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たった一つの行路 №095

/たった一つの行路 №095

「次は俺が戦うぜ!」
「ピカピッカ!!」

 テレナとのバトルが終わって、4人は次のフィールドに足を踏み入れていた。

「どうやら、岩がたくさんあって戦い辛そうですね。サトシ君、大丈夫ですか?」
「平気平気!」

 そんなこんなで話していると、上半身裸の男が現れた。

「お前たちか。テレナの言っていた俺たちに挑戦して来た者たちというのは」
「あの人は!!…………誰ですか?」

 四天王の一人以外、オトハののんきな言葉にずっこけた。

「あの人はシバさんですよ!!確か格闘タイプ使いの……」

 カレンがこっそりオトハに教えた。

「相手は誰だ?」
「俺が戦う!!行けっ!!ピカチュウ!!」
「ほう……我が、ウルトラパワーを受けてみるがいい!!ウーハッ!!」

 先端にモンスターボールをつけたヌンチャクを振って、その先からポケモンを繰り出した。

「っ!!サワムラーか!?ピカチュウ!『10万ボルト』!!」
「遅い!!」
「何っ!?手が伸びた!?」

 サワムラーは足を伸ばすことが出来るというのは誰もが知っている。
 だけど、手まで伸ばすことが出来るというサワムラーを見るのは誰もが初めてだった。
 その手でハンマーのようにピカチュウを殴りつけた。

「ピカチュウ!?」
「まだまだ!!『回し蹴り』!!」
「ベイリーフ!!『つるの鞭』!!」

 右足で蹴りをしてくるサワムラーに対してサワムラーの左足を巻きつけて転倒させる作戦だが……

「甘い!!両方で回し蹴り!!」

 両方の手を伸ばしてしっかりとした石を掴んでバランスをとり、両足で回し蹴りをしてベイリーフを打っ飛ばした。

「ベイリーフ!!……くっ……なんてバランスとパワーだ……」

 サトシはベイリーフがダウンしたために戻すのと同時に、エイパムを繰り出していた。

「カポエラー!お前も行け!サワムラー!」
「エイパム!『影分身』!!」

 容赦ない攻撃をエイパムはかろうじて回避していく。
 そして、サワムラーを捕捉した。

「そこだ!!『気合パンチ』!!」
「甘い!!」

 カポエラーもエイパムに迫っていた。
 サワムラーをオトリにしてカポエラーがエイパムを討つ作戦のようだ。

「かかったな!!ピカチュウ!!『かみなり』!!」

 ズドーン!!バキーン!!

 最大の一撃がカポエラーに落ちた。
 そして、エイパムの集中力は途切れることがなく、サワムラーに一撃を叩き込んだ。

「どうやら、このバトルはさっきのテレナさんとのバトルとは対照的にパワーを重視したバトルになっているようですね」

 アースの言葉にオトハが頷いた。

「そうですね。テレナちゃんは頭脳的に相手を攻めていたけど、あのシバさんはそれが一切無く、真っ向からサトシ君に向かってきていますね」
「サトシ……意外といいバトルしているじゃない」

 しかし、カレンの言葉にアースは首を振った。

「いや、シバさんの本来の実力はこれからですよ」

 シバはハリテヤマとハガネールを繰り出して来た。
 一方のサトシはエイパムとピカチュウを下げてマグマラシとアリゲイツで対抗していた。

「アリゲイツ!『ハイドロポンプ』!マグマラシ!『火炎放射』!」

 だが、ハガネールの頭に乗ったハリテヤマが一筋縄に行かなかった。
 2匹分の攻撃を受け止めてしまったのである。

「効いてない!?かわせ!!」

 そのままハガネールは頭から突撃した。
 アリゲイツが直撃を食らってダウン。
 ハリテヤマはその勢いを利用してマグマラシに攻撃を仕掛けたが、持ち前の身軽さで攻撃をかわした。
 そこから最大パワーの火炎放射をハガネールに叩き込んだ。
 だが……

「……ゲッ!?効いてない!?効果は抜群のはずなのに!!」
「その程度の炎ではまだまだハガネールを倒すには足りないな。行け!」
「くっ!エイパム!!もう一度行ってくれ!!」

 エイパムはハリテヤマに向かって行った。
 ハリテヤマはシバのカポエラーやサワムラーと比べると反応速度が遅く、エイパムのスピードなら撹乱できると考えていた。
 それは狙い通り的中していた。

「『影分身』から『乱れ引っかき』!!」

 ザシュ!!ザシュ!!ザシュ!!

