ポケモン小説wiki
たった一つの行路 №224

/たった一つの行路 №224

 ―――地下三階の通路。

「ジュンキさん!?カズミちゃん!?」

 リクが驚いて、二人を見る。
 今目の前にいる2人は行方不明になっていたので、その驚きは相当のものだった。

「カズミちゃん……どうしてここにいるんですか!?SHOP-GEARでミライさんとお留守番していたのではなかったのですか!?」
「あの……おじいちゃんがね……わたしをむりやりここにつれてきたの……」

 そういって、ベソかきながらリクの足にしがみつく。
 そのカズミの頭を優しく撫でてやるリク。

「ジュンキお兄ちゃん!今までどこに行っていたの!?アイ、大変だったんだよ!」
「お前が勝手に先に進んだのが悪いんだろ!」

 叱り付ける様にジュンキはアイに言うが、アイは頬を膨らませて、ジュンキの耳を思いっきり引っ張った。

「イタタッ!!」
「ケライはアイの言うことを聞かないとダメなの!」
「(こいつ……)」

 ヒクヒクと笑顔を引きつらせるジュンキ。

「…………。ゴローニャ」
「……ツボツボ!『ストーンエッジ』!」

 ダークレイブと強大な岩が激突する。

「むっ!?」

 ツボツボのストーンエッジが勝り、ダークレイブを打ち抜いて、ゴローニャに当たった。

「凄い威力です……」
「ジュンキお兄ちゃん、こんなに強かったの!?」

 アイとリクがジュンキを見て驚く。

「今のうちに脱出するぞ」
「ジュンキさん、今地下四階でカレンさんがダークポケモンとわるいポケモンの製造ラインを破壊しに行っているんです。だから、ここであのシファーを足止めしなくてはいけないんです」
「足止め……それでお前らはここにいたのか……」

 納得するジュンキ。

「お前ら程度が足止め?……笑えないな」
「なっ!?」

 ドガドガドガッ!!

「うわっ!!」

 通路に向かって巨大な岩の連続攻撃が襲い掛かる。
 一つひとつが運動会に使う大玉転がし位の大きさで避けるのは至難の技だった。

「ツボツボッ!」

 集中砲火を浴びたジュンキのツボツボは、全員を庇ってダウンしてしまった。

「クックック……私のわるいフーディンの攻撃を打ち破ったのはツボツボの『パワートリック』があったからか。そいつがいなければ、貴様はもう敵ではないな」

 『ロックブラスト』を繰り出してきたゴローニャは、先ほど倒したフーディンの一撃と同様のストーンエッジを受けても平然としていた。

「あのゴローニャはなんなんだ!?硬すぎる!」
「相性面を差し引いても、あのゴローニャの防御は相当のもののようです」
「……リクおにいちゃん……」
「負けないんだから!」

 アイが最後のポケモンのマルノームを繰り出す。

「ジュンキさん、後どのくらい戦えますか?」

 リオルを繰り出しながら、リクは尋ねる。

「悪いが、こいつで最後だ」

 モンスターボールから飛び出したのは赤く煌くボディのハッサムだった。

「地下五階で幹部とか言っていた奴にかなり手間取ったからな……」
「とにかく全力で行くしかありませんね。カズミちゃんは危ないから離れていてください」
「え……うん……」

