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たった一つの行路 №244

/たった一つの行路 №244

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 ―――ニケルダーク島。司令塔への橋。

「あ……あれ……?」

 周りは切り立った崖。
 ニケルダーク島の頂上であり、自然の岩や砂利で構成されているこの場所には、球体の司令塔に向かって広く丈夫な橋がかかっていた。
 そこへワープしてきたのは、エロく可愛い格好をしているオトハだった。

「(ザンクスさんを倒したナルミさんを追ってきたのですが……見失ってしまいましたね)」

 どこかに手がかりはないかと、司令塔へ向かって歩き出す。
 大きな扉を開けて司令塔の中へ入る。

「……水浸しですね」

 恐らく水ポケモンで戦ったのだろうとオトハは予測する。

「一体、ナルミさんとクロノさんはどこに……」
「狙いは……クロノ様ですか……」
「……!」

 バッと後ろを振り向くと、ボロボロの青い服を着た女性が立っていた。

「あなたは……?」
「私はソフィアと申します。狙いはクロノ様ですね?」

 そう言って、エンペルトとシャワーズを繰り出す。
 どちらも瀕死に近い状態だが、ソフィアのある想いに答えて、必死に立ち上がっていた。

「狙いって……確かにクロノさんに会いたいと思っていますけど……」
「クロノ様は渡しません……! クロノ様は私にとって一番の生きがいなんです。私はクロノ様を愛しています!でも……」

 いつも優しい目をしているソフィアが、キッと強気な目でオトハを睨んできた。
 慈愛のソフィアと呼ばれた彼女がこんなに強い目で相手を睨むのは初めてのことだろう。

「クロノ様はあなたがいるかぎり、私を見てくれない。だから……あなたを…………!!」
「……っ!!」

 シャワーズのバブル光線とエンペルトのハイドロクランチ。
 二種類の水攻撃をオトハに向かって放ってきた。

 ドゴォッ!!!! ボゴォンッ!!!!

「……回避したの……!?」

 まるで舞い散る桜のような刹那の動きでオトハは攻撃をかわした。
 月舞踊の『桜舞』だ。

「……やめてください……」
「ダメです。あなたがいなくならないと……私は……私は……!!」

 シャワーズが目を光らせると、オトハの周りに霧を発生させた。

「……これは……?」
「『コーラルミスト』」
「う……」

 力が抜けて、オトハはガクリと膝をつく。

「(苦しい……この霧は……毒……なのでしょうか……?)」
「熱の霧と毒の霧を合わせたこの技で、確実にあなたの息の根を止めます」
「……うぅ……」

 さらに手を付き、オトハは追い詰められる。

「私は……クロノさんを止めたいだけなのです……だから、ここを通してください……」
「止めさせません。クロノ様の目的は私の目的でもあるのですから!!エンペルト!」

 呼ばれて、エンペルトは力を蓄え始める。

「止めです!『ハイドロカノン』!!」

 水の究極の技がコーラルミストの影響で動けないオトハに向かっていった。

「(……ヒロト……さん……)」

 ズドォ―――ンッ!!

「……えっ?」

 オトハの目の前で、エンペルトの攻撃がハイドロカノンと同じ形の炎と激突して相殺された。

「『トリックルームβ』」

 そして、オトハを包み込んでいた霧が一瞬のうちに消えた。
 拘束するものがなくなり、オトハは顔を上げる。

「……誰なんですか!?」

 ソフィアも突然現れたキュウコンとムウマージのトレーナーを見る。
 トリックルームβと言う技で霧を消したのと同じ時にその少年はオトハの前に立っていた。

「大丈夫?」
「え……はい」

 赤いマフラーの少年はオトハの手を掴んで立ち上がらせる。
 身長は170にも満たない。
 顔立ちは普通にイケメンと言っても文句は言われないような少年だった。

「(この人……)」

 オトハはマジマジと少年の顔を見る。

「(誰かに似ています。でも誰でしょう……?)」
「あなたは誰ですか?オトハを始末しようとしているのに、邪魔しないでよ!」
「この人を傷つけさせないよ。絶対に!」
「エンペルト、『ハイドロクランチ』! シャワーズ、『バブル光線』!」
「キュウコン、ムウマージ」

 少年が指示を出すと、キュウコンは極大の熱量をほこる炎攻撃を繰り出して、エンペルトとシャワーズの攻撃を圧倒した。

「……え!?きゃあっ!」

 さらに、追い討ちをかけるようにムウマージが空から『サイコウェーブ』を繰り出して、ソフィアと彼女のポケモンたちをダウンさせたのだった。
 まさに、それは一瞬の出来事だった。

