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たった一つの行路 №096

/たった一つの行路 №096

 人の出会いは一期一会と人は言う。
 出会い、別れを繰り返して日々を過ごしていく。
 あいつとの出会いもそうだったのかもしれない。
 一緒に過ごした5年間もただ、別れるためにあったのかもしれない。
 別れなくなんてなかった。
 だが、奴の言葉は俺を不安を煽っていた。

 『過酷な試練が待ち受ける。乗り越える勇気があるか?』と……。

 それがどんな意味を持つか、俺にはわからなかった。
 ただ、俺の成すべきことのために彼女を巻き込みたくなかった。
 それと同時に、違う世界の者が結ばれてはいけないということも感じ取っていた。
 奴の言葉を無視すればいいと思ったのだが、奴の言葉はどうしても俺の頭から離れてはくれなかった……

 そして、俺は……一体どうなったんだ?
 小屋で休んでいるところを襲われて……
 ……今……俺は…………?



 たった一つの行路 №096



「いよいよ次が最後の四天王だな!どんな奴か楽しみだぜ!」
「サトシ……君はもしかして戦う気なの?」
「無理なのは分かってるさ。ピカチュウや他のポケモンたちはみんな体力が尽きているからな」

 先ほどからまったく存在感がないピカチュウはサトシの腕の中でゆっくりと休んでいた。

「わかっているならいいさ」
「だけど、そうなると、後四天王と戦えるのってオトハさんだけじゃないですか?」
「あら?そうでした?」
「そこでなんでとぼけるの?」

 相変わらず、のんびりとした口調のオトハに突っ込むカレン。

「つまり、最後の戦いはオトハさんに委ねられましたね」
「お願いしますよ!オトハさん!!」

 アースとサトシもオトハに期待をかける。

「そんなぁ……私にそんなに期待されても困ります……。でも、がんばります」

 照れているというか、なんと言うかいつもの笑顔でみんなに言うオトハ。
 そして、いよいよ最後のバトルフィールドに足を踏み入れた……
 だが、そこには驚くべき光景があった。

「なっ!!」
「なんなのこれ!?」
「寒ッ!!」

 フィールドが全て氷漬けにされていたのだ。

「一体何が!?」
「あそこに誰かいる!!」

 カレンが指を射す方を他の3人が見る。
 そこにいたのは2人の男。
 一人は黒いスーツを着た少し老けた男で、もう一人はステッキを持ち、右目に片メガネをかけ、髪は73分けっぽい紳士風の男だ。
 そして、次の瞬間、凄まじい吹雪がフィールドを覆いつくした。

「っ!!危ない!!ミュウ!『光の壁』ッ!!」

 サトシが機転を利かせて壁を張った。

「ミュウ!?」

 そして、吹雪が止んだとき、ミュウは力尽きて倒れてしまった。
 その一方でスーツの男のニドキングが氷漬けになって、トレーナーも力尽きて倒れてしまった。

「あの紳士の男……何者なんだ!?」
「あの紳士の人が四天王じゃないんですか?」
「いや……違う……」

 オトハのおっとりとした答えをアースは否定する。

「現在のカントー四天王は、『超電脳テレナ』『武道の達人シバ』『ビューティーアーティストアダン』そして『首領サカキ』の4人なんですよ。そして、今倒れたスーツの男が四天王の一人なんです」
「サカキだって!?」
「もしかして……ロケット団の首領!?」
「昔の話ですけど……」

 サトシとカレンは顔を見合わせる。
 やはり、こちらの世界でもロケット団という組織は存在していたんだなと2人は確認した。
 やがて、その紳士の男はサカキに近づいて何かを確認し始めた。
 男はため息をついて、やっとサトシたちがいたことを認識した。

「何だね君たちは?」
「ええと、僕たちは」
「四天王に挑戦しに来ました」

 アースの言葉を遮ってオトハが答えた。

「そうか……それならいい。君たちには関係のないことだ。この男も違ったみたいだし」
「違った?何がですか……?」
「君たちには関係のないことだよ」
「関係のないことなら仕方がありませんね」