 攻撃はヒットしていったが、ハリテヤマに本体の尻尾を掴まれてしまった。
 そして、投げつけられてしまった。

「なっ!!エイパム!?」

 ハリテヤマはわざと攻撃を受けてから本体を見極めて一撃で倒せる技を繰り出した。
 そう、『当て身投げ』である。

「だけど……これでどうだ!!」

 マグマラシがハリテヤマの後をとって、炎を纏って打っ飛ばした。
 さすがに最初のマグマラシとアリゲイツの一斉攻撃とエイパムの攻撃が蓄積したようで、この一撃には耐え切れなかった。

「ほう……だが、隙だらけだぞ」
「マグマラシ!!耐えてくれ!!」

 ハガネールの強靭な尻尾から繰り出されるアイアンテールがマグマラシをなぎ払った。
 そして、勢いよく壁に激突していった。
 しかし、傷だらけになりながらも、まだマグマラシは戦えた。

「よし!マグマラシ!!最大パワーで『火炎放射』だ!!」

 背中の炎を爆発させて本来以上の炎を吐き出した。
 それは特性『猛火』からくる力だった。
 ハガネールはかわすことが出来ず、その強力な炎に包まれてダウンした。

「やるな!!だが、次はコイツだ!!」

 ヌンチャク型モンスターボールから繰り出されたのは、エビワラーだ。
 しかも、突然マグマラシの前に出現させたことにより、エビワラーが先制攻撃を繰り出した。

「マグマラシ!!『煙幕』!!」

 メガトンパンチを簡単に決めさせず、マグマラシは一歩後退した。

「『火炎放射』だ!」
「させん!!」

 しかし、煙幕からすぐに飛び出したマグマラシを狙って、マッハパンチがマグマラシにヒットした。
 ダメージが蓄積したマグマラシには耐えられるだけの体力は残っていなかった。

「マグマラシ……ご苦労様。ピカチュウ!後は頼むぜ!!」
「ピッカ!!」

 バトルは熾烈を極めた。
 電光石火とマッハパンチの打ち合いで勝負は五分五分だった。

「ならばこれでどうだ!?」

 マッハパンチと同じモーションで拳を突き出すエビワラー。
 しかし違っていたのは、その拳から衝撃波みたいなものがピカチュウを吹っ飛ばしたのだ。

「ピカチュウ!!!」
「あの技は何!?」

 カレンがアースに問いかける。

「『真空波』ですよ。拳を振るう衝撃で相手にダメージを与える技です。格闘系の中で数少ない遠距離技の一つです。どうやら、あの攻撃をどうにかしない限り、サトシには勝ち目はなさそうですね」
「遠距離系の技ならこっちの方が強いぜ!ピカチュウ!『10万ボルト』!!」

 しかし、その電撃を拳で受け止めるエビワラー。
 両腕が帯電し始めていた。

「受け止めた!?」
「その程度の電撃……我が拳の力を上げるだけだ!!」

 帯電した拳……雷パンチでピカチュウを襲う。

「電撃がダメなら、接近戦だ!!ピカチュウ!!『アイアンテール』!!」

 だが、エビワラーはその拳で尻尾を受け止めて弾き返す。
 真空波で撃墜できなかったのは雷パンチのモーションに入っていたためである。
 そして、ピカチュウが弾き返された先にあったのは突出した岩壁だった。