「……片付いたね」

 そうして、少年は右手を確認する。

「(まだ大丈夫……だな) さぁ、急ごうか」
「待って下さい」

 オトハは少年の手を掴んで引き止める

「あなたは、一体何者ですか?」

 真っ直ぐな目でオトハは少年に質問したのだった。



 たった一つの行路 №244



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「これは……」
「完全に固まっていますね」

 フェナスシティの北西、アイオポートの北にあるのは、ポケモン総合研究所。
 しかし、その建物はCLAW<クラウ>の幹部であったベルが破壊して、瓦礫の山にしてしまっていた。

「ミライ……本当に二人は無事だと思うか?」
「わかりません。でも、可能性はゼロではないでしょう」

 痩せた美人の女性、ミライは凍った瓦礫の隙間を一つひとつ見て探していく。

「だいたい、あの二人で行かせたことが問題だったんじゃないか?」
「なんでですか?」
「お姫様気取りのアイとマイペースおバカのミナミ……組み合わせ自体相性がよくないじゃないか!」
「計算上はそうでも、実際はやって見ないとわかりませんよ」
「そうだけど…………うっ」
「ジュンキさん!?」
「大丈夫だ!」

 顔を引きつらせて影の薄い男のジュンキは、近づいてきたミライを引き止める。

「なんでもない」
「ごめんなさい……私のせいで……私が弱かったから……」
「なっ、何を言っているんだ!?」

 しゅんと落ち込むミライにジュンキはやや焦る。

「だって、もし私が強かったら、CLAW<クラウ>に捕まらなかったですし、ジュンキくんもケガをしなくて済みましたよ」
「別に弱いことは悪いことじゃないだろ。それにお前はバトルよりもコーディネーター向きなんだから、強くなくなっていいだろ!?」
「でも……」
「落ち込むなっ!」

 焦るようにジュンキは励ます。

「あ゛ー、俺が強くなるから、お前はそのままでいろよ!」
「……ジュンキくん……」

 ゆっくりと顔を上げて、ジュンキを見る。

「あ、ありがとうございます」
「いや、お礼言われるようなことは言ってないって」

 真面目にお礼を言うミライに対して、ジュンキは若干照れてそっぽを向いたのだった。

「ん……?ミライ、あれっ!」
「え……?」

 ふとそのとき発見したのは、探している二人の姿だった。

「アイ!! ミナミ!!」

 ポケモン総合研究所の大きな柱の一つに、2つの姿があり、ジュンキは走って駆け寄る。

「ジュンキくん!待って下さい!」

 ジュンキを追ってミライも近づいていく。

 ゴッ!!

「なぁっ!?」

 走ったジュンキは何かにつまづいて派手にこけた。

「つぅー!!なんでこんなところに人が……」
「え?人……?」

 ジュンキがアイとミナミの元へ近づくのに対して、ミライはジュンキが躓いたものを調べていた。

「……アイ……ミナミ……畜生……」

 近づいてわかったのは、2人はハルキやカレンと同じく固化現象の一部になってしまったということだった。

「とにかく……装置を壊さないと……!」

 いまだに空へと放出し続ける蒼い光の柱を見て、急ごうとする。

「ジュンキさん!」
「……どうした!?」
「この人を見てください!」
「この人って、さっき俺がつまづいた……も……の……!?」

 その人物をジュンキはよく知っていた。
 いや、ジュンキだけではなく、ミライもよく知った顔だった。

「ここにいたのか……!?」

 上半身にさらしを巻き、黒いジャケットを着て、黒くツンツンとした髪。

「ラグナくん……!!」

 その男の名前をミライは呟く。

「こいつもこんなところで凍り付けになっていたなんてな」
「とにかく、急いで柱を壊して助けましょう!」
「そうだ……な……?」

 そのとき、蒼い光の柱が物凄いスピードで広がり始めた。

「一体なんだ!?」

 バトル山の方とオーレコロシアムの2方向へと向かっていった。

「何が起ころうとしているんでしょうか!?」



 95

 ―――ニケルダーク島、ヘリポート

「オーゥ、ぶっ倒れたか?」

 攻撃を終えたレントラーは、コズマの元へと戻ってきた。
 主人に忠実に前を見て次の指示を待っていた。

「……もしこれで倒れてなかったら、もう一回攻撃するだけよ!」

 ナルミの傍らにはハッサム。
 爆発の煙の方向にハサミを向けて、『ラスターカノン』を撃つ構えを取っている。

「ところで、コズマさんは今までどこに行っていたの?」

 ガブリアスの隣にいる少年ケイは、首を傾げて質問する。

「別にどこにも行ってねぇよ。雑魚を蹴散らしていただけだ」
「危うく鴉使いに蹴散らされるところだったわよね、オッサン」
「そういう嬢ちゃんも、ケツの青いメスザルに追い詰められていたじゃねえか」

