25
沈んでいく……
今まで培ってきたものがすべて沈んでいく……
苦しい……
体中に俺を蝕む何かがうごめいていて苦しい……
消えていく……
沈んでいくという感覚も、苦しいという思考も、全てが真っ暗になって消えていく……
死ぬってこういうことなのか……?
全てが無に変えることなのか……?
そこには白も黒もない世界なのか……?
俺は……無に……還る……のか……?
「気がつかれましたか?」
「(……天使?……じゃねぇな……)」
ゆっくりと目を開いた先にいたのは、オレンジ色の髪のショートカットの笑顔の女の子。
ラグナの興味の対象外の胸のない女の子だった。
「……ハ…ナ…か……」
「大丈夫ですか?喋るのもつらいはずなのでそのままで居てください」
「……。(俺は死んでなかったのか……)」
ラグナは一安心した。
自分の身体がどうなったかチェックしようと思ったのだが、身体が思うように動かなかった。
「本当に危ないところでした。あと11秒フラットでも遅れたら、完全に死神になるところでした」
「(なんだその11秒フラットと言う具体的な数字は……それに死神になってたまるか(汗))」
「急いで毒を抜いて、止血をして、輸血をして、処置を施しましたから大丈夫ですよ。ただ、動けないでしょうけど」
「(こいつ……笑顔でのほほんとしているくせに、こんな医学力を持っていたとは……驚きだぜ)」
「そういうわけで、ラグナさんはもうちょっとわたくしの膝枕で休んでくださいね(ニコッ)」
「(ああ?膝枕だと!?)」
そう。ずっとラグナは膝枕の状態で寝かされていた。
そして、ラグナは絶対思っただろう。
「(膝枕するなら、巨乳の女がいいに決まっているだろ!!)」
と。
「今、モトキお兄さん、ユウナさん、エレキさんが水晶壁の解放をしています。それが終われば……どうにかなるでしょう」
とハナはにっこりと微笑んだという。
たった一つの行路 №139
26
「……ふう……さすがにこの力を連続で使うのは無理そうね……力が入らないもの……」
ザンクスを倒したオトハが気絶しているのを見て、リリスはふうと息をつく。
「これで邪魔をする者はいないわ。さて、空間を越えて、まずどこから支配に行こうかしら……」
ゴオオッ!!
「!!」
背中に熱い感覚がして、リリスはふと振り向く。
「……逃がさない……」
「はぁ…はぁ…そうだ……僕は……お前を倒して……ネスたちを……助ける……」
先ほどまで気絶していたエースと満身創痍のリュウヤだ。
そして、リリスに攻撃を放ったのはエースのバクフーンだった。
「ふふっ……死に損ないに、何ができるって?」
エースとリュウヤの姿を見て、嘲笑うリリス。
「……何ができるかじゃない。……何をするかだ。できるできないは問題じゃない。やらないことは出来やしない。することからはじめなければならないんだ」
エースがバクフーンに手をつけて、力を振り絞る。
すると微かだが、淡い光がバクフーンに流れ込んだ。
「そう…だよ……しない…ことには…始まら…ないんだ……ラティ…オス、リザー…ドン……行ける…よな……?」
さばきのつぶてをもろに喰らったはずのラティオスも神速を受けて倒れたリザードンも再び立ち上がる。
「ふっ……面白いわね。じゃあ、その“始まり”を消してあげるわよ。始まりがなければ終わりもなくなり、結果的に全てが無くなるのよ」
「頼む…よ……リザー…ドン……」
立っているのも喋るのもやっとなリュウヤはリザードンに接近戦をさせる。
そのリザードンを援護する形でエースはバクフーンに指示を送る。
リリスも赤い光線を放つが、リザードンは何とかかわして、二つの炎の剣を繰り出した。
「(行くんだ……『ダブルフレイムセイバー』!!)」
バシュッ! バシュッ!
