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たった一つの行路 №199

/たった一つの行路 №199

「バニラが負けたのね……」

 パソコンを見つめていたカーディガンを羽織った年老いた女性が呟く。
 バニラと印をつけられていた点が、消えたのだ。
 その結果を見ると、彼女の表情は失敗して残念という表情ではなかった。
 しかし、逆に不敵に笑っているという表情でもなかった。
 冷淡に状況を頭で処理して片付けるという、ロボットのような思考をしていたに過ぎなかった。

「『魔女ココロ』……何かをしかけてくると思ってマークを仕掛けた矢先ね。バニラがココロに負けるということは、何かしら強力なサポーターがついたということ……」

 ふと、彼女は物思いに耽る。
 そして、ちらりと机の近くにおいてあった写真立てを見る。

 ガタッ

「アソウの婆さん。シンクロパスの調整が終わったぜ」
「……! 入ってくるならノックくらいしなさい」

 アソウは見ていたその写真立てを慌てて倒した。

「…………。ずっと気になってたんだけど、その写真って、婆さんの若い頃の写真か?」
「……! まさか、見たことあるの!?」
「あ。やっぱりそうなんだ」

 アソウはボールを構えてじっとエデンを睨む。

「い、いや、見てないって!適当に言っただけなんだって!ホントだぜ!?」

 エデンの慌て方は演技をしているようには見えなかった。
 どうやら、その言葉を信じたようで彼女はモンスターボールを懐に納めた。

「ところで。例の連中に幹部が3人もやられたみたいね」
「え?3人?ミントにベリー……まさかバニラもやられたのか?」
「そのまさかよ」
「わお」

 腕を組み、首を振ってエデンはやれやれと頷く。

「『月島の末裔:オトノ』、『女侍:シノブ』、『波動の覇者:レイタ』……それにもう一人、素性がわかってない男が居るんでしょ?」
「ああ。最初からオトノと一緒に居た奴な。たしか、ラグナって呼ばれていたぜ」
「……ラグナ……?」
「幹部の連中は戦っているところも見たことないし、情報が集まらなかったから知らないけど、俺は直接戦ったからね。そのときにピカチュウがやられた」
「エデンのピカチュウが?」

 少し驚いたように声のトーンを上げるアソウ。

「正直、あの吹雪の中じゃなければ、勝負はわからなかった。でも、次は対等の条件でも負ける気はしないね」

 エデンはニヤッと笑った。
 その表情を見て、アソウはやや陰りを見せた。

「…………。それにしても、あなたの笑顔は…………似ているわね」
「誰に?」
「…………」

 エデンは察して唇を軽く噛み締める。

「そんなに似ているのか……?」
「……うん。…………。とりあえず、ココロたちは何らかの作戦を練ってこのアジトを狙ってくるはず。そして、頂点<ボス>を狙うはず……」
「…………。俺たちも作戦を練ろうってわけだな!まぁ、俺とサニエルに任せておけば大丈夫だって!」

 少ししんみりしたエデンだったが、気を取り直して気楽に言うと、エデンは部屋を出て行こうとした。

「じゃ、俺はサニエルと一緒にロビーで待ってるぜ」
「…………」

 エデンがスキップして部屋を出て行ったのを見ると、アソウは写真立てを直した。
 その写真立てに写っていたのは、若い頃のアソウ。
 そして、数人の男女と子供が映っていた。
 年号は右下の隅っこにピース30と書かれている。
 その年号は古くなっていて、数字が滲んでいて読みにくくなっていた。

「……ラグナ……。まさか、そんなはずがないわよね……」



 ―――同時刻、ココロの家。
 脱力して呆然と遠くをラグナは見ていた。

「今がピース73年?冗談だよな?今はピース20年だろ?」

 ココロはじっとラグナを見ていた。
 首を縦にも横にも振らずに、ひたすらにラグナを見ていた。
 その目を見てラグナは、信じるしか道はないことを思い知らされた。

「突然、ごめんなさい。しかし、こうするしか他に方法がなかったのです。このままわたくしが何もせずに居れば、ラグナ様の時代もわたくしの時代も滅びてしまうのです」
「…………」

