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たった一つの行路 №222

/たった一つの行路 №222

「SHOP-GEARのジュンキだと……?そんな奴いたか?」

 アルドスは腕を組んで首をかしげた。

「ラグナ、ユウナ、バンの3人は有名だから知っているが、ジュンキという名前は聞いたことがない」
「くっ……!?」

 一瞬、悔しそうな顔をするジュンキ。
 だが、次の瞬間には、ふっと笑ってみせた。

「それなら、ここで俺が活躍して、有名になってやる。覚悟しろ!」

 そういって、ジュンキはさらにカイロスを繰り出した。

「貴様のような馬の骨に負けるわけには行かない!ガルーラ!フーディン!」

 モルフォンとフーディンが光線攻撃を打ち合い、カイロスとガルーラが組み合った。
 その激突は、その通路全体を揺るがしたという。



 たった一つの行路 №222




 53

 ―――地下二階、Bフロア。
 二人の戦いはまだ続いている。

「『サイコキネシス』」

 桃色のポケモン、エーフィが超能力を解放して、飛んでいるエアームドの自由を奪おうとする。
 しかし、エーフィの力に抗い、エアームドは鋭いくちばしで襲い掛かってくる。

「……!」

 サイコキネシスが破られたエーフィは『ドリルくちばし』に当たって吹っ飛んだ。

「『ダーク・鋼の翼』!」
「(ダーク技か?)」

 シロの技の指示を聞いて、ハルキは気がついた。
 エアームドを見ると、硬い翼がさらに硬化していく。
 だが、それだけにとどまらず、両翼に見るからに黒く禍々しいものがまとわりついた。
 そして、そのままハルキたちに向かって飛んできた。

「エーフィ、ブラッキーに『リフレクター』」

 相手の攻撃に対して、ブラッキーを繰り出し、エーフィは防御を繰り出す。

「抑えつけろ」

 突撃してくるエアームドに対して、防御力に自信があるブラッキーで防ごうとする。
 まして、リフレクターの効果がある為に、ダメージの心配はあまりしていなかった。
 だが、実際に2匹が組み合うと、エアームドの勢いは止められない。
 翼を振り切るとともに、ブラッキーを吹っ飛ばした。

「エーフィ、『スピードスター』」

 攻撃を緩めて、ターンするエアームドを狙い、多少でもダメージを与える。
 星型エネルギーの連射に、嫌そうな顔をして攻撃を受けるエアームド。

「次は、そっちのエーフィに攻撃だ」

 先ほどブラッキーを吹っ飛ばした闇の鋼の翼で、向かってくる。
 その攻撃をハルキは冷静に観察し、2匹を呼んだ。

 ドガッ!!

「!」

 ブラッキーが背後に周り込んだ一撃で、エアームドを地面に墜とした。
 とは言うものの、ここは部屋の中で、エアームドが飛び上がったとしても、それほど高く飛べないのだが。

「エーフィ、全力で『サイコキネシス』」

 ブラッキーごと押しつぶすような超能力エネルギーを放った。
 悪系にエスパー系の攻撃が効かないことを利用したコンビ技だ。

「吹っ飛ばせ。『ゴットバード』!」
「!」

 だが、攻撃を受けながらも、シロのエアームドは力を溜めていた。
 攻撃に転じたエアームドは、ブラッキーをエーフィの方へと吹っ飛ばし、さらに突撃していく。

「(ヌオーを……)」

 エーフィとブラッキーの二匹が絡まって動きが取れないであろうことを察して、モンスターボールを準備しようとした。
 でも、すぐにブラッキーがハルキの目の前に立ったのを見て、ふっと口元を緩めた。

「『シャインボール』」

 ブラッキーには似合わない光属性のエネルギー弾。
 だが、ブラッキーは月のエネルギーを利用することができる。
 おそらくこの技は、いつも浴びている月のエネルギーを凝縮してできる技なのだろう。
 この技を放ちながら、エアームドに突進した。

「(後ろには俺とエーフィがいる。この中であのエアームドを止めることができるのはブラッキー<お前>しかいない)」

 シャインボールが爆発し、その煙の中から、エアームドのくちばしに噛み付き、エアームドの攻撃を必死に押さえ込もうとするブラッキーの姿があった。
 どちらも最大攻撃を受けて、限界に近かった。

「…………」
「エーフィ、『手助け』だ」

 支援を受けて、ブラッキーは最後の力を振り絞って、口でエアームドを地面にたたきつけた。

「そこだ」

 クイックモーションから、ハルキはスナッチボールを繰り出し、エアームドをボールに納めた。
 エアームドがハルキにスナッチされて、エーフィが無事であることを確認してから、ブラッキーは地面に倒れこんだ。

「ピジョン!」

 シロが繰り出したのは、一見普通のピジョンだった。
 普通に行けば余裕と考えて、ブラッキーをボールに回収しながら、ピジョンを倒した後のことを考えていた。

 ズドンッ!!

