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たった一つの行路 №123

/たった一つの行路 №123

 1

「(雨が降ってきそうな天気ね……)」

 窓越しから曇天の空を見ながらルーカスは白衣を羽織う。
 ふと、ルーカスはカレンダーを見る。
 そこにはぐるりと丸印が書かれていた。

「(そういえば、もう一ヶ月以上が過ぎたわ。あの子達は大丈夫かしら?)」

 丸印とは、ジラーチが繭に戻ってしまう日……つまり、ライトたちがこちらに戻ってくるタイムリミットである。
 ライトたちがエースたちのいる世界へ飛び立ってから、ルーカスたちは大忙しだった。
 その原因はマングウタウンの研究所の責任者のトミタ博士が長期的にオーレ地方へ出張してしまったためである。
 博士不在のこの一ヶ月の間、ルーカスとトキオは預かっているポケモンたちの世話、研究資料の整理、自分の研究……そのほかにもたくさんの仕事がめまぐるしく襲い掛かってきた。
 おかげで、ライトたちのことも考える暇がないほど、ルーカスとトキオは働き続けて今日まで至る。
 トキオがいなかったら本当にどうなっていたか……とルーカスは真面目に思っていた。
 そのトキオは現在、ブーグタウンの図書館へ自分の研究資料を探すために外出している。
 だから、今日はルーカス一人でほぼ全てのことをやらなくてはいけなかった。

「心配だけど、自分のことで手一杯ね」

 気を取り直して、窓から目を放そうとしたそのときだった。
 人影が写り、さらに音を立ててズドドドドンッ!!と何かが落下した。

「何事!?」 

 慌てて外へと出てみると、そこにはルーカスの心配していた連中が顔をそろえていた。

「あんた達、帰ってきたのね!」
「イタタ……。あ、ルーカスさん!!」

 真っ先にルーカスの言葉に反応したのは、トキオの妹、カレンだ。

「どうやら戻ってこれたようね」
「あっちの世界もこっちの世界もそんなに変わらないな」

 カスミとサトシが顔をそろえて言った。

「無事に着地できたみたいね!よかったー」
「どこが無事よ!!」

 カレンの言葉に反論するものがいた。
 ふと、ルーカスを含め全員が彼らを見た。

「早く私の上から降りてよ!!重いわッ!!」
「重い。早くどけ」
「ハルキ……誰が重いって言うのかしら?」

 その三人は面白い具合に積み重なっていた。

「ユウコ、ハルキ、ライト……」

 ふとルーカスは周りのメンバーを確認する。
 そして、あることに気がついた。

「イエローはともかく、後2人足りないんじゃないの?それにエースは?」

 ルーカスはそのとき、雰囲気が悪くなるのを感じた。
 みんな目を逸らしたり、俯いたりと、とにかくあまりにも反応が良くなかった。
 その中でカレンは一人だけ不思議そうな顔でライトを見ていた。

「エースは戻らないことにしたって」

 そうライトは言った。
 少ししんみりしているようだが、何故かそんなに落ち込んでいるように見えない物言いだった。
 このライトの様子をユウコは見て“諦めたのね”と思い、マサトは“無理しているね”と感じていた。

「私、決めたの!これから、一人でこの世界を冒険するの!」

 ライトは両手を挙げて、背伸びをしつつ、高らかにそう誓ったのだった。



 たった一つの行路 №123



 2

 ズドンッ!! ズドンッ!!

 二匹のポケモンが激突していた。
 片や欺きポケモンのクチート、片やペンギンの帝王のエンペルト。
 バトルは激しさを増していた。
 鋼のエネルギーを持つ球体と鋼のボールがぶつかる。
 同じような技に見えるが、エンペルトの繰り出す技は特殊技でクチートが打撃技という違いがある。
 そして、威力はクチートの鋼の砲弾が打ち破り、エンペルトを吹っ飛ばした。

「ここまでだ。てめぇの負けだ」

 クチートを戻すのは相変わらず黒いコートに白いさらしの格好をしたラグナだった。

「まだだ……!!こっからが俺の本領だ!!」
「何度やってもてめぇじゃ俺には勝てねぇ」
「そうね。実力の差は明らかよ」
「……アクアさんまで!?」

 指摘されてエンペルトを戻すファイア。

「俺じゃ……力不足なのか……?くそっ……」
「ファイア……」

 リーフは心配してファイアに駆け寄る。



 さてラグナとファイアがバトルしていたのにはワケがある。
 少し時間を遡ろう。

「ヒロト!何で俺は残らなきゃいけないんだ!?」

 ライトたちが“アワ”へ帰る少し前のこと。
 リュウヤの言う潜入作戦のメンバーをヒロトは全員に告げていた。
 ほとんどのメンバーがヒロトの意見を聞き入れて、“ティブス”で待つか、“アワ”へ帰るか、ジョカを助けに行くか決める中、ファイアだけが反対したのだった。

