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たった一つの行路 №055

/たった一つの行路 №055

 俺は自分の存在を見出せない。
 何のために戦うのか。
 何のために破壊するのか。
 何のために生きるのか。
 俺にその答えを教えてくれる奴はいるだろうか。
 俺に光の道と言うものは存在するのだろうか。
 ヒカリが言っていたみたいに。
 そして、あの女は俺をその道へ導くのだろうか……?



 たった一つの行路 №055



 22

「ここは……?」
「……建物の大きさの割には、このフロアは広いわね」

 スプリントサンシャインの中に入って、コトハとカレンは驚いた。

「いや、建物の高さとから推移すると、この設計はありえないわ!」

 と言うのはユウナだ。
 このフロアは縦も横も広かった。天井は9メートル、フロアの広さは野球のダイヤモンド位の広さだった。
 スプリントサンシャインの建物の高さは100メートル。シルフコーポレーションほどではないが、とても高い建物だった。
 だが、そうすると今カレンたちがいるフロアはありえないものとなる。建物のバランスが崩れているのだ。

「……もしかしたら、空間が歪んでいるのかも……」
「空間が……?」

 ユウナの呟きにカレンが首を傾げる。

「……ポケモンには、時空や空間を歪ませることができるポケモンがいるというの。だから、もしかしたらそのポケモンがフロアを広くしているのかも……?」
「それで、敵はこっち!?それともこっち!?」
「あっ!コトハさん!」
「迂闊に動かないで!!」

 ユウナの静止も聞かず、コトハはあっちこっちに動き回る。
 すると、突然、コトハは消えてしまった。

「え!?コトハさん!?」
「これは……」

 ユウナは辺りを見回す。
 コトハが踏んだ足元を見てみると、そこには魔方陣みたいなパネルが置かれているようだった。

「ユウナさん……これは?」
「ワープパネルね。踏むと瞬時に同じ形のワープパネルに飛ぶことが出来るの。だから、このパネルを踏めば、コトハと同じところへいける……あ、あれ?」

 ユウナが驚いたのはそのワープパネルがいきなり消えてしまったためである。
 ユウナとカレンは再び辺りを見回してみる。
 地面はランダムにワープパネルに変わったり、普通のパネルになったりと変化していた。
 そして、カレンの足元がワープパネルに変わり、瞬時にカレンは消えてしまった。

「カレン!……固まって進むのが、一番と思っていたけれど、どうやらそう簡単にはいかなかったようね……」

 と、言っていると、ユウナの足元もワープパネルに変わり、その場から姿を消したのだった。



「あれ?ユウナ?カレン?……どうなってるの?これ!?」

 何も知らずに別のフロアに飛ばされたコトハ。
 その部屋は周りが赤かった。と言うよりも、火山地帯のようだ。

「……何この部屋?熱い上にしたにはマグマ……?」

 そこに立っているだけで汗が吹き出てくる。
 そして、部屋の中心に立っているのはこの暑いのにグレンのフードを被っていた。
 目立ったのはギターよりも大きい楽器を持っていたことだ。

「誰!?」

 コトハはボールを構える。

「お主は……誰じゃ?」
「あなたこそ誰よ!?」
「わしか……?わしの名はタキジ。運命を詠う者じゃが、今ここではダークスターに今は所属しておる」
「ダークスター!敵ね!覚悟しなさい!ブースター!!」

 何者かがわかった瞬間に攻撃に出るコトハ。
 この暑い中での炎攻撃はブースターの炎攻撃の威力を増大させていた。

「ほう、地形を生かした攻撃……なかなかやるのう」

 その炎をまともに受けるタキジと言う男。
 だが、燃えたのは、被っていたフードのみだった。
 そして、顔が見えた。

「え!?若い男……?」

 口調からてっきり老人だと思っていたコトハ。だが、黒い顎鬚を見て判断した。

「お主は強いのう……。でも、わしはお主に用はない。わしはある者を待っているのじゃ。さっさとここから出て行くのじゃ!」
「ある者?誰のことだかはわからないけれど、あんたがダークスターである限り私は戦うわよ!!ブースター!『火炎放射』!!」

