。都合がいいよ」
 股座に顔を近づける彼女を見ながら、私は息をのむ。本当に彼女の言葉を信じてもいいのか、正直な彼女の気持ちに甘えてしまってもいいのかと勘ぐってしまいたくなる。
彼女には勝てない、能う筈などない。目を細め、私は彼女を信じてすべてを受け入れた。
 びりびりと伝わる刺激がこそばゆい。彼女の舌は器用に動いて私は鳴かせる。濡れた秘所のおかげで彼女の舌はすんなり容易に入っていく。
恐ろしいぐらいの快感が一気に襲ってきたせいで私は泣きながら声を漏らしてしまっていた。一人で自慰をするよりも何百も何千と気持ちのよい快感に体中の毛が逆立つ。
ここにはあたしとアルシェしかいないからと告げられると、堰を切ったように喘ぐ私。大きな声のせいで恥じらいを覚えたが我慢するべきところではないと悟る。
自分に正直になりなと彼女が優しく抱いているような幻想すら覚えて、私は彼女に抱かれるがまま。
嘴をぱくぱくとしながら声を漏らす私を見、彼女は一瞬だけ舌を離す。股座から顔離したロアの口に糸引く液体があまりに官能的すぎる。
 「ほんと淫乱。困ったぐらいに変態。さあ次はどうされたい」
 ロアは私の乱れた毛を舐めてからそう言う。汗ばんだ体を見ると私も彼女もすでに居ても立っても居られない状態なのだろう。
私は彼女の言葉に答える様に、
 「ロアも一緒に気持ちよくなりましょう、あなたと一緒じゃなきゃ私は嫌」
震えた声で彼女に言うと、こくりと頷く。 仰向けに寝かせていた私を抱かせると顔と顔が見合わせるように抱き寄せる。
お互いに良くなろうという私の気持ちにこたえる様に彼女は自分の足を開く。彼女もきっと興奮していたはずだ。
 「話が早くて助かるよ」
 お互いの濡れた秘所がしっかりと触れ合い、そして体が強く抱きしめられる。ロアの体温が私の性的興奮を逆撫でしたのは言うまでもなかった。
 密着した秘所はまるでディープキスをしているように吸い付く。溢れだした液は見て私は途端に恥ずかしくなる。
こんなにも淫らだと思われてしまったら大変だとふと思ったが、しばらくの間彼女と抱き合っていたのならそんなことを考える余裕も到底なくなる。
否応なしに密着した箇所が触れ合い、さらに刺激を加えることに私は先ほど以上の快感に声も出なかった。声にならない吐息が漏れ続ける。
生々しい水の音、彼女の粗暴でありながら優しく抱きしめる姿、快感の頂点は近かったのかもしれない。
 「イ、イっちゃう」
 つい囁いた言葉にロアは反応して、
 「なんなら一緒に」
 ロアは言う。私の震えた声に答えたのだった。
程なくして私は情けない声で絶頂を迎えた。ゆっくりとした波のように襲い来る気持ちよさに私はひしと彼女の体に抱き着いたまま。
お互いに迎えた絶頂は本当に気持ちがよくて、この瞬間だけがずっと際限なく続けばいいのとも思う。
何より、ロアの暖かい体温に私はいつまでも寄り添っていたかった。


 汗ばんだ私の体を抱き寄せるように彼女は腕をまわす。ふとした拍子に軽く叫んでしまう。
狼狽するのはこれで何度目だろうと思いつつ、先ほどまでの行為を思い出しては恥ずかしさに塗れる。
まるで番の初夜のように激しかった、と昔の出来事に軽く思いはせながら溜息を一つ。ロアは何も言わなかった。
 「本当にあたしでよかったかい」
 こくりと私は頷く。自分の気持ちに嘘はつきたくはなかったのだ。それ故、彼女にも嘘はつきたくはなかった。
 「私はロアじゃないと嫌。あなた以外に考えられない」
 恋心へと昇華してしまった己の思いを受け止めてくれた私に彼女はどう思ったろうか。彼女はそれ以上何も言わずに深呼吸を繰り返している。
本当はロアを大好きになる前に去ってしまいたかった。本当の自分を見られることを怖がってしまったから、私は自分を殺して生きてきた。それなのに今日彼女に私は射止められた。
いとも簡単に私を抱きしめた彼女は本当の悪役で、私の思い描く物語の中で最強最悪の悪役。
誰からも愛される彼女にはちゃんとした愛される理由があった。そんな彼女を自分だけのものにしてしまいたかった。
そんな愛される彼女を妬いてしまう時もあったが、彼女の虜になってしまったのは言うまでもない。
 「違うポケモン同士だとか、雌同士だとか、そんなんきりなんだ。どうして私はいつも邪なんだ。
 しがらみばかりを気にするのももう面倒で。だったら思いっきりあなたに恋して一生を終えたい。
 私を愛してくれるあなたのそばにいれればそれで私は幸せ」
 ロアに放った言葉は真っすぐだったろうか、それとも邪まだったのだろうか。ロアは頷くだけである。
わがままな女に思われただろうか、いっそのこと嫌われてしまったほうが楽なのではないかと思うのだ。
口を開かないロアに私は不安が一気に押し寄せる。ひどく最悪な結末が私の中で昔の出来事と一緒にフラッシュバックする。
もう戻れないところまで来てしまったことに後悔はない、彼女とまぐわった事実も払拭できない。自分のものにしてしまいたいという独占欲はこうも醜くて目を背けたいのだろう。
 「私を愛してとは言わない。でも私はあなたを愛したい。好きにならせて頂戴」
 汚れてしまったのはお互い様、床にこぼれた体液とこの部屋の空気は私たちの物。生々しい現実だけが私を追い詰める。
 「アルシェ、もうあたし達は一線越えた関係さ。怖がることはない。あんたを嫌いになる理由が見つからない」
 ロアの一言に私は涙をこぼす。遠まわしに言う彼女の言葉に私は突き動かされたような気持ちだ。
もう何も言うまい、私は嘴を閉じると静かに泣く。彼女の大きな手で頭を撫でられた時はもう戻れないなとようやく悟ることが出来たのかもしれない。