 とりあえず、ラグナはコーラを飲んで落ち着こうとした。
 しかし、あれだけシュワシュワして口を潤すコーラが、今のラグナにとって気休めにもならなかった。

「一体……どうしてこんなことをしたんだ?」

 まだ落ち着かないが、そうも言ってられなかった。
 時の滅びというのが、今の自分の状況よりも気になったからだ。

「説明します。それには、200年以上も昔に遡らなければなりません」
「200年も前の話?」
「はい。わたくしの祖先……ルイ・セブンスィーのことからです」
「……ルイ……」
「彼はとても優れた占いに加えて、攻撃魔法と封印魔法の使い手でした。ある日、彼は自分の力を試すために呼び覚ましてはならないモノを目覚めさせてしまいました」
「呼び覚ましてはならないモノ?」
「“強大な光と闇の存在”と、彼は呼んでいました」
「……光と闇……。人じゃないのか?」
「人ではございません。しかし、自然のモノと言うにも違うモノです。明らかにそれは意思を持っていたと言います」
「…………」

 ココロはカップを取ると、余っていたアップルティを全て飲み干してしまった。
 ラグナは眉間にしわを寄せて難しい顔をしていると、一つ聴いた。

「この話……どうやっててめぇは知ったんだ?親とかに聞いたのか?」
「いいえ」

 ココロは首を横に振った。

「わたくしの血筋はどうやら気ままな一族のようでした。ルイのように日々魔術に精進するものも居れば、惚れ薬や媚薬なんて作って相手の心を動かす薬ばっかり作っている者も居ました。また、魔法と化学をミックスして生活に役立てようと研究する者もいたり……わたくしのお父様は魔術に全然興味なんてなく小説を書いていました」
「小説家?」
「はい。ええと、とりあえず話はわたくしがその“強大な光と闇の存在”を知ったことですね。……キッカケは、ハレさんと出会った事でした」
「……ハレ……」

 ラグナは唸った。

「(50年も経っているってことは……やっぱり、ハレってあのハレだったのか……)」
「ラグナ様?」
「あ……。続けてくれ」
「はい。ハレさんが考古学者だということは、先ほども言ったと思います。あるとき、ハレさんは昔、月島と呼ばれていた場所で、手紙を発見したのです」
「……月島……」
「(月島……?)」

 ひとつの単語に反応したのは、ラグナだけではなかった。
 物陰に隠れているオトノもその話をずっと聞いている。

「ハレさんから渡されたその手紙には、自分が呼び覚ましてしまった“強大な光と闇の存在”を子供たちの手で倒してくれと……世界を救って欲しいという願いが記されていました」
「…………。自分の子孫に尻拭いをさせようとしているわけかよ」

 ロクでもない先祖だな。とラグナが呟くが、ココロは肯定も否定もせず、話を続ける。

「わたくしは、ハレさんと共に月島と呼ばれていた島へ行きました。そこでわかったことは、何者かが棺を開けたということでした。後にその中にあったモノが、強大な光と闇が封印されたモンスター捕獲用のボールとわかりました」
「そのボールの中に、光と闇が入っていたというのか?」
「はい。そして、不可解な事が起きたのです」
「……不可解な事?」
「ハレさんはその月島へ調査した時、ボールが1個あったと言っていたのに、わたくしを連れてきたときはなくなっていました」
「不可解っつーか誰かが持ち去ったんだろうが」
「そうですね。しかし、もう一つ不可解な事は、2個あったボールが1個になっていたということです」
「……!!」
「かなり昔に持ち去られた形跡があるとハレさんは言っていました」
「一体誰が……?」

 ココロは一度うつむいたが、パッと顔を上げた。

「それからの1年間。わたくしの先祖の代々から伝わる家を訪ねて、文献を漁る毎日でした。そこから得た知識でわたくしは、今の作戦に至ったのです」
「俺を呼ぶ作戦かよ?」
「……はっきり言ってしまえば、その通りです……」
「ってか、何故俺なんだ?どうして俺を呼んだんだ?」

 ココロは立ち上がって、台所へ行ってしまった。
 どうやら、アップルティーを再び淹れている様だった。

「昔、ルイは“強大な光と闇の存在”と戦いました。しかし、一人ではどうすることもできませんでした。そのとき、彼を支えた3人の友達が居たと書かれていました」
「3人の友達?」
「一人は月島の踊り子のカズハ。一人は元気で明るいトレーナーのアンリ。そして……」

