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たった一つの行路 №091

/たった一つの行路 №091

 確かに下心を持っているときもあるさ。
 だけど、俺はそんな目的のために女の子に近づくわけじゃない。
 もっと大きな目的のため……全ての女の子を守るためなんだ。
 そう、俺は全ての女の子を守れるナイトになりたかったんだ。
 誰もがあこがれるヒーローになりたかったんだ。
 だから、女の子の悩みを親身に聞いて少しでも役になりたいと思ったんだ。

 例え……嫌われたっていい。
 この先、ずっと嫌われ続けても、俺は彼女たちが幸せになってくれたらいいんだ。

 もちろん、惚れた相手にはそれ以上の愛情を捧げたい。
 家族には、頼られる存在になりたい。
 そして、子供が出来て、その子が男の子だったとき俺は伝えたい。
 『どんなに悪く思われても、女の子を第一に考えて行動しなさい』と……



 たった一つの行路 №091



 22

 突然、その男は姿を現した。
 何もない場所から、靴の音をトンと鳴らせて、着地するとグラサンをかけなおした。

「ここだな……」

 グラサンでわかるが、彼はトキオだ。
 トキオはテレポートしてもらったラティオスをボールに戻すと目の前の建物を見据えた。
 場所はオートンシティのさらに北にあるブーグシティ。ジムがなく、大きな特徴があるといえば、図書館である。
 しかもこのブーグシティの図書館はシンオウ地方のミオシティの図書館よりも規模が大きい。
 5階建てで、エレベーターが完備され、さらに地下2階まである。
 広さも並のポケモンセンターくらいの敷地はある。

「ここにパラレルワールドの情報が……」

 ここにトキオが来る過程は以下の通りである。



「え?パラレルワールドの情報が知りたい?」

 冷静にユウナが聞き返す。

「そうなんだ。ライトちゃんの彼のエースがパラレルワールドの奴らに誘拐されたみたいなんだ」

 えっ!?とマサトとユウナは驚く。
 場所はポケモンセンターのトキオの部屋。
 時間は丁度、ユウナの仕事が終わった夜である。
 その仕事に関ったトキオ、ライト、ユウナ、マサト、ユウコの全員がいた。
 この騒動にかかわったログはまだ警察の事情聴取を受けていた。
 ユウコは少し離れた窓際で外を眺めながらインスタントコーヒーを飲んでいた。
 ちなみにこのときのユウコの服装は未だにメイド服である。

「エースさんが!?あんなに強いエースさんが!?」

 マサトは驚きを隠せない。

「パラレルワールドね……」
「ユウナさん!あなたならこの情報も知っているんじゃないかってリクが言っていたから……」
「残念だけど……私も詳しくは知らないわ」
「えっ……そんな……。本当に知らないんですか!?」

 ライトがユウナに迫る。

「言ったじゃない。“詳しくは”って」
「つまり、何らかの情報はあるってことですね?」
「ええ。まぁそういうところかしら」
「何!?何なの!?教えてください!!」

 とりあえず、落ち着きなさい。とユウナがなだめると、ライトは大人しくなった。
 マサトは自販機で買った炭酸水をテーブルに置いて、ユウコは飲み終えたコーヒーカップを窓の淵に置いて、ユウナを見た。 

「かなり昔のこと……。別の世界から来た人間とポケモンがいた。その人間が『次元の記述』という本を書いたというわ」
「『次元の記述』?」
「ええ。その本にその人がこの世界に来た方法が書いてあるかもしれないわ。……でも、楽観しないことね」

 ライトとトキオが喜んでいるのを見てユウナが釘を刺した。

「その本の所在が不明な上に、あくまでこれは可能性に過ぎないからね。もしかしたら、何も書いてないかもしれない。それにどこにあるかもわからないしね」
「そ、そんな……また振り出し……?」

