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たった一つの行路 №233

/たった一つの行路 №233

「ハルキ……ハルキ……?返事して……そんな……嫌よ……イヤァァァァッ―――!!!」

 たった一人愛する者がこの世から消失する。
 その現実にカレンはただ打ちひしがれるしかなかった。
 自分の力のなさを呪い、相手の力を呪い、ただ涙を流して呆然とするしかなかった。

「……バカな……」
「……クロノ……?」

 しかし、激しく取り乱しているのはカレンだけではなかった。

「こんな人間……いるはずがない……。自分の命を犠牲にしてまで……他人を助ける人間が……いる筈がない!!」

 頭を抑えてクロノはもがき苦しんだ。

「クロノ……? どうしたのよ……?」

 ベルは必死になだめようとした。
 だが、落ち着かせようとしたベルの手をクロノは殴りかかるように振り払った。

「一人にさせろ…………この場は……お前に任せる……」

 苦しむようにクロノは闇の扉を作り出して、その場から消えていった。

「それじゃ……後はこのカレンを……」

 と、ベルはカレンを見たが、いまだにプクリンが押さえつけている。
 そして、呆然としていた。

「……ハル……キ……」

 そのカレンを見て、ベルはくすりと笑った。

「あんたはそのまま固まってコロシアムの造形物の一部になるといいわ~♪ 事切れた愛しい騎士<ナイト>とともにね」



 そして、ユウナのポケギアに電話をした今に至る。

「後はユウナがここに来るまで、のんびりしていようかしら~♪ その前にオーレ地方が先に破滅するかもしれないけどね~」

 無表情で目を閉じて地面に倒れているハルキと地面に手をついて悲しみに打ちひしがれた表情をしているカレン。
 その両方がベルの目の前で固まっていた。
 片方はその中から逃れても、永遠に時は止まったままなのだが……


 たった一つの行路 №233



 ☆前回のあらすじ
 5つの地点で繰り広げられるオーレ地方を固化させる作戦。
 それを阻止すべくSHOP-GEARとオーレの英雄達は動いていた。
 バトル山のログをリクと駆けつけたナルミによって勝利し、装置を破壊した。
 しかし、ポケモン総合研究所のアイ&ミナミ、風霧の元アジトのカツトシは敵の手数と能力差で敗れてしまう。
 さらに、オーレコロシアムに向かったハルキとカレンさえもクロノとベルに圧倒されて戦闘不能にされてしまった。
 このまま、オーレ地方は闇の前に固まってしまうのだろうか……?



 73

 ―――オーレコロシアム。
 ハルキとカレンの激突から半日が経とうとしていた。
 その間、ベルは水晶のように固まった瓦礫に座って、あるトレーナーを待ち続けた。
 アゲトビレッジで邪魔をし、CLAW<クラウ>のアジトで自分と互角に戦った一人の女トレーナーを。