 再び、強烈な炎攻撃を仕掛けるコトハ。
 しかし、炎はタキジに届くことなくかき消された。
 タキジは一匹のポケモンを繰り出して、いとも簡単に火炎放射をいなしてしまった。
 太陽の姿をしたポケモンは様々な姿を持つポケモンだった。
 今、この場はほとんど日光が照らす状態と同じようでそのように変化していた。

「!?まさか……ポワルン一匹で!?」
「どうやら、お主を片付けないといけないようじゃな……」



 23

「しまった……ユウナさんと離れちゃった……」

 カレンも別なフロアに来ていた。

「で、でも……このフロア……息が……?」

 カレンが来ていたフロアはなんと水の中だった。
 慌てて息を止めようとした。
 でも、気づいてみると、息をすることが出来た。

「これも、幻なのかな……?それにしても、本物の海の中みたい……」

 カレンは周りに見とれていた。

「はっ!?こんな風景に見とれている場合ではないわ!!ユウナさんもコトハさんも探さなきゃいけないけど、一番はハルキよ!」

 と自分を叱咤するカレン。
 そこへ、一人の影がカレンに近寄る。
 その気配を察知して、カレンはボールを構える。
 しかし、カレンはその人物を見て構えをといた。
 その人物こそ、カレンが探していた人だった。

「ハ、ハルキ……?」
「何故あんたがここにいる?」

 ハルキは少々驚いた様子だった。

「何故ここにいるかって?私はあなたを探しに来たのよ!」
「…………」

 すると、ハルキはカポエラーを繰り出す。しかし、カレンは攻撃を受け止めた。

「前と同じようにはいかないわよ!!」

 攻撃を受け止めたのは、オオスバメの翼だった。
 そして、翼を翻すと、そのままくちばしに力を集中させて、カポエラーに追撃した。
 攻撃は当たった。しかし、オオスバメははじき返されてダウンした。
 でも、はじき返したカポエラーも力尽きてしまった。
 そして、2人はまたポケモンを繰り出す。
 ヌオーの水鉄砲とカメックスの水鉄砲が押し合う。

「どうやら、腕を上げたようだな」
「そういう、あんたこそ、『ゴットバード』をクロスカウンターするなんてね」

 ふと、カメックスが水鉄砲の威力を弱めた。
 そして、水鉄砲をぎりぎりまでひきつけて、跳ね返した。

「『ミラーコート』か。甘いな」

 ハルキは予想していたようで、その反撃技を軽くかわした。
 そして、ヌオーにつかまって水中を泳いでカメックスに接近した。
 一応、息が出来るとは言え、水中の場所なのでここにとっては重力は関係なく、水ポケモンにとっては力を100%引き出せるようだ。

「これならどう!?」

 カメックスはからにこもって、なおかつハイドロキャノンを放出した。
 すると、回転しながらヌオーに向かっていった。
 いうならば、『超高速スピン』とでもいえよう。

「!!」

 でも、間一髪でかわす。だが、カレンは慌てない。
 そう、カメックスのその超高速スピンはブーメランのようにハルキに向かって行ったのだ。
 それに気づいたハルキはプラスルを繰り出して、強力な電気の塊を放出する。
 攻撃はヒットしたが、自分たちもカメックスの攻撃を受けてしまった。
 ここでハルキはヌオーを戻して、ブラッキーを繰り出した。
 そして、黒い玉を放った。

「『シャドーボール』ね」

 あわてず、カレンは泳いでかわした。

「ハルキ、言ったわよね!今度は強くなってプラスルを奪ってみなさいと!それは今よ!」

 カメックスはハルキを中心に渦潮を発生させる。
 だが、今度はエーフィを繰り出して、このフィールドごと、水を押しやってしまった。

「これで地形を生かした水の技は使えない」
「す、すごい……」

 エーフィの荒業に舌を巻くカレン。

「さぁ、プラスルをスナッチするならしてみろ!」

 カレンはここでカメックスからメガニウムにポケモンをチェンジした。
 そして、アリアドスも繰り出した。

「ここでエーフィを攻撃すれば、また水のフィールドに戻る。でも、私はそれをあえてしない!このまま決着をつけるわよ!」

 左腕のスナッチリングを光らせてボールを構えるカレンとそれを迎え撃つハルキ。
 まず、メガニウムが葉っぱカッターで牽制するが、ブラッキーがプラスルの前に回り、尻尾や手などで器用に攻撃を防いだ。
 そこへ、怯んだ隙に攻撃を加えるはずで突っ込んだアリアドスだったが、ブラッキーに頭突きを防がれた形となった。

