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たった一つの行路 №077

/たった一つの行路 №077

「試験は『鋼の洞窟のメタルコートを取って来い』ですか……」
「♪ま~何とかなるだろっ」

 テツマに言われた4人のメンバーは鋼の洞窟の前にやってきた。
 鋼の洞窟とは……カントー地方のどこかにあるメタルコートが取れる洞窟である。
 野生ポケモンのレベルはチャンピオンロードレベルと言われている。
 その4人のメンバーの中で1人だけぶるぶる震えている者がいた。

「は、はじめてきたけど……な、中は真っ暗だね……」

 白の短パンの下に膝までのスポーツスパッツに長袖の黄色のセーターを着こなしている。
 その少年は見るからに中に入るのを怖がっていた。

「エレキ、ビビッてないで行くわよ?」

 アクアが無理矢理エレキの背中を押し込む。
 ヒィーと言って、仕方がなくエレキは入っていく。
 エレキの髪はダークグリーンで髪型が前髪が眼の辺りまで隠れるくらい長い。
 その髪型のせいでより引っ込み思案の性格が引き出されているような感じがしてならないとアクアは以前から思っていた。
 一度切った方がいいんじゃないかと進めたが、こっちの方が僕はいいんだとエレキは譲らなかった。
 そんな二人を見てからモトキとハナも入る。

「ちょっと前が見えませんねぇ(ズズッ)」

 どこからか取り出したか、ハナは『シズオカのお茶』という物を飲んでいた。

「ハナ……またお茶を飲んでるでヤンスか?」
「だって……美味しいじゃないですか(ズズッ)」
「場所を考えて欲しいでヤンス」
「♪ハナ~」

 トランと話していたハナだったが、モトキに呼ばれるコクッとハナが頷き、チリーンを出してフラッシュを繰り出した。
 すると、あっという間に洞窟は明るくなった。

「ちょっと待って!そんなことしたら……!!」
「♪え?」「はい?」

 アクアが止めると、凄まじい数のゴルバットが襲い掛かってきた。

「先に言っておくべきだったわ……。ここはゴルバットたちの気性が荒いところなの!だから、フラッシュを使わないで進むしかないのよ!」
「♪まぁ~なんとなるよな?トラン?」
「モトキはいつも迂闊でヤンス!」

 ギターの先端に止まっているトランはため息をつくと飛び上がり、強烈なエアスラッシュをお見舞いした。
 すると、ゴルバットたちは風の乱れに戸惑い、隙が生じた。
 そこでモトキはある物を取り出した。
 傍から見ればポケモンナビゲーション(ポケナビ)に似ているし、Wiiのヌンチャクにも見える。
 だけど、モトキがそれを振ると、スティックが伸びる。
 それはまるでラジオのアンテナのようであり、指揮者の棒のような物である。

「♪行くぜッ!キャプチャ~ON~!!」

 モトキがノリノリで言うと、コマみたいなものが飛び出した。
 いや、そのコマは誰にも確認できなかった。
 圧倒的な速さで腕を振りぬくとあっという間に、十数匹いたゴルバットたちを大人しくさせてしまった。

「な、何が起きたの!?」

 ゴルバットに襲われて隅っこで怯えていたエレキは何が起こったかわからなかった。
 しかし、アクアはモトキの持っているそのアイテムを見て言った。

「……モトキ!?あんたキャプチャ・スタイラーが使えるの!?」

 キャプチャ・スタイラーとはポケモンレンジャーがポケモンと気持ちを通わせて仲間にするアイテムである。
 ただ、それはフィオレ地方にしか、しかも、ポケモンレンジャーしか持つことが出来ないものといわれている。

「♪ま~ちょっとぐらいなら~できるさ~」

 その隙に彼らは先に進んで行った。



 そして彼らは2階に下り立った。

「鋼の洞窟って何階まであるんですか?」

 ふと、ハナはアクアに尋ねる。

「ここはそんなに深くないわ。3階程度よ」
「で、でも……1階だけでもかなり広かったよ……」

 最後尾を歩くエレキはすでに疲れていた。

「しっかりしなさい」
「ヒィー……」

 アクアに促されてとぼとぼ歩くエレキ。

「♪んッ~?」
「お兄さん……どうかしました?」

 モトキが足を止めたことに気づいたハナはその先を見た。
 そこには数匹のモンスターの群れが行く手を塞いでいた。
 ユンゲラーやゴーリキー、ゴローンと言ったポケモンたちである。

