ポケモン小説wiki
たった一つの行路 №108

/たった一つの行路 №108

「バクフーン!『フレアドライブ』!!」

 ズドム!とケンタロスに会心の一撃を打ちかます。

「後一匹ね!」

 アクアと竹刀を持っている中年男……ハシラのバトルは佳境に入っていた。
 アクアはまだ今出しているバクフーンとマンタインが残っている。
 状況は有利と思えた。

「オイドンをここまで追い込むなんて……だが、もう1人の子がどうなったか知らないのか?」
「え……?」

 バゴーンッ!!

 突如壁が崩壊した。
 それは隣で戦っていたエアーとスティックという中年太りをしたおばさんが戦っていた。

「エアー!?」

 パートナーのドクロッグと一緒にエアーが気絶して吹っ飛んできた。

「アタシと戦うなんて10年早いんだよ!おや、ハシラ、あんた追い詰められてんのかい?」
「このアクアって娘が意外に強かったんだよ」
「そうかい。アタシはまだ2匹ほど余裕だから協力して戦ってやるよ」

 スティックはフローゼル、ハシラはモジャンボを繰り出した。

「(エアーを連れて逃げられない……! 戦うしかない!)バクフーン!マンタイン!」

 アクアは不利と知りつつも、残りのポケモンを繰り出して、2人に挑んでいった……。



 たった一つの行路 №108



 エレキがストムと遭遇する1分前のこと。
 緑髪の少年は現在一人でいることにようやく気付いた。

「……誰だ!」

 ヒロトは前にいた気配を感じ取り、ボールを構えた。
 そこには二人の女の子がいた。
 詳しく説明すると、片方の青い髪の女の子はつぶらな瞳でゆるくウエーブのかかった髪型をし、格好はスパッツに軽く法衣みたいな物を羽織っていた。
 スタイルは上から82,61,79でカップがCで身長はヒロトよりも20cm低い150cm程度だった。
 もう1人の女の子も同じくつぶらな瞳だけど、髪の色はオレンジで、耳元からゆるく束ねたていた。
 服装はミニスカートで、ロングソックスを履いてすらりと長い足を強調していた。
 と言っても、身長が155しかないからあまり長く感じないかもしれないが、足が普通の人よりも長く見えるのは一目瞭然だ。
 スタイルは上から88,63,80とEカップで、いずれにしてもスタイルがいいことはヒロトの目から見て取れた。
 彼女らはヒロトよりも3歳年上の21歳である。

「侵入者……ね」
「どうしてなの……?どうしてあなたはこんな場所へ来てしまったの?」
「なんだよ。お前らはなんだって言うんだ!?」
「私はラナ。この子はアメ。私たちは双子の姉妹。悲しいわ」

