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たった一つの行路 №111

/たった一つの行路 №111

 ズドンッ!!

 ボールから飛び出した二匹の攻撃の衝撃は凄まじい物だった。
 ぶつかったポケモンたちは両者共に後方へ弾け飛んでいった。

「ピジョット、『フェザーカッター』!!」

 フェザーダンスと言う技があるが、このフェザーカッターはその技を応用した技のようだ。
 羽根が刃になり、ユウナのポケモンに襲い掛かる。

「テラりん、『砂嵐』!!」

 一方のテラりんことプテラは砂嵐でフェザーを吹き飛ばそうとする。
 しかし、砂嵐にも威力負けをせず、フェザーでプテラを切り裂いていった。

「そこだ!」

 すでにピジョットはプテラの真上を取っていた。
 そして、急降下のツバメ返しがプテラの背中に命中しダメージを与える。
 いくら岩タイプの属性を持っているとはいえ、プテラは種族的に防御能力は高いとはいえない。
 攻撃を与えてから旋回して、連続でツバメ返しの態勢に入る。
 2撃目はもうプテラの目の前まで迫っていた。

「テラりん!引き付けて―――」
「無駄だ!」

 ズドンッ! ズドンッ!!

 2度、3度……ツバメ返しでプテラを攻め立てる。
 アルのピジョットは通常のピジョットよりも一回りくらい大きく、人を3人ほど乗せてもびくともしない大きさの上にカイリュークラスのスピードも出せる。
 その巨体から繰り出されるパワーとスピードにテラりんはまともに対抗する術がなかった。

「止めを刺せ!」

 電光石火で一撃を決めようとした。
 しかし、テラりんからねらいを外し、見当違いの方向へ飛んで行って下の木に激突した。

「な!?」
「チャンスね!コイりん!『10万ボルト』!!」

 すかさずレアコイルを繰り出して攻撃を入れる。

「ちっ!!」

 しかし、アルの反応も早かった。
 10万ボルトを放った瞬間に別のポケモンを繰り出して攻撃を防いだ。
 地面タイプのそのポケモンを見たとき、ユウナもはっとして、次の指令を口に出す。

「『(電磁)浮遊』!!」 「『地震』!!」

 ほぼ同時に命令を出して、同時に攻撃が繰り出された。
 コイりんは浮き上がって、攻撃をかわした。

「『トライアタック』!!」

 空中から地震を繰り出したドダイトスに仕掛ける。
 しかし、アルもエナジーボールを指示して、攻撃を相殺させる。

「テラりん!『大文字』!!」
「ピジョット!プテラに止めを刺せ!!」

 しかし、ピジョットは目をくるくる回して、千鳥足になっていた。

「ちっ……(あのプテラの“引き付け”には“引き付けて『超音波』”の意味があったのか……)『リーフストーム』!!」

 ピジョットを戻しつつ、ジョカに不意打ちに致命傷を与えた攻撃が大文字を飲み込んでテラりんにヒットした。
 墜落するテラりんを戻して、ユウナはポリゴン2を繰り出す。

「ポリりん!『冷凍ビーム』!!」

 氷系の攻撃はドダイトスには効果は抜群だ。

「潰せ、アグノム!」

 アグノムと呼ばれる伝説のポケモンの一匹がサイコキネシスを放った。
 冷凍ビームを逸らし、さらにポリりんやコイりんをも吹き飛ばしてダメージを与えた。

「くっ……なんて威力なの?それにしても、まさか伝説のポケモンを手持ちに入れているとは思わなかったわ。てっきり、アルのポケモンはアグノムを入れない5匹だと思っていたから……」
「……? お前は俺の手持ちポケモンを知っていると言うのか?」
「ええ、知っているわ。ピジョット、ネイティオ、ドダイトス、ヘルガー、アズマオウ……。まさか、アグノムまでいるとは思わなかったけど……」
「何故知っている?」
「そんなの決まっているじゃない。SGのメインコンピュータにハッキングして情報を見させてもらったのよ。だから、SGの目的、メンバー、その手持ちポケモンまでバッチリ知っているのよ」
「そうか。それならいいことを教えてやる。俺はここに来るまでにアズマオウが戦闘不能になった。だから、戦えるのは残り5匹だ」
「……? どうしてそれを私に教える必要があるのかしら?」
「ハンデ……ってやつだ」
「言ってくれるわね。ポリりん!『トライアタック』!!」
「アグノム、『まねっこ』」

