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たった一つの行路 №126

/たった一つの行路 №126

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「ぱ、パチリス!!」

 炎による爆発が生じて、簡単にパチリスは吹き飛ばされる。
 ヒューッと飛んでくると、面白い具合にエレキの顔にバキッとヒットした。

「わしを窮地にまで陥らせたハナが言うんじゃからどれほどかと思ったがのう……とんだ拍子抜けじゃな」
「う、うぅ……」

 タキジはギャロップ。エレキはすでにルージュラとパチリスをダウンさせられていた。
 しかし、それでもギャロップにダメージを与えているところを見ると善戦しているでようである。

「この程度の実力じゃわしには勝てんよ!」
「え、エテボース!!」

 ギャロップの突進攻撃に慌ててエレキは次のポケモンを繰り出す。

「それとも、まだ力を隠しておるのか?」
「ち、力を隠す……?そ、そんな力僕に……」

 ふと言葉を切ってエレキはストムとの戦いを思い出していた。

「(あ、あの時……僕はどうしたんだろう?だ、大ピンチの時に何かを思ったんだ……。な、なんだっただろう?)」

 そのときギャロップの角がエテボースを捉える。
 角ドリルのようだが、一撃では倒せなかった様子。
 しかし、エテボースは苦しそうだ。

「面白くないのう」

 ふとタキジの言った言葉がエレキの頭にピンと来た。

「(お、面白くない……? ば、バトルが面白くない? そ、そうか……思い出した。ば、バトルは…………)」

 次の瞬間、エレキの何かが変わった。

「!!」

 タキジもそれを感じ取ったようで身構える。

「エテボース!!そこだよ」

 シュンッ!! ズドッ!!

「…………」

 一瞬の一撃でギャロップが倒れた。その様子を見てタキジは顔が真剣になった。

「まさか……それがお主の力なのか……?」
「オッサン!楽しもうよ!」

 エレキ対タキジの第2ラウンドが始まった。



 たった一つの行路 №126



 二匹の猿が激突している。
 片や炎を纏いながら拳主体の接近戦攻撃を仕掛けるゴウカザル。片や2本の長い手の様な尻尾を武器に戦うエテボース。
 スピードはゴウカザルが上。技のキレはエテボースが上。そして、トレーナーの指示は的確で互角の戦いを繰り広げていた。

「ゴウカザル!」
「エテボース!」

 凄まじいスピードで2匹が交錯する。
 マッハパンチと炎のパンチを組み合わせたスピード&パワーの技を放ったゴウカザル。
 一方、ぶつかる前にスピードスターで牽制してからダブルアタックを叩き込もうとしたエテボース。

 ドスンッ!

 どっちかが圧倒的に強いわけでも弱いわけでもない。この戦いはひたすらに互角だった。
 タキジが倒れたゴウカザルを戻して、次のポケモンを繰り出す

「くっ……行くんじゃ!ポワルン!!」
「戻って!……行ってムウマージ!」

 タキジの次のポケモンを見て、ゴーストタイプに交換するエレキ。

「『シャドーボール』だよ!!」

 黒い球体を放つ。
 ポワルンはその攻撃をかわした。

「(ほう……タイプチェンジさせない気か)」

 タキジ自身、シャドーボールが現在ノーマルタイプ状態のポワルンに効果がないことは知っていた。
 しかし、天候を変えてタイプチェンジした場合だと、シャドーボールのダメージが等倍で効き目がある。
 タイプチェンジをしたときにどうやってシャドーボールをかわすか、シュミレーションをしていたようだ。

「『シャドーボール』」
「ムウマージっ!!」

 ポワルンがムウマージの攻撃をかわしてすぐ背後から攻撃を撃ってきた。
 だけど、ムウマージは後ろも見ずに攻撃をかわした。エレキを信頼して、指示だけでかわしたようだ。
 とは言うものの、タイミング的にはギリギリで、エレキの指示が一歩でも遅ければ、攻撃はヒットしていたに違いない。

「もう2発お見舞いしてやるんじゃ!」
「相殺して!!」

 同時に二発のシャドーボールと、念動力(サイコキネシス)。
 サイコキネシスとぶつかると、2つのシャドーボールは爆発して、爆発を生み出した。
 そこから、2人の出す指示のタイミングはほぼ同じだった。

「『にほんばれ』……そして『ウェザーボール』じゃ!!」
「『シャドーボール』だよ」

 両者共に煙で互いの姿は見えない。
 しかし、その先にお互いがいることはわかる。
 その先にいることを前提に、強力な攻撃を解き放った。
 どちらの威力も高いものだったが、明らかに片方のレベルが勝っていた。

