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「ここは……?」
ザンクスを追いかけて上へ上へと登ってたどり着いたのは、混沌とした空間だった。
「ここは……“世界の狭間”」
リュウヤがボソッと口に出す。
「……それはなんだ?」
「世界と世界は断崖によって隔離されていて干渉することはない。けど、たまに世界と世界を繋ぐ現象が起こることがある。そうなった場合、世界と世界を繋ぐ橋となる。ところが、その橋は長時間保つことができない。片方から自然と切断されてしまう。そうしてできた“でっぱり”が“世界の狭間”だ」
「…………」
「ここは時空間に飲まれやすい場所でもあるから気をつけないといけない。わかった?」
「ああ」
「よし、一刻も早くザンクスを見つける!!」
「見つける必要なんてありませんYO」
「「!!」」
リュウヤとエースは上を見た。
そこにはスターミーに乗っているザンクスが立っていた。
「ここで2人とも、狭間のチリに変えてあげますYO」
「……リリスはどこだ!俺は奴を倒して、ネスたちを助ける!!」
「……妹を助けるにはお前を倒さないといけないらしいからな……覚悟しろ」
エースはハクリュー。リュウヤはフライゴンを繰り出してザンクスに言った。
「やる気ですNE」
新たにミミロップを繰り出すザンクス。
そして、ザンクスはスターミーから飛び降りた。
「さあ、やるのでSU!私のしもべたちYO!!」
かくして、こちらもザンクスとの戦いが幕を開けた。
たった一つの行路 №137
「(おかしい……どうしてトキワの力が使えない……?)」
ザンクスのスターミーと戦っているエースなのだが、すでにバンギラス、メダグロスが倒されてしまっていた。
現在戦っているハクリューも押されていた。
「(だが、力が使えなくても倒してやる)ハクリュー、『神速』」
シュッ、ズゴッ!
細っこい体で蛇の如くしなやかに動いて、スターミーにぶつかっていく。
だが、スターミーは高速スピンでハクリューを吹っ飛ばす。
打撃攻撃が完全に殺されてしまう。
「(それなら……)『10万ボルト』」
しかし、特殊攻撃を放ったとしても、スターミーはハクリューの神速並のスピードで攻撃を回避してしまう。
「(……後ろ?)ハクリュー、『竜の波動』」
スターミーの気配を読み取り、タイミングを合わせて相手の光線の相殺を試みる。
しかし、竜の波動はあっけなくかき消されて、ハクリューとエースを吹っ飛ばす。
「ぐっ」
「エース!!」
リュウヤがエースに声をかけるが、それだけで助けようとはしなかった。
彼もフライゴンでミミロップと戦っていて、全く油断のできない状況だったからである。
「スターミー、『ウォータープリズン』DA」
ハイドロポンプ級の水を繰り出すとそのままエースを包み込んでしまった。
当然中は水。エースは息を止める。
しかし、ずっとこのままだと水死してしまう。
「(ぐっ……体が動かない……水なのに氷のように固まって動かせない……)」
それもそのはず。スターミーはサイコキネシスで水を分子レベルまで氷のように固めてエースの動きを拘束したのだから。
「!! フライゴン!!」
エースの様子を見て焦ったリュウヤはフライゴンで勝負に出た。
ミミロップの格闘技に苦戦していたのだが、特攻に近い形でドラゴンクローを繰り出した。
「その攻撃でミミロップが倒せるとでも思ったのですKA?」
ミミロップの懇親の一撃を込めた気合パンチがフライゴンに入ろうとしたそのときだった。
「カイリュー」
リュウヤはカイリューを繰り出して、ミミロップに襲い掛かった。
フライゴンは気合パンチは避けることもできずに、当たってしまった。
だが、カイリューの全力の突撃でミミロップを倒すことができた。
「くぅ……」
リュウヤは先日痛めた傷を抑えて息も絶え絶えとしていた。