 同タイミングで放つ攻撃。
 しかし、威力には圧倒的な差があった。

「くっ!ポリりん!」
「お前はこのアグノム一匹で終わりだ。他のポケモンの出番はもうない」

 そういうとアルは、ドダイトスを戻してしまった。

「…………。ポリりん!もう一回『トライアタック』!!」
「『火炎放射』」

 ポリりんの攻撃はアグノムに届かない。
 火炎放射の威力はトライアタックを押し止めた。

「終わりだ。『サイコキネシス』」

 ポリりんに接近してのサイコキネシス。
 零距離の地点で放つその攻撃は、確実に一撃でしとめるだけの威力を秘めていた。

「!?」

 しかし、攻撃を受けたにもかかわらず、ポリりんは平然とした顔をしていた。

「残念ね」
「……属性転換か……」
「正解よ」

 ポリりんが使った技は『テクスチャー2』。
 最初にサイコキネシスを受けた時の記録から、エスパー系の攻撃を最も防ぐことの出来るタイプに転換していた。

「だが、その程度でアグノムを止められると思うな」

 火炎放射と10万ボルトが交互に襲い掛かる。

「そう来るでしょうね。『高速移動』!」

 スピードを上げてポリりんは回避しながら、アグノムに近づく。
 最も威力のある技の『トライアタック』を今度は命中させるために。

「そこよ!」

 射程内に入り、トライアタックを放つ。

「アグノム」

 しかし、アグノムはポリりん以上のスピードを持って攻撃をかわした。
 そして、10万ボルトと火炎放射を叩き込んだ。
 ポリりんに避ける術はなかった。

「悪いな。そのスピードを利用させてもらった」

 アルはにやりと笑った。

「クスッ……『自己暗示』ね」

 しかし、ユウナも不敵に笑う。

「……? 何がおかしい?」
「これも計算のうちよ。ウイりん!『スパイラルショット』よ!!」

 ウイりんことウインディを繰り出した直後に、ドリルのような強力な火炎弾を放った。

「そんな攻撃、簡単にかわせ…………何!?」

 いつの間にか、辺りが空間が歪んで、アグノムの動きが鈍くなっているのに気がついた。

「まさか!?」
「その通りよ。あなたが『自己暗示』をしている間に、ポリりんはすでに『トリックルーム』を使ったのよ。これでどうかしら?」

 当のポリりんはアグノムの攻撃を何とか耐えて、『自己再生』の状態に入っている。

「(つまり、この女は俺が『自己暗示』を繰り出すことを予想していたということか!?)」

 ズドンッ!!

 そして、会心の一撃がアグノムのいる場所で炸裂した。

「あまり人を見下さないことね」

 髪を掻き分けて、ユウナは華麗に言った。
 ここにアースがいたら、きっと美しいとか言っていたことだろう。

「……そうだな。ちょっと俺はお前を見下していた」
「……!」

 煙が晴れ、ユウナはアグノムがまだ戦える事を確認した。
 そのアグノムが無傷の理由は、アグノムの手前にヘルガーが立っている事で理解した。

「ここからは、アグノム一匹と言わず、全力でお前を倒す」
「そう来てもらった方がこっちとしてもうれしいわ」

 ヘルガーがまず襲いかかる。しかし、それはウイりんが対抗する。
 お互い特性を理解しているだけあって、むやみに炎攻撃はしなかった。

「(しかし、『もらいび』の特性があったというのに、さっきの技は完全に吸収できなかった。まだこいつはそんな技を持っているのか?)」
「(これは厳しいことになったわね。ずっと一匹で対抗してくれるなら、このままでも勝機はあったんだけど……)」

