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たった一つの行路 №223

/たった一つの行路 №223

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「ブーバーン、『大文字』!」
「リオル、『真空波』です!」
「ルリルリ、『アクアテール』!」

 ドガッ! バキッ! ボゴッ!

 地下三階の通路で、3人の快進撃は続いていた。
 このフロアにもCLAW<クラウ>のトレーナーがいたのだが、即席ながらも見事な連携で苦戦しながらも次々と倒していく。
 苦戦の要因は、相手が必ず一匹はダークポケモンかわるいポケモンを使ってきたためであるが、トレーナーの総合的な力量はカレンがいる分若干勝っていた。

“ダメ……このままじゃ研究フロアの地下四階へ侵入させてしまうわ……”

 すでに敗れた女団員は、次々と侵入していく3人を指を咥えて見ている。

“ここにいる幹部はアルドス様だけ……そうなると後頼れるのは、この階にいらっしゃるあの方しかいない……”
「ルリルリ、『捨て身タックル』!!」

 ドゴォンッ!!

“ぎゃあっ!!”

 この一撃で、地下三階を守っていた最後の一人がダウンした。
 アイはニコッと笑って、マリルを戻す。

「カレンさん、アイちゃん、この部屋の先に階段があるはずです!」
「わかった。一気に突っ込もう!」

 リクとアイを筆頭に、Bと書かれている扉へと突っ込んだ。

「……バンダナのお兄ちゃん。階段なんてないよ」
「……本当ですね」

 アイに指摘されて、リクは少し困った顔で頷いた。
 しかし、代わりにその先にAと書かれている扉があった。

「じゃ、きっとこの先に階段があるんだね!」
「ちょっと、アイちゃん!待って!」

 なんの躊躇もなくアイはその先へと足を踏み入れてしまうのを見て、カレンとリクも追いかけていく。

「この部屋は……」

 辺りを見回すと、少し暗い部屋だった。
 正確には趣味が暗いというべきだろうか。
 絵が飾っていたり、物が置かれていたりするが、ほとんどが黒を基調としたもので、明るい色はほとんど無かったためであろう。
 一応普通に明かりがあるために、周りが見えないわけではない。

「クックック……」

 その先で、ふと笑い声が聞こえてきた。
 3人は警戒してモンスターボールを構える。

「よくここまで来たな。褒めてやる」

 すると、豪華なソファに腰をかけ、ブランド物のスーツに身を包んだ50代半ばの男がいた。

「(何このおじさん……ヤバイ気がする……)」

 カレンは自然と息を呑んで、ボールを強く握り締める。

「ゴメンなさい。シャトレに騙されてしまったようです」

 リクが険しい顔で言う。
 しかし、リクがそう言わなくても他の2人はこのフロアに階段がないことに気付いているようだった。

「(あのタキシードのおじさんと同じくらい……、ううん、それよりももっと危険な感じがする)」

 カレンと同様アイも、対峙している男の強さを感じ取っていたようだ。

「あなたは一体何者ですか?」

 リクの問いにガタッと男は立ち上がった。
 身長は175センチくらいで、この中の誰よりも背が高いようだ。

「私の名前はシファー。CLAW<クラウ>を作った者だ」
「……! ということは、この騒動の元凶ってワケね……!」
「その通り。ダークポケモンとわるいポケモンの両方を使ってオーレ地方を征服し、その後は世界を征服する」
「そんなことは、このアイがさせないんだから!」
「特別に3人でかかってくることを許そう」
「カレンさん、アイちゃん、全力で行きますよ!」

 リクの問いかけに、ポケモンを繰り出して応じた。

「オオスバメ、『燕返し』!!」
「マーマー、『シャドークロー』!!」
「ドードリオ、『ドリルくちばし』です!!」

 3匹とも突進技で、シファーに向かっていった。

「クックック……」

 シファーは笑った。
 そして、モンスターボールからポケモンを出した。
 姿を見せたのは、バシャーモだ。
 その腕の炎が黒く濁った時……

 ズドォォォォォ―――――――――――――――ンッ!!!!

