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たった一つの行路 №150

/たった一つの行路 №150

 ―――ピース14年。
 この年、オーレ地方ではシャドーという組織が暗躍していた。
 ダークポケモンを操り、人々を混乱に貶めていたが、二人の男女のトレーナーの力により、事件は解決に導かれた。
 3年経ったオーレ地方には、ダークポケモンの存在など見る影も無かった。
 人々はシャドーと言う組織のことも記憶の片隅に忘れ去ろうとしていた。

 だが、しかし、シャドーの暗躍は終わりではなかった。
 これからの話はカレンがクレイン所長の要請を受けて、カントー地方へと旅立った日のさらに2年後の出来事。
 すなわち、カレンやハルキがオーレ地方を離れて、エースやライトに協力していた時にオーレ地方に起きていた事件である。



 ズドンッ!!

“うわっ!!”
“キャーッ!!変のなのが来たわー!!”

 パイラタウンのかつてシャドーのアジトがあった場所には、現在、リーダーがスレッドのONBSと言うコドモネットワークを進化させた情報局があった。
 そのメンバーの中にはかつてのコドモネットワークだった、レイラ、クロ、シホも一緒だった。
 だが、オーレ地方の情報の中枢の場所にある組織が侵入をしてきた。

「スレッド!あいつら、シャドーだ!」
「わかっている……でも……こっちには対抗する術が……」
「こんな時……カレンさんがいてくれたら……」

 クロ、スレッド、シホがそれぞれ言った。
 そして、そのシャドーたちはビシッと何かポーズを決め始めた。

「シャドーレッド、モノル!!」
「シャドーグリーン、ヘキル!!」
「シャドーブルー、ジレル!!」
「シャドーブラウン、トリル!!」
「シャドーイエロー、テトル!!」
「シャドーピンク、ペタル!!」
「「「「「「6人合わせて、シャドーレンジャーズっ!!」」」」」」

 ズドーンッ!!と最後は爆発まで起こる始末。
 それを見ていた他の全員はダサいとかカッコ悪いとかそれぞれ思っていただろう。
 しかし、スレッドたちを含めて口に出すことは出来なかった。
 実質、彼ら6人の手によって警備員達は倒されて、ONBSは制圧されてしまったのだから。

「ふぁ~……ダサくてカッコ悪いー」

 しかし、一人だけそう緩く呟いたものがいた。

「なんだと!?我々がカッコ悪いだと!?」
「…………」

 しかし、少年は答えない。

「オイ!貴様!答えろ!!」
「ふぁ?なんか言った?」

 少年は目の焦点を、自分の手を掴んできたグリーンの手にあわせた。

「ふざけてんのか!?」

 ガタン!ドンッ!!

「いつつ……イッタいなぁ……」

 少年は引っ張られて壁にぶつけられた。
 ぶつかった部分を擦りながら、マイペースに呟く。

「大丈夫!?」

 水色のワンピースのシホが慌てて少年に近づく。

「ちょっと、そのガキには痛い目にあってもらうぜ!!」

 グリーンの男はマダツボミを繰り出してきた。
 が、様子が少し違った。
 シホも違和感を感じたようでゴクッと息を呑む。

「…………。あっ……ダークポケモンなんだ」

「え?」

 少年はふと立ち上がった。
 その少年のヘッドバンドにかけている小さな機械から液晶パネルが出てきて、マダツボミを見通していた。

「!? なんで、貴様、ダークポケモンを見分けることが出来る!?」
「……ふぁ?なんか言った?」

 ピンクの人に言われて、少年は聞き返す。
 と言うより……とぼけてるのだろうか?

「ヘキル!俺もやる!!」

 ブラウンのトリルもピジョンを繰り出して、マダツボミと共に一斉に襲い掛かった。

「『ダークラッシュ』!!」
「『ダークウェーブ』!!」

 ピジョンの突進技と、波状攻撃が少年とシホの方向へと襲い掛かる。

「「シホ!!」」

 スレッドとクロが叫ぶ。

「……じゃあ、やろうか」

 ガチンッ! ガチンッ!

