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たった一つの行路 №105

/たった一つの行路 №105

「はぁ、はぁ……ヌオー。『まもる』」

 ドドドドドーンッ!!!!

 ヌオーと3匹のせめぎあいはまだ続いていた。
 ハルキと同じくヌオーは息を切らしていた。
 しかし、ヌオーはまだ一度もまともなダメージを受けてはいない。
 攻撃をあてながらもかわし、時には防御で攻撃を跳ね除けていた。

「はぁ、はぁ…… (あいつの攻撃能力、防御能力はそれほど高くは無い。だが……回復しているわけでもないのに何度攻撃しても起き上がってくる。あいつの売りは並外れた打たれ強さにあるということか……)」
「☆どーやら、息があがってきたようやな!どや、うちのこの打たれ強さ!ストムはんの猛烈なツッコミを受け続けたら、自然と身についたんやで!」
「(ツッコミでどうなるもんじゃないだろ)」
「☆しっかし、あんさんもやりますな!ここまで一撃も攻撃を受けずに、連続で攻撃をうちらに与えるんやから!」

 喋っている隙をハルキは、逃さなかった。
 マジカに悟られず、腰につけていたあるポケモンのモンスターボールを開いていた。

「『濁流』」

 ズバッシャーンッ!

「☆うわっ!ひどっ!服が汚れてしまうやん!」
「攻撃が駄目ならこいつでどうだ!」
「☆どうや!って言われても、このくらいの攻撃では倒れへんで!」
「そろそろ、おしゃべりにつき合わされるのは飽きた。おしゃべりな奴は嫌いなんでな」
「☆そんなら、そろそろウチが勝って終わりにさせてもらうで!フーディン、ノクタス、スピアー!!」

 バキッ!! バキッ!! バチンッ!!

「☆なっ!?」

 ハルキはニヤリと笑った。
 ノクタスがフーディンにニードルアームを。
 フーディンがスピアーにサイコキネシスを。
 スピアーがノクタスにダブルニードルをそれぞれ同士討ちさせたのである。

「☆なんやて!?一体何をしはったんや!?」
「悪いが説明は無しだ。俺は喋るのが嫌いなんでな。ブラッキー。『シャインボール』」

 いつの間にか、ハルキの隣にはブラッキーがいた。
 光り輝く、球体を打ち出し、3匹を外へと吹っ飛ばした。

「(外へ吹き飛ばせば、いくら打たれ強くても関係ないだろう。それにこの攻撃で倒れたと思うしな)」
「☆ブラッキーかぁー。出したのに気付かなかったなぁ~。そうかー同士討ちしたのは、『怪しい光』で混乱したせいやったのかー。でも次はそうはいかへんで?」

 そう言って、今度はデリバードとコロトックを繰り出してきた。

「ブラッキー、『手助け』。エーフィ」

 エーフィを繰り出し、ブラッキーに援護させる。
 そして、強力なサイコキネシスを2匹に叩き込んだ。

「☆やるやないか」

 攻撃は確かに決まった。しかし、ダウンさせるまでに至らない。

「……やっぱりな」

 今度は予想していたようで、あまり驚きは無かった。

「お前のポケモンは、並の攻撃ではびくともしないようだ」
「☆おっと、勘違いしてもらって困るのは、効いてないわけではないんやで?ただ、うちらのポケモンは打たれ強いってことやん!それより、今度はさっきのように混乱なんてせこい真似はさせへんでぇ!」
「…………」
「☆デリバード!コロトック!」

 コロトックが接近し、シザークロスでブラッキーを攻撃、デリバードは冷凍ビームでエーフィを攻撃した。

「ブラッキー」

 ハルキが指示を出すと、ブラッキーはエーフィを庇った。
 エーフィの攻撃を代わりに受けたのである。
 その代わり、エーフィは力を溜めていた。

「☆ははーん。瞑想で力を溜めて、一気にうちへ攻撃しようという魂胆やな?」
「…………」
「☆そんなら、そのエーフィを狙って、壁になっているブラッキーを倒すだけや!」

 デリバードとコロトックはエーフィへの集中攻撃へ切り替えた。
 しかし、ブラッキーは必死になってエーフィを庇う。

「☆なんや~ブラッキーは攻撃せいへんのか?」

 攻撃を受け続けるブラッキー。
 その間にも必死でエーフィは力を溜め続ける。

「(コロトックとデリバード……その二匹の攻撃だけで、俺のブラッキーは倒せない)」

 まもる、影分身、身代わりなど……多彩な技を駆使して、エーフィのことを守るブラッキー。
 一応、『怪しい光』を繰り出したりするのだが、先ほどの攻撃を受けてか警戒されてしまっていた。