 ライトが落胆する。

「ん?……『次元の記述』……?」

 トキオは何かを思い出したように唸った。

「どうしたの?」
「もしかして……その本はブーグシティの図書館にあるんじゃないか?俺、見たことあるかもしれない」

 すると、全員が驚いた。

「何で今まで忘れてたのよ!!」

 先ほどまで落ち込んでいたライトは元気を取り戻して怒る。

「そんなこと言われても……。わかった。今からブーグシティに行って来るよ」
「じゃあ、私も行くわよ!!」
「いや、ライトちゃんたちはマングウタウンに戻ってくれないかい?俺一人でいい」
「何でよ!!」
「ルーカス姉さんが怒っているんだ……少しでも宥めてくれないか?」
「何であんたのために……!!」
「仕方ないわね……」

 ユウナは立ち上がった。

「私もエースを助けるのに力になるわよ。いいかしら?」
「!!」

 ライトも立ち上がった。

「いいんですか!?」
「仕事もあなたたちのおかげで終わったしね」
「ありがとうございます!!」

 すると、ユウコとマサトのジラーチもライトの傍に来た。

“ボクも協力するよ~”
「ジラーチ!?」

 マサトは驚く。

“エースに助けてもらったことがあるんだ。だから、今度はボクが助ける!!”

 確かに、ジラーチはロケット団に攫われそうになった時に一回だけエースに助けてもらったことがある。といっても、繭の時の話だが。

「私はパラレルワールドというものに興味があるの。そのついでに手伝ってあげるわよ♪」

 とユウコ。

「みんな……」

 ライトの目が自然と潤んできた。でも、ごしごしと擦ってみんなに言った。

「お願いします……」
「大丈夫!俺がきっと助け出してあげるから」

 とトキオは慰めるようにライトの頭に手を乗せようとした。
 だが……

 シュッ!!

「ゴフッ!!」

 トキオが腹に肘撃ちをくらって悶絶した。

「言ったでしょ……私に半径2メートル以内近づくなって!!」
「わ……忘れてた……。ライトちゃんは覚えていたのか…………」
「それに、あんたは早くブーグシティへ行きなさいッ!!」

 ライトに背中を蹴られて、トキオは自分の部屋を追い出されていった。



 その後、トキオはルーカスに電話を掛けてアルトマーレから戻ってきたラティオスを転送してもらい、そのままテレポートでブーグシティに来た次第である。
 しかし、図書館はもちろん閉館しており、調べることは出来なかったために朝に出直しをした。
 そして、ポケモンセンターで朝食を取り、朝一番で図書館へやってきた。

「久し振りに来たなぁ……。半年ぶりか……」

 トキオはここへ来るのは3回目である。
 最初はヒロトと始めてこの街に来たとき。ヒロトの見る予知夢について調べていたときである。
 2回目は半年前に休暇のときにここへ遊びに来たときである。
 最初に来たときと2回目にきたときはかなり図書館の雰囲気は変わっていた。
 一目で分かるのは、きっちりと分野ごとに区別されていたことである。
 さらに、最初に来たときにはなかった検索機能もしっかりと設置されていた。
 つまり、この検索機能で調べれば一発で分かるのである。
 トキオは迷わず入ってすぐにこの検索機能を利用した。
 だが……

「……『お探しになった書物は確認できません』?」

 もう一度、『次元の記述』と入力して検索してみた。
 だけど、結果は同じだった。

「……おかしいな……」

 トキオは仕方がなく、直接近くにいた女性司書に尋ねた。

「『次元の記述』という書物ですか……?検索機能には出ませんでした?それなら置いてないということに……」
「いや、でも見たことあるんだよ……。昔、地下図書で……」
「地下図書ですか!?」

 女性司書は驚いて、トキオに少々お待ち下さいと言って、他の人に聞きに言った。
 トキオは首をかしげて、彼女が戻ってくるのを待っていた。
 やがて、数分後、その女性は戻ってきた。

「お待たせしました。地下図書にならその書物は確認できるかと思います」
「えっ!?じゃあ、何で検索機能に出ないんですか!?」
「実は地下の図書館の書物は別になっているんです」
「そうなんですか……。それなら、そこへ案内してください!!」

 女性司書に導かれてトキオは地下図書へやってきた。
 しかし……。

「こちらになりますが……」
「…………」

 地下図書は一番最初……8年前に来たときと変わらず、埃が被っていて大変な暗さと膨大な本の量だった。

「……何でここだけこんなになってんですか?」
「館長が『地下図書なんじゃから、スリルがあったほうがいいじゃろ?』と言って、掃除をさせないんです」
「……ある意味スリルあるけど……」