「ムウマージ!!」

 業火球がシャドーボールどころか、ムウマージまで飲み込んでしまった。
 それほどまでにポワルンの攻撃力は高かった。

「そう来なくっちゃ!!『シャドーボール』だよ!!」

 しかし、エレキは物怖じをしない。
 もう一度同じ技で勝負する。

「無駄じゃよ。『ウェザーボール』」

 ムウマージの体力がもう瀕死寸前だということは見て取れた。
 そして、このエレキの反撃がシャドーボールをオトリにして接近し、『いたみわけ』を繰り出したとしても別に驚きもしなかった。
 代わりに、いたみわけを繰り出した時にウェザーボールを直接ぶつければいいだけの話だったから。

「ムウマージ!戻って!!」

 エレキの考えはいたみわけを発動させてから、ボールに一旦戻すという作戦を実践した。
 だが、タキジにその考えが見抜かれていたわけで、ウェザーボールがヒットして、ダウンしてから戻すという形になってしまった。

「キマワリ!『ソーラービーム』!!」
「『ウェザーボール』じゃ」

 タキジは草系最大クラスの技にも怯まずにウェザーボールでいとも簡単に相殺した。

「(特性『サンパワー』で威力が上がっているはずなのに!?)」

 サンパワーは体力を攻撃に還元することにより攻撃能力を上げる諸刃の剣だ。
 しかし、それにもかかわらずポワルンの攻撃を相殺しかできなかった。

「楽しいのう。しかし、お主がまさか奴の生まれ変わりとは思っていなかった」
「…………?」

 タキジの言葉に首を傾げる。

「そして、なおもここの者達と戦うためにここにいる……不憫なことじゃ」
「どういう意味?」
「…………。そんなことよりわしは特殊な力でお主等の未来を見ることが出来る。その未来を現実に見ることがわしの務め。お主等の仲間の未来はすでにお見通しじゃ」
「未来?」
「ユウナは吹っ飛んで鉄の壁に頭を強く殴打して死亡。ラグナは大量出血で倒れてそのまま……。ヒロトは爆発に巻き込まれてそのまま消滅……。エースは……」
「そんな未来……ありえるもんか」
「……このまま行けばいずれそうなる。どうだ、わしと一緒にそれを見に行かないか?」
「キマワリ!!」
「無駄じゃ。『ウェザーボール』」

 ソーラービームとウェザーボールが互いに押し合う。

「攻撃してきたということはこれが返事じゃな。仕方がないのう。お主にはがっかりさせられたわい」
「キマワリ!」
「…………!!」

 エレキの一声でソーラービームがウェザーボールを遥かに上回る威力で圧倒した。
 そして、そのままの勢いでポワルンを倒してしまった。

「僕は信じない!……もし、それがオッサンが未来で実際に見るものなのだとしたら、僕がオッサンを倒せばいいんだ!」
「ふぉっふぉっふぉ……そう来たか……じゃが、そうやすやすとやられんぞ」

 ポワルンが倒れて、今度はプテラを繰り出す。

「『葉っぱカッター』!!」
「そんなのわけないわい!『岩石封じ』!!」

 空中を浮遊するプテラに攻撃が当たらなかった。
 単に相手のスピードが高いだけでなく、こちらのスピードが遅いからもあるだろう。
 そして、キマワリにダメージを与えながら周囲を岩で囲って動きを制限した。

「『破壊光線』じゃ」
「『ソーラービーム』!!」

 周囲が岩に囲まれていて、戻すことも困難な今、これがエレキにできる最善の策だった。
 しかし、それはギリギリの決断だった。

「(そろそろ『にほんばれ』の効果が消える……)」

 破壊光線を見たとき、サンパワーの力を持ったソーラービームでないと相殺できないことをエレキは確信していた。
 その効果が弱まっている今、ギリギリで相殺ができるかエレキには自信がなかった。
 そして、エレキの予測どおり、にほんばれの効果が弱まるに連れて徐々に押されて行った。
 最終的に、強大な爆発と共にキマワリは吹っ飛ばされた。
 気絶したキマワリを見て、プテラがそのままエレキに襲い掛かる。

「頼むよ、ワニノコ!」

 水鉄砲の狙い撃ちでプテラにダメージを与える。
 相手は残像を作るほどのスピードで動いていたにもかかわらず、それが無意味に思えるほど正確に攻撃を命中させて押し返した。
 そしてプテラは不時着する。

「そのワニノコ……只者じゃないのう」
「ワニノコ!『ドラゴンクロー』!!」

 プテラが火炎放射で牽制するけど、まるで当たらない。
 ワニノコの動くスピードが先ほどのプテラの空中を移動するのと近いものを髣髴させる。

 ズガッ!!

