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たった一つの行路 №104

/たった一つの行路 №104

 いよいよ準備はできた……
 これで終わる……いや、これから始まる……
 私達の始まりはこれから……
 フンフフフ……
 誰が何をしようとこれを止められるものはもういない……
 私達が全てを支配する!!
 フンフフフ……



 たった一つの行路 №104



 18

「…………」

 あれから、どれだけ経っただろうか……?
 そう彼は思いながら、持っているP☆DAを見て日にちを確認した。

「…………」

 ここへ来てから、5週目……35日。この世界に来てから37日目。
 彼は心の中で思っただけで口には出さない。
 独り言は好きじゃない上、他人とコミュニケーションを取るのも好きはなかった。
 だから、今まで、誰とも話しかけることなく単独行動を取っていた。
 今朝も彼はそうだった。
 朝起きると、TCで買い置きしてある食品を勝手に持ち出して勝手に食っていた。
 食品の買出しは大体当番制で代わりばんこで買いに行くことになっている。
 ちなみに、前回の買出しはハナだった。
 彼女はどうやら、朝飯は米派らしく、おにぎりを買いだめして食料保存庫(冷蔵庫)に入れていた。

「(おにぎりか……。パンの方が好きなんだが)」

 彼はオーレ地方出身だ。
 周りは砂漠で、米を食べたいとなると、他の地方から輸入するということになる。
 となると、必然として、簡単で手ごろに食べられるパンを口にすることになるらしい。

「(ハナの奴……パン派がいるってことを忘れて困る……)」

 心の中で文句は言いつつも、主食はこれしかないので、おにぎりを頬張る。
 そして、ジョウトのモーモー牧場から取り寄せた、モーモーミルクを飲んだ。
 食べ終わると、先ほどまで心の中で文句を言っていた相手が現れた。

「ハルキさん。おはようございます」

 ハナはいつもの笑顔でお辞儀をした。
 ハルキはそれにいつも「ああ」と返すだけだ。
 それでいつも彼女は部屋を後にするのだが、この日は違っていた。
 ハルキの隣に正座をした。
 ちょっと、不機嫌な顔を取りつつ、彼女を見る。

「どう思います?」
「……?」
「おとといのSGの手紙です」

 おととい、“あなた達の基地の場所は調べさせてもらいました。数日後にあなた達を逮捕します。覚悟しなさい。by:SG”という手紙がTCの近くに置かれていたのをシラフが発見していた。
 つまり、TCの本部がSGにばれてしまった。
 しかも、仲間の中に裏切り者がいるのではないかと思われ、TC内の雰囲気が悪かった。

「本当に裏切り者はいるのでしょうか?」

 そんな、深刻な話題にもかかわらず、彼女は笑顔を崩してはいなかった。
 まるで、いつ時でも太陽の日を浴びている向日葵だ。

「…………」

 どう考えても彼女が一番怪しいと考えていた。
 笑顔の裏で何を考えているか……一番読めないのは彼女だとハルキは思っていた。

「(だが……そうだと、おかしい)」

 もし、ハナが裏切り者だというのなら、モトキも裏切り者だとして間違いはない。
 兄妹が敵味方に分かれることなんて、よほどのことがない限りはない。
 さらに、もし2人とも敵だったとするなら、わざわざ自分達をTCに招き入れたい真意が掴めない。
 それに兄に限っては、ライトたちの修行に付き合わされている。
 万が一、ハナとモトキが敵同士だったとしたら、ハナがモトキに修行をつけさせることも、ましてや自分達をTCに入れさせることも止めるだろう。
 ハルキは一通り考えるとため息をついた。

「どうしました?(ズズッ)」

 彼女の手にはいつの間にか湯飲みが握られていた。
 毎度のことながら、一体いつの間に淹れているのだろうか?

「……何でもない」
「気になります」
「気にするな」

 そういってハルキが立ち上がったそのときだった。

 ボガーンッ!!