「(なかなか来ないわね……)」

 この場所に来る前に調達してきた鰹節のおにぎりを頬張りつつ、ボケーっと空を見ていた。

「あ~あ……退屈……た い く つ……結局、クロノについていっても同じだったわね~……」

 はぁ……とため息をつく。

「それにしても、哀れね」

 ふと、彼女の目線の先にあるのは、項垂れている一人の少女。
 とても悲しい表情で泣いていた。

「この場所に来なければ、こんな悲しいことにはならなかったでしょうに。“後悔先に立たず”ってまさにこのことよね」

 そんな独り言を口走ってから、装置を見るベル。
 その装置は順調に蒼い光の柱を立てている。

「この装置はこの場所を含めて5機。連絡によれば、いくつか壊されちゃったみたいだけど……」

 稼動しているのを確認してごろりとベルはネコみたいに寝転がる。

「1つでも残っているかぎり、作戦は可能なのよね……ふわぁ~……」

 ムニャムニャと眠気を催してきていた。
 そして、目を瞑って眠りに落ちようとしていた。

「……!」

 ぴくっとネコの様に耳を動かすベル。

「この音はスクーターのエンジン音……やっと来たわね……!」

 ぺろりと唇を舐めつつ、彼女はモンスターボールを取った。
 そして、入り口からやってくる人物を待ち構える。

「ようこそ……オーレコロシアムへ……って……誰?」

 しかし、ベルが見た人物とは、ベルが待ち望んでいた人物ではなかった。
 額にゴーグルをし、左腕にはスナッチマシン。
 赤い髪の少し幼く見える少年だった。

「…………」

 少年は辺りを見回して、2つの固まった人型を見つけて近づいていく。

「坊や……ここはあんたみたいな子供が来る場所じゃないのよ!帰んなさいっ!」
「…………」

 しかし、少年は彼女の声に耳を傾ける様子もなく、その2つの人型に近づいていった。

「カレンお姉ちゃん……ハルキさん……」

 手をつけて、その二つの固体名を呼ぶ。

「……あんた、ユウナに電話をかけたときにいた男の子ね?何?あんたがユウナの代わりに来たって言うの?」
「……一体、何をしたって言うの……?」

 静かな声で少年はベルに尋ねる。

「何って?見ての通り身動きを取れなくしてやったのよ。とはいっても、片方の男の方はもう永遠に動くことはないけどね」
「…………」

 黙って少年は立ち上がる。

「悪いのは作戦を邪魔したそっちの二人よ?あたし達はそれを排除しただけのこと。その結果なのだから、文句は言えないわよね?」
「……この冷たくない氷は溶けるの?」
「さぁ……どうだろうね?あたしにはわからないわ。クロノに聞いてみないことにはね」
「そのクロノって人はどこにいるの?」
「教えてあげないわ~♪」
「…………」

 静かにベルを見る少年。

「あっ……よく見たらあんた、2年前にオーレ地方を救ったと言われるもう1つの英雄のケイじゃない?ふふっ、少しは楽しめそうじゃないの」
「僕は……諦めていたんだ」
「ん?」
「でも、お姉ちゃんが笑って今を過ごしているなら、それでいいと思った。幸せそうなら、このままでも僕はいいと思ったんだ」

 少年……ケイは静かな声で語り始める。

「僕はいつまでもお姉ちゃんの笑顔を見ていたかった。なのに……なのに……どうして、今はこんなに悲しそうな顔をしているの……?」
「ふふっ……何が言いたいのかしら~?」
「許さないよ……」

 いつもの柔らかな表情はどこかへ捨てていった。
 いつもの眠たそうな表情も見る影もない。
 目をキッとさせて、真剣な表情でベルを睨みつけた。

「カレンお姉ちゃんを悲しませる人は、僕が許さない!みんな僕が打ち倒してやるっ!!」

 ドミュッ!!

 ウソッキーが突進を仕掛けるが、プクリンが膨らんで攻撃を緩和する。
 しかし、そこから足を踏ん張ってウソッキーはプクリンを押し飛ばした。
 コロコロとプクリンは後方へと転がっていく。

「ハルキさんの代わりに、カレンお姉ちゃんの笑顔は……僕が守るっ!!」
「ふふっ、威勢がいいわね」

 勢いよくフィールドの壁にぶつかったプクリン。
 本来なら、それだけで大ダメージなのだが……

「(……効いてないの!?)」

 あっさりと起き上がってくる。

「あたしのプクリンはわるいポケモンの中でも特殊な型。弾力性を特化することにより、主に防御面を強化しているの。打撃攻撃はほとんど通用しないわよ~」
「っ!!」

 反撃のサイコキネシス。
 押し寄せる念動力をウソッキーは受け止める。
 同じくサイコキネシスで対応しているようだ。

「あら、『まねっこ』?でも、パワー不足ね」
「うっ!」

 力及ばず、サイコキネシスでウソッキーは吹っ飛ばされてしまう。

「あのカレンの笑顔を守るなんて、この程度の実力じゃ到底無理ね」
「……っ!!デンリュウ、『電磁砲』!!」

 電気を圧縮した砲弾が地面を削りながらプクリンへと向かっていく。
 それをプクリンは体全身で受け止めた。

「(なかなかのパワーね) ただの電磁砲じゃないわね。最初に充電でもしたのかしら?」
「もう一回!」

 体中がビリビリと痺れているプクリンに向かって、ケイはもう一度同じ指示を飛ばす。
 よく見ると、瞬間的に充電をした後に放っている。
 技と技を連結させるケイお得意のチェーン攻撃だ。

