「さて……行きますか!エアームド!」
「チルタリス!!」
と、トキオとライトは飛行ポケモンを繰り出すが……
「ちょっと!空から行く気なの!?」
ユウコが異を唱える。
「飛行ポケモンで行った方が速いですし……」
「まさか、ユウコさん、飛行ポケモンを持っていないんですか!?」
ここぞといわんばかりに、ライトがユウコを笑う。
「トキオは知っているでしょ!?オートントンネルの上を……」
「ええ、知っていますよ。あそこには何度かフィールドワークに言ったことがありますし」
「えっ!?そうなの?」
トキオとユウコが話してばかりでライトは首をかしげた。
「オートントンネルの上って何?」
「あら、ライトちゃんは知らないのね」
今度はユウコがプッと笑った。ライトは悔しそうに唇をかむ。
「オートントンネルの上空……つまり、上のルートは霧が濃くて、さらに強い野生のポケモンが生息しているんだ。それに、伝説のポケモンが住む場所としても噂されている。
急いで通るにはそのルートが一番だけど、ハードなルートであることには間違いないからね。それにつらいのは、野生のポケモンのレベルだけじゃないんだ。
登るにしてもあそこは一番キツイ山なんだ。そして、つらい思いをしないで通れるようにと思って作られたのがオートントンネルなんだ」
「そうなんだ……」
「だから……トンネルを通っていきましょうよ!」
「いえ、私は山の方を登るわ!」
と、ライトは言う。
「えっ!?何で?」
「強い野生のポケモンがいるんでしょ?!それなら、私は行くわ!もっと強くならなくちゃならないの!」
「……だけど……エースの情報はいいのか?」
「エースの情報は必要だけど、それ以前にエースを助けられるレベルに私が強くならなくちゃ話にならないわ!」
「そこまで言うならわかった……俺とユウコさんは下のルート……オートントンネルを通る。ライトちゃんは上のルートでいいね?」
「ええ!」
「ユウコさんもそれでいいですね?」
と、トキオが聞くが、ユウコは違った反応を示した。
「なるほど……エースというのが、ライトの彼氏なのね(ニコニコ)」
「(ぶ……不気味だ。一体ユウコさんは何を考えているんだ……?)」
ユウコは黒い笑みをこぼしたのだった。
その時だった。
「ぐっ!返しなさい!!」
スーツの男がうずくまっていた。
「このケースは僕たち、チーム『トライアングル』がいただきます」
「残念ね☆」
「ふぅ……これで終わりか……ちょろい仕事だったな」
反対の方角で争う声が聞こえた。
「一体何かしら?」
「また、ポケモン泥棒か?……あれ?ライトちゃん?」
「あんたたち!?一体何をやっているのよ!」
ライトがいつのまにかその騒動に割って入っていった。
「何だ……お前は?」
「邪魔する気かな?」
「どけ!」
3人がライトに注目する。
「私の目の前でどんな悪いことも許してはおけないのよ!!」
そういって、ライトはボールを構える。
「意外に正義感あるのね」
と、ライトの右にユウコが並んだ。
「泥棒は……見逃せねーよな」
トキオがライトに3メートル離れたところにいた。
「3対3……ですね」
「3つに分かれるぞ!」
「オッケー☆」
と、チームトライアングルの3人は散っていこうとする。
「させるか!!ゲンガー!『黒い眼差し』!!」
トキオのゲンガーが動きを封じ込めた。
「あっ!」
「くっ!」
巨乳女とメガネ男の2人の足止めに成功した。
「ちっ!お前ら!そいつらを倒して早く来い!いつものところで待っているぞ!」
「バンちゃん!任せて~☆」
「すぐに片付けてやる!!」
すると、巨乳女ミナミはミミロップ、メガネの男ジュンキはハッサムを繰り出してきた。
「トキオ!ユウコさん!ここをお願い!」
「分かった!」
「じゃあ、私があのぶりっ子女ね……」
「俺はメガネ男ってわけだ」
こうして、大人の魅力漂う巨乳VS子供の幼さが漂う巨乳、グラサンVSメガネの因縁の対決が始まった。
「チルタリス!『竜の波動』!!」
「ちっ!『ヘドロ爆弾』!!」
二つの技が激突して、相殺された。