 ポリりんとアグノムの激突は、依然として互角だった。
 トリックルームでスピードが反転しているとはいえ、ポリりんが攻撃をしてからでも防御に転じることがアグノムには可能だったから。
 トライアタックを火炎放射で防がれているため、ポリりんには決定的な一撃をアグノムに与えることは出来なかった。

「(とりあえず、トリックルームが発動している間にアグノムだけでも倒さないと……厄介なことになるわ)」

 ユウナはポリゴン2を戻した。そして代わりに、ブラッキーを繰り出した。

「ブラりん!」

 電光石火のスピードでアグノムに向かって体当たりをしようとした。

「させない」

 アルはアグノムを戻してすぐに別のポケモンを場に繰り出した。
 そのポケモンとはドダイトス。
 ブラりんとドダイトスの体格差は歴然。
 ブラりんの攻撃は弾き飛ばされた。

「…………」

 そして、ユウナはアルがドダイトスを出した意味をすぐに読み取った。

「ブラりん!『ファントムハリケーン』!!」

 幻影嵐。
 その名にふさわしく、影分身と電光石火のコンビネーションの技は怒涛の嵐の如く、ドダイトスに攻撃を加えていく。

「だが……その程度では足止め程度だな」
「十分よ。ウイりん!『大文字』」

 ヘルガーの攻撃を避けて、ウイりんは大文字を放った。

「現在、トリックルームが発動中だということをお前は忘れている」

 だから、かわすのは容易いと思っているアル。

「そんなのわかっている。だから、あなたはドダイトスを繰り出して、そのトリックルームを利用してまずウイりんから倒そうとした。でもね……」

 歪んだ空間が元に戻っていく……

「!!」
「トリックルームの時間は終わりよ」

 このままドダイトスのスピードでは攻撃をかわすのは不可能だった。

「ちっ、『リーフストーム』!」

 この油断を誘った攻撃でさえ相殺されてしまった。

「あなたがすぐに対抗策を思いつくのは予想通りね」
「……!! ドダイトス!」

 すでにウイりんが炎をまとってドダイトスに向かって突進していた。

「『フレアドライブ』!!」
「『ウッドハンマー』!」

 ズドドンッ!!!! 

 ……と正面衝突。
 しかし、ドダイトスのハンマーがウイりんのタックルを弾き返した。
 両者ともの技は反動の大きい大技で、どちらにしてもダメージは逃れない技だった。
 結果、双方ともダメージを負い、怯んでいた。
 一方のヘルガーとブラりんのほうも全くの互角といえる状況だった。
 しかし、勝負の展開を有利に進めているのはブラりん。
 得意なレンジを活かし、積極的に攻撃を決めていっている。
 一方のヘルガーは遠距離系の技が得意なのか、あまり近距離系の技は繰り出さず、攻撃を避けるのに専念していた。

「(ドダイトスを一気に倒さないと!!)……ブラりん!『黒い眼差し』!!」
「!?」

 ヘルガーとの戦いを有利に進めていたブラりんをドダイトスを逃がさないようにするために呼び寄せた。
 だが、勿論その隙をアルのヘルガーが見逃すはずはない。

「『オーバーヒート』」

 炎系最大の技。
 それをブラりんに向けて放つ。
 ウイりんがドダイトスと同じく怯んでいる今、盾になることは不可能と考えた上の選択だった。

「来たわね!……ウイりん!」
「っ!」

 しかし、ウイりんはパッと目を開き、すぐにブラりんの元へと駆けつけた。
 どうやら、動けない振りをしていたらしい。
 ブラりんの盾になり、炎を受け止める。
 勿論、特性は『もらいび』。炎攻撃は吸収する。

「ウイりん!『スパイラルショット』!!」
「ヘルガー!」

 最初にヘルガーが受け止めたスパイラルショットよりもより大きな炎がドダイトスに襲い掛かる。
 ブラりんの力でボールに戻せないことを考えた上でヘルガーを呼び寄せて、『もらいび』で吸収しようとする。
 しかし、この攻撃はヘルガーの吸収できる炎の範囲を明らかに超えていた。
 ヘルガーは特性の影響であまりダメージを受けなかったのだが、吸収できなかった分の炎がドダイトスに流れて、燃やし尽くした。