 話したくないならいいや、というノリでオトハは言った。
 だが、話はこれで丸く収まらなかった。
 後から出てきた一人の少女の存在によって。

「あっ!!あんた一体何なのよ!!どこから侵入してきたの?凡人が不法侵入なんてしてはいけなくってよ?」

 テレナが出て来たのだ。

「サカキ様に会うときは、まずこの天才美少女のテレナを倒してからじゃないとダメなのよ!あんた……許せないってよ!!」

 いつの間にか回復させたか、テレナがルカリオを繰り出して波動弾を放った。

「そんなルール……私は知らないな」

 懐から男は何かを取り出すと、波動弾は消え去り、しかもルカリオが凍り付いてしまった。

「っ!!凡人の癖に!!ジバコイル!!『ミラーショット×3』!!」
「無駄ですよ」

 ピキ―――ン!!

 男の言うとおり無駄な攻撃に終わってしまった。
 ミラーショットが全て凍りついてしまったのである。
 さらに、攻撃はテレナとジバコイルまで及んで吹っ飛ばしてしまった。

「うっ!!そんな……」
「邪魔をしないでくれたまえ。だが、もし君が邪魔をするというのなら、君を消さなければならない……」

 氷のつぶてを受けてうずくまるテレナ。
 そのテレナに近づく紳士だったが……

 スッ

 男とテレナの前に人が一人入り込んだ。
 オトハだ。

「君は……何の真似だね?」
「おじさま……少しやりすぎではないですか?」
「そうか……君も邪魔するのか……それならいいだろう。氷漬けにしてしんぜよう」
「(アレは?)」

 オトハはその男の行動を見逃さなかった。
 懐から取り出したカードみたいなものをかざすと、突然ポケモンが出現をしていた。
 そのポケモンが吹雪を繰り出していた。

「「「オトハさん!!」」」

 オトハがテレナ共々吹雪に巻き込まれてしまった。

「あれは……フリーザー!?」
「何で伝説のポケモンが……!?」
「そんなことより……オトハさんとテレナが!!」

 立ち込める冷気に3人はオトハとテレナの姿を確認できなかった。

「これで終焉だ。まったく、収穫はゼロか。骨折り損だった。帰ることにしよう」

 バシッ!!

 男が後ろを振り向いた瞬間、フリーザーに攻撃がヒットした。

「何!?」

 男は振り向いて驚いた。
 そこには平然としたオトハの姿があったのだ。
 周りは氷漬けになっているが、オトハのポケモンとその後ろ周辺だけはまったく氷漬けになっていなかった。

「そのチャーレムの仕業か……一体何をしおった?」
「月舞踊……『無姫<なきひめ>』です。張巡らせたオーラで相手の攻撃を打ち消します。打撃攻撃は無理ですけどね」
「あの技は……」

 アースとサトシは頷いた。
 この技でテレナのルカリオの波動弾を防いだのだと悟った。

「私と戦おうというのか?」
「望むのなら受けて立ちますよ?」

 オトハと男は構える。
 しかし……

 ピリリリリ……

 電子音が鳴ったと思うと男は懐からトランシーバーみたいな機械を取り出して交信した。

「こちらカネコウジじゃ……」

 男の名前がカネコウジというらしい。
 しばらくオトハたちは様子を見ていた。
 やがて、2、3言葉を交わすと機械をしまった。

「……面白いところだったが。……私の任務はここまでだ。縁があったらまた会おう。月舞踊のオトハよ」
「…………」
「くっ……待ちなさい!!」

 テレナが追いかけるがカネコウジは姿を消してしまった。



「まさか、あのような侵入者がポケモンリーグに現れるとは思いませんでしたね」
「しかも、サカキをこんな目に合わせるほどの実力者とは……」

 アダンとシバがそれぞれいう。
 それとは別の部屋にサトシたちはいた。

「オトハさんたちはこれからどうするんですか?」

 アースが尋ねる。

「俺たちは仲間を探さないといけないんだ。さらに探している人もいるんだ。エースって言うんだけど」
「エースか……知らないな」
「エース!?」

 すると、反応したのはテレナだった。

「その名前……聞いたことあるわよ。なんか『SG』で最近になってまた捜索しているみたいだから」
「SG?」
「あら、そんなこともカレンは知らないの?だから凡人なのよ」

