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たった一つの行路 №132

/たった一つの行路 №132

 ネス……エリー……マレン……チロル……
 ついにここまで来たよ……
 この階段を登った先にあいつがいる……
 僕が……全てに決着をつける……
 ……待っていろ!!ザンクス!!

 そして、待っていてくれ……ナミネ……
 僕が……今迎えに行くよ……
 あの星の下の約束を……絶対に僕は守ってみせる……



 たった一つの行路 №132



 16

「ちっ!邪魔をするNA!!」

 ラハブの新境地、塔の中層階。
 ザンクスがこの場所へ戻ってきたのはいいのだが、彼にとって邪魔者がついて来てしまった。
 足にしがみついている彼を蹴り飛ばし、ザンクスは荒く息をする。
 彼……エースの方も同じだが、こちらはさらに怖い顔でザンクスを睨みつける。

「ジョカを……返せ」
「……別に返してあげてもいいですYO。しかし、邪魔したあなたを私は許すことができないですNE!!」

 テレポートをしたスターミーのコアが赤く光る。

「『スターフリーズ』!!」
「シャワーズ、『オーロラビーム』」

 冷静に判断して、攻撃を相殺させようとする。
 だが、エースの思いどおりにならなかった。
 スターフリーズはオーロラビームを軽くぶち抜いて、シャワーズを一撃でダウンさせてしまった。

「!?」
「どんどん行きますYO!!」
「(おかしい……『トキワの力』が使えない)」

 自分の力の異変に気付きながらも、クロバットを繰り出して、スターミーと戦う。
 しかし、かわすだけの防戦一方でエースは完全に押されつつあった。

「クロバット、『グランドクロス』」
「スターミー、『スターフリーズ』DA」

 ズドンッ!!

 攻撃は相殺にとどまった。

「(っ……。あの程度の攻撃を相殺しかできないのか?)」

 エースは焦りを感じていた。

「…………。どうやら、主賓が到着したようですNE」
「主賓?」

 エースはふと後ろを見た。すると、いきなり強大な炎が後ろから飛んできた。
 慌ててエースは飛び退き、その炎はザンクスを捉えた。
 そのままその炎は塔の外へと出て行ってしまった。

「あーあ。派手にやってくれますNE。卓球台とかダーツとかビリヤード台が使い物にならないじゃないですKA。リュウヤ・フィラデム」

 ザンクスが相手の名を呼ぶと、リザードンに乗って彼はやってきた。

「ザンクス……今日こそナミネを……ネスを……みんなを返してもらう!!」
「FUFUFU……役者は揃ったようですNE」

 そういうと、ザンクスはスターミーに乗った。

「私を倒したいなら、追ってくることですNE」

 すると、さらに奥にある階段へとエースとリュウヤを誘った。

「「待てッ!!」」

 エースとリュウヤは2人を追っていったのだった。



 17

 ―――ラハブの新境地の中心エリア。
 最大の一撃が吹き荒れていた。
 その中で立っていたのは、ダーテングのみ。
 ストライクは地面へと伏していた。

「てめぇの残りポケモンはあと一匹だな!」
「違うな。私の残りはまだ2匹いる」

 軽くボールを放ると、中からハッサムが出てきた。
 だけど、ラグナのレントラーの戦いで体が麻痺しているようだった。

「しかし、この麻痺は問題じゃない。ハッサム、『リフレッシュ』」

 自然にハッサムは麻痺を治してしまう。

「つまり、君と私……最後の2匹同士の戦いというわけさ」
「そうか……」

 バキンッ!!