「(これでどう?)」
「ヘルガー。『波動弾』」
「え?」

 メラメラと燃える炎の中でヘルガーは口を開けると、大きなエネルギーの球体をブラりんに向けて放った。
 しかし、その色はルカリオの使うそれとは色も属性もまったく違うものだった。
 黒く、禍々しい、闇の塊の色の波動だった。
 そして、避けられずに一撃がブラりんの身体を包み込む。

 バチバチバチッ!!

 ブラりんは強烈な一撃を一気に受けて倒れた。

「なんて威力なの!?」

 ただその力に唖然とするユウナ。
 しかし、呆然としている場合ではなかった。
 ヘルガーとアルが炎を掻き分けて、姿を現した。

「俺のドダイトスを倒した代償は大きいぞ。『波動弾』」

 次はウイりんに狙いを定めて攻撃を撃ってきた。

「させないわよ!!スズりん!!」

 ポケモンチェンジで代わりにスズりんという名のラグラージを繰り出した。

「『ハイドロポンプ』!!」

 勢いよく放った水流は波動弾を押しとどめた。
 しかし、ヘルガーはすでに次の行動に移っていた。

「『ソーラービーム』!」
「……!! 『まもる』よ!!」

 後ろからの攻撃に気付いて振り向いて、攻撃を防御した。

「(まずいわ……。攻撃を退けることは出来るけど、この子(スズりん)じゃ、あのヘルガーに接近することが叶わない。でもやるしかないわね)スズりん!『突進』!」
「策もなく突っ込むのか……?(いや、何かあるはずだ)『波動弾』!!」

 とりあえず、波動弾で目の前のスズりんに攻撃を放った。
 そして、アルはじっくりとユウナを観察する。
 ポケモンを追加するなり、交換したりするなら、絶対に相手のトレーナーの動きを見逃してはいけない。とアルはそう考えていた。
 攻撃がラグラージにぶつかる瞬間まで、ユウナは動きを見せなかった。
 そして……攻撃は命中した。

 バチバチバチッ!!

 ブラりんのとき同様、強力な闇のエネルギーがスズりんに襲い掛かる。

「そこよ!」

 ユウナはただ指示を飛ばした。
 倒れると思ったスズりんは、ユウナの指示で持ち直して突撃して行った。
 それを見てアルは悟った。

「まさか……本当に無策で突っ込んできたのか!?ヘルガー!」

 自ら繰り出した水に乗りながら、突っ込んでくるスズりん。
 『滝登り』だ。
 だが、ほんの紙一重でヘルガーがその『滝登り』をかわした。
 と言っても、かわせたのはその『滝登り』だけだった。

「スズりん!『ウォーターパンチ』!!」

 滝登りの水から飛び降りたスズりんはヘルガーの上から水を纏ったパンチを放った。
 ヘルガーはかわすことは出来ないと悟ると波動弾を放った。
 両者ともに攻撃はヒットしてダウンした。
 倒れると同時に2人はコイりんとピジョットを再び繰り出した。
 放った技は10万ボルトとかまいたち。

「……っ!」
「……(これは……)」

 両者ともに攻撃を当てることができない。相殺されてしまうのだ。

「『ラスターカノン』!!」
「『鋼の翼』!」
「『電撃波』!!」
「『フェザーカッター』!」

 攻撃を逸らしたり、押しとどめたり。
 この2匹の組合せでは勝負が決まらないと思われた。

「面倒だ……そろそろ、カタをつけさせてもらう!ピジョット!」
「……そうね。こっちも攻め方を変えるわ。コイりん!」

 アルが痺れを切らして『電光石火』で撃墜に向かう。
 ユウナの攻め方を変えようとする前に、攻撃はレアコイルに当たった。
 すると、レアコイルのうちの一匹が吹っ飛んだ。

