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たった一つの行路 №297

/たった一つの行路 №297

 ☆前回のあらすじ
 ジャイアントホール内でそれぞれ死闘を繰り広げるサクノと仲間達。
 その中で、サクノとアンリのウインディとドダイトスの戦いの決着がついたのだった。



「おい、てめえの力はそんなもんなのかよ?はっきり言って拍子抜けだぞ!?」
「はぁはぁ……つ、強すぎる……」

 カナタvsラグナの親子対決。
 だが、この戦いは実力差が明白で、完全にラグナが押していた。

「ラグラージっ!!」
「クチート」

 ラグラージ懇親のパンチを偽りの口が受け止める。

「『マウスバッド』!!」

 ブォンッとポニーテールのような口を振り回して、ラグラージを打っ飛ばした。

「……ぐおっ!!」
「ケッ。こんなもんかよ。娘だからといって、過大評価しすぎたな」
「ぐっ……」

 唇を噛み締めるカナタ。
 正直悔しいのだが、彼女の実力では足元も及ばないのは事実だった。

「『ブラストバーン』!!」
「……っ!!」

 クチートに襲い掛かる究極の炎。
 鉄壁で防御しようとするが、鋼系が炎に弱いのは常識である。
 その一撃でダウンした。

「この炎は……」
「あたしよ、ラグナ」

 ザッとカナタの前に立ったのは、一人の成熟した女性の姿。
 煙草をふかして、ラグナの前に立った。

「カズミ。変わらねぇな」
「ふふっ。そういってもらえると嬉しいわ」

 彼女の隣にはバクフーンの姿がある。

「俺が毒お菓子で死んだあのときから、寂しい思いをさせたな」
「ええ、寂しかったわよ。立ち直るまでどれほどかかったものか……。だから、あなたが出てきて嬉しいわ。存分に叩いてあげるんだから!燃やして成仏させてあげるわ!」
「って、立ち直るって言うか恨んでんのかよ、てめぇ!!」
「当然でしょっ!!あたしを一人にした恨み、ここで果たさせてもらうわよっ!!」
「……母さん……」

 何故か始まる夫婦喧嘩風味バトル。
 それをカナタは呆然と見守ることになったのだった。



 たった一つの行路 №297



「はぁはぁ……(みんな無事かしら?)」

 傷だらけながらも、必死に奥へと走り続けるサクノ。

「(この奥に過去の猛者たちを操る謎がある!もしかしたら、それが父に関係あることかもしれない……!早く行かないと!!)」

 そして、最奥と思われる雪原へと足を踏み入れた。

「(霧で見えない……)」
「ヨウコソ」

 どこからともなく、声が聞こえて来た。

「誰?」
「シカシ、、すぐにサヨナラだ」

 霧がスッと晴れた。
 すると、周りは海だった。
 そして、自分がいるわずかな周りだけ、陸地があった。
 その海を浮かぶようにマントを被って、姿を隠した人物と一人の少年の姿があった。

「……あなたは何者なの?」
「ワレノ名ハ、、キョスウカイ」
「(虚数解……存在しない答えってこと……?)」
「サァ、、やれ」
「ちっ、何で僕がお前の指図を受けなければならないんだ。鬱陶しい。だけど、目の前にいる自分はいかにも正義を貫くみたいなツラをする奴はもっと鬱陶しい」
「ソウダロウ。エバンス」

 エバンスという少年が繰り出したのは、エンブオー、ジャローダ、ダイケンキの三匹。
 すべてイッシュ地方の初心者用のポケモンの最終進化形態だった。

「……っ!!レディ!」

 咄嗟にモンスターボールからライチュウを繰り出すサクノ。
 だが……

 ドガッ!! バキッ!! ズドォンッ!!

