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たった一つの行路 №274

/たった一つの行路 №274

 エバンスとエナメルは2人でのんびりと砂浜で過ごしていました。
 その間、エバンスの頭には『どうやったら、エナメルの強さに近付けるのか』と言う考えしかありませんでした。



「ミホシ、またあんたなのね!?」
「……カズミ。……何故邪魔するの?」

 エバンスとエナメルが宿舎へ戻ろうと歩いていると、4つの人影がありました。
 1つは短パンでムチムチな服装のカズミでした。
 1つはエプロンドレスといった特徴的な服装をしたミホシでした。

「どうかしたのですか?」

 エナメルが震えているキトキとこの状況を冷静に傍観しているオトに問いかけました。

「ケンカだよ。ところで、君は誰だい?」
「エナメルだよ。カズミ姉さんが言っていた、例の別世界から飛ばされてきた……」

 キトキの説明に納得して、オトはエナメルと握手をしました。

「(友好的な人ですね)」

 少なからずともエナメルは、オトに親近感を覚えていました。

「何が原因のケンカですか?」
「何が原因かって……」

 キトキはオトを見ました。
 それを見て、オトは首を傾げました。

「いい加減、オトに付きまとうのはやめなさい!」
「……何故?……あなたの知ったことじゃない」
「知ったことよ!私はオトの姉代わりよ!」
「……そんなの必要ない」
「口で言ってもわからないなら、ちからづくよ!」
「……望むところ」

 カズミのゴウカザルとミホシのエレキブルが大激突しました。
 キトキは慌てふためいていますが、オトはまったく動揺していませんでした。

「くだらね。僕は先に帰ってる」
「あ、エバンス!?」

 エナメルは慌てて二人の間に入って、争いを止めたのでした。
 しかし、カイナシティでの一件だけでなく今後もこの二人の争いは続くことになるのでした。



 ☆因縁のライバル

 エバンスとエナメルはカイナシティの港からサイユウシティ行きの船に乗りました。
 その船の上で出会ったのは、キンセツシティの強盗事件でエバンスにバトルを仕掛けてきたレンジャー志望のケビンでした。

「もうあんたには負けない!!」
「二度と僕の前に現れるなといったはずだ。今度こそ、叩きのめしてやる」

 船の上でバトルが始まり、その戦いは白熱しました。
 しかし、白熱すると共に、海と空の様子が怪しくなっていきました。

「……ぐっ!!」

 追い詰められて最後のポケモンを出したのは、エバンスでした。
 ケビンの4匹目のポケモンであるヨノワールに対して、エンブオーをぶつけますが、力が空回りし、当たりませんでした。
 そして、船に向かって『ヒートスタンプ』をした衝撃と津波による衝撃で、船は転覆してしまいました。
 レンジャーに憧れる青年ケビンは、この状況を難なくと乗り越えた上に乗客を助け出しました。
 しかし、その中にエバンスとエナメルの姿はありませんでした。



 ☆繋がる二人

 二人はマボロシ島に打ち上げられました。

「何か言いたそうだな。言いたいことがあるならはっきり言えよ!」
「エバンスは他人に対する心遣いが足りないんですよ。だから、ケビンさんにもハレさんにも勝てないんです」
「心遣いが人を強くするものか」
「…………」

 黙ったエナメルを見て、エバンスは根負けしたようにため息をついた。

「何だかんだでお前は僕の世話を焼いてくれるんだな」
「……うん。だって、ボク……」

 その先の言葉はもごもごとしてエバンスは聞き取れませんでした。

「はっきり言え!」
「……ええと……」
「ったく。もっと素直になれ。そんな素直さがあれば、僕はお前が好きだ」
「ほんとに?」
「二度も言わない」

 エバンスはプイッとそっぽを向きました。
 それにバシッとエナメルは飛びついて押し倒しました。

「ボクもエバンスさんが好きです」

 エナメルは若干顔を赤くして、大きな声で言いました。
 そして、二人はマボロシ島の中でゆっくりとした時を過ごしました。



 マボロシ島を出た二人はキナギタウンに避難しました。
 そこでトクサネシティが何者かによって占拠されたという噂を聞きました。
 エナメルはほっとけないと思い、納得したエバンスと共にトクサネシティへと向かいました。



