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たった一つの行路 №243

/たった一つの行路 №243

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「はぁはぁ……やっと着いたか……?」

 特徴である赤いマフラーを含めて全ての服をグッショリと濡らして、堤防をよじ登る少年。
 しかし、泳ぐのに必死になって、どうやら全ての力を使い果たし、ぐったりとしていた。

「ここからが問題だと言うのに……はぁはぁ……なんでこんな泳ぐのに体力を使わないといけないんだ……」

 恐らく、少年の顔は女の子が10人いれば9人が振り向くほどの美形の少年だ。
 振り向かない女と言えば、目が見えないか、男に興味がないかのどちらかだろう。

「ゲホッゲホッ……頭が痛い……耳に水が入ったかな……。水ポケモンがいないなんて……失敗したよな……」

 しばらくの間、やむを得ず、その場で座り込んで休む。
 そして、この島を見上げる。

「ニケルダーク島……ここが究極の闇の最後の決戦の地……」

 少年はポツリと呟く。

「ここで止めなければ、過去も現在も未来もない。俺が止めないと……!!」

 ヘリポートのあるニケルダーク島の頂上を見て、少年は立ち上がる。
 すると、ぐらりと少年は眩暈を起こして、膝をつく。

「はぁはぁ…………っ!!」

 自分の左手を見て少年は、焦りの表情を見せる。
 左手がサーッと消滅しそうになっているのである。

「まだ……まだだ」

 左手をぎゅっと握ると、その消滅は踏みとどまり、左手の感覚を取り戻す。

「時間がない。早く行かないと……!!」

 少年は意を決して、ニケルダーク島の内部に突入して行ったのだった。



 たった一つの行路 №243



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 ―――ニケルダーク島、ヘリポート。

 ドガッ!! バキッ!! ズモッ!! ドゴォッ!!

 ヘリポートでは凄まじい戦いが展開されていた。

「デンリュウ!ウツボット!ヘルガー!」

 サーナイトが繰り出す13体の影の兵士達。
 それと3匹のポケモンが互角に……いや、圧していた。
 槍の影がついてくるのを狙い、デンリュウは紙一重でかわし、『かみなりパンチ』と『炎のパンチ』のラッシュをかける。
 当然攻撃の隙を狙うのだが、ウツボットが広範囲に『溶解液』を撒き散らして、他の影たちを近寄らせない。
 例え、近づいてくるものがいても、ヘルガーが接近攻撃で影を片っ端から攻撃して行く。

「『影討ち』」
「『不意打ち』」

 両方とも先手を取る技だが、ヘルガーの方が一歩速い。
 サーベルの影を一発で消し去った。

「面倒だな。各個撃破しろ」

 双剣の影が巧みな攻撃でデンリュウを襲い、レイピアの影が素早い突きでヘルガーに襲い掛かる。
 それ以外のハンマーや鎖鎌などの影は、いっせいにウツボットを襲っていった。

「『つるのムチ』だよ!」

 ブンブンと振り回して影を叩き落していく。
 しかし、倒すには至らないダメージの上に、盾を持った影と素手の影、そして魔術師のような影の連続攻撃を受けてしまう。

「『リーフストーム』!!」

 葉っぱの突風を撒き散らすが、攻撃を影たちはかわしてしまう。

「ヘルガー!」

 レイピアの攻撃をワザと受けるヘルガー。
 そして、次の瞬間に反撃の一撃を叩き込む。
 『カウンター』だ。

「デンリュウ、『充電』、『電磁砲』!」

 さらに一方でお馴染みのチェーン技で目の前の双剣の影を吹っ飛ばそうとする。
 しかし、命中はしなかった。
 ただでさえ、命中率が悪い上に相手は相当の速さなのである。

「ふーん。狙いはレイピアか」

 双剣の影が避けた先にはヘルガーのカウンターで吹っ飛ばされたレイピアの影の姿があった。
 強力な爆発が起きた後、そのレイピアの影は消失した。

「『わるだくみ』、『オーバーヒート』!『リーフストーム』!」
「闇の前では無駄だ」

 直接サーナイトを狙って撃つが、サーナイトの影の騎士達が束になって防御にかかる。
 影たちは全て消滅するが、そこにヘルガーとウツボットに隙ができる。

「『ブラックホールブラスター』」

 サーナイトはブラックホールを作り出す力を持つといわれている。
 その圧縮したブラックホールをヘルガーたちに向かった放った。

「(……!?)」

 ウツボットとヘルガーは避けることができずに、飲み込まれていった。

「これでまた2匹闇に消えた」

 ボォ―――ンッ!!