「ブラッキー、あの技だ!」

 アリアドスをとめながら、力を溜めるブラッキー。

「アリアドス!避けて!」

 頭突きの体勢から、横に飛び移る。でも、ブラッキーは照準を定めたままだ。

「……今よ!」
「なっ!?」

 アリアドスが横に飛び移ったのは、決してブラッキーの技をよけるためではない。
 後から来る攻撃の道を作るためだった。

「くっ!」

 ハルキが気づいたころにはそのソーラービームは放たれた後だった。
 そして、ブラッキーの目の前で爆発した。

「アリアドス、間合いを取って!」

 俊敏な動きで、次の攻撃に備える。カレンはこのくらいでハルキが負けるとは思っていなかった。
 そして、その予測は正しかった。
 攻撃の1,2秒ほどで今度はプラスルが飛び出してくる。ロケット頭突きだ。
 でも、アリアドスが放った糸とメガニウムの『草笛』でプラスルの動きを一気に封じ込めた。
 そして、スナッチボールを放った。抵抗もなくプラスルはカレンの元に戻ってきた。

「プラスルは返してもらったわよ!」
「別にいい。もともと興味なんてないからな」

 そして、ブラッキーは再びシャドーボールと似た技を繰り出そうとした。

「この技は……あのワルダックとの戦いで使った技ね。……あのときから私は考えていたの。あなたについて……」
「…………?」
「あなたは何のためにスナッチ団に入ったの?そして、何でまたロケット団なんかにいるの?」
「…………」

 ハルキは何も言わなかった。
 ただ、ブラッキーの攻撃を溜めるのに集中しているだけだった。
 いや、集中をしようとしているのだが、一向に集中できずにいるようだった。

「私にはわからない。あなたはスナッチ団に入っていた。だけどあの時、裏切って私を手助けしてくれた。
 それでまた、何であなたはロケット団に手を貸すの?世界征服のため……?それとも、自分の欲望のため……?」
「…………」
「いろいろ考えたけど、あなたがそのような理由でロケット団に所属しているのではないと言うことはわかるの!
 だって、一緒にあのワルダックと戦ったときのあなたは何かを見ていた。そう、光の様な何かを……」
「違う……」
「え?」
「俺にはそんなものは見えていない……。見えるのは、何もない暗闇だけだ」
「そうね……あなたの目にはそう映るかもしれない。あなたの目は何かにすがりつくような目をしているもの……」
「俺が……何かにすがりつく……?」
「そう、そして何かを求めている……。私にはそこまではわからないけど……」
「(俺が……何かを求める……?)」

 集中力を乱した。すると、ブラッキーの光球はふっと消えてしまった。

「(かつて俺は……何かを求めたことがあったのか……?いや、何もあるはずがない……。
 ずっと、俺は一人で生きてきた。これからもそうするつもりだった。そんな俺が求めるものとは…………?)」
「あなたのブラッキーのその技……。私わかるの」
「?」
「『シャインボール』……おじいちゃんの技にそのような技があったから……」
「…………」
「だからきっとあなたはアゲトビレッジの……」

 カレンが答えようとする。
 だが、そこでブラッキーがシャドーボールを指示してそれをさえぎった。

「だから……なんだ!?俺は両親に3歳のときにこのイーブイたちと一緒に捨てられているんだ!たとえ、“それ”が、真実だったとしても、俺は信じない!!
 そして、今の俺には全く関係のないことだ!!」
「…………」
「俺はお前を倒す!!この攻撃で終わりだ!!」