 余裕を持った表情で見下すように見るコズマと若干不機嫌そうに見るナルミ。

「追い詰められた過程が問題よ!崖の上で酔って負けそうになるってどんだけなの!?情けないったらありゃしないわ!」
「オーゥ、実力で追い詰められるほうがよっぽど情けないと思うぜ?」
「私のはちょっと油断しただけよ!」
「ふぁぁぁ……」

 コズマとナルミがケンカをしているところ、ケイはのんびりと煙が晴れるのを待った。

『ヨクモヤッテクレタナ!!』

 煙が晴れると、地面に埋もれたダークライの姿があった。
 すぐに地面から飛び出し、襲い掛かってきた。
 手から巨大な黒い球体を撃ち出し、ケイたちの足元で爆発させた。

「『サンダーファング』!!」

 その攻撃にまったく怯まず、コズマと共にレントラーは直進してダークライへと向かっていく。
 電気を纏った牙はダークライの右手に噛み付いた。
 しかし、噛み付かれた右手をブンブンと地面にたたきつけて、レントラーにダメージを与えていく。

『目障リダ!!』

 ダメージを蓄積して行ったレントラーは最終的に投げ飛ばされて壁にぶつかりダウンした。

 ズドォッ!!

『グッ!?』

 真下から飛び出す突き上げる攻撃。
 地中から『あなをほる』でガブリアスが飛び出してきたのである。
 『気合パンチ』でガブリアスを狙いに行くが、再び穴を掘るで攻撃をかわされる。
 すると、今度は後ろを取ってドラゴンクローでガブリアスの背中に叩き込んだ。

『チョコマカト……マタ後ロダロ?』

 再度地面に潜ったダークライは先読みして、悪の波動を撃つ準備をしていた。
 しかし、

 ドガガガガガガッ!!

『ムッ!?』

 上空から襲い掛かってきたのはラスターカノンの塊。
 しかも、まだ40ほどの弾が残っている。

『ドータクン!一斉掃射よ!』

 雨のように降ってくるラスターカノン。
 一つひとつの威力は高いのだが、ダークライはそれを右手でバリヤーのようなものを張ってガードする。
 とはいえ、一発一発に圧されていっているようだった。
 そのダークライの背後から、飛び上がってきたカニポケモンが一匹いた。

「キングラー、『エリアルハンマー』!!」

 強大な破壊力を持つ上空から攻め込むハンマー攻撃。

『小癪ダ』

 ところが、左手を後ろに翳し悪の波動でキングラーは吹っ飛ばされて倒された。

「……! 何て強さの悪の波動だぁ!?」

 でも、ダークライが攻撃を防げたのはそれまでだった。

『グッ!?』

 同じく後ろから、しかし下から繰り出されたアッパー攻撃で背中を叩き込み、ダークライの体勢をガブリアスが崩した。
 すぐに間合いを取って、ドータクンのラスターカノンに巻き込まれないように距離をとる。

『グォォォォォォ!!』
「『ドラゴンダイブ』だよ」

 ラスターカノンが止んだ瞬間に間髪をいれずボディタックルを叩き込む。
 ダメージを与えることはできたが、うまく体をそらされてしまい、決定打にすることはできなかった。

「締めはやっぱこのマーベラスな俺様だっ!」

 跳んで仕掛けるのは、一匹のサソリポケモン。
 グルングルンと回転して、一撃の威力を上昇させていく。

「ドラピオン、エキストラな回転攻撃だ、ゴラッ!!」

 必殺『エリアルドライブ』。
 腕だけじゃなく、体全身を回転させてライフルのように相手を貫くかのごとく強力な技である。

 チュドゴォォォォ―――――――――――――――ンッ!!!!