「確か、バンって言ったわよね。返してもらうわよ!そのスーツケース!」
フールタウンの郊外まで来たところで、ライトは煙草を口にくわえたポニーテールの男のバンに追いついた。
「それはできないな!折角、奪取したものを返すわけには行かねー!」
「素直に言って聞く相手じゃなかったわね……それなら……力づくで返してもらうわよ!!」
「ふんっ……やってみろ!格の違いを見せてやるよ!!」
チルタリスが火炎放射を放つとバンのポケモン、アーボックはそれを上回る威力の破壊光線で火炎放射をぶち抜き、チルタリスに攻撃をヒットさせた。
「くっ!だけど、このくらいじゃ、やられないわよ!!」
チルタリスの羽毛のような翼で威力を半減させていた。
そして翼を広げて風を起こす。
アーボックが吹き飛ばされまいと、近くの木に巻きついていた。
「これでどう!?『火炎放射』!!」
今度はさっきの火炎放射とは違う。
風に煽られながらの炎で拡散していた。
「それがどうした!!」
すると、地面に潜って攻撃を回避した。
「…………」
ライトはチルタリスを戻して、プクリンを繰り出した。
そして、リフレクターを張って攻撃に備えた。
「ライボルト!!『10万ボルト』!!」
ライトのチェンジするのを見てポケモンを追加してきた。
「くっ!『光の壁』」
しかし、アーボックがそこで出て来て、光の壁は出せず、2匹の連続攻撃を受けてしまった。
「プクリン!!」
「一気に畳み込んで……!?いや、戻れ!」
ライトがプクリンを呼んだのは、技を出すためだった。
バンはそのことにいち早く気づいて、ポケモンを戻した。
同じく、ライトもプクリンを戻した。
「(ちっ……この女……つえーじゃねえか。『滅びの歌』で同士討ちを狙うとは……気づくのが少しでも遅かったらやられていたぜ)」
「(……もう少しだったのに!!それにしても……全く油断できないわ!!)」
そして、次の瞬間、また別のポケモンを繰り出して攻撃を加えていった。
―――一方。
「ごめん!負けちゃった♪」
「えっ!?ちょっと!ユウコさん!?」
ユウコのマリルリがミナミのカメールに倒されて、ユウコのポケモンは全滅した。
「まだ、ユウコさん、3匹目でしょ!?」
「実は私3匹しかもっていないの♪」
「何で“♪”なんですか!?ここはそんな状況じゃないでしょう!!」
「くっ……余所見をするなぁ!!カイロス!!『ストーンエッジ』!!」
ジュンキは怒ってトキオのゲンガーに突っ込む。
だが、ゲンガーはひらりとかわして、『シャドーボール』で倒してしまった。
「ぐわっ!!」
「ジュンちゃん!?」
シャドーボールの余波でメガネの男、ジュンキは気絶した。
こうして、ジュンキとユウコは実質、戦闘不能になった。
「後はあなただけですよ!」
「カメール!『ハイドロポンプ』!」
ゲンガーをめがけて攻撃を加えるが、いとも簡単にかわした。
「(このくらいのレベルなら……)『ギガドレイン』!!」
接近。そして、攻撃を加えてあっという間にカメールはダウンした。
「そんな~……。それならとっておきよ☆」
すると、彼女の最後に出したポケモンは……見た目風船のようなポケモンだった。
しかし、プリンではない。
ノースト地方では見かけないポケモンだったが、トキオは知っていた。
「(そいつは……フワンテ?確か……ゴーストと飛行タイプ……)『シャドーボール』!!」
一撃で決めようと、速攻で放つ。
だが……
「なっ!?速い!?」
予想以上のスピードに攻撃を外してしまった。
「(それなら……)ゲンガー!」
トキオが指示を送り、ゲンガーが頷いた。
だが、フワンテの攻撃が迫っていた。
「行くわよ☆ 連続『シャドーボール』!」
動きながら、シャドーボールを放っていった。
「(連射能力もある……だけど……)『シャドークロー』!!」
嵐のようなそのシャドーボールを手当たりしだい打ち壊していった。
何発かはあたったが、ダメージはトキオの予想通り受けてなかった。
「うそっ!?」
「威力の方はそれほど高くなかったようだな」