 サーナイトに電気の爆発が炸裂した。
 デンリュウの電磁砲のようだ。

「ウツボットとヘルガーを返してもらうよ」

 どうやら、ブラックホールの力は強大な精神力を使うらしく、この攻撃で倒れた。

「ゲンガー、『シャドークライシス』」
「もう一回!!」

 『充電』『電磁砲』で押し切ろうとするが、攻撃は相殺に終わってしまう。

「それなら…………! デンリュウ!?」

 デンリュウの影がデンリュウを拘束しているのにケイは気付いた。

「『シャドースクリュー』」

 シャドーボールをドリルのように形状化させた技で動けないデンリュウを貫通した。
 エネルギー体の為に外傷はないが、この一撃でデンリュウは気絶した。

「グレイシア!」
「何を出しても同じことだ」

 グレイシアの足元の影がグレイシアを拘束しようとする。

「そんなことはないよ」
「……ん?」

 影がグレイシアにまとわりつかなかった。
 そのまま、影はグレイシアの足元に戻っていった。

「『氷の礫』!」

 ドゴッ!!

 ゲンガーは不意を突かれて、やや後退する。

「影が効かないなら、闇の技で粉砕してやる。『シャドースクリュー』!」
「『冷凍ビーム』!!」

 闇色のドリルと白色を纏った透き通った冷凍光線が激突して、消滅した。

「……互角?」
「ふぁー……」

 どちらも意外な表情をしていた。

「(あいつの冷凍ビームがそれほどの威力だと言うのか?)」
「(“やさしい”攻撃でも相殺しかできないんだね……)」
「それなら、最大の技で打ち負かす、『シャドーメテオ』」
「受けて立つよ、最大パワーで『破壊光線』……」

 上空に凝縮した闇の塊を更に集束させる。
 そして、それを振り下ろすと徐々に大きくなりながらケイとグレイシアに襲い掛かっていった。
 それに対して、グレイシアは白い破壊光線。
 やさしい力が付加したこの攻撃は、闇系の力を打ち消す。

 ドゴォーン!!

 二つの技は相殺された。
 だが……

「チェーン攻撃!?」

 破壊光線の後に吹雪がゲンガーを包み込んで凍り付けにした。
 始めから、ケイは『破壊光線』→『吹雪』のチェーン技を狙っていたようだった。

「…………」

 クロノはゲンガーをモンスターボールに戻して黙り込んだ。

「ふぁ?終わり?」

 ケイもグレイシアを一旦戻した。

「終わらないよ。俺が闇で世界を覆い尽くして、全てを消すまで」
「……消してどうするつもりなの?」
「どうするつもりもないよ」
「……え?」
「かつて、ダークスターのリーダーであったダイナはデオキシスと“ソウゲド”と呼ばれる想いを力に変える鉱石の力で月を落として世界を滅亡させようとした」
「…………」
「世界の破壊者と自称するナポロン……いや、ザンクスは世界を壊して、自分の思うように支配しようとしているらしいな」
「…………」
「でも、その全てがくだらない。想い、滅亡、破壊、支配……そんなもの、闇の前では意味がない。所詮この世に意味なんてないことを俺は証明する」

 クロノは6つ目のモンスターボールを投げつけた。

「まだ、完全じゃないが、お前を蹴散らすくらいならどうってことはないだろう」

 姿を現したのは黒い死神のような格好をしたポケモンだった。

「ふぁ!?このポケモンは……まさか、ミオシティの図書館の本に載っていた……」
「全てを闇に飲み込んでやる。やれ、ダークライ」
“イイダロウ”

 ダークライは手を翳して闇色のボール状のエネルギー体を作った。

「永遠の眠りにつけ。『ダークホール』」
「ふぁ!!」

 慌ててケイはモンスターボールを投げつける。
 そのポケモンはダークホールを弾く『竜巻』を繰り出した。

“上手ク防イダカ”
「『竜の波動』!!」

 ガブリアスの波動攻撃だが、ダークライは片手で攻撃を弾き飛ばしてしまう。

“コンナ攻撃、クラウハズガ……”

 ドゴォッ!!