『ば……かナ……』

 ダークライの意識は途絶え、バタリをうつ伏せに倒れたのだった。



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 ―――フェナスシティ、病院。

「はやくうまれてこないかなー?」

 病院の一室で卵を抱えているのは、幼いおかっぱの少女カズミ。
 コズマから貰った卵を大事そうに抱えていた。
 その様子をベッドからゆったりと眺めているのは、ユウナだ。

「これは一体……!?」
「どうしたの……?」

 リクがふと窓の外の様子を見て立ち上がった。

「物凄いスピードで光が動いているんです。直線的でどこかに向かっているように見えます。これは……町外れのスタンドの方からエクロ峡谷方面ですね……ん!?うわっ!!」
「……何!?」
「えっ!?」

 次の瞬間、ピカッ―――っと強烈な光が飛び込んできた。
 しかし、その光はここに居る3人だけに届くレベルの小さな規模ではない。
 オーレ地方全域にわたって行き届いている光だった。

「……一体…………え?」

 眩しくて閉じていた目をゆっくりと開いた時、リクは自分の目を疑った。

「……こわいよ……」

 カズミは持っていた卵をぎゅっと抱きしめて弱々しく呟いた。

「何も……見えない……??」
「……動けません。いったい、どうなってしまったんですか……?」

 目の前に広がる絶望の闇。
 彼らには何も見えないし動けなかった。

「ユウナさん……!?カズミちゃん……!?」

 そして、リクの呼ぶ声も二人に届くことはなかった。

「世界は……闇に包まれてしまったと言うことなのでしょうか……そんな……ナルミさんたちが間に合わなかったと言うことなのでしょうか……!?」

 ぐらりと徐々に意識が揺らいでいくリク。

「なんか……このまま……闇に溶けて行きそう……です……ね……」



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 ―――ニケルダーク島、ヘリポート

「ふぁ……」
「終わったのね」

 ケイとナルミは安心してガブリアスとドータクンを戻す。

「オイ、まだ終わっちゃいねぇだろ。オーレ地方を元通りにしなくちゃ行けねぇだろ!こいつを叩き起こしてやる!」

 コズマはドラピオンと共にダークライに近づいていく。

『そうだ。まだ終わっていない』
「何っ!?」

 まるでダメージがないかのようにダークライは立ち上がり、一瞬のうちに闇の光線を放った。
 ドラピオンがコズマの前に出て防御に出るが、呆気なく吹っ飛ばされてダウンした。

「……まだ倒れていなかったの!?」
「……違う……この感じは……!」

 ケイは息を呑んでヘッドセットのモニターでダークライを確認する。
 
「今までのどの感じよりも危険だよ」
「一体何が起こったの?」

 ダークライは不敵な薄ら笑いを浮かべる。

『遂にこの“究極の闇”が主人格になったのだ。クロノでもなく、ダークライでもなくな!』
「「「……!?」」」
『そして、コールドペンタゴンが完成して……完全体になったのだ』
「ふぁ?コールドペンタゴン……?」
「それって何よ?」
『…………』

 スッとダークライが手を前に翳す。

「……ぐっ!」
「……ふわぁ!?」
「きゃあっ!!」

 手から飛ばされる衝撃波で一気に3人とそのポケモンたちは吹っ飛ばされる。

「今のなんなのよ!?」
「衝撃波で吹っ飛ばされたらしいな……ちぃ!ヤッカなことしやがる!」
「ふぁ?ヤッカ?」
「どっちにしても、あいつを再起不能にしてやる!」

 コズマはモジャンボを繰り出して、長い弦で攻撃させる。

「そうね、このままにはできないわ!」

 ナルミもライボルトを繰り出して、電撃を放つ。

『無駄だ』

 『パワーウィップ』をがっしりと掴み、モジャンボを振り回してライボルトの電撃を防いだ。
 その後、ライボルトに投げつけて、たたきつけた。

「なっ!?」

 さらにシャドーボールを繰り出して、モジャンボとライボルトをあっという間に倒してしまった。

『後ろか』

 ドゴォンッ!!

 片手で冷凍ビームを受け止めるダークライ。
 ダメージは全くと言っていいほどない。

「グレイシア、『吹雪』、『冷凍ビーム』!」

 お得意のチェーン攻撃でダークライに攻撃する。
 吹雪によって加速した冷凍ビームは威力を増している。
 しかし、ダークライはその攻撃を真っ向から受け止めていた。

「バクフーン!」

 飛び上がって強力な火炎弾を放つ。
 幹部のマルクを撃破した『メテオメガ』だ。
 ダークライは避けずに攻撃を受けた。

「ハッサム!『シャインバレッド』よ!!」

 赤いハサミをぶちかまし、その衝撃で飛び出した強力な光弾を爆発させる切り札の技である。
 バクフーンの攻撃のあと、間髪いれずにハッサムは突っ込み、攻撃を与えて爆発させた。