「バリヤード」

 プクリンを一度戻すベル。同時にケイもダメージを負っていたウソッキーを一旦戻す。
 電磁砲はバリヤードの方へと引き寄せられて通過していった。

「(今のは『サイコキネシス』? 『このゆびとまれ』? それにこのポケモンはダークポケモン……!)」

 ヘッドセットのダークポケモン識別装置で確認している間にバリヤードに接近され、デンリュウはビンタの応酬を受けてしまう。
 手数の多い攻撃を受け、地面に叩きつけられるが、デンリュウの反撃の準備は完了していた。

「(チャンスだ!)」

 バリヤードの様子を見ると、先ほどのプクリンと同様にマヒ状態に陥ってうまく動けないように見えた。
 デンリュウの特性の『静電気』の成果だった。

「『10万ボルト』!!」

 当然、あらかじめ『充電』をしてからのチェーン攻撃だ。
 体に電気を溜めて、一気に放出しようとした。

「甘いわね、『ダークシフト』」
「っ!?」

 突然、デンリュウが金縛りにあったように動かなくなってしまった。

「(マヒ状態!?まさか……!)」
「『ダークサイコキネシス』!!」

 ケイの状況判断は早かった。
 いち早く、バリヤードがマヒ状態がなくなっていることに気付き、そして、バリヤードの攻撃を防ぐためにヘルガーを繰り出した。
 しかし、そんなケイにも誤算があった。

「ヘルガー!?うわあっ!!」

 デンリュウとケイの盾になろうとしたヘルガーだったが、まったく盾の役割をできなかった。
 攻撃がまとめてケイたちを吹っ飛ばしてしまった。

「ぐっ……ぶっ……いつ……」

 地面を転がって、ケイは傷を作っていく。

「ふぅぅ……」

 体を抑えて、立ち上がるが、ぶつかっていなかったところも抑えているところから、バドリス戦の傷がまだ治っていないようだ。
 デンリュウはダウン。ヘルガーは辛うじて立ち上がった。

「『ダークシフト』は、状態異常を相手に移す技。そして、『ダークサイコキネシス』もダーク技。悪タイプのポケモンでも防げないわよ~♪」

 そういって、もう一発撃ってくる。
 今度はヘルガーの『悪の波動』→『大文字』のチェーン技で対抗して、『ダークサイコキネシス』を打ち破った。
 威力を残したままの大文字がバリヤードに向かっていくが、両手で攻撃を打ち消されてしまった。

「『噛み砕く』!」
「『ダークチョップ』!」

 この激突と同時に、ケイはモンスターボールを2つ用意する。
 スナッチ用と次に戦うポケモン用だ。
 それはベルも同じで次のポケモンをスタンバイしていた。
 二人とも結果がわかっていたようだ。

 ドゴォッ!!

 激突の後、2匹は吹っ飛んでダウンした。
 その隙にケイはスナッチボールをバリヤードにぶつけ、ウソッキーを繰り出した。
 意外にもバリヤードはボールの中に簡単に納まった。

 ズドォンッ!!

 問題は捨て身タックルを仕掛けたウソッキーの方だった。

「ウソッキー!?」

 パワー負けして吹っ飛ばされてきたのだ。
 ダウンこそしないものの、力は相手の方が上だと証明された。

「ふふっ♪ このカビゴンも特殊な力を持っているのよ」
「……『ロックカット』、『捨て身タックル』!」

 チェーン技でスピードを上げて最大級の攻撃技を繰り出した。

「じゃあ、カビゴン。見せてあげなさい」
「え!?」

 カビゴンが息を吐いたと思うと、突然、カビゴンの体がしぼんだ。
 スリムになったのだ。

「……速……」

 ウソッキーの攻撃があっさりとかわされて、捨て身タックルでこけたところを、ブンッとケイの方へと投げ飛ばされる。

「カビゴン、『のしかかり』♪」
「スピード系のカビゴンなんて、見たことがない……よっ!?」

 絞られたカビゴンがのしかかってくることにあまり恐怖は感じなかった。
 だが、飛び上がって急降下に入った瞬間、カビゴンの体型は元に戻ったのだ。

「……う……うわあぁっ!!」

 避けようとしたが、間に合わない。
 ふと、ウソッキーがケイを突き飛ばさなければ、ケイは460キロもの体重に押しつぶされてぺしゃんこになっていただろう。

 ドゴォ―――ンッ!!!!

 飛び散る水晶の瓦礫。

 ガンッ! ドガッ!