“ナニ!?”
「油断しすぎだ。俺の指示に従え」
“クッ……”

 地面を転々と転がって、体勢を立て直したダークライ。
 竜の波動を撃った時には、すでにガブリアスはダークライに接近していたのだ。
 そして、『剣の舞』で攻撃力を上げ、『ドラゴンクロー』で切り裂くチェーン技を繰り出していた。

「『大地の力』だよ!」

 ドドドドドッと地面を突き上げる衝撃波がダークライに向かっていくが、浮遊して攻撃をかわす。
 しかし、それを見越していたか、『竜巻』でガブリアスは攻撃に出ていた。

「指示を出すまでもないな」

 ダークライは『悪の波動』を繰り出す。
 最初は互角であったが、悪の波動が竜巻を押し切った。

「ふわわ……」
「『悪の波動』」

 クロノの的確な指示で、ケイとガブリアスは避けるだけの戦いを強いられる。
 攻撃もできずに徐々に追い詰められていく。

「ふぁ!?」

 ズドォーンッ!!

 攻撃は遂に命中した。

“ヤッタナ”
「いや、ダメージは与えただろうが、これだけじゃ倒れないだろう」

 悪の波動の爆発の煙から素早いスピードでガブリアスが飛び出してきた。
 一直線にダークライへと向かって行っている。

「玉砕覚悟か……だが、忘れては困るな。『ダークホール』」

 相手を悪夢に陥れる凶悪な技である。
 さっきは竜巻でガードされてしまったが、今度は防御できないとクロノは踏んでいた。

「眠った奴は無視して、本命を叩く。恐らくグレイシアが来るだろう」

 しかし、クロノの読みは外れた。

“オイッ!”
「眠らないだと?」

 動揺したダークライは悪の波動をガブリアスに打ち込んだ。

「(こいつは『身代わり』か!?……と言うことは……)」

 クロノは前を見る。
 煙は晴れたが、そこには誰もいなかった。
 鉄で舗装されている地面にぽっかりと穴が空いているだけだった。

「下だ!?」

 悪の波動を下に向けて打とうとしたが、遅かった。
 地面からダークライの顎に一撃叩き込んだ。
 そして……

「ガブリアス、『ドラゴンクロー×7<チェーンセブン>』!!」

 ドラゴンクロー七連撃をダークライに叩き込んだ。

“ウォォォッ!!グハッ!!”
「くっ!!ぐっぅ!!」

 クロノとともにダークライを吹っ飛ばした。

「ふぁ……勝った?」

 ケイの目の前に見えるのは、ダークライとクロノが地面に倒れている姿だった。

「ふわわぁ……これで、オーレ地方は救われるんだね……」

 安心しきった表情で、ケイはペタンと地面に腰を下ろす。

「カレンお姉ちゃん……僕、やったよ。ハルキさんの敵を取ったよ」

 疲労したガブリアスはゆっくりとケイに近づいていく。
 そんなガブリアスを労うように、ケイは頭を撫でてやった。

「『ドラゴンクロー×7<チェーンセブン>』が完成したね。よくやったよ」

 目を細めてガブリアスは喜ぶ。
 そして、ケイはモンスターボールに戻してやって、クロノに近づいていく。

「ぐっ……」
“ヨクモ……”
「ふぁ!?」

 左手を押さえながらクロノは立ち上がった。
 それだけではなく、ダークライもよろけながらもクロノの隣に立つ。

「まさか、お前に負けそうになるとは思わなかった」
“くろの、ドウスルツモリダ?”
「決まっている」

 ダークライの頭をがっしりと掴むクロノ。

「何をする気なの?」
「よく見ておけ」

 クロノから裸眼でもわかる黒いオーラが飛び出す。
 すると、クロノとダークライを包み込んだ。

「ふわっ!」

 飛ばされないように足を踏ん張るケイ。
 やがて、風が止み、ケイは前を見た。

「……ダークライが一匹……?」
“だーくらい……違ウナ”
「え?この声は……」

 ケイは気がついた。
 目の前のダークライが喋っているが、その声帯はクロノのものだということに。

「まさか、ダークライと一体になったというの!?……でも口調がダークライ……?」