「!?」

 油断とはまさにこのことだろう。
 気がつけば、エーフィがピジョンの電光石火で吹っ飛ばされていた。

「油断しすぎだね。さっきのエアームドがダークポケモンだと見抜いたことは褒めてあげるよ」

 そう喋っている間に、ピジョンがシロの肩に止まる。

「でも、わるいネイティオ、エアームドが2匹やられたからといって、僕の負けかと言われたらそうではない。主力はまだ残っている」

 そう言いながら、3匹目のエアームドを繰り出した。

「(普通のエアームド……ではないな。くちばしと翼に違和感を感じる)」

 パッと見て、2つの箇所の大きさが違うことに気付くハルキ。

「やれ。『鋼の翼』。『風起こし』」
「エーフィ、ヌオー」

 ふらふらのエーフィがサイコキネシスを放って、風起こしに対抗する。
 しかし、その二つの攻撃は相殺されてしまう。
 一方のヌオーは、『濁流』で飲み込もうとするが、そのまま突っ込んできてヌオーを赤く変色した翼で壁へと打っ飛ばした。

「(この2匹……半端な強さじゃない。……特にあいつのピジョン……エーフィの『サイコキネシス』を『風起こし』で止められるものなのか?)」
「エアームド、『スチールスター』!」

 鋼の翼をスピードスターのように遠距離にブーメランのように打ち出すこの技は、シロのエアームドの回避不能の最強の技だ。
 だが、攻撃はヌオーの顔を掠めて外れる。
 エーフィが咄嗟に念力で攻撃をずらしたのだ。

「(やはりエアームドの特性『鋭い眼』で攻撃は外さないか)」
「ピジョン、『燕返し』」
「『リフレクター』」

 ドガンッ!!

 壁を張るものの、攻撃の勢いでエーフィは吹っ飛ばされてしまう。
 しかし、ヌオーが回り込んでエーフィをキャッチし、激突ダメージを回避することができた。

「(どちらかを先に倒さないと分が悪い。となると……)ヌオー、『波乗り』」

 ちょうど、エーフィが傍にいるために、最大の技で視界に入る者をすべて巻き込まんとする水流を放つ。

「ピジョン!『エアドライブ』!」

 風を纏った突進技が、濁流を突き破り、後ろからエーフィに当てた。

「(速い……!?)」

 この速度は、ハルキも反応できていなかった。
 エーフィは濁流を耐え切ったエアームドの方へ飛んでいく。
 待っていたといわんばかりにエアームドは、『スチールスター』を放ち、エーフィをノックアウトさせた。

「(ピジョンの存在が厄介だな)」

 そう思いながら繰り出したのは、ボーマンダだ。

「ヌオー、『水の波動』。ボーマンダ、『竜の波動』」

「同じだ」

 エアームドが構わず突っ込んできて、鋼の翼でヌオーを吹っ飛ばす。
 一方のピジョンは風起こしを繰り出して、ボーマンダの攻撃を相殺した。
 しかし、同時にボーマンダはピジョンに向かってドラゴンクローを繰り出す。
 攻撃は避けられてしまうが、負けじとボーマンダはピジョンを追う。

「ヌオー、まだだ」

 エアームドに向かって、さらに水を放つ。

「その攻撃は効かないって」

 銀色の翼が真っ赤に染まる。
 異常な変色が、技の破壊力を示しているようだ。
 回転しながらの鋼の翼は、地面を抉りながらヌオーへと襲い掛かる。
 水の波動はいとも簡単に弾かれて、避けようとしたヌオーの足を触れる。
 ただそれだけ、ヌオーの左足は負傷し、動けなくなってしまった。