「それなら……連続で攻撃して決めてあげるわ☆」
「残念だけど、次はない」
「そんなこと……えっ!?」
ミナミがフワンテの様子がおかしいのに気づいた。
そう、苦しそうに息を乱していたのだ。
「体力が削られている……!?まさか……『呪い』!?」
「そして、この攻撃はかわせない!『シャドーパンチ』!!」
素早く動いて、攻撃を命中させた。
そして、フワンテはダウン。
「くっ!ジュンちゃん!逃げるわよ!!」
「させない!!『催眠術』!!」
気絶したジュンキを抱えて逃げようとするミナミに催眠術をかけて眠らせてしまった。
「よし……後はライトの方か……」
「トキオ♪やるじゃない!」
「ユウコさんはもうちょっとポケモンを増やした方がいいんじゃないですか……?」
トキオとユウコの戦いは終わり、残るはライト対バンの戦いになった。
「チルタリス!『竜の波動』!!」
「甘ェ!『流星群』!!」
ドラゴン系の技が激突した。しかし、威力が違いすぎた。
チルタリスの攻撃は、バンのハクリューの攻撃に飲み込まれていった。
そして、流星群がライトやチルタリス……そして、地面に降り注ぎ、砂煙を巻き起こした。
「終わったか……?」
「まだよ!!」
「!!??」
砂煙を吹き飛ばす速度で飛び掛っていったのはライトのバシャーモだ。
そして、渾身のパンチをハクリューに叩き込んだ。
「ちっ!やるじゃねぇか」
「はぁはぁ……」
ライトとバンの戦いは相変わらず接戦だった。
息を切らしながら、ライトはチルタリスを戻した。
「チルタリスを囮にして、バシャーモの『気合パンチ』か。まさか、この俺にここまでやるとは思わなかったぜ」
「はぁはぁ……何その台詞……もうあんたが勝つみたいな台詞じゃない!」
「ああ。これで終わりだ」
そう言って繰り出したのはミロカロスだった。
「お前にこいつを倒せるか?残りはそのバシャーモと最初のときのプクリン。そして控えの何かだが……恐れるに足らない」
バンにはよほどの自信があるらしい。
「(最後はミロカロスね……それにしてもハクリューといい、ハガネールといい、蛇みたいなポケモンばっかりね)これで最後なら、そのままで行くわよ!」
ライトも最後のポケモンには自信があった。
それは今まで苦労をともにしてきたポケモンということもあるし、最初のポケモンで付き合いが長いという点もある。
さらに、ライトの経験上、相手が最後のポケモンのときにバシャーモを使ったときは100%勝っているのである。
「(どっちにしても、控えのゴルダックだときついし、プクリンは万が一のためにとっておきたいしね)」
「後悔するなよ!ミロカロス!『渦潮』!!」
「バシャーモ!『大文字』!!」
二つの技が激突……そして相殺した。
「『竜の波動』!!」
「『火炎放射』!!」
さらに放つがこれも相殺。
「『竜巻』!!」
「『炎の渦』!!」
しかし、結果は同じ。まさに一進一退の攻防だった。
「こっちから行くわよ!!『ブレイズキック』!!」
だが、流れは変わった。今度はライトから仕掛けたのである。
「仕掛けてくるか……『ハイドロポンプ』!!」
よく狙って、攻撃を放つ。しかもただ狙うだけじゃなかった。
相手の動きを読んだ上でブレイズキックが当たる一歩手前でハイドロポンプを放った。
バシャーモは水流に巻き込まれて大ダメージを負った。
「バシャーモ!!」
避けられると思っていたライトはさすがに焦っていた。
「(くっ……甘く見ていた……。間合いに全く入れないなんて……どうしたらいいの……?)」
バンのミロカロスは遠距離砲が強かった。
一方、ライトのバシャーモも遠距離砲が得意だが、相性で考えると、ミロカロスのほうに分があった。
それを考えて格闘技を打ち込みたかったのだが、相手の得意の遠距離砲に阻まれて全く前に出ることができなかった。
「……仕方がないわ。……強引だけどあの方法しかないわ!バシャーモ!」
呼ばれて、バシャーモは頷いた。
「『オーバーヒート・ブレイク』!!」
体から炎を吹き出してそれを体に纏った。