「え?」 「なっ?」

 突然のことにその場の全員が目をぱちくりさせた。
 いきなり、目の前のピジョンとマダツボミが凍り付けになってしまったのである。

「頂くよ」

 そして、すぐさま少年は片手で二つのモンスターボールを投げつけた。
 マダツボミとピジョンはあっさりとボールの中に納まってしまったのだった。

「なっ!?」 「何ィ!?」
「アレは……スナッチ!?」

 スレッドが少年を見て驚く。
 いや、驚いたのはスレッドだけではなく、その場に居合わせた全員だったわけなのだが。

「貴様……いったい何者だ!?」

 シャドーレッドが、スナッチマシンを持ち、オーレ地方では珍しいとされる氷タイプのイーブイの進化形を持つ少年に問いかける。

「ふぁ?ごめんなさい。ボーっとしていたよ」

 あくまでマイペースな少年だった。

「僕の名前はケイ。よろしく……ふわぁぁ……」

 あくびをしながら、少年は自己紹介をしたのだった。
 
「ケイ!?聞いたことない……こんなガキにやられたとなっては、シャドーの恥だ!!一斉にかかれ!!」

 残りの4人はダークポケモンを繰り出して一斉に襲い掛かる。
 だが……

「グレイシア、『吹雪』」

 一蹴。
 あっという間に4匹の氷像が完成して、あっという間に4匹もスナッチしてしまった。

「ば、バカな……」
「シャドーレンジャーズが……我々がこんなにあっさりやられるなんて……!?」
「くそっ!!撤退だ!てったーい!!」
「覚えてろーッ!!」

 こうして、いかにも悪役らしいセリフを残して6人は逃げ出していった。
 ケイはあくびをして、首をかしげながら、グレイシアを戻す。

「あれぇ?僕、どうしてここにいるんだっけ?」

 ケイは腕を組んで考える。

「ちょっと君……君は一体?」

 スレッドがケイを呼びかけるが……

「あ……。忘れてた。クレイン所長を助けにシャドーのラボに行く途中だったんだ。でも、ぼんやり運転していたら、パイラタウンについたんだっけ」
「「「(ぼんやりって……)」」」

 スレッド、シホ、クロは唖然とした顔でそう思った。

「行かないと……」
「あっ!!ちょっと待ってくれよ!」
「駄目だね、スレッド」
「うん……行っちゃったね」

 スレッドが止めるまもなく、ケイはマイペースにONBSを去っていった。
 そう。これがスレッドたちとケイの初めての出会いだった。
 そして、彼らは復活したシャドーとケイの戦いを見守っていくことになるのだった。



 たった一つの行路 №150



 シャドー壊滅から5年の月日が流れたそのとき、シャドーは再び復活していた。
 復活したシャドーはオーレ地方のあらゆるトレーナーにダークポケモンを配布して、世界征服をもくろんでいた。
 今回はXD001と呼ばれる謎のポケモンを使って輸送船リブラ号に積まれていたポケモンたちを奪って、ダークポケモンをどんどんオーレ地方に排出した。
 そして、フェナスシティやパイラタウンとシャドーの襲撃が多くなっていった。
 アゲトビレッジは、シャドーを滅ぼしたカレンがいるということで、襲ってこなかったと思われるが、実際のところ、カレンは現在オーレ地方にいなかった。
 そのため、シャドーを止めることのできる者はいないと思われていた。
 だが、救世主は彗星の如く現れた。
 パイラシティのONBSに襲撃してきたシャドーレンジャーズを倒し、シャドーによって乗っ取られたフェナスシティを解放し、シャドーのラボを破壊し、シャドーの秘密工場に潜入して、ダークポケモンの開発を止めたのだ。
 そして、その少年は……現在、ダークニケル島にいた。



 ピキンッ!!