「もう一度『アイアンテール』!!」

 その岩を蹴りつける様に跳んで、連続でアイアンテールを繰り出し、今度はエビワラーの顔に一発叩き込んだ。

「そこだ!『10万ボルト』!!」
「まだだ!!」

 怯みながらも、電撃を拳で受け止めるエビワラー。

「チャンスを逃すな!!『ボルテッカー』!!」

 ピカチュウ最強の技で突っこんでいく。

「力でねじ伏せろ!『雷パンチ』!!」

 ピカチュウの捨て身の技とエビワラーの拳が交わる。
 ピカチュウは吹っ飛ばされるが、帯電したエビワラーは膝をついて倒れた。

「よくやった!ピカチュウ!」

 ピカチュウはVサインをした。

「フハハハ!やるな!よし、次で最後だ!ウーハッ!!」

 そして、シバの最後のポケモンはカイリキーだ。

「あれが噂のカイリキーですか……」
「噂って何ですか?」

 アースの一言にオトハが問いかけた。

「あのカイリキーは並のカイリキーの力の2倍の力を持つといわれています。カイリキーが進化したてのころ、ゴーリキーのベルトをつけてパワーをセーブしていたと聞きました。恐らく、セーブしたことによってパワーが鍛えられていたのでしょう」
「つまり、力が強いということですね」
「単純な話そういうことになります。ところで、サトシの手持ちには小型のポケモンしかいないみたいだけど、最後の一匹って一体何だい?」
「あれっ?サトシくんの最後のポケモンって何だったかしら……?」
「何で忘れるの!?」

 すかさずツッコミを入れるカレンだった。

「ピカチュウ!『10万ボルト』!!」」

 電撃を飛ばすものの、カイリキーはかわす。

「カイリキー!見せてやれ!お前のウルトラパワーを!!」

 すると、カイリキーは地面に手をかけた。
 なんと、岩の地面にヒビが入り、岩の塊を持ち上げたのである。
 その姿にはピカチュウもサトシも驚いていた。
 もちろん、その岩をサトシとピカチュウめがけて放り投げた。

「くっ!!ピカチュウ!『高速移動』で撹乱しろ!!」

 岩の塊をかわしながら指示を飛ばす。
 ピカチュウはカイリキーの周りを足場が悪いにもかかわらず、素早く動いた。

「フハハハ!力の前ではスピードなど意味がない!」

 カイリキーが地面を殴ると凄まじい揺れが生じた。
 そう、『地震』だ。
 素早く動いていたピカチュウにもその揺れは感じて、バランスを崩してこけてしまった。
 もちろんその隙を逃すはずがない。

「くっ!ピカチュウ!『アイアンテール』!!」

 ダッシュで近づいて、拳が入る瞬間に、尻尾でガードするつもりだった。
 だが、拳はその尻尾ごとピカチュウを打っ飛ばしてしまった。
 そして、岩を突き抜け、そのまま地面に倒れるピカチュウ。

「ピカチュウーーー!!!」

 ピカチュウを抱き上げるサトシだが、すぐそこまでカイリキーは迫っていた。

「さぁ、お前の極限の力……見せてもらおう」
「くっ……本当は最後まで出したくなかったけど……頼むぜ!!」

 サトシが最後に出したポケモンは、こっちの世界にくるときにも協力してもらったあのポケモンである。
 桃色の体をして、愛嬌のある顔立ちをしたポケモン……ミュウだった。