 ココロはアップルティを持ってきて、椅子に座る。

「あなたの先祖でアンリのストーカーのコール」
「……俺の先祖だと?」
「だから、わたくしはあなたを呼んだのです」
「はっ?意味がわからねぇ!何故そのコールが先祖だからってこうなるんだ!?それなら、この時代のコールの子孫にやらせればいいじゃねぇか!!」
「…………」

 ココロはしゅんと俯いてしまった。
 怒鳴ってしまったラグナは悪いと言って謝った。

「この時代の人では、勝ち目はないと思ったからです。それに、コールの血筋の中で実力があり、引っ張りやすいと思った人がラグナ様しかいなかったのです」
「…………。単純な奴と思われて心外だぜ」
「あ……そういうつもりで言ったわけでは……」
「…………。ってか、コールの子孫ってことは、俺の子孫もこの時代で生きているのか?」
「それは…………答えられません」
「…………。ま、そうだよな。未来が変わっちまうもんな」
「いいえ、それはありません」
「へ??」
「過去・現在・未来の文献を調べてみたら、こんなお話がありました」
「ん?」
「ある日、女性は大木に大きな傷をつけられていたことに気づきました。3日くらい前まではなかったのにと思い、その傷をつけた犯人を見つけようとしました。彼女は“現在”から3日の時を遡って“過去”へ飛びました。それから、ずっと、その大木に傷つける瞬間を見守っていました。しかし、その傷をつける者はなかなか現れませんでした」
「で?」
「ある日、その女性は盗賊に襲われました。しかし、その女性はとても強く、ボーマンダを繰り出してあっという間に盗賊を蹴散らしました。そして、大木を見ると大きな傷がつけられていたのです」
「……要するに、自分でやったってことなのか?」
「はい。ボーマンダの『逆鱗』による傷だったのです」
「ただのアホだろ」
「それから、彼女は片っ端から数日で起きた身近な傷や現象などを過去に遡って見続けました。すると、その10割が自分でやったものだったのです」
「全部じゃねぇか」
「はい。この事象から導かれた結論は、『“過去”から“未来”は一本の道であり、曲げることのできない唯一無二の話である』ということでした」
「……?」

 ラグナは首を捻る。

「つまり、ラグナ様が未来で事実を知っても、過去の世界では何の影響ももたらされないということなのです。むしろ、ラグナ様が未来で事実を知ることが必然だったということになります」
「…………」

 ラグナは複雑そうに頷く。

「それでも……知りたいですか?」

 ココロはやや伏し目で尋ねる。

「それなら、別にいいや。楽しみが薄れるしな」

 その言葉を聞いて、ココロは心なしか少しほっとしたようだった。

「ところで、何でコールの血筋じゃなければならねぇんだ?誰がやったって同じじゃねぇのか?」
「正確には、その先祖の4人の血筋でなければダメなのです。ルイは『アウカ=レイド』という魔法でアンリとコールに退魔の遺伝子を刻み込みました。その力は今の子孫達にも続いて刻まれる永劫の魔法だったのです」
「退魔の遺伝子?」
「“強大な光と闇の存在”というのは、人間やポケモンに憑依することができるのです。だから、ルイは2人に憑依されないようにとその魔法を施したのです。月島の一族とわたくしの子孫は元々耐性があったためにその魔法を施す意味はありませんでした」
「…………。なぁ、まさかと思うが…………」

 ラグナは少し考えて、ココロに疑問をぶつけた。

「俺がこの時代に飛ばされた時っていうのは、CLAW<クラウ>の連中にやられて、地下水に飛び込んだ時だよな?」
「はい。そのときを狙いました」
「それで俺はウバメの森でオトノと出会った。それはてめぇの仕業なのか?」
「…………。はい……」

 気まずそうにココロが返事すると、ラグナは納得がいった。

「やっぱり、オトノもその子孫ってワケか……」
「(あたしも……?)」

 ラグナの一人ごとを聞いて、オトノは少々戸惑っていた。

「……で。アンリの子孫って誰なんだ?」
「知りたいですか?」
「興味はあるな」
「大丈夫です。マイコンと戦うときに会うことができます」
「結局、教えねぇのかよ!」