 カズミが慌ててその場から離れていくと同時に、ジュンキ、リク、アイが同じ敵を見定める。

「クックック……面倒だな。全力で全員、闇に沈めてやろう」

 ゴローニャを戻し、再びバシャーモを繰り出したシファーは不敵な笑みを3人に送ったのだった。



 たった一つの行路 №224



 57

 ガタン ゴトン

 ガガガガッ

 ドゴゴゴッ

 バゴゴゴッ

 ズガガガッ

 この階では、ベルトコンベアーが作動する音や、ポケモンたちの雄叫びが聞こえてきていた。
 白衣を着た十数人の研究員が、あっちこっちに忙しそうに移動して、プログラムを起動させ、ポケモンたちの言うことを聞かせたりしていた。
 ダークポケモンを生成するのは、シャドーがやっていた方法とほぼ同じ。
 モンスターボールにポケモンを入れて、ダークポケモンの生成装置に入れる。
 その生成装置とは、暗闇に閉じ込めてポケモンを内向的にさせて、自我すなわちココロを失わせるものである。
 しかし、CLAW<クラウ>が作ったダークポケモン生成装置は、シャドーが作ったものと比べると、時間がかかるものであった。
 開発に携わった人間がシャドーの元幹部のアルドスしかいなく、しかも彼も工場にまかせっきりだったというのだから仕方があるまい。
 一方のわるいポケモンの方は、ココロを改良するダークポケモンと比べると主に外見の方を改良するものだった。
 例えば、武器のハサミが大きくなったり、翼が変色したり、中には体の色が全身変化するものもいた。
 そのおかげで普通のポケモンでは真似できない強力な技を撃たせることに成功した。
 その原動力となっているのが、パワーアップアイテムによる限界突破の注射だった。
 マックスアップ、タウリン、ブロムヘキシンなどのパワーアップアイテムと組織が開発した強化エキスを混ぜて注射することにより、その部分に顕著な変化をもたらすのだ。
 また、わるいポケモンと呼ばれるその要因は、ダークポケモンと違い、ココロが閉ざされているのではなく、心が悪意に染められているのである。
 ゆえに攻撃的で狂暴なパワーを発揮し、理性を欠落させた状態で人間をも襲うのである。
 欠点といえば、体力が通常のポケモンと落ちてしまい、耐久面で不安要素が出ることであった。

“そういえば、あのシロのしもべになった女のポケモン……アレはうまく言ったのか?”
“ギリギリ大丈夫だったみたいよ。完全なわるいポケモンにはならなかったけど、理性を欠落させるくらいはできたみたいよ。時間もなかったしね”

 パソコンの前で、研究員の男女がコソコソと喋っている。

“シファー様の為に、ダークポケモンをさっさと作らないと……”
“さぁ、そのオコリザルの拳にエキスを注入しなさい”
“あと、あと3時間でここに入っている1ダース分のダークポケモンが完成する……”

 それ以外の研究員もキリキリと働き続けていた。
 この部屋だけで男女7人の研究員が働き続けていた。
 そのとき、そこそことメガネをかけた研究員がちょっと偉そうな研究員に話しかけた。

“主任。侵入者がいるそうですが、ここは大丈夫なのですか?”
“大丈夫に決まっているだろ。上の階にシファー様もいるんだ。まさかここまで侵入してくるやつはいまい”

 自信満々にその主任と呼ばれた男は頷いた。

「『ハイドロカノン』!!」

 だが、この一言と衝撃によって、この平和だったこの場の活動は凍りつくことになる。

“きゃあっ!!”
“侵入者!?”
“ちょ、主任!?”

 強烈な水流が扉を貫き、1つのダークポケモンを作っていた装置を破壊した。

「ここはBフロアの……ダークポケモンを作っているフロア?」

 入ってきたのは、ツインテールの女性、カレンだ。
 カメックスとともに、このフロアに乗り込んできた。
 辺りを見渡して、ふと地図を見つけた。

「地下四階は、ダークポケモンの部屋が二部屋、わるいポケモンの部屋が二部屋なのね。全ての部屋を破壊できれば……」
“お前!一体どこから入ってきた!?”
“ただでは済まさないよ!”

 主任の男と、メガネをかけた男が、モンスターボールをとって前へ出た。
 中から飛び出てきたのは、ケンタロスとキリンリキだ。
 ケンタロスの方は、角が見るからに長く、キリンリキの方は一見普通のポケモンだった。

「そのキリンリキ……ダークポケモンね」

 しかし、カレンには普通のポケモンとダークポケモンを見分ける力がある。
 すぐさま見切って、アリアドスを繰り出した。

“『ダークレイブ』!”
“『つのでつく』だ!”