「何ィ!?」
「行けっ!!『サイコキネシス』!!」

 モロに攻撃が入って、カイリキーは吹っ飛んだ。

「まだだ!」

 カイリキーが接近してパンチを繰り出していくが、ミュウは見切ってそれをかわしていく。

「最大パワーで『サイコキネシス』だっ!!」

 地面が揺れるほどの衝撃だった。
 わずか2発でカイリキーはダウンした。

「ミュウ!ご苦労様!」
「っ!!負けた……このウルトラパワーが……まだまだ修行が足りないな……。敗者に何も言う資格はない。奥に行くがいい」

 そういって、シバは先に行くのを認めた。

「じゃあ、進ませてもらいます」
「もらいます♪」
「サトシ!行きましょう!」
「ああ!」

 4人はこうして2人目を撃破した。



「サトシ……何でミュウなんて持っているんだ!?」
「まあ、いろいろあってな」

 アースの質問をサトシは淡々と流した。

「それにしても、後は戦えるのは私とアースさんだけになってしまいましたね。ところで、アースさんが戦いたい人ってどんな人なんですか?」

 オトハがアースに尋ねた。

「そういえば、さっき言い損ねてしまったね。自分が戦いたいのはパパの師匠の師匠だった人なんです」
「師匠の師匠?」
「そう。その人はかつてルネシティでジムリーダーで水系タイプのジムリーダーをしていた…………」

 アースが丁度口に出そうとしたとき、バトルフィールドに到着した。
 そして、その先には髭を生やしたダンディなおじさんがいた。

「あの人ですね」
「はい。自分のパパの師匠の師匠だった人……アダンさんです」

 3人目の四天王に対峙するのは、建物に入ってから偶然出会ったアースである。

「アダンさん……やっと会えましたね」
「君は……?」
「自分はアースと申します。母がサファイアで父がルビーです」
「まさか……あの子供だというのか?大きくなったもんだな……」

 アースがバトルフィールドでアダンと話している様子を見て他の三人は首を傾げた。

「……アダンさんってジムリーダーじゃなかったっけ?」
「ええ。確かルネシティでジムリーダーをしていたような気がしますけど……いつ四天王になったのでしょう?」

 相変わらず、素っ頓狂な疑問を抱く天然二人。

「サトシ!オトハさん!それって、私たちの世界での話でしょ!私たちの世界と、ここの世界では状況が違うのよ」
「それじゃ、カレン。何で『アダン』という同じ名前でしかも同じ姿をした人がいるんだ?」
「うっ……それは……どうだっていいじゃない!同じものは同じなのよ!」
「面白い……」

 アダンが喋りだしたのを聞いて、3人はアダンを見た。

「それなら私も全力で戦うことにしましょう。全てを魅了するといわれる水のアーティストで」
「お願いします」

 そして、バトルが始まる。
 2人は同時に構え、同時にポケモンを繰り出した。

 バシュッ!バシュッ!

 ガキーンッ!!!

「えっ!?」
「あの攻撃は!?」
「……氷攻撃ですね」

 カレンとサトシが突然の攻撃で驚くが、オトハは冷静に見ていた。
 オトハの言う氷攻撃とは、一撃で相手を倒す『絶対零度』だった。
 それを放ったのは……

「……いきなりの奇襲とは……やりますね」

 倒されたのはアダンのシザリガーだった。 
 アースの最初のポケモンは尻尾に絵の具をつけた犬のようなポケモン……ドーブルだ。

「BURUの『スケッチ』はどんな技でも写し取ることが出来ます。以前に『絶対零度』を使った野生のポケモンから『スケッチ』しました」
「それにしても、見事だよ。技のキレ具合といい威力といい……見事だ」
「どうもありがとうございます」
「だけど、それだけで私の負けを認めるわけにはいきませんね」

 アースはドーブルを戻して新たなポケモンを繰り出す。
 そのポケモンはミノマダムというポケモンである。
 しかし、ミノムッチの時に生まれた場所によって、その姿が変わるといわれるポケモンだ。
 アースのミノマダムは塵などを集めたゴミのミノマダムだった。

「MINO!『ラスターカノン』!!」

 塵を集積して、形付ける光の玉がアダンに向かっていく。
 しかし、アダンは慌てない。
 水のアーティストといわれているだけに、水の攻撃で防いでしまった。
 それを見てアースはフッと笑った。

「ニョロボンの『しおみず』……ですね?」
「ご名答。さて、次はこちらから行きますよ?」

 瞬間的に3方向の水鉄砲を打ち出してくる。
 アースも慌てない。
 水鉄砲の軌道を見切って、当たらない事を判断したからである。
 その隙を狙って接近を図る。

「かかりましたね?」
「わざと引っかかったのですよ」

 3方向の水鉄砲はいわば、アースとMINOの動ける範囲を狭めるための牽制だった。
 そして、その範囲だけを狙ってニョロボンはハイドロポンプを放つ。

 バシュッ!!

