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たった一つの行路 №129

/たった一つの行路 №129

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「『ウォーターウォール』」

 強力な電撃を水の壁が阻む。

「なかなかやるネ。しかしコレでおしまい!」

 左手に持っているカードを一枚引き当て、それをかざす。

「『かみなり』!!」
「シャワーズ。『ハイドロポンプ』」

 水で電撃を押し返そうとする。
 だが……

「(先ほどより威力が上がっている!?)」

 かみなりがハイドロポンプをあっさりと切り裂いて、シャワーズを黒焦げにして倒してしまった。

「この程度ですか?」

 エース対スティーブの激突。
 並の相手なら簡単に勝てるエースなのだが、相手は並の相手ではない。
 今まで戦った奴の中でもトップレベルといっても過言ではなかった。

「(……相手はボールを使わずにポケモンを操っている……どういうことだ?)」

 しかし、そのことは考えないことにしたようで、すぐに次のポケモンを繰り出す。

「『エアカッター』」
「飛行タイプで来るとは愚かですネ。『ライトニングニードル』」

 電気の針が凄まじい勢いで飛ぶ。
 エアカッターをも軽く打ち抜き、エースとそのポケモンのクロバットに襲い掛かる。

「コレを避けられるものなら……」
「そんなのワケない」

 エースのとった行動はクロバットを一時ボールに戻すことだった。

「(チェンジですね?)」

 だが、エースは代わりのポケモンを出さなかった。
 襲い掛かる電気針の嵐を避けようとする。
 しかし、その針のスピードはエースの予想をはるかに超えて、エースを傷つけていく。

「くっ……」
「こんなの全て避けられる奴がいるのならみてみたいヨ。ユーの行動は無謀ネ」
「いけ。クロバット」
「次はそのクロバットに『かみなり』」

 ズドンッ!!

 よく狙いを定めて狙ったはずだった。

「……!?消えた!?」

 バキッ!!

 攻撃が外れた上に、サンダースは反撃を受けていた。
 しかも、その攻撃の強さはサンダースを一撃でダウンさせてしまうほどだった。

「……サンダースがやられるとは思わなかったヨ」

 すると、スティーブの持っているカードが一枚、燃えて消えた。
 同時に、サンダースも粒子になって消え去ってしまった。

「お前の“それ”は、カードでポケモンを繰り出しているのか?」

 カードが気になるエースは聞いてみるが……

「ユーに教えることなんて何も無いネ!サンダー!!『カミングサンダー』!!」
「!!」

 クロバットに直撃して、一撃で倒れた。

「ドンドンいくネ!『ビッグサンダー』!!」

 大きなかみなりがエースに襲い掛かる。
 さすがにコレを避けきることは不可能だ。

「させない」

 そんな大きな電撃を受け止めた。
 エースのバンギラスだ。
 特性の『砂起こし』のおかげでダメージを軽減しつつ、攻撃を受け止めたようだ。

「『ストーンエッジ』」

 ドガンッ!!

 攻撃は確かに当たった。

「!?」
「効かないネ」

 スティーブは一枚のカードをヒラヒラと見せびらかしながら、涼やかに言った。

「(……『ディフェンダー』?)」

 小さく書いてあるその字を確認した後、そのカードはすぐに消滅した。

「そのバンギラスは厄介ネ!ディフェンダーを使って、こんなにダメージを受けるとは思わなかったヨ!だから、次で倒す!」

 すると、スティーブはカードの山を懐にしまって、左手に右手と同じようにもう一匹のポケモンを召還した。

「……!!」

 その召還した2匹にエースは驚きを隠せなかった。

「終わりネ!サンダーA『ビッグサンダー』! サンダーB『オーバーロード』!」

 2匹の雷鳥。
 しかも、その力は絶大なものだった……。
 壁や地面を壊しつつ、辺りはいとも簡単に更地に変えてしまっていた。
 そこにはバンギラスが力もなく、横たわっていた。

「ちょっと本気を出しすぎたヨ!ミーの全力の攻撃を受けて立っていた奴なんていないの忘れていたネ!」

 エースの姿は見えない。
 果たして、エースは負けてしまったのだろうか……?