「(“彼女”はエーフィのことが好きだから。そう……俺が必死であいつのことを守るのと同じように……。俺とブラッキーは似たもの同士なんだ。だから、エーフィを傷つけさせることなんてブラッキーはしない)」

 しかし、ブラッキーはさすがにふらふらになってきた。

「☆これで終わりや!!」

 コロトックがシザークロス、デリバードが吹雪を繰り出した。
 ブラッキーに向かっていく。

「俺の勝ちだ」

 エーフィがブラッキーの前に立った。
 サイコキネシスを発動する。
 コロトックが打っ飛ぶ。吹雪が吹き飛ぶ。デリバードが自らの吹雪に吹き飛ばされる。
 エーフィは後ろを振り向き、ブラッキーへ駆け寄る。
 ブラッキーは心配するエーフィにそっぽを向いた。
 そんな姿を見て、エーフィはにこりと微笑んでいた。
 その和やかな2匹の様子をハルキは見ておらず、吹っ飛ばしたデリバードたちやマジカを見ていた。

「☆強力やな!」
「当たり前だ。限界まで引き出した攻撃だからな」
「☆これで倒れなかったらショックやろうな~」
「…………」

 マジカはパチンと指を鳴らした。
 それと同時に、コロトックとデリバードは立ち上がる。

「☆残念やったなぁ~。行くんや」

 マジカは攻撃のパターンを変えようとはしない。
 ただ、コロトックはシザークロスを叩き込むために接近し、デリバードは氷系の技を繰り出す。
 だが……

「ブラッキー。エーフィ。『手助け』……『スピードスター』!!」

 マジカのポケモンの攻撃を寄せ付けない。
 スピードスターを繰り出して、2匹を吹っ飛ばす。

「☆まだまだやでー!」
「エーフィ!決めろ」

 ブラッキーの手助けを受けて、最大級のエネルギーを放出する。
 エネルギーの密度は例えるなら、デオキシスのサイコブーストクラス……いや、それ以上はある。

「☆ギャバ~ッ!」

 攻撃はマジカをも巻き込み、壁を突き抜けて、外へと放出した。

「……(やったか……?)」

 外から太陽の光が入る。
 しかし、そのことを気にせず、ハルキは警戒する。

「☆な……なかなか効いたでぇ……」

 マジカが崩れた壁の瓦礫の中から這い出てきた。
 さすがにダメージを負っているようでふらふらとしていた。
 デリバードやコロトックも耐えている。

「☆……やけど、まだ、倒れへんで……!?」

 バタッ バタッ

 だが、倒れた。
 デリバードとコロトックが力尽きた。

「☆な、なんやてぇ?一体……?」
「残り一匹だな」

 そう言って、ダメージを負って戦うのが辛そうなブラッキーを戻した。
 エーフィ1匹で戦うことにしたようだ。

「☆……わからへんけど、どうやら、予想以上にそのエーフィが強かったようやな。せなら、コイツで片ぁ着けさせてもらうで!」
「(あいつ……ブラッキーの『どくどく』を受けたのに気付かなかったようだな)エーフィ……後は任せた。『サイコキネシス』!!」

 先ほどと同じ……いや、ブラッキーの支援がない分威力が低いが……強力なサイコキネシスを打ち出した。
 だが、最後の1匹はその攻撃を弾いた。

「……!!」

 鋼鉄のそのボディはとてつもない高度をほこる。

「……レジスチル……伝説のポケモンか……」

 マジカの最後のポケモンは、純粋な鋼タイプのレジスチルだった。



「ジュゴン!パルシェン!」
「リングマ!『ギガインパクト・バースト』じゃ!!」

 ズドドドドドーンッ!! ズドゴォーーーンッ!!

 パルシェンとジュゴンの合成技、『氷のミサイル針』とリングマのギガインパクトを一転集中して打ち出す最強の技が炸裂した。
 カンナもテツマもその最後のレジアイスとレジロックに何匹かやられてしまったが、最終的には2匹とも倒すことができた。

「負けちゃいまちた……」
「ミーたちは戦えませーん!リタンさん!後はお願いしまーす!!」

 2人は回収して逃げようとするところ、テツマが二人の服の襟首を掴んで捕らえた。

「待つんじゃ。何故お前達は、レジアイスとレジロックを持っているんじゃ!?」
「それは、ゲットしたからデース」
「そうでちゅ」
「貴様ら、今、伝説のポケモンをゲットすることを禁止されていることを知らんのか!?いや、知っているはずじゃ!『希少ポケモン保護法』といい、伝説または幻と謂れのあるポケモンは捕獲してはならぬことをポケモン協会が取り決めたんじゃからな!!」
「どちらにしてもあなた達をこのまま逃がすわけにはいかないわ。そして、そこのあなたもかかってきなさい!」