「きゃあっ!!」

 ダイケンキのアクアジェットがライチュウを捉え、エンブオーの格闘攻撃で上空に打ち上げ、ジャローダがソーラービームで打ち抜いた。

「レディ!?」
「ツギノぽけもんハ、、いないよな。今ノらいちゅうガ、、最後のポケモンだったもんな」
「くっ!!」
「終わりだよ」

 3匹のポケモンがサクノに襲い掛かる。
 サクノになすすべはなかった。

 ドゴッ!!

「!?」
「!!」
「え?」

 恐れずに目を逸らさずに相手のポケモンを見ていたサクノは、その展開に驚きを隠せなかった。
 エンブオーの攻撃をフーディンが、ダイケンキの攻撃をフシギバナが、ジャローダの攻撃をリザードンが抑えたのだ。

「(このポケモンたちは……)」

 サクノは後ろを振り向いた。
 そこに立っていたのは、彼女の思い描いた人物だった。

「フッ。ようやく現れたな」

 マントの男が不敵な笑みを浮かべたような声でそういった。

「迷った。ここに辿り着くまでどれだけかかったことか。だけど、目的の人物はいないみたいだ……だけど、何でここにサクノがいるんだ?」

 かつて雑草と呼ばれていた緑頭の男。
 サクノは彼を呼んだ。

「……お父さん……」
「なんだかよくわからないけど、娘を傷つけさせるわけには行かないな」
「また鬱陶しい奴が増えたな」

 サクノの父:ヒロトvsエバンスの戦いが始まった。



 爆風が巻き起こる。
 その原因となったのは、一匹の伝説のポケモンによる風の砲弾だった。

「ようやく、翼をもぐことができたか……?」

 『王翼のバドリス』。
 かつて200万ポケドルほどの懸賞金を掛けられた風霧のボスである。
 今隣にいるのは、海の神と呼ばれるルギアだった。

 ボフンッ!!

 その爆風の中から勢いよく少女とポケモンが飛び出した。

「メロエッタ、この一撃で決めて……『ハイパーボイス』っ!』」

 緑色の長髪のボイスフォルムから放つ一撃は、飛んでいるルギアを叩き落した。
 懇親の一撃だったのだが、ルギアの耐久力はダテではない。
 地面をしっかりと踏みしめて、飛び上がったメロエッタへ止めの一撃を撃とうとしていた。