 カメックスとアリアドスに2匹のポケモンが襲い掛かる。
 ケンタロスの角で突くはカメックスに襲い掛かるのだが、殻にこもって弾き返した。
 一方のキリンリキの攻撃は、アリアドスの『シグナルビーム』が相殺した。

「カメックス、『ハイドロカノン』!!」

 二つのハイドロキャノンから出た水流が、キリンリキとケンタロスを吹っ飛ばした。

“バカな……わるいポケモンとダークポケモンがこんなにあっさりと……!?”
「アリアドス!」

 そして、その隙を狙って、クモの糸を周りに乱れ撃ちした。
 あたふたと混乱しているそのフロアを制圧することに成功した。

“くそっ……”
「よし、この調子で早く他の3フロアも攻略しないと。あのシファーという奴が、みんなを倒してしまう前に……」

 カレンはカメックスとアリアドスを戻して、急いで近くのDフロアへ向かって走り去っていった。



 58

 ―――地下三階。通路。

 ドゴンッ!!

 赤い閃光がバシャーモにハサミを振り下ろすが、素手で受け止められてしまう。
 軽く手を振ると、ハッサムは後退させられる。
 転がりながらも何とか体勢を立て直すハッサムを尻目に、リオルがエネルギーを纏ったパンチを繰り出す。
 ぶつけた相手を混乱させる、『爆裂パンチ』だ。
 しかし、その攻撃をひとっ跳びでかわし、ヘドロ爆弾で自身を狙ってきているマルノームの攻撃を足技で弾き返し、着地してから『ブレイズキック』でなぎ払った。
 壁にぶつけられたが、マルノームの柔和なボディにダメージはそれほどない。

「リオル、『波動弾』!」
「バシャーモ、『ダークファイヤー』」

 まるで弓を射るかのように炎を形作り、そこから黒い炎を放った。
 リオルの打ち出した波動弾は、あっさりと貫かれて、リオルを一発で倒してしまった。

「……っ! リオル!」

 リクがリオルをボールに戻して、代わりに体力が限界に達しているニドキングを繰り出した。

「リンリン、『ダストシュート』!!」
「ハッサム、『燕返し』だ!!」

 強烈な毒攻撃を撃ち、バシャーモがかわしたところを避けらない一撃を決めようとしていた。

「ふん」

 ドガッ バキッ

「弾かれた!?」

 炎を纏った腕でダストシュートが弾かれ、ブレイズキックで燕返しごと押し切られてしまった。

「『ダークファイヤー』」
「!!」
「みんな、かわせ!」

 ジュンキがハッサムにかわす指示を出すとともに、全員にかわすように大声で呼びかける。
 アイとリクもそれに反応して、攻撃をかわす。

 ドゴオォォォッ!!!!

「壁が貫通した!?」
「さっきのリオルが倒された一撃といい、何て威力でしょうか……!」

 リクとジュンキは壊れた壁を見て、息を呑んだ。

「クックック」
「……! お兄ちゃん!」

 間髪いれずに黒い炎の矢が襲い掛かった。

「ハッサム、かわせ!」
「ニドキング!」

 完全に防戦一方だった。
 闇の炎に対抗できずに避けるしか方法がなかった。
 しかも、接近してもハッサムの攻撃でさえいとも簡単に弾かれてしまう。
 このままでは全滅は時間の問題だった。

「クックック……これをかわすのなら、数を増やしてみようか。『トリプルダークファイヤー』!!」
「っ!!三本同時攻撃!?」
「アイちゃん、ジュンキさん!」

 ドゴドゴドゴォンッ!!!!!!

 今度は3つの黒い炎の矢を一度に放ってきた。
 マルノーム、ハッサム、ニドキングに狙いをつけて逃さなかった。
 爆炎が立ち込めて、少しの間視界が悪くなる。
 すると、地面を伝って衝撃波がバシャーモに襲い掛かってきた。

「どうやら、防いだようだな」

 ぴょんと飛んでニドキングの『大地の力』を回避。
 そして、着地した瞬間にハッサムが『メタルクロー』、遅れてニドキングが『角ドリル』で突進していく。

「迎え撃て」

 バキドガッ!!