「俺の実力じゃ、あいつらには敵わないというのか!?」
「そういうわけじゃない」
「じゃあ、どういうことだよ!俺を抜くなんて!」
「ユウナからファイアはハナダシティのジムリーダーだからって聞いたから、こっちに残っていた方がいいんじゃないかと思ったんだ」
「俺は行くぞ!?目の前のジョカを助けられなかったんだからな!」

 ヒロトはそういわれて困ってしまった。
 だけど……

「それなら、ファイア、俺と勝負しようぜ!」
「……!?」

 ヒロトとオトハの後ろから、ラグナが不意にそういった。

「俺とバトルしてファイアが勝ったら連れて行く。それでいいだろ?ヒロト」

 勝手なことを……とヒロトは思いながらも頷いたのだった。



「てめぇは弱くねぇ。だけど、俺には敵わねぇ」

 そう言い放つラグナ。

「くそっ……」

 ぎゅっと拳を握り締めるファイア。

「だけど、一つ納得がいかないことがある!俺はダメでなんで、エレキを連れて行くんだ?」
「ヒロトとリュウヤの判断だ!俺が知るか!とりあえず、メンバーは決まった。後はリュウヤが目を覚ますのを待つだけ。早く目を覚ましやがれ」

 早く戦いたくてうずうずしているラグナはその場を立ち去った。

「……ファイア……行こう?」
「…………」

 リーフが手を差し出すが、ファイアは手を借りずに立ち上がった。

「リーフ……俺は決めた。もっと強くなる……アルにもラグナにもそしてあのアウトって奴にも負けないくらいに……。見ていてくれ。俺はもう二度と負けない!!」
「……うん」

 立ち直ったファイアにリーフは笑顔を送ったのだった。



 3

―――「もちろんイヤです」―――

 彼女の返答を思い出して、ヒロトはため息をつく。

「(何を言っても無駄だよな……)」

 病室の廊下を歩きながら、ヒロトは後ろからついてくる女性……オトハのことを思う。
 ヒロトはジョカを助ける作戦にオトハを外そうとしていた。
 しかし、オトハの答えはもちろん先ほど言ったとおり変わらずだった。

「(もう諦めているけどな。……念のために一応言ってみただけだけど)」

 そして、トキワシティの病院の個室に入った。
 手当てをされて、酷いケガで今は寝ているリュウヤの姿があった。

「今日はずっと寝ているのよ」

 ヒロトとオトハにそういうのはアクア。
 そして、アクアと一緒にユウナの姿もあった。
 アクアは果物ナイフを持ってリンゴを剥いていた。
 ユウナはモンスターボールをⅠ☆NAにケーブルを繋いで何かをやっていた。

「リュウヤが動けるようになったら、出発するのよね……全員に伝えた?」

 ユウナが携帯キーボードをいじりながら、ヒロトに尋ねる。

「ああ。俺がユウナに頼んだ一人以外はな。……で、そいつはどこに行った?」
「それなら、さっきここを出て行ったわよ」
「……そうか」

 ヒロトは腕を組んで思考に入った。
 そんなヒロトに椅子に座るようにアクアが勧めるが断った。
 代わりヒロトが椅子をオトハに譲った。
 オトハは遠慮がちにヒロトに譲り返しながらも、結局は椅子に腰掛けた。