「『エアロブラスト』!」
「『圧縮ハイパーボイス』!!」

 二つの攻撃が衝撃を生む。
 落下重力を利用して、攻撃を放ちながら接近するメロエッタ。
 そして、零距離になって、爆発した。

「きゃあっ!」
「ぐうぅっ!」

 ポケモンだけでなくトレーナー同士も吹っ飛んだ。
 この激突で、互いのポケモンは戦闘不能になった。

「ふっ……小生の戦いもここまでか……だが、飛行ポケモンの力は分かっただろう?この力を誰にもバカにはさせない……」

 そうして、バドリスは消滅した。

「はぁはぁ……うっ……鳥ポケモンの力もあるけれど、ほとんどあなたの実力の賜物じゃないの……かしら……」

 爆発の際にスタジアムの壁に打ち付けられたマキナ。
 バドリスが消滅した際にその壁は消えて、壁にもたれていたマキナは床にバタリと仰向けに倒れる。

「サクノたちを……探しに行かない……と……」

 起き上がろうとしたが、そのままマキナは意識を失ってしまったのだった。



「止めだ!『ウィップストーム』!!」

 つるのムチの嵐がラグラージに叩き込まれた。
 その攻撃の前にラグラージは撃沈した。

「ちっ……せっかく生き返ったと思ったのに……」

 すべてのポケモンが撃沈し、エバンスの体が消え始める。

「あいつに……エナメルに……会いたかったのに……」

 その言葉を残して、エバンスは消滅した。

「手強い相手だった……」

 とは言うものの、倒れたのはフーディンとラプラスの2匹だけだった。
 ヒロトはフシギバナに寄り添い、マントの人物を見た。

「さぁ、お前の正体はいったいなんだ!?」

 ヒロトの言葉と共にエナジーボールを放つフシギバナ。
 普通の人間なら、攻撃をかわすために動いただろう。
 しかし、そいつは攻撃をまともに受けたのだ。

「!!」
「……人間……じゃない!?」

 紫色のボディに背中に背負ったキャノン砲。
 赤い色の瞳の鋭い眼で人型のようなポケモンだった。

「……ポケモン……なの!?」
「ゲノセクト……か」
「ゲノセクト?」

 サクノは父の顔を見て尋ねる。

「過去にプラズマ団という組織がこの地方にあったらしい。そして、ゲノセクトはプラズマ団によって改造されたと言われている」
「ソノトオリ」

 ヒロトとサクノに向けて虚数解ことゲノセクトは言葉を放つ。

「我ハぷらずま団ニヨッテ、、復活され、そして、改造された。復活サセテクレタコトニハ、、感謝するが、改造は痛みを伴うものだった。……ソノ恨ミヲ今カラ晴ラス。人間ヲ根絶ヤシニスルコトデ……!」
「……!人間の絶滅が目的!?」
「ゲノセクト……いや、キョスウカイと言ったか。人間の中でも、ポケモンにそういった痛みを与えるのはごく一部の人間に過ぎない。考え直した方がいい」
「人間ヲ殲滅ナドデキッコナイト思ッテソウイッテイルノカ?甘イナ。コノ我ノ能力ヲ身ニ受ケテモ、、そんなことが言えるのか?」
「能力……まさか、過去に亡くなったトレーナーを復活させたのってあなたの力なの!?」

 キョスウカイが手にカセットのようなものを取り出した。

「『霊界のカセット』。コノあいてむト亡クナッタ者ノ遺伝子ヲいんぷっとスルコトニヨリ、、“最高の状態”で“亡くなった時の記憶まで引き継いだまま”復元させることができる」
「「……っ!!」」
「呼ビ出セルノハ未練ヲ残シテ亡クナッタ者ダケダガ、、それを利用して、トレーナーを操り、殲滅させる。ソシテ、、そのターゲットはまずヒロト、お前だ」
「俺……だと?」
「強サハ申シ分ナイ。後ハ貴様ガ死ネバ、、遺伝子を通して出現させることができる。覚悟シロ!」

 そういって、霊界のカセットを自分に差し込むキョスウカイ。

「貴様ノ弱点ハ分カッテイル。コイツヲ倒スコトガデキルカナ?」

 冷酷な笑みを浮かべて、キョスウカイは一人の人物を召喚する。

「……ここは……!」

 召喚と同時にあたりの景色が変わる。

「場所ガ変ワルノハ、、召喚された人物の記憶が周囲に影響を与えるためだ」

 その景色を見て、ヒロトは誰が召喚されたか悟り、息を呑んだ。

「ここは、お月見山……」

 サクノは辺りを探ってキョロキョロと見回す。
 そうして、サクノはキョスウカイの隣に一人の女の子の姿があるのを見つける。
 年齢は自分よりも何歳か年上で、青髪のツインテールの子だった。

「……この人は?」

 サクノが首を傾げる。

「……ヒカリ……!」

 ヒロトの表情は『やっぱり』という確信と『まさか本当に』という驚きの二つがあった。

「え?……っ!!……もしかして……ヒロト……なの?」

 その女の子はヒロトの顔をよく見て、彼の名前を呼んだ。
 それを見てサクノも父を見る。

「お父さんこの人は……?」
「あ……あぁ……ヒカリは幼馴染で……」

 娘に説明をしようとするヒロトだったが、

「そう……ヒロトに子供が……そうよね。ヒロトを見ていると、大分時が経っているのがわかるもの」

 そう言いながら、ヒカリの目尻には涙を浮かべる。

「ヒカリ!」
「でも……嬉しい……ヒロトに子供がいてよかった……」
「どういう意味だよ……?」
「私に囚われず、他の人を愛して今まで生きてくれたことが嬉しいの。私じゃなかったことは残念だけど、生きてくれていたことが嬉しいの。だって、私の幸せはこの世界でヒロトが生きることなのだから……」
「……ヒカリ……」

