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たった一つの行路 №072

/たった一つの行路 №072

 巨大モンスターが現れる前、我々は平気で森を切り倒して動物たちを迫害して生活をしてきていた。
 しかし、そんなある時にどこからともなく巨大なモンスターが我々の全てを壊していった。
 我々は絶望して、モンスターにおびえながら生活をすることを余儀なくされた。
 100年経ったある日、転機が訪れた。
 スノーセとミヤビと言う二人の若者が『封印の玉』と呼ばれるものを持ってモンスターを封印したのだ。
 その活躍に全ての者は感謝して、彼らを奉るようになった。 
 その後、二人は結ばれて二人の子供に恵まれた。
 男の子はサファイアの瞳をした子でそのままスノーセと言う集落の長を君臨し続けた。
 しかし、もう一人のエメラルドの瞳を持った女の子はある時、家出をして二度とスノーセには戻らなかったと言う。
 モンスターが現れたのは我々人間のしてきたことに過ちがあったからだと思う。
 だから、私はこの教訓を永遠に伝えていきたい。
 そして、いつまでも人間が平和に暮らしていくことを私は願いたい……。
 二度と……あのモンスターが現れることの無いように……。
 でも、それでもあのモンスターが現れたときは、彼らのその子孫が再び封印するだろうと思っている……。



 たった一つの行路 №072
 第二幕 Dimensions Over Chaos
 漂う日々たち⑧ ―――Seal Day―――



「きれい……」
「うん……きれいだ……」

 祭りの夜。
 セミナの西の川原。彼らはいつもここで星を見ていた。

「ねえ、リュウ君」
「なあに?」
「星って何できれいなのかなぁ……?」

 ナミネの純粋な質問。
 リュウは頷いて自分自身の答えを考えてみる。

「朝には太陽が、夜には月が僕たちを照らしてくれるんだ。でも、月の明かりだけでは寂しいときもある。たまに月が出ないときもあるよね?」
「月が出なかったときは暗くて怖かったよ……。でもリュウ君がいてくれたから……」

 ナミネは頬をピンクに染めていった。

「僕はこう考えるよ。星たちは僕たち自身なんだって」
「え?」

 ナミネは首を傾げる。

「星の数はたくさんあるでしょ?そして、生きている僕らもたくさんの人が生きている。だから、僕たちは星なんだと思う」
「うん……」
「僕たちは一生懸命に生きている。一生懸命に生きている人は輝いている。だから、星はそれを感じとってキレイに輝いているんだと思うよ」
「私たちは星で……星は私たちか……それっていいかも」

 手を口に当てて笑顔でリュウを見る。

「私たちは一生懸命に輝くのね……あっ!!」
「え?」
「流れ星!!」

 慌てて指さすけれども、一瞬のうちに星は消えてしまった。

「ねえリュウ君……」
「なあに?」
「あの時言ったよね?『遠い世界に行って、離れていても、星になっても私に出会えますように』って……」
「うん。最初にこの川原で星を見たときだね」
「覚えていてくれたんだ!」
「当たり前じゃないか!忘れやしないよ」

 そして二人の視線が絡み合う。

「もしも……もしも……だよ?」
「なあに?」
「遠い世界に行って、離れていても……星になって私に会いに来てよ……」

 そのナミネの言葉はどこか寂しそうだった。

「うん」

 ナミネの目を見たまま頷く。

「約束だよ?」
「約束さ!!」

 ギュッと二人は手を握る。手をつないだまま彼らは、並んで仰向けになり寝転んで星空を見続けていた。
 その夜は流れ星の集団……流星群が落ちたようだ。
 その星たちは刹那に消えていったのだった。



「美味しいラーメンには……メンマとナルトとチャーシューとノリと麺が……後は足りないのは……なんだろう?何?何だ?……まさか……空気!?」
「起きて……お願い……」

 グースカと口から涎をたらして寝るのは毎度同じみのネス君だ。

「うっ……くわっ!負けた!」
「キャッ!」

 ネスはいきなり飛び起きて葉っぱの布団を蹴散らした。
 少女は、とっても驚いた。

「はぁ……はぁ……くっ!あと少しでラーメン勝負に……あれ?夢か……」
「(……一体どんな夢を見ていたんだろう……?)」
「あれ?ナミネちゃん?」

 ここでようやくネスは少女……ナミネの存在に気がついた。

「どうしたの?」

 ただでさえ、ちぢれている頭をさらにちぢれさせてネスはナミネに聞いた。

「リュウ君……見なかった……?」
「リュウ?昨日ナミネちゃんと一緒じゃなかったの?」
「ええ……でも、朝起きたらリュウ君がいなくなっていて……。何も言わずにリュウ君がいなくなったことなんてなかったから……」
「朝起きたらって……あれッ?今は?」