 ツッコミを入れるようなノリで、ラグナはつぶやいたのだった。

「しかし、どうやっててめぇは俺を未来に連れてきたんだ?」
「それは、この子のおかげです」

 一つのモンスターボールから飛び出してきたのは、幻のポケモンといわれるセレビィだった。

「『時渡り』か……。なるほどな」

 ラグナはコーラをグイッと飲み干した。

「ラグナ様、改めてお願いします。マイコンのエデンという男を倒してください」
「エデン?」
「はい。実質、その男がマイコンの最強の男なのです」
「頂点<ボス>じゃなくてか?」

 頷くココロ。

「このマイコンの真に戦う相手は、アソウとエデン。この2人が最大の原因なのです。その二人が頂点<ボス>を完璧な姿にするために幹部に指示を出しているのです」
「完璧な姿?」
「とにかく、ラグナ様にはエデンを倒してほしいのです」
「……エデン……。それに、アソウ……。奴らは何者なんだ?」
「エデンに関しては、今のラグナ様に説明してもわからないでしょう。しかし、アソウという老女はわかると思います。恐らく会えば、一目で……」
「会えばわかる……だと?」
「はい」

 そして、立ち上がるココロ。

「わたくしは、ラグナ様なら“強大な光の存在”を消し去る道標を作ってくれると信じております」



「一つ、忠告をしてよろしいでしょうか?」
「なんだ?」

 ココロとの話が一通り終わり、ラグナはカンナギタウンへの道を教えてもらってカンナギタウンへ戻ろうとしたところだった。

「一緒に旅をしているオトノさん……あの人とは絶対に結ばれてはなりません」
「!?」
「……な、何を言ってんだ?」

 少し動揺するラグナだったが、それ以上に動揺していたのは隠れているオトノだった。

「2人は必ず別れる運命にあるのです。必ず……」
「必ずって……何でそんなことがわかるんだよ!」

 ムキになるラグナ。

「それは……この時代の人と……過去の人が結ばれるなんてことは…………」
「『あってはならない』って言うのか?」
「ラグナ様は、自分の時間に帰らないといけないのです。それとも、ラグナ様はこの時間に残るつもりなのですか?」
「……っ!! ……それは……」

 ラグナは目を伏せる。
 そこまで考えていなかったようだった。
 すると、ガサリと一人の少女が飛び出した。

「なっ?オトノ!?」

 しかし、彼女の向かった先はラグナでもココロでもなく、反対の林の方だった。

「辛くならないようにとわたくしからの忠告です……」
「…………。んな忠告、知るかよ!」

 キッパリとラグナは吐き捨てた。

「言っておくけどな、どっちにしても俺は俺の意志を貫く!運命になんて、意地でも抗ってやるかんな!!」

 そして、ラグナは駆け出した。
 オトノを追いかけていった。

「だが、この時間に残るか、元の時間に戻るかは、そのエデンって奴を倒してからだからな!覚えて置け!」

 そういい残して、ラグナは見えなくなってしまった。
 一人残ったココロは、家の中に入っていった。
 2階へ登ると、そこにはベビーシッターが置かれていた。
 存在するのは、一人の赤ん坊だった。

「この時代の人間とかこの人間が結ばれてはいけない……。そんな決まりありません。でも、ラグナ様……あなたは…………」

 赤ん坊を抱き上げて、ココロは呻く。

「わたくしは……一族の罪を償うためには……何でもやります……。例え、自分の命が犠牲になろうとも……」



 ―――ハクタイシティ。

『残りは君だけだよ。タネギ』

 そのハクタイシティは火の海に包まれていた。
 ありとあらゆるビルが根元から崩されて倒れ、町の象徴であるパルキアの彫刻も、シンボルである博物館も、そして、ハクタイジムの建物も燃やされていた。

『はぁ…はぁ……くっ……』

 周りを炎に包まれて逃げ場をなくしながらも、タネギと呼ばれたラフレシアはグライオンを睨む。

『俺は……この町から代々受け継がれてきたジムリーダーなんだ!この町は俺が守る……!』
『守る?もうすでに町は火の海だよ。しかも、あなたは最初に僕にコテンパンにやられて逃げ出したじゃないですか。しかも、それで戻ってくるということは町を守るんじゃなくて楽になりに来たんじゃないんですか?』
『そんなことは絶対無い!一度退いたのは戦略的撤退だ!お前を確実に倒すためのな!』
『それならやってみてくださいよ』