「ピジョン、止めを刺せ」

 風を纏った『エアドライブ』で突撃を仕掛ける。
 しかしながら、ボーマンダがドラゴンクローでピジョンの攻撃を止めて、ヌオーへ追撃を回避することに成功した。

「(しかし、あの『エアドライブ』と言う技……)」

 ボーマンダを見てハルキは思う。
 ただの風を纏った突進技と思いきや、纏った風はナイフのように鋭く、近づいた相手を切り刻みながらアタックする技だと考えた。

「『水の波動』!」
「そうか。狙いは混乱か?」

 シロは手を挙げると、エアームドは水をぶち破らず、回避した。

「やれ、『鋼の翼』! ピジョンは『エアドライブ』!」
「ヌオー、『守る』。ボーマンダ、『竜の波動』!」

 防御の体勢を取り、ヌオーはエアームドの攻撃を防ぎきった。
 一方のピジョンの方は、竜の波動をもろともせずに、ボーマンダにきつい一撃を叩き込み、地面へと叩き落した。

「(あのピジョン……ボーマンダを相手に互角以上か……?)」

 冷汗を掻きながら、ボールを準備するハルキ。

「エアームド、ボーマンダに『スチールスター』! ピジョン、ヌオーへ『ブレイブバード』!」

 『守る』で攻撃を弾かれたエアームドは流れるように、地面に墜ちたボーマンダへ攻撃を放とうとする。
 一方のピジョンはボーマンダが動けないのを確認して、一気に加速してヌオーを吹っ飛ばした。
 一応、ヌオーは『守る』体勢に入っていたが、『守る』の連続使用は精度が落ちる。
 防御は貫かれて、ヌオーはダウンしてしまった。

「……なっ!?エアームド!?」

 そして、もう片方は予想外のことが起きていた。
 エアームドが墜ちたのである。
 そこをあらかじめボールの準備していたハルキが、スナッチした。

「確かに、『水の波動』は混乱も狙っていた。しかし、本当の狙いは『あくび』を気付かせないことだ。水の波動にばかり気をとられていて、気付かなかったようだな」

 ハルキはヌオーを戻しながら、シロに向かって言い放つ。
 同時にボーマンダが飛び上がった。

「少しの間だけだったが、ボーマンダが回復する時間も稼げた」

 ピジョンで叩き落されたボーマンダだったが、同時に地面へ着地する『はねやすめ』をしたようだ。
 体力を回復したボーマンダがピジョンに向かって竜の波動を放つ。
 攻撃は相変わらず風起こしで相殺されてしまうが。

「なるほど。これがあの有名なスナッチャーのハルキか。でも、回復したのなら、またダメージを与えればいいだけだ。『エアドライブ』!」
「ボーマンダ、最大攻撃だ。『流星群』!!」

 風のナイフをコーティングした一撃と、竜のエネルギーを放つ一撃。
 流星群は風の防御を張ったピジョンに命中し爆発を起こした。
 大きなダメージを与えたことには間違いない。
 だが、それでもエアドライブを止めることはできず、ボーマンダに一撃を叩き込んだ。
 とはいえ、風の力は消えてしまい、『燕返し』に威力が下がってしまったようだが。

「(後一撃だ)『ドラゴンダイブ』!」

 弱ったピジョンに向かって突撃する。
 間違いなくこの一撃で倒せるとハルキは確信していた。

「ピジョン、『オウム返し』」
「!」

 まさかのピジョンも、先ほどボーマンダが放った強力なドラゴンタイプの技を放ってきた。
 技を発動中のボーマンダは止めることができずに、その攻撃をまともにくらってしまった。

 ズドンッ!!

 しかし、それでもボーマンダはハルキの期待に応え、ピジョンを叩き落した。
 地面にめり込んだピジョンは、そのまま消えてしまった。

「(……『身代わり』だな……) 『破壊光線』!」
「な!?」

 ハルキはあくまで冷静だった。
 流星群の激突の時に生じた煙の中から『ブレイブバード』で飛び出したのを見計らって、攻撃をあわせたようだ。

「っ!!」

 ズドンッ!!

 そして、ピジョンは攻撃に飲み込まれ、さらにその先に居たシロも巻き込み、爆発を生んだ。

「(さっきの『燕返し』も『オウム返し』の『流星群』も威力が低いからもしかしたらと身代わりじゃないかと思ったら、予想通りだったな)ボーマンダ」

 相手の方を見てろと指示を出して、自分はこの部屋に転がっている3人を見る。

「(風霧のトレーナーとユウナと……あと確か、バンだったか?)」

 名前を思い出しながら、ハルキは3人に触れて、最終的にユウナの体を起こして揺さぶる。

「(ダメだ……。完全に気を失っている。それに…………バンとこの女はもう…………)」

 不意にユウナを掴む手が強くなる。
 もう少し早くこの場に来ていればと、悔やんでも悔やみきれなかった。

 ドガッ!