「やったか!? ……なっ!?」

 吹っ飛ばした一匹のコイルを見てギョッとした。
 なんと、自身の意思を持って動き始めていた。
 しかし、よく見ると吹っ飛ばしたコイルだけでなく、残りの2つのコイルも分裂していた。
 とは言うものの、磁力線によって繋がれているため、しっかりとレアコイルとして成り立っている。
 一匹がピジョットの攻撃を受けて吹っ飛ばされ、一匹がピジョットを押さえつけた。

「コイりん!『電磁砲』!!」

 そして、最後の一匹が至近距離での電気攻撃を放った。

「ピジョット!振りほどけ!」

 一匹のコイルの重さが20kgだとして、ピジョットの重さはその約2倍。
 抑えるといっても、そう簡単に出来るものではなく、ピジョットに弾き飛ばされて、上空へ逃げられてしまった。

「無駄よ」
「!?」

 しかし、電磁砲はピジョットに追尾し、攻撃は完全に命中した。

「あらかじめ、『ロックオン』をしておいたのよ。……さぁ、これであなたのピジョットの機動力は半減ね」
「勝った気でいるならそれは間違いだな」
「集合!『10万ボルト』!!」
「『ブレイブバード』!」

 ピジョットは攻撃を避けなかった。
 その代わり、攻撃を受けながらも、最後の一撃を再び一つのレアコイルになったコイりんに叩き込んで、相打ちに持ち込んだ。

「ふぅ……残りお互い2匹ずつね」

 少し息が切れてきたユウナ。
 しかし、それはアルのほうも同じのようだ。

「……ここまでお前がやるとは思わなかった……だが」
「『そろそろ勝たせてもらう』……なんて言わせないわ!!」

 再び、ウイりんを繰り出したユウナ。
 アルはネイティオだ。

「『スパイラルショット』!!」
「その技は見飽きた。ネイティオ」

 ネイティオは翼を広げると、羽ばたいて風を起こした。
 すると、攻撃が戻ってきた。

「どうして!? ……でも、特性の『もらいび』がある限り…………!!」

 ズドン!

 しかし、ユウナの考えは裏腹に、ウイりんは炎を受けながら吹っ飛ばされた。

「……っ!?吹っ飛ばされた!?」
「ネイティオ……『サイコフェザー』」

 ピジョットの時に見せた『フェザーカッター』と似た技だが、根本的に違うのは超能力によってエスパータイプがコーティングされていて、一枚一枚を超能力で操ることができることだ。

「……!! 『炎の渦』!!」
「『サイコブラスト』」

 羽根を燃やし尽くすために炎の渦を放つが、ネイティオも同時に極大な超能力のビームを放った。
 しかも、炎の渦を打ち抜いてウイりんにかなりのダメージを与える。

「くっ!ウイりん!!」
「これで終わりだ」

 そして、サイコフェザーが一斉に襲い掛かる。

「『高速移動』!!」

 素早く動き、フェザーをかわそうとするが、ウイりんの体力は限界に近かった。
 しかも、フェザーはネイティオの超能力を通して動く。
 素早く動いているとはいえ、完全にかわすことはできない。
 一枚一枚、ウイりんに襲いかかり、切りつけていった。

「くっ!!」

 さらにユウナにも襲い掛かる。
 全てのフェザーが攻撃をし終えたとき、ウイりんもユウナもボロボロだった。

「諦めろ……。お前の負けだ。これ以上、無駄な足掻きはやめろ」
「はぁはぁ……残念だけど、私は自分に対しては諦めが悪いのよ。人には分が悪いとすぐ諦めなさいと言うくせにね」

 自分自身を嘲りながら、ウイりんに大文字を命令した。

「同じことだ。返してやれ!『サイコウィング』」

 先ほどのスパイラルショット同様に、簡単に返されてしまった。
 しかし、今度は高速移動で回避する。

「(そういうことね……)」

 ユウナはポケットに忍ばせていたⅠ☆NA(インフォメーションナビ)を左手に持ち、操作しながら思った。
 膨大な情報量と処理能力を持つポケギアと大きさがなんら変わりないこの機械はユウナの秘密道具だ。