 カンナが本を読んでいるリタンに向かって、バトルするように言った。
 彼女はパタンと本を閉じると、おもむろにボールを取って言った。

「全知全能なる神は言った……。『どーんと来い』」

 一体どんな神が言ったか想像できるだろうか?
 一方のテツマは、2人を捕まえておこうと考えていた。

「テツマの旦那。朝っぱなからずいぶん賑やかだな!」
「……おおっ!シラフか!」

 ここでTCのメンバーの一員であるシラフが到着した。

「だいぶ、疲れているみたいだけど大丈夫か?歳なんじゃねぇ?」
「バカなことを言う出ない!我輩はまだまだ現役じゃ!!」
「そうかい。そうかい」

 メキッ!!

「がっ……」

 シラフの問いに答えたところだった。
 腹にオニドリルのくちばしがめり込む。
 その鋭利さに貫通しそうなほどの痛みが走った。
 その痛さにうずくまり、膝をつく。
 一体、何が起こったのか、彼には理解が出来ない。

「やっぱ年なんだよ。テツマの旦那はもうお払い箱なんだよ!!」
「な……シラフ……まさか……お前……」
「敵と味方の区別も出来ないお前はもうおしまいだ。そして、この組織、TCは崩壊するんだよ!」

 シラフはオニドリルを戻した。

「まさか……すべて……お前が……」
「ああ、そうさ!すべて俺の仕業だ!SGに反対する組織を見せしめに、そして、一網打尽にするために俺が一躍買ったんだよ!」

 せせら笑うシラフ。

「テツマさん!」

 その様子を見たカンナは、テツマに近づこうとする。
 が……

「余所見……禁物。『唸れ。殲熱の虎』」
「!!」

 業火の虎が現れ、パルシェンを炎上させた。
 炎に焼かれ、パルシェンは火傷と深手を負った。

「ぐっ……よくも我輩たちを騙したな……」
「気づかない方が悪いんだよ!まぁ、気付かないようにしていたんだから当たり前だしな!」

 テツマがハッサムを繰り出すのを見て、シラフもボールを構える。

「やろうっていうのか?」
「シラフ……お前、我輩がTCの中で最強ということを忘れたのか?そして、お前は我輩に一度も勝ったことがない。無駄な抵抗はやめるんじゃ!」

 ハッサムのハサミがシラフの体を捕らえようとした。

「TC最強がオッサンだって?バカじゃないのか?」

 ズドンッ!!

「!!」

 ハッサムが火傷を負い、テツマの方に吹っ飛ばされて戻ってきた。

「俺は力を隠していたんだよ。つまり、TCで一番強いのはカンナでも、ましてや、隠居のお前でもない。この俺だ!!」

 拳に炎を纏ったワカシャモが気合十分にシャドーボクシングをしていた。

「まぁ俺はTCではないから、お前がナンバー1だろうけどなッ!!だが、お前じゃ俺には勝てないッ!!もし、そんなケガをしていなかったとしてもなッ!!」



「…………」
「☆どや?諦めたか?」

 ハルキ対マジカ。
 ハルキがエーフィ。マジカがレジスチル。
 限界まで高めたサイコキネシスをレジスチルに叩き込むが、マジカのポケモンたちはどういうわけか、異常に打たれ強い。
 それはレジスチルも例外ではないようで、攻撃をずっと耐えていた。
 しかし、今までと違うことは、最初に戦ったスピアーとかコロトックとかと比べると攻撃力がまったく違う。
 さらに中でも、防御能力は月とすっぽんの違いである。

「諦めはしない。エーフィ。『バトンタッチ』」

 散々攻撃して、エーフィとヌオーを交換した。

「特別に教えてやる。今の今までエーフィで戦っていたのは、最初に粘っていたヌオーの気力と体力を回復させるための時間稼ぎだ」
「☆ヘェーつまり、これからが本番ということでっか?」
「…………」

 水鉄砲がレジスチルに命中する。
 ただの水鉄砲ではない。
 エーフィが限界まで溜めた精神力を受け継いだ水鉄砲である。
 これでダメージを受けないはずがない。

「☆やるやないか!『ばかぢから』や!!」

 だけど、攻撃を受けてもすぐ反撃が来る。

「『まもる』!!」

 ズドンッ!!