 トキオは司書に礼を言って、地下図書の中を探し始めた。
 本の表紙を見ては放り投げ、見ては投げ捨て、その繰り返しだった。

「初めて来た頃を思い出すなぁ……。あの時もこんな感じだったっけ……」

 懐かしくしているうちにペースがどんどん落ちていった。
 表紙だけでなく中身も見るようになっていったからだ。

「<伝説のポケモン、エンテイ、スイクン、ライコウに関する考察>……エンテイは火山に住むといわれ、スイクンは北風の化身と呼ばれる……ライコウは……あれっ?ページが擦り切れてる……」

 少し読んで、隅っこに放り投げる。

「<アンノーンに関する資料>……確かにアンノーンは不思議だけどな……。借りていくか。<正しいクッキング法>……これ、前にも見たな……。<隕石の秘密>……関係ないな。<人が見る夢に関する考察>……」

 トキオはふとその本を手に取って見た。

「結局、ヒロトのあの夢の秘密は解き明かせなかったんだよなぁ……。あれってなんだったんだろう……?」

 少し唸っていたが、今はこんなこと考えてる場合じゃないと探索を再開する。

「<ポケモンと話ができる民族の伝説>……<ポケモンの気持ちがわかる!>……そうだ……確かこの辺だ……これだっ!!」

 シュバ!

 そして、自分の持っている本を見ると、そこには水着の女性がきわどい格好でポーズを決めている姿があった。

「<HITOMI~細身萌え姫の濡れた肌~>……っ!!これエロ本だ……。これじゃない!!」

 トキオは本を投げ捨て……なかった。

「(……借りていこ……)」

 <アンノーンに関する資料>の間にその本を挟めて、何食わぬ顔で探索を再開するトキオ。
 そしてついに……

「これか……」

 <次元の記述>……目次に<もう一つの世界の行き方>と書いてある本を見つけた。

「この本に……書いてあるのか……?パラレルワールドへの行き方が……?」

 トキオは恐る恐るその本をめくった。



 23

 ―――2日後。
 今、マングウタウンのとある丘でとある二人がバトルを繰り広げていた。
 この丘はマングウタウンでバトルするのには絶好の場所で、地元の子供たちが『バトル丘』または『決闘丘』と呼ぶほど有名な場所である。

「マリル!『アクアジェット』です」

 水をまとって突進を繰り出すのはマリル。

「かわせッ!!」

 しかし、そのスピードと同じくらいのスピードで黄色いネズミポケモンは回避した。

「ピカチュウ!!『10万ボルト』!!」

 少年の声が飛ぶと、ピカチュウが強烈な電撃を繰り出す。
 マリルは丸くなって防御をしたが、あまり意味もなく直撃と同じくらいのダメージを受けた。
 だが、マリルはその電撃に耐え切っていた。

「ピカチュウ!!『ボルテッカー』!!」
「マリル!!例の技です」

 ピカチュウが電気で包まれて突進し始めた頃におっとりした口調で指示を出す。
 だが、それでもマリルにとっては十分すぎるほどの時間だった。
 水を纏いながらの体当たりがピカチュウのボルテッカーと正面衝突した。
 そして、激突が衝撃を生み、ピカチュウとマリルは吹っ飛ぶ。

「……ここまでですね」

 柔らかな口調でそういい、彼女……オトハはマリルを戻した。
 一方のピカチュウは激しく息を切らしていた。

「ピカチュウ。ご苦労様」
「私の負けですね。まだまだ精進が足りません」
「いや、普通に強いですよ!ピカチュウがこんなに苦戦するなんて久し振りでしたから」

 少年、サトシはピカチュウを肩に乗せて、オトハと握手をした。

「あ、サトシじゃない!」
「本当だ!サトシだ!!オトハさんもいる!!」

 声を聞いてサトシたちが丘の下を見ると、そこには帽子の少女とメガネをかけた少年と髪の毛が跳ねている少女にチャイナ服の女性がいた。

「マサト!ライト!」 「マサト君……ライトちゃん……。それにユウナさんとユウコさん?」 

 サトシとオトハは同時に呼びかけに答えた。
 サトシはすぐに丘をズサッ―――と下っていった。
 一方のオトハはロングスカートの裾を汚さないように手で持ち上げて、足元を確認しながら下っていった。