 かつて経験した死の淵。
 そこでの会話を思い出したヒロト。

「お願いヒロト。バトルして」
「え?」
「私、ヒロトとバトルがしたい。そして、勝ちたいの!」
「…………」

 そうして、ヒカリが繰り出したのはフシギバナ。
 ヒロトはそのままフシギバナで勝負する。

「もしかして、そのフシギバナは……」
「ああ。ヒカリのフシギバナだ」

 両者共にフシギバナのつるのムチの応酬だ。

「そっか、大事にしてくれているんだね。ありがとう」

 そして、2人の戦いが幕を開けた。



 アゲトビレッジの森の祠。
 そこを、模した場所で、2匹のポケモンが交錯した。
 互いの打撃攻撃は、ほぼ互角だった。

「ブラッキー」
「ワルビアル!」

 ブラッキーが影分身を発動させようとするが、ワルビアルが指をクイクイッと動かす。
 すると、ブラッキーは怒って、影分身をやめてしまった。

「真っ向勝負しかないな。ブラッキー、『シャインボール』!」
「切り裂け、『サンドクロー』!!」

 輝く光球と砂を纏った爪。
 2つの技がぶつかった時、光が弾けた。
 ワルビアルは倒れそうになったが、いまひとつのところで踏ん張って、ブラッキーに一撃をかました。
 懇親の一撃で、ブラッキーは倒れた。
 同じくして、ワルビアルの体力も尽きたのだった。

「はぁはぁ……くぅ……やったか……」
「…………」

 すべてのポケモンが倒れてしまったハルキ。
 その瞬間、体が消え始める。

「これまでか。……仕方がない。あの世であいつと一緒になれることを祈るしかないか」

 そう呟くと、ハルキは光の粒子となって消え去ったのだった。

「ぐはっ……」

 激しく嘔吐するビリー。
 その様子から、非常に顔が青いのがわかる。

「(さっきのハルキってヤツの戦いの中盤に使った『エンゼルハート』のツケがここに来た……ピクシーだけは戦えるけど、もう『エンゼルハート』は使えない……使えば、我を失うか……最悪、死ぬかもしれない……)」

 自身の危機を感じながらも、ビリーは顔を上げて歩き出す。

「(サクノはんたちを……見つけ出して助けないと……!俺が……守ってみせる……!!)」

 足取りは危ういが、一歩確実に前へと踏み出していた。



―――「貴様ガひかりニ勝テバ、、ヒカリはこの世から消えることになるぞ」―――

 ヒカリとバトルするヒロトに、キョスウカイことゲノセクトはそう告げていた。
 そうすれば、ヒカリに未練があったヒロトは、間違いなくためらって、思うようにバトルができないだろうと踏んでいた。
 しかし……

 ドゴォンッ!!!!

 ヒカリのニドクインの『ポイズンランス』がフシギバナを突き抜けたよう見えた。
 しかし、それは残像だった。
 後ろから物凄いスピードで、ニドクインにタックルし、ノックアウトしてしまった。

「ヒロト……強かったわ」

 結局、フシギバナとライチュウを交互に戦いに出しただけでバトルは蹴りがついた。
 ヒロトの圧勝だった。

「……キョスウカイ」
「ナッ!?」

 ヒロトが出した指示に、フシギバナが反応し、つるのムチでキョスウカイを縛り上げた。

「俺がヒカリに対して、バトルで遠慮をするワケがない。ヒカリの挑戦にはいつも全力でやるって決めていたんだ。手加減されることを嫌うのを俺は知っているからな」
「……ヒロト……」