 だが、アースはそれを読んでいた。
 それを証拠にハイドロポンプが当たったにもかかわらず、MINOは無傷だった。
 傷はなかったけど、ハイドロポンプの水がMINOに降りかかってきらきら輝いていた。

「(『守る』のようだね)」
「アダンさん……自分が何故ゴミのミノマダムを選んだかお分かりですか?」
「……?」
「どんなゴミでも役にたたないものはない。再生すれば使える。そこから見出される美しさを自分は表現したいのです!!MINO!!『目覚めるパワー』!!」

 眠れる力を引き出すといわれる『目覚めるパワー』。
 MINOが引き出したそのエネルギー体はバチバチと帯電していた。
 そして、自分の濡れた体をふるって水を加えて、帯電した水のエネルギー体をニョロボンに放った。

 ズガン!!

「なかなかいい攻撃です。まるでコーディネータのように美しく合わせた技です」
「…………」
「だけど、まだやられません。ニョロボン!!」
「っ!!」

 気づいた時にはMINOは自由を奪われていた。
 そう、サイコキネシスだ。
 MINOを引き寄せてさらに催眠術で眠らされてしまった。

「不覚……」

 二匹目のポケモン……バシャーモを援護に向かわせるが、遅かった。
 ニョロボンの水を纏った強烈なパンチがMINOを打っ飛ばしていた。

「SYAMO!『ブレイズキック』!!」
「もう一度『ウォーターパンチ』!!」

 炎の蹴りと水の拳がぶつかる。
 その時、水が蒸発して視界が悪くなった。

「もう一度です!!」

 視界が悪かったのにもかかわらず、アースのバシャーモはニョロボンに攻撃を当てた。

「『二度蹴り』です!!」

 SYAMOの蹴りはただの蹴りではない。
 炎を纏った『ブレイズキック』状態だ。
 しかも、一度目の蹴りでニョロボンを踏み台のように蹴りつけて跳び上がり、二度目の蹴りでは2倍の威力の蹴りを叩き込んでいた。

「そこですね!」

 ニョロボンを倒したのは良かったが、すでにアダンはキングドラをスタンバイさせていた。

「っ!!」

 視界が悪かったとはいえ、跳び上がったせいで、SYAMOの場所がアダンに把握させてしまった。
 そのSYAMOがいると思われる場所を中心に、アダンのキングドラが『流星群』を放って水蒸気ごとバシャーモをなぎ払ってしまった。

「もう一度BURUです!!『猫騙し』です!!」

 バチンッ!と音を立てて、キングドラを怯ませる。

「『電磁波』です!!」
「そうは行きませんよ」

 アダンはキングドラとナマズンを素早く交換した。
 ナマズンに電気攻撃の効果はない。

「くっ、『絶対零……うわっ!!」

 強烈な地震がフィールドを揺らした。
 この地震にたまらず、バランスを崩して倒れるアース。
 BURUも同じだ。
 それを狙って……

 ズドーンッ!!

 ナマズンでBURUを押しつぶしてしまった。

「しまった…………」

 アダンはBURUが戦闘不能になったのを見てナマズンをボールに戻した。

「これは……同じタイプのバトルですね」

 オトハがおっとりと言う。

「ええ。ポケモン交換や技の使い方……2人は似たタイプのトレーナーみたいね」
「そうか?」
「そうか?って……」

 サトシの発言にガクッとカレン。

「サトシだって見たはずでしょ?テレナとシバの戦い方を。テレナは戦略を組み立てて先読みをしながら戦う頭脳派タイプ。シバは己を鍛え、かつ力で押してくる肉体派タイプ。そしてあのアダンさんは、頭脳派タイプといえるわ」
「2つの種類に分かれるってことか?」
「う~ん……もっとあるでしょうけど、要するにトレーナーによって鍛え方も戦い方も違うってことよ」
「……確かに」