 ハルキはブラッキーに先ほど中断した技を指示する。
 しかも、先ほどソーラービームを相殺したときよりもはるかにでかい光球を作り出した。

「……私……わかったよ。あなたが何を求めているかが……」
「何?」

 カレンはきっとまっすぐな目でハルキを見た。

「アリアドス!行くわよ!ローガン流『シグナルレーザー』!!」
「……!!ブラッキー!放て!」

 ドカンと音を立てて虹色のレーザーと光球が激突した。

「……光球が……貫かれた……!?」

 アリアドスの放った攻撃は、ブラッキーに命中した。

「ずっと……あなたは一人だったんだよね……。親から見離されて……それからずっと裏の世界で生き延びて、誰にも頼らないで生きてきた……。辛かったでしょ……?」

 カレンの目からふと涙が零れ落ちる。

「な……何であんたが泣く……?」
「きっとあなたは……ハルキは自分を頼りにしてくれる人を探していたんじゃないの……?そして、相手を支えて自分も支えあっていく、パートナーのような人を……」
「……パートナー……」

 ハルキは呆然とカレンを見続ける。その言葉に否定はしなかった。

「私があなたのよりどころになる……それじゃ……駄目かな?」

 泣き崩れるカレン。
 すると、突然、水があふれた。
 というよりも、エーフィが仮想の水を元に戻したせいで状態が元に戻っただけだが。
 水が元に戻ると、渦が生じてカレンが巻き込まれそうになるが、ハルキがしっかりとカレンの腕を掴んだ。

「ハルキ?」
「(パートナーか……)とりあえず、ロケット団を抜ける。だから、泣くな……。ましてや俺なんかのために……」

 カレンを見ずにそう言い放った。
 その様子はどこか照れくさそうだった。
 カレンはそれを見て、ハルキにギュッと抱きついた。
 ハルキは少々慌てていたのだった。
 しかし、次の瞬間、その和気藹々な雰囲気は崩れることになった。
 2人はいつの間にか、部屋をワープしていた。
 いや、実際にはワープさせられたと言う方が正しい。
 今度の部屋は宇宙空間のような場所だった。
 この特徴は足元がなく、空中を歩いているような感じだった。
 すると、一人の男の声がした。

「あらあら、そんな簡単にロケット団を辞めていいんですKA?」
「誰!?」

 すごくラフな格好をしたドレッドヘアの男だった。

「ダークスターのナポロン……」

 ハルキはその男の名前を口に出す。

「裏切り者はどうなっているのか知っていますKA?」
「興味ないな」
「まぁ、あなたなら知っているでしょうNE。とりあえず、別に辞めてもかまいませんYO。作戦には何の支障もありませんしNE。
 それに、私にとってはこの作戦も無意味そのものなんですがNE。あ、こちらの話ですYO。まぁ、なんですKA。
 一応決まりですので、この作戦を知っているあなたには消えていただきますYO」

 ナポロンがボールを宙に放り投げた。ハルキも構える。

「カレン……こいつの強さは半端ではない。あんたも戦ってくれ」
「(ハルキがここまで言うほどの奴なの……?)わかった!戦うわよ!」

 カレン&ハルキ対ナポロンのバトルが切って落とされたのだった。



 24

「ぐぅ……はぁ……はぁ……」

 ラグナは息を切らして、地に這いつくばる。
 散らばったモンスターボールを取ろうとして、必死にあがく。
 だが、マリーが無残にもラグナを踏みつける。

「ぐぅ!!て……てめぇ……俺を……」
「あら……?悔しかったら、私に勝ってみないさいよ!ぼろぼろのあんたじゃ、私には勝てないでしょうけど!」

 丁度そのときだった。
 そのフロアにユウナが姿を現したのだった。

「……あれ?あなたは確か……?」

 マリーは気が付いて、ユウナを見る。ラグナも気づいて、見る。

「(……四天王のマリーと……ラグナ!?でも、この状況は何?)」

 ユウナがそう思うのも無理はない。

「一体何が?」

 ユウナは率直な疑問を口に出す。

「実はね。このラグナが裏切りをしようとしたのよ。だから、こうやって私が制裁をしてあげているの」

 そういって、ラグナを蹴り飛ばす。
 すると、ユウナの足元まで転がっていった。

「というわけで、あなたも制裁してくれないかしら?」
「…………」

 ユウナはラグナを見る。
 その傷の具合を見ると、結構深手だったに違いない。
 所々が傷だらけの痣だらけだった。
 おそらく、今出しているカポエラーにやられたようだ。