「ユウナさん、何をやっているんですか?」

 オトハが隣でユウナがしていることを気になって尋ねる。

「ちょっとしたポケモンの体調管理よ」
「そんなこともできるんですか?」
「でもポケモンセンターの機能には負けるわよ?それに、この機能はそれだけじゃないの」

 ユウナがやや悪戯っ子っぽい笑みを浮かべる中、ふとヒロトは部屋を出ようとする。

「ヒロトさん……どこへ行くんですか?」
「ちょっとな。少し散歩してくるだけだ」
「そうですか……」

 3人はヒロトを見送る。

「無理矢理にでもついていけばよかったじゃない」

 アクアが肘で小突く。

「いえ、ヒロトさんどこか真剣そうな顔をしていたので……」
「そう?あなたよく分かるわね」

 ユウナがどこか意地悪そうな目でオトハを見る。

「やっぱり、好きな人のこととなると分かるのなのね」
「アクアさ~ん!からかわないでくださいよぅ~」

 オトハは赤くなりながらポコポコとアクアの背中を叩いたのだった。



 病院の庭にある大きな木の下。
 そこで一つのモンスターボールを持って、意識を集中しているものがいた。
 エースだ。

「バンダナ。本当にいいのか?」

 その木の裏側から、声を聞いた。

「勘違いするな。リュウヤの女を助けるのはついでだ。俺は妹を助けるために行く」

 ツンとしたようなムスッとしたような声でエースは答える。

「ジョカのことを言っているんじゃない。ライトのことを言っているんだ」
「……雑草。お前には関係ないことだろ」

 雑草……とはヒロトのこと。
 エース曰く、「頭が緑でボサボサだから」そう呼んでいるとか。

「ああ。確かに俺には関係ないことだ。お前がどこに行こうが、まして死のうが俺には知ったことじゃない」

 フンっと。エースが鼻で笑う。
 「だけど」とヒロトは付け足した。

「ライトには借りがある。だから、お前を無事に連れて帰らなくちゃと思ったんだ」
「……?」

 エースは不思議そうな顔をした。その顔はヒロトには見えてないが。

「わりぃが、昨日、お前とライトが話しているところを俺は聞いた。ジョカを助けたらライトの世界に戻って再び会いに行くってな」
「……お前……どこから聞いていた?」
「……どこからって、お前ら二人が話しているところだけだぞ?なに怒ってんだ?自然とドアの向こうから聞こえてきていたぜ」
「…………」

 そういわれて、エースは何とも言い難い微妙な表情をしていた。

「このこと知ってんのは俺とオトハさんぐらいだな。オトハさんには俺が話したし。言ってはいないけど、ユウナも知ってると思うぜ」
「…………」

 そういうと、エースは黙り込む。
 そうやってどのくらいの時間が経っただろうか。
 やがて、ヒロトは立ち上がる。

「バンダナ……ライトのために必ず生き残れよ」
「……お前に言われたくない。雑草」

 目を瞑って無表情のまま、エースは突っぱねる。
 エースとヒロト。
 彼らのベクトルはいつもまったく逆方向。
 ゆえに衝突を繰り返し、相手のことを忌み嫌う。
 エースはヒロトのことが嫌いで、ヒロトもエースのことが嫌いだ。
 だけど互いの実力は認め合っていた。
 戦う時はいつも背中合わせ。
 しかし、巨大な敵が相手であればあるほど、二人が背を向けて戦う時はどんな敵も撃ち滅ぼすことができるだろう。

「ひ、ヒロトさんっ!!」
「エレキ?どうした?」

 実はエレキはアクアとユウナが来る前からリュウヤの傍に居たのだが、交代して休んでいたのである。

「リュウヤさんが!!」



 4

 ヒロトとエレキ、そして、エースがリュウヤの病室に行くと、困った表情のオトハたちに出くわした。

「……!?リュウヤは?」

 リュウヤが寝ていたベッドはもぬけの空だった。

「私がちょっと席を外して、ユウナがバッテリーパックを買いに行っている間に抜け出しちゃったみたいなのよ」

 アクアがヤレヤレと首を振っている。

「お、オトハさんは何をしていたんです?」
「ごめんなさい……寝ていました……」
「(ほんと寝るの好きだな……オトハさん(汗))」

 突っ込む言葉が見つからないヒロトだった。

「手分けして探しましょう」
「その必要はないわ」

 廊下へ飛び出しかけたオトハをユウナが止める。
 クイックイッとユウナが窓を見るように手でサインしているのを見ると、そこにはリュウヤと何か喋っているラグナの姿があった。