炎の2連撃がリリスにクリーンヒットした。
「あら、その程度なの?」
「(効いてない!?)」
リリスは手から刃を放った。
高速の攻撃はまったくよけられず、リザードンに当たった。
リザードンは落下した。深く傷ついてもう戦うことは出来そうもない。
エースのバクフーンも火炎放射を仕掛けるが、リリスは簡単に避けてしまう。
「さあ、終わりよ……」
2つの手を合わせて、何かをしようとしていた。
「アレは……避けられない……最大の攻撃で相殺させるしか……」
「くっ……」
エースがバクフーンに攻撃を仕掛けようとしたそのときだった。
一匹のポケモンがリリスの手を狙って攻撃し、手を他所の方へ向けて攻撃を逸らした。
『アイアンテール』だ。
「ライチュウ……?雑草か?」
「死に損ないがまだいたのか……」
3人の見た先には、一人の女性を抱えたヒロトの姿があった。
「ついさっき気がついたのは良かったけど、さっきの波動でいきなりオトハさんが飛んできて、キャッチしたのはいいけが、思いっきり吹き飛ばされてしまった」
とりあえず、ヒロトは気絶して眠っているオトハを地面に寝かせた。そして、自分の黄色のシャツをかけてあげた。
「とりあえず……お前が世界を崩壊させると言うのなら、俺がお前を止めてみせる!!シオン!!」
レーザー級のスピードで電撃波がリリスに命中する。
トップクラスの野生ポケモンの10万ボルト級の威力があるこの技で、たいていのポケモンなら一撃で倒せていたはずだった。
「残念、効かないわ」
「それなら……」
「待て、雑草」
「……!?なんだよ、バンダナ!」
ヒロトの肩をつかむエース。
「力を合わせて戦うぞ」
「……別にかまわないが……珍しいな。お前が俺に頼み事をするとは……」
「頼みごとじゃない。提案だ」
「……まあいいさ。その提案……乗ってやる」
ヒロトとエースがリリスを見据える。
「僕…も、戦う……ラティ…オス」
リュウヤもヒロトとエースに割って入る。
「何人束になってかかってきても同じよ」
リリスが影分身で体当たりを仕掛けてくる。
しかし、影分身は実体を持ち、攻撃力という点においては、岩をも砕く力を持っていた。
それを、リュウヤはラティオスにしがみついてかわしてもらい、エースはバクフーンと共に避け、ヒロトもシオンと一緒に攻撃をかわして充電していた。
「シオン!『マルチ10万ボルト』!!」
「バクフーン、『オーバーヒート』」
「ラティ…オス、『竜の…波動』」
10数本の電撃と全力の炎と緑色のエネルギー体が一斉にリリスに命中する。
3匹の攻撃が音をたてて爆発した。
「くっ!少し痛かったわ!!」
「(そんなに効いてない……!?)」
3人同時にリリスの反応に驚いていた。
これだけの攻撃をしたのだから、致命傷を与えてもいいと読んでいたのだろう。
「くらえっ!!」
リリスは先ほどザンクスを吹っ飛ばしたムチを振るい、ヒロトたちを襲う。
素早く、力のある技だ。
エースとバクフーンは何とか回避する。
だが……
「うわあッ―――!!」
リュウヤがラティオスと共にバチッと音をたてて、地面に打ち付けられた。
「リュウヤ」
エースはリュウヤを呼びかける。
「こっち…に…来る…な」
「……っ」
すると、エースとリュウヤの両者に向かってムチが飛んで来た。
「シオン!!」
だが、ヒロトとシオンがリリスに接近して、根元……手を尻尾で払ってムチの攻撃をそらした。
「(特殊技が駄目なら、打撃技だ!)『エレキテール』!!」
そのまま飛び上がって、リリスの顔に当てる。
ズドンッ!!と打撃音が響いてバチバチ!!と電撃がリリスに流れていく。
「(なっ!?びくともしない!?)」
シオンの尻尾で吹っ飛ばせず、そのままシオンは着地しようとした。
「鬱陶しいわね。喰らえ……」
「シオン!!」
高速移動でかわそうとするが、相手の攻撃はスピードのある散弾攻撃だった。
かわすことが出来ず、集中砲火をくらって、シオンは倒れた。
そして、その標的はヒロトにも向けられた。
「(まずい!)」
ヒロトは慌ててその場から離れようとした。
ドドドドドンッ!!!!