 冷凍ビームがデンリュウに命中する。
 しかし、デンリュウの影に隠れていたウソッキーが岩落としを決めてラプラスを気絶させる。
 攻撃の隙を狙い、ガラガラがウソッキーを狙って骨ブーメランを仕掛けるが、それよりも早くデンリュウの爆裂パンチが決まった。
 冷凍ビームを受けても動けたのは、直前に張った光の壁のお陰のようだ。
 少年はデンリュウが攻撃のモーションを繰り出すのと同時に足を一歩踏み出した。
 片手に二つのボールを持ち、そのボールがピカリと光る。
 輝くボールを投げて、ラプラスとガラガラに当たると、2匹のポケモンはボールの中で大人しくなった。

「…………」
「……まだ来るの?」

 少年のデンリュウとウソッキーはダメージを負っていたが、まだ戦える。

「(残りはテッカニンとフライゴン……。だが、どちらもダークポケモンじゃない)」

 赤い服の男は、名前をエルデスと言う。
 シャドーのボスの側近の一人だった。
 もう一人の側近、青い服のアルドスは別の部屋で戦って勝っている。
 つまり、この男を倒せば、総帥の下へたどり着くことができるのである。

「(この子供にはダークポケモンは通用しない。だが、何故なんだ?どうして、ダークポケモンに打ち勝つことができる……!?)」

 エルデスは疑問を持ったまま、テッカニンとフライゴンを繰り出して行った。



 結果は明らかだった。
 迷いを持ったエルデスが勝てる確率は1%もなかったから。

「君は……どうして、恐れずに私たちに立ち向かうことができる?」

 少年……ケイは先に進もうとしたが、エルデスに尋ねられて、足を止めた。

「君を突き動かす物は何だ……?」
「…………」

 少し腕を組んで考えるケイ。

「……ふわぁぁ……ごめんなさい。わかんないや」
「……そうか。君でもわからないか」
「でも……ムニャムニャ……」

 目を擦りながらケイは続ける。

「僕は起きる時間を妹に決められたり、朝ごはんの時間を母さんに決められたりするのは嫌だもん。それと同じじゃない?」
「……??」
「誰かに支配されるのはヤダよね。勝手に心を閉ざされたり、強制的にさせられたりするのは嫌じゃない?同じだと思うな」

 「僕はもう行くよ」とケイはあくびを噛み締めながら、先に進んで行った。

「……面白い少年だ」

 彼の後ろ姿を見てエルデスはふっと微笑んだのだった。



「ここにシャドーの総帥が……?」

 ケイは飛行場の格納庫のような場所に来た。

「ついにここまで来てしまったか……」

 現れたのは、杖をついた法衣を着たおじいさんだった。

「……ビルリッチさん。……いや、シャドーの総帥、デスゴルド!」
「よくもわたしたちシャドーの計画を邪魔してくれましたね」
「うん」
「邪魔したのはあなただけではない。元スナッチ団のハルキ、アゲトビレッジのカレン……あの2人もわたしの計画を邪魔してくれたと言いましょう」
「……うん?」
「シャドーと言う組織を作って、5年前の市長、バックレーことワルダックを操っていたのは、わたしなのですよ」
「…………」
「ですが、あなたの知ってのとおり、計画はハルキとカレンによって破錠させられました。そして、また今度の計画もあなたの手によって……」
「ふわぁぁ……」
「って、聞いているのですか!?」
「ふぁ?……ごめんなさい。難しい話はよくわからなくて……」