 ☆腐れ縁のホウエン四天王の2人

 2人がトクサネシティに向かっている頃、トクサネシティではカズミとキトキがすでにこの場所にいました。
 しかし、騒動は何も起きていなく、人々は平穏に生活していました。

「…………。ありえないわ」

 カズミとキトキは、SHOP-GEARのリーダーのユウナの言葉を頼りにここまで来ました。
 その情報が間違っているとはカズミは思いませんでした。

「ユウナさんの情報が間違っているってことはないの?」

 当然キトキはそう思いました。

「トクサネの宇宙センターにリクさんがいなかったのよ」
「……それなら、職員の言うとおり、私用でシンオウ地方に行っているだけじゃないの?」
「それはないわ。定期的にユウナさんに送られてきているメールがちょうど今日、途絶えたと言うの。間違いない!」
「それだけじゃ、根拠にならないと思うんだけど」

 二人が喋っているそのとき、突然、謎の男女3人が襲い掛かってきました。
 突然の奇襲に、キトキを狙い撃ちされたカズミは、キトキを守りながら戦い、ダメージを負いました。

「きゅ、キュウコン!!」

 何とか体勢を立て直したキトキが、炎上網を張り巡らして、カズミを連れて離脱しました。

「はぁはぁ……一体、水郡の奴ら……何が目的でここに……?」

 意識を取り戻したカズミは、キトキに連れられて町外れにある岩場の洞窟に隠れました。
 二人は少しの間様子を見ることにしたのでした。



 その二日後、エナメルとエバンスは到着しました。
 しかし、トクサネシティはあらゆる建物が破壊されていました。

「…………」
「一体、誰がこんなことをしたのでしょう?」
“助けてー!化け物っ!!”

 複数人の人々が逃げ回っていました。
 助けを求めた人々は、業火に飲み込まれていきました。

「……酷い……」
「ダイケンキ!」

 巨大な角で火炎攻撃の主を突き刺そうとしましたが、角を受け止めました。
 鋭い牙を持ったギャラドスが噛み付いて止めたのでした。

「OYAOYA……ポーカー少年、また会いましたNE」
「お前は……!」

 ドレットヘアにラフな服装の男は、ギャラドスとカイリューでエバンスを圧倒していきました。

「ぐっ……何者なんだ……こいつ……」

 ジャローダ、ラグラージ、ズキルキン……次々と倒されていきました。
 残るポケモンはポリゴンZとエンブオーだけになってしまいました。

「崩壊するんDA!『ドラゴンアクセル』!!」
「エアームド、カブトプス、『鉄壁』!」

 強大なドラゴンソウルを纏ったギャラドスに対して、エナメルがエバンスの前に立って防御に出ました。
 しかし、その防御さえも跳ね飛ばされてしまいました。

「エナメル!?」

 ポリゴンZとエンブオーも吹っ飛ばされ、エバンスにぶつかっていきました。
 ところが、エバンスの前に立っていたのは、一匹のエアームドでした。

「エナメルのエアームドじゃない……?」
「『スチールカーテン』。危なかったわね」

 エアームドの隣にいるトレーナーは、いい感じにどこにでもいるような普通の女性でした。

「OIOI……ナルミ、なんで止めるんDA?」
「ザンクス……あんたはやりすぎなのよ……」

 ナルミはため息をつきながらザンクスを宥めたのでした。



 『殲滅のザンクス』と『煌鋼<こうこう>のナルミ』はホウエン地方の四天王でした。
 トクサネシティの噂を耳に入れたナルミは、夫であるリクの様子を見るためにこの地へ赴いたのでした。
 ちなみに、ザンクスはナルミに内緒でこっそり付いて来たのでした。
 それで、水郡をいびり出そうとザンクスは町を壊して、水郡を片っ端から撃破して行ったのでした。
 こんなことをするのは、ザンクスしかいないとナルミは思って、探したこのときが、エバンスとの出会いでした。