 カレンが一二を言えばテレナに凡人と言われて、腹を立てるカレン。
 しかし、オトハがカレンをなだめる。

「SGは『スカイガーディアン』の略称よ」

 テレナは一応カレンの反応を見た。
 カレンは首を傾げている。

「どうやら、その顔を見るとスカイガーディアンも知らないようね。いいわ、説明してあげるってよ。スカイガーディアンはポケモンリーグ御用達の機関で様々なことを行っている組織よ」
「ポケモンリーグ御用達……」
「そこでは様々な活動をこなしている人たちがいるの。中には悪いことをしている人もいるって噂だけど、証拠なんてどこにもないわ」
「なるほど……それじゃ、一度そこへ行って見るべきね!テレナ!そこへ案内してくれる?」
「別にかまわなくってよ。サカキ様のことで報告を入れる用事もあるからね」

 そして、彼らの目的はまずSG<スカイガーディアン>に絞られたのだった。



 4

 ここは森の中。
 場所が特定できないほどの森の中。
 そこに木でできた何の特徴もない一つの小屋があった。
 それは森に迷った旅人が一晩明かすためにと立てられたような小屋だった。
 その小屋に近づく人物が1人。
 格好は緑の短パンともハーフィパンツの中間の長さの裾を折り返したズボンに黒の長袖のシャツ、その上にジャケットを羽織っていた。
 髪の色は黄色でショートカットだ。
 そして、その子は両手に食料を抱えていた。
 どうやら、周辺を探してとってきたようである。
 小屋に入って、そこに横たわっている少年を見た。
 グリーンのシャツにベストを着てラフなハーフパンツを穿いていた。
 しかし、少年と言ってもその子から見たら年上の少年だった。

「(……まだ眠っているね)」

 少年の様子を見て安心をしたか、食事の準備を始めた。



「ここは……?」

 ふと彼は目を覚ました。
 目に映るのはまったく見覚えのない部屋の中。
 そして、近くには例の人物がいた。
 彼は……起き上がって腰にあるモンスターボールに手をかけた。

「まだ動いてはダメだよ……。エースさん。寝ていて」
「っ!?(後を見ていないのに何故?)」

 まるで気配で相手を探るかのごとくエースの様子を悟っていた。

「(それに……何でコイツは俺の名前を……?)」
「やっと会えたね。エースさん」
「お前は…………誰だ?」

 過去を遡って思い出そうとする。
 だけど、どんなに必死に思い出そうとも、エースに覚えは無かった。

「エースさんに覚えがないのも当然だよ。ボク達は初めて出会ったのだから……」
「それなら……俺のことを誰からか聞いたのか?」

 すると、その子は首を横に振る。

「(……そんなことより……俺は一体なんでこんなところにいる?確か……小屋で休んでいたところまでは覚えているんだが……!! まさか!?)」

 腰にあるボールを握り締める。

「(襲ってきた奴の仲間か!?)」

 不信感を露に、その子を睨みつけるエース。

「とりあえず、エースさん……落ち着いてください……。そうじゃないと話が出来ません……」
「話?そんなことより、お前が俺を襲った奴の一人なんだろ?」
「……とりあえず、話を聞いてください」
「…………」