 オレンジ色の髪の子、ラナがハンカチで涙を拭いながら、ボールを取る。
 中から出てきたのはゴースト。ナイトヘッドでヒロトを狙う。

「ここに侵入する人……アメは許さない」

 妹であるアメも好戦的にボールを取り出した。
 こちらは水と地面タイプのヌオー。水鉄砲の牽制攻撃だ。

「よっと!」

 掛け声をかけながら、タンッタンッと、跳ぶ様にバックステップを踏み、2つの攻撃を回避した。

「バトルなら、受けて立つぜ。ディン!」

 アメとラナを一瞥して、ディンとニックネームを付けられたエスパーポケモンであるフーディンを繰り出す。

「『サイケ光線』!」
「『スケーティング』」

 ゴーストに攻撃が命中したと思いきや、その攻撃はすり抜けてしまった。

「透明化か!?」

 その隙に乗じて、ヌオーが『冷凍パンチ』を仕掛けてきた。
 しかし、ディンが『リフレクター』を同タイミングで繰り出して、攻撃を防いだ。

「『水鉄砲』です」
「『なりきり』!」

 アメの冷凍パンチからの連続攻撃の水鉄砲をまともに受けてしまった。
 だが……

「アメ……回復されていますよ」
「……やりますね」

 ヌオーの特性『貯水』をコピーし、ディンは全くダメージを受けていないどころか、回復していた。

「ディン!『サイコキネシス』!!」

 ヌオーに向かって攻撃を放つが、その前に一匹のゴースが現れて攻撃をもろに受けてしまった。
 しかし、それは狙ってやったことだとヒロトはすぐに気がついた。

「……まさか!?」
「『道連れ』です」

 ラナが新たに繰り出したゴースを身代わりにし、ディンは倒れてしまった。

「隙あり!」

 アメのヌオーがパンチでヒロトに襲い掛かる。
 何とか、回避をして距離を取ろうと心がけるヒロト。

「力を持つ者は無駄な争いを起こします。それはとても悲しいことなのです……。私はそんな相手の力を奪うことで争いを鎮めます」
「要するに、君は強い奴だろうが、弱い奴だろうが、相手を倒すための戦法と取るってわけか」
「それで無駄な戦いを終えることが出来るなら本望なのです……」

 ヌオーのパンチを後ろに下がったところで、水鉄砲が飛んできた。
 横っ飛びをしてギリギリでかわしてからヒロトはポケモンを繰り出した。

「ザーフィ!出番だぜ!」
「どんなポケモンのどんな攻撃も無駄です。ゴースト、『スケーティング』」
「それにリザードンなんて、ヌオーの敵じゃありません。『ストーンエッジ』です」

 炎攻撃が来ると予想をし、ラナはすでに透明化を指示。
 一方のヌオーは炎飛行タイプが苦手とする岩系の攻撃で迎撃に出る。

「『大文字』!!『熱風』!!」

 大文字を撃って、ストーンエッジを相殺すると、続いて熱風がアメとラナをも巻き込んで攻撃を与え続ける。

「無駄です」
「そうかな?」
「……?」
「ダメージは与えられなくても、温度変化に耐えられるか?」
「!!」

 ラナやアメは熱風の攻撃範囲から抜けていたが、ゴーストは動けなかった。

「君のゴーストは透明化中、動けない。それが解ければこの攻撃で終わりだ」
「その間に、あなたのリザードンを倒せばいいだけです」

 アメのヌオーが水鉄砲を繰り出した。

「させない!シオン!」

 ザーフィの前に『光の壁』を張って、攻撃をブロックした。
 シオンと呼ばれたポケモンは、俊敏な動きでヌオーの背後を取った。
 そこで初めて、シオンの姿が2人の目に映った。ライチュウだ。

「いつの間に!?」

 ズドンッ!!

 拳の一撃でヌオーをダウンさせてしまった。

「やりますね。でも、アメは負けません。ルンバッパ」
「加勢してあげて、ドラピオン」
「シオン!『電撃波』!」

 集束した一直線の電撃がルンバッパに命中する。
 レーザーのようなその攻撃はルンバッパを一撃でダウンさせた。

「アメのルンバッパが一撃で……?」
「『クロスポイズン』!」

 2つの爪が交錯し、ライチュウ……シオンを捕捉する。

 ズゴン!!

「効かないぜ」
「!!」

 尻尾と両手を使って攻撃を真正面からガードした。
 そして、ヒロトの合図で両手でドラピオンの腕を払った。

「『サマーソルト』!!」

 バク転をした。しかし、ただのバク転ではない。
 バク転の勢いで自分の尻尾をドラピオンにぶつけた。
 シオンの尻尾の威力はピカチュウの時から尋常ではなかった。
 それはエースのメダクロスを同技で上空へ打っ飛ばした事で証明されている。
 まして、進化した現在のシオンの攻撃力はそれ以上と考えて間違いはなかった。

 ズドンッ!! ズドンッ!! ズドンッ!! ズドンッ!! ズドンッ!! ズドン!! ズドン! ズドン……

 ドラピオンがアメとラナの横を通り抜けて壁を突き抜けていった。
 それと同時に、ゴーストの透明化が解けて、ザーフィの攻撃を受けてダウンした。
 しかし、そのタイミングで雨が降り出したことにヒロトは気付いた。

「ルンバッパの『雨乞い』がようやく発動した……。アメの本領はここからよ」

 マンタインを繰り出すアメ。
 瞬時にヒロトの視界からマンタインが消えた。

「!!」
「『ハイドロポンプ』」

 バシャーッ!!