「さぁ、この裏切り者を始末しなさい!」

 マリーはユウナにそう命令する。
 しかし、マリーは気づいていなかった。
 ユウナがロケット団の本部を潰したことを。
 そして、ロケット団を辞めていってヒロトたちに協力することを誓ったことを。
 もし、それを知っていれば、この攻撃を受けることはなかった。

「なっ……!?」
「残念だったわね。もうあなたの命令は受けないわ」

 一撃。
 ユウナの出したポケモンがカポエラーとマリーに攻撃を当てた。
 しかもその攻撃方法はそのポケモンが持っている骨をクイックモーションで投げるという技であった。

「カラりんの『ボーンシュート』……威力は凄まじいけど、骨をいちいち取りに行かないといけないのが問題ね……」
「な……なぜ、私に攻撃をする!?」

 マリーは膝をついて、ユウナに問う。

「ユウナ……てめぇ……?」
「そんなの決まっているじゃない!私がロケット団を抜けたからよ!それに、もうロケット団は滅んだわ!」
「何ですって!?どういうこと!?」
「知る必要はないわ!私があなたを倒すわ!!」

 ユウナはエースからボスを倒したことを聞いていたので、そう言ったまでである。

「あなたが私を倒す……?カポエラーを倒したぐらいで調子に乗ってんじゃないわよ!!」

 そういって、繰り出したのはラフレシアとジュペッタだ。

「コイりん!」

 だが、ユウナが呼びかけた瞬間、その二匹の動きは封じ込められた。

「レアコイルの『電磁波』ね!でも、その程度!私の能力を甘く見るんじゃないわよ!」

 マリーは超能力のように念じ始めた。
 すると、ラフレシアとジュペッタは電磁波を払いのけてしまった。

「別にあなたの能力を甘くなんて見ていないわ!コイりん!もう一度よ!」
「何度やっても同じよ!!」

 マリーの言うとおり、同じように2匹は電磁波をはねのけてしまった。

「ユウナ!同じことを何度やっても駄目だ!!攻撃しろ!」

 ラグナが助言をするがユウナは聞く耳を持たなかった。

「もう一度!」
「いい加減にしたらどうかしら!!」

 今度は電磁波を放つ前に攻撃に出るラフレシアとジュペッタ。
 それぞれにソーラービームとナイトヘッドを放つ。
 攻撃はレアコイルに直撃。
 あっという間にダウンしてしまった。

「ぐ……だから言ったんだ!」

 ラグナは自分のことのように悔しがる。

「あら、コイりんばかりに目が行っていていいのかしら?」
「何!?」

 マリーが気が付いたときには、ラフレシアは後を取られていた。
 そして、強力な一撃がラフレシアを叩きのめした。

「もう一回!ジュペッタにも『ボーンスラッシュ』!!」
「その程度の攻撃……受け止めなさい!!」

 岩をも切り裂く、カラりんのボーンスラッシュ。
 だが、ジュペッタは両腕を使って止めてしまった。

「じゃあ、これならどう!?ブラりん!『ファントムハリケーン』!!」
「(ガラガラの後にブラッキー!?いつの間に!?)すべてかわしなさい!」

 ユウナは、ブラりんが攻撃のモーションを始めるのと同時にガラガラをボールに戻す。
 そして、幻影の嵐が吹き荒れた。
 攻撃が終わる間際まで、ジュペッタは攻撃をかわし続けた。
 しかし、最後の攻撃が当たって、ジュペッタは倒れた。

「『かわす』のじゃなくて、『受け流す』って念じればよかったのにね」
「っ!!……何故私の力を知っている!?」
「ロケット団本部のデータを見たまでよ。あなた以外の戦略はほとんど知っていたけどね。
 特にロケット四天王のバトルスタイルは他の幹部や私たちのロケットルーキーズとは全く違うものだということはわかっていたし」
「でも、知ったぐらいで、私に勝てると思うなよ!!」