 たった一つの行路 №129



 2匹のサンダーの強烈な攻撃により、綺麗だったステンドグラスの窓や椅子、女神の置物などが一瞬にして消え去り、更地に変えてしまった。
 そして、その中心にはバンギラスが力もなく倒れていた。
 スティーブは額に手を当てて慌てた。

「しまった!誤ってエースまで消してしまったヨ!」

 しかし、スティーブは気付かなかった。
 バンギラスが倒れている場所に、小さな穴があったことに。

「『オーバーヒート』」

 一匹のサンダーの真下から、極大な火柱が立ち上がる。

「何!?」

 サンダーはすぐに炎から抜け出したが、かなりのダメージを負った様子。
 そして、すぐにその火柱を出した穴から、エースとバクフーンが飛び出してきた。

「……一匹は倒せると思ったのにな……」
「まさか穴を掘って逃げていたとは……驚いたヨ!お陰でユーを消さずに済んだネ!」
「バクフーン」

 シュッ!!ズドッ!!

「っ!!」

 エースの一つの指示で、オーバーヒートを与えたサンダーに火炎車の体当たりを繰り出した。

「隙がありすぎだ」
「ちょっと強いからって、のぼせすぎネ!サンダーA!『カミングサンダー』!!」

 ダメージを受けていた方のサンダーが鋭い電気を放つ。

「ぐっ」

 その電撃はバクフーンに向かわず、エースに直接ヒットした。

「この程度の…電撃じゃ…俺は倒せない」
「別にユーを気絶させるために撃った電撃じゃないのサ!『カミングサンダー』!!」
「バクフーン」

 火炎放射と電撃のクロスカウンター。
 とは言うものの、電撃の方はやはりエースに向けられたもので、回避しようと避けようとしたのだが、かわしきれずにヒットした。
 だが、代わりにバクフーンの火炎放射がサンダーに当たって、何とか一匹を消滅させた。

「つぅ……」

 エースは膝をついて、身体を回る電撃に耐えていた。
 パリパリと傍からでもエースの体が帯電しているのが目に見える。

「これで終わりネ!サンダー!『かみなり』!!」
「バクフーン……『バーストフレイム』」

 背中から噴射する炎の翼を武装し、サンダーに突撃する。
 かみなりがバクフーンに襲い掛かるが、炎の翼で防御し、そのままサンダーにぶつける。
 ぶつかった瞬間に、バクフーンを纏っていた炎が全てサンダーに燃え移って爆発を起こした。

「バクフーン」

 サンダーと間合いを取ったバクフーンはとどめの炎を繰り出す。
 だが、サンダーもただでは終わらなかった。
 爆発から持ち直して、攻撃に入る。

「『オーバーロード』!!」

 火炎放射を押し切って、バクフーンに強力な電撃を叩き込む。
 さらに爆発が生じて、吹っ飛ばされた。

「……まだだ」

 ギリギリに着地すると、瞬時に前へと脚を蹴る。
 その一歩、二歩そして三歩目にはサンダーの射程距離を捉えた。

 ズドンッ!!

 電光石火と火炎車の両方の利点を生かした体当たりで、サンダーは地面を滑るように後退して消滅した。

「ミーのサンダーがルーズなんて!!」
「まだやるのか?」

 エースはバクフーンを一度ボールに戻した。

「ミーの役目はユーを捕えることネ!ここでミーが引くわけには行かないのサ!!」
「俺は捕まりもしないし、負ける気も無い」
「いいや。ユーは負け、ミーに捕まる。もうユーはミーの掌の中ネ」

 多くのカードの中から今度はエレキブルを繰り出した。

「何を根拠に…………なっ!!」

 ふと、繰り出したハクリューの姿を見て、エースは驚きの表情を見せた。
 どういうことか、まだ一度もダメージを受けていない……まして戦わせていないハクリューが激しい傷を負っていたのである。

「一体いつの間に……?」

「ミーの電撃はユーの身体だけじゃなく控えのポケモンにもダメージを与えるのサ!」
「!! (と言うことは、さっきのサンダーの電撃か!?)」
「エレキブル、止めを刺しなサイ」
「ハクリュー、『しんそく』」