離れる前に小隕石が降り注ぐようにリリスに向かって攻撃を当て続けてた。
リュウヤのラティオスの『流星群』。
最大の技のはずだった。
「ふぅ……とどめを刺しそこねたわね」
「(これも駄目なのか……?)」
何事もなかったかのように、リリスはポンポンと身体の埃を払うような仕草を見せる。見た感じダメージはほとんどないようだ。
「くそっ……どうすれば……リュウヤ……アレに弱点はないのか!?」
ヒロトはリュウヤたちの元に戻ってきて、焦って聞く。
「どこか…にある…はず……そこ…を…最大の一撃で……うっ……」
リュウヤが不意に倒れそうになると、一人の手が彼を支えた。
「大丈夫か?……だが、隙がない……」
「大丈夫だ」と気を取り直して、リュウヤは自分の足で立つ。
「これで吹っ飛ばして終わりよ」
リリスは翼を広げる。最初に放ったオトハを吹っ飛ばしたアレである。
「あれは防ぎようがない……」
「くっ……」
3人は自然と身構える。
だが、突然の事だった。
「くっ……な、何だ!?」
「「「……?」」」
リリスが突然胸を抑えて苦しみだした。
そのせいで、羽を閉じてしまった。
「……一体どうしたんだ?」
「知らない。だが、チャンスだ。バクフーン、『バーストフレイム』」
背中に炎の翼を纏って、リリスへ向かって体当たりをした。
凄まじい衝撃で一瞬、リリスは顔をゆがましたが、手で弾き飛ばされてしまった。
炎で衝撃を和らげて、バクフーンは地面に着地した。
「少し効いたな……」
「しかし、あいつはどうしたんだ?」
リリスは困惑する。
「どうして……!?力が抜けていく!?どうしてこんなことに……!?」
少し考えてリリスはハッとした。
「まさか……下のフロアで!?」
ヒロトたちが当の最上階……“世界の狭間”で最終決戦を行っている頃、残りの者達は最下層の六角形フロアである行動を起こしていた。
「見つけた。ウイりん、お願い」
西のフロアで水晶壁を見つけると、ユウナは軽く火であぶってあげた。
すると、水晶壁はみるみるうちに溶けていった。
そして、一人の女の子が落ちて来るのをユウナはキャッチする。
「モトキの言うとおりだったわね。簡単に助け出せたわ」
そして、懐から小型の機械を取り出した。無線のようだ。
「こちらユウナ。女の子を一人助けたわ。そっちはどう?」
東のフロア。前髪の長いダークグリーンの少年はムウマージとともにいた。
「こ、これだね。ム、ムウマージ、お願い!」
こちらもエレキが水晶壁を徐々に溶かしていく。
そして、次の瞬間に一気に崩れた。
「う、うわぁっ!!」
その結果、エレキに雪崩れるように水晶壁の欠片たちが落ちてきた。
いや、落ちてきたのはそれだけではなかった。
「…………??」
エレキはキョトンとしていた。
水晶壁が崩れたのはいいが、自分には何一つ降りかかってはこなかった。
だから、痛みを感じなかった。
しかし、代わりに感じられるのは一人の重みと、唇に感じる柔らかい感触だった。
「…………」
さらに数秒間、エレキはそのままでいた。
自分は仰向けになっていて、誰かがのしかかっているのがようやく把握できた。
そして……
「っ!!!!」
慌ててエレキは彼を……いや、彼女を押しのけた。
顔を真っ赤にしてエレキは息を切らした。
その様子をムウマージは悪戯っ子の様な表情で終始見ていた。
“こちらユウナ。女の子を一人助けたわ。そっちはどう?”