「っ!」
「やっ!?」
「きゃあっ!!」

 黒い炎で、繰り出した2匹のポケモンが一瞬にして地面に伏せた。

「一体何が起こったの……?」

 アイは隣にいるリクに問いかけるが、彼も信じられない顔をしてドードリオを戻す。

「カレンさんはどこですか!?」

 アイとリクの間に居たはずの、カレンが居なかった。
 2人とも後ろを振り向くと、そこにはカレンを守って隣のBフロアに吹っ飛ばされたオオスバメの姿があった。

「カレンさん!」
「リク」

 近づいてきたリクに耳をつける。
 すると、ちょっとリクは赤くなった。

「このまま3人で束になっても、あいつを倒すのはかなり厳しいかもしれない。だから、あのシファーを足止めして、その間に地下四階の研究フロアを壊しに行くのよ」
「……足止めですか……?」
「その足止めの役は私がやるから、リクは早くこのフロアから離れて」

 立ち上がって、次のポケモンを繰り出そうとするカレンをリクは制した。

「リク?」
「その足止めの役は、僕にやらせてください」
「でも……」
「カレンさんがいれば、確かにシファーを足止めできるかもしれません。けれども、地下四階にはまだ強い敵がいるかもしれません。そう考えると、カレンさんが進むのが適任だと僕は思います」
「確かにリクの言うとおりだけど……」
「それに……」

 リクは赤くしてカレンから目をそむけて言った。

「これでも僕は男です。意地を張らせてください」
「…………」

 真剣かつ恥ずかしげなリクの表情を見て、カレンは首を縦に振った。

「わかったわ。頼んだわよ」

 そういって、そのフロアから出て行った。
 カレンを見送った後、リクはモココを繰り出して、アイの前に立った。

「アイちゃんもカレンさんの後を追ってください!」
「なんで?」
「なんでって……」

 後ろを振り向くと、アイが自分を睨みつけていた。

「ケライを置いていけるわけないでしょ!」
「いつの間に僕はケライになったのですか!?」

 と、一応リクはツッコミを入れる。
 そして、ふとアイの性格を考えて、リクはこれ以上言うのをやめた。

「わかりました。とにかく、あの人を全力で倒しますよ」
「その意気よ!」

 アイも次のポケモンであるナゾノクサを繰り出した。

「3人じゃないのか。まぁいい。かかって来い」



 たった一つの行路 №223



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 地下三階の廊下で1つの足音が聞こえてくる。
 トットットという素早い音を出している主は、走っているということがわかるだろう。

「(地下四階への階段はいったいどこに……?)」

 片っ端から扉を開けて行くカレン。
 今まで開けた扉は、EとFと書かれた扉だ。
 Eの扉は、たくさんのベッドやハンモックがある団員達が寝泊りする詰め所のような場所だった。
 幸い、このフロアの敵は倒してしまったので、その場所に敵はいなかった。
 Fの扉の先には、甘い香りを漂わせた誰かの部屋だった。
 階段ではない事を知り、その部屋を確認せずにカレンはすぐにその場を立ち去った。

「(リク、アイちゃん……私が戻るまでこらえていてね)」

 ドガッとCフロアの扉を開けて中に突入した。
 そこは何もない部屋だった。

「(物置……かな?)」

 一通り周りを確認してから、部屋を立ち去ろうとする。

 ブーッ!!

「え?きゃあっ!!」

 そのとき、ブザーが鳴って、突然地面が抜けてしまった。
 急なことにカレンは、何もできずに真っ逆さまに落ちて行ったのだった。



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「ナゾナゾ!『ヘドロ爆弾』!」

 紫色の濁った液体をバシャーモへと向かって飛ばす。
 それを見て、シファーが手を伸ばすと、バシャーモは手に黒い炎を纏わせてヘドロ爆弾をあっさりと防いだ。

「(それじゃ、次は……)」
「っ!! モココ、『光の壁』です!!」

 アイが考えているうちに、バシャーモがその手の炎をダッシュしながら撃って来た。
 その黒い火炎弾のような物を、リクのモココが防御しようとする。

「……!! モココ!!」

 光の壁がほとんど意味を成さなかった。
 確かに壁で攻撃を防いだようだが、それでもモココの体力で防ぎきれる一撃ではなかった。
 あっさりと、目を回してダウンしてしまう。
 そのとき、パラパラとバシャーモの周りにさらさらと粉が降りかかっていく。
 ウトウトとバシャーモは眠りを催してきた。

