☆前回のあらすじ
リブラ号で不審な男に接触するために張り込みを続けていたジュンキとアイ。
ついに、不審な男が現れて、2人は尾行することに……
一方、リクはジュンキの不審者の男の情報を知り、パソコンで他のメンバーに知らせようとするが、奇襲を受けてパソコンを壊されてしまう。
そして、25万ポケドルの賞金首、風霧のバギマと逃げながらも戦うことになってしまったのだった。
「メリープ、『放電』!!」
バチバチッ!!
フィールドを埋め尽くすほどの電撃が、一匹のあるポケモンへ向かって命中する。
「よし……これで、後一匹だよ!!」
帽子を被った少年は、拳を握り締めた。
相手を倒したと確信したガッツポーズだった。
「クチートは倒したし、次勝てば、ジムバッジをゲットだぜ!」
少年はメリープを出す前に、アリゲイツとディグダを倒されていた。
アリゲイツはクチートにパワー負けをし、ディグダは水鉄砲で一撃だった。
帽子の少年は、ジムリーダーが今出しているポケモンが水系だと読んで、電気ポケモンのメリープを繰り出したのだった。
しかし……
「……残念だけど、効かないわよ」
ジムリーダー……ナルミは、にっこりと笑みを浮かべて、チャレンジャーを見ていた。
「どうして!?」
「チョンチー、水鉄砲!!」
戸惑うチャレンジャーの少年のメリープに水鉄砲がクリーンヒットして、あっという間に戦闘不能になってしまった。
「……う、うわーん……負けたー!!」
チャレンジャーは、メリープを戻して、ジムフィールドを出て行ったのだった。
もちろん、電気攻撃が効かなかったのは、チョンチーの特性『ちくでん』があったからである。
「ライボルトまで回らなかったわね」
ライボルトの入ったモンスターボールに話しかけるようにナルミは呟いた。
ナルミはノースト地方の4人のジムリーダーのうちの一人である。
最近では、ジムリーダーをカントーやジョウトと同じく8人に増やそうという計画があるが、適任者がいないために、その案は見送られ続けている。
オートンジムの特徴は、カントーのニビシティのジムのような岩のフィールド。
だが、本来なら鋼を張り巡らせた、鋼のフィールドを作りたかったのだが、先代のジムリーダーの兄のナルトの時に、フィールドを作る予算が足りずに仕方がなく岩を代用して、岩のフィールドを作ったのである。
ナルミの専門は、電磁系。
つまり、電気タイプと鋼タイプ。ジョウト地方のミカンと似たタイプである。
しかし、ミカンが鋼の物理攻撃メインとしたら、ナルミは鋼の特殊攻撃メインと言えるかもしれない。
ジム戦をするときは、最初の2匹は必ず控えのポケモンを繰り出すことにしている。
そして、最後の3匹目はメインのポケモン(最終形態であることが多い)で相手をする。
実は、この方法はナルミがジムリーダーに就任した時から変わってない。
ヒロトやトキオ、そしてリクもこの方法でジム戦をして、彼女を乗り越えてきた。
そのことを考えると、ナルミは全力で戦うと意外に強いのかもしれない。
ナルミはジム戦が終わって一息つきながら、サイコソーダーを口にしていた。
「ええと、これからは……」
手帳を見て、ため息をついた。
「……2つのジム戦が残ってる……。今日、SHOP-GEARに行くのは無理かな……」
台所の冷蔵庫を眺めながら、昼は何を食べようかなと考えているナルミだった。
たった一つの行路 №169
ブワッ~ッ!!