さらにユウナの無線の声にドキッと心拍数を跳ね上げさせる。
慌てて、エレキはポケットに忍ばせているポケギアをとった。
「え、え、エレキです。じょ、じょ、ジョカちゃんをたす、助けまして、ました」
「後は……(ズズッ)」
お茶を飲んでリラックスしているのは、もちろんハナだった。
彼女の手にもちゃんとポケギアが握られていた。
“♪こちら~モトキ~老人を助けたよ~”
そのポケギアにモトキからのコールが入る。
「これで6人全員が解放されたようですね」
「それが…解放されて…何か…起きるの…か?」
途切れ途切れの言葉をつないで膝枕をされているラグナがハナに尋ねる。
「ええ。これから、禁忌のパワーが落ちることでしょう(ズズッ)」
ハナは笑顔でにっこりそう言ったのだった。
「まさか……下の奴らの仲間が6人全員を解放したの!?ありえないわ!!下のフロアにはまだアウトやTSUYOSHIがいるはずなのに!!」
突然の力の消失にリリスは戸惑いを隠せない。
そして、不意にリリスの胸に赤い光が灯る。
「……アレは……?」
ヒロトが先に気がついた。
「アレがそうかもしれないな。バクフーン、『オーバーヒート』」
よく狙って、この日何度撃ったかわからない技を放つ。
さすがのバクフーンもここまで来て技の威力が落ちていた。
「そんなの……当たるもんですか!!」
シュッ!!と素早くかわしてバクフーンに接近。
全身に刃を形付けをしたリリスがバクフーンを切り刻んで吹っ飛ばした。
「くっ」
威力も落ちて限界に近づいていたが、体力の方ももう一回喰らえば倒れてしまうだろう。
トキワの力を使いたかったエースだが、少ししか力使えなく、さらに自分もケガを負っている今、それは出来なかった。
その間に、リリスは3人と3匹と間合いを取る。
「弱点がわかっても……攻撃が当たらなければ終わりよ!!これで全員……消えなっ!!」
苦しそうに叫びながらリリスは、力を溜めて羽を広げ始める。
「(くっ……『ネオ・ブラストバーン』さえ当たれば……)」
「(もう駄目なのか……?)」
「…………」
エースとリュウヤが唇を噛み締め、絶望がちらつく中、ヒロトは溜息をついた。
「俺があいつの弱点に最大の一撃を叩き込む」
「ヒロ…ト?」
リュウヤがヒロトを見る。釣られてエースも顔を向ける。
そして、ヒロトはファーストポケモンのザーフィを繰り出した。
「バンダナのような遠距離攻撃では、さっきのようにかわされる可能性がある。それなら、打撃攻撃を叩き込めばいい話だ。それが出来るのは、俺だけだ」
「接近戦…は危ない…ぞ……やめろ……。あの禁忌…は……膨大な…エネルギーを…持って…いるんだ……。下手に…攻撃して……ゴホッゴホッ……」
リュウヤは嘔吐する。
エースが様子を見るが、すぐにリュウヤは続ける。
「爆発で…死ぬかもしれない……ぞ……」
「…………」
ヒロトは何も言わず、飛び乗った。
「ヒロ…ト……?」
「おい。やめろ」
ヒロトの手をつかむのはエースだった。
「俺がやる。雑草なんかに任せられるか」
じっとヒロトはエースの目を見た。
一方のエースもヒロトの目を見ていた。
「まったく……。わかった……仕方が無いな」
ヒロトはザーフィから飛び降りた。
「わかればいいんだ。よし、作戦を―――」
ゴスッ!!