「(……ナゾノクサの『眠り粉』か)」
「ナマズン!『泥爆弾』です!!」
「甘い」

 とても歳をとっているようには見えないボール捌きで、バシャーモを回収し、別のポケモンをバトルに繰り出した。
 泥爆弾を受けてしまうが、ダメージはそれほど受けていないようだ。

「何を出したっておんなじだよ!ナゾナゾ、『眠り粉』!」
「ふっ」

 シファーが笑うと、その眠り粉は自らが巻き起こした風で吹き飛ばされた。
 そこから、一気にナゾノクサを切り裂いた。

「ナゾナゾ!?」
「(今のは『黒いリーフブレード』みたい……。このポケモンはわるいポケモンとダークポケモンのどちらなのでしょうか……?)」

 冷静になって、ジュカインを観察し、次の相手の出方を窺うリク。

「(『眠り粉』を防いだのは、『かまいたち』でしょうね)」

 ジュカインがリクの方を向いた。
 狙いは草系の攻撃がめっぽう弱いナマズンであることをすぐに察して、ナマズンを戻す。
 だが……

 シュンッ! ズゴッ!!

「……がっ!?」

 電光石火の体当たりで、リクはシファーの自室であるAフロアからBフロアへと吹っ飛ばされた。
 お腹を抑えながらも、ベイリーフの葉っぱカッターで反撃に出る。

 スパッ! スパッ! スパッ!

 黒く染まったリーフブレードで、いとも簡単に葉っぱが細切れにされてしまう。

「ニドニド!」

 ジュカインの背後から、どくどくのキバで仕掛ける。
 がぶりと噛み付いて、ジュカインに喰らいついた。
 がむしゃらに振りほどこうとするが、なかなかニドリーナは離れなかった。

「今です!『のしかかり』!!」

 ベイリーフはジャンプして、ジュカインを踏みつけようとする。
 攻撃を受けないようにニドリーナが口を離すが、その間にもジュカインはニドリーナを振り回していて、壁に激突した。

 ドゴッ!!

 全体重をかけてのしかかりだ。

「えっ!!」

 ジュカインが膝を衝きながらも黒いリーフブレードをクロスさせて攻撃を受け止めたのだ。

「(このままだと、吹っ飛ばされてしまいます)」
「吹き飛べ」

 ブンッとブレードを振りぬくと、ベイリーフは横のベクトルに吹っ飛ばされる。
 ダメージはそれほどないようだが、力の差を見せ付けられた。
 
「ニドニド!」
「ジュカイン」

 ジュカインに向かってウインクを飛ばすニドリーナ。
 電光石火で襲い掛かろうとしたが、まったく逆のほうへ行き、壁に衝突した。

「……!(『メロメロ』か!?)」

「ここですね!『つるのムチ』!」

 ジュカインが怯んだ隙に、ムチでぐるぐるに巻きつけて、そのまま地面へと叩きつけた。
 立ち上がろうとするジュカインだが、真っ青な顔をして地面に倒れた。

「(毒のダメージで倒れたか……) クックック……やるじゃないか。カイリキー!」
「ニドニド、『毒針』!」
「ベイリーフ、『リフレクター』です!」

 遠距離攻撃と、防御を仕掛けるが、カイリキーは四本の腕で毒針を捌き、ベイリーフを壁ごと吹っ飛ばした。

 ドゴンッ!!

「むっ!?」

 だが、ダメージを受けたのは突っ込んだカイリキーも同じだった。

「『カウンター』です」

 ベイリーフがふらふらと立ち上がる。
 一方で、ニドリーナが起き上がろうとするカイリキーに向かって、のしかかりを決めようとする。
 ところが、2本の腕で受け止められてしまい、残りの2本の腕で連続パンチを仕掛ける。
 最終的に、ニドリーナは叩きつけられてダウンしてしまった。

「『エナジーボール』です!!」

 ドゴンッ!!

