―――ピース14年。オレンジ諸島への連絡線。
船の甲板に2人の男女がいた。
「ねぇ……エース。今日が何の日だか覚えている?」
「ええと……忘れちゃった」
「ちょっと!忘れないでよね!今日は……」
「初めて会った日だろ。忘れるわけないじゃないか……」
「もう……」
この2人、エースとライトはオレンジ諸島を旅していた。
「この日になるとホクト地方での旅を思い出すよ……」
たった一つの行路 №063
エースとライトの出会い(後編)
―――ピース11年。ホクト地方のとある山。
「はぁ……山はきついな……」
モンスターボールがデザインされてある青いバンダナにハーフパンツにジャケットといった服装の少年、エースが険しい山道を歩いていた。
「歩くのは嫌だな……自転車が欲しい……」
エースは見た感じ、金を持っていなさそうである。
「ああ……おなかも減った……食料……もない……」
エースは意識が朦朧としてきた。
「俺はこんなところで死ぬのか……?」
そのとき後ろから声がした。エースは後ろを振り返った。
するとそこには少女がいた。
その少女の格好といえば、ポケモン公認のキャップを被りつばを後ろに回していて、白いランニングシャツで下はスパッツである。
結構服装はボーイッシュな感じでもあるが、その少女自体はかなり可憐な少女だった。
もちろんこの少女こそが、今、エースと旅をしているライトである。
ライトが何を言っているか聞き取れなかったが、近づいてきてその言葉の意味を理解した。
「やっぱりあなたトレーナーね。それならポケモンバトルよ!」
ライトはエースにポケモンバトルを挑んできた。
「は、腹減ったから……何か食料くれたらいいよ……」
エースは腹が減っていてそれどころではない。
「嫌よ!勝負が先!なら、バトルで私に勝ったらいいわよ!」
「本当か!?」
その話を聞くと急に元気を取り戻した。
「よっし。やろう。ポケモンバトル!」
「ルールは1対1でいいわね?」
「ああ!」
「ちなみに聞くけどあなたバッジはいくつ?」
「へ?ああ、一応1つ」
「そう。(私は3つ……私のほうが有利ね)」
二人はポケモンを出した。
2人の出したポケモンとは、エースがひねずみポケモンといわれている『ヒノアラシ』で、ライトがひよこポケモンといわれている『アチャモ』である。
両方とも初心者用のポケモンであり、どちらも炎系である。そして、どちらも最初のポケモンだった。
「よし、行くわよ!アチャモ!でんこうせっか!」
「ヒノアラシ、動くな」
アチャモは素早く動いているのに対し、ヒノアラシはまったく動かない。
「そして『つつく』!」
アチャモはヒノアラシに接近した。
「右だ」
アチャモの攻撃は紙一重でかわされた。
「え?確実に当たったと思ったのに……。もう一回よ!」
アチャモはまた、『でんこうせっか』から『つつく』攻撃をした。
「左だ」
しかし、ヒノアラシはまたかわした。
「当たるまで何度もやってやるわ!アチャモ!『でんこうせっか』から『つつく』を続けて!」
アチャモは何度も攻撃を加えようとした。
しかし、何度やっても攻撃は当たらない。
―――10分経過。
「なんで当たらないの?」
ライトとアチャモは疲れてきた。
しかし、エースとヒノアラシは全く疲れている様子はない。
「ヒノアラシ、『煙幕』だ!」
エースがやっと行動に出た。
ヒノアラシは指示通りに煙幕を張った。
「(打撃攻撃は無謀ね)ならば、アチャモ!『ひのこ』よ!」
そう言うとアチャモは火の粉を煙幕の中へ飛ばした。そして、煙幕が晴れるまで火の粉を飛ばし続けた。
しかし、煙幕が晴れた頃、そこにヒノアラシの姿はなかった。
「え?穴?まずい!アチャモ!そこから離れて!」
ヒノアラシが居た場所に小さい穴があった。エースの作戦に気づいてすぐに指示を出した。
「ヒノアラシ!今だ!」
攻撃するヒノアラシと避けるアチャモ。
結果はヒノアラシの方が速かった。
アチャモはヒノアラシの『穴を掘る』攻撃を受けてダウンした。
「そ、そんな……負けちゃった……。」