「なっ?」
不意にエースの腹に衝撃が走った。その腹にはヒロトの拳があった。
「雑草……お前……何を……」
膝をつき、ヒロトの腕を何とかの思いで掴む。
「お前には待っている人がいるんだろ……。悪いがお前とライトには幸せになってほしいと思ってんだよ」
ヒロトはエースの手を強引に振り解いた。
「くっ……お前は……大バカ野郎だ…………(お前にだって待っている人がいるだろ…………)」
チラッと近くで倒れている女性を見て、エースは地面に倒れて気絶した。
「ヒロ…ト……あいつは…またあの技を……」
「大丈夫だ。ザーフィ。『エンシェントグロウ』発動!!」
ザーフィに乗ったヒロトは、内なる力を解放させた。
「その…力…は……!!」
「知っているのか?少し前にザーフィと一緒に修行しているうちにできるようになったんだ。『原始の力』を応用した技で、全ての能力をMAX状態にすることが出来る……」
「だけ…ど……」
「ああ。よくわかってるよ。この技は俺の体力と精神を喰らっていく。それならザーフィから離れればいいんじゃないかと思ったけど、俺がいないと力が暴走してしまう。だから、俺が抑えていないといけないんだ」
「…………」
「リュウヤ。後の事は頼んだぜ。そして、ナミネを幸せにしてやれよ」
「ヒロ…ト……君…は何で…僕のことを…そこ…まで……?僕…が君と同じ…状況を背負っ…ていたから…か?」
「……俺は自分の正直な気持ちに従ったまでさ。こうする事が俺の希望なんだ」
そして、ザーフィに乗ったヒロトは飛び上がる。
目指すは禁忌と融合したリリス。
「うぉ―――――――――――――――っ!!!!」
「向かってくるのね……それなら吹き飛びなさい!!」
ようやく力が溜まったリリスが羽を広げて力を解放する。
凄まじき波動がヒロトとザーフィに襲い掛かる。
「ザーフィ!!怯むなっ―――――――――――――――!!!!」
バシュンッ!! バシュンッ!! バシュンッ!!
3連撃の波動攻撃をザーフィとヒロトは一気にぶち抜いた。
そして、ぶち抜いた穴はリュウヤたちをも守った。
「くっ……次の技が……出せない……」
向かってくるヒロトをこちらも素早いスピードで逃げる。
だが、チェックメイト。
逃げ道にヒロトとザーフィがいた。
「これで……終わりだっ!!『エンシェントグロウ:フレアドライブ』!!」
「ぶつ…かる…」
リュウヤは遠い目でヒロトが最後の攻撃をする瞬間を見届けていた。
いや、見届けるつもりだった。
「う~ん……あれ……?ここはどこでしょう?私は誰でしょう?」
「……?」
近くで甘い唸り声が聞こえたので、そっちの方を見てしまった。
「ええと……あ、そうだ……リリスさんを倒さないといけないんでした!!」
「いや……それなら……」
リュウヤの説明は不要だった。
オトハは上を向いていた。
「え……?ヒロトさん?」
烈火に包まれたザーフィと共にヒロトはリリスの胸のコアに直接ダメージを与えた。
「そんな嘘よ……禁忌と融合したはずのあたしが……全ての世界を支配するはずのあたしが……消滅する!?……なんで……なんでよ!?神にも劣らぬ力をもって何故負けるの……!?」
リリスが悲鳴に近い形で叫ぶ。
「力の優劣は関係ない……。ただ、この世界は自由のはずだ。誰も支配される事を望んでやしない。お前にも神にも……な」
ヒロトが押し殺したような声で呟く。
「うわぁあ――――――――――――――――――――――――――――――っ!!!!!!!!」
リリスの体が燦然と輝く。
そして、次の瞬間、空間が割れるような大爆発を起こした。
「キャッ!!」
「くっ……」
オトハは地面にしがみつき、リュウヤは倒れているエースをつかんで、何とかやり過ごそうとした。
「ひ、ヒロトさんッ!!ヒロトさーん!!!!」
オトハの彼を呼ぶ声が爆発の音でかき消されていったのだった。
第二幕 Dimensions Over Chaos
ラハブの新境地⑯ ―――待っている人の為――― 終わり