 そういって、ニューラを繰り出した。

「いえ、精神状態が乱れている今のあなたなら十分に私でも勝ち目があるわ!」

 一方のユウナは再びガラガラを繰り出して、ニューラの奇襲を骨で受け止めた。

「ロケット四天王は4人。『水陣のレグルス』、『闘剣クサナギ』、『乱忍ムラサメ』、そして、『信女マリー』……あなたね」

 ガラガラは爪を骨で弾いて、頭突きでニューラを吹き飛ばす。
 すると、次は骨を投げて攻撃した。

「さっきの『ボーンシュート』ね!ニューラのスピードではそんなの当たらないわよ!!」

 ニューラは軽く攻撃をかわす。

「甘いわね!」

 しかし、返ってきた骨がニューラに命中した。どうやら『骨ブーメラン』だったようだ。

「ニューラ、『冷凍ビーム』!!」
「カラりん!『アイスボーン』!」

 カラりんは自らが繰り出した冷気で自分の骨を凍らせた。
 それを回転させて、冷凍ビームを防いでしまった。

「……それならすべて凍らしてくれるわ!!ニューラ!『吹雪』!!」

 マリーは念じて、ニューラに攻撃を指示する。
 すると、凄まじい吹雪がこの広いフロアを覆いつくした。

「ガラガラは冷気に弱い!これで終わりだ!」
「本当に……甘いわね……」
「何!?」
「カラりんに氷技は意味を成さないわよ!逆に、攻撃力を上げるのよ!!!!カラりん!『ボーンシュート』!!」

 骨を回転させて投げる。しかし、その骨は凍らせた影響で大きさが増していた。
 それは、横にはよけられないくらいの大きさだった。

「私のニューラのスピードを甘く見るんじゃないわよ!!」

 だが、ニューラは右へ動いて攻撃をかわした。
 しかし、それがあだとなってしまった。
 ニューラは新たに出したウインディにタックルされたのだ。

「お、お前のようなガキに負けるかー!!ニューラ!『破壊光線』!!」

 吹っ飛ばされながらも、攻撃を放つニューラ。でも、ユウナは冷静だった。

「ウイりん!『スパイラルショット』!!」

 ニューラを打っ飛ばしてから、まもなく螺旋状の炎を即座に放った。
 切羽詰った状態から打った攻撃とあらゆる状況を予測してからの攻撃。
 トレーナーの精神状態から言って、勝負はもう付いていた。

「……バカな……」

 吹っ飛んだニューラを受け止めて信じられないという顔をしていた。

「『水陣のレグルス』は自分の有利な状態にフィールドを変えられる能力を持つ。『闘剣クサナギ』は自分の剣技をポケモンにも教えさせる強者。
 『乱忍ムラサメ』は分身の術などを駆使して、相手を惑わしながら攻撃をするのを得意とする。そして、『信女マリー』……あなたの能力は信じる力よ!」
「信じる力……だと……?」

 ラグナがユウナに聞く。

「信じる力、または信じさせる力といったところかしらね。相手を信じ込ませることによって、能力とかを引き出すことができるのよ。自己暗示というところかしらね?」
「(そうか……と言うことは、俺のダーテングの『裂水』を弾き返せたのもそのせいか。まさか、ポケモンリーグの関係者の子供というのもその女の能力か?)」

 と、ラグナは納得した。

「本部のデータを見る限り、あなたの手持ちポケモンはもういないはずよ!大人しく降参しなさい!」
「……私が……そんなことすると思う?」
「何……?」

 マリーはニューラを戻して、立ち上がった。その手には別のボールが握られていた。

「確かにもうこの精神状態では超能力は使うことはできない。でも、あんた、このポケモンに勝てるかしらね!?」

 そういって、マリーは新たなポケモン……いや、合成ポケモン<キメラ>を繰り出したのだった。



 第一幕 Wide World Storys
 闇の星② ―――ハルキとカレン――― 終わり


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Last-modified: 2015-02-14 (土) 11:04:28
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