 ダーテングとハッサムが接近戦で打ち合う。

「『裂水』!!」
「『シザークロス』!!」
「『リーフスラッシュ』!!」
「『スタンブレード』!!」
「下がれ!!」
「『エアスラッシュ』!!」

 強烈な一撃、回避しての一撃、退避し、右へと跳ぶ……。
 アウトの技の応酬にラグナとダーテングはどんどん追い詰められていく。

「(基本的な技の威力が互角じゃ、やっぱ『裂水』で押し切るしかねぇ。だが、当たらないことには意味がねぇ。どうやって当てるかが問題だ)」

 攻撃を受けながらラグナは必死に考える。
 その攻撃でどんどん地面はボコボコになっていく。
 ずっと今までのアウトとのバトルで、地面はエアスラッシュで削られたり、水系の技でドロドロになったりしてた。
 その度に、ラグナは足場のいい場所を選んでアウトの攻撃を避けていた。
 ラグナは唇を噛み締める。

「(一か八かだが、悪路で戦ってアレを狙うしかねぇ)ダーテング!!」
「どうやら、足場の悪い場所で戦って、私たちの隙を狙おうというのか……作戦としてはいいがハッサムは飛べる。不利になったのは君だと思うが?」
「うるせぇ!『裂水』!!」

 飛んでいる(というより少し浮いている)ハッサムを狙い、強烈な斬撃を放つダーテング。

「そのくぼみの中に落としてやるよ。『ロストセフィティ』!!」

 ダーテングの懇親の一撃をかわすと、ハサミ攻撃の応酬を仕掛ける。
 手の葉っぱで受け止めようとしているが、ハッサムのスピードとパワーに押されて行く。

「やれ!」

 一撃を振り下ろすと、ダーテングは窪みにずるずると落ちていった。
 同時に、止めを誘うとハッサムは窪みの中へと飛び込む。

「止めだ。『サイレントブレード』」

 だが、ラグナはにやりと笑った。

「ここまで接近すれば、避けらんねぇだろ!?」
「な!?まさか……悪路で戦っていたのは、ハッサムの隙を狙うためじゃなく、ダーテングがワザと隙を見せて、接近させるための布石……!?」
「てめぇは引っかかったんだよ!!ダーテング!『裂水』!!」

 ダーテングはずるずると背中から大きな窪みに落ちていくが、その体勢からハッサムがハサミを振るう前に強力な斬撃を放った。
 その一撃はまっすぐ伸びて、塔にさえも達して傷を残したという。
 荒く息を吐いて、敵を見る。
 湖を真っ二つに切り裂くほどの威力を持つ一撃をようやく、ハッサムに当てたところで、ラグナは言った。

「今度こそ、てめぇの残りは一匹だ!!」

 ビシッと指差して、アウトを挑発する。
 しかし、アウトは余裕綽々と言わんばかり、モンスターボールをジャグリングして遊んでいた。

「少年……良くぞここまで戦えたものだ。称賛に値するよ」
「あ゛?称賛なんていらねぇ。敵に褒められても嬉しくねぇんだよ」
「確かに少年は強い。何せ私のポケモンを5匹まで倒したのだから。そう、最強の一撃を持つメガヤンマを含めてな」
「…………」
「しかし、最後のポケモンを出しすからには少年の命はないぞ」
「あ゛?命はないだと?そんなのやって見ねぇとわかんねぇだろうが!!」
「わかるさ。少年の実力じゃ“こいつ”には勝てない。まぁ、やってみるがいいさ。そして、私と戦おうとしたことを後悔するがいい」

 アウトはヒョイッと最後のモンスターボールを繰り出した。
 中から出てきたのは……通常よりもやや大きいビークインだった。

「……そいつが……俺の命を奪うだと?舐めんじゃねぇ!一撃で倒してやる!『裂水』!!」

 ラグナのダーテングの『裂水』。
 それはよくラグナが指示する技であり、威力はラグナのポケモンのどの技よりも強く、飛距離が長い技である。
 アウトの技と比較するとメガヤンマのシグナルビームの3倍くらいの威力と互角に渡り合えるくらいの力があった。

「ふっ、『防御指令』」

 ズドンッ!!