「うわっ!!」
周りの林をひしめかすほどの突風にリクは吹き飛ばされる。
同じくリクの出しているポケモンのドードリオも吹き飛ばされて、木にぶつけられる。
そこにリクも飛んできて、ドードリオはリクに当たってダメージを受けて、のびてしまった。
「……ドードリオでも、近づけないなんて……」
「バハハ!お前はオラに指一本触れることもできず負けることになるんだぁ!!残念ッ!!」
プックリと体の大きい気球のようなポケモンに寝そべっている風霧の新入り、バギマ。
彼のフワライドにリクは苦戦を強いられていた。
ナマズンで先制攻撃に出たリクだったのだが、同時に出したフワライドにはまったく効果がなかった。
その反撃として、フワライドは風を起こして吹き飛ばしてきたのである。
その風攻撃の前に、ナマズンの攻撃は全て返されて、あっという間にダウンしてしまった。
接近を試みるために、ドードリオに乗って反撃しようとしたリクだったが、普通にフワライドの作り出す風に吹き飛ばされてしまい、接近さえもままならなかった。
結果、バギマのフワライドによって、ナマズンとドードリオの二匹が倒されてしまい、残りは3匹だけになってしまった。
「(このポケモンで……)」
新たにモンスターボールを取るリク。
「SHOP-GEARの連中というのは、もっと歯ごたえがあると思っていたけど、拍子抜けだぁ!」
「……歯ごたえがなくてごめんなさい。だけど、そう簡単に負けるつもりはありませんから!」
パシッとフワライドを2本のツタが掴む。
「むぐ!?『つるのムチ』か!?」
「放さずに、叩きつけてください!!」
リクの速攻。
ベイリーフはそのまま持ち上げて、地面へ叩きつけようとする。
「バハハ!フワライド、『熱風』だぁ!!」
バギマはつるのムチで持ち上げられる前にフワライドから飛び降りた。
そして、指示を受けたフワライドは、ドードリオやナマズンを倒したように大きく息を吸って、高熱の風を噴出した。
「うわっ……!!」
まともに高熱を浴びるリクとベイリーフ。
しかし、ベイリーフはつるのムチを決して放さなかった。
「ベイッ!!」
ズドンッと!!叩きつけて、地面をへこました。
追い討ちをかけようと、ベイリーフは突撃する。
「『のしかかり』です!!」
勢いよく飛び上がり、フワライドを踏みつけてダウンさせた。
……と、リクは思っていた。
「バハハ!!効かないさ!!」
「……しまった!!」
勢いのままに押し切ろうとしていて、リクは忘れていた。
フワライドはゴーストタイプであり、『のしかかり』はノーマルタイプの技で、攻撃を受け付けない。
多少はダメージを与えたかもしれないが、止めを刺すという点では失敗に終わってしまった。
その反撃として、ベイリーフはフワライドのシャドーボールを喰らってしまい、転がっていった。
「バハハ!!『鬼火』」
「くっ……『神秘の守り』です!」
蒼白い炎を連続で繰り出してくるバギマのフワライドに対して、リクは防戦一方だった。
一度防御に回ってしまったリクは、その流れを断ち切ることができなかった。
ベイリーフが光の壁を張るものの、フワライドの突風、熱風の前に徐々に後退させられていった。
「(……っ!!行き止まり!?)」
下がりに下がって行き付いたのは、反り立つ崖だった。
リクは追い詰められた。
「終わりだぁ!!『熱風』」
「『光の壁』です!!」
壁を張って、こらえるベイリーフ。
しかし、相手の技の威力からして、このままでは時間の問題だった。
「(一か八か……) ベイリーフ、そのまま突っ込んでください!!」
指示を受けて、光の壁を張ったまま突進するベイリーフ。
ダメージは徐々に蓄積されていく。
その後ろにリクもついていく。
「『シャドーボール』!!」
今まで攻撃をこらえていたベイリーフだったが、この強大な一撃の爆発で吹き飛ばされた。
「バハハ!もう一回!これでトドメだぁ!」
「『シャドークロー』です!!」
バギッ!!
「……!」
ベイリーフがシャドーボールの攻撃を受けた時、すでにリクはニドキングを繰り出していた。
ベイリーフはリクとニドキングを接近させるための壁の役割だった。
ボボーンッッ!!!!
「うわっ!」
フワライドの特性『誘爆』。
自身が倒れた時に相手を巻き込む最後の攻撃である。
攻撃したニドキングと近くにいたリクは、吹き飛ばされて転がる。
「……っうぅ……」
そして、リクは地面に伏した。
「バハハ!よくやったな。だけどココまでだ!オラを相手にこれだけ戦えたことを褒めてやるぞ!」
「……くっ、ニドキング……」
リクは動けずとも、ニドキングはバギマに向かって突撃する。
さらに、ベイリーフもふらふらにもかかわらず、葉っぱカッターを繰り出した。
「バハハ!『ダークストリーム』!!」
繰り出したのはギャラドスだ。
だが、見たことのない強力な技だった。
紫色の波を起こして、ニドキングとベイリーフを飲み込んだ。
今までのダメージの蓄積もあり、2匹はあっという間にダウンしてしまった。
「……そ…ん…な……」
バギマはゆっくりとリクに近寄っていく。
「バハハ!オラの切り札……ダークギャラドスは強いだろ?」
「(ダークギャラドス……ダークポケモンなのか……?)」
「普通のギャラドスの時から切り札だったけど、ダークポケモンにしたら、オラは無敵になった!もう、誰にも負ける気はしない!そんなわけで……」
ギャラドスの口からオレンジ色の光が覗き見えた。
どうやら、破壊光線のようだ。
「空のチリになれぇ!」
リクはすでにぼんやりして、何が起ころうとしていたか、確認することができなかった。
ブォォォオオオオオ!!!!