「♪アクアさん~。アレどうすればい~ですか~?」
「もちろん、どうにかして進むのよ」
「♪そっか~ど~にかか……」

 腕を組んで考えていたかと思うと、何かを思いつき、脚を一歩踏み出す。

「(モトキが……)」
「(も、モンスターボールを取った……!?)」

 そして、彼は言った。

「♪それじゃ、ハナ任せた」
「モトキはやらないでヤンスか!?」

 トランにツッコミを入れられながらも、モトキはモンスターボールをバスケットボールを人差し指に乗せてくるくる回すようにして遊んでいた。
 ちなみに、今更な説明だが、トランことペラップはサトシのピカチュウみたいにいつでも外に出ているタイプなのである。
 だから、モトキのボケにはいつもトランが対応しているのである。

「わかりました」
「ちょっと!モトキは本当に戦わないわけ!?」
「♪そ~だぜ!」

 アクアの反論もなんのその。
 終始一貫としてモトキはマイペースを貫き通す。

「いくら何でも、ハナ1人じゃ、あの数はきついでしょう!!」
「♪大丈夫~後ろで応援歌を歌っているから~」
「そんなんでいいわけ!?」
「ぼ、僕も戦うよ!!」
「エレキ!?」

 さすがに女の子一人を戦わせる訳には行かないと、エレキが前に出る。
 いつもはネガティブなヘタレにもかかわらず、果敢に突っ込んでいった。

「る、ルージュラ!お願い!!」

 冷凍ビームを打ち出すが、あっさりと回避されてしまう。
 そして、ゴルバットやら、ゴローンやら、ゴーリキーやら、ユンゲラーたちが襲い掛かってくる。

「し、しまっ……」

 ゴローンの攻撃を避けようとして足を滑らせて、飛ばしてきた岩が腹に命中する。
 さらに、ゴルバットのエアーカッターがエレキを襲う。

「エレキ!!」
「♪だいじょ~ぶか?」
「あらら……」
「う……うぅ……」

 ルージュラも倒されて、エレキ自身も相当の傷を負ってしまった。
 しかし、なお野生のポケモンたちは襲いかかろうとしている。

「それ以上はいけませんよ?」

 すると、ハナがにこやかな笑顔でエレキの前に立っていた。

「ハナ!!危ない!!」

 アクアが危惧するのも無理はない。
 エレキのときと同じく野生のポケモンの一斉攻撃だったのだから。
 だが、ハナは怯んでいなかった。むしろ余裕さえ感じられる。何より、片手には先ほどのお茶があった。
 逆にその余裕とハナの笑顔で野生のポケモンたちは一瞬動きを止めてしまった。

「あら……どうしました?かかってきていいのですよ?(ズズッ)」

 笑顔で言いながら、再びお茶をすするハナ。
 意を決したか、野生のポケモンたちはハナに襲い掛かる。
 だが、その攻撃はハナに触れることすら叶わなかった。
 一匹の凄まじい風がその野生のポケモンたちを全て吹き飛ばしてしまった。
 蝶の姿をしたポケモンのバタフリー。
 まさにハナが持っていそうな優しそうなポケモンである。