「!?」

 大きな爆発が起こった。

「どうしたのでしょう?花火でも打ち上げているのでしょうか?」
「…………」

 ハルキはのんきなハナを置いて急いで爆発のあった場所へと急行した。



「ハルキ!よく来た!」
「この連中はSGよ!やっぱり攻めてきたのよ!」

 ハルキがその場所に行くと、すでにテツマとカンナが侵入者と戦いを始めていた。

「ジュゴン!『吹雪』!!」
「カイリキー!『地割れ』じゃッ!!」

 強力な二人の攻撃に7人とポケモンたちはあっという間に吹っ飛ばされた。

「……俺が来なくても平気か」

 ガツンッ!

「っ!!」

 軽口を叩いていたら、テツマに頭を一発殴られた。
 頭を抑えるハルキにテツマは言った。

「あの七人は下っ端じゃ。何人来ようが我輩たちの敵ではない。しかし、後ろにいるあいつらは違う」

 テツマの言うあいつらを見た。
 どうやら4人いるようだ。

「全知全能なる神は言った……。“Boys be justice!”」

 読んでいた本を閉じて、彼女はそう言った。

「それ違うやんっ!」

 バチンッ!

 ハリセンを持ったピンク髪の太り気味の男が、本を持っているおとなしい女性にツッコミを入れた。

「リタンさん。それを言うなら、“Boys be ambitious!”でしょう!?」

 と、リタンという女性にツッコミを入れた男の名前はアボウと言った。

「でぇ、どうしますぅ?誰から、あの三人を倒しますぅ?アタチが行ってもいいですかぁ?」

 爪を噛みながら、甘えた口調で話す彼女はマヌと言った。

「☆ま~。ぼちぼち行きまひょか。とりあえず、リタンはんは本を読んでてくれな」
「そう……。マジカ。お願いします」

 笑顔に星型のサングラスをかけた男、マジカに言われると、リタンは本を開いてまた続きを読み始めた。

「☆そんな訳で、“レフトウィング”、行きまっせ~!」
「わかりまちた!」
「OKさ!」

 すると、マジカ、マヌ、アボウの3人がポケモンを出して襲い掛かってきた。

「(1対1で戦うのか)」
「ハルキ。無理はするでないぞ」
「…………」
「……行くぞ!」

 すると、テツマ、カンナ、ハルキの3人はこの広い場所でそれぞれ別れて戦うことになった。



 バチバチッ!!

 ミサイル針の攻撃を電圧で跳ね除ける。
 すぐに攻撃の主の背後に回りこみ体当たりをし、打っ飛ばした。

「…………」
「☆な~かな~かやるやないか~」

 自分のポケモンが押されているというのにもかかわらず、ハルキの目の前に現れた星型サングラスの男のマジカは余裕の表情だった。
 余裕とも見れるが、笑顔とも取れる。
 その表情は、ハナに近いものがある。

「☆ぼちぼち行くでー!!」

 体当たりを受けて、気絶したと思われたマジカの最初のポケモン、スピアーは倒れたように転がっていたが、一転してハルキに向かって針を向けて突撃してきた。

「…………」

 しかし、ハルキが手で指示を出すと、スピアーと対峙していたハルキのマイナンが2つのランスを尻尾で払った。

「『10万ボルト』」

 針が跳ね除けられて、ガラ空きになった腹部に電撃を叩き込み、吹っ飛ばした。
 スピアーは地面に叩きつけるように倒れた。

「☆へぇーやるやないの!」

 次にマジカが繰り出したのはフーディン。
 サイケ光線をやはりハルキに向かって撃つ。
 それに対し、再び10万ボルトをマイナンは繰り出して相殺した。

「☆『サイコカッター』や!!」

 超能力のカッターが連射して襲い掛かってきた。
 射程距離から逃げ出すことは不可能なほどの広範囲の攻撃だ。

「『高速スピン』」

 ハルキは逃げずに、カポエラーを繰り出し、エスパー状のカッターを打ち落とした。
 その隙に、マイナンが横から、電光石火でフーディンを打っ飛ばした。
 基本的にマイナンが4.2キログラム。フーディンが48キログラムとされているが、そんな体重差をも感じさせないほどフーディンが吹っ飛んだのである。
 そして、フーディンは壁に撃ちつけてそのままもたれるように、地面に伏した。

「☆なら、ノクタスやー!『ニードルアーム』!!」

 3匹目のノクタスが飛び上がり、両手を振り下ろす。
 攻撃を受けてはまずいと判断して、ハルキたちはその場から急いで離れた。

 ズガーンッ!!