「なっ!?」
リクが気を失ったその時、周囲の木が一瞬にして凍ってしまった。
しかも、凍ったのは木だけではなかった。
「ギャラドス!!」
まさに突然というべきか。
ギャラドスの氷の像が完成していた。
「……しっかりしろ!!」
しかし、その氷はすぐにヒビが入り、ギャラドスが元気な姿で出てきた。
「バハハ……流石に焦った。しかし、誰だぁ?こいつは気絶しているしな」
「おじさん、ココだよ」
すると、少年の声がした。
バギマが振り返ると、10歳くらいの少年がそこにいた。
「リクちゃん!?」
さらに少年だけではなく、子供っぽい女性の姿もあった。
その女性は、慌ててリクの元へと駆け寄ると、上体を起こしてあげた。
「リクちゃん!?しっかり!リクちゃん!?」
「う……ミ…ナミ……さん……?」
うっすらと目を明けると、幼い顔と大きな胸が顔の近くにあった。
「リクちゃん!!よかったー☆」
ムギューッ!と思いっきりミナミはリクを抱きしめる。
「……―――っ!!」
そして、リクは顔を真っ赤にして、いろんな意味で苦しい思いをしていた。
「バハハ!お前らもSHOP-GEARのメンバーか!?そいつと同じ目にあわせてやる!!」
「ふふ。そうは行かないわよ!お願い~ケイちゃん☆」
「ふぁぁ……うん?」
あくびをしながら、ケイは疑問符を浮かべて頷いた。
隣ではグレイシアがすでにスタンバイをしている。
「バハハ!『破壊光線』!!」
バキッ!!
「……!?」
しかし、バギマの指示よりも早く、ケイのグレイシアの氷のつぶてが決まった。
ただの一撃でギャラドスはのけぞった。
そして、ケイはその隙を逃さない。
「『捨て身タックル』!!」
息もつかせぬ連続攻撃。
氷のつぶて→捨て身タックルのチェーン技を受けて、バギマのギャラドスは空中に吹っ飛ばされて地面に転げる。
「そのまま、『シャドーボール』!」
「ぐむ!?ギャラドス、『じたばた』!!」
ゴースト系の攻撃を放つが、ギャラドスは地面に転がったまま暴れて、シャドーボールの攻撃を破壊した。
ダメージはあるはずなのだが、技の威力で相殺したらしく、それほど効果はなかったらしい。
しかも、じたばたしたままグレイシアへと襲い掛かる。
「『アクアテール』だぁ!」
じたばたの威力を保ったまま尻尾をブンブン振り回すギャラドス。
その様子を見て、ケイとグレイシアは後退するしかなかった。
「ふぁぁ……グレイシア」
少し下がったところで、ケイはある指示を出す。
だが、ギャラドスの尻尾がグレイシアに命中する。
バキンッ!!
「ぐむぅ!?弾き返されたー!?『まもる』か!?」
「そのポケモンは、ダークポケモンかぁ……。また、ダークポケモンが現れるなんて……」
ヘッドバンドにかけた機械から出る小さい電子モニターを通してギャラドスを見て、ケイは呟いた。
「さぁ、行くよ」
「馬鹿め!」
バギマとギャラドスは、間合いを取った。
「オラのギャラドスの攻撃を止められるものなら止めてみろ!!ギャラドス、『ダークストリーム』!!」
先ほど、リクのニドキングとベイリーフを一掃した技が、今度はケイとグレイシアに襲い掛かる。
「ふぁぁ……この技は、波乗りのダーク技版ってところかな?グレイシア」
そして、ケイのグレイシアは、最大の技を放つ。
氷系最強の吹雪である。
「むぐぅ!?」
カッチンと、あっという間に紫色の巨大な波は凍り付いてしまった。
「(凍らせたくらいで……)」
バキバキッ!!
そして、ほぼ同時に凍った波は砕かれた。
いや、斬られたと言うのが正しいかもしれない。
鋭い切れ味の葉っぱカッターが凍った波を通過して、ギャラドスにもダメージを与えていく。
同時に葉っぱカッターの勢いで、氷がギャラドスに向かって飛んで行き、ダメージを与える。
「行くよ」
ケイは左手にモンスターボールを持ち、前へと走っていた。
その先には、すでに葉っぱカッターを放ったポケモン……ウツボットが居合い切りで牽制した後、ギャラドスに眠り粉をかけていた。
「ギャラドス!!」
バギマが叫んだその時、ケイはすでにボールを手から放していた。
ボールは光りながら飛んで行き、ギャラドスにぶつかった瞬間に、大きな手に包まれるようにボールの中に納まった。
ギャラドスは抵抗しようとするが、眠ったままではろくな抵抗などできなかった。
ケイはギャラドスの入ったボールを手にとって、片方の手を口で押さえて呟いた。
「ふぁぁ……スナッチ完了……」
「ぐむぅ……!?オラのギャラドスが……スナッチされた!?」
バギマはたじたじと一歩後退させる。
「まさか……お前は、2年前にシャドーを壊滅させたトレーナーのケイか!?」
「ふぁぁ……うん?うん。そうだけど」
ポケーっとケイは眠そうに頷いた。
「(……もうポケモンはいない。……こうしている場合じゃない……)早くボスに報告しなければー!!」
「そうは行かないよー☆」
「なっ!?」
ミナミのミミロップがバギマに襲い掛かった。
「『ピヨピヨパンチ』☆」
ズンドンッ!!
「ぐはっ!!」
星を纏ったパンチを喰らい、クルクルと回転しながらバギマはノックアウトしたのだった。
第三幕 The End of Light and Darkness
「また、ダークポケモンが現れるなんて……」 終わり