「あう……」

 大きな破片のいくつかがケイの頭に直撃した。

「うっ……」

 視界が揺らぎ、そのままケイは地面に足を付く。

「(僕じゃ……カレンおねえちゃんを守ることは……できないの……かな……?)」

 ふっと、ケイの意識はなくなろうとしていったのだった…………。



 74

 果たして読者は覚えているだろうか?
 5つの戦いの中で、一番最初に蒼い光の柱に辿り着き、仲間を助け出した男のことを。

「ぐっ……させるかっ!!」

 ぶんぶんとハサミを振り回して、地面を削っていくのは、カイロス。
 火傷を負った体で、『空元気』を繰り出すが、その強い攻撃も当たらなければ意味はない。
 黒いボディのそのポケモンは紙一重で攻撃をかわして、カイロスを翻弄する。
 さらに、その翻弄させている要因が……

「マニューラ、『エアスラッシュ』!!」

 バシュッ!!

 空気と共に切り裂かんとする、強烈な一撃。
 何とか攻撃をツボツボを盾にすることで防ぐものの、予測不可能の多彩な技の種類に、なかなか対抗できずに居た。

「ハンッ!フーディン」
「カイロス!防御を……」

 エアスラッシュを防ぐことは何とかできたツボツボ。
 しかし、次にフーディンのスプーンから繰り出されたのは、ツボツボのボディを貫通する勢いで襲い掛かる凄まじい水流だった。
 ツボツボを持っていたカイロスも、吹っ飛ばされて勢いよくゴロゴロと転がっていく。

「ツボツボ!……さっきのはハイドロポンプか……?」
「残念だが、さっきのは『ハイドロカノン』だ!」
「……くっ!!」

 ツボツボが倒れたのを確認し、壁がなくなった男の目の前に迫り来るマニューラ。
 カイロスが前に出て彼を庇おうとするが、攻撃はカイロスを通り越して男に命中した。

「がっ!?(『影討ち』……!?)」

 吹っ飛ばされたのと同じタイミングで、マニューラが口から大文字を繰り出して、カイロスは彼の横に寝転がされた。

「ジュンキさん……」

 顔色の悪い痩せた美人の女性が、ゆっくりとこちらへやってきた。

「ミライ……こっちに来るな……!」

 ジュンキは影討ちで受けた腹部を押さえながら、ミライに注意を促した。
 だが、マニューラとフーディンのトレーナーの注意はミライに向いていた。

「その女を先に八つ裂きにしてやる……。ちょっと勿体無いいい女だが、これも計画達成のためだから仕方がない。マニューラ」

 キラリと爪を光らせて、ミライにマニューラが襲い掛かる。

「……いやっ……」

 しかし、ミライが抵抗する間もなく……

 ズバッシュッ!!

 切り裂かれた。

「……え!?」
「……む」

 ミライは自分の体が突き飛ばされたのを感じた。
 逆に引き裂かれた感触は何もなかった。

「ぐあぁぁぁっ……!!」
「じゅ、ジュンキさん!?」

 代わりにミライを突き飛ばしたジュンキが背中を着ているシャツ後と引き裂かれて、赤く血を滲ませた。
 マニューラの攻撃は勢いがあったらしく、引き裂かれたジュンキは吹っ飛んでいった。

「庇ったのか」
「ぐぅぅ……今だぁっ!」
「……っ!」

 カイロスがマニューラをがっしりと掴んでいた。
 どうやら、カイロスはジュンキが攻撃をしている隙を狙ったようだ。

「接近したら、大文字は避けられまい」
「打たせる前に、倒すんだよっ!!」

 マニューラが息を吸い込むよりも早く、カイロスが背後に転がって行く。
 ぐるりぐるりと回って、そのまま地面へと思いっきり叩き落した。
 『地獄車』だ。

「……マニューラ!?やってくれたな!フーディン!」

 小さい宝石のような攻撃をカイロスとジュンキに向かって飛ばして命中させていった。

「くっ……がはっ……」

 そうして、ジュンキは全身に傷を負って、前のめりに倒れてしまった。

「ジュンキ……さん……」

 度重なる連戦で、カイロスももう立つことができなかった。

「(もう……戦えないってのか……)」
「(ジュンキさんのポケモンはすべて戦闘不能……私たちの負け……)」
「さぁ、お前ら、消えるんだな!」

 倒れたマニューラを戻して、バンギラスを繰り出したマルク。
 上空から幾つもの隕石が落ちようとしていた。

「(『流星群』……だと……?)」
「ダメ……逃げられません……」

 ジュンキとミライは目の前が真っ暗になった。
 もう、この場を切り抜けることは不可能だと落胆した。
 そして、隕石たちはジュンキとミライに向かって落ちていったのだった…………

「『噴火』だっ!!」

 チュドゴォ――――――ンッ!!!!