「マサト!久し振りだな!!どうしてここにいるんだ?」
「実はノースト地方の大会に出ようとしてここまで来たんだ!ところで、サトシは何でここに?」

 マサトは首をかしげて問いかける。

「シンオウ地方の挑戦が終わって、時間があったから、カスミと一緒に遊びに来たんだ。でも……」
「ええ」

 サトシがオトハを見て、オトハはそれに頷く。
 ライトたちは2人のやり取りに首を傾げた。

「とりあえず、トミタ博士の研究所へ行きましょう」

 オトハに促されて、計6人は研究所へと移動していった。



「えっ!?ちょっと博士!!何言っているんですか!?後1ヶ月は戻れないってどういうことですか!?……え?オーレ地方のクレイン所長から応援を頼まれたから行かなくちゃ行けない?
 それなら分かりました。けど早く戻ってきてくださいね。こっちも仕事がかなり溜まっているんですから!!」

 ピッ!とルーカスはテレビ電話のスイッチをオフにした。
 すると、玄関から数人が入ってきた音がしてルーカスは玄関へと急いだ。

「戻ってきたわね。ライトたち」
「ルーカスさん……。戻ってきましたけど……」
「まぁ、こっちへいらっしゃい」

 そう言って、ルーカスは全員が入りそうな広間へと案内をした。
 しかし、もうすでにそこに先客が2名いた。

「ライトちゃん!久し振り!」
「…………」

 ツインテールで右手首にスナッチリングをつけている少女と左手にスナッチマシンを装着している無愛想な白髪の少年だった。

「カレン!?」
「ハルキ!?」

 ライトとユウナが順々に二人の名前を挙げた。

「どうしてカレンたちがここにいるの!?オーレ地方のアゲトビレッジで2人っきりで暮らしているはずでしょ!?」
「ライトちゃん。おじいちゃんが住んでいるから、2人きりじゃないわよ。だから滅多なことは出来ないわよ」
「…………」

 カレンが喋っているが、ハルキは相変わらずだんまりとしていた。
 一方、ユウコはマサトの頭をつついていた。

「なあに!?ユウコさん!?」
「あの二人は何者?」
「カレンさんとハルキさんです。2年前にロケット団と戦った仲間です」
「そうなの」

 そういって、ユウコは納得した。

「それで、何でこんなに集まっているんですか!?」

 改めてライトはルーカスに聞いた。

「それは、アイツから話を聞きなさい」
「アイツ?」

 ライトは首をかしげてルーカスが首を振っている先を見た。
 すると、部屋に入ってきたものが3人いた。
 一人は、黄色い髪のポニーテールの女性のイエロー。
 一人は、もうすっかりストレートの髪に定着して少し髪を伸ばしたカスミ。
 もう一人は……

「ライトちゃん!みんな!お帰り!」
「なっ!?トキオ!?どうしてここに!?何でいるのよ!!」
「どうしてって……調べ物が終わったから戻ってきたんだよ」
「じゃあ、分かったの!?パラレルワールドへの行き方が!?」 

 ライトの問いにトキオはニッと笑ってみせる。
 しかし、すぐさまトキオの頭を叩くものが一名。

「早く飲み物を配りなさい!!」
「す、すみません……ルーカス姉さん……。とりあえずみんな、どこでもいいからくつろいでくれ」

 そういわれると、広い部屋に適当に散らばった。
 ハルキとカレンはもちろん隣同士に。
 ルーカスは自分で持ってきたパイプ椅子に座った。
 ソファには左からマサト、サトシと座った。
 ユウナとユウコは座わらずに適当な場所に立っていた。
 オトハはどこからか座布団を持ってきて、正座して座っている。
 ライトは早く話せと言わんばかりに、トキオを睨みつけていた。

「とりあえず、今、俺が入れたレモンティーをイエローさんとカスミちゃんに配ってもらっている。それを飲みながら聞いてくれ」

 せっせと、カスミとイエローは全員に配り終えると、カスミはサトシの隣に、イエローはライトの隣に落ち着いた。

「とりあえず、結論から言うことにする。もう一つの世界……すなわちパラレルワールドに行くことは可能だ」
「……そうなの!?それじゃ、その方法は!?」
「教えてください!」