 何故かカイリキーはふらふらしてガードもできずに攻撃を受けてダウンした。

「やられる際にニドリーナの『おだてる』をして、混乱させるとはなかなか上手いな。少年の方もポケモンのレベルが弱いなりに工夫して戦っているようだ」

 シファーは余裕の表情をしていた。

「(さっきのバシャーモは、ダーク系の技みたいでした。一方のジュカインとカイリキーは耐久面から言って悪いポケモンと見て間違いないでしょう。それがまだあと3匹も残っているなんて……)」

 リクは相手の底知れぬ強さに手を震わせる。

「これで2匹倒されたが……。これまでだ。君たちはもう一匹も倒すことはできない」
「そんなことはないんだから!ルリルリ!」

 呼ばれてボールの中から登場したマリルが、水を纏ってシファーへと襲い掛かる。
 『アクアジェット』だ。

 ドゴッ!

「クックック……」
「えっ!?」
「効いてません!?」

 その前に、シファーに攻撃は届いていなかった。
 変わりに攻撃を受け止めたのは、丸いごつごつした岩のポケモン、ゴローニャだった。
 そのゴローニャが、アクアジェットを両手で受け止めて、攻撃を防いだのだ。

「(水タイプの技を受けてほとんどダメージを受けてないですね)」
「ルリルリ!『アクアテール』で振りほどいて!!」

 水袋の尻尾を振りかざして、ゴローニャへとダメージを与えようとする。
 同時にゴローニャはベイリーフに向かってマリルを投げ飛ばした。
 尻尾はゴローニャを掠めた程度で、マリルはボールのようにベイリーフにぶつかった。

「『ダークレイブ』」
「ベイリーフ!『エナジーボール』!」

 黒いエネルギー弾と緑のエネルギー弾が衝突する。
 リクの計算では、ゴローニャの特殊攻撃は高くないから、悪くても相殺でいけると考えていた。

 ドゴンッ!!

 その読みはリクの計算通りになったと言えた。
 心の中でよしと頷いて、ソーラービームの指示を出す。

「アイちゃん、フォローをお願いします」
「クックック……準備させる暇なんて与えないぞ」

 ゴローニャのほかにもう一匹ポケモンを繰り出してきた。
 そのポケモンは、テレポートでベイリーフの後ろへと回り込んだ。

「(速……!)」
「『破壊光線』!」

 リクが気づいた時には攻撃が放たれていた。
 ほぼゼロ距離で放たれた破壊光線はベイリーフと、さらにその先にいたマリルをも一撃でダウンさせてしまった。

「『水の波動』です!!」
「ブイブイ!『リーフブレード』だよ!」

 破壊光線で隙だらけになったフーディンを、リクの慌てて出したナマズンとアイのリーフィアが討ち取ろうとする。

「クックック……こっちを忘れてるぞ」
「……!」
「しまった!」

 2人が振り向いた時には、ゴローニャの『ダークレイブ』がナマズンとリーフィアを吹っ飛ばしていた。

「……! ナマズン、『守る』です!」

 フーディンの『エナジーボール』が当たった。
 しかし、事前に察知した防御で無傷で攻撃を防ぐ。

「特性の『危険予知』か。しかし、連続攻撃で耐え切れるか?」
「くっ……」
「『種爆弾』だよ!!」

 一方のアイはゴローニャを必死に攻撃するものの、素手で防がれてしまう。

「(あのゴローニャ……打撃技が全然効いてない……!)」

 そのことを二人は確認して、目を合わせる。
 互いにアイコンタクトの意味を理解して、指示を出す。

「『ハイドロポンプ』です!!」
「『電光石火』!!」
「むっ!?」

 ドガッ!! バシャアッ!!

 2人とも、対象の相手をスイッチしての攻撃だ。
 つまり、ナマズンはフーディンからゴローニャに、リーフィアはゴローニャからフーディンに標的を替えたのだ。
 その作戦は見事成功し、フーディンにリーフィアの攻撃が当たり、ゴローニャに水攻撃が炸裂している。

「(これで残り2匹です)」
「フーディン、力を解放して押しつぶせ」
「え?」

 シファーの指示で、フーディンのスプーンの色が金色に変わり、体の色は黒くなっていった。
 すると、電光石火で吹っ飛ばされながら、フーディンが圧倒的な威力でリーフィアを地面へ叩きつけた。