「……スペシャルな攻撃だ!」
「これでどうよ……?」
『コールドペンタゴンとは、闇の布陣。全てを闇に還す』
「「「……!!」」」

 煙の中からゆらりと現れるダークライ。
 ハッサムは地面に伏していた。

「そんな……私たちの攻撃が全然効かないなんて……」

 ナルミが呆然として現状を見る。

「ふぁ……コールドペンタゴン……闇の布陣?」
『そうだ。その闇に覆われれば時も空間も全てが停止する。つまりは何もなくなる」

 ダークライは両手を挙げる。

『今、オーレ地方の5つに立てた蒼い光の柱によってできた闇の布陣が完成し、オーレ地方は闇に覆われた。それによって我が究極の闇の力は復活した』
「闇の力……だと?」
『そして、この闇はやがて全世界を覆い尽くす』
「なんでそんなことを?」
『これが我が究極の闇の望み、クロノの望みだからだ。まぁ、クロノにはオトハと言う光を飲み込むと言う目的もあるようだが、この私は月島の巫女であるオトハは消したい。遠き昔の因縁でな』
「ふぁ……遠き昔の因縁……」
「けっ!因縁だかなんだかしらねえ!バクフーン!」

 再びバクフーンはジャンプする。
 先ほどの強力な火炎弾を放った後、自分も回転をしてその炎に合わさる。

「『ストラグルメテオメガ』!!」
『ふんっ』

 ダークライは片手を上げたまま螺旋を描く闇のレーザーを繰り出してきた。
 炎に包まれたバクフーンとそのレーザーが激突する。

 ドゴォッ!!!!

「ちぃっ!?何て攻撃だ!!」

 結果はバクフーンが圧し負けて吹っ飛ばされた。
 バクフーンは肩で息をしているが、まだダウンをしていない。

『光の終焉だ』

 ダークライが両手から禍々しい闇のエネルギーを繰り出す。
 闇のエネルギーは直径がヘリポートよりも大きい。
 密度から言っても、その力はすべてを粉々にする力といってもいいだろう。
 実際に周りの空気さえもその闇によって歪んでしまっている。
 時も空間さえも捻じ曲げてしまうそのクロノとダークライ、そして究極の闇の力は本物だと言えよう。

「あんなの受けたら……」

 ナルミがドータクンを繰り出して、防御をしようとしている。

「グレイシア」

 すでにケイのグレイシアは吹雪を放っている。

『消えろ』

 ダークライはヒョイッと非常に大きな闇の塊をヘリポートに向かって落としていった。

「ふぁ……吹雪でも塞き止めるのがやっとだ……」
「『スチールカーテン』!!」

 ナルミも最強の防御技でダークライの攻撃を防ごうとするが、それでもジリジリと迫ってくる。

「バクフーン、『噴火』だ!」

 背中から溢れる強大な炎。
 3匹の攻撃と防御でその攻撃は止まったかに見えた。

「ううん、止まってないわ!圧されている!」
「チッ、もっとマーベラスに行け!」

 ドータクンとバクフーンは力をその技に集中させた。

『何をしようと無駄だ』

 ドガッ!! バキッ!! ドゴォッ!!

「きゃあっ!」 「うぐっ!!」 「ふわっ!?」

 闇を纏ったダークライの攻撃力はあっという間に2匹のポケモンをダウンさせ、3人のトレーナーを吹っ飛ばした。

「私たち……勝てないの?」

 ナルミは立ち上がろうとするが、力が入らず地面に伏せる。

「この俺様の……スペシャルな底力を……見せてやる……!!」

 コズマは立ち上がるが、そのときにはもうすでに遅かった。
 闇の固まりはコズマの1メートルに迫っていた。
 そこではもう何もできなかった。
 ケイでさえも気絶したようで、地面にうつ伏せになっていた。
 攻撃は命中した。

「『ファイヤーボルト』」

 この謎の少年の攻撃がなければ。

「……な……?」
「え?」
『……!?』

 ここにいた全員が目を疑った。
 それはダークライも例外ではなかった。

「炎が闇を焼き尽くしたの……?」
『焼き尽くすだと?通常なら、闇に吸収されるはずなのに!?』

 二人とダークライは注目する。
 赤いマフラーに165センチくらいの背の少年とキュウコンだった。

『貴様は……何者だ!?』

 そのダークライの質問に少年はキッとした眼力で睨んだのだった。



 第三幕 The End of Light and Darkness
 The End of Turth deep darkness③ ―究極の闇の存在― 終わり



 遙かなる願いを託されて、時が来る。


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Last-modified: 2015-12-30 (水) 10:49:00
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