エースは勝ったと思った瞬間に倒れた。
「きゃ!大丈夫!!??」
「腹減ったから飯くれ……」
エースの言葉はそれだけだった。
「あなた、本当にジムバッジ1つなの?」
「ああ、そうだけど……」
「信じられないわ!その実力ならもう6つくらいはバッチをゲットできるわよ」
「そうなのか?俺はジム戦はただ自分の育てたポケモンがどれくらい育ったかを試したいから出ている訳でジムがある町に行くたびにジム戦をしているわけじゃないんだ」
エースはライトにもらったパンを食べながら話をしている。
「そうなの……私はまずこのホクト地方の大会に出てみたいの。あわよくば優勝も狙っているのよ!」
「あ、そうなんだ。がんばって」
エースはあまり興味がなさそうに言った。
「そうだ!なら、私と一緒にホクト地方をまわらない?一緒に旅すると楽しいわよ!」
「え?」
「私はポケモン勝負をして初めて負けた。だから、私は嫌と言ってもあなたに勝つまでずっとついて行くわよ!」
「(やれやれ……この女の目は本気だな……どうやら嫌と言ってきてもついて来そうだ……)分かったよ。いっしょに行こう」
「じゃあ!よろしく!私の名前はライト!」
「俺の名前はエース。よろしく」
そして、エースとライトはその数週間後にケンジと出会った。
―――ある谷がある場所。
エースとライトとケンジは谷道を歩いていた。
「ちょっと!何でこんな道しかなかったのよ!」
「仕方がないだろ……。道に迷ったんだから」
三人は壁に這いつくように歩いている。
とっても深く、底が見えないような崖だった。
一歩でも踏み外して、落ちてしまったら、痛いで済まないような高さであることは三人とも分かっていた。
「え?ああ!!」
ライトが一歩前に踏み出した瞬間に足場が崩れてしまった。
「くっ!ライト!捕まれ!」
エースはとっさに手を出しライトの手をしっかりつかんだ。
しかし、ライトの落ちる勢いに負けて、エースの岩場まで崩れてしまった。
ケンジはどうすることもできず、ただ呆然としていた。
「エース!!ライト!!」
そして、暗い谷底へと2人は飲み込まれていった。
「チルット!お願い!」
ライトはチルットを出した。
チルットで落下を防ごうと試みたが、2人を持ち上げる力なんてあるとは思えない。
そんな事をしているうちに地面が見えてきた。
「ライト、ワカシャモを出せ」
エースはマグマラシを出しながら言った。
「え?なんで?」
「いいから!地面に向かって全力で火炎放射をするんだ」
「あ!そういうことね!」
エースの考えは火炎放射をぶつける事により落下の勢いを殺すということだった。
よって無事にエースは着地した。
ライトもエースに習いワカシャモの火炎放射で着地することができた。
「さて、これからどうしようか……」
「ケンジは上なのよね……」
「先に行っててもらおうか……でも伝える方法が……」
「あるわよ」
そう言ってライトは紙とペンを出して、何かを書いたあと、チルットにつけて飛ばした。
「なるほど、チルットに手紙を届けてもらうってことか」
「さあ!私たちも行きましょう!」
2人は町の方角へ向かって歩き出した。
しかし、エースはライトの様子がおかしいことに気づいた。
「(少ししか歩いてない割にはかなり汗をかいているように見える……)ライト、どっか悪いのか?」
「べ、別にないわよ!」
エースはライトの足に目を向けた。
「それじゃあ、この足は何だよ」
そう言って、エースはライトの右足を触った。
「イタっ!」
「やっぱり……。ちょっと見せてみろ!」
足を見たところ、ライトの右足は赤く腫れていた。
「……!どうしたんだ!このケガ……」
「さっき……落ちて着地した際に足をひねっちゃったの……」
「どうしてこんなになるまで言わなかったんだ!?」
「エースに迷惑かけたくなかったのよ……」
「腫れがひどくなって、歩けなくなったら迷惑じゃすまないぞ!」
「ごめん……」
エースはすぐに応急処置を施した。
「はい。応急処置終わり!歩けるか?」
「なんとか……」