 慌てて外を見ると、太陽がほとんど南に近づいているところだった。

「ザク……何で起こしに来てくれなかったんだ!?」

 いつもは起こしに来るザクに文句を言うはずなのに、いないときはいないときで文句を言うネスであった。

「だから、ネス君のところに行けばリュウ君がいるかなと思って…………」
「ごめん……僕も知らないや……。それなら一緒に探そうか!それにしてもいつもなら起こしに来るはずのザクやガブ、それにエリーまで来ないのはおかしいよ……」
「うん」

 そういって、ネスとナミネと外で待っていたキバは飛び出していった。



「はぁはぁ……」

 黄色いドレスの少女……チロルが息を切らして森を走っていく。

「あの男……一体何者なの!?……それに……どうすればいいの……!?」

 スノーセの中でも指をおりの知性を持ったチロルだが、それでもどうすればいいかわからずに慌てていた。

「こんなときこそ……落ち着かなくちゃ……でも、私一人じゃ……」

 そんな時、ふと右腕を見た。その腕には昨日、ネスにプレゼントしてもらった貝殻のブレスレットがあった。

「そうだわ……。唯一の希望は……ネス君……。あなたしかいない……」

 周りを見て、音を出すのに最適そうな“葉っぱ”を千切って、草笛を吹いた。
 プゥー!とあっけらかんとした音が響いた。
 そして、おおよそ30秒後に彼は来た。

「チロル……どうしたニ?」
「ターボ君……おねがい!私をウェノン……ネス君のところまで連れて行って!」
「イヤだニ」
「な、何で?」

 予想外の発言に慌てた。

「今、マレンを探しているニ。乗せていく暇はない二」
「じゃあ、私が呼んだとき何故来たの?」
「きまぐれだニ」

 ターボは一貫として気まぐれな性格を通すつもりらしい。

「それなら、きまぐれで私を乗せてください!急いでいるんです!このままでは大変なことになりかねないのです!」
「大変なことかニ?」
「そうよ!」

 チロルはその必死さを目でターボに訴える。

「仕方ない二…………わかったニ。乗るニ!」
「ありがとう!出来るなら、全速力でおねがいします」

 ターボはチロルに言われるまま、ウェノンへと進路をとったのであった。



「ついに……来るときが来たようじゃね……」

 リュウの祖母、アマネが部屋の中で水晶玉を見通していた。

「あの連中が……ついに動き出したようじゃね……。そして、ワタシャ止めなければならない……。禁忌に手を伸ばそうとしておる者たちと……」

 アマネは近くに立てかけてあった写真を見る。そこに写っているのは、若かった自分の姿と数人の男女の姿があった。
 周りを見て、隠してあった3つの小さな玉……いや、ボールを持ってきた。

「ともかくリュウ……戦いが……始まるぞ……」



「これは!?どうなってんだ!?」

 ウェノンの集落をネスは走り回っていた。しかし、ネスがそこで見たのは信じられない光景だった。

「な、何でみんなの石像があるんだ!?」

 どれだけ探そうとも、ウェノンの人たちが見つかることはなかった。
 代わりに本物そっくりに出来た石像がポツポツと放置されていた。
 その表情は、驚いていたり、目を瞑っていたり、気絶していたりというものばかりだった。
 ネスは嫌な予感がして急いで長の家にたどり着いた。つまり、エリーの家である。