 攻撃は確かに当たった。
 だが、防御指令という技はビークインの目の前に盾を作る技だった。

「なっ!?コクーンを盾にして攻撃を防いだだと!?」
「どんなに少年の攻撃が強かろうと、防御指令で退けられる。そして、この攻撃はどうかな、『攻撃指令』」
「まさかッ!?」

 ラグナは直感で感じた。
 攻撃指令で出てくるのは、あのポケモンだと。
 そして、ラグナの直感どおり、突然どこからか現れたスピアーの群れがラグナとダーテングに襲い掛かっていった。
 群れと単純に言うが、ざっと、10~15匹はいる。

「ちっ!!『裂水』!!」

 とっさに一撃を放つが、『攻撃指令』の攻撃は、無生物じゃなく、生きている。
 ゆえに攻撃指令で動いているスピアーは、その裂水をかわそうとする。
 結局、当たったのは、2匹のスピアーだけだった。
 さらに……

「一撃で倒れない!?」

 攻撃が当たったスピアーは少々スピードが落ちたものの、攻撃の手を緩めようとはせず、ラグナとダーテングに向かって行った。

「ダーテング、『リーフスラッシュ』!!」

 スピアーの攻撃を手の葉っぱで弾き返す。
 だが、防戦一方だった。

「ちっ!!まるで獲物に集るハイエナじゃねぇか!」

 そんなセリフを吐きながらも、最後のポケモンであるピクシーも繰り出した。

「なぎ払え!!『フレアーリング』!!」

 円月輪というものがある。
 ピクシーのその技は、炎の円を形作る技だった。
 そして、フラフープを操るようにスピアーを倒していく。

「ほら、第二陣だぞ。『攻撃指令』」
「なっ!?」

 さらに、十数匹のスピアーが襲い掛かる。

「ちっ!でだしで止めてやる!!ダーテング、『裂水周覇<れっすいしゅうは>』!!」

 ただの裂水は、正面方向へ一撃を放つ。
 しかし、この攻撃は若干威力を弱めながらも、全方向へ放つ技なのである。

「ピクシー、『大文字』!!」

 炎系の技で一気に一網打尽にしようとする。
 だが、そう簡単にスピアーたちは倒れようとしなかった。

「っ!! スピアーのクセになんてタフな…………なっ…………」

 そして、ラグナは言葉を失った。
 スピアーの第二陣の次にすでに数十匹……ざっと30~40匹がいた。

「これで終わりだ」

 総勢50匹ほどのスピアーが襲い掛かる。
 一匹一匹が異様に能力の高いスピアーがそれだけいるのである。

「……舐めんじゃねぇぞ……全部倒してやるぜ!!ダーテング!!ピクシー!!」

 果敢にラグナはスピアーの群れに向かっていった。
 しかし……それは無謀とも言える戦いだった…………



 18

 ラハブの新境地……下層北西エリア。
 冷気、雷、炎……幾つもの属性の攻撃が飛び交う。
 それらの技を放っているのは、ポリゴン2。
 しかし、全ての技はトロイのノイ(ライチュウ)の光の壁でいなされたり、かわされたりで攻撃は全く当たらない。

「はぁ…はぁ…ポリりん!『高速移動』!!『トライアタック』!!」

 スピードを上げて、何とかライチュウに追いついて、攻撃を当てようと試みる。
 しかし、全てが無駄だった。
 どれだけスピードを上げようとも、ノイのスピードはポリりんのスピードでは追いつけないほどの俊敏さを持っていたし、仮に命中しようとしても尻尾や光の壁で軽く弾き飛ばされる。
 ユウナに打つ手は残されてなかった。

「お前では俺のポケモンを一匹たりとも倒すことはできない……いや、むしろ俺を倒せる奴などお前らの仲間の中には存在しない。わかったらさっさとくたばれ」
「言ってくれるじゃない!!ポリりん!アドバンス・フォルムチェンジで行くわよ!!」

 Ⅰ☆NAを操作して、『不思議なパッチ』というアイコンを選択してポリりんへと情報を送った。

「(ポリゴンZになった!?)」

 トロイも突然のことに少々驚いた。

「『トライアタック』!!」
「ノイ、『10万ボルト』!!」

 ズガガガガッ!! ズドーンッ!!