 ザーフィの背中から攻撃をピンポイントに命中させた。
 前のめりに倒れるザーフィ。

「相当なスピードだな」
「最高速度に乗ったこの子に勝てるものはいません」
「スピード勝負なら、こっちだって負けないぜ」

 ザーフィを戻して代わりに別のポケモンを繰り出した。
 そのポケモンはマンタインの背後を取った。

「残念ですが、アメの勝ちです」

 しかし、1秒足らずでそのポケモンの背後に回り込み冷凍ビームを放っていた。
 だが、攻撃はすり抜けた。

「……!? 『影分身』ですか!?」
「フライト!そのまま決めろ!!」

 アメが気付いた時には、マンタインの上からのしかかるように、フライトというニックネームのフライゴンが攻撃を決めた。

「まだです。『冷凍ビーム』」

 だけど、フライトはかわす。
 追いかけようとするマンタインだが、翼が麻痺してしまったらしく飛べなかった。
 そこで待機していたシオンが電撃波で止めを刺した。

「アメのマンタインのスピードを凌ぐなんて……」
「だけど、悲しいです。それがあなたの命取りになります」

 アメとラナが次に繰り出したのはゲンガーとヤドランだった。

「一気に決める!フライト!『ドラゴンクロー』!シオン!『10万ボルト』!!」
「ゲンガー!」

 ゲンガーにドラゴンクロー、ヤドランに10万ボルトを指示したのだが、ドラゴンクローはゲンガーに当たった瞬間に消えた。
 ゲンガーの身代わりである。
 そして、ヤドランを庇うようにゲンガーはシオンの10万ボルトを受けた。

「『道連れ』」

 先ほどディンがやられたのと同じ手でシオンも倒されてしまった。

「(ちっ、またか)」
「姉さんありがとう。ヤドラン、『トリックルーム』」

 ヤドランの目が光ると、この部屋の空間が歪み始めた。

「くっ、フライト!」

 ヒロトは戻そうとボールをかざしたが、ヤドランの冷凍ビームがフライトを捉えて氷漬けにしてしまった。
 フライトがボールに戻ったのはそれからだった。

「『スピード勝負なら負けない』のでしたよね?」

 ラナが悲しそうな目でそう言った。
 ヒロトの今まで出したポケモンといえば、フーディン、リザードン、ライチュウ、フライゴン……いずれも素早さが高いポケモンたちだった。

「つまり貴方の使うポケモンのタイプはスピードだと予測しました。でも、アメのヤドランに勝てません」
「そういうことです」

 そういって、ラナが最後のポケモン、ユクシーを繰り出した。

「大人しく投降して下さい」

 しかし、ヒロトは表情を変えなかった。

「何を言ってんだよ。バトルっていうものは最後までわからないものだぜ」
「悲しいですね。どうして、無駄だとわかっているのに戦おうとするのでしょう?」
「それはどうかな?」

 ガチンッ!!

「ユクシー!?」

 一撃必殺……『絶対零度』だった。

「まさか……一撃でユクシーがやられるなんて……」
「そう易々と俺は負けない。レイン!『10万ボルト』!」

 ヤドランに向かって、電撃を放つが、この歪んだ空間の中ではヤドランは俊敏に動くことができた。
 よって、普段ではありえないくらいアクロバティックにかわした。

「ごめん、アメ……もう私戦えない……」
「姉さん。大丈夫……。アメ、勝つ」

 アメのヤドランとヒロトのレイン(ラプラス)の一騎打ち。
 トリックルームの中で戦っていて、ヤドランの方が攻撃の主導権を握っているものの、能力はほぼ互角。
 技の撃ち合いでどちらも徐々に体力を削られていった。