 コンクリートの地面が砕けて、コンクリートが弾け跳ぶ。
 小さな礫ばかりだが、それのせいでハルキとポケモンたちは怯んでしまった。

「☆『トルネイドキック』や!」

 再び、跳び上がり、体を回転してキックを繰り出してくる。
 まるでカービィーのコピー能力『トルネイド』のように回転し、右足でキックする技である。
 コンクリートの礫に気をとられていたハルキはこの攻撃の対応に遅れ、回避するのはすでに不可能だった。

「カポエラー、マイナン」

 カポエラーの回し蹴りで弾き返そうとするが、カポエラーは弾き飛ばされてしまった。
 それでも、攻撃の方向を変えることには成功し、攻撃の隙を狙ったマイナンが、捨て身の体当たりで、打っ飛ばした。
 フーディン同様に壁へ打ち付けた。
 そして、ハルキはダメージを負ったカポエラーを戻し、敵のマジカを見た。

「(おかしい……)」

 しかし、ハルキは違和感を感じていた。

「(以前エレキと襲った奴と比べると断然弱い……。これが奴の実力なのか?)」

 ティブスに不時着した時に戦った、2人組みとハルキは比べていた。
 しかし、攻撃能力にしても、防御能力にしてもハルキのポケモンの方が上回っていることは、ここまで戦ってみて明らかだった。
 今、ハルキと同じフロアかつ離れた場所で戦っているカンナとテツマはマヌとアボウを圧倒していた。

「どういうことだ?お前……手加減でもしているのか?」
「☆手加減なんかしてませんで?」
「とぼけるな」

 マイナンの10万ボルトがマジカに命中する。
 ギャッー!!っと声を上げるマジカ。

「☆痛いなぁ~。トレーナーを攻撃してはいけないんやでー!」

 痛いとかいいながら、マジカはあっさり立ち上がる。

「☆ウチは、いつでも本気やで!」

 パチンッ

 マジカは指を鳴らした。

「……?『10万ボルト』」

 何をするか意図が読めないため、先手必勝といわんばかりに、マイナンの10万ボルトをマジカに向けて放つ。
 しかし、次の瞬間、攻撃は別のポケモンが受け止めた。

「!? (ノクタス!?倒れたんじゃないのか?)」
「☆どんどん行きまっせ~」
「(何!?)」

 サイコカッター、ミサイル針が跳んできた。
 マイナンが身代わりを使い、攻撃を受け止めるが、すぐにスピアーがダブルニードルで接近し、マイナンを突き飛ばし、ダウンさせた。

「……ダウンしたんじゃなかったのか?」
「☆ダウンなんかしていませんで。倒れたフリをしてたんやで!」

 倒れたと思っていたスピアー、フーディン、ノクタスはまだバトル可能だったのである。
 マイナンをボールに戻す最中、スピアーとノクタスが襲い掛かる。
 ノクタスの強力なニードルアームを飛び退いて、スピアーの針を紙一重で交わすと、サイケ光線が飛んできた。
 当たるギリギリのところで、ヌオーを繰り出し、『まもる』で攻撃を防いだ。

「☆なかなかやるやん!」
「……『高速スピン』&『トリプルキック』!!」

 普段は頭のとんがりを中心にしてカポエラーは回転するのだが、途中、横に倒れることにより、突撃して行く『転がる』攻撃の如く、マジカのポケモンたちに攻撃を加えていった。
 ノクタスもフーディンも、跳んでいるスピアーでさえ、この攻撃のスピードはかわすことができず、直撃した。

「(どうだ……?)」

 完全に攻撃が決まり、ダウンさせる自信がある攻撃だった。
 だが……

「☆このくらいでは、倒したことにはならへんで?」
「!!」

 フーディンがすぐに起き上がり、カポエラーにサイコキネシスを叩き込んだ。

「くっ!」
「『ニードルアーム』や!!」
「ヌオー」

 ハルキが拳をギュッと握ったのを見て、ヌオーは防御の態勢に入った。『まもる』である。
 こんな接戦の場合、口では指示が遅れる場合がある。
 そのときのためにハルキはあらかじめジェスチャーでの指示を作っておいたのだった。
 強力なニードルアームを弾き飛ばし、フーディンを巻き込んだ。