 プテラの顎にワニノコの強烈な攻撃が入った。
 小さき体のどこにそのような力が眠っているのだろうか?……そう思わずにはいられないほど、プテラを遠くまで吹っ飛ばした。いや、吹っ飛ばしかけた。

「転回して『破壊光線』じゃ」

 吹っ飛んだ状態からくるりと立て直して、高速移動でワニノコの後ろを取った。

「(速い!?)」

 即座に襲い掛かる光線にワニノコは避ける時間がなかった。
 だが……

「それなら、『ばかぢから』だよ!!」

 避けられないと悟るや、自身の限界を超える力を生み出すエネルギーをそのまま破壊光線にぶつけた。
 ばかぢからは、破壊光線のエネルギーを拡散させた。

「何じゃと!?」
「『水鉄砲』!!」

 破壊光線の反動の隙を狙って、強力な攻撃がプテラに命中する。
 エレキは水鉄砲と指示を飛ばしているが、ハイドロポンプといわれてもおかしくない威力だった。

「ほう……それなら最後のポケモンを見せてやるわい。バクフーン!!」
「ワニノコ!『水鉄砲』!!」

 水鉄砲がバクフーンを掠める。

「(当たらない!?)」

 当たらないわけではなく、ギリギリでかわしているのだが……

「バクフーン。『螺旋炎』」

 火炎車と火炎放射をあわせたドリルのような極大の炎がエレキとワニノコに襲い掛かる。

「っ!!」

 極大の炎がエレキたちを巻き込んで爆発した。
 しかし、その爆発の中からエレキが飛び出してきた。

「エテボース!!」

 エレキの右手にはダメージをギリギリ逃れたワニノコが、左手にはエテボースの空のモンスターボールがあった。
 そして、エテボースは瞬時にバクフーンの後ろに回りこんでいた。
 ダブルアタックを叩き込もうとする。
 しかし、バクフーンの背中の炎が爆発して、エテボースを吹っ飛ばす。
 バクフーンの噴火だ。体力が有り余っているほど威力が高いその技は、エテボースの体力をどん底にまで減らす。

「『ダブルアタック』!!」
「『炎のパンチ』じゃ!!」

 一つの尻尾で炎のパンチを止めると、もう一本の尻尾でバクフーンの顔を殴りつける。

「『火炎放射』じゃ!」
「『高速移動』だよ!!」

 殴られてもすぐにエテボースを見据えて、攻撃を放つ。
 だが、エテボースのスピードに命中させるのは並大抵のことではない。

「『わるだくみ』!!そして『スピードスター』!!」
「『電光石火』じゃ!!」

 知恵を上げてから繰り出される星々たちは、バクフーンの体力を少しずつ削っていく。
 しかし、ダメージを受けながらも、バクフーンは接近する。

「エテボース!!」
「『火炎車』じゃ」

 さらに炎を纏いながらぶつかりに行く。

「何じゃと!?」

 しかし、次の瞬間、エテボースとワニノコが入れ替わった。

「そして『水鉄砲』!!」

 最初に見せたハイドロポンプ級の水鉄砲……いや、それ以上の水流がバクフーンを押し飛ばした。

「……なるほど……『バトンタッチ』で能力上昇を受け継いだわけじゃな」
「次の攻撃で決めるよ!!」
「ほう……それならこっちにも考えがあるわい」

 タキジは背中に背負っていた楽器を抱える。そして、音を掻き鳴らし始めた。

「いったい何を?」
「わしのこの楽器『ヒートランプ』はポケモンの攻撃能力を最大にまで引き上げることができるのじゃ。……この一撃で決まるのう」
「ワニノコ!こっちも最大パワーで行くよ!!」

 対峙するワニノコとバクフーン。
 すると、そのとき、遠くから光の柱みたいなものが6本浮かんで塔に向かって伸びていった。
 そのことに2人は気付かなかったが、それと同じタイミングで2つの攻撃が激突した。

 バタッ

「はぁ…はぁ……なかなかやりおるわい」

 倒れたエレキを見てタキジはそう呟く。
 攻撃内容はワニノコのハイドロポンプとバクフーンの螺旋炎の激突だった。
 バクフーンの螺旋炎はホエルオー3匹くらいを軽く飲み込むくらいのでかさだった。
 一方、ワニノコのハイドロポンプはその攻撃の中心を軽く貫通させたものだった。
 ハイドロポンプはバクフーンに命中して、その余波がタキジにも及んでいたし、螺旋炎はハイドロポンプで消火できる範囲を軽く超えていたためにエレキとワニノコを巻き込んで気絶させてしまった。

「引き分け……じゃ……な……」

 タキジはヒートランプを落として、そのままドサッと地面へと倒れた。
 一陣の風が吹く。
 その場所に残ったのは焼け付く熱い風と燃え尽きた木と地面だけで、エレキとタキジは何もないその場所でただ動かずじっと倒れていたのだった。



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 ラハブの新境地③ ―――VSタキジ――― 終わり


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Last-modified: 2015-05-06 (水) 13:05:18
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