 真剣の目をしたその子の見てエースは仕方がなくボールから手を放した。

「自己紹介がまだでしたね。ボクはジョカ。…………ジョカ・デ・トキワグローブ」
「ジョカ・デ・トキワグローブ……!?」

 エースはその名前にピンと来るものがあった。
 そう、あの名前と似ていることを。

「(バブルって奴……俺の本名を“エース・デ・トキワグローブ”って言ったよな……?ま、まさか……!?)」
「あなたはボクの兄なんだよ?」
「!!??」

 突然のジョカの告白にエースは驚く。
 いや、驚くというよりも不信感の方が大きい。
 何せ自分をいきなり兄と呼ぶ者が現れたのだから。

「だけど……いきなり信じてくれる方が無理だよね。でも……もし、よければお兄ちゃんって呼んでいいですか?」

 ほんとに突然だったけど、エースは何故かジョカの言っていることを丸ごと否定できなかった。
 それは、雰囲気というか、表情が、夢に出てきた自分の母親のイエロー・デ・トキワグローブに似ていると感じたためである。
 イエローを一度しか夢で見ていなかったが、それだけで十分だった。

「あ……ああ」

 とりあえず、エースはジョカを信じることにした。
 そうしないと先に進まない気がしたから。

「それじゃあお兄ちゃん。これからやらなくちゃならないことがあるんだよ。これから『トキワの力』を使いこなして欲しいんだよ」
「『トキワの力』?」
「うん……これから、ボクたちは強い奴と戦わないといけなくなるんだよ。だから、お兄ちゃんの力が必要なんだよ」
「強い奴?」
「うん……。今のお兄ちゃんはまったくトキワの力を使いこなしていないんだよ。それを使いこなせれば、ボクよりも数段に強いはずなんだよ!」

 ジョカが力強く話す。
 だけど、エースが考えていたのは別のことだった。

「ジョカ……父さんと母さんは?」
「…………」

 ふと、ジョカは口を噛み締める。

「(聞いてはまずかったか……?)」
「母さんはわからない……」
「え?」
「行方不明なんだ……。ボクが小さい時にいなくなっちゃったんだ……」
「(小さい時に……?)父さんは?」

 エースにそう聞かれて、ジョカは立ち上がった。

「実は……そのために必要なのがこの力なんだよ」
「まさか……」
「うん……その強い奴に操られているんだよ……。父さんは」
「操られている……?」
「そう……。でも父さんには一瞬の間、洗脳が解ける時があるの……」

 それから、ジョカはじっくりとエースに状況を説明した。

「……そうか……わかった」

 すると、エースはゆっくりと立ち上がった。

「ジョカ……。お前の言うとおりにしよう。一緒に父さんを助けだそう」

 ジョカはうれしそうにうんとうなずいた。
 その笑顔は兄に会えてうれしいという気持ちでいっぱいだった。



 5

 お月見山。
 そこは月の石が採掘されることで有名な場所である。
 昔、その場所でロケット団が荒らして、二人の子供が立ち向かった場所でもあった。
 そこから数km離れた場所にSGの本部が存在していた。
 そこで、現在重大な会議が開かれようとしていた。

「…………」

 椅子に座り、黙々と彼女は本を読んでいた。
 何の本か説明するには難しい本である。
 彼女は見た目が大人しく、クラスの中には必ずいそうな休み時間に本を読んでいるタイプの女性だった。

「よー!リタンちゃん!元気にしてたか?今度オレ様とデートしようぜ」
「…………」

 その女性はリタンと言った。
 だが、彼女は名前を呼ばれたのにもかかわらず、その男を無視した。
 男とは、見た目は不良っぽいヤンキーで、クラスの中には必ずいそうな教室でスケボーをして遊び、教師に反感を買っていそうなタイプの男だ。

「なんだよ!つれないな!本ばっか読んでいると、体が鈍っちまうぜ?たまには遊びに……」
「やっ……やめなよ……」
「あんっ?」

 乱暴そうなオレ様気取りの男が彼女をナンパしていると、気弱そうなメガネをかけた青年が恐る恐る男に言った。
 その青年はメガネを掛け、見た目は貧弱で、クラスの中には必ずいそうな不良グループのパシリにされているようなタイプの青年だった。

「何だ?タクス?このストム様に文句があるのか?」
「彼女に……気がないんだから……無理やりさそうのは……」

 少々ストムに怯えながらもタクスは反論する。

「てめぇーに関係ないだろ!!」

 ズシッ!!