「…………。肩をかしてやるよ!それなら大丈夫だろ」
「う、うん。それなら大丈夫よ」
エースはライトを支えて歩き始めた。
「ねぇ……エースの夢って何?」
「いきなりなんだ?」
「べ、別に!聞いてみただけよ!」
「俺の夢はまず、一人前のポケモンブリーダーになることかな?」
「ブリーダー?」
「ポケモンを育てる人のことさ!でもそのあとは考えていない……」
「素敵な夢ね。……私はまだないの……」
「…………」
「ホクト大会に出ればなにかみつかるかなぁと思って……。でも、実際私は親から逃げたかっただけなのかもしれない……」
「親からって?」
「私の親はジムリーダーなの……。しかも、パパはかなり古い考えの持ち主なの……。その性格が嫌になって逃げ出したのかもしれない……。
でも、ホクト大会に出るにはパパにも勝たなければならないのよね。やっぱり逃げることはできないのよね。私はパパに勝って……」
「パパか……」
エースは突然寂しい顔をした。
「俺には本当の家族はいないんだ」
「え?どういうこと?」
「俺は実は……赤ん坊の頃に捨てられていたんだって……。しかも、それを教えてくれたのは旅立つ直前だった。本当の家族がどこにいるか俺にはわからない……」
「きっと見つかるよ!」
「…………」
2人は今まで考えていたこと、夢、家族、などのことをそれぞれ話していった。
これらの騒動は2人の中を一層強めることだったに違いない。
そして、エースとライトは無事にケンジと合流することができたのであった。
―――一週間後。
エースたちはジムのある町に来ていた。
その町とはライトの父親がジムリーダーをやっているのである。
現在、ライトのバッジは7つ。
エースは3つである。
つまり、ライトはあと一つで大会に出ることができるのである。
エースたちはジムの前にきた。
「で、ライト!ジムに挑戦するんだろ?」
「ええ……するにはするんだけど……まだ心の準備が……」
「入ってしまえば同じさ」
エースが促していると、
「ライト?ライトじゃない!」
後ろから呼びかけられた。
「ママ!!」
「お帰り!」
どうやら、ライトを呼んでいたのはライトの母親だったようだ。
「今までどこに行ってたの?」
「ジムバッジを集めていたの。もう7つよ!あと1つでホクト大会への出場ができるのよ!」
「それはすごい!パパにも報告しなくちゃね!!ところで……彼らは誰?」
ライトの母親はエースとケンジを差した。
「エースとケンジよ。いっしょに旅をしていたのよ!!」
「…………。君たち……パパが来る前に隠れた方がいいわ」
「「へ?」」
エースとケンジは同時に首をかしげた。
「なんで?ママ?」
ライトもいまいち理由がわからない。
「いいから!早く……」
「お―――!ライト!お帰り!!」
「パパだ……」
ライトの母親がそんなことを行っている家にライトの父親が現れた。
「どうだい?旅の成果は?」
「バッチリよ!バッジも残り1つ!仲間もできたんだから!」
そう言ってライトはケンジとエースのほうを見た。
「何だと―――!!!!それは許さん!」
「え?」
ライトは父の急変により驚いた。
「知らない男と旅をするなんて断じて許さん!!!旅をしていいのはワシが認めた者だけだ!!!」
「だから言ったのよ……」
ライトの母はあきれて言った。
「というわけで、そっちの2人!バトルしろ!どちらかが勝ったらライトと旅をするのを許してやる!!」
「ライトの言うとおり古い考えの父親だな……」
「(何だか話がややこしくなってきたよ……)」
そう言いつつ、ジムの中に入っていった。
中でまずケンジがマリルでバトルをした。
ライトの父のポケモンはブーバーだった。
タイプはケンジの方が有利だった。
しかし、明らかにケンジはバトルのほうは経験不足のため、一撃も与えられずに負けてしまった。
「負けちゃった(ポケモンのほうも鍛えておくんだったな……)」
「なんだ?もう終わりか?なら次はお前だ!!」
ライトの父親はエースを呼んだ。
「ちょっと聞いていいですか?」