「何をするか知らないが……これで止めだ!『ハイドロポンプ』!!」
ハイドロポンプを打ち出して、バシャーモに命中させる。しかし……
「まさか……!?」
ハイドロポンプはバシャーモに命中しているように見える。
だが、実際にはバシャーモに当たる時点でオーバーヒートによる炎の力で蒸発していった。
「このまま突っ込むのよ!!」
「明らかに接近技だな……それなら、近づけさせなければいいだけだ!『渦潮』!!」
「!!」
最初のときよりも巨大な渦潮を作り出して、バシャーモを巻き込んでいった。
相変わらず、水は少しずつ蒸発して行っているが、バシャーモは身動きを取れない。
さらに、オーバーヒートの威力は弱まっていった。
「オーバーヒートは一度使うとニ度目の威力は格段に下がる。がむしゃらに突っ込んで失敗だったな。その炎が消えたら次はハイドロポンプでお前ごと打ち抜く。終わったな」
そういって、煙草に火をつけるバン。
「言っておくけどね……私は諦めが悪いのよ!!バシャーモ!!踏ん張って!!」
ライトの声に反応して、渦潮ごと前に進んでいくバシャーモ。
「何っ!?」
「最大出力!オーバーヒート!!」
バシャーモの炎が勢いを増して、そして、渦潮を吹っ飛ばした。
「ちっ!『ハイドロポンプ』だ!!」
攻撃を繰り出すミロカロス。しかし、バシャーモはジャンプしてかわした。
「(くっ!肝心なところで!!)『怪しい光』!!」
「気合よ!!『起死回生』!!!!」
ズガ――――ン!!!!
凄まじい衝撃が一体に響き渡ったのだった。
―――1時間後。
「はぁはぁ……何とか倒したわ……」
「意外に強かったけど……何とか捕まえられたな」
「私は負けちゃったけど♪」
ライト、トキオ、ユウコの3人はチーム『トライアングル』を捕まえることに成功した。
「ぐっ」
「……ジュン君、バン君……捕まっちゃったね☆」
「くそっ……こんなことになるとは……」
そして、3人をジュンサーさんに引き渡して感謝状をもらったという。
「ありがとうございます!これで何とか取引に間に合いそうです!」
スーツの男は3人に頭を下げてお礼を言った。
「そのスーツケースを大事にしてくださいね」
ライトがそういうと、再びその男は頭を下げて、そして、街を去っていった。
「それにしても……あの男……どこかで見たことがあるのよね……」
「どうしたの?ユウコさん?」
「いえ、きっと気のせいね!私の好みじゃなかったし!」
「好みの問題なのね……」
なんだかんだで、ライトとユウコは仲良くなったらしい。
「それにしても思い出すなぁ……」
「「何を?」」
ライトとユウコは同時にトキオに聞き返す。
「実は、俺とヒロトがはじめてあった場所もここなんだ。そのきっかけとなったのがロケット団のポケモン泥棒事件で、2人で捕まえたんだ。懐かしいな……もう8年も経つのか……。あれ?ライトちゃんは?」
辺りを見回すトキオ。隣にいるのはユウコだけだ。
「ライトちゃんなら、あんたが話している間にとっくに先に行ったけど?」
「酷いな……(泣)」
とりあえず、こうしてライト、トキオ、ユウコの3人はオートンシティに向かって歩き出したのだった。
「少々焦りましたよ……。さすがに一般人に成りすまして、通り抜けるのは……」
“そうか……それなら、1週間後にはこっちにこれそうだな?”
「安心してくださいよ……。抜かりはないです。まぁ個人的にヒヤリとしたことは一つだけありましたがね……」
先ほどからスーツの男がポケナビで誰かと話していた。
“それは何だ?”
「まぁ、昔の話ですよ」
と、男が言うと、フッと笑った。
「だけど、あっちは覚えているはずがありませんしね」
“とにかく、“奴”に悟られずにここまで来ることだ。Mr.M……いや、ムラサメ”
「承知していますよ。フフフ……」
スーツの男……ムラサメはポケギアを切ると、ごく普通の歩く速度で目的地を目指して歩き出していったのだった。
たった一つの行路 №085
第二幕 Dimensions Over Chaos
チームトライアングル(後編) 終わり