「OYAOYA……リュウヤ・フィラデム……もう終わりですKA?」
目の前にはザンクスのオオスバメが襲い掛かってくる。
リュウヤはカイリューを繰り出して、何とか攻撃を防いだ。
「『ドラゴンクロー』!!」
鋭い一撃が空を切る。
オオスバメは軽くかわして、カイリューにツバメ返しを決める。
ダメージはそれほどないが、まったくないワケではなかった。
「(早くしないと……エースが……)」
リュウヤはオオスバメとザンクスの先にいるエースを見る。
エースはスターミーが作り出す水の結界の中に閉じ込められていた。
すでに息が限界で、意識を失いかけていた。
「(あの中ではポケモンを出すこともできない……僕がスターミーを倒さないと!!)」
しかし、オオスバメが最大の一撃を放つ。
「『蒼・燕・斬』」
「!!」
空気を切り裂く最大の技がカイリューとリュウヤを巻き込んで爆発した。
「まさか、これで終わったわけではないですよNE?」
バッとザンクスの後ろを取ったリュウヤとカイリュー。
さすがのザンクスも虚を突かれていたか、反応が遅れた。
オオスバメのツバメ返しよりも先にカイリューのドラゴンクローが炸裂した。
「もう一回!!『ドラゴンダイブ』!!」
地面があると思われるところに向かってオオスバメを押しつぶす。
そこからスターミーを見て、破壊光線を放った。
スターミーはエースを拘束していたため動けない。ゆえにかわすことはできず、攻撃に飲み込まれた。
スターミーの技が解かれて、エースは水の牢から脱出した。
エースが息を荒くしながらも意識を保っているのと、ザンクスのオオスバメとミミロップ、そしてスターミーを倒したことを確認して、リュウヤは一旦カイリューを戻す。
「ザンクス……お前の残りはあと3匹だ!」
「FUFUFU……面白いですNE。それなら、残りのポケモンを全て見せてあげましょうKA?」
「一体何が出てくる……?」
エースも気を取り直してザンクスの動きをしっかりと見る。
「さぁ、行くのですYO。我が最強のしもべ……竜虎の陣:ギャラドス&エレキブル……創造の神:アルセウス!!」
「アルセウス!?」
「アルセウス?」
2人の目の前に現れたのは、虎のような模様をした電気ポケモンエレキブル。
龍の姿をしたギャラドス。
そして、白を基調としたアブソルと似たような姿をしたポケモンだが、大きさが3メートルくらいある。
その姿にエースとリュウヤは険しい顔をした。
「見たことないポケモンだが……化け物並みに強いということは間違いなさそうだな……」
「ああ。宇宙を創造したと言われるポケモンだ」
「宇宙を創造した……?神のようなポケモンだな」
「そういって間違いない。少しの油断も許されない!!」
「FUFUFU……リュウヤ・フィラデム。君の相手はこの竜虎コンビ。そして、そのバンダナはアルセウスがじきじきに相手をしてあげるYO。覚悟するんDA」
一斉に3匹が襲い掛かる。
「エース……全力で戦うんだ」
「そうだな」
エースはバクフーンとクロバットでアルセウスを迎え撃つ。
その一方でリュウヤはボーマンダとリザードンを繰り出して、エレキブルとギャラドスと対抗した。
ボーマンダがエレキブルと接近戦で戦い、リザードンがギャラドスと遠距離戦で戦っていた。
互いの力は互角。だから、その戦いの優劣を決めるのはトレーナーの力量次第だった。
「…………っ!!」
不意に彼の腕に痛みが走る。
いや、それだけじゃない。彼はもう体がボロボロだった。
一人で無理してここに来たときに、ヒロコ、スティーブ、カネコウジの戦いで負った傷は全く癒えていない。
その体で塔を全力で駆け上がって、体力も残されていない。
そんな状態でザンクスと戦うなんて無謀としか言いようがなかった。