「エリー!!ガブ!!いるか!?」

 ネスが勝手に入って中を探してみる。
 でも、誰も見つかることはなかった。

「一体どこへ……?」

 何も手がかりが得られず、ネスは外に出てきた。そして、下を見た。

「……ん?影がどんどん大きく……?上か!?」

 上から来たのは、大きな翼を持ったモンスター、ターボだった。

「ネス君!」
「ち、チロルさん!?どうしてここに!?」
「ネス君ッ!!!!」

 2度目の呼びかけで、チロルはしゃがみこんでネスに抱きついた。

「えっ!?ちょっと……チロルさん!?」

 いきなりの抱擁に顔を赤くするネス。
 初めての感覚にとってもいい感触を覚えた。

「おれっち邪魔のようだから、マレンを探しに行く二」

 そういってマレンは飛び立っていった。

「私……どうしたらいいかわからなくなっちゃったの……」
「一体何があったの!?」
「実は…………!!」

 チロルはネスを引っ張って茂みの中へ導いた。

「な!?どうしたの!?」
「隠れて!」

 今までチロルたちがいた場所に現れたのは、ウェノンの長、エリーの父親だった。
 だが、彼だけではなかった。

「君は一体何なんだ!?この集落の人たちに何をしたんだ!!」
「FUFUFU……あなたに教える義務はありませんYO!やりなさい!!」
「ザンクス!?」

 チロルは口を押さえて驚きを顔に表わした。

「誰?」
「スノーセの見張りの隊長……そして、私のパパの側近よ……」

 その男、ザンクスはボールの中からトラのような黄色と黒の縞々のようなモンスターを繰り出した。
 すると、エリーの父に近づいて殴り飛ばした。
 そのまま木にぶつかって気絶してしまった。

「逆らわなければもっと楽にしてあげたのにNE」

 すると、男は丸い不思議色の石をぶつけた。
 そのまま、エリーの父はみるみるうちに体が固まっていった。

「なっ!?」

 そして、なす術もなくエリーの父は石像になってしまった。

「あの石は!!」
「あの石って……!?チロルさん何か知っているの!?」
「スノーセのみんなも、あの石の影響で石にされたのよ……」
「えっ!?」
「ただ、それをやったのは氷を吐き出すモンスターが仲間にいる紳士よ!たった、一人にスノーセは壊滅させられたわ……」
「たった一人に……。そして、あいつは……」

 ネスはじっと、ザンクスの顔を見ていた。

「終わりKA……他愛もないNA!だが……そこにいるのはわかっているYO!!出てきなYO!!」
「!!」

 すると、トラのようなモンスターは、電気を放出してネスたちを狙ってきた。
 2人はかわすために茂みから飛び出してしまった。

「おやおや……これはこれはチロル姫君ではないですKA!!」
「ザンクス……あなた何をやっているんですか!?」
「何って……?これが私の本来の目的ですYO?」
「本来の目的!?」
「この石のエネルギーを最大まで溜めるのためですYO!!」
「エネルギー?」
「この石は相手の魂を吸い取るソウゲドの石ですYO。心身共に弱っている人間、または一定以上気持ちが高まっている人間が触れると人間に影響を及ぼす石ですYO。
 まぁ、心身弱っている人間にやったほうが楽でしたからNE。まさか、想いを吸い取られた人間が石になるとは思いませんでしたけど……関係ありませんNE!!」
「い、一体何のため!?」
「それは、チロル姫君といえども教えるわけにはございませんNE!」
「…………」
「そして、私はあなたたちに『スノーセ』と『ミヤビ』の子孫には消えて頂きたいですNE!」
「『スノーセ』と『ミヤビ』……誰それ??」

 目を点にしてネスが尋ねる。

「『スノーセ』と『ミヤビ』……200年前に巨大モンスターを封印した人たち……私たちのご先祖様よ」
「巨大モンスターを封印した人たちか……そして、僕たちの先祖か……へっ?」

 可笑しな声を上げてネスはチロルを見た。

「“僕たちの先祖”!?どういうこと!?」
「ネス君……あなたも、私と同じ、救世主の血を引くものなのよ……」
「待ってよ!!僕は違うよ!だって……」
「いいえ、そのはずよ……あなたのその瞳の色は間違いないもの……」
「瞳の色がどうしたっていうの!?」
「エメラルドとサファイアの瞳を持つ子孫はスノーセとミヤビの子供であると言う証なのですYO」
「!?」

 ザンクスの言葉に驚くネス。

「FUFUFU……」

 そして、突然ザンクスは笑い出す。

「私は全く昔話を信用していませんでしたYO!『巨大モンスターが再び解き放たれても、その子孫が再び封印する』なんてことありえないことだと思っていましたからNE!!
 しかし、実現してしまった……。つまり、何をしでかすかわからないあなたたちを放っておくわけにはいかないのですYO!!」

 ザンクスが指を鳴らすとトラ色のモンスターはチロルを狙って電撃を放った。

「きゃあ―――!!」
「ち、チロルさん!!」

 凄まじい電撃を受けてドサッとチロルは倒れる。
 ネスは駆け寄って抱きかかえて揺さぶった。

「チロルさん!!しっかりして!!チロルさん!!」
「次はお前DA!!」
「!!」

 モンスターは接近して雷を纏った拳でネスを狙った。

「うわっ!!」

 チロルを抱えたまま横に飛びのいて攻撃をかわす。

 チュド―――ン!!