 そして、アースはジュカイン。アダンはトドゼルガを出していた。

「MORI!『種マシンガン』!!」

 一口に種マシンガンといってもアースのジュカインの種マシンガンは一味違う。
 種をマジックのように魔方陣のごとく目の前に並べて一斉に放つ種マシンガンだ。
 だが、トドゼルガの強烈な吹雪の前には意味を成さず、あっという間に攻撃は凍らされてしまった。

「『冷凍ビーム』!!」
「『エナジーボール』です!!」

 前に進みながらエナジーボールを放ち、相殺をする。

「前に出たのは無謀ですね。『吹雪』!」
「そうでもないですよ?『リーフストーム』!!」

 ブフォア――――――!!!!

 冷気と緑風が交じり合い強烈な風を巻き起こす。
 だが、周りに影響を及ぼす風のその比率は吹雪の方が上だった。
 辺りが次々凍りついていく。

「ジュカインの負け!?」
「いえ……これは……」
「トドゼルガの吹雪が負けた…………!?」

 MORIのリーフストームの方が吹雪の冷風を打ち抜いたのである。

「範囲を集中させてリーフストームを放ったおかげで吹雪を拡散させ、ダメージを防ぐと共にトドゼルガにダメージを与えたというわけです」
「……なかなかやりますね」
「お褒めの言葉ありがとうございます」

 そして、アダンが繰り出したのは水ポケモンの中でも屈指の美しさを持つといわれるポケモン……ミロカロスだ。
 それを見て、ポケモンをチェンジするアース。
 MORIの代わりに出てきたのは電気ポケモンのデンリュウだ。

「MERRY!『綿胞子』!!」

 綿の胞子をさらさらとミロカロスに振り掛けるMERRY。
 しかし、アダンは何も指示を出そうとはしない。
 アースの出方を伺っているようだ。

「行きますよ!『かみなり』乱発!!」

 MERRYの体から強烈な電撃を上空に放ち、その電撃がランダムにフィールドへと落雷する。
 まさに、雷の雨である。 

「なるほど……無差別攻撃ならミラーコートで返そうとしても返すことはなかなか難しい。そして、それを難しくさせているのがこの動きを鈍くさせる綿胞子というわけですね」
「そういうことです……そして!!」

 MERRYに雷が落ちる。
 だが、その雷のエネルギーは拳に集められていた。

「この『雷パンチ』で止めを刺します」
「見せてもらいましょうか」

 MERRY接近。
 もちろん、ミロカロスは迎撃に入る。
 だが、雷の雨は続いていて、その雷がミロカロスに落ちる。
 そして、そのダメージを受けている隙を狙い、パンチが炸裂した。

「なかなかよい攻撃でした。雷が入るタイミングを見計らって接近を試みるとはいい選択です」
「……!?(まだ倒れない?)」

 大きなダメージは負っているもののミロカロスはまだ倒れなかった。

「『自己再生』です」
「くっ!MERRY!『10万ボルト』!!」

 しかし、回復速度がアダンのミロカロスは速かった。
 しかもそれだけではない。
 当たる筈だった10万ボルトを返してしまった。
 MERRYは自らの攻撃を2倍で返されて、かなりのダメージを負ってしまった。