 威力は互角。その結果にユウナは顔をしかめる。

「(押し切れない!?予想以上にあのライチュウの電撃は強い!)」

 威力をⅠ☆NAで確認している一瞬のことだった。

「ポリゴンZの弱点は知っているか?」
「なっ!?」

 爆発の煙に紛れて、すでにライチュウが背後を取っていた。

「『アイアンテール』」

 ドスッ!!

 鈍い音を発し、ユウナの背中に鈍い痛みが走る。
 数メートル吹っ飛ばされ、ユウナは息を乱す。

「っ……うぅ……ポリりん、『トライアタック』」
「だから、言っているだろ」

 ライチュウがその場から消えて、ポリりんのすぐ真上に現れた。

「ポリゴンZの弱点は、接近戦の非力さだ。『エレキテール』!!」
「非力さ……?甘く…見ないでよね!」

 膝をついて、息も絶え絶えなからも、操作をしてポリりんに情報を送りつける。

「『ウイングブレード』!!」

 飛行形態に変化したポリりんが翼で迎え撃つ。
 ギギギッ、ジジジッと音を立てて、ポリりんとノイの鍔迫り合いが始まる。

「はじめてみる形態だ。どうやら、打撃に特化した形態のようだが……」

 ドシュッ!!

「なっ!!」
「ノイの敵ではない」

 ポリりんが完全にパワー負けをした。
 ライチュウの尻尾の電撃がポリりんに流れ込み、ポリゴン2の形態に戻って気絶した。

「いい加減諦めろ。お前じゃ俺には勝てない」
「諦めるわけには行かないわ!!まだ私には最後の一匹が残っているのだから!!ブラりん!!『電光石火』」

 黒いボディのポケモンが地面を蹴って、ライチュウに突っ込む。

「その程度のスピードじゃ無駄だってわからないのか?」

 ブラりんの攻撃はライチュウをすり抜けた。錯覚ではない。残像だった。

「スピードなら負けないのよ!!ブラりん、『ファントムハリケーン』!!」
「無駄な動きが多い。それに、どんなに早く動いても、実際は一匹だけだ。『電撃波』!!」

 このときユウナは全ての動きがスローモーションに見えた。
 大勢いるブラりんの中の1匹に、電撃波が命中する。
 ブラりんが放物線を描いて、自分の元に飛んでくる。
 慌てて自分はブラりんをキャッチする。
 そして、悪寒を感じて後ろを振り向くと、ライチュウとトロイの姿があった。

「ゲームオーバーだ」

 ムチの様な尻尾が硬化し、さらに電気を帯びてユウナに襲い掛かる。
 あっけに取られてよけられなかった。
 尻尾による殴打と電気による衝撃の一撃でユウナは頭が真っ白になった。
 痺れて思考回路が麻痺して考えられない。
 ゆえに状況が把握できない。
 自分が今、打っ飛ばされている事も知ることができない。
 まして、自分の吹っ飛ばされている先が固い鉄の壁だということも確認できなかった。
 唯一、ユウナが思ったこと。
 完全な敗北だった。
 そして、鉄の壁に頭をぶつけてユウナは自分が死んだと思った…………



 私じゃ……あの男に勝てない……
 手も足もでない……
 私の今までのデータが通用しないと言うの……?
 そんな奴にどうやって勝てばいいの……?
 ねぇ……誰か……教えて……



 薄れ行く意識の中、最後に見えたのは冷たく、硬い、鉄の壁だった。
 でも……ユウナは生きていた。
 徐々に彼女は生きているのだと自覚をした。
 それだけではない。
 自分が空中を浮いている……いや、抱きかかえられているのだと自覚した。

「……一体……だれ?」

 ユウナは顔を見上げる。

「お前は……誰だ!?」

 トロイもその男の正体を問う。

「♪俺か?~俺の名はモトキっ~!よろしく~!」

 金髪にギターを背負った男……彼はここにいるはずのない者だった。



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 ラハブの新境地⑨ ―――VSトロイ――― 終わり


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Last-modified: 2015-05-11 (月) 21:35:34
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