 ちょうどそのとき、ボーマンダが吹っ飛んだ。

「まだ最後のポケモンが残っているんだよ。油断なんかしちゃダメだろ?」
「…………。油断しているつもりは無い」

 心中穏やかではないハルキだが、その心を相手に見せずにユウナをその場に降ろして、シロの最後のポケモンと向かう。
 緑色が気色の赤いメガネをしたポケモンだ。

「(最後はフライゴンか) 『ドラゴンクロー』」

 鋭い爪を振りかざし、フライゴンに向かっていく。
 だが、フライゴンは攻撃をあっさりと回避し、カウンターでドラゴンクローを叩き込んだ。

「(……ボーマンダのダメージが大きいのもあるが、奴のフライゴンは相当の強さだ。さっきのピジョンほどじゃないが)」

 最後の力を振り絞って、ボーマンダが竜の波動をフライゴンに命中させる。

「フライゴン、空のチリにしてやれ。『デザートブレード』!」

 砂を纏った翼で、ボーマンダを叩き落とした。
 ボーマンダが戦闘不能になったのを確認して、フライゴンが電光石火でハルキに突っ込んだ。

「……!」

 ドゴッ!

「ん!?」

 ハルキの目の前に高速で回転する一匹のポケモンが現れた。
 これが、ハルキの最後のポケモンのようだ。

「カポエラーか。だが、飛行使いの僕に格闘タイプとは無謀だな」
「…………」

 無言でハルキが手を翳すと、カポエラーは素早く突っ込んで回し蹴りをかます。
 しかし、フライゴンのスピードはカポエラーのスピードで対抗できない。
 『トリプルキック』がまったく当たらずに、逆にフライゴンの『竜の波動』でダメージが蓄積されていく。

「これでどうだ、『ウイングブレード』!」
「カポエラー」

 今度は風を纏った翼で、カポエラーを掠めた。
 しかし、ハルキの指示が早く、完全な回避でフライゴンの攻撃を避けた。

「『見切り』か。でも……」

 ドガンッ!!

「『電光石火』で加速可能だ」

 ドガッ! ドガッ!

「なっ……!?」

 ところが攻撃を与えたはずのフライゴンまでカポエラーと反対方向に吹っ飛ばされた。
 どちらも壁に激突でダメージは大きい。

「確かに早く攻撃できた方がアドバンテージは取れるかもしれない。しかし、だからと言って先に攻撃できた方が勝つとは限らない」

 そういって、ハルキはカポエラーの背中をぽんと叩いた。

「次で決める」
「(さっきのは『カウンター』!?) 迎え撃て!」

 シロのフライゴンは砂と風の両方を翼に纏って突っ込んでいく。

「『エアデザートブレード』!!」
「『インファイト』」

 2匹の最大の技が激突した。

「……っ!」
「ぐはっ!」

 その激突は空気を震わす振動を生み、やがて、2匹は吹っ飛んだ。
 その先にいるのは、それぞれ自身のトレーナーだった。
 結果、トレーナーを吹っ飛ばしてその戦いは終結した。

「っ……。(カポエラーがダウン……だが……)」

 ハルキは冷静にシロの方を見ると、フライゴンも戦えないようだった。

「いつつ……引き分けか」
「あんたはこれでユウナに手出しをすることはできない」
「そのようだ。とはいえ、もうそいつは用済みだがな」

 ハルキはカポエラーを戻し、ユウナを背負ってその場を立ち去ろうとする。
 だが、ハルキに向かってシロは言い放った。

「1つだけ確かなことを教えてやる。そこで倒れているうちの風霧の女とバンを殺したのは、ユウナだ」
「…………」

 その言葉をハルキは無視して、とりあえず意識のないユウナだけを連れてそのフロアを後にしたのだった。



 第三幕 The End of Light and Darkness
 Evil box in the dive⑦ ―スナッチャーハルキvs風霧のシロ― おわり



 闇の力を持った男、その力のベールが捲られる。


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Last-modified: 2015-09-23 (水) 15:24:21
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