『しんくろガ不完全デコノ俺ガますたーニナッタンダ。くろの意識ハ既ニ俺ノモノダ』

 ケイはすぐにウソッキーを繰り出した。

「『ストーンエッジ』!!」

 岩系最強の技を放つ。
 だが、ダークライはまったく避けずに攻撃を受け止めた。

「ふわわ……効いてない……!?」
『ナカナカノ強サダ。サァ、先ホドノオ礼ヲシナイトナ!』

 ダークライは悪の波動を放つ。
 ウソッキーはそれに対してまねっこで対抗するが、威力が段違いすぎて、吹っ飛ばされる。

『『気合パンチ』」

 止めは格闘系最大の技でウソッキーをノックアウト。
 ケイの残りポケモンはグレイシアとガブリアスだけになった。

『次ハオ前ノ番ダ!!』

 ケイを急襲しようとするダークライ。
 スピードが速いが……

 ズドォ―――ンッ!!

『ヌッ!?』

 横からの砲撃に圧されて、ダークライは怯んだ。

『何者……!?』

 ダークライの目に映ったのは、赤いボディのポケモンと、キャミソールの女の子だった。

「ふぁ!?ナルミさん!?」
「ケイくん!?やっと見つけた!ここにいたのね!?」

 相棒のハッサムとともに、ケイに近寄っていく。

「これ、どんな状況なの?」
「ダークライとクロノが一体になったんです」
「ポケモンと人間が一体に!?どうなったらそんなことができるのよ!?」
「それはわからないよ……。あれ?コズマさんは?」
「あー……」

 ナルミは気まずそうに目を逸らす。

「そのうち来るんじゃないの?」
「ふぁ?」
「とにかく、行くわよ!」
「うん!」
『束ニナロウガ同ジダ!』

 ケイはガブリアスを繰り出して、接近技の『ドラゴンクロー』を繰り出す。
 それを、素手でダークライは捌いていく。

「パワーはあるのね!なら、これでどうよ!」

 ハッサムがダークライのゼロ距離につけた。
 そして、繰り出した技は『ラスターカノン』。
 ダークライは壁へと吹き飛んだ。

「いい感じね♪」
『ナンダ、コノ程度カ』

 と言いつつも、多少ダメージを負っている様子のダークライ。

「長期戦をすれば、こっちに分がありそうね」

 ナルミは右手にアイテム、左手にモンスターボールを持っている。

『長期戦?一瞬デ終ワラセテヤル!『ダークホール』!!』
「最大パワー、『すなあらし』!!」

 ガブリアスが砂のブラインドを張って、ダークホールを防ぐ。

『ナニッ!』

 そこから、抜けてきたのはハッサムだ。

「『シザークロス』よ!!」

 ダークライを切りつけた。

「プラスパワーで攻撃力を上げているから効くでしょ♪それに……」
『負ケルモノカ……』

 ダメージはそれなりに受けている。
 膝をかくかくさせている辺り、倒れるのは時間の問題だろうか。

「オッサン!これで決めちゃってよ!」
『……!!』

 上空から一匹のポケモンが降って来た。

「オーゥ、この俺様の見せ場を残してくれて、ありがとよ、嬢ちゃん、坊っちゃん!」

 トレーナー……上半身裸体のオヤジは、ナルミの隣にいた。

「レントラー、『エリアルファング』!!」

 空中からの噛み付き攻撃。
 それも電気を付着させてさらに大きな怪物のように見せた大技だった。

『ぐぉぉぉぉおおおおおお!!』

 チュド――――――――――――ンッ!!!!

 その一撃は、ダークライを地面に埋もれさせるほどの威力があったという。



 第三幕 The End of Light and Darkness
 The End of Turth deep darkness② ―トリプルコンボ― 終わり



 戦況は有利。だがしかし……


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Last-modified: 2015-12-28 (月) 23:48:40
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