「全く褒めてあげますYO!一人の女と仲間のためにここまで戦うとは、素晴らしい事この上ないですNE!だが、君一人ではどうにもならないのですYO?」
「僕は……一人なんかじゃない……。僕は一人で戦っていたんじゃない……」
「まさか、ポケモンと一緒に戦っていたと世迷言を言うんじゃないでしょうNE?」
「世迷言?バトルはポケモンと一体になって戦うものだ。決して一人で戦うことなんて出来やしない!」
「そうかNA?現に今、私は全く指示を出していないが、ポケモンたちは戦っているではないKA?これはどう説明するんDA?」
エレキブルの雷パンチを受け流しながら、ボーマンダはドラゴンクローで攻撃を試みる。
翼のあるボーマンダは、間合いを取って、勢いをつけてから何度でも攻撃を繰り返す。
その際、カウンターを受けないように細心の注意を払いながら攻撃をしていた。
リザードンは火炎放射で牽制しながら、ギャラドスの水攻撃を回避し、打撃技を打ち込むために隙をうかがっていた。
しかし、ギャラドスも接近攻撃能力が高いために全く予断は許されない状況が続く。
これらの戦いはリュウヤやザンクスの指示無しで各自の考えに基づいて動いていた。
「僕が指示を出さなかったとしても、僕とポケモンたちの考えは一緒だ!みんなを助け出す……その考えの元に動いているんだ!!ボーマンダ!リザードン!」
リュウヤが一声あげるだけで、2匹の動きが格段に上がった。
ボーマンダはドラゴンクローと見せかけて、かみなりパンチをかわしたあとに、尻尾でエレキブルをぶっ飛ばす。
リザードンもギャラドスのハイドロポンプを当たる覚悟でギリギリでかわして、自らの炎で作った炎の剣でギャラドスに一太刀浴びせた。
「畳み掛けろ!!」
ボーマンダは息を吸い込んで強力な竜の波動……いや、咆哮を打ち出した。最強の技『竜の咆哮』だ。
威力的には『時の咆哮』にも負けない技である。
リザードンは炎の剣を槍の様に投げつける。
2人の攻撃対象はスイッチしていた。
つまり、ボーマンダがギャラドスへ。リザードンはエレキブルへと対象をチェンジさせていたのである。
「エレキブル、ギャラドス。そろそろ本領を出しなさいYO」
ザンクスが指示を出すと、2匹は攻撃をギリギリで回避した。
リュウヤはじっと2匹の様子を観察していた。
ギャラドスがエレキブルを防御するように体で囲んでいた。
「『竜虎の陣』」
「何をするか知らないが……リザードン!ボーマンダ!」
さっきと同じ、炎の剣の投擲と竜の咆哮を繰り出す。
2匹に当たれば大ダメージを与えるはずだった。
「ギャラドス、『竜の舞い』DA」
ギャラドスの体から湧き出るオーラが2匹の攻撃を弾いてしまう。
「エレキブル……『雷鳳丸<らいほうがん>』!!」
手から電気の塊を集中させた物をぶつける技だった。
だが、当たらなければ意味はないのだが、当たらない方がおかしかった。
まるでテレポートみたいにすぐにボーマンダの上にでてきて、攻撃をぶつけたのである。
その電気の塊は爆発して、弾けた。
「つぅ……!!ぐわぁっ―――!!」
爆発の衝撃はリュウヤをもふっとばし、身体が地面を転がる。
そして、リュウヤは悲鳴を上げる。
全身傷だらけのリュウヤは転がっただけでも身体に相当負担をかけることになるのである。
「ギャラドス、『竜の怒り』DA!!」
ザンクスは容赦しなかった。
リュウヤに向かって、怒涛の攻撃を連続で繰り出して行く。
それに割って入るのはリザードン。
二刀の炎の剣で攻撃を弾き返していく。
「うわぁっ――――――!!」
一発、いや、二発がリュウヤに被弾した。
リザードンが振り向こうとしたがやめた。
リュウヤならきっと「構うな。目の前に集中しろ」って言うと思ったからだ。
そして、ギャラドスをすぐ目前まで来た。
「残念ですNE」
目前まで迫ってリザードンの頭上に雷の塊を掌に構えたエレキブルの姿があった。
「消えるんDA!」
ドガンッ!!