「何だ!」
「ライトの旅なんだから、別に父親であるあなたが口出しすることはないと思いますが……」
「ワシはどこの馬の骨とも知らない奴らと一緒にいられるのが嫌なんだ!ましては弱い奴らならなおさらのこと!かかってこんか―――!!」
「やるしかないか……。まあいいや、ちょうどいい……」
そう言ってエースはヒノアラシの最終形態のバクフーンを出した。
勝負はとても激しかった。
エースはバッジ3つだが、その3つジム全てに圧勝している。
そのエースとライトの父親の実力は最初は互角に見えた。
「ふん!なかなかやるじゃないか!ブーバー!火炎放射!」
ケンジのマリルを一撃で倒した炎を放った。
その炎はバクフーンを貫いた。
「何?」
貫いたのは幻だった。
「影分身か?」
ライトの父親がそう思ったときブーバーの下からバクフーンが飛び出し強烈な一撃を与えた。
「ブーバー戦闘不能!この勝負バクフーンの勝ち!」
勝負は1分程度で終わってしまった。
「まさか!このワシが負けてしまうとは……」
このあとライトも自分の父親に勝ち、バッジを全部そろえた。
エースに負け、自分の娘に負けたのはきっとショックだったことだろう。
しかし、3人が町から出ようとするとライトの父親が言った。
「エース!ライトを任せたぞ!」
ライトの親はそう言って3人の旅立ちを見守ったのであった。
三人は大会場所であるホクトドームに着いた。
ホクトドームとはホクト地方の中央にある立派なドームだ。
そこの周辺にはいくつものバトルフィールドがある。
ライトは張り切って大会に臨んだ。
ちなみにこの間エースは暇になっては散歩して野外バトルをしていた。
ケンジはと言うと、あっちこっち歩き回っては大会に出るトレーナーのポケモンを観察していた。
ホクト大会は最初に予選選考会が開かれ、次に3人によるリーグ戦が行われて、最終的に決勝トーナメントが行われるのだ。
ライトは順調に予選選考会を突破し、リーグ戦も勝って決勝トーナメントへ進出した。
「余裕ね♪」
決勝トーナメント前日ライトはそう言った。
「そう言うときって一番危ないんだぞ……」
ケンジは少し心配気味だ。
「大丈夫!いつもの通りやれば勝てるわよ!私は!」
―――決勝トーナメント一回戦。
ケンジの言うとおり、ライトはピンチに追い込まれていた。
状況は2対3で不利。
5匹目のプリンで何とか相手を3匹にしたがプリンもほとんどひんしに近い状態で残りは最近仲間に入れたばっかりのバネブーだけだった。
ライトは最初でバシャーモを出し一気に攻めようとしたが、相手の一匹目のゴローニャがいきなり大爆発をした。
ライトはそこから焦りと緊張がいっぺんに出て体制を立て直せなかった。
「くっ!プリン!『歌う』のよ!」
「何度も同じ手は効かないよ!!ヤミラミ!『挑発』!」
グラエナの挑発に乗ってプリンは歌えなかった。
「これならどう!?プリン!『ころがる』!」
「ヤミラミ!」
ライトのプリンの『ころがる』はスピードがあり方向転換がよく、威力があった。
ヤミラミに攻撃が命中した。
「とどめの『目覚めるパワー』!!」
「『自己再生』!」
目覚めるパワーが決まるのが、一歩遅かった。そして、次の瞬間、ヤミラミの『騙し討ち』が決まった。
体力が少なかったことがあり、プリンはあっさり弾き飛ばされてしまった。
「プリン戦闘不能!ヤミラミの勝ち!」
ライトの残りのポケモンはバネブーだけになってしまった。
「(もうだめね……バネブーじゃ、悪ポケモンのヤミラミには勝てない……)」
負けると分かっている勝負をわざわざやるものじゃない……そう思ったライトは審判に棄権すると言った。
「ライト選手試合放棄のためこの勝負ジュンの勝ち!」
ライトはコールされるとフィールドを去った。
エースとケンジはライトを一人にしておこうと思った。
しかしあまりにも戻ってくるのが遅かった為、2人は捜しに行った。
エースは湖を見ていたライトを見つけた。
ライトはエースに気がつき後ろを見た。
ライトの目は少し赤かった。