「ナルミさん、ボクたちに稽古をつけてください」

 エナメルが頼み込んで、ナルミに特訓してもらうことになりました。
 その間、カズミとキトキが合流し、水郡の幹部の一人から情報を聞きだしました。

「ルネシティの近くね……行ってみる価値はあるわ」

 特訓を終えたエバンスとエナメルは、ナルミにお礼を言いましたが、リクと付き合いたての恋人のような初々しい会話をしており、聞いてはいませんでした。
 ザンクスはカイリューに乗ってキンセツシティに遊びに行ってしまったのでした。



 ☆vs水郡

 ルネシティにはオトとユミの姿がありました。
 それを見て、キトキは不機嫌そうに二人の間に割り込みました。
 割られた二人に、突如現れたハレがユミを、ミホシがオトをそれぞれ掴んでどこかに引っ張っていこうとしていました。
 慌てたカズミがそれをゴウカザルのフレアドライブで一掃して、状況を集束させました。



 ルネジムでアダンから伝説の話を聞いた一行は、水郡の狙いがカイオーガであることを確認しました。
 そのカイオーガは、何十年か前にマスターボールで捕獲され、海の底へと沈められたと言います。
 カズミ、オト、ミホシ、エナメル、そしてエバンスの5人は、ルネシティに到着するまでに乗ってきた潜水艇(リクが作った)で深海へと潜っていきました。

「…………!」

 そこで立ちふさがったのは、水郡の下っ端と幹部達でした。
 5人は並み居る下っ端を退けて、先へと進んでいきました。

「ここまで来るとは、どうやら俺がここにいたのは無意味ではなかったようだな」
「そうですね、シード先生!」

 ところが老けたカッコイイおじさんと20代半ばのサングラスをかけた真面目だけどふしだらな格好をした女性が立ちふさがりました。
 二人の名前はシードとマロンと言いました。

「邪魔するな!」
「突破する」

 エバンスのエンブオーの『ヒートスタンプ』とオトのライボルトの『10万ボルト』が2人を捉えました。
 しかし、攻撃はまったく効いていなかった上に、反撃を受けて二人は吹っ飛ばされました。
 パルシェンとハピナスでした。