だがしかし、ザンクスの思い通りにはならなかった。
「ボーマンダKA!?」
激しい傷を負ったボーマンダだったが、そんなこともお構いせずに、エレキブルに懇親のタックルをかました。
それはほんとの意味の捨て身タックルだった。
斜め45度の角度で降下して、上空にいるエレキブルを巻き込んでそのまま地面にぶつかるように攻撃したのだ。
自分だって無事で済むはずはない。
だが、エレキブルは確実にそれで倒すことができた。
自分は倒れてしまったのだが。
「これはやられたKA……」
そして、リザードンを遮る者は何もない。
ギャラドスの噛み付く攻撃もしっかりとかわして、2つの炎の太刀が完璧に決まり、最後にブラストバーンを放ってギャラドスを倒すことに成功した。
そして、リザードンは振り向くと、リュウヤがひどく傷ついて仰向けになっている姿を目撃した。
「FUFUFU……リュウヤ・フィラデム……死んだか?まさかポケモンに自分の託して最期を遂げようとするなんてな」
その言葉にリザードンが吼える。
ザンクスに襲い掛かろうとする。
バキッ!!
不意にリザードンは何か見えない攻撃によってぶっ飛ばされる。
遠くまで吹っ飛ばされたリザードンはそのまま地面に仰向けに倒れた。
「竜虎の陣が敗れたとしても、まだこいつがいるんだYO。リュウヤ・フィラデム!最大の切り札……アルセウスがNA!!」
そのアルセウスと対峙していたエースだったのだが、すでにクロバットは倒されて、バクフーンも瀕死に近い状態だった。
「……くっ……オイ……リュウヤ?しっかりしろ」
起こそうとするが、揺すっても返事がない。
「さて、まとめて消してあげるYO」
「させない。バクフーン、『バーストフレイム』!!」
最大の接近戦で勝負する。
しかし、通常のスピードスターであっけなく吹っ飛ばされる。
「(……強い。俺がトキワの力を使っていないとはいえ、こうも簡単に最大の技を破るとは……。オーバーヒートも効かなかった。これしかない)」
威圧感をひしひしと放つアルセウスに向かって、エースはバクフーンに指示を出す。
「バクフーン!!『ネオ・ブラストバーン』!!」
最大パワーのオーバーヒート3発分の火炎を一気に放つ。
スティーブの最大の技や水晶壁を内側から破ったこの技なら間違いなくアルセウスに通用すると……そう信じていた。
「一発に凝縮された炎KA。……『大地の力』DA!」
アルセウスが地面を踏みつけると、その場からまっすぐ一直線に下から衝撃波が湧き上がった。
その威力はバクフーンのネオブラストバーンと互角だった。
だが、バクフーンの攻撃が一直線に進むのに対し、アルセウスの攻撃は下から突き上げるような攻撃をしている。
つまり、同じ威力であっても、バクフーンの攻撃は相殺することもできるし、さらに攻撃はバクフーンとエースへと攻撃を当てることもできた。
「(避け……られない)」
エースは飛び退いて攻撃を避けたが、予感は的中した。
攻撃を放っていたバクフーンとエースは大地の力に巻き込まれて、上空へと打ち上げられて、地面に打ち付けられた。
「く……」
その攻撃でバクフーンもエースも気絶した。
「これで……2人片付いたNA。あとは……」
アルセウスを戻そうとした。
しかし、モンスターボールをかざそうとしてザンクスは手を止めた。
「……この威圧感……まさか……?」
ふと後ろを振り向くと、竜の刺青の男が辛うじて立っていた。
「……まだ生きていたとは……」
「……勝手に人を殺すな……。言っただろ……僕は……みんなを助けるまで……死ぬわけには行かないんだ……」
そして、リュウヤはラティオスを繰り出す。
「この命が尽き果てようと……僕はお前を倒すんだ!!」
「FUFUFU……さあ、お前の命の灯火を見せてみるんDA!私が一吹きで消し去ってやるYO」
ラティオスとアルセウスが真っ向から激突した。
第二幕 Dimensions Over Chaos
ラハブの新境地⑭ ―――VSザンクス(前編)――― 終わり