「……!!……まさか今のは……『吹き飛ばし』!?」
「はい♪エレキさんの治療の邪魔になるので引っ込んでもらいました」
「え?治療?」

 おもむろにエレキの近くに座ると、ごそごそとバタフリーと何かをしていた。

「何をしてるの?」
「ハナは凄いでヤンスよ!?バタフリーの粉を自在に使って傷薬を作ることができるでヤンス」
「へぇーやるわね」

 大人数のポケモンたちにも怯まない精神力。
 それらを返り討ちにする強さ。
 さらにポケモンの力を使った応用。
 アクアはハナの力に関心を抱いていた。

「大丈夫ですか?エレキさん」
「ううん……」

 エレキの手を握り、意識を確かめるハナ。
 やがて、エレキは目を覚ました。10秒にも満たない時間でである。

「気がつきました?」
「はっ……僕は……あっ!!!!」

 ハナが自分の手を握っていることを知ってや否や飛び起き上がるエレキ。
 その顔はかなり赤い。

「それだけ元気があれば大丈夫ですね。それでは先に行きましょう」

 相変わらず太陽の笑顔で先を歩くハナ。

「あんた、何顔を赤くしてるのよ」
「へ、へ?え、ええ!?あ、赤くしてなんかいないよ!!」
「♪いや~赤くなってたぜ~!もしかして~ハナに惚れたのか~?」
「あんた、彼女がいるくせにいいのかしら?」
「♪へぇ~エレキ~彼女いるんだ~」
「そうそう、エアーっていう天然な―――」
「や、やめてよ……(泣)」

 アクアとモトキの苛めにあって半べそ気味のエレキ。
 そんなことがありながらも、2階を無事に通り抜けていった。



「あんたの妹は末恐ろしいわね」
「♪なんか言った~?」
「あの度胸といい、能力といい、あんたの妹は素晴らしい素質を持っているわ」
「♪ま~な~。なんて言ったって俺の妹だぜ~」
「それはきっと関係ないでヤンス」
「私もトランに同意だわ」
「♪アハハッ~」

 やがて階段を下り終えて、いよいよ最下層の3階に辿り着いた。

「ここにあるメタルコートを取ってくればいいのですよね?(ズズッ)」
「そうよ」

 アクアは頷くけれども、表情は少し硬かった。

「どうしました?(ズズッ)」
「いえ、なんでもないわ」

 お茶を飲みながらもアクアの様子が少し変わったことに気づくハナもある意味凄い。

「(もし、私の時と同じだったとしたらここに……)」

 アクアの予感は間違っていなかった。

「♪トラン~」
「ヤンス!」

 ビュッ!! ブワッ!!

「え?」

 刹那。
 エレキはまったく感づかなかった。
 そうアクアでさえ、気づくのが少し遅れていた。
 何かが『氷柱針』をアクアたちに向けて放ったことを。
 しかし、その攻撃はトランが見事にエアスラッシュの風圧で相殺してしまった。

「なかなかの実力ね。突然の不意打ちにもまったく動じないなんてね」
「誰かいるでヤンス!」
「♪誰かって~トラン~本拠地で会っただろぅ~?」
「へ?」
「モトキお兄さんの言うとおりです。カンナさんですね?」
「あら……いとも簡単にばれちゃったわね」

 すると、カンナが暗闇から姿を現した。

「ど、どういうことですか!?」
「あなたたちを試したのよ。少なくても、この洞窟を突破できるほどの実力を持たないものじゃないと、私たちのメンバーに加わることなんで許されないのよ」
「♪それじゃあ~なんでエレキは入れたんだ~?」
「エレキはアクアの強い要望があってね。特別によ。そして、最後の試験は私とのポケモンバトルよ?」
「なるほど。そういう訳だったのですね(ズズッ)」
「♪さいこ~だなぁ~」
「何が最高でヤンスか!?」
「モトキ、ハナ……言っておくけど、カンナさんの実力は本物よ?私でも勝てるかどうか……」
「アクアさんがそれだけ言うということはきっと強いんでしょうね(ズズッ)」
「お茶飲みながら言うと、まったく危機感を持ってないように見えるでヤンスよ(汗)」
「さぁ、かかってきなさい」
「♪ハナ~任せたぜぃ!」
「またでヤンスか!?」

 相変わらず、妹に任せるモトキ。

「出来るなら、モトキ……。あなたが私と戦いなさい。ハナの実力はさっきの2階の騒動で大体わかっているの。あなたの実力をまったく見てないわ」
「♪え~仕方がないなぁ~」