 あくびをしながら謝るケイ。
 あんまり話を聞いていなかったらしい。

「もう話は終わりです。このポケモンによって吹き飛ばされなさい!!ダークルギア!!」

 天井がどんどん開いて、空が現れた。
 そして、XD001と呼ばれた存在……ダークルギアが空から飛来した。

「これがダークルギア……」
「どうだ……恐れをなしたか?」
「カッコイイ!!」
「え?」

 ケイはキラキラと目を輝かせる。

「普通のルギアと違って、ボディが黒いのがカッコイイ! しかも、目付きが非常に鋭くて強そう!! 絶対スナッチしてやる!!」

 ケイはなんかすっごくやる気を出した。

「そう簡単に出来るものか!ダークルギア!やってしまうのじゃ!!」

 ダークルギアは息を吸い込んで、一撃に力を込める。
 そして、すぐに空気を吐き出した。

「!!」

 禍々しい空気砲がケイに向かって飛んでくる。
 ケイは慌てて回避した。

「すっごいなぁ。今のはエアロブラスト?」
「今のは『ダークブラスト』ですよ。さぁ、もう一回だ!!」

 再び息を吸い込んで力を蓄える。

「『ダークブラスト』!!」
「グレイシア!!」

 ケイは一番のパートナーを繰り出した。
 出してしたことは最大パワーの吹雪。
 吹雪と空気砲。
 威力はダークブラストのほうが上だった。
 のだが……

「なに!?」

 ダークブラストはケイとグレイシアから逸れて行った。

「攻撃を逸らせた……ですと!?」

 ケイのグレイシアは、威力は相手の方が上でも、逸らすことができるほどの冷気コントロールをできたらしい。

「ヘルガー!!『噛み砕く』!!」

 そして、吹雪とともに繰り出していたヘルガーがダークルギアにダメージを与える。

「それなら、大技じゃなくて、小技だ!『ダークレイブ』!!」
「行くよ。サクラビス、『ハイドロポンプ』!!」

 サクラビスの水流がダークルギアをよろめかす。
 さらに、背後にはウソッキーがスタンバイしている。

「『岩石封じ』!!」

 岩でダークルギアを封じる。
 さらに、ケイの側にはウツボットの姿が。

「『ヘドロ爆弾』!!」

 動けなくなったところへ手堅い一撃。
 ホールドのためにはなった岩石封じを破壊するほどの吹っ飛ぶ。
 だが、それでも脚を踏ん張って、ダークルギアは体制を整える。
 しかし、すでに遅かった。

「『かみなりパンチ』!!」

 すでに飛び上がったデンリュウが、電気が迸る拳をダークルギアの頭に叩き込んだ。
 とどまることない連続攻撃を受けて、ダークルギアはヨロヨロになった。
 ヘルガーからデンリュウの攻撃まで、その間、2秒足らず。

「止めだ!!一斉攻撃!!」

 サクラビスの『サイコキネシス・ホールド』。
 ウソッキーの『岩おとし』。
 ウツボットの『パワーウィップ』。
 デンリュウの『10万ボルト』。
 ヘルガーの指揮する『袋叩き』がダークルギアに完全に決まった。
 そして、まさか、ダークルギアはあっけなく崩れ落ちる。

「ば、バカな!?」
「今だね!」

 左手から繰り出されるスナッチボール。
 あっという間にダークルギアはケイの元に渡ってしまったのだった。

「……ばっ、バカな!!」

 デスゴルドは膝をついて、呆然とする。
 しかし、すぐに杖をついて立ち上がった。

「よくもダークルギアを……。じゃが、まだ終わりじゃない……。わたしが直々に相手をしてあげましょう!!」
「……!!」

 戦いは実に凄まじいものだった。
 デスゴルドのダークポケモンたちはレベルも高く、そう簡単には倒せない屈強なポケモンたちだった。
 しかし、ケイも負けてはいなかった。
 デスゴルドと互角の力を発揮して、勝負を五分五分に持っていったのだから。
 しかし、互角だったのは終盤に入るまでだった。

「デンリュウ! ウツボット!」

 2匹の全体攻撃。
 それが、勝負を分ける一手だった。
 葉っぱカッターと放電によって、デスゴルドのポケモンたちは次々と倒れていった。
 もちろん、ダークポケモンのスナッチをケイは怠らなかった。