 2対1の接近戦だ。
 しかし、ハッサムのハサミとニドキングの角と腕を使った攻撃を、シファーのバシャーモは足と手をバランスよく使って捌いていく。
 2匹の攻撃はまったく当たる気配がなかった。
 当たる直前で上体を反らしてかわしたり、急所に入るところをジャンプで後ろに回れ込んだりして、まるで相手を弄んでいるようだった。
 そして、炎のパンチとブレイズキックで徐々に体力を減らされているのは、ニドキングとハッサムの方だった。

「お兄ちゃん達!散って!」
「ん?」

 アイが大声で叫ぶ時、ちょうど爆煙が晴れる頃だった。
 その先には力を最大にまで蓄えたマルノームの姿があった。
 ニドキングが右にかわし、ハッサムは最後に燕返しで、バシャーモに攻撃を防がせてその場に釘付けにすると、即座に地面にしゃがみこんだ。

「行って!リンリン!『吐き出す』攻撃!!」

 マックスパワーのエネルギー弾がバシャーモに向けて放たれた。

「(決まった!)」

 ジュンキをはじめ、誰もが攻撃を避けられないと思っていた。

 ドゴ――――――ンッ!!!

 間違いなくバシャーモに攻撃が命中した。

「クックック……こいつに一撃与えるとは、なかなかやるな」
「……!」
「ウソ……マルノームの最大攻撃があまり効いてない……?」
「あの一撃で倒せないないのか!?」

 シファーのバシャーモは確かにダメージを受けているが、まだまだ充分に動ける体力を持っていた。

「さっきの『トリプルダークファイヤー』をそのマルノームが『守る』で防いで、2匹が時間を稼いでいる間に『蓄える』と『吐き出す』のコンボで私のバシャーモを倒す。作戦はよかったようだが、いささかパワー不足だったようだな」

 ジュンキがぎゅっと拳を握り締めると同時にリクが2人に言う。

「もう一回……もう一回、さっきので行きましょう。攻撃が全然効いていないわけではないのですから」
「……そうだな」
「うん」

 頷いて、3人がもう一度作戦に出ようとした。

 ピリリリリ

 誰かのポケギアに着信が入った。
 3人がリクを見るが、ピッと受信をする音が聞こえたのは、シファーの方からだった。

「何?地下四階の研究フロアがほぼ壊滅状態?後わるいポケモンの生成フロア1つで全ての施設が崩壊……?」

 シファーが意外な声をあげる。

「女一人?たった一人に一体何をやっているんだ。アルドスはどうした?……何?地下五階でポケモンと共に気を失っている?」

 その話を聞いて、ジュンキが少しだけニヤッとした顔をした。

 バキッ!

 シファーは静かにポケギアを粉々に握りつぶした。

「確かカレンと言ったか。あいつだな。あいつが我々の工場を潰したんだな?」
「そうだとしたら、どうするって言うんだ!?」

 ジュンキが相手の怒りをこらえた口ぶりに怯まずに、答える。

「そいつも含めて、貴様ら全員葬ってやる。もう遊びは終わりだ!」
「っ!! 来るッ!」
「ニドキング!『大地の力』!」
「リンリン!」

 三人ともシファーのバシャーモから目を放さずに、攻撃に転じた。
 ハッサムは電光石火からの燕返し。
 マルノームはダストシュート。
 ニドキングはリクが指示を出した通りに攻撃を繰り出し、全ての攻撃はバシャーモを打ちのめそうとしていた。

「『ダークインパルス』!!」

 シファーが指示を出した。

「……え?」
「……!?」
「っ!?」

 次の瞬間、3人の意識は吹っ飛んだ。



「リクおにいちゃん……?アイおねえちゃん……?ジュンおにいちゃん?」

 戦いが終わるまでリクに隠れているようにと言われたカズミがかすれた声で、三人の名前を呼びつつ、リクに近づいていく。

「リクおにいちゃん……」

 ぺたぺたとリクの頬に触れるカズミ。

「くっ……」

 辛うじて意識を取り戻したリク。

「カズミ……ちゃん。……これは……!!」

 周りに広がる黒き炎。
 そして、無残にも倒れているハッサム、ニドキング、マルノーム。
 ジュンキとアイも自分と同じように力なく地面に倒れていた。

「きゃあっ!」
「え?カズミちゃん?……がっ!?ぐふっ!!」

 仰向けになっていたリクは何かに蹴り起こされて、お腹を思い切り踏みつけられた。

「SHOP-GEAR。残っていたのが雑魚だけだと思って甘く見ていた。貴様らは生かしておかん!」
「ぐあああああっっ!!!」

 グリグリと力をこめて、リクを踏みつけるシファー。

「やめてー!」
「うるさい」

 ドゴンッ!!