「うっ……」

 ストムは思い切ってタクスを殴り飛ばした。
 タクスのメガネは吹っ飛び、彼は頬を押さえていた。

「けっ……カスが。オレ様に楯突くんじゃねえよ」
「…………」

 ストムとタクスがそんな争いをしているのにもかかわらず、リタンは我関せずと本を読み続けている。

「☆まっ!ストムはん。そんな暴力はアカンで~」
「カスは打っ飛んでろ!!」

 新たに来たバカっぽい中年の男が来たがあっけなく蹴り飛ばされる始末。
 だが、まるでダメージはなかったかのように男は立ち上がる。
 その男は見た目は、笑顔を絶やさず、クラスの中には必ずいそうなふざけてクラスの注目をかって人気になるようなタイプの男だった。

「☆まーまー」
「しつけーぞ!!マジカ!!」

 そういって今度は顔を殴りつけようとするが、ガシッとストムの腕は何者かに掴まれた。

「ストム……これ以上暴れるな」
「ちっ…………アルか」

 冷静な二十歳前後の青年……アルがストムの暴走を止めた。
 そのアルという青年の見た目は美少年で、クラスの中には必ずいそうな女の子にキャーキャー言われる様なタイプの少年だった。

「後は『レフトアーム』の彼女が来れば全員集合だな」
「彼女は来ませんよ」

 アルが呟くと、その言葉を受けて拡声器の音が聞こえた。
 一同、その声を聞いて、広い部屋にある大きなヴィジョンに注目した。
 そこにはシーツを被った一人の人物の姿が映し出された。
 また両隣にはそれぞれマフラーを覆い口を隠した男と、仮面を被った赤茶っぽい髪色の男がその場にいた。
 この部屋に集まった5人はヴィジョンの人物を見てボスと呼んだ。

「何故彼女は来ないんです?この会議はそれぞれの班長が必ず出席するものでしょう?」

 美少年のアルが即座に異を唱えた。

「彼女たちは行方不明でしてね……今探しているのですよ」
「☆そういうことなら仕方がありませんな。アルはん~少し落ち着きまひょ」
「……そうだな……」
「とりあえず、皆さんにはやって欲しいことがあります。やって欲しいことはそこにあるメモ書きを見てくれればわかります」

 ボスに促されて、突如現れた紙切れをそれぞれ受け取る。

「…………」
「えぇ!?これは……こんなことって……」
「へぇ~。面白そうじゃねえか」
「☆ついにこれは来る時が来たようですなぁ~」
「“あの組織”を潰す時が来たのか……」

 リタン、タクス、ストム、マジカ、アルがそれぞれの反応を示す。

「それでは任せましたよ。この任務が終わった時……真の平和が訪れるのです」
「☆やったるでー!」
「いっちょ俺様も暴れてきてやるぜ!」

 真っ先にマジカとストムは飛び出していった。
 が……

「てめー!マジカ!俺様が先に行くんだ!!」
「☆ストムはん~競走や~」

 ストムがケンカを吹っかけつつ出て行った。

「いいでしょう。ボスの計画のために全て捕まえてきてあげましょう」
「頼みましたよ。アル……」

 ボスはそう言い残して、ヴィジョンは消えた。

「ねぇ……リタンさん……」
「…………」

 部屋出て歩くのはやや貧弱っぽいタクスと大人しい女性のリタンだった。
 この女性も本読みながら歩いているのである意味凄い。

「どう思う……?この任務…………」
「…………」
「どうも僕にはこの任務が平和に繋がるとは思えないよ……リタンさんはそう思いません?」
「…………(パタ)」

 彼女は本を閉じて立ち止まり、タクスを見た。

「……全知全能なる神は言った……」
「…………??」
「『ベストを尽くせ!』」
「へっ??」

 彼女がそう言うと、再び本を読み始めてそそくさと先に行ってしまった。

「……わからない……リタンさんは本当に何考えているかわからない……」

 タクスは呆然と立ち尽くしたのだった。



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 VS四天王③ ―――動き出す組織――― 終わり


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Last-modified: 2015-04-15 (水) 21:07:16
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