 素早く動いてエレキブルの攻撃を回避する。
 その間にエースは控えのポケモンを見た。

「(後戦えるのは、バクフーンとメタグロスのみ……ハクリューほどではないがメタグロスもダメージを負っているな……これは不味いな……)」

 他のシャワーズ、クロバット、バンギラスはすでに倒れて、残り全ての3匹が傷を負っている状態。
 戦いはエースにとって不利な状況と言える。

「『竜の怒り』」
「『かみなりパンチ』!!」

 炎に近い色のエネルギーの球体を打ち出すが、エレキブルは拳で軽く消してしまった。

「その程度の攻撃、消すのなんてわけないネ」
「もう一発」
「無駄だヨ!!」

 同じく竜の怒りを放つが、やはり拳で弾かれる。
 そして、エレキブルはハクリューを捕らえた。

「これで決まりネ!『かみなりパンチ』!!」

 拳が振り下ろされる。

「この時を待っていた。『流星群』」

 同時にドラゴン系最強クラスの技を放った。
 至近距離で受けたエレキブルはただでは済まない……エースはそう思っていた。
 しかし……

 ズドンッ!!

「なっ……」

 流星群をまともに喰らいながらも、そのままハクリューを殴り飛ばしてダウンさせた。

「これだけで倒せると思った?甘いネ!」
「メタグロス!」

 少々傷ついたメタグロスが戦線に出る。

「『かみなり』ネ!」
「そんな攻撃なんて当たらない」

 エレキブルのかみなりはメタグロスが居た場所に落ちる。
 しかし、寸前にメタグロスは姿を消した。

「消えた!?」

 バキッ!!

 エレキブルはダウンした。
 ハクリューの先ほどの攻撃の影響もあり、その一撃で決まった。

「メタグロスがあんなスピードを出すなんて……信じられないネ」
「一気に片をつけてやる」

 エースはメタグロスを呼んで手を当てた。
 柔らかく暖かいオーラがエースから発せられたと思うと、メタグロスはさらにスピードを上げて、スティーブに襲い掛かった。

 バギンッ!!

「そうは行かないネ!」
「(メタグロスのコメットパンチを止めただと?)」

 スティーブの前に立ちはだかるのは、メタグロスを同じ属性を持つ鋼タイプのジバコイルだった。
 エースは攻撃の勢いならば属性も関係無く止められることは無いと考えていたが、そのジバコイルはメタグロスの攻撃にビクともしていなかった。
 いや、正確には攻撃は寸前のところで止まっていた。

「特性の『磁力』の応用なのネ!磁力は引き寄せることもできれば反発することもできる……つまりこれは反発を利用して攻撃は止めたのサ!」

 ジバコイルが磁力の力を解放するとメタグロスは一気に吹き飛ばされた。
 しかしメタグロスも負けていない。吹っ飛ばされながらもサイコキネシスを打ち出して、多少なりジバコイルにダメージを与える。
 でも、受けたダメージはメタグロスの方が大きかった。

「(接近できないなら特殊攻撃で一気に攻めるしかない。相手の特性が働いている今、戻すことはできないからな……)」

 エースの意思を読み取ったか、メタグロスは最大の技を打つために構えを取る。

「メタグロス、『ラスターキャノン』」

 『ラスターカノン』という鋼系の技があるが、メタグロスの『ラスターキャノン』はその技をさらにグレードアップした技だ。
 そして、スピードもあった。
 ジバコイルは避けられずそのビームの中にすっぽりと巻き込まれた。

「(どうだ?)」

 しかし、エースの目に映るのはまだまだ余裕でそこに存在するジバコイルの姿だった。

「…………」

 冷静にスティーブを見ると、その片方の手には序盤でバンギラスの攻撃を防いだ『ディフェンダー』のカードの存在があった。

「(またアレか……)」
「なかなか面白い攻撃だったヨ!こちらも面白い攻撃をお返しするネ!」
「(来る……)」

 身構えるエースとメタグロス。
 しかし、一瞬の出来事でエースもさすがになんだかわからなかった。
 そう、メタグロスがいきなり目を回して気絶したのだ。

「……!?(一体何を……?)」
「さぁ、もう一発!今度はエースに放つネ!」
「ぐっ……」

 身体の内部に衝撃が走ったと思うと、エースは膝をついて、さらに前のめりにバタンっと倒れた。

「ジバコイルの『マイクロウェーブ』は内側からの電磁波で相手にダメージを与える強力な技ネ!どんなにメタグロスの防御が高くても、内側からの攻撃はどうしようの無いのサ」
「くっ…………」

 不意打ちともいえるその攻撃がエースに致命傷をもたらし、意識を奪い去っていったのだった…………



―――「――――――!!」―――
「(……?誰だ?)」
―――「――――ゃん!!」―――
「(誰かが呼んでいる……?」
―――「おに――ゃん!!」―――
「(確かこの声は……)」
―――「お兄ちゃん!!」―――
「(そうだ。ジョカ……俺の妹……。俺はこんなところで倒れるわけには行かない……!!)」