「終わりだよ!! グレイシア!!」

 最後の攻撃にグレイシアの吹雪。
 デスゴルドの最後のポケモンも凍りつかせて、ケイはスナッチに成功したのだった。

「バカな……わたしの完敗ですと……?」
「総帥!!」

 勝負の決着がついたときに駆けつけたのは、青の服装を着た幹部のアルドスだった。

「ふぁ?さっきの青い人……?」
「総帥!!今すぐここから逃げましょう!!ダークニケル島を爆発させます!!」
「ふぁ!?ば、爆発!?」

 さすがのケイも眠気が吹っ飛んだようだ。

「そんなことして何になるのさ!?ダークポケモンはもう全て僕がスナッチしたんだよ?シャドーの負けだよ!」
「うるさい!!総帥と私とエルデスがいる限り、シャドーはいくらでも復活できるんだ!例えここがどうなろうとも!」

 アルドスの叫びとともに懐から、何かを取り出した。
 リモコンのようだ。

「このスイッチを押せば、このダークニケル島は吹っ飛ぶ。そして、新たなシャドーの始まりとなるのだ。お前は動くなよ!」
「……っ!!」

 相手の出方がわからない以上、ケイは動くことができなかった。

 コツッ コツッ

 そのとき、足音が聞こえて、一同はそちらを見た。

「エルデス……」

 デスゴルドが赤い服を着た幹部の名前を呼ぶ。

「さぁ、エルデス。お前も一緒に新たにシャドーを作り直すぞ!!」
「…………」

 ガシッ

「!?」

 ところが、エルデスはアルドスの腕を掴むと、そのリモコンを奪い取った。

「何を!?」

 そして、地面に叩きつけて、粉々に粉砕してしまった。

「!!」
「やめましょう。父さん、兄さん」

 エルデスは呟くように言った。

「お前……!?」
「私たちは負けたのです。全てはこの少年の純粋な力の前に。私たちは幾度となくダークポケモンを作り出し、トレーナーに配り、さらにはこの少年に刺客を送り込んだ。しかし、それでも少年を倒すことはできなかった」
「…………」
「私たちの負けです。父さん、大人しく捕まりましょう」

 エルデスはデスゴルド……父にそう諭す。

「エルデス、負けを認めろと言うのか!?このままで終わるわけにはいかないだろ!?総帥もなんか言ってください!!」
「……エルデスの言うとおりだな……」
「総帥!?」

 デスゴルドの発言にアルドスは驚く。

「このままいくらわたしたちが戦おうとも、彼のような少年がいる限り、ダークポケモンで勝つことはできない。つまり、世界征服はできない……。私には世界を征服する力はなかったと言うことだな……」
「そ、総帥……」
「大人しく負けを認めよう……そして、わたしは自首する……」
「…………」

 ケイは地面に手をつくデスゴルドの姿を見てほっと息をついた。

「ケイ……と言ったな」
「赤のお兄さん?」

 ケイは名前を呼ばれてふと振り向いた。

「私たちの負けだ。私たちはこれまでやってきたことを償って警察に出頭する。後のことは私に任せてくれないか?」
「……本当に任せていいの?」
「?」
「今まで行われていた会話が全て嘘で、僕を帰らすための芝居だった……なんてことはないよね?」

 一瞬エルデスは呆気にとられた顔をしたが、次に表情を笑いに変えた。

「君は全てのダークポケモンを捕まえた。しかも、根元から全て刈り取った。ダークポケモンが出てくることはもうないし、もし私たちが復活しても、君なら私たちを何度も止められるだろう?だから問題ないさ」
「問題ならあるよ」
「……?」
「僕がめんどくさい……ふわあぁぁ……」