 少しテンションをダウンさせて渋々前に出るモトキ。

「♪トラン~『ハイパーボイス』~」
「ヤンスー!!」

 大きな声で攻撃する音の技である。
 カンナはヤドキングを繰り出して防御をした。
 直撃をしたにもかかわらず、それほどダメージは受けていない。

「あら?そんなものかしら?だとしたら拍子抜けね。ヤドキング!」

 サイコキネシスがモトキたちを襲う。
 しかし、トランがそれを受け止めてモトキへの攻撃を防いだ。

「モトキには指一本触れさせないでヤンスよ!!」
「♪そんなわけで、『エアスラッシュ』!!」
「ふふ……」

 しかし、先ほどの氷柱針を相殺したこの攻撃もヤドキングには届かなかった。
 光の壁で受け止めたのである。

「♪あ~効かないのか~♪」
「今度はこちらから行くわよ!ヤドキング!ルージュラ!『吹雪』!!」

 息を吸い込んで2匹の強力な吹雪が洞窟全体を吹き付けた。

「さ、さ、さ、寒い……」
「さすが……カンナさんね……(ブルブル)」

 ブルブルと震えるエレキとアクア。

「なんだか眠くなってきちゃいました……」
「ハナ!?寝ちゃダメよ!?」

 この状況下で眠気に襲われるハナ。

「♪いい風だ~」
「いい風なんでヤンスか!?」

 この状況下で平然のモトキ。
 反応はそれぞれである。

「♪だけど暖かい方がいいなぁ~トラン~例の技~行ってくれ~♪」

 トランは頷いて、大きく息を吸い込んだ。
 そして、一気に大きな声を放出した。

「ヤ―――ン―――ス―――♪♪♪」

 するとどうだろうか。『ヤ』『ン』『ス』『♪』×3の形をした物理的なものがカンナたちに向かって炸裂した。
 ルージュラとヤドキングに炸裂。
 だが、カンナはかろうじてかわしていた。

「凄い技ね……。文字を飛ばすなんて……」
「♪トランのオリジナル技~『トランペットラップ』だ~♪」
「その技のネーミングはどうよ……」

 アクアが技名に突っ込む。

「(だけど……凄まじい威力だったわ……。まさか、吹雪を押しのけて一撃でカンナさんのヤドキングとルージュラを倒すなんて……)」
「わっ!エレキが凍ってるでヤンス!!」

 やや小さい声でトランが言う。
 まさに、エレキは氷漬け状態。

「しっかりしなさいよ!!」
「でも、まだ、終わってないわよ」

 カンナはパルシェンを繰り出した。

「このポケモンで終わりにしてあげる」
「♪終わり~?終わりなんてないのさ~。世界は~回る~そう、全ては円になって回るだけなのさ~」
「こんな時にそんな哲学的なことを言っても説得力無いでヤンス……ゴホッ、ゴホッ」
「トラン?」

 咳き込むトラン。

「この技を使うと、声が出しにくくなるでヤンス……」
「その症状は、カラオケで歌い続けるのと同じ症状なのです(ズズッ)」

 新しいお茶を出して飲み始めるハナ。

「モトキ!!気をつけなさい!そのカンナさんのパルシェンは強いわよ!!」
「♪そ~か?行くぜ~?」

 すると、モトキが繰り出したのは一匹のポワルンだった。

「ポワルンね……。天候を変化させなければいいことよ!!パルシェン!!『とげキャノン』!!」

 ドガガガガッ!!

 硬い突起物を放ちまくるパルシェン。
 それは何のためらいもなくモトキとポワルンに放たれたが……

 ズドンッ!!

「!?」

 とげキャノンがどのようにして弾き返されたか、ましてパルシェンが吹っ飛んだか、確認が出来なかった。
 音がしたかと思うと、パルシェンは大きなダメージを負っていた。
 だが、かろうじて戦える状態ではあった。

「な!?何をしたの?!」
「♪何って~『ウェザーボール』だけど~?」
「(とげキャノンを弾きながらパルシェンに当てたこの技がウェザーボールですって!?どう見ても別次元の技よ!?)」
「♪それなら~ポワルンの真骨頂行くぜ~天候は『スコール』!!」

 そういうと、洞窟内にもかかわらず、雲が立ち込めてきた。
 しかし、ただの雲ではない。電気を纏った黒い雲……雷雲である。
 すると、一斉にして落雷が落ち始めた。
 もちろん無差別に。
 アクアやカンナは慌てて落雷をかわし始めた。

「モトキ!!あんた、何迷惑な技を使ってくれてるのよ!」
「♪わりぃ~でも、この一撃で終わるから~待ってて~」
「(来る!?それにしても、あのポワルンの姿……見たことないわ!)」

 ポワルンは4種類の姿が確認される。
 太陽、雪雲、雨玉、そして、ノーマルである。
 だが、今、モトキのポワルンがなっている姿は額に雷マーク、太鼓を背中にくくりつけた姿だった。

「♪『ウェザーボール』だ~!!」

 チュド―――ンッ!!!!