「てめぇ……そんなケガで戦えると思ってんのか?」

 ヒロトたちがラグナとリュウヤのところへ着くとラグナの言葉が耳に入ってきた。

「俺はどうなってもいい……ナミネ……ナミネさえ助ければ、僕はどうなってもいいんだ……」
「…………」
「(ここにも自己犠牲の強い人がいたのね)」

 押し黙るヒロトとため息をつきながら2人を見比べるユウナ。

「すぐにでも行くぞ……。もう時間がない……奴らが“あいつ”を復活させる前に片をつける……」
「あ、“あいつ”?」

 エレキが不安そうに尋ねる。
 しかし、それに答えず、リュウヤはラティオスを繰り出す。

「頼むぞ……『トランスゲート』!!」
「え?オイ、リュウヤ!」

 時空の扉を開き、リュウヤはその中へと入っていってしまった。
 刻々とその扉が閉まりそうになる。

「行けるのは今しかないわね。行くわよ」

 ユウナが先に入ってしまった。

「そうだな」

 残りのメンバーも続々と入っていった。
 そして、最終的に一人が残された。

「がんばりなさいよ。みんな……」

 誰もいなくなったこの場所でアクアはポツリと呟いたのだった。



「すごいです……」
「興味深いわね」
「き、気持ち悪い……」

 周りの景色を見て様々な反応をする。
 ヒロトとラグナはこの景色を一度体験しているため、物珍しくもなんともないようだが、オトハやユウナはすっかり周りの景色に目を奪われていた。
 逆にエレキは目を背けているが。

「リュウヤ……落ち着けよ」

 ヒロトがリュウヤに追いついて腕を掴む。

「っ!!」
「あ!わりぃ」

 軽く掴んだつもりだったが、リュウヤのダメージが大きいらしい。彼の険しい表情がそれを物語っていた。

「俺やラグナも協力するって言っただろ。そんなに無茶するなよ」
「ああ。わかっている」
「それなら先に行こうとするなよ!お前が倒れたら元も子もないだろ!!」

 正面からのヒロトの言葉を聞き、リュウヤは頷く。

「…………分かった。ヒロト、悪かったな」
「わかればいいんだ」

 そして、彼らは歩き出す。

「歩きながら聞いて欲しい。これからの目的と俺たちが戦う相手について……」
「ナミネとジョカの奪還だろ?」

 ラグナが気軽に言った。

「あと“エネルギーの解放”もしないと」
「え、エネルギーの解放?」
「ああ。これは俺がやるから心配しなくていい。それよりナミネとジョカが捕まっていると思われるのは、六角形の頂点だ」
「六角形の頂点……ですか?」

 オトハが首を傾げる。

「ああ。あっちに行った時、敵がポロッと情報を漏らした。上空から見て六角形の敷地がある。その頂点となる場所にジョカやナミネたちは捕らえられているらしい」
「確認をしたわけじゃないのよね?」

 ユウナが一応念のために聞く。

「俺が倒れそうになった時に冥土の土産だといって丁寧に絵まで書いて教えてくれたんだ」
「絵まで書いて……ね(汗)」
「そして、敵について説明して置く。……“エグザイル”についてな」
「“エ・グ・ザ・イ・ル”」

 ユウナが復唱する。

「ああ。奴らは神殺しを画策した連中なんだ」
「“神殺し”?」
「か、神ってあの神?」

 エレキは恐る恐る聞きなおす。

「ああ。正真正銘の神だ。この世界を作ったものと言っても過言ではない」
「神?バカらしいぜ」

 ラグナは信じていないようにペッと唾をはき捨てた。

「“エグザイル”はとある世界にある治安維持組織だった。真面目で強くトップクラスのトレーナーや人材が揃っていた。だけど、あるとき、神がやってきてその世界を跡形もなく滅ぼしてしまったんだ。神の制裁だと言ってな」
「神の制裁ですか!?」

 オトハが口を押さえて信じられないと言いたげだ。

「どうしてそんなことを……」
「その世界の化学力や軍事力……全ての学問をを極限にまで研究した彼らの世界は、いつか神の存在を脅かしかねないと悟って神はこんなことをしたんだ」
「反乱を恐れたって言うのね。よくある話ね」
「そ、そうなの?」

 恐る恐るユウナにツッコミを入れるエレキ。

「だが、“エグザイル”のメンバー……それも最上級レベルの連中は生き残った。そして、彼らは全員神に復讐をしようとした」
「……復讐……」
「それが神殺しってワケね」
「ああ……そして、彼らは神と戦い敗走する羽目になる……。さすが神だったと言う話だ」
「……? 神に負けたのなら何であいつらは生きているんだ?」

 エースがふと疑問に思い聞いた。

「“エグザイル”の連中は全員逃げ延びたんだ。しかし、神はそれと同時にある呪いをかけた」
「呪い……ですか?」

 タキジの時もそのような話を聞いていたオトハが真っ先に反応した。

「ああ。その呪いにかかった者は年齢を重ねることができなくなる……つまり、死ななくなる」
「……そ、それが呪いなの?ぼ、僕としては嬉しいと思うんだけど……」
「エレキ……あなた、本当にそう思っているの?」
「え?」
「あ゛?ユウナ、どういう意味だ?」