「あの二人のポケモン、相当の防御能力があります」
「それなら、ここは私に任せなさい!」

 そういって、カズミがこの場を引き受けました。

「ただし、あんたは私と一緒に戦う!」
「……何故」

 カズミはミホシを引き止めて、シードとマロンに挑みました。

「足止めとは無意味だな。結局のところ、この先に選りすぐりの幹部とボスがいるんだからな」
「先生と私があんた達を倒して、残りのメンバーも倒すんですからね」



 カズミとミホシのコンビネーションは最悪でした。
 お互いを引っ張り合い、自滅し、結局のところ、一人も倒せずに、ミホシは全滅してしまいました。

「くっ……」
「……カズミのせい」

 壁際に追い詰められた2人にシードのカブトプスが迫りました。

「くたばりな。『鎌風』!」

 見えない風の刃が2人を襲いました。

「『裂水』!!」

 ところがそれ以上の風の斬撃がカブトプスの技を飲み込んで、カブトプスをぶっ飛ばしました。
 カズミとミホシのピンチに現れたのは……

「シードのオッサン、久しぶりだな!ロケット団以来か?」
「……お前は……ラグナ!?」
「ダーリン!」

 ミホシに代わって、ラグナがカズミのパートナーになり、猛攻撃を仕掛けました。
 その結果、何とか勝利したのでした。

「ラグナ……1つだけ言わせろ」
「何だ?」
「その女とはどんな関係だ?もし、嫁だというのなら……年の差がありすぎじゃないか……?」

 そうして、ラグナはシードに言いました。

「てめぇに答える義理はねぇ。それに年の差なんてカンケーねぇだろうが。大事なのは……」

 ドンッとラグナは胸を叩きました。

「ココだろうが!」
「そうか。無意味な質問だったな……胸の大きさ……お前らしい答えだ……」
「……ダーリン……」
「ち、ちげぇ!!」

 顔が赤くなっているカズミに対して、ラグナは激しく狼狽したのでした。



「ここは通さんでゲス!」
「ここは俺がやるから2人は先に行ってくれ」

 幹部のタスクと戦うことにしたのは、オトでした。
 エバンスとエナメルは、急いで奥へと進んで行きました。
 最深部と思われる場所にいたのは、40代の威厳のある男と、まだ5歳くらいの円らな瞳の可愛いポニーテールの幼女でした。

「SHOP-GEARが来たか。しかしもう遅い!古代のアイテム『アルファの奇跡』。これを使えば、カイオーガは誰にも止められない。そして、ホウエン地方は、いや、世界中が海に沈み行く!」
「なんでそんなことをするんだ?」
「決まっている。私は山よりも海のほうが好きだからだ!」

 水郡のボスのレグレインは、キッパリと言いました。

「夏休みに山に行くと言った奴がいる。しかし、夏と言ったら海だろ。他に選択肢はない。だから、私のように海に行きたいのに山に行くと言ってハブられる様な思いをするヤツを作らないためにも、世界中を海で埋め尽くす!」

 カイオーガが出現しました。
 そして、カイオーガは深海から、水上へと向かっていきました。

「止める!」
「させません」

 エバンスが動いた時、吹っ飛ばされました。
 5歳の幼女がエバンスに超能力で攻撃を仕掛けてきたのでした。

「シロヒメ……この場は任せた」

 コクンと頷くシロヒメを置いて、レグレインは隠し階段へと消えて行きました。

「エバンス、ここはボクに任せて、レグレインを追ってください!」
「……エナメル……」

 頷いてエバンスは、レグレインを追いました。



 ☆ゲンシカイオーガの真価

 古代アイテム『アルファの奇跡』を使用したカイオーガは恐るべき化け物でした。

「攻撃が利いて無いやんっ!?」
「……うわあぁぁぁぁっ!!」
「っ!!なんだよ、このカイオーガ……有り得ないだろっ!?」

 海上の町のルネシティで待機していたユミ、キトキ、ハレがレグレインの復活させたカイオーガに立ち向かいましたが、足止めにもなりませんでした。
 カイオーガの圧倒的な水流に巻き込まれて、ルネシティは水没してしまいました。
 そこから、カイオーガは進路を西へと向けて、ミナモシティへと動き出しました。

「攻撃を意に介していない……。カイオーガ<あいつ>は、俺たちの攻撃を雨粒のようにしか思っていないないのか……?」

 何とか沈まずに岸に打ち上げられたハレは、周りにいるキトキとユミと一緒にそのまま気絶してしまいました。



 ☆vs水帝レグレイン

 そのころ、カズミとラグナは、潜水技のダイビングで地上へと脱出を図り、カイオーガの様子をうかがっていました。
 オトは死に物狂いの幹部タスクをギリギリで撃破して、エナメルの元に辿りつきました。
 エナメルの相手であるシロヒメは、姿は5歳でしたが、知識といいバトルスタイルといい、とても5歳とは思えない力を持っていました。
 しかし、彼女の本来の実力に四天王ナルミの享受を得た力に加え、彼女の特有の力『トキワの力』、さらにオリジナルの力『アビリティーホールド』でシロヒメの特殊能力『エンゼルハート』をも打ち消して、戦いを優位に進めました。
 戦いには勝ちましたが、地下への階段を防がれてしまい、エバンスの助っ人をすることはできなくなってしまいました。