 そして、洞窟は崩壊した。



「♪わりぃ~!洞窟壊しちゃったぜ~♪」
「あんた、やり過ぎよ!!」

 パコパコモトキの頭を叩くアクア。
 彼らは洞窟を脱出していた。

「エレキさん?大丈夫ですか?」
「……(気絶)」
「きっと、火で炙れば、目を覚ましますよね(ズズッ)」
「ハナ!何危険なこといってるでヤンスか!」

 すっかり声が元通りになったトランがハナを突っ込む。

「(モトキとハナ……。この二人……凄まじい強さを持っている。私たちの戦力になること間違いないわ……)」

 考え込んでいたカンナがモトキとハナに手を差し伸べた。
 それを4人と1匹が見る。

「私がテツマさんに言うわ。モトキとハナ……あなたたち二人をメンバーに入れることを。よろしくね。二人とも」
「はい。よろしくお願いします」
「♪おうよ~」

 ハナとモトキが頷く。

「大変なことになりそうね……」
「……(気絶)」
「あんた(エレキ)は早く起きなさい!!」
「ぐふっ!!ヒィー!!」

 蹴られて、目を覚まして、速攻逃げるエレキ。
 こうして、アクアの大変な一日は終わったという。



 モトキとハナがメンバーに加わって、だいぶ日が経ったある日のこと。

「モトキ!エレキは知らんか?」

 このメンバーの中でも最年長者であるテツマがモトキを呼んでいた。

「♪知りませ~ん」

 相変わらず、ギターを片手に話すモトキにテツマはしかめっ面をしていた。
 要するにやかましいらしい。

「我輩が喋っている時ぐらい真面目に話しせい!!」
「♪話してますよ~」

 ギターを背中に背負ってもそれは変わらない。
 それがモトキクリオティー。

「まぁいい……。モトキ。お前、エレキを探しに行って来い」
「♪何かあったんですか~?」
「最近……よからぬ噂が流れているのじゃ。もしかしたら近々、我輩たちは襲われるかもしれない。だから、あいつを探してきてくれい」
「♪他の人に頼めばい~じゃないですか~。ほら~あの最近入った“あの2人”とか~」
「“あの2人”は、アクアと一緒に人探しをしておる。それに我輩はお前に頼んでいるのじゃ」

 テツマはモトキを鋭い眼光で睨む。

「♪ま~ま~そんなに張り詰めないでくださいよ~。わかりました~」

 ひょうひょうとモトキは引き受けて、外に出て行こうとした。
 だが、1人の男がモトキの前に立っていた。
 年は30代くらいの暗そうな男だった。

「俺はお前を信用したわけじゃねぇ。何でテツマさんがお前なんかを仲間に入れたかが不思議だぜ」
「♪まぁ~シラフさん~理由なんてどうだってい~じゃないですか~」
「どうでもいいだと……?それなら、お前は何のためにこのメンバーに加わった!?」
「♪い~じゃないですか~」
「怪しいんだよ!信用できねえんだよ!……まあいいさ。そのうち俺がお前らの化けの皮を剥いでやる……」

 すると、シラフはその場から姿を消してしまった。

「(何の為……か……)」
「モトキ?どうしたでヤンスか?」
「いや……なんでもない。♪さ~さっさとエレキを探してきますか~」
「……ヤンス?」

 何か違和感のあるモトキに首を傾げるトラン。
 そして、彼らは外へ飛び出していた。



 目的か……
 そんなこと考えたこともなかった……
 ただ、歌っていれば幸せだと考えていた……
 でも、あの人と出会って、考えが少し変わった気がする……
 あの人にもう一度会いたい……
 そして、ありのままの自分を打ち明けたい……
 それがどんなことになろうとも……
 それでいいよな?イチゴ姉ちゃん……



 だが、その運命の再会はじりじりと迫っていたことをモトキは知らない。



 たった一つの行路 №077
 第二幕 Dimensions Over Chaos
 序曲~始まりのうた~(後編) 終わり



 To Be Continued Thirteen Cards VS Sky Guardian


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Last-modified: 2015-03-23 (月) 20:55:31
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