 あくびをしながらケイは言うけど、

「いいよ。僕は赤のお兄さんを信じるよ」

 そう言ってケイはにっこりと笑ったのだった。



 そして……

「お兄ちゃん!!お帰り!!」
「ふわあぁぁ……アイ?ただいま」

 走り寄って来る妹に挨拶をするケイ。
 彼は、帰るべき場所に帰ってきたのだ。

「ケイ……あなたは何て立派になったのかしらね。お父さんが生きていたらなんていうことだろう……」

 母親のリリアも涙を浮かべながら彼の頭に手を乗せる。

「ケイくん、すごいよ!これで全てのダークポケモンをスナッチしたんだ!後はリライブホールで全てのポケモンのココロを元に戻すことができる!」

 所長のクレインは大喜びだ。

「……本当によくやってくれたね、ご苦労様」
「……ふわあぁぁ……とりあえず、部屋で寝ていい?」
「ははっ、オーレ地方を救ってもケイくんはケイくんだね」

 クレインとリリアはケイの後姿を見ていた。
 のだが……

「お兄ちゃん!!」

 アイは違った。
 兄のケイの背中をポコポコと叩く。

「ふぁ?なあに?僕眠いんだよ……」
「アイ、お兄ちゃんみたいなトレーナーになる!!だから、ポケモンバトルを教えて!」

 アイは目を輝かせてケイのズボンを掴む。

「今度ね……。それまでバトルシュミレーションとかで練習してなよ……」
「約束だよ!!お兄ちゃんはアイのケライなんだから従わないとダメなんだからね!!」

 その言葉に後ろを振り向かず、手を挙げて答えたのだった。



 こうして、シャドーとの戦いは終わった。
 シャドーの総帥:デスゴルドとその幹部で総帥の息子であるエルデスとそれに関わったシャドーの幹部は、警察に出頭したと言う。
 ただ、デスゴルドのもう一人の息子であるアルドスは、未だ捕まっていない。

 ケイの戦いの日々が終わり、平穏な毎日が過ぎていった。
 そして……



 ―――1年後。
 ポケモン総合研究所。裏庭。

「デンリュウ!『かみなりパンチ』!!」
「メガニウム、『カウンター』!!」

 二人のトレーナーが戦っていた。
 ケイとカレンだった。
 2人がポケモンバトルするのはコレが2度目。
 最初はケイはカレンにポケモンを借りていた。
 しかし、今は自分のポケモンでカレンとバトルをしていた。
 2人の実力はオーレ地方の中でもトップクラスに入るほどの腕を持つ。
 だから、戦いは激戦だった。

「すごい……」
「これほどのバトルとは……2人ともすごいね」

 アイとクレインは遠くから2人のバトルを見ていた。

「あの少年……やるな」

 眼の鋭い少年、ハルキもその場に居合わせていた。

「カレンちゃん、ハルキくん、ケイくん……君ら3人がいるからオーレ地方は平和なんだ。この平和はきっとこれからも守られていくだろう」
「ああ。守ってみせる」

 ハルキは頷く。

「アイも!アイもオーレ地方の平和を守るんだから!!」

 クレインとハルキにポコポコと叩くアイ。

「デンリュウ!!『10万ボルト』!!」
「メガニウム、『ハードプラント』!!」

 そして、彼らのバトルの決着は30分後についたという。
 この日のオーレ地方の天気は、雲のない清々しい青空が広がっていたと言う。



 オーレ地方のもう一人の英雄 終わり









「私は……諦めない……」

 砂漠の中で声がする。

「面白いな」
「誰だ?」

 ケイに青い服と呼ばれていたアルドスは突然現れた目の前の人物に怒鳴り声をあげる。

「君の実力はまだ眠っているようだね。その眠っている力で私とともに歩まないか?」
「……っ!!(何だこいつ!?)」

 アルドスは相手の底知れぬ力に萎縮する。

「オーレ地方征服……そして世界征服……それが君の目標なのだろう?それなら、迷うことはない」
「お前についていけば、それが叶うと言うのか……?」

 その人物は唇を緩ませた。

「さぁ、どうする?」
「そんなの決まっている……」

 アルドスはその人物の手を取った。

「あなたとともに歩もう」



 To Be Continued The Third Crisis


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Last-modified: 2015-05-25 (月) 22:47:16
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