「レイン!『10万ボルト』!!」
「ヤドラン、『なまける』」

 後一発のところをヒロトは狙って、攻撃を繰り出すが、回避されてしまい、回復を許す形になる。
 逆にヤドランのサイコキネシスがレインにヒットする。
 レインの体力の方が限界だ。

「終わりです……『アイスブレッド』」

 氷柱のような物質をいくつも繰り出し、念力の力でそれを空中に浮遊させる。
 そして、氷柱たちをレインとヒロトに向かって飛ばしていった。

「レイン!」

 ヒロトは呼びかけるが、攻撃を回避することは出来なかった。

「終わりまし…た?」

 ヤドランをボールに戻そうとしたけど、出来なかった。

「……まだ終わっていない……?」

 アメの中の直感がそう告げる。
 彼女の思ったとおりレインがむくりと起き上がる。

「アレを直撃で耐えたのですか……?」
「『黙想』だ。『瞑想』と効果は似ているが、こっちは体力を回復することも出来る。しかもその間は攻撃をされてもちょっとやそっとでは崩されやしない」

 その証拠に、レインは攻撃を受ける前よりも元気だった。

「そして、次の一回の攻撃だけ、威力をアップさせて攻撃することが出来る。レイン!『アイススプレット』!!」

 真正面に絶対零度の空間を作って、瞬間的にハイドロポンプを連射する。
 威力は先ほどのアメのアイスブレッドと比べると、針と槍ほどの威力の違いがある。

「そんなのよければいいだけの話です」
「出来るか?」
「え!?」

 ふと、空間の歪みが戻り始めた。

「まさか!?『トリックルーム』の効力が切れるのを待っていたのですか……?」

 俊敏にトリックルームの中で攻撃をかわしていたヤドランだったが、効力が切れてしまったヤドランのスピードではこのレインの必殺技をかわすのは不可能だった。
 3つの氷の槍をまともに受けて、ノックアウトした。

「スイクン」

 アメが最後に繰り出したのはジョウトの三守護神と呼ばれる一匹のスイクンだ。
 速攻で繰り出す攻撃は風起こしだ。
 レインの大きい体を吹き飛ばすほどではないが、ヒロトの指令を撹乱させるには十分の強さだ。
 飛ばされまいと、レインのヒレを掴んでいた。

「……最後の最後でまた伝説クラスのポケモンか……。もう一回『黙想』!そして、『10万ボルト』!!」

 電力が増幅された電気技をスイクンに向かって放つ。

「かかりましたね?」

 スイクンの前には壁のようなものが。
 その壁は、増幅されていた10万ボルトをさらに増幅して跳ね返した。

「『ミラーコート』……え!?」

 跳ね返した先にはレインがいなかった。
 それどころか、ヒロトが宙を舞っていた。
 攻撃を放った瞬間に、レインが頭を捻って、空中へ飛ばしてもらい、同時にレインをボールに戻していた。
 そして、空中で大きな花を背負ったポケモンが飛び出した。

「悪いが一撃で決めさせてもらう!『ウイップストーム』!!」

 自らの『つるのムチ』を総動員して攻撃する技だ。
 一見単純に見えるが、一本一本が岩を砕く威力を持っているゆえ、その破壊力は侮れなかった。
 そして、スイクンはあえなく一撃で倒れた。

「ご苦労さん。フシギバナ」

 そうフシギバナに声をかけて、ヒロトはポケモンを戻した。
 ふと、アメとラナを見る。

「また機会が会ったらバトルしようぜ」
「悲しいです……あなたの目的はいったいなんですか?」
「そうです……。一体SGを潰して何の得になるのです?」

 アメとラナはヒロトに質問を投げかけるが、ヒロトは答えず別のフロアへと行ってしまった。



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 進撃のサーティーンカード② ―――水霊シスターズのアメとラナ――― 終わり


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-04-25 (土) 13:54:40
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.