「サテ、この気絶したエースを生贄の間に運ぶとしようかネ」

 スティーブは気絶したと思われるエースに一歩、また一歩近づいていく。
 しかし、彼は完全に油断していた。
 そのせいでエースに対する攻撃の初動が遅れてしまった。
 エースは特に何かをしたような仕草を見せなかった。
 それにもかかわらず、バクフーンが飛び出して、スティーブの隣にいたジバコイルを炎の一撃で倒してしまったのだ。

「!?」

 驚いてエースを見るとピクリと彼は身体を動かし始める。

「マイクロウェーブを直接受けてまだ戦えるというのか!?」
「……俺は……」

 エースは地面に手をついてゆっくりと立ち上がる。

「妹を助けるためにここに来たんだ。……ここで倒れている場合じゃない」

 スティーブはエースの様子をうかがった後、一枚のカードを手にした。

「ふーん。そのバクフーンは体力がもう半分も残されていないようだネ。そして、それ以外のシャワーズ、ハクリュー、バンギラス、クロバット、メタグロスは戦闘不能……」

 スティーブの使用した『ポケモン図鑑』というカードが燃え尽きる。

「つまり、そのバクフーンを倒せば終わりという事ネ!」

 スティーブがカードをかざすと、出てきたのはライコウだった。

「お前に俺のバクフーンは倒せない」
「おこがましいネ!ライコウ!『電磁砲』ネ!!」

 球体で密度の高い電気エネルギーを打ち出すとバクフーンに向かって一直線に飛んでいった。

「バクフーン」

 強力な火炎放射がライコウの攻撃を押し返そうとする。

「その程度の攻撃で……」

 だんだんと、電磁砲が押していく。

「勝てると思うナ!!」
「!?」

 電磁砲が火炎放射に飲み込まれながらも、押し返してしまった。
 バクフーンはいち早くそれに察知して火炎放射をやめて何とか攻撃をかわした。
 しかし、もうライコウはすぐそばにまで迫っていた。

「『サンダーロード』」

 電気を纏った超タックル。一直線だが音速級のスピードにバクフーンはかわすすべもない。

 ズドガンッ!!

「ナニ!?」
「…………」

 しかし、ライコウの攻撃を何とか跳ね飛ばした。

「こっちの『バーストフレイム』が間に合ったようだな」
「切り札の技は互角ということネ?それなら……」

 スティーブは再びプラスパワーを繰り出した。

「これでどうネ!?同じ切り札同士ならこっちの方が威力が高いネ!終わりにするネ!!」
「…………それで俺に勝てたと思ったか?」

 エースはバクフーンを一旦ボールに戻して精神を集中し始めた。

「ナニ?いったい何をしている?」

 スティーブはまったく気付いていなかった。
 エースのバクフーンの力がドンドン増大していることに。
 そして、結果は証明する。

「バクフーン、『バーストフレイム』」

 ライコウの最大の一撃をバクフーンが圧倒的な力で押しのけてしまった。

「ヌワッ!!」

 ライコウはスティーブにのしかかるように飛ばされた。

「…………」
「ユーの勝利……認めないネ!!ライコウ!!『電磁砲』!!」
「一つ言い忘れてた」
「……?」
「今の俺のバクフーンの切り札は一つじゃない。バクフーン、『ネオ・ブラストバーン』」

 それほど大きな炎ではなかった。とてもじゃないけど、ライコウの電磁砲を相殺するような、まして圧倒するような威力の炎には見えなかった。
 だが、その攻撃はライコウに当たった瞬間にブラストバーン以上の破壊力を持った炎に変わった。

「ばかナッ!!」

 炎の中、ライコウとスティーブの持っていたカードは一瞬にして消え去ったのだった。
 そして、バタッとスティーブは気絶した。

「……だいぶ時間がかかったな……。急いでいかなくては……。でも、ポケモンたちを回復してやらないと……」

 少しの時間だが、エースはその場に休んで体力を回復させた。
 スティーブ戦で自身も傷を負っていることもあって、その回復も兼ねてだった。



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 ラハブの新境地⑥ ―――VSスティーブ――― 終わり


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Last-modified: 2015-05-11 (月) 21:33:59
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