 エレキとラグナは疑問符を浮かべる。

「神としては、神に逆らってしかも逃げ延びた連中をただで済ませるとは思えないでしょ。つまり、捕まったら最後……恐らく永遠に何かしらの苦しみを味わせられることになるでしょうね」
「……!!」
「いつ捕まるかもしれないという悩みにも苛まれる。というわけだな」

 ユウナとエースの言葉にリュウヤは頷く。

「そう。それが50年位前の話だ」
「……!?」
「50年も前のお話ですか!?」 
「一体そんな昔の話……どこから?」

 ほとんどの人が驚く中、リュウヤは答える。

「俺の祖母はかつて“エグザイル”の一員だった。全てこの話は祖母から聞いた話だ」
「あの占い婆さんが……」

 ヒロトが思い出したように呟く。

「アマ婆ぁは、かつてのいた世界の中で神童とも言われた一族の中でも最強のドラゴン使いだった。その実力を認められて18歳という若さで“エグザイル”のメンバーになった」
「…………」
「そして、その2年後に世界崩壊が起こった。瞬く間に神は世界を壊しつくした。そして、エグザイルがその神に仕返しをしようとしたんだが、アマ婆ぁだけはその作戦をに乗ろうとはしなかった」
「悪くいえば、アマお婆さんはエグザイルを裏切ったのね」
「そういうことになるな。……話を戻そう、そのエグザイルのメンバーは知っているだけで7人だ」
「つまり、人数的には互角というわけか」
「だが、一人一人の実力が飛びぬけて強い。俺はあっちの世界に行ったら3人に襲撃されて怪我を負った」
「3人にかよ」
「1対3とは卑怯です!!」

 ラグナとオトハがそれぞれ言った。

「実質、敵は一番広い六角形の最下層のフロアの3人を倒せばいいだけの話。六角形の敷地にある真ん中の塔にいる敵はどうにかするとして、みんなは全員でそいつらを倒してくれ」
「分かったわ」
「それじゃ、ついたら2人一組位になって行動するのがいいな」

 ヒロトの提案にみんな頷く。

「リュウヤ、一つ気になることがあるんだけどいいかしら?」

 ユウナが疑問を投げかける。

「なんだ?」
「エグザイルの連中がジョカやナミネを攫ったのって、もしかして、“あいつ”の復活とか、神殺しの計画と関係があるのかしら?」
「……それは……」
“ふふふ……あたしが答えてあげようか?”
「……!?」

 どこからともなく響く妖艶な声。
 みんなで辺りを見回してどこに敵をいるか探す。

“こっちよ。こっち”
「「上!?」」

 ユウナとオトハが同時に気付いた。
 見上げるとハイヒールを履き、赤いロングスカートの10代に見える女が全員を見下ろしていた。

「う、うわぁ……」
「っ!!」
「…………(オイオイ)」

 男たちはほとんどがそっぽを向いた。
 何故なら、上を見ると、スカートの中のパンツが丸見えだったのである。

「ちくしょう……何て強烈な先制攻撃だぁ……Tバックなんて挑発的なものを履いてやがる……」

 でもラグナはじっくりと見ていた。
 ユウナがそんなラグナの頭を小突く。

「リリス・サッキュバス……」
「あんたがリュウヤね。まさか死にに戻ってくるとは思わなかったわ。しかもこんなに生贄をつれてくるとはね」
「生贄ね……そう簡単に私たちは負けたりはしない」

 ユウナがボールを構える。

「まあいいわ。あたしたちの狙いはそこのバンダナのあんたよ」
「…………俺か」

 指名されてもエースは冷静だった。

「そう簡単にはエースを渡したりしねぇぜ」

 ラグナもスタンバイを完了している。

「ふふふ……楽しいゲームの始まりね」

 パチンッ!!

「な、何!?」
「何でしょう?地震でしょうか?」

 リリスが指を鳴らすと突然足元が揺らぎ始めた。

「まずい!!リリスの奴……この空間を壊す気だ!!」
「気付くのが遅いわよ」

 ズドンッ!!!! ズドンッ!!!! ズドドドドンッ!!!!!!!!

 そして、空間は大きな音を立てて崩壊したのだった…………



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 エグザイル 終わり


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Last-modified: 2015-05-06 (水) 13:04:00
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