 ライトとイエローは食い入るようにトキオを見る。

「まぁ、ちょっと待って。まずはこれを見てくれ」

 そういってトキオは借りてきた本をみんなに見せた。

「こ……これは!?」

 その本を見せた瞬間、全員その本に釘付けになった。

「「あんた……何借りて来てんのよッ!!!!」」

 ライトの拳とルーカスのパイプ椅子投げがトキオの腹と頭にそれぞれ命中した。
 その本はブックカバーが外れて、トキオの顔に覆うように落ちた。
 タイトル<HITOMI~細身萌え姫の濡れた肌~>。

「し、しまった……これ、エロ本だ……」

 素早く、その本をしまって、例の本を取り出すトキオ。
 しかし、このせいでトキオの信用はがた落ちである。

「お兄ちゃん……」
「(トキオさん……(赤面))」
「(馬鹿だ……)」

 カレンとオトハは恥ずかしくなり、ハルキは呆れていた。

「今の水着姿の写真がどうかしたのか?」
「え?サトシ本気で言ってるの!?」
「(その反応もどうかしてるわね……)」

 サトシは相変わらずのようで、カスミは頷いていた。

「水着姿が見たいんなら、私が着替えてくるわよ?これでもアイドルよ!水着審査なんていつもやっ 「トキオ。早く続きを話したらどうかしら?」

 ユウコを遮ってユウナが進行するように言う。

「「そう(です)よ!早く進め(てください)なさい!!」」

 ライトとイエローが拍車を掛ける。
 そういわれて、トキオは改めて、本を手に取った。
 今度はブックカバーを取って確認したので間違いないようだ。
 どうやら、本屋でもないにもかかわらず、全ての本に同じブックカバーを掛けていたらしい。
 しかも、本の大きさも同じために間違えたらしい。

「これを見てくれ」

 トキオが真ん中のページを開くと、そこには3匹のポケモンの姿が描かれていた。

「ミュウと」
「セレビィと」
「ジラーチ?」
「ああ、そうさ」

 そして、トキオは次の一文を読み上げた。

 ミュウの極大なる知識の力に『テレポート』……
 セレビィの時間と時空を泳ぐ力に『自然の恵み』……
 ジラーチの願いを叶える力と物質転送の力に『破滅の願い』……
 これらの力の利点を全てあわせることで見えない次元を突破できるかもしれない。

「つまり……それらのポケモンの能力を使ってワープすると言うわけね」

 ユウナが簡単に要約をした。

「そうか!だから、ミュウのトレーナーのサトシ、セレビィを呼び出せるカレン、ジラーチと友達のマサトを呼んだわけね!トキオにしては準備がいいじゃない!」

 ライトはトキオを珍しく褒めていた。

「でもお兄ちゃん……」
「カレン?」
「そのエースがいる場所に必ずしもいけるって訳じゃないんじゃないの?」
「どういう意味だ?」

 みんながカレンを注目していた。

「以前、話したよね?違う世界から来たリュウヤとナポロンの話……。あの二人は“違う世界を行き来する”って」
「えっ!?それじゃあ、次元を超えた世界はいくつも存在すると言うこと!?」

 そういって、ユウコは少しがっくりしていた。

「どうしたの?」
「いいえ……別になんでもないわ……」

 ユウナはユウコを気にしたが、すぐにカレンの話に耳を傾けなおした。

「エースさんを助け出すにも、エースさんのいる世界に正確に行けるかどうかもわからないんじゃないの?」
「カレンのいうことにも一理あるわね。次元を越えてワープして、エースはいませんでしたじゃ話にならないものね」

 ユウナが喋りながらウンウンと頷く。

「トキオ!どうするのよ!」

 ライトが怒ってトキオに言う。

「それも大丈夫だ!こんな記述が載っている」

 ミュウ、セレビィ、ジラーチの3匹の能力を使って時空転換をすることに成功した。
 しかし、次に私は自在に時空転換をする方法を考えた。
 そこで思いついたのが、ミュウの風土の知識だ。
 おのおのの世界に微かだが違いがある。
 その違いを判別すれば、自在にワープすることが出来るのではないか?