 お月見山の雰囲気が消えると共に、ヒカリの姿も少しずつ見えなくなっていく。

「俺は死ぬまでお前の約束を守っていく。だから、安心して眠ってくれ」

 優しく微笑むヒロト。

「ありがとう」

 それを見て、満足そうにヒカリは微笑んで消えていった。

「こっちこそありがとう」

 10歳の時に二人は、ポケモンリーグで戦ったことがある。
 2人の先ほどの戦いは、その記憶を呼び覚ますような戦いに違いない。
 その記憶を心に刻み、ヒロトはキョスウカイに向き直る。

「食らえ、キョスウカイ!『ソーラービーム』!!」

 つるのムチで拘束されているキョスウカイは避けることができない。
 そのまま草系屈指の一撃をまともに受け、吹っ飛んだ。

「ヒカリを呼び出したことには感謝する。けど、利用したことを俺は許しはしないっ!!」

 そうして、フシギバナに攻撃の指示を出していた。

「……なるほど。つまり、さっきのヒカリって女の人は、お父さんの旅の仲間ね」
「…………えっ?」
「えっ?って違うの?」

 目を点にするサクノ。
 同じくヒロトも目を点にした。

「……ま、まぁ……そんなところだな。もっと詳しく言えば、父さんの初恋の相手だ」
「……え!?そうだったの?」
「……ああ」

 意外そうな表情をするサクノと若干顔を赤らめるヒロト。
 親子の和やかな雰囲気になりかけたが……

「随分甘ク見ラレタモノダナ」

 フシギバナの攻撃を掻い潜りながら、キョスウカイは背中の砲弾を打ち出した。
 すると、また背景が変わった。

「暗い……ここはいったい……」
「まるで光も届かない地底のような場所ね……」

 その場所というのは、オーレ地方パイラタウンに最下層にあるボトムと呼ばれる場所である。
 しかし、ヒロトもサクノもその場所に行ったことがないために、この場所のことがわからなかった。

「あれ?ボクは死んだと思ってたんですけど……?」

 ふと、明るめの声が聞こえて来た。
 現れたのは緑色の三つ編みに星のアクセサリーをした可愛い少女だった。
 年齢はサクノと同じくらいだろうか。

「キョスウカイのやつ……また召喚をしたのか……? ……っ!!」

 ヒロトはその少女を見て、息を呑んでいた。

「……なんだろう、あの子の雰囲気。どこかで感じたことがあるような……?」

 サクノも相手の雰囲気を見て、何かを感じた。

「もしかして、ボク、蘇りしたんですか?凄いですね!…………それなら、オトさんを探しに行きたいところです」
「え、息子を?」 「え、お兄ちゃんを?」
「ふぁい?」

 少女はようやく相対する二人を見た。

「“息子”に“お兄ちゃん”……? もしかして、オトさんのお父さんと妹さんでした?初めまして!ボク、エナメルです。本当なら、オトさんと平和な日々を過ごしていたと思いますが、この通り死んじゃってしまったので、望みが叶いませんでした」

 実直に笑顔で話すエナメル。
 その様子に唖然とするしかないオトの父と妹。

「ところで、オトさんはどこにいるか知っていますか?」
「お兄ちゃんなら……行方不明よ」
「そうだな。連絡が取れなくなって10年。君には悪いが、父である俺にも息子の消息はつかめていない」
「そうですか……やっぱり、わかりませんか……」

 しょんぼりするエナメル。

「我ナラ、、知っている」
「……え?誰?……ポケモン?」

 そこでキョスウカイが囁いた。

「ソコニイルおとノ父、、すなわちヒロトをバトルで打ち負かすことができたら、我がオトの場所を教えてやろう」
「……!本当ですね!?」

 そういって、エナメルが一匹のポケモンを繰り出す。
 そのポケモンを繰り出しただけで、周囲の温度が一気に下がった。

「伝説の氷ポケモン、フリーザー!?」

 次の瞬間、フシギバナは一瞬にして凍らされた。

「っ!? 強い!?お父さん!!」
「エナメルと言ったよな!あいつの言っていることは嘘に決まっているだろ。騙されるな!!」
「嘘……ですか? いいえ、ボクはこのポケモンを信じてみます。だから、ボクはオトさんのお父さんを超えて見せます!」