「その技は、ネイティオの『風起こし』と『サイコキネシス』を合成した特殊返しの技ね。しかも恐るべきは相手が攻撃しなくてもサイコキネシスの威力が発揮できる点ね」
「それがわかったところで、お前にネイティオは倒せない」
「どうかしらね……ウイりん!」

 炎のスクリュー螺旋……スパイラルショットを再び放った。

「その技はもう見飽きたと言っただろ。見るに『火炎車』と『炎の渦』の合成技と言ったところ。確かに攻撃範囲も威力もオーバーヒートやブラストバーンクラスの威力は持っているといえるだろう」
「…………」
「だが、ネイティオのサイコウィングは破れやしない!やれっ!」

 ネイティオは翼を羽ばたきながらサイコキネシスを発動させた。
 見えない風に見えない超能力を付加して押し返すミラーコート以上のこの技は早々破れるものではない。

「確かに、特殊技なら破れないでしょうね。ならこれでどうかしら!ウイりん!!」
「何!?」

 スパイラルショットを放った次の瞬間、ウイりんが螺旋の炎に向かって突っ込んでいった。
 そして、自らの繰り出す炎とスパイラルショットの炎が混ざって、さらに強力な“打撃技”へと変化した。

「……だが、そんなもの!!」

 サイコウィングは返すだけでなく、普通にサイコキネシスの威力も加わっている。
 だから、例え打撃技になったとしても、ウイりんにダメージを与えることは可能だった。

「ウイりん!風を打ち破りなさい!!」

 ユウナの気合とウイりんの勢いがネイティオの技を上回った。
 ネイティオは無防備のまま、ウイりんの破壊力抜群のその技の前に屈した。

「はぁはぁ……どうよ。これがウイりんのオリジナル技『スパイラルキャノン』よ」

 諸刃の剣というべきか、勿論この技を使うとウイりんの体力は激しく消耗する。
 何せ、スパイラルショットだけでも爆発的な威力があるのに、それを自らの体に纏いながら攻撃するのだから。
 そして、ウイりんも動こうとするが、ダメージが相当溜まって無理な話だった。

「……アグノム!」
「はぁはぁ……ポリりん!」

 ユウナとアルは同時に最後のポケモンを繰り出し、技を命令する。
 トライアタックとサイコキネシスが激突。
 しかし、その結果は最初に激突した時と同じだった。

「くぅっ!! がはっ!!」

 ポリりんとユウナがサイコキネシスの力で吹き飛ばされる。
 ユウナは壁に打ち付けられて気を失った。
 アルはそう思っていた。

「……なかなか強かった。だが、俺に勝つことはない」

 十分に警戒しながら、ユウナに近づく。
 ジョカと同じように拘束するために。

「(……残りがアグノムじゃなくてアズマオウだったのなら、“ポリゴン2の状態”でも勝てたのに……)」

 ぴくっと、ユウナの指が動いたのを見て、アルは後ろに飛び退く。

「……ポリりん……『破壊光線』」
「アグノム!『サイコキネシス』」

 ノーマル最強の技がアグノムに向かっていく。
 しかし、アグノムのサイコキネシスはいとも簡単に破壊光線の軌道を逸らした。
 同時にユウナは手をついてゆっくり立ち上がった。そして、左手に持っていたⅠ☆NAを操作した。

「これで止めだ。『サイコキネシス』」

 超能力がユウナとポリりんを襲う。

「はぁはぁ……本当は“これ”を使わなくても、勝てると思ったのにね……。行くわよ……ポリりん」

 ズドンッ!!

 ユウナとポリりんにそのサイコキネシスは炸裂した……?



 たった一つの行路 №111
 第二幕 Dimensions Over Chaos
 進撃のサーティーンカード⑤ ―――ユウナvsアル――― 終わり


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Last-modified: 2015-04-26 (日) 12:01:43
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