「水帝レグレイン……お前の野望もここで終わりだ!!ここまで僕を導いてくれた友達のため、お前を倒すッ!!」

 エバンスは変わりました。
 自分の為にしか動かなかった彼が、ここまで変わったのは、エナメルの存在の他ありませんでした。

「この都市は、隠れた遺跡。私もこの目で見たのは初めてだ。さて、お前はここで眠っとけ」

 レグレインは水ポケモンの使い手の上に、水を操る超能力者でもありました。
 ゆえに、水ポケモンの力を強化し、エバンスを追い詰めていきます。
 エンブオー、ポリゴンZ……次々とエバンスのポケモンたちは倒れていきました。
 一度、致命傷になるような攻撃をエバンスは受けました。
 しかし、エナメルがくれたお守りがエバンスを助けてくれました。
 その一瞬の隙を狙ったエバンスは、ジャローダで連続攻撃を畳み掛けて、勝利を手繰り寄せようとしました。

「ニョロトノ」

 最後にレグレインが繰り出したのは、自身の最強のポケモンであるニョロトノでした。

「『滅びの言葉』」

 水で文字を描き、投げつけ、それに当たったジャローダは、それだけで力を失って倒れてしまいました。

「くっ、ラグラージ!」
「無駄だ。『滅びの言葉』の前では、すべてのポケモンが無力!!」
「その技をやぶれるのは、お前だけだ」

 水を纏った言葉はラグラージの前で、止まりました。
 そして、そのまま弾き返してニョロトノに命中しました。

「バカな!?『ミラーコート』ごときで弾き返せるわけが…………ぐおっ…………」

 レグレインも『滅びの言葉』の影響を受けて気絶しました。

「こいつの手から『アルファの奇跡』を放せば、カイオーガの暴走は止まるはずだ」



 ☆古の力

 しかし、カイオーガの暴走は止まりませんでした。
 それどころか、ホウエン地方を次々と海で侵食して行きました。
 ミナモシティに始まり、カイナシティ、ヒマワキタウン、キンセツシティと次々と水没していきました。
 水の勢いはとどまることを知らず、町を次々と破壊し、海の底へと沈めんとする勢いでした。

「ダメ……攻撃が通用しない……」
「このままじゃ、僕の生まれたトウカシティまで……」
「絶対的な能力上昇…………こんなもの、私の力でもどうにもなりませんYO」
「ホウエン地方を救う手立てはもうないのか……!?」

 ホウエン地方の4人の四天王もすでにカイオーガに立ち向かいましたが、なにもできませんでした。
 ただ、ホウエン地方を侵略するカイオーガを指を咥えて見ていることしかできませんでした。
 そのことを、エバンスはカズミの連絡で知りました。

「グラードン、レックウザを呼び寄せたころで、意味がない。四天王たちと同じく倒されるのは目に見えているし……」
「古の力……『アルファの奇跡』。これが、力の根源だろ?それなら、この力を使って、僕はあいつを止める」
「まさか、レベルアルファ化して、止めるって言うの!?バカなことは……」

 Cギアの通話を切って、エバンスはオーガの奇跡に触れました。

「(ユウナさんが言っていた。『アルファの奇跡』は能力を強制的に最大限にまで引き出すアイテムだって。でも、それには凄まじい副作用が……)」

 カズミの言葉はエバンスに届きませんでした。

「エナメルと同じように、ポケモンに触れて力を与えるようにすれば、できるはず。……いや、“はず”じゃだめだ。やるってことだ!」

 力を受けたラグラージは、エバンスを乗せて、一気に地上へと飛び出しました。
 凄まじい波乗りで、一気にカイオーガの元へと向かいました。



 フエンタウンのあった場所で、カイオーガとエバンスは激突しました。
 最後のポケモンであるダイケンキとカイオーガはどちらもアルファの奇跡を受けて能力がインフレーションしている状態でした。
 ゆえに二匹の力は互角でした。
 しかし、状況が有利に働いていたのは、エバンスがダイケンキに乗って力を制御していたことにありました。
 その状況を良いと思わなかったのはカズミでした。