 凄まじい音がして地面に窪みが出来た。

「(じょ……冗談じゃないよ!!あんなの受けたら……)」

 冷汗が流れ落ちる。
 どうすればいいかわからず、焦りだけが募っていく。

「そういえば、あなたたちと似たような仲良しカップルも封印してあげましたYO!お楽しみのところを邪魔したようでしたが、関係ありませんNE!」
「仲良しカップル……?まさか……リュウとナミネちゃん!?」
「名前なんて忘れましたYO!もう、2人の魂も石の中ですYO!」
「くっ……お前……その石を渡せ!!」
「考え無しに突っ込みますKA?バカですNE!!」

 トラのモンスターがザンクスに近づくネスを遮った。

「!!」
「やれ!!」

 ゴスッ!!

 腹の辺りを深く突かれて吹っ飛んだ。

「うぅ……くそっ……」
「終わりDA!!」

 ザンクスがネスに石を近づけていく。

「させないニ!!」
「!!」

 上空からの炎攻撃をザンザスは後退してかわした。

「ターボ……」

 空から舞い降りてネスの前に立つのはターボだ。

「嫌な予感がしたニ……。それに、どこを探してもマレンが見つからなかったニ」
「マレン?あぁ……マレンって奴だNA。さっき言ったカップルというのはそいつDA」
「な……なんだって!?」
「マレンがどうしたニ?」

 ネスに聞くターボ。

「マレンという男はこの中だということだYO」

 ザンクスが石を示して教えた。

「マレンはあの中ニ!?マレンを返すニ!!」
「ターボ!?」

 普段はきまぐれのターボ。
 しかし、仲が良かったマレンが大変な目に遭っているときはさすがにきまぐれとかいわないようだ。
 口を大きく開けてザンザスに噛み付こうとする。
 だが……

 バキッ!!

「ニッ!?」

 ターボの横っ面を殴り飛ばしたのがいた。それはトラのようなモンスターだ。

「ふっ、アレをやってやるんDA!!」

 トラのモンスターは片手に電気を集めて至近距離からそれをぶつけた。
 凄まじい放電と爆発が起きてターボはいくつもの木をなぎ倒してぶっ飛んでいった。

「た……ターボ!?」
「他愛もないですNE……」

 そして、ネスに近づいていくザンクス。

「もう邪魔者はいないNE。お前らを封印して終わりDA!!」
「(くっ……立て……立ってくれ……僕の体……動いてくれ……)」

 動かない体がダメージの大きさを物語っていた。ネスの思いも虚しく、ザンクスは一歩、また一歩ネスに近づいてくる。

「ふっ……終わりDA!」

 ザンクスが石を投げる。
 ネスは目を瞑った。

「ネス君!!」
「えっ!?」

 その時、風が吹いたような気がした。
 それと同時に暖かいぬくもりが感じられた。
 恐る恐るネスは目を開いてみた。

「ち……チロル……さん?」
「ネス君……」

 ネスを押し倒して、チロルが自ら石に当たりに行ったのだ。
 チロルの体が固まっていく。

「ち……チロルさん!!」
「ネス君……聞いて……あなたは正真正銘巨大モンスターから世界を救った救世主の子孫なの……だから、私かあなたがあいつを倒さなければならない……でも、私じゃ何も出来ない……」
「そんな……チロルさんができないのに僕に出来るわけないじゃないか……チロルさん……消えないでよ!!」

 チロルの手をぎゅっと握り締めるネス。

「ネス君……自分を信じて……あなたならきっとできる……」

 泣くネスの唇にそっとチロルは自分の唇を重ねた。
 それはほんの一瞬の出来事だった。

「チロルさん……」

 チロルは動かなくなってしまった。
 でも、彼女は絶望していなかった。
 証拠に彼女は石になっても笑顔だった……。



 つづく


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Last-modified: 2015-03-11 (水) 21:10:42
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