「「……え?」」

 暗い闇しか見えていなかった2人に、ひとつの光を照らしてくれた攻撃があった。
 その攻撃は、隕石だらけだった空を晴天へと変えてくれたのだ。

「…………。何者だ?」

 くるりと全員が『噴火』攻撃をした方を振り向くと、一匹の荒々しいバクフーンの姿があった。
 その隣にはもっと荒々しい格好のオヤジがいた。
 黒の手拭いを頭に巻きつけ、灰色のシャツとゆったりとしたパンツを穿いている以外はほぼ裸。
 顔は中年のように老けているが、体つきは若々しかった。

「何者かって?」

 そのオヤジは、親指と人差し指で顎を添えて、歯をきらっと光らせる。
 カッコよく決めているつもりなのだろうか?

「この俺様はスペシャルなおじ様だぜ」
「答えになってないな。……お前もこの柱を壊すために来たのか?」
「当たらずも遠からずってところだ」

 自称スペシャルなおじ様は、蒼い柱を指差す。

「シンプルに言うなら、その蒼い光の柱を見に来たってだけだぜ。本当にこれが原因でオーレ地方が固まって行っているのかってな」

 そうして、そのオヤジはバクフーンに手をついてマルクを見る。

「しかし、どうやらそれがその装置が原因のようだな。さらに、その5つの装置から出ている蒼い光の柱の結界のせいで外から出たり入ったりができねぇと来た」

 バクフーンが火炎放射を放つ。
 それを真正面でバンギラスは受け止める。
 だが、炎圧に負けてバンギラスがまさか押し飛ばされる。

「(凄まじいパワー……!?ダメージはたいしたことがなかったようだが、侮れない!)」
「改めて、その装置を打っ壊すぜ!」

 そういってから、同時にそのオヤジは後ろを振り向いた。
 ミライを見ているようだ。

「がっ……つぅ……」

 ジュンキのダメージはかなり大きかった。
 しかし、意識は失っておらず、まだ立ち上がろうとしていた。

「ジュンキさん、ゆっくりしていてください」

 そんなジュンキをミライは介抱する。

「しっかし、ミラちゃん。ますます美人になったよなー。母親似か?」
「そんな事はありませんよ」

 そのオヤジは馴れ馴れしくもミライと親しく話していた。
 ミライも別に嫌と思っていないところを見ると、どうやら顔見知りのようだった。

「とりあえず、このスペシャルな俺様がタッタと片付けてやっから、そこで休んで…………」

 ふと、そのオヤジは眉間にしわを寄せた。

「……あのバカはどうしたんだ?」
「あ……ええと……」
「まー、あのバカはアルティメットなバカだから、わからなくもないがな」

 と言って、オヤジは改めてマルクに向き合った。

「さあ、やっちまえ、バクフーン!」

 ザッと、足を踏み込んで一気にバンギラスへと接近した。

「……ミライ……」
「安心してください」
「あの……オッサンは……誰だ……?知り合いみたいだが……?」
「ええ。あの人は……」

 バンギラスが『諸刃の頭突き』で返り討ちにしようと企むが、バクフーンがそれよりも大きな『気合玉』を作り出してぶつける。
 その一撃で、両者とも吹っ飛ぶが、片方はかすり傷。
 そして、片方が大ダメージを負ってダウンした。
 かすり傷を負った方は、衝撃でトレーナーの元へと下がってきていた。

「コズマさんと言います。世界中の炭鉱を旅しているトレーナーで…………」
「バクフーン、次も行くぜ!!」

 コズマに掛け声をかけられて、バクフーンは雄叫びを上げた。

「ラグナくんのお父様です」



 第三幕 The End of Light and Darkness
 コールドペンタゴン⑧ ―破天荒オヤジのコズマvs盗空のマルク― 終わり



 不死身の親父は破天荒で破壊的でやっぱりエロい。


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Last-modified: 2015-11-24 (火) 22:51:14
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