どうやらここで泣いていたんだと推測される。
「……エース……」
「ライト……隣に座っていいか?」
ライトはコクンと頷いた。
それを確認してからエースは座った。
「私……だめだった」
「ん?」
「最初にバシャーモが負けちゃったときに焦って、それからどうしようと思って緊張しちゃって……気がついたら残りはプリンとバネブーだけになっていて…………。
私、情けないよ。一番信頼していたポケモンが負けたぐらいで動揺するなんて……エース、どう思う?」
「ああ。情けないな。信頼したポケモンがやられたからって動揺するのはまずいと思う。その点に関しちゃトレーナーとして失格かな?」
エースは迷わずしっかりと言った。
その言葉はライトにかなりこたえた。
「……そんな……ひど―――」
ライトが「ひどい」と言おうとしたところ、エースがライトの口を抑えた。
「でも、それは仕方がないことだと思う。そういうことは直していけばいいんだ。何事も経験だと思うぞ」
「エース……」
そうエースに言われた時ライトはエースに抱きついて声をあげて泣き始めた。
エースはゆっくりとライトの頭に手を乗せたのだった。
大会後、彼らはホクト地方を出てノースト地方をゆっくり1年くらいかけて旅した。
そして、ノースト地方の旅も終えてカントー地方に来て、今はクチバシティにいた。
「本当にここで別れるのか?」
エースが少し寂しそうに言った。
「ああ。前から僕はオレンジ諸島に行って見たいと思っていたんだ。あそこのポケモンは色や模様が違うって有名なんだ!それに珍しいポケモンもいるって聞いたし……」
ケンジは熱く語っている。
「そうか、じゃあここでお別れだね!」
ライトは元気よく、ケンジの乗る船に手を振った。
「また会おうね―――!」
ケンジが乗るオレンジ諸島の連絡線は水平線の向こうへ行ってしまった。
「さて、俺たちも行くか」
「うん!」
―――ピース14年。
「そう言えば、エース!」
「何?」
「ケンジもオレンジ諸島に行ったのよね?あっちに行ったら会えるかな?」
「さあ?どうだろう?あれから1年くらい会ってないからな……」
エースたちはカントー地方を周って来てからこの船に乗ったのである。
「私……今まで旅をしてきて分かったことがあるの……」
「なに?」
ライトはエースの目を見ていった。
「旅をしてきて、今までいろんなことがあったわ。一緒に山賊を追い払ったり、タッグバトルをしたり、一緒に笑って、時にはバトルで負けて慰めてもらったこともあったわ。
私はずっとエースと一緒にいたい!私は、私は……エースのことが……好き!!」
ライトは目をそらさずに、まっすぐとエースを見ていった。
するとエースは何を思ったか笑い始めた。
「ちょっと!何がおかしいのよ!」
ライトの顔は真っ赤になった。
「ごめん。そんなことはなんとなく分かっていたよ。今までの旅で」
「え?」
「気にするな。ずっと一緒さ。ずっと一緒に旅をしよう」
エースはライトの身体を引き寄せて抱きしめた。
「本当に……?」
「ああ、本当さ……。俺もライトのことが好きだから……」
何秒かしたあと、エースとライトは離れた。
「……泣くことないだろ?」
「だって……嬉しいんだもん……」
「でも、やっぱりライトに涙は似合わないよ」
エースは指でライトの涙を拭った。
その時、ライトはエースに跳びついた。
エースは突然のことにもかかわらず、ライトをしっかりと受け止めた。
ライトはエースの顔に顔を近づける。でも、少し届かない。
エースは何をしたいのかに気づいて、自分の方から顔を近づける。
そして、オレンジ諸島の海に沈みゆく夕日に2人のシルエットが重なった。
一組のカップルが誕生した瞬間だった。
―――そして、時は流れた。
「私……忘れていないよ。エースが私のこと好きって言ってくれたこと。それに私もエースのことが好きだもの」
ピース17年。
ライトはエースを探して旅を続ける。
だが、手がかりさえも見つけることはできなかった。
「諦めない。絶対見つけるんだから……!!」
つづく