 強力な反撃もなんのそのヌオーは受け止める。

「『泥爆弾』。『マッドショット』」

 地面タイプの応酬でレジスチルにダメージを与え続ける。
 さすがのヌオーの攻撃に、レジスチルもダメージを受けていた。
 しかし、やはりまだまだ倒れる気配はない。

「(……ちっ。あのトレーナーのように人をおちょくったポケモンだ……)」

 これをゴキブリ並の生命力というのだろう。

「『地震』」

 間髪を入れず、連続攻撃を叩き込んだのだった。



 ハルキは全くテツマとカンナたちの状況に気付いていなかった。
 そして、カンナはマヌを倒したのはいいが、連戦でリタンとバトルをして劣勢状態。
 リーダーのテツマはケガをして、さらにシラフの裏切りまで発覚。
 状況は最悪だった。
 その一方で、TC内に残っているはずのハナはどうしていたかというと……。

「誰かたすけてください(ズズッ)」

 お茶を飲みながら、SGの雑魚7人に追われていた。
 お茶飲んでいるために余裕あるのかないのか、いまいちわからない。
 そうしているうちに、ハナは出入り口まで来てしまった。

「来たね」
「来ましたね」

 出入り口に待ち構えていた2人の男。
 その二人がハナを捕まえようと飛び掛った。
 が……

「やめてください」

 バッ! バシャーッ……

「「へ?」」
「あ……やってしましました」
「ヌワッ!!」
「アッチィッ!!」

 ハナが湯飲みを放してしまい、湯飲みとお茶がそれぞれ男に命中したのである。
 それに怯んだ隙に、二人を抜き去り、ハナは無事に、TCのアジトの外に抜け出したのである。

「何とか外まで出られました……」

 とか、何とかハナがのんびりしていられるのも今のうちだった。
 7人の雑魚が追いついてきたのである。

“追い詰めたわよ!”
“しっかし、この子可愛いなー”
“ああ、ちっこくて、大人しそうで、汚れを知らない無垢な女の子って感じだな!”
“こんな女の子をもてあそび―――”
“何へんな妄想してんのよ!今は、TCのメンバーを全員捕らえるんでしょ!”
“そうだ。あの、テツマというリーダーと元四天王のカンナはリタンさんやマジカさんに任せるとして、俺たちはそのほかの雑魚を捕らえるんだ”
“ふわぁ……早く帰って寝たい”

 ……てな感じでそんな7人の雑魚が話していた。

「オイ、お前ら……」
「ここはおいら達に任せな!」
“イセンさん!ユグノさん!”

 イセンとユグノ。
 この二人は一応、リタンのチームのメンバーである。
 一応、そこにいる7人の雑魚よりは強い。

「私……戦いたくないです」

 戦わなければならない状況で、ハナはそういう。
 しかし、避けては通れない。
 それでも、彼女の願いは叶うことになる。

 ズドドドドンッ!!!!

「ぐわっ!!」
「のわっ!!」
“どわわわわっ!!!!”

 ハナ以外の全員に凄まじい怒涛の攻撃が命中した。
 その凄まじい攻撃は空からだった。
 彼女が上を見上げると、3匹のドラゴンポケモンを見ることが出来た。
 カイリュー、リザードン、フライゴン。
 その3匹は、ゆっくりとハナの近くで降り立った。

「ハナ。大丈夫?」

 チェックのシャツにタイトスカートの女の子がハナを心配して駆け寄る。

「一網打尽アルね」

 倒れた数人の雑魚を見て鉢巻をした少女がつぶやく。

「弱い」

 ドラゴンの刺青の男がキッパリという。

「…………(気絶中)」
「オイ……大丈夫か?着いたぞ……」

 緑髪の少年が黒髪のツンツンの男を揺する。

「アクアさん、リュウヤさん、ヒロトさん。おかえりなさい。ところで、そちらの2人は誰ですか?」
「エアーとラグナ……。こっちの気絶している男が心強い味方よ」

 アクアが説明した。
 ところで今の状況は?とアクアが聞き、ハナが簡単に状況を説明した。

「それなら、中に入らないと!!ハナ。みんな!行きましょう!」
「ちょっと待って下さい。(ズズッ)」

 さっき投げ捨てたのとは別の湯飲みのお茶を飲んでいるハナ。

「私にいい考えがあります」

 相変わらずの笑顔のハナはにっこりとそう微笑んだのだった。



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 襲撃のスカイガーディアン② ―――裏切りのシラフ――― 終わり


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Last-modified: 2015-04-22 (水) 22:14:51
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