 次の瞬間、グライオンの燕返しとラフレシアのエナジーボールが放たれた。
 ハクタイシティを襲っているのは、エデンに一人でハクタイシティを壊滅させたら幹部のミントの座を就かせると言われたカミヤだった。
 それからすぐに、カミヤは準備をしてハクタイシティを急襲に出た。
 初日から飛ばして、町のビルを根元から崩して行った。
 だが、それで黙っていなかったのはハクタイシティのジムリーダータネギだった。
 タネギはカミヤに勝負を挑み、20時間に渡る戦いを繰り広げた。
 しかし、タネギはシンクロパスを使いながらも、少しの差で撤退を余儀なくされた。
 それから、警察や地元のトレーナー達にカミヤを任せて、タネギは悔しくも治療に専念した。
 そして、カミヤ襲撃から1週間経った今、町は火の海でタネギ以外のトレーナーは全滅させられていた。

『『サンディック・フレイムトルネード』!!』
『っ!! ぐわあぁぁぁっ!!』

 グライオンからフライゴンにスイッチしたカミヤが、周りの炎と砂地獄による竜巻を利用して、ラフレシアにシンクロしているタネギを閉じ込めた。
 草系しか持っていないタネギはなす術もなく燃やされて、地面に落とされた。
 そして、シンクロが強制的に解けてしまった。

「これでハクタイシティも陥落だね」

 シンクロを解いて、タネギに近づくカミヤ。
 頭の髪を引っ張りあげて、カミヤは聞く。

「しかし、このシンクロパスをどこで手に入れたんだ?まさか君がマイコンのメンバーを倒してそれを利用しているってわけがないよね?」

 カミヤの疑問ももっともだった。
 シンクロパスは、基本的にマイコンしか持っていない。
 そう考えると、入手経路はマイコンを倒すしか道はないのである。

「この…パスは…サクノさんから…もらった……んだ……。この町を…守るようにと…」
「サクノ……またあの女か……」

 手を放すと、タネギが地面にバタッと落ちる。
 すると、カミヤはグライオンと再びシンクロをした。

『じゃあ、タネギ……。約束どおり楽にしてあげるよ』

 そういうと、タネギの首を目掛けてグライオンはハサミで襲い掛かった…………

 ポツッ

『ん?』

 しかし、止めた。
 不意に雨が降り始めたのだ。
 その雨は、次々とハクタイシティに降り注いで、侵略する火を鎮火していった。

『この雨は……『あまごい』か?一体誰が!?』

 辺りを振り返るカミヤ。

『『冷凍ビーム』』
『っ!!』

 バキンッ!!

 グライオンは避けられなかった。
 そして、その一撃でかなりのダメージを負ったカミヤ。
 一旦シンクロを解いて、攻撃の方向を見る。

「一体……誰だ?しかも、今の攻撃はなんだ!?」

 そして、攻撃の主もシンクロを解いた。
 すると、そこに居たのは、雑草のような緑髪に緑色のマフラーを首に巻いた男だった。

「でもいいや。邪魔をするなら、お前を倒すっ!!」

 カミヤはフライゴンにシンクロした。
 繰り出した技は、竜の波動。
 しかも、全力の一撃だったようで、カビゴン一匹は飲み込んでしまうくらいの大きさはあった。

「行くぞ」

 すると、男もシンクロした。
 それだけはカミヤも見えた。
 しかし……

『がはっ!! ……なんだって……言うんだ……お前……?』

 次の瞬間、カミヤとフライゴンは分断された。
 シンクロが解けたのである。
 そして、カミヤの背後から少し離れたところに、一匹のフライゴンが居た。
 どうやら、竜の波動を切り裂いて、一気に勝負を決めたようである。

「準備はできた。あとは……」

 シンクロを解いた男は、じっとテンガン山を見上げたのだった。



 たった一つの行路 №199
 第三幕 The End of Light and Darkness
 唯一無二の話 終わり



 ラグナとオトノ。二人が見つめる先には……


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Last-modified: 2015-07-20 (月) 10:15:50
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