 「恋するフクロウは強いねぇ。あたしは負けた」


 彼女の言葉に、負けたのは私の方だと言えるはずがなかった。





 どうせ体を洗うのならば少々歩くけどそこに渓流があるからと言われ、一人で私は足を運ぶ。汚れた体で歩いていると何故だか見られているような気がして、恥ずかしさが心から溢れそうになってしまう。
私は愛するロアとまぐわってしまったのだ、今まで空想の世界でしか耽ったことがなかったのにとうとう。己でも信じられず現実と空想が混じってしまいそうである。
身体を真水で洗いながら溜息をこぼす。あの時ロアは本当に私を好きだと思っていたのだろうか、それともその場の空気で取り繕った言葉だったのだろうか。未だに欺瞞に感じてしまう自分が嫌で仕方がなかった。
普通に牡牝同士ならまだしも牝同士である。性別という垣根を越えてお互いの愛など成立するのだろうかとも思った。邪まな思いばかりを孕ませていく自分はどこまで不純なんだろうとロアと身を重ねたとき、そして今また改めて思うのである。
 (自分を愛せなきゃ、他人も愛すことなんて出来ないのかな)
 冷え切った体、水が滴る風切り羽。目からは大粒の涙がまた溢れる。ロアはそれでも私を愛してくれている。私はロアを真正面から愛すことが出来るのだろうか。
目尻に溜まった滴を落とし、私は重い足取りで彼女の家までまた戻るのであった。


 わざわざ淹れ直してくれなくてもよかったのに、と私は気遣うがロアはそれでももう一回紅茶をおとしてくれる。冷めてしまったお茶じゃ折角火照った体も冷えるだろうと。
その一言に嘴まで真っ赤になってしまいそうな恥ずかしさに襲われる。あの時の痴態は思い出したくもない。
 「アルシェ、もう泣かないでおくれよ。目が真っ赤だ」
 ロアの一言に私はぎくりとする。泣き腫らした目がすべてを物語っている。羞恥心はまるでアイアントに集られるかの如く襲い掛かる。何も言えなかった。
 「せっかくの美しい顔が勿体ない。冷める前に飲んでくれ」
 「ありがとう」
客人をもてなすにはちょっと足りないけれどと愚痴をこぼすロア。私は思いっきりに首を横に振る。彼女は苦笑いを一つ。
ここまで暖かい言葉を投げかけてくれるのはきっと彼女しかいないだろう、そんなことを思いながら涙を噛み殺す。
 「ロア、私あなたを愛してる」
 「何度も言わなくてもわかるさ」
 少しでも自分を愛せるようになれれば、そんな思いも込めて私はロアに愛の言葉を囁いた。彼女は照れ臭そうに笑う。
良かったとぽつりごちるロアの顔を見ながら、私はもう後ろを振り返ることすら忘れていた。



大分前に、「ガオガエンとジュナイパーの二人が見たい」という言葉にお答えしまして。
結果的に雌同士の同性愛、とあまり書いたことのないものに挑戦しました。
なかなかスムーズな更新が難しい次第、もうちょっと頑張りたいところですね。
誤字脱字、誤表現ありましたらまたコメント欄にてお願いいたします。

お名前:
  • これはとてもいい百合 -- 朱烏
  • >>朱烏様
    ありがとうございます!
    なるべくキレイにキレイに書こうとしましたがやはり下心丸出しの百合になりました() -- けん
  • 甘い百合だ……! という感想以上に、罵詈の「ゴーストタイプ」が個人的にとってもツボです(笑)
    いい百合をありがとうございます。 -- Lastertam
  • >>Lastertam様
    こちらこそどうもありがとうございました。
    百合百合しさをなんとなく意識しました()
    アルシェの元カレは彼女を嫌いになる理由はなんでもよかったみたいです... -- けん
  • アルシェ甘々な様子がとても良かったです。ぜひとも二人には末永く幸せになって欲しいです。 --
  • >>名無し様
    感想ありがとうございます。
    甘甘な雰囲気が出せるか心配でしたので、そう言って頂けると冥利に尽きます。
    お二人は末永く幸せでいてくれることでしょう! -- けん
  • 私はラストの『ぽつりごちる』が個人的に好きです(
    自分の気持ちに素直になれないアルシェの揺れ動く心情が文体にもにじみ出ていて、読んでいてニマニマしました。ありがとうの気持ちを伝えるだけのつもりが脈絡もなく告白してしまうところとか、「ああ百合」って思いましたね。
    心理描写がメインなのは分かりますがもうちょっと具体性が欲しかったところ。ロアの住処の様子とか、文通するのに森に棲んでいるので生活水準がどれくらいなのか想像しづらかったです。 -- 水のミドリ

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Last-modified: 2017-02-13 (月) 17:51:21
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