「風土?」
「自分なりに考えてみたんだけど、これはその次元にあったもの……と解釈していいなじゃないかと思う。この作者はその次元の石ころとかポケモンでワープしていたみたい。だから……」
「イエローさんのポケモンで風土の問題を解消できるって訳ね」
「さすがユウナさん!そのとおりさ!」

 そういうと、ライトとイエローが立ち上がった。

「それなら、すぐに行きましょう!」
「そうよ!一刻も早くその世界に行ってエースを助けるわよ!!」
「そう行きたいところなんだが……出発は明日の朝にしよう」
「何でよ!!」
「ライトちゃん……。さっきマングウタウンに戻ってきたばかりだろ?疲れているだろうから、今日は休んだ方がいい」
「平気よ!!恋する力があれば、どんなこんなんだって……」

 すると、ポンッとライトの肩に誰かが手を乗せた。
 イエローだった。

「確かにエースのことは心配だけど、休んだ方がいいよ。トキオ君の提案に乗ったほうがいい」
「イエローさん……」
「今度戦う相手は恐ろしく強い奴らばかりかもしれないじゃないか。俺が戦ったTSUYOSHIもライトちゃんが戦ったミナノって奴もベストの状態じゃないと勝てないんじゃないか?」
「……わかった」

 ライトは頷いて、トキオの提案に乗ることにした。

「今度の敵は強敵ばかりだ。だからベストメンバーで望んだ方がいい。そのための準備の時間だ。明日の朝7時まで解散しよう」

 そういわれると、ユウコをはじめとして続々と部屋を出て行った。

「サトシ……ミュウは今どこに?」

 トキオはサトシに尋ねる。

「ミュウなら研究所の庭で遊んだりしてますけど……たまに、オーキド博士がミュウの事を調べたいって言うんで今は研究所にいるんです」
「そうか……それなら、転送して手持ちに加えてもらえないか?」
「そういうことならわかりました」

 次にトキオはカレンを見た。

「もちろん時の笛は持ってきたよな?」
「当たり前よ!」

 カレンがポケットから時の笛を取り出す。

「セレビィは大丈夫だな。あとは、ジラーチだけど……」

 トキオは俯いているマサトに問いかけた。

「ジラーチの力が必要なんだ……力を貸してくれないか?」
「……実は……」

 マサトが喋ろうとするが、トキオはマサトの口を塞いだ。

「分かっている。ジラーチが繭に戻るときが近いんだろ?」
「え……?トキオさん……何故それを……?」

 すると、とある本を取り出した。
 表紙を見ると<千年の願い星>と書かれていた。

「これにジラーチのことが書いてあった。そして、ヒロトにマサトのジラーチのことについて聞いたことがある。君のジラーチはロケット団の実験により、千年彗星の111倍のエネルギーを受けて繭から孵ったというじゃないか」
「うん」
「それで本来なら7日間だけのはずなのに、その111倍の777日間起きていられると。あれからもう2年経っている」
「え……」
「それじゃ……」

 まだ部屋に残っていたサトシとカレンはその意味に気づいた。

「そうなんだ……ジラーチが再び眠りにつくまで明日で丁度残り47日になるんだ」
「!!」
「そう、行くとしたら、それまでに戻ってこないといけなくなる……。47日の間に……」
「うん……。ジラーチもそのことは分かっているみたい……。でも、ジラーチは助けたいって……」

 ジラーチが入っているボールを見て呟くマサト。

「本来なら、俺もこんな無理はしたくないが……困っている人は見捨てて置けないからな。女の子ならなおさらさ」
「…………」
「パラレルワールドに行く方法はこのほかにも2種類くらい書いてあったんだけど、どちらもリスクが高い上に今のままじゃ不可能な方法なんだ。だから、俺はこの方法を提示した。だから……」
「わかった。僕も戦うよ。僕だってエースを助けたい!!」

 まっすぐな目でトキオを見る。
 その目にもう迷いはなかった。

「決まりだな」



 後編へつづく


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Last-modified: 2015-04-11 (土) 15:04:03
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