「(……技の出方が早いですね……)それなら、そのスピードを止めます!『電磁波』!!」
「そうは行きませんよ」

 ミロカロスの前に出てきたのは再びナマズン。
 電磁波を代わりに受けてミロカロスの盾になる。
 さらに、ミロカロスが後方でハイドロポンプを放ってくる。

「そちらが二匹で来るのならこちらだって行きますよ!」

 アースが出したポケモンはミラーコートでハイドロポンプをそのまま跳ね返してしまった。

「ほう……これは……」

 アダンもアースのそのポケモンに感嘆する。
 アースの出したポケモンも、アダンと同じくミロカロスだった。

「BASS!『水の波動』!!」

 しかし、その水攻撃を左右に分かれてかわすミロカロスとナマズン。

「(よし、次の攻撃で決める)」

 と、アースが思ったのと同じようにアダンも思っていた。

「BASS!『アクアリング』!MERRY!『充電』!」
「させませんよ!ナマズン!『泥爆弾』!」

 MERRYに泥が当たって破裂した。
 だが、まだ、やられてはいない。
 充電していたおかげで多少のダメージを軽減したようだ。

「そこです!『10万ボルト』!!」

 威力を増した電撃がアダンのミロカロスに向かっていく。

「残念ですね」
「…………」

 泥爆弾に当たったMERRYは視界を奪われていた。
 ゆえにミロカロスに直接に攻撃を当てることは出来なかった。

「ナマズン!」

 その隙をアダンは逃さない。
 放電をしているところをめがけて、MERRYを押しつぶしてしまった。

「そう……それでいいのです」
「!!」

 MERRYがダウンしたのにもかかわらず、アースはまったく動じていなかった。
 MERRYの電撃はまだ生きていたからである。
 その電撃の先にいたのはBASS。
 そのBASSが電撃を受け止めて、そして、跳ね返した。
 もちろん、狙いはアダンのミロカロスだ。

 バリバリバリッ!!!!

 2倍に威力が増しているその電撃はアダンのミロカロスをダウンさせてしまった。

「『水鏡の反射<アクアリフレクト>』……ミラーコートの反射とアクアリングを応用した返し技です」
「……なかなか面白い技を持っているではないですか」
「こんなことも出来ますよ?BASS!『アクアリング』!そして、『アクアテール』です!!」

 しかも、このアクアテールはアクアリングを纏っていることによって威力が増大していた。
 アクアリングは水を体に補うことで徐々に体力を回復していく技だが、アースのミロカロスはそれを攻撃の威力を上げるために使えるらしい。

 バシュッ!!

 しかし、攻撃はキングドラが受け止めてしまった。

「いよいよフィナーレですね。MORI!」

 アダンが残り全てのポケモンを繰り出したのを見て、アースも同様に全てのポケモンを繰り出した。
 その場に現れたのはナマズンとキングドラ、ミロカロスとジュカインである。

「ナマズン!『破壊光線』!キングドラ!『流星群』です!!」
「BASS!『アクアテール』!!MORI!『リーフストーム』!!」

 ズドーン!ズドドーン!ズバシュッ!ブワッ!!!!

 全ての技が一気に放出して、フィールドは見えなくなってしまった。

「……一体どうなったんだ!?」
「どちらも最大技の激突……わからないわ……」

 サトシもカレンもそのフィールドをただ見ていた。

「このバトルは恐らく………………」

 オトハはポツリと小さな声でつぶやいていた。

「ナマズン……キングドラ……ご苦労様です」

 煙が晴れた時、倒れたナマズンとキングドラを抱えるアダンの姿があった。

「アースの勝ちか!?」

 サトシはアースに近づくが、そこには倒れたMORIとBASSの姿があった。

「引き分け……」
「オトハさんの言ったとおりになったわ……」
「勝てませんでした……」

 無表情でアースは2匹をボールに戻した。

「君のバトル、見せてもらいました」
「アダンさん……」

 アースの肩に手をぽんと置くアダン。

「さぁ、先へ進みなさい。最後の一人が待っていますよ」
「よし!じゃあ、行こうぜ!」

 サトシが真っ先に扉を開いて行ってしまう。

「待ちなさいよ!少しは慎重に行動しなさいよ!」

 そんなサトシを心配して追いかけるカレン。

「では、次に進みましょう。アースさん」
「ええ」

 オトハに促されてアースは次の部屋に向かおうとする。

「アース君」
「え?はい?」

 後ろを振り向くアース。

「今回は引き分けでしたが、次こそは決着をつけましょう」
「ええ。そのときはよろしくお願いします」

 こうして、アースは3人目のアダンを突破した。



 第二幕 Dimensions Over Chaos
 VS四天王② ―――アースの実力――― 終わり


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Last-modified: 2015-04-15 (水) 21:07:11
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