「☆『ミサイル針』や!!」
「『マッドショット』」

 一発のマッドショットがミサイル針を圧倒し、スピアーにダメージを叩き込む。
 ダメージを受けたスピアーはボーリングの玉のように起き上がろうとしていたフーディンとノクタスにハードヒットした。

「『地震』」

 フロアー全体を揺るがす地震でフーディンたちにダメージを。
 そして、さらにヌオーは飛び上がった。

「『たたきつける』!!」

 ノクタスを中心に地面へ叩きつけて、さらに地面が砕けた。
 周りで倒れていたスピアーとフーディンにもダメージを与えて、ハルキとヌオーは一息ついた。

「…………。(倒したか……?)」

 さすがのラッシュで少し息を切らすヌオー。
 しかし、ぼやぼやしている暇はなかった。
 スピアーが、ノクタスが、そして、フーディンまでもが立ち上がったのである。

「っ……」
「☆どや?ウチらの生命力は。攻撃力や防御力が高い奴が勝つんやない。最後まで生き残っていた奴が勝つんや!すなわち、倒れなければ負けることはないんやで?」
「……それなら、倒れるまで叩くだけだ。ヌオー」

 全く倒れる気配のない3匹に、ハルキはヌオー一匹で挑んで行く。



 一方のカンナとテツマの方はどちらも後1匹に追い詰めていた。

「あらーマズイでちゅ。アタチ後一匹でちゅ……」
「ミーも後一匹。これは、ピンチでーす」

 背中合わせにマヌとアボウはカンナとテツマに対峙していた。

「あまり強くないわね。あなた達、自分たち3人のことを“レフトウィング”って呼んでいたけど、一体なんなのかしら?」
「おちえてほちいでちゅか?」
「教えなくても、無理矢理にでも聞きだすわよ」

 カンナはパートナーであるパルシェンを繰り出した。

「そういうことじゃ。SGが不穏な動きをしていることは知っているんじゃからな!」

 テツマも自分のパートナーであるリングマを繰り出した。

「いいでしょう。2つほど教えてあげましょう。まず、1つ。“レフトウィング”とは、チーム名のこと。ミーたちはマジカをリーダーとして3人で一チームとして活動しているのでーす」
「なるほど……“レフトウィング”……つまり、“左翼”というわけね」
「そのとーりです。そして、もう一つは、そのチームが7つ存在し、ある法則にしたがって強さが増していくということでーす」
「ある法則……?」
「その法則については教えられませんが、ミーたちの強さは、チームの中から5番目でーす」
「5番目……それならたいしたことは……」
「本当にそう思いますかー?」
「え?」
「まー、ここまでミーたちがやられているのだから弱いと思われるのは当たり前ですが、それぞれのチームのリーダーは桁違いの強さでーす。例えばマジカ、そして、そこにいるリタンさんとでは、全く次元が違いまーす」
「つまり、そこにいるおなごもチームのリーダーというわけじゃな?」

 テツマが本を読んでいる女性、リタンを見ていった。

「(つまり……我輩たちの中で一番強い奴らと戦っておるのはハルキか!?)」

 テツマはハルキのほうを見た。
 ハルキがヌオーを繰り出して、攻撃を繰り出しているが、相手は攻撃を受けているのにもかかわらず、倒れようとはしなかった。

「そういうことになりまーす。それでは、おしゃべりはこれまでにして、そろそろ切り札を出させてもらいまーす」
「「!?」」

 アボウとマヌはそれぞれ、最後のモンスターボールを繰り出した。
 テツマとカンナは出てきたポケモンの名前を呼んだ。

「レジアイスじゃと!?」
「レジロック!?」
「さぁー行きなさい!」 「行くのでちゅ!!」



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 襲撃のスカイガーディアン① ―――生命力のマジカ――― 終わり


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Last-modified: 2015-04-22 (水) 22:14:38
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