「っ!!」

 バシャーモがカズミを蹴り飛ばし、一発で気絶させてしまった。

「カ……ズ……ミ……ちゃ……ん……」

 あまりの痛みにリクは気を失っていく。

「クッ。こんな時に、ナポロンもベルもどこへ行っているんだ。あいつらがここにいればこんな事態にはならなかったはずだ」

 リクから足を離して、手を挙げてバシャーモに指示を出す。

「貴様ら全員、闇に墜ちろ。『ダークインパルス』!」

 リクたちを全滅させた技が、再び襲いかかろうとしていた。
 そのとき……

 ドゴオォォンッ!!

「っ!?」

 バシャーモの手に向かって一つの技が、命中した。
 それで、ダークインパルスという技は不発に終わってしまった。

「この技は……!!」

 シファーは驚きの表情、怒りの表情の二つを出して技が撃たれてきた方向を見た。
 黒いフード付きパーカーを着て、黒いGパンのズボンにメタルのチェーンをぶら下げ、黒いブーツを穿き、白いシャツに黒いネクタイを締めた男が堂々とシファーに向かって歩いてきていた。
 隣にはゲンガーの姿がある。

「…………」
「……クロノ……一体今までどこに行っていた?そして、これはどういうつもりだ……?」

 一片にクロノに質問を浴びせるシファー。

「ボスであるこの私に何も告げずに外に出るとは、どういうつもりなんだ?こんな大変な状況になるまで何故戻らなかったんだ?答えろ」
「ゲンガー」
「!!」

 ズドンッ!!

 シャドーボールがバシャーモに襲い掛かる。
 ブレイズキックで防ごうとしたが、爆発で体勢を崩されて転がっていくバシャーモ。

「貴様……バシャーモ、『ダークインパルス』!!」
「ゲンガー、『シャドークライシス』」

 チュドゴォォォンッ!!!!

「なっ……? バカな……バシャーモの最大の技が、相殺されただと……?」
「ゲンガー」

 ドゴォンッ!!

「バシャーモッ!?」

 普通のシャドーボールが無防備のバシャーモに命中した。
 普通のとは言っているが、それはクロノのゲンガーにとっての普通のサイズだった。
 つまり、他の一般的なシャドーボールと比べたら2倍くらいの大きさはある。

「『シャドークライシス』という、強大なシャドーボールの大技を使用してなお、溜めなしに強力な技を打つだと!?」
「…………」
「クッ……『ダークファイヤー』!!」

 闇の炎の矢をゲンガーに向かって放つ。
 しかし……

「なっ!?」

 ゲンガーもバシャーモの真似をして闇の炎の矢を撃ってきた。
 攻撃はぶつかり合ったが、バシャーモの矢は打ち消されて、ゲンガーの矢がバシャーモを打ち抜き、ダウンさせた。

「……何故だ……闇の王であるはずのこの私が闇の力で何故貴様に負ける?」
「あんたの闇の力は俺の足元にも及ばない。むしろ、今の技は闇の力をまったく使っていない」
「何?」
「『シャドーボール』を形状変化させて『鬼火』を含ませただけのまがい物だ」
「貴様……俺の仲間に入りたいといって……俺の組織の中で何かを企んでいたな……?」

 シファーのセリフにクロノは何も言わなかった。

「お前の役目はもう終わった」
「クックック……ふざけるんじゃない!質問に答えろ!」

 シファーは激昂してゴローニャを繰り出した。

「『ダークレイブ』!!」
「それとひとつ間違っていることがある」

 ゲンガーが前に出て攻撃を迎え撃とうとしている。

「『シャドークライシス』という技は、中級程度の技に過ぎない」
「な……?」
「『シャドースクリュー』!」

 まるでドリルのようなゴースト系のエネルギーの一撃を放つ。
 ダークレイブがあっさりと粉砕され、そして、ゴローニャを貫通して一撃で倒してしまった……。



 第三幕 The End of Light and Darkness
 Evil box in the dive⑨ ―黒の男の裏切り― おわり



 真深の闇、動く。


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-09-27 (日) 16:55:54
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.