「ブイブイ!?……きゃあっ!!」
「アイちゃん!?」

 さらに、リーフィアを持ち上げて、アイの方へと投げつけた。
 抱きかかえる形で、ゴロゴロと勢いよくフロアを移動して、通路まで飛び出してしまった。

「ゴローニャ、『ダークレイブ』全開」

 一方、ゴローニャにハイドロポンプが命中していなかった。
 ダークレイブが、寸前のところでハイドロポンプを押しとどめて攻撃を防いでいたのだ。
 そして、ゴローニャが力を解放した時、ハイドロポンプを打ち破り、ナマズンを一撃で仕留めてしまった。

「そんな……!!」

 リクは明らかに焦りの色を見せていた。

「(残りのポケモンではフーディンにまったく対抗できません……どうすれば……)」
「『テレポートブラスト』!」
「っ!」

 技が聞こえてきたのに反応して慌てて、持っていたニドキングを繰り出した。
 勢いよく飛び出してきたのだが、相手の瞬間移動しながらのエスパー攻撃にまったく対抗できずに、アイ同様、AフロアからBフロアを経由して通路に吹っ飛ばされてしまった。

「大丈夫ですか?」

 ニドキングとアイの両方を気遣うリク。
 そんな自分も吹っ飛ばされた際に傷を負っているのだが。

「こんなの……どうってこと……ないよ……」

 どう見ても強がっているようにしか見えないアイ。
 しかし、まだ闘争心は折れていないようで、リーフィアとともに立ち上がる。

「倒してやるんだから!」
「まだやるというのか……」

 コツコツと革靴の足音を立てて、シファーがゆっくりと部屋を経由して近づいてくる。
 隣にはダークゴローニャ、先頭にはわるいフーディンが技を撃つ構えを見せていた。

「1年という短い間で、私は世界を統べるために闇の力を極めてきた。これがその成果の結晶である、わるいポケモンとダークポケモンだ。さぁ、この力の前にひれ伏せろ!」
「そんな力に、僕たちは絶対屈しません!」
「闇なんかに、負けないもん!」

 それぞれのエースであるニドキングとリーフィアがフーディンに突っ込んでいった。

「無駄だ、『マインドショック』!」

 ドゴンッ!!

「ブイブイ!?」
「ニドキング!?」

 何が起きたか、2人にはさっぱりだった。

「(見えない何かが弾けて、ダメージを受けたようにしか見えませんでした……一体今のはなんでしょう……?)」

 力を振り絞って、ニドキングとリーフィアは起き上がる。
 どちらも立っているのがやっとのようだ。

「くたばれ、『テレポートブラスト』」
「……っ!(ダメだ……攻略の糸口が見つかりません……ユウナさんさえいてくれれば……)」

 自分の力のなさをくやしみ、目を瞑るリク。

「負けちゃイヤ!『リーフブレード』!!」

 あきらめたリクに対して、アイはテレポートしながらのフーディンに食って掛かる。
 だが、攻撃は当たらず逆に返り討ちに遭って、リーフィアは倒されてしまう。
 光線攻撃がアイとリクにも命中しようとしていた……

 バキンッ!!

「え?」

 目の前で、攻撃が屈折して逸れていった。
 正確には当たって逸れたようだが。

「『ストーンエッジ』だっ!!」

 攻撃を弾き飛ばしたその硬い殻に覆われたポケモンは、強大な岩の破片をフーディンに向かって投げつけた。

「(かわせない……)『サイコキネシス』!」

 テレポートブラストの反動か、回避ができず、仕方がなく攻撃を逸らそうとした。
 しかし、その一撃にはとてつもない力が秘められていて、びくともしなかった。

 ドゴォンッ!!!!

 フーディンにまともに命中し、黒い色に変色していたフーディンは元の色に戻って、ダウンした。

「今のは……」

 リクは慌てて振り向いた。
 そこには白いTシャツに緑のだぶだぶのズボンのメガネをかけた男がこちらを見ていた。

「脱出しようと思ったら、まさかリクに会うとは思わなかったよ」

 隣には、手を繋いでいる幼い女の子の姿があった。
 そう、2人は地下五階から脱出している途中のジュンキとカズミだった。



 第三幕 The End of Light and Darkness
 Evil box in the dive⑧ ―SHOP-GEAR連合vs『闇の帝王シファー』― おわり



 全てが闇に染まる。終焉の始まりが近づく。


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Last-modified: 2015-09-27 (日) 16:55:03
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