 エナメルの目に迷いはなかった。
 どんな言葉にでも素直に信じることができることが彼女の長所なのだが、騙されやすいと言う短所でもある。

「くっ!ザーフィ!」

 倒れたフシギバナの代わりに、パートナーであるリザードンを繰り出すヒロト。

「『熱風』!」
「『吹雪』です!」

 プラスとマイナスの力がぶつかり合うが、その力は互角……いや、徐々にマイナスが押し始めた。

「……くっ……ぐわっ!!」
「きゃあっ!!」

 吹き飛ばされるヒロトたち。

「フリーザー、『ゆきなだれ』です」

 ゴゴゴッと押し寄せる雪崩れ。

「サクノ、これをっ!」
「えっ?」

 ヒロトは娘に何かを渡すと、後ろに突き飛ばした。
 そこから、ゆきなだれに対抗するためにヒロトは、リザードンに手を当てた。

「ザーフィ、やるぞ!『エンシェントグロウ』!『フレアウインド』!!」

 リザードンの限界の力を超える原始の力を発動する。
 それによって、一気にゆきなだれを蒸発させ、フリーザーに大ダメージを与える。

「『エンシェント:フレアドライブ』!!」

 一気に最高最強最大の技でフリーザーにぶつかった。
 この一撃ならば、どんな相手でも倒せるはずだった。

「……なに!?」

 フリーザーに攻撃が止められた。
 そして、一つの違和感を感じる。

「力がザーフィに伝わらない……!?」
「『アビリティホールド』です」
「!?」

 エナメルを見ると、彼女の体から異様なオーラが出ているのが分かった。

「ボクのこの力は“トキワの力”と呼ばれる力の応用で、一定範囲のすべての特殊な力をキャンセルします」
「トキワの力!?(バンダナと同じ力か!?)」

 ヒロトは因縁のライバルの顔を思い浮かべ、

「(ミホシやカヅキと同じ力を!?)」

 サクノは数ヶ月前に戦った姉妹の顔を思い浮かべた。

「凍り付いてください」
「させるかっ!『ファイヤーレイズ』から『フレアドライブ』!!」

 みるみるうちに凍り付いていくリザードン。
 しかし、炎の力を蓄えた炎突進で一気にフリーザーを撃破した。
 だが、同時にリザードンも体力を失って倒れた。
 エバンス戦でジャローダやズルズキンとのダメージが残っていたのだ。

「(手強い……くっ……この子は、最盛期の俺に匹敵するかもしれない!!)」

 続いてエナメルはカブトプスを繰り出す。
 一方のヒロトはフライゴンで対抗する。
 鋭い爪と輝く爪が交錯する。

「サクノっ!キョスウカイを倒すんだ!」
「これって……元気の塊!?」

 フリーザーと戦っているときにヒロトから渡されたものを見て確認する。

「残念ながら、俺もこれしかアイテムを持っていない。一番自信のあるポケモンに使って、キョスウカイを打ち倒すんだ!」

 バキッ!!

 フライゴンが『ガーネットクロー』でカブトプスをぶっ飛ばすが、切り替えして『アクアジェット』で反撃をしてくる。
 吹っ飛ばされて転がるが、足で踏ん張ったフライゴン。
 『輝きの風』でカブトプスを吹っ飛ばして撃破した。

「オトさんのお父さんは強いですね。オトさんに聞いたとおりです」

 そういって、エナメルは飛行ポケモンのエアームドを繰り出した。

「サクノ!」
「わかった……キョスウカイを放って置くわけには行かない……!!」

 元気の塊を使用して、キョスウカイの目の前に立つサクノ。

「我ヲ、、倒すというのか」
「この世界には、人間とポケモンが手を取り合って生活している。あなたに私とポケモンの絆を見せてあげる!」



 第四幕 Episode D&J
 Ι<イオタ>③ P51 立春 終わり


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Last-modified: 2016-02-09 (火) 21:32:43
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