「ユウナさんから『アルファの奇跡』のような技を使える人の副作用を聞いたことがある。生命力と精神力を削っていくって……。エバンス、ダメよ……これ以上その力は……」

 ルネシティにいるカズミの警告は、届くはずもありませんでした。

「こいつを倒す……例え……僕がどうなっても……絶対に……守ってやるっ!!」

 エバンスの脳裏に浮かんだのは、緑髪の三つ編みの女の子でした。
 その女の子は、自分にはにかんで視線を向けてくれていました。

「……エナメル……」

 そして、ダイケンキの一撃は、カイオーガを貫いたのでした。



 ☆エピローグ

 1日後のことでした。

「ったく、無茶しやがって」
「……ダーリン……」

 水没を免れたカナズミシティの外れで、ラグナはカズミを背負っていました。

「無茶して欲しくなかったら、ずっと私を見ていてよ!傍にいてよ……」
「…………」
「結婚……して……」
「てめぇの言葉は却下だ」
「…………」
「俺の嫁になれ、カズミ」

 一方的に、ラグナはカズミにそう告げたのでした。
 その言葉を聞いて、カズミはぎゅっと腕の力を強めたのでした。

「く、苦しいって!!」

 ラグナはあえなく窒息死するところだったのでした。



「まさか、ホウエン地方がこんなことになるなんて……」

 ケビンはサイユウシティでホウエン地方の沈没のニュースを眺めていました。

「ポケモンリーグに出ている場合なのか……!?いや、違う。災害に苛まれている人を助けに行かなくては!!」

 ポケモンレンジャーを目指すケビンは、ポケモンリーグを辞退して、オオスバメに乗って飛んで行ったのでした。



「……ホウエン地方が沈んだ。これが今後世界にどのような影響を与えていくのか……見届けなくては」

 水上にポツンと立っていたのは、水郡の幹部の一人のシロヒメでした。
 その子は、力を抜くと、水の中に沈んでいったのでした。



 1週間後のホウエンリーグでは、オトとユミが出場しました。
 その大会で、優勝したのはクレナイでした。
 その場にエバンスの姿はありませんでした。



「……エバンス……」

 部屋の一室で三つ編みの女の子が首を垂らしていました。
 そこにいたのは、彼女が口にした名前の少年でした。
 彼は水郡の戦いの果てに全ての力を使い果たして、死んだように眠ってしまったのでした。
 そして、水郡との戦いから1ヶ月しても、ずっと目を覚ましませんでした。
 そんなエバンスをエナメルは、看病し続けました。
 健気に看病し続ける彼女でしたが、日に日にやつれていきました。

「……エナ…メル……」
「え、エバンス!?」

 ある時、エバンスは目を覚ましました。
 しかし、それはほんの一握りの奇跡でした。

「僕はもうダメだ。もう、お前を抱きしめてあげることができない」
「そんな……そんなことはありません」
「先の無い僕よりももっと頼りになる人を探せ。お前はまだ先があるんだから」
「…………」
「僕は……危険なカードを取ってしまったみたいだ。自分が壊れるほどの愛……でも、なんでか、後悔はしていない……お前も、後悔しないためにも……前を……見ろ…………」

 その言葉を残して、再びエバンスは眠りについてしまいました。
 エバンスの表情を見て、エナメルは強く生きていくことを誓ったのでした。



 ホウエン地方は水没して、壊滅しました。
 そして、一人の少年が崩壊を止めようとして、犠牲になりました。
 それが今後どのようになっていくのでしょうか。
 物語は紡がれていくのです。



 たった一つの行路 №274
 第四幕 Episode D&J
 レジェンドシーα<アルファ>③ ―――ホウエン地方沈没――― 終わり



 To be continued №